IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャープ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-自走式電子機器 図1
  • 特許-自走式電子機器 図2
  • 特許-自走式電子機器 図3
  • 特許-自走式電子機器 図4
  • 特許-自走式電子機器 図5
  • 特許-自走式電子機器 図6
  • 特許-自走式電子機器 図7
  • 特許-自走式電子機器 図8
  • 特許-自走式電子機器 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】自走式電子機器
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/28 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
A47L9/28 E
A47L9/28 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021501909
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2020005567
(87)【国際公開番号】W WO2020170933
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019028515
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】矢戸 佑毅
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-021895(JP,A)
【文献】特開2004-194751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/28
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体を支持して床面を走行する電動式の駆動輪と、前記筐体の前進方向側の前部に設けられて床面上の障害物を接触によって検知するバンパーを有する障害物検知部と、前記筐体の前記前部に設けられて床面上に隆起する段差を検知する段差検知部と、前記障害物検知部および前記段差検知部の出力に基づいて前記駆動輪を制御する制御部とを備え
前記制御部は、前記段差検知部が出力を維持する間、前記段差検知部の出力開始時から所定時間未満の間で前記障害物検知部が出力したときは前記筐体が前進するように前記駆動輪を制御し、前記段差検知部の出力開始時から所定時間以上の間で前記障害物検知部が出力したときは前記筐体が後退するように前記駆動輪を制御することを特徴とする自走式電子機器。
【請求項2】
前記段差検知部は、前後方向へ移動可能かつ段差と摺接可能なように前記筐体の前記前部における前記障害物検知部よりも下方位置に設けられた段差接触部と、前記段差接触部を前方へ付勢する付勢部材と、前記付勢部材の付勢力に抗して後方へ移動した前記段差接触部を検知して出力するセンサ本体とを備え、
前記段差接触部は、前記バンパーよりも前方へ突出しないよう前記筐体の前記前部に設けられている請求項1に記載の自走式電子機器。
【請求項3】
前記段差検知部は、段差を撮影可能な撮像部を有する請求項1に記載の自走式電子機器。
【請求項4】
前記筐体は、前記前部における前記障害物検知部よりも下方位置に後方へ向かうにつれて床面側へ傾斜する傾斜面を有しており、
前記段差接触部は、段差と摺接可能なように後方へ向かうにつれて床面側へ傾斜する摺接傾斜面を有しており、前記段差接触部が前方へ移動したときに前記摺接傾斜面が前記傾斜面よりも前方位置となり、かつ、前記段差接触部が後方へ移動したときに前記摺接傾斜面が前記傾斜面と同一面内に配置されるように構成された請求項に記載の自走式電子機器。
【請求項5】
前記筐体は、前記前部における前記障害物検知部よりも下方位置に後方へ向かうにつれて床面側へ傾斜する傾斜面を有しており、
前記段差検知部は、前記傾斜面と同一面内に配置された透明カバーをさらに有する請求項に記載の自走式電子機器。
【請求項6】
前記段差検知部が、前記筐体の前記前部に複数設けられている請求項1~5のいずれか1つに記載の自走式電子機器。
【請求項7】
前記筐体に搭載されて床面の塵埃を吸引する電動式の掃除機器をさらに備えた請求項1~6のいずれか1つに記載の自走式電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自走式電子機器として、例えば、特許文献1には、床面上を走行可能な筐体に電動式の掃除機器が搭載された自走式掃除機が開示されている。
この従来の自走式掃除機は、筐体上で移動可能なように筐体を覆う本体(バンパー)を有しており、床面上を走行中に本体が壁や置物等の障害物に衝突すると障害物(衝突)を検知して回避する。また、筐体の底面にはクリフセンサが設けられており、自走式掃除機が、例えば下り階段に近づくとクリフセンサが下り階段を検知して回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-51336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなバンパーの障害物との衝突によって回避行動をする従来の自走式電子機器においては、例えば、バンパーおよび障害物(壁、家具、置物等)への傷付き、置物(例えば、花瓶)を倒して破損させる、蓋の開いたペットボトルまたはコップを倒して中の飲み物を床面上に溢すといった事態を抑制する上で、できる限りバンパーの操作力を軽く設定することが望ましい。
【0005】
しかしながら、バンパーの操作力を軽くするほど、自走式電子機器が段差を乗り越える際の筐体への衝撃でバンパーの誤作動が生じやすくなる。つまり、自走式電子機器は、バンパーより下の筐体前端が段差に衝突した際、段差に摺接しながら乗り越えする。そのため、バンパーの操作力を軽くするほど、筐体前端が段差に衝突したときの衝撃でもバンパーが作動し衝突検知が働きやすくなり、本来乗り越えられる高さの段差を回避してしまうこととなる。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、段差への走行性に優れた自走式電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、筐体と、前記筐体を支持して床面を走行する電動式の駆動輪と、前記筐体の前進方向側の前部に設けられて床面上の障害物を接触によって検知するバンパーを有する障害物検知部と、前記筐体の前記前部に設けられて床面上に隆起する段差を検知する段差検知部と、前記障害物検知部および前記段差検知部の出力に基づいて前記駆動輪を制御する制御部とを備えた自走式電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0008】
段差検知部によって床面上に隆起する段差(例えば、絨毯、敷居など)を検知することができるため、段差乗り越え時の障害物検知部の誤作動による段差回避行動を抑制し、段差への走行性能を高めることができる。また、自走式電子機器の障害物への衝突と段差への衝突を区別することができるため、障害物検知部の検知精度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の自走式電子機器としての自走式掃除機の第1実施形態を示す正面図である。
図2】第1実施形態の自走式掃除機の底面図である。
図3】第1実施形態の自走式掃除機の内部構成を説明する図である。
図4】第1実施形態の自走式掃除機における段差検知部の(A)は作動前の左側断面図、(B)は作動時の左側断面図である。
図5】第1実施形態の自走式掃除機の制御系を説明するブロック図である。
図6】第1実施形態の自走式掃除機における障害物検知部の(A)は作動前状態を示す説明図、(B)は作動時状態を示す説明図である。
図7】第1実施形態の自走式掃除機における段差検知部の(A)は作動前状態を示す説明図、(B)は作動時状態を示す説明図、(C)は作動後状態を示す説明図である。
図8】第2実施形態の自走式掃除機を示す正面図である。
図9】第2実施形態の自走式掃除機における段差検知部の左側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1は本発明の自走式電子機器としての自走式掃除機の第1実施形態を示す正面図であり、図2は第1実施形態の自走式掃除機の底面図であり、図3は第1実施形態の自走式掃除機の内部構成を説明する図である。また、図4は第1実施形態の自走式掃除機における段差検知部の(A)は作動前の左側断面図、(B)は作動時の左側断面図である。また、図5は第1実施形態の自走式掃除機の制御系を説明するブロック図である。
なお、図2において、自走式掃除機の前後左右の方向を矢印にて示している。また、第1実施形態1を含む以下の各実施形態では、自走式電子機器として電動式の掃除機器を備えた自走式掃除機の場合を例示するが、本発明は自走式掃除機に限定されるものではない。例えば、自走式荷物輸送機器、自走式トランクなどであってもよい。
【0011】
<自走式掃除機の構成および動作について>
第1実施形態の自走式掃除機Aは、設置された場所の床面Fを自走しながら、床面F上のダストを含む空気を吸い込み、ダストを除去した空気を排気することにより床面F上を掃除するように構成されている。
この自走式掃除機Aは、円盤形の筐体1を備え、この筐体1の内部および外部に、回転ブラシ2、左右一対のサイドブラシ3、集塵部4、吸引部としての電動送風機5、電動送風機5用のモータドライバ5a、左右方向の同一軸心上に設けられた左右一対の駆動輪6、左右一対の駆動輪6用の一対の走行モータ6a、一対の走行モータ6a用のモータドライバ6b、回転ブラシ2および左右一対のサイドブラシ3を回転させるブラシ用モータ7、ブラシ用モータ7のモータドライバ7a、補助輪としての後輪8、バッテリー9、後述する制御部10を含む制御回路が搭載されている制御基板10a及び各種センサ等の構成要素が設けられている。なお、筐体1は円盤形に限定されず、平面的に視て角部が丸い略三角形または略四角形等でもよい。また、サイドブラシ3は、左右どちらか一方のみであってもよい。
【0012】
筐体1は、吸込口1aを有する平面視円形の底板1bと、平面視円形の天板1cと、底板1bおよび天板1cの外周部に沿って設けられた平面視円環形の側板1dとを備えている。なお、天板1cには、開閉蓋(不図示)およびこの開閉蓋の後方位置に形成された排気口1ca(図3参照)が設けられている。
底板1bには左右一対の駆動輪6および垂直軸心を中心に首振り可能な後輪8が設けられている。側板1dは、前後にほぼ二分された側板前部1daと側板後部1dbとを有し、側板前部1daは衝突時の衝撃を緩和するバンパー機能を備えている。以下、「側板前部1da」を「バンパー1da」という。
【0013】
また、筐体1内には、吸引口1aと集塵部4とを接続する吸引路11と、集塵部4と電動送風機5とを接続する通風路12と、電動送風機5と排気口1caとを接続する通風路13とが設けられている。
【0014】
左右一対の駆動輪6は、筐体1の底板1bと平行な同一軸心Xを中心に回転可能に設けられており、左右一対の駆動輪6が同一方向に回転すると筐体1が進退し、各駆動輪6が逆方向に同一速度で回転すると筐体1が定置旋回する。
各駆動輪6の回転軸は、各走行モータ6aからそれぞれ個別に回転力が得られるように連結されており、各走行モータ6aは筐体1の底板1bに直接またはサスペンション機構を介して固定されている。
【0015】
回転ブラシ2は、筐体1の底板1bと平行な軸心廻りに回転可能に吸込口1aに設けられている。
また、底板1bにおける吸込口1aの左右両側には底板1bと垂直な軸心廻りに回転する前記サイドブラシ3が設けられている。
【0016】
回転ブラシ2は、回転軸であるローラの外周面に螺旋状にブラシを植設することにより形成されている。
サイドブラシ3は、回転軸と、回転軸の下端に放射状に設けられた複数本のブラシ束を有している。
回転ブラシ2の回転軸および一対のサイドブラシ3の回転軸は、筐体1の底板1bの一部に枢着されると共に、その付近に設けられたブラシ用モータ7、プーリおよびベルト等を含む動力伝達機構等を介して独立的に連結されている。
【0017】
また、筐体1の側板1dの後端には、バッテリー9の充電を行う充電端子(不図示)が設けられている。室内を自走しながら掃除する自走式掃除機Aは、室内に設置されている充電台(不図示)に帰還する。これにより、充電台に設けられた端子部に充電端子が接触し、バッテリー9の充電が行われる。商用電源(コンセント)に接続される充電台は、通常、室内の側壁に沿って設置される。
バッテリー9は、充電端子を介して充電台から充電され、制御基板10a、駆動輪6用の走行モータ6a、ブラシ用モータ7、電動送風機5、各種センサ等の各要素に電力を供給する。
【0018】
集塵部4は、吸引路11と接続する導入口および電動送風機5の上流側の通風路(吸引ダクト)12と接続する排出口を有する集塵ボックス4aと、集塵ボックス4aの前記排出口に着脱可能に設けられたフィルター4bとを有してなる。集塵ボックス4aは、通常、筐体1内に収納されており、集塵ボックス4a内に捕集されたダストを廃棄する際は、筐体1の前記蓋(不図示)を開いて集塵ボックス4aを出し入れ(着脱)することができる。
【0019】
図5に示すように、自走式掃除機A全体の動作制御を行う制御回路は、制御部10、自走式掃除機Aの動作に係る設定条件や作動指令を入力する操作パネル31、走行マップ18aなどのプログラムデータ等を記憶する記憶部18、電動送風機5を駆動するためのモータドライバ5a、一対の駆動輪6の各走行モータ6aを個別に正逆転駆動するためのモータドライバ6b、回転ブラシ2とサイドブラシ3を同時駆動するブラシ用モータ7を一方向に回転するためのモータドライバ7a等を含む。
【0020】
また、制御回路は、筐体1の底板1bに設けられた複数の床面検知センサ14およびその制御ユニット14a、バンパー1daに周方向かつ交互に設けられた複数の超音波発信部15Aおよび超音波受信部15Bを有する超音波センサ15およびその制御ユニット15a、バンパー1daとの衝突により障害物を検知する障害物検知部としての接触センサ16およびその制御ユニット16a、筐体1の前部におけるバンパー1daよりも下方位置に設けられた段差センサ(段差検知部)17およびその制御ユニット17a等を含んでいる。
【0021】
制御部10はCPU、ROM、RAMからなるマイクロコンピュータを備え、操作パネル31からの指令と、床面検知センサ14、超音波センサ15、接触センサ16および段差センサ17の出力と、記憶部18に予め記憶されたプログラムデータとに基づいて、モータドライバ5a、6b、7aに個別に制御信号を送信し、電動送風機5、走行モータ6aおよびブラシ用モータ7を駆動制御して、一連の掃除運転を行う。なお、プログラムデータには、床面の広い領域を清掃する通常モード用と、壁際に沿って清掃する壁際モード用のプログラムデータなどが含まれる。
【0022】
制御部10は、ユーザーによる自走式掃除機Aの動作に係る条件設定を操作パネル31から受け付けて記憶部18に記憶させる。この記憶部18は、自走式掃除機Aの設置場所周辺の走行マップ18aを記憶することができる。走行マップ18aは、自走式掃除機Aの走行経路や走行速度などといった走行に係る情報であり、予めユーザーによって記憶部18に記憶させるか、あるいは自走式掃除機A自体が掃除運転中に自動的に記録することができる。
【0023】
床面検知センサ14は、自走式掃除機Aが下り階段などの下り段差を検知するために、例えば、筐体1の底板1bの前部(例えば、段差センサ17の左右両側)、後部および左右一対のサイドブラシ3の位置に配置される。CPUは制御ユニット14aを介して床面検知センサ14と接続されており、床面検知センサ14からの出力信号に基づいて筐体1の外部周辺の下り階段などの下り段差の存在情報を得る。なお、床面検知センサ14としては、例えば、床面Fに向かって投光する発光素子および発光素子の光が床面Fを反射した反射光を受光する受光素子を有するものとすることができる。
【0024】
超音波センサ15は、非接触式の障害物検知部であり、超音波発信部15Aから発信された超音波が障害物に衝突し反射して超音波受信部15Bにて受信されることにより、障害物を検出する。CPUは制御ユニット15aを介して超音波センサ15(超音波受信部15B)と接続されており、超音波受信部15Bからの出力信号に基づいて筐体1の外部周辺の障害物の存在情報を得る。
【0025】
接触センサ16は、接触式の障害物検知部であり、自走式掃除機Aが走行時に障害物と接触したことを検知するために、例えば、バンパー1daの裏側の左右位置に配置される。制御部10は制御ユニット16aを介して接触センサ16と接続されており、接触センサ16からの出力信号に基づいて筐体1の外部周辺の障害物の存在情報を得る。なお、接触センサ16としては、障害物に衝突したバンパー1daの一部と接触することにより障害物を検知するリミットスイッチ、あるいは障害物に衝突したバンパー1daの一部を非接触で検知する光学センサ等を用いることができる。なお、バンパー1daは、例えば、バンパー1daの裏側の左右位置に前後方向移動可能に設けられた支持部の付勢部材(例えば、圧縮コイルスプリング)によって前方Y1へ付勢されている。
【0026】
段差センサ17は、接触式の段差検知部であり、自走式掃除機Aが走行時に床面F上から隆起する段差と接触したことを検知するために、例えば、筐体1の前部のバンパー1daよりも下方位置に配置される。制御部10は制御ユニット17aを介して段差センサ17の後述するセンサ本体17dと接続されており、段差センサ17からの出力信号に基づいて筐体1の外部周辺の障害物の存在情報を得る。なお、段差センサ17について、詳しくは後述する。
【0027】
このように構成された自走式掃除機Aにおいて、掃除運転の指令により、電動送風機5、駆動輪6、回転ブラシ2およびサイドブラシ3が駆動する。これにより、回転ブラシ2、サイドブラシ3、駆動輪6および後輪8が床面Fに接触した状態で、筐体1は所定の範囲を自走しながら吸込口1aから床面Fの塵埃を含む空気を吸い込む。このとき、回転ブラシ2の回転によって床面F上の塵埃は掻き上げられて吸込口1aに導かれる。また、サイドブラシ3の回転によって吸込口1aの側方の塵埃が吸込口1aに導かれる。
【0028】
吸込口1aから筐体1内に吸い込まれた塵埃を含む空気は、筐体1の吸引路11を通り、集塵ボックス4a内に流入する。集塵ボックス4a内に流入した気流は、フィルター4bを通過して通風路12を通り電動送風機5に流入して通風路13に導かれて排気口1caから外部へ排出される。この際、集塵ボックス4a内の気流に含まれる塵埃はフィルター4bによって捕獲されるため、集塵ボックス4a内にダストが堆積する。
【0029】
自走式掃除機Aは、掃除が終了するとあるいはバッテリーの残容量が少なくなると充電台に帰還する。これにより、充電端子が端子部に接してバッテリーが充電される。
自走式掃除機Aの上面には操作パネル31が設けられており、操作パネル31によって掃除運転を実行させることができる。また、筐体1内に受信部を設けると共に、受信部に指令信号を発信する送信機を設けてリモコン操作できるようにしてもよい。また、スマートフォンや携帯電話などの携帯端末からインターネット回線および室内に設けたルーターを介して指令信号を自走式掃除機Aに送信して遠隔操作できるようにしてもよい。
【0030】
<段差センサの構成について>
図1図2図4(A)および(B)に示すように、段差検知部としての段差センサ17は、前後方向へ移動可能かつ段差と摺接可能なように筐体1の前部における障害物検知部としてのバンパー1daよりも下方位置に設けられた段差接触部17bと、段差接触部17bを前方へ付勢する付勢部材17cと、付勢部材17cの付勢力に抗して後方へ移動した段差接触部17bを検知して出力するセンサ本体17dとを備える。
【0031】
筐体1における段差センサ17の取り付け位置は、底板1bの前端であり、この底板1bと側板1dとの境界付近は全体的に逆テーパ状に面取りされている。そのため、筐体1における段差センサ17の取り付け部分には、前方から後方へ向かうにつれて床面側へ傾斜する傾斜面1eが設けられている。
一方、段差接触部17bは、段差と摺接可能なように後方へ向かうにつれて床面側へ傾斜する摺接傾斜面17ba(図2図4(A)および(B)参照)を有している。
【0032】
段差センサ17は、図4(A)に示すように段差接触部17bが前方へ移動したときに摺接傾斜面17baが筐体1の傾斜面1eよりも前方位置となり、かつ、図4(B)に示すように段差接触部17bが後方へ移動したときに摺接傾斜面17baが筐体1の傾斜面1eと同一面内に配置されるように構成されている。
段差接触部17bは、例えば、筐体1の底板1bの前端に設けられた切欠き部分の板片1baが差し込まれる後方開口状の下凹部17bbと、付勢部材17cとしての圧縮コイルバネが挿入される後方開口状の上凹部17bcと、当接段部17bdとを有し、バンパー1daの裏側に設けられた筐体1の当て板1dcに当接段部17bdが当接して前方への移動が規制されるようになっている。
【0033】
図2および図4(A)に示すように、付勢部材17cによって前方へ付勢された段差接触部17bは、当接段部17bdが筐体1の当て板1dcに当接することにより、バンパー1daよりも前方へ突出しないようになっている。この場合、バンパー1daが後方へ移動(図4(A)中の仮想線)しても、自由状態の段差接触部17bの先端はバンパー1daよりも前方へ突出しないようになっている。
【0034】
筐体1の底板1b上における段差接触部17bの後方位置にはリブ1bbが筐体内側に向けて設けられており、このリブ1bbと段差接触部17bとの間に付勢部材17cが設けられている。
また、リブ1bbにおける付勢部材17cよりも上方位置には、センサ本体17dとしてのリミットスイッチが固定されており、図4(B)に示すように段差接触部17bが後方へ移動することにより、段差接触部17bの後端17beがリミットスイッチを押圧してONするようになっている。なお、センサ本体17dとしては、段差接触部17bの後端17beを検出可能な光学センサを用いてもよい。
【0035】
<障害物および段差の検知と走行制御について>
図6は第1実施形態の自走式掃除機における障害物検知部の(A)は作動前状態を示す説明図、(B)は作動時状態を示す説明図である。また、図7は第1実施形態の自走式掃除機における段差検知部の(A)は作動前状態を示す説明図、(B)は作動時状態を示す説明図、(C)は作動後状態を示す説明図である。
【0036】
図1図5図6(A)および(B)に示すように、前記構成を備えた自走式掃除機Aは、前方Y1への走行中にバンパー1daが床面F上の障害物Qに衝突した場合、バンパー1daが後方Y2へ移動して衝撃を緩衝する。このとき、接触センサ16が障害物を検知して出力し、それによって制御部10は障害物Qを回避するよう左右一対の駆動輪6を制御する。
なおこの際、段差センサ17の段差接触部17bの先端はバンパー1daよりも前方へ突出していないため、段差センサ17の段差接触部17bは障害物Qに衝突しない。そのため、段差センサ17は出力しない。
【0037】
図1図5図7(A)、(B)および(C)に示すように、前記構成を備えた自走式掃除機Aは、前方Y1への走行中に絨毯や敷居などの、バンパー1daの高さよりも低い段差S(乗り越え可能な段差S)に接近し、段差センサ17の段差接触部17bが段差Sに衝突した場合、付勢部材17cの付勢力に抗して段差接触部17bが後方Y2へ移動する。このとき、段差接触部17bにてセンサ本体(リミットスイッチ)17dが押圧されることにより段差Sが検知され、センサ本体17dが出力する(図7(B)参照)。
【0038】
段差接触部17bが段差Sに衝突したとき、バンパー1daの操作力が軽く設定されていると、筐体1に伝わる衝撃力にもよるが、バンパー1daが作動して接触センサ16が出力する場合と、バンパー1daが作動せず接触センサ16が出力しない場合とが想定される。
段差接触部17bが段差Sに衝突したときにバンパー1daが作動せず接触センサ16が出力しない場合、制御部10は左右一対の駆動輪6の前進を継続するよう制御する。それによって図7(B)および(C)に示すように、段差接触部17bはその摺接傾斜面17baを段差Sの角部に摺接させながら段差Sを乗り越え、その後、左右一対の駆動輪6および後輪8が段差Sを乗り越える。
【0039】
段差接触部17bが段差Sに衝突したときにバンパー1daが作動して接触センサ16が出力する場合、制御部10は、段差センサ17が出力を維持する間、段差センサ17の出力開始時から所定時間未満(例えば、0.5~1秒未満)の間で接触センサ16が出力したときは、筐体1が前進するように左右一対の駆動輪6を制御する。つまりこの場合は、制御部10は、段差S付近にバンパー1daに接触するような障害物がないと判断(接触センサ16の出力を無効と判断)して筐体1の前進を継続させて段差Sを乗り越えるよう左右一対の駆動輪6を制御する。なおこのとき、段差接触部17bが段差Sに衝突したときの衝撃力によってバンパー1daが作動したとしても、バンパー1daは前記所定時間未満内に初期位置に戻り、かつ、接触センサ16の出力が停止する。
【0040】
また、段差接触部17bが段差Sに衝突したときにバンパー1daが作動して接触センサ16が出力する場合、制御部10は、段差センサ17が出力を維持する間、段差センサ17の出力開始時から所定時間以上(例えば、1秒以上)の間で接触センサ16が出力したときは、筐体1が後退するように左右一対の駆動輪6を制御する。つまりこの場合は、制御部10は、段差S付近にバンパー1daに接触するような障害物があると判断(接触センサ16の出力を有効と判断)して筐体1を後退させて段差Sを回避させるよう左右一対の駆動輪6を制御する。なお、このような状況は、例えば、段差Sの上にある障害物にバンパー1daが衝突し、それとほぼ同時に段差Sに段差接触部17bが衝突載した場合が想定される。
【0041】
(第2実施形態)
図8は第2実施形態の自走式掃除機を示す正面図であり、図9は第2実施形態の自走式掃除機における段差検知部の左側断面図である。なお、図8および図9において、図1図4および図7(A)~(C)中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
図8および図9に示すように、第2実施形態の自走式掃除機Bは、段差センサ(段差検知部)117の構成が第1実施形態とは異なる以外は、第1実施形態と概ね同様である。以下、第2実施形態における第1実施形態とは異なる点を主に説明する。
【0042】
第2実施形態の自走式掃除機Bにおいて、段差センサ117は、筐体1の前部の傾斜面1e付近に設けられている。
この段差センサ117は、段差Sを撮影可能な撮像部117aと、筐体1の前部における傾斜面1eと同一面内に配置された透明カバー117bとを有する。
撮像部117aとしては、例えば、CCDカメラやCMOSカメラ等の小型カメラを用いることができる。
透明カバー117bとしては、例えば、段差Sへの衝突にも耐えることができる透明ガラスまたは透明プラスチックを用いることができる。
【0043】
第2実施形態の場合、撮像部117aおよび透明カバー117bは、ケース117c内に収納されている。このケース117cは、有底筒体の開口部を斜めに切断した形状のものである。
透明カバー117bは、ケース117cの斜めに切断された開口部に嵌め込まれて固定されている。
【0044】
この自走式掃除機Bによれば、段差センサ117の撮像部117aにて前進方向の床面F付近を撮影してその画像データを制御部10へ出力することができる。この場合、例えば次のような走行制御を行うことができる。
制御部10によって、画像データと予め記憶された判定用データとが比較され、画像データが段差Sを撮影した画像データであるか否か判別される。
【0045】
画像データが段差Sを撮影した画像データであると判定された場合、段差センサ117にて段差Sが検知されたこととなり、第1実施形態と同様の走行制御が行われる。
すなわち、制御部10は、段差センサ117が段差Sを検知する間、段差センサ117の検知開始時から所定時間未満(例えば、0.5~1秒未満)の間で接触センサ16(図5参照)が出力したときは、筐体1が前進するように左右一対の駆動輪6を制御する。つまりこの場合は、制御部10は、段差S付近にバンパー1daに接触するような障害物がないと判断(接触センサ16の出力を無効と判断)して筐体1の前進を継続させて段差Sを乗り越えるよう左右一対の駆動輪6を制御する。
【0046】
また、制御部10は、段差センサ117が段差Sを検知する間、段差センサ117の検知開始時から所定時間以上(例えば、1秒以上)の間で接触センサ16(図5参照)が出力したときは、筐体1が後退するように左右一対の駆動輪6を制御する。つまりこの場合は、制御部10は、段差S付近にバンパー1daに接触するような障害物があると判断(接触センサ16の出力を有効と判断)して筐体1を後退させて段差Sを回避させるよう左右一対の駆動輪6を制御する。
【0047】
また、制御部10は、段差センサ117が段差Sを検知している間に接触センサ16が出力していないときは、前進方向に段差Sがあるが障害物はないと判断して段差Sを乗り越えるよう左右一対の駆動輪6を制御する。
また、制御部10は、段差センサ117が段差Sを検知しない間に接触センサ16が出力したときは、前進方向に障害物があると判断して回避するよう左右一対の駆動輪6を制御する。
【0048】
(第3実施形態)
第1実施形態では、筐体1の前部に1つの段差センサ17が設けられた自走式掃除機Aを例示したが、段差センサ17は複数設けられてもよい。例えば、図2に示す段差センサ17の左右両側にも同様の構成の段差センサを設けてもよい。
【0049】
(第4実施形態)
第1実施形態では、筐体1の前部に1つの段差センサ117が設けられた自走式掃除機Bを例示したが、段差センサ117は複数設けられてもよい。例えば、図8に示す段差センサ117の左右両側にも同様の構成の段差センサを設けてもよい。
【0050】
(まとめ)
本発明の自走式電子機器は、筐体と、前記筐体を支持して床面を走行する電動式の駆動輪と、前記筐体の前進方向側の前部に設けられて床面上の障害物を接触によって検知するバンパーを有する障害物検知部と、前記筐体の前記前部に設けられて床面上に隆起する段差を検知する段差検知部と、前記障害物検知部および前記段差検知部の出力に基づいて前記駆動輪を制御する制御部とを備える。
この構成によれば、段差検知部によって床面上に隆起する段差(例えば、絨毯、敷居など)を検知することができる。そのため、段差検知部によって段差を検知した時、障害物検知部が出力しない場合は自走式電子機器を前進させて段差を乗り越えさせることは無論のこと、筐体の前部が乗り越え可能な段差と衝突して障害物検知部が作動しても無効と判断し、自走式電子機器が段差乗り越えるよう前進させることが可能となる。この結果、走行性能に優れた自走式電子機器を得ることができる。
また、自走式電子機器の障害物への衝突と乗り越え可能な段差への衝突を区別することができるため、障害物検知部の検知精度を高めることが可能となる。そのため、障害物検知部の検知精度を高めることができ(バンパーの操作力を軽く設定することができ)、例えば、自走式電子機器および障害物(壁、家具、置物等)への傷付き、置物(例えば、花瓶)を倒して破損させる、蓋の開いたペットボトルまたはコップを倒して中の飲み物を床面上に溢すといった事態を抑制することができる。
【0051】
本発明の自走式電子機器は、次のように構成されてもよく、それらが適宜組み合わされてもよい。
【0052】
・前記制御部は、前記段差検知部が出力を維持する間、前記段差検知部の出力開始時から所定時間未満の間で前記障害物検知部が出力したときは前記筐体が前進するように前記駆動輪を制御し、前記段差検知部の出力開始時から所定時間以上の間で前記障害物検知部が出力したときは前記筐体が後退するように前記駆動輪を制御するものであってもよい。
この構成によれば、次のような走行制御を行うことができる。
段差検知部が出力を維持する間、段差検知部の出力開始時から所定時間未満の間で障害物検知部が出力したときは、制御部は、段差付近にバンパーに接触するような障害物がないと判断(前記障害物検知部の出力を無効と判断)して筐体が前進するように駆動輪を制御することができる。
また、段差検知部が出力を維持する間、段差検知部の出力開始時から所定時間以上の間で障害物検知部が出力したときは、制御部は、段差付近にバンパー1daに接触するような障害物があると判断(接触センサの出力を有効と判断)して筐体が後退するように駆動輪を制御することができる。
【0053】
・前記段差検知部は、前後方向へ移動可能かつ段差と摺接可能なように前記筐体の前記前部における前記障害物検知部よりも下方位置に設けられた段差接触部と、前記段差接触部を前方へ付勢する付勢部材と、前記付勢部材の付勢力に抗して後方へ移動した前記段差接触部を検知して出力するセンサ本体とを備え、
前記段差接触部は、前記バンパーよりも前方へ突出しないよう前記筐体の前記前部に設けられているものであってもよい。
この構成によれば、段差を機械的に検知する段差検知部を構成することができる。また、バンパーよりも前方へ突出しないよう筐体の前部に段差接触部を設けることにより、バンパーが障害物に衝突したとき、段差接触部が障害物に衝突して作動すること(段差の誤検知)を抑制することができる。
【0054】
・前記筐体は、前記前部における前記障害物検知部よりも下方位置に後方へ向かうにつれて床面側へ傾斜する傾斜面を有しており、
前記段差接触部は、段差と摺接可能なように後方へ向かうにつれて床面側へ傾斜する摺接傾斜面を有しており、前記段差接触部が前方へ移動したときに前記摺接傾斜面が前記傾斜面よりも前方位置となり、かつ、前記段差接触部が後方へ移動したときに前記摺接傾斜面が前記傾斜面と同一面内に配置されるように構成されたものであってもよい。
この構成によれば、自走式電子機器が段差をスムーズに乗り越えることができる。
【0055】
・前記段差検知部は、段差を撮影可能な撮像部を有するものであってもよい。
この構成によれば、段差を光学的に検知する段差検知部を構成することができる。
【0056】
・前記筐体は、前記前部における前記障害物検知部よりも下方位置に後方へ向かうにつれて床面側へ傾斜する傾斜面を有しており、
前記段差検知部は、前記傾斜面と同一面内に配置された透明カバーをさらに有するものであってもよい。
この構成によれば、自走式電子機器が段差をスムーズに乗り越えることができる。
【0057】
・前記筐体に搭載されて床面の塵埃を吸引する電動式の掃除機器をさらに備えたものであってもよい。
この構成によれば、掃除性能を備えた自走式電子機器を得ることができる。
【0058】
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1 筐体
1da バンパー(障害物検知部)
1e 傾斜面
6 駆動輪
10 制御部
16 接触センサ(障害物検知部)
17、117 段差検知部
17b 段差接触部
17c 付勢部材
17d センサ本体
117a 撮像部
117b 透明カバー
17ba 摺接傾斜面
A、B 自走式掃除機(自走式電子機器)
F 床面
Q 障害物
S 段差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9