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特許7398434試料と細胞外氷との直接接触を防ぐのに有効な凍結保存装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】試料と細胞外氷との直接接触を防ぐのに有効な凍結保存装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20231207BHJP
   C12N 1/04 20060101ALI20231207BHJP
   C12N 5/00 20060101ALN20231207BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
C12N1/04
C12N5/00
【請求項の数】 70
(21)【出願番号】P 2021510751
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019048986
(87)【国際公開番号】W WO2020047369
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】62/724,959
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504238378
【氏名又は名称】ザ キュレイターズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミズーリ
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ハン,シゥ
(72)【発明者】
【氏名】コウレン,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】クリッツァー,ジョン,ケイ.
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-161723(JP,A)
【文献】特表2018-511315(JP,A)
【文献】特表2011-528907(JP,A)
【文献】特開2016-010359(JP,A)
【文献】特表2011-505793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12N 1/04
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を極低温で保管するシステムであって、
前記試料を凍結保存中の機械的損傷から保護するための少なくとも1つの凍結保護保管装置であって、前記少なくとも1つの凍結保護保管装置は、
内部キャビティを形成するハウジングであって、前記ハウジングは、凍結可能媒体を前記内部キャビティに収容するように構成されているハウジングを含み、
前記ハウジングは半透過性膜を含み、前記半透過性膜は、1.0ナノメートル(nm)から100nmの範囲の細孔径を有する細孔を含む多孔質固体層であり、
前記装置は、外側容器内で氷晶が生成され、そして前記膜を通過して、前記内部キャビティ内で氷晶が生成されることを可能とし、
前記膜は、前記膜の平均細孔径より有意に大きい氷晶に対して不透過性であることによって、そのような氷晶が前記ハウジングの外側の領域から前記内部キャビティに入ることを全て阻止し、それによって、前記ハウジングの前記内部キャビティの前記凍結可能媒体中で生成される前記氷晶の結晶サイズが、前記ハウジングの外側及び前記外側容器内の前記凍結可能媒体中で生成される前記氷晶より小さくなり、前記多孔質固体層は、水及び液体状態の物質を透過させる一方、前記膜の細孔径より大きい氷晶が前記膜を通り抜けることを阻止し、前記氷晶は、前記装置が極低温に曝されたときに前記ハウジングの外側及び前記外側容器内の前記凍結保存における凝固によって生成され、
第1の開口部は、前記ハウジングの第1の縦方向端部に形成され、前記膜は、前記ハウジングに形成された第2の開口部の上に配置されている、
前記少なくとも1つの凍結保護保管装置と、
前記ハウジング及び前記凍結可能媒体を保持するための外側容器と、
前記ハウジングの前記内部キャビティ内、及び前記ハウジングの外側の前記外側容器内で使用するための前記凍結可能媒体と、
を含むシステム。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記第1の開口部を通して前記試料を前記内部キャビティに収容するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記膜が取り付けられて前記内部キャビティが画定される浮揚性支持物であり、前記浮揚性支持物の少なくとも一部分が前記ハウジングの外側の前記凍結可能媒体に沈まないで、前記膜が前記ハウジングの外側の前記凍結可能媒体に沈むことが可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ハウジングは、全体が前記膜から形成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記多孔質固体層は、2nmから10nmの範囲の細孔径を有する細孔を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記膜は天然ポリマー又は合成ポリマーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記膜は合成ポリマーを含み、前記合成ポリマーは、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、エチレンビニルアルコールコポリマー、又はこれらの任意の組み合わせ又は化学的誘導体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記膜はセルロース物質を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記セルロース物質は、再生セルロース、変性セルロース、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、又はこれらの任意の組み合わせ又は化学的誘導体を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記膜は、変性セルロースで作られた透析膜である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記膜は、水、有機且つ/又は無機の液体溶剤、又はこれらの任意の組み合わせに対して透過性である、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記膜は、前記第2の開口部を覆う為に選択的にマウントされるように構成された分離可能膜である、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記凍結可能媒体は、凍結保護物質が添加剤として懸濁している凍結保護媒体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記ハウジングは、前記膜が前記第2の開口部を覆う為に前記ハウジングにマウントされる凹部を含み、前記装置は支持リングを含み、前記支持リングは、前記支持リングが前記ハウジングに取り付けられた場合に前記膜を第2の開口部の上に固定する為に、前記ハウジングに選択的に取り付けられるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記支持リングは、前記支持リングを貫通するように形成された穴を有する外側支持部材を含み、それによって、前記膜は、前記支持リングが前記ハウジングにマウントされた場合に、前記支持リングに形成された前記穴を通して、前記ハウジングの外側の前記凍結可能媒体に曝される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記ハウジングは、前記支持リングを前記ハウジングに固定する為に前記支持リングとロック係合する少なくとも1つのロッキングタブを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1の開口部は、前記内部キャビティに前記試料を入れることが可能なように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記ハウジングに固定されて前記第1の開口部を閉じるように構成されているカバーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記カバーは、前記カバーの外周部に形成された少なくとも1つのベントを含むことにより、前記カバーが前記ハウジングに固定されたときに前記内部キャビティ内の前記凍結可能媒体が前記少なくとも1つのベントを通り抜けて流れることを可能にする、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記カバーは、凸形状を有する内側表面を含み、これによって、前記カバーは、前記カバーの中心部が前記カバーの外周部よりも前記内部キャビティの中に突出している、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記ハウジングはほぼ円筒形状であり、断面が円形である、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記凍結可能媒体は、25℃で液体であり、-20℃で固体である、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記凍結可能媒体は、親水性且つ非毒性の高分子と水性液体とを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記凍結可能媒体は凍結保護剤を含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記凍結保護剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール、プロパンジオール、スクロース、グルコース、デキストラン及び他の多糖類、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコール及び他のポリマー、他の非浸透性凍結保護剤(コンドロイチン硫酸塩及びラクトビオン酸を含み、これらに限定されない)、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記親水性且つ非毒性の高分子はポリマーである、請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
前記ポリマーは、水性液体に溶けると球形の3次元構造を形成する、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記水性液体は、細胞培地、栄養培地、塩類、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項29】
前記水性液体は、血清、ウシ胎仔血清(FBS)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、フラッシングホールディングメディア(FHM)、リン酸緩衝血清(PBS)、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)、ロズウェルパーク記念研究所培地(RPMI)、BF5培地、EX-CELL培地、リソジェニーブロス(LB)培地、CaCl2水溶液、NaCl水溶液、KCl水溶液、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項30】
前記凍結可能媒体中の前記ポリマーの濃度が5%(w/v)超、10%(w/v)超、20%(w/v)超、又は50%(w/v)超である、請求項26に記載のシステム。
【請求項31】
前記凍結可能媒体中の前記凍結保護剤の濃度が、前記凍結可能媒体中の前記ポリマーの前記濃度の20%以上、50%以上、75%以上、又は100%以上である、請求項26に記載のシステム。
【請求項32】
前記凍結可能媒体は、10%(w/v)のフィコール、5%(w/v)のDMSO、2%(w/v)のコンドロイチン硫酸塩、及び1%(w/v)のデキストラン40を含有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項33】
フィコールは、スクロース及びエピクロロヒドリンの共重合によって生成される多糖類である、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記ポリマーは、親水性多糖類、重合シクロデキストリン又は重合糖類、球状タンパク質、球状タンパク質のオリゴ糖鎖を付加することによって生成される球状糖タンパク質、他の、球状タンパク質の誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項26に記載のシステム。
【請求項35】
前記ポリマーは親水性多糖類である、請求項26に記載のシステム。
【請求項36】
前記多糖類は、スクロース及びエピクロロヒドリンの共重合によって生成される、請求項33に記載のシステム。
【請求項37】
前記凍結可能媒体は、前記外側容器と前記少なくとも1つの凍結保護保管装置との間の空間の一部又は全体を満たし、前記凍結可能媒体は、少なくとも前記膜の表面を前記内部キャビティから離れる方向に覆うのに十分な量で用意される、請求項1に記載のシステム。
【請求項38】
前記凍結保護保管装置の外側の前記凍結可能媒体の組成が、前記凍結保護保管装置の前記内部キャビティ内の前記凍結可能媒体の組成と異なっていても同じであってもよい、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
試料を、凍結中の損傷から保護する方法であって、
ハウジングであって、前記ハウジングの第1の縦方向端部に形成された第1の開口部を含み、且つ内部キャビティを形成する前記ハウジングを用意するステップであり、前記ハウジングは、前記ハウジングに形成された第2の開口部上に配置された半透過性膜を含み、前記半透過性膜は、1.0ナノメートル(nm)から100nmの範囲の細孔径を有する細孔を含む多孔質固体層である、前記ハウジングを用意する前記ステップと、
前記ハウジングの前記内部キャビティ内に前記試料と第1の凍結可能媒体とを用意するステップと、
前記ハウジングを、前記ハウジングの外側の第2の凍結可能媒体中に置くステップであって、前記ハウジングは一部又は全体が前記第2の凍結可能媒体に沈められ、前記第2の凍結可能媒体は、前記第1の凍結可能媒体と同じであっても異なっていてもよく、前記第2の凍結可能媒体は、外側容器内に収容される、前記置くステップと、
前記外側容器内の前記第2の凍結可能媒体を凍結温度に曝すステップであって、前記ハウジングの外側の、前記第2の凍結可能媒体中に第1のサイズの氷晶が生成される、前記曝すステップと、を含み、
前記第2の凍結可能媒体中の前記第1のサイズの前記氷晶の成長が前記膜によって止められ、前記膜の細孔径より小さい第2のサイズの氷晶だけが、前記膜を通り抜けて、前記ハウジングの前記内部キャビティ内の前記第1の凍結可能媒体中での氷生成をもたらすことが可能であり、それによって、前記ハウジングの外側の前記第2の凍結可能媒体中で生成される氷晶より小さいサイズの氷晶が前記ハウジング内に生成される、
方法。
【請求項40】
前記凍結は極低温凍結を含み、前記凍結温度は極低温を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記凍結は非極低温凍結を含み、前記凍結温度は非極低温を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記試料及び第1の凍結可能媒体は、天然又は従来式の媒体及び/又は溶液中に細胞懸濁物又は生物学的組織を含み、前記第1の凍結可能媒体は凍結保護剤を含まない、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ハウジングは、前記第1の開口部を通して前記試料を前記内部キャビティに収容するように構成されている、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記ハウジングは、前記膜が取り付けられて前記内部キャビティが画定される浮揚性支持物であり、前記浮揚性支持物の少なくとも一部分が前記ハウジングの外側の前記凍結可能媒体に沈まないで、前記膜が前記ハウジングの外側の前記凍結可能媒体に沈むことが可能である、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記第1及び/又は前記第2の凍結可能媒体は、親水性且つ非毒性の高分子と水性液体とを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記第1及び/又は前記第2の凍結可能媒体は凍結保護剤を含み、
前記第1の凍結可能媒体の温度が下がるにつれて、前記ハウジングの内側の前記第1の凍結可能媒体中の水が前記膜を通り抜けて、前記極低温凍結中の前記第1の凍結可能媒体中の前記凍結保護剤の濃度が上がる、
請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記水が前記膜を通り抜けて前記第1の凍結可能媒体から前記第2の凍結可能媒体に浸透することによって、前記第1の凍結可能媒体中の溶質の濃度が上がるか、且つ/又は前記第1の凍結可能媒体の凍結温度が下がって、前記第1の凍結可能媒体の過冷却が防止される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記第2の凍結可能媒体中で生成される前記氷晶は、前記第1の凍結可能媒体中で生成される氷晶よりも大きく、且つ、より高い温度で生成され、
前記膜は多孔質物質を含み、前記多孔質物質の細孔径は、前記第2の凍結可能媒体中で生成される前記氷晶の径より小さく、且つ/又は、
水を透過させる膜がないハウジングに前記試料を保管する場合に比べて相対的に前記試料の損傷が低減される、
請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記膜は、前記第2の開口部の上に配置されて、前記膜を通り抜ける流体連通を可能にする、請求項39に記載の方法。
【請求項50】
前記膜が前記第2の開口部の上で前記ハウジングに固定されるように、前記ハウジングに支持リングを取り付けるステップを含み、前記支持リングには、前記膜を通り抜ける、前記第1の凍結可能媒体と前記第2の凍結可能媒体との間の流体連通を可能にする1つ以上の開口が形成されている、請求項39に記載の方法。
【請求項51】
前記ハウジングは凍結保護保管装置の一部である、請求項39に記載の方法。
【請求項52】
前記第2の凍結可能媒体を収容した外側容器を用意してから、前記第2の凍結可能媒体の温度を前記極低温に曝すステップを含み、前記第2の凍結可能媒体の温度を前記極低温に曝す前記ステップは、前記外側容器を極低温の周囲環境に置くステップを含み、前記ハウジングは前記外側容器内に置かれ、それによって、前記ハウジングは一部又は全体が前記第2の凍結可能媒体に沈められる、請求項39に記載の方法。
【請求項53】
前記外側容器はクライオバイアルを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記試料及び前記第1の凍結可能媒体は、前記第1の開口部から前記内部キャビティに入れられる、請求項39に記載の方法。
【請求項55】
前記第1の開口部の上にカバーを固定するステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項56】
前記カバーが前記第1の開口部の上に固定されると、前記内部キャビティ内の余分な第1の凍結可能流体が全て前記内部キャビティから押し退けられ、それによって、前記カバーが前記第1の開口部の上に固定されると、前記内部キャビティは空気がなくなる、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記試料は、前記第1の凍結可能媒体中に懸濁している細胞又は少なくとも1つの組織試料を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項58】
前記組織試料は、天然生物学的組織、人工組織、又はこれらの組み合わせを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記天然生物学的組織は、ヒト、動物、植物、又は微生物の複数の細胞組織、又はこれらの組み合わせを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記人工組織は、人工の、ヒト、動物、植物、又は微生物の複数の細胞組織、又はこれらの組み合わせを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記組織試料は、角膜組織又は網膜組織を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記細胞は、1つ以上の真核細胞、1つ以上の原核細胞、又はこれらの組み合わせを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
前記1つ以上の真核細胞は、少なくとも1つの哺乳類細胞を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記少なくとも1つの哺乳類細胞は、1つ以上のマウス細胞、1つ以上のブタ細胞、1つ以上のヒト細胞、又はこれらの組み合わせを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記少なくとも1つの哺乳類細胞は、1つ以上の幹細胞、1つ以上の体細胞、1つ以上の生殖細胞、又はこれらの組み合わせを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記1つ以上の原核細胞は、少なくとも1つのバクテリア細胞、少なくとも1つの古細菌細胞、又はこれらの組み合わせを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
前記凍結温度は-273℃から0℃まで(端値を含む)である、請求項39に記載の方法。
【請求項68】
前記凍結温度は-196℃から-20℃まで(端値を含む)である、請求項39に記載の方法。
【請求項69】
前記凍結温度は-100℃から-40℃まで(端値を含む)である、請求項39に記載の方法。
【請求項70】
前記凍結温度は-85℃から-65℃まで(端値を含む)である、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月30日に出願された米国特許仮出願第62/724,959号の優先権及び利益を主張するものであり、その開示内容は参照により完全な形で本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、低温生物学、凍結保存、氷生成制御技術、並びに生物学的試料及び臨床試料の保管の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
凍結保存は、生物学的物質が非常に低い温度(典型的には約-80~-196℃)で(例えば、機械式低温冷凍庫又は液体窒素極低温冷凍庫又はタンクで)保管されることを可能にする技術である。凍結保存は、そのような生物学的物質を、その機能を劣化させることなく(又はほとんど劣化させることなく)比較的長期間にわたって(場合によっては無期限に)保管するものとして知られている。生物医学研究及び臨床応用を進める為には凍結保存の有効性が極めて重要であるにもかかわらず、従来の極低温保管及び凍結保存の方法は、移植、再生医療、及びオーダーメード医療にとって非常に貴重な数多くの細胞型及び組織型の生存率を低下させるものであった。
【0004】
従来式の極低温保管の後に生存率が低下し、機能が損なわれてしまう細胞型及び組織型は数多くあるが、中でも典型的な例として、角膜がある。世界中で毎年約10万件の角膜移植手術が行われるが、潜在的には1000万人の患者がいる。角膜組織が約2~8℃で保管されるハイポサーミア(冷却法)は、角膜組織に一般的に適用される保管方法であるが、そのような保存方法は、角膜組織が損傷して移植に適さなくなるまでの2週間未満の有効保管を可能にするに過ぎない。その為、現在、多くの途上国においては、文化的又は政策的な制約、並びに技術的な限界により、国内での角膜の提供や採集がごくわずかであることに加えて、これらの国々の患者にとって、要件を満たした角膜を先進国から調達することが極めて困難である。生合成角膜の移植は非常に有望なソリューションであり、その為には有効な長期組織保管が直ちに必要になるが、これは現時点では国際流通に利用できない。角膜組織は又、医療や基礎研究の用途においても非常に重要である。そのような医療及び/又は研究の用途では年間約30,000個の提供角膜が使用されている。品質管理された角膜組織は、入手できないか、多くの場合は高価で手が届かない。
【0005】
液体窒素中に凍結保存されたヒト角膜の移植医療の有効性は、近年の進歩がごく緩やかであり、内皮細胞の消失が約30%以上という事態に見舞われている。その結果、角膜の凍結保存は、何十年もの取り組みがあってさえ、幅広い支持を得ることができておらず、その理由は、本質的に多くの設備及び労力を必要とすること、コスト効率が悪いこと、並びに達成される臨床結果及び実験結果に大きなばらつきがあることである。同様に、他の比較的複雑な組織型、例えば、血管組織や卵巣組織等についても、そのような組織型が重病の治療や関連の生物医学技術の開発に非常に重要であるにもかかわらず、実際に利用できる凍結保存方法が存在しない。
【0006】
保管温度に到達させる為に従来の凍結保存技術で広く採用されている一般的な冷却方法が2つあり、それらは非平衡冷却法(ガラス化)及び平衡冷却法(緩慢凍結)である。
【0007】
非平衡冷却法の場合は、生物学的物質(例えば、細胞及び/又は組織試料であってよい)が、典型的には、非常に高濃度(例えば、典型的には体積で40~60%)の細胞膜浸透性凍結保護剤(一般に小有機分子、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、グリセロール、及びプロパンジオール)とともにロードされ、その後、生物学的物質を液体窒素又は他の極低温液体又は混合物に直接突っ込むことによって高冷却速度(例えば、102~104K/分)で冷却されて、氷晶を形成することなく(即ち、ガラス化によって)生物学的物質のアモルファス固体状態が達成される。非平衡冷却法は、高濃度の凍結保護剤による深刻な浸透性の損傷及び毒性を細胞にもたらすばかりか、細胞及び組織に凍結保護剤を投入し、細胞及び組織から凍結保護剤を取り除く手順が複雑であり、且つ時間がかかる。更に別の重大な技術的問題が、生物学的物質の失透によって発生する。例えば、ガラス化された試料が極低温ではない(例えば、-80℃より高い)温度の環境に移されて保管されると、ガラス化試料内の温度が失透温度より高くなったときに試料内で氷晶化が発生して、試料に深刻な機械的損傷が引き起こされることになる。
【0008】
従来の平衡冷却法(緩慢凍結法)の場合、必要な手順は一般に、比較的低濃度(例えば、典型的には10%以下)の凍結保護剤を冷却前の生物学的物質(例えば、細胞)に加えるステップと、細胞懸濁液の凝固点又はそれより数度低い温度で生物学的物質の1つ以上の試料を散布し、それらの細胞を、細胞が保管される保管温度まで冷却するステップと、細胞を温めるステップと、細胞から凍結保護剤を取り除くステップと、を含む。凍結保存後の細胞の生存率を向上させる為には、凍結過程に起因する細胞の損傷を減らしていくことが極めて重要である。凍結中は、外部(例えば、組織又は細胞の外側)の凍結保存媒体中に氷が形成され、細胞外氷晶に関連付けられる機械的応力が、細胞の損傷、及び組織の致死的な機械的損傷を引き起こすことが示されている。緩慢凍結中の単離細胞の損傷は、細胞規模での氷のせん断力又は圧縮力に起因し、多くの細胞型は、ある程度まではこれらの力に耐えられる。しかしながら、組織の場合は、組織と成長する氷前面との直接接触によって、せん断力及び圧縮力の両方によりマクロ規模の損傷が引き起こされ、組織の隙間空間、特に組織の微小構造に比較的大きな氷晶が入り込んで、細胞消失が引き起こされるだけでなく、構造の変形によって組織の機能性も失われる。
【0009】
本発明の装置以前には、緩慢凍結処置に起因する組織の機械的損傷を防ぐことに利用できる装置又は有効な物理的アプローチは存在せず、ガラス化は、組織の凍結保存に利用される一般的な方法である。
【0010】
生物学的細胞及び組織の短期保管(典型的には1週間未満)における数多くの実際の応用では、試料は、凍結保護剤がない状態でハイポサーミア媒体によって処理され、室温より低いがハイポサーミア媒体の凝固点(約0℃)より高い温度(例えば、2~8℃)で冷却される。保管温度を0℃より低い値まで更に下げることにより保管期間を延ばすことが可能であるが、凍結保護剤がない状態でハイポサーミア媒体の凝固点を下回ると氷生成が避けられず、それによって細胞及び組織が致死的に損傷する。凍結保護剤を使用しない状態での氷生成によって引き起こされる細胞損傷を減じる装置或いは有効なアプローチは、現時点では知られていない。このような限界により、ハイポサーミアアプローチの有効性は短期間の場合に制限される。更に、そのような試料が保管されるハイポサーミア温度は凝固点に近く、通常の保管状態では、機械式冷蔵庫の通常運転に起因する温度変動が、予期せぬ氷生成による試料の偶発的破壊を引き起こす可能性がある。従って、試料のハイポサーミア保管中にそのような偶発的氷生成によって引き起こされる損傷を最小限に抑える為に利用できる装置又は有効なアプローチは知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本概要では、本開示対象の幾つかの実施形態を列挙し、多くの場合にはそれらの実施形態の変形形態及び置換形態を列挙する。本概要は、多様な実施形態の例示に過ぎない。所与の実施形態の1つ以上の代表的な特徴についての言及も同様に例示である。そのような実施形態は、典型的には、言及された1つ以上の特徴があってもなくてもよく、同様に、それらの特徴は本開示対象の他の実施形態に、本概要に列挙されているかどうかにかかわらず、適用されてよい。過剰な繰り返しを避ける為に、本概要では、そのような特徴の全ての可能な組み合わせを列挙又は示唆しているわけではない。
【0013】
第1の態様によれば、試料を、凍結保存中の機械的損傷から保護する凍結保護装置が提供され、本装置は、内部キャビティを形成するハウジングであって、ハウジングは、凍結可能媒体を内部キャビティに収容するように構成されており、ハウジングは半透過性膜を含み、膜は、膜の平均細孔径より有意に大きい氷晶に対して不透過性であることによって、そのような氷晶がハウジングの外側の領域から内部キャビティに入ることを全て阻止し、それによって、ハウジングの内側の媒体中で生成される氷晶の結晶サイズが、ハウジングの外側の凍結可能媒体中で生成される氷晶より小さくなる、ハウジングを含む。
【0014】
本装置の幾つかの実施形態では、ハウジングの第1の縦方向端部に第1の開口部が形成されており、膜は、ハウジングに形成された第2の開口部の上に配置されている。
【0015】
本装置の幾つかの実施形態では、ハウジングは、第1の開口部を通して試料を内部キャビティに収容するように構成されている。
【0016】
本装置の幾つかの実施形態では、ハウジングは、膜が取り付けられて内部キャビティが画定される浮揚性支持物であり、浮揚性支持物の少なくとも一部分がハウジングの外側の凍結可能媒体に沈まないで、膜がハウジングの外側の凍結可能媒体に沈むことが可能である。
【0017】
幾つかの実施形態では、試料は、その、天然又は従来式の媒体及び/又は溶液中に細胞懸濁物又は生物学的組織を含み、媒体及び/又は溶液自体は、場合によっては、凍結保護剤を全く含まなくてもよい。短期間の極低温保管であれば、そのような凍結保護剤がなくても、細胞及び/又は組織の消失を最小限又は無難に抑えて効果的でありうることが分かっている。
【0018】
本装置の幾つかの実施形態では、膜は多孔質固体層である。
【0019】
本装置の幾つかの実施形態では、多孔質固体層は、水及び液体状態の物質を透過させる一方、膜の細孔径より大きい氷晶が膜を通り抜けることを阻止し、氷晶は、本装置が極低温に曝されたときにハウジングの外側の凍結保存における凝固によって生成される。
【0020】
本装置の幾つかの実施形態では、多孔質固体層は細孔を含み、その細孔径は約0.1ナノメートル(nm)から約1ミリメートル(mm)、約0.5nmから約0.1mm、約1nmから約100nm、又は約2nmから約10nmの範囲である。
【0021】
本装置の幾つかの実施形態では、膜は天然ポリマー又は合成ポリマーを含む。
【0022】
本装置の幾つかの実施形態では、膜は合成ポリマーを含み、合成ポリマーは、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、エチレンビニルアルコールコポリマー、又はこれらの任意の組み合わせ又は化学的誘導体を含む。
【0023】
本装置の幾つかの実施形態では、膜はセルロース物質を含む。
【0024】
本装置の幾つかの実施形態では、セルロース物質は、再生セルロース、変性セルロース、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、又はこれらの任意の組み合わせ又は化学的誘導体を含む。
【0025】
本装置の幾つかの実施形態では、膜は、変性セルロースで作られた透析膜である。
【0026】
本装置の幾つかの実施形態では、膜は、水、有機且つ/又は無機の液体溶剤、又はこれらの任意の組み合わせに対して透過性である。
【0027】
本装置の幾つかの実施形態では、膜は、第2の開口部を覆う為に選択的にマウントされるように構成された分離可能膜である。
【0028】
本装置の幾つかの実施形態では、媒体は、凍結保護物質が添加剤として懸濁している凍結保護媒体を含む。
【0029】
本装置の幾つかの実施形態では、ハウジングは、膜が第2の開口部を覆う為にハウジングにマウントされる凹部を含み、本装置は支持リングを含み、支持リングは、支持リングがハウジングに取り付けられた場合に膜を第2の開口部の上に固定する為に、ハウジングに選択的に取り付けられるように構成されている。
【0030】
本装置の幾つかの実施形態では、支持リングは、支持リングを貫通するように形成された穴を有する外側支持部材を含み、それによって、膜は、支持リングがハウジングにマウントされた場合に、支持リングに形成された穴を通して、ハウジングの外側の媒体に曝される。
【0031】
本装置の幾つかの実施形態では、ハウジングは、支持リングをハウジングに固定する為に支持リングとロック係合する少なくとも1つのロッキングタブを含む。
【0032】
本装置の幾つかの実施形態では、第1の開口部は、内部キャビティに試料を入れることが可能なように構成されている。
【0033】
幾つかの実施形態では、本装置は、ハウジングに固定されて第1の開口部を閉じるように構成されているカバーを含む。
【0034】
本装置の幾つかの実施形態では、カバーは、カバーの外周部に形成された少なくとも1つのベントを含むことにより、カバーがハウジングに固定されたときに内部キャビティ内の媒体が少なくとも1つのベントを通り抜けて流れることを可能にする。
【0035】
本装置の幾つかの実施形態では、カバーは、凸形状を有する内側表面を含み、これによって、カバーは、カバーの中心部がカバーの外周部よりも内部キャビティの中に突出している。
【0036】
本装置の幾つかの実施形態では、ハウジングはほぼ円筒形状であり、断面が円形である。
【0037】
本装置の幾つかの実施形態では、凍結可能媒体は、25℃で液体であり、0℃より低温で固体である。
【0038】
別の態様では、試料を極低温で保管するシステムが提供され、本システムは、本明細書に開示の実施形態のいずれかに記載の、少なくとも1つの凍結保護保管装置と、1つ以上の凍結保護保管装置を収容するように構成された外側容器と、ハウジングの内部キャビティ内、及びハウジングの外側の外側容器内で使用される凍結可能媒体と、を含む。
【0039】
本システムの幾つかの実施形態では、凍結可能媒体は、親水性且つ非毒性の高分子と水性液体とを含む。本システムの幾つかのそのような実施形態では、凍結可能媒体は凍結保護剤を含む。
【0040】
本システムの幾つかの実施形態では、凍結保護剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール、プロパンジオール、スクロース、グルコース、デキストラン及び他の多糖類、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコール及び他のポリマー、他の非浸透性凍結保護剤(コンドロイチン硫酸塩及びラクトビオン酸を含み、これらに限定されない)、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0041】
本システムの幾つかの実施形態では、親水性且つ非毒性の高分子はポリマーである。
【0042】
本システムの幾つかの実施形態では、ポリマーは、水性液体に溶けるとほぼ球形の3次元構造を形成する。
【0043】
本システムの幾つかの実施形態では、水性液体は、細胞培地、栄養培地、塩類、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0044】
本システムの幾つかの実施形態では、水性液体は、血清、ウシ胎仔血清(FBS)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、フラッシングホールディングメディア(FHM)、リン酸緩衝血清(PBS)、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)、ロズウェルパーク記念研究所培地(RPMI)、BF5培地、EX-CELL培地、リソジェニーブロス(LB)培地、CaCl水溶液、NaCl水溶液、KCl水溶液、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0045】
本システムの幾つかの実施形態では、媒体中のポリマーの濃度が約5%(w/v)超、約10%(w/v)超、約20%(w/v)超、又は約50%(w/v)超である。
【0046】
本システムの幾つかの実施形態では、媒体中の凍結保護剤の濃度が、媒体中のポリマーの濃度の約20%以上、約50%以上、約75%以上、又は約100%以上である。
【0047】
本システムの幾つかの実施形態では、媒体は、約10%(w/v)のフィコール、約5%(w/v)のDMSO、約2%(w/v)のコンドロイチン硫酸塩、及び約1%(w/v)のデキストラン40を含有する。
【0048】
本システムの幾つかの実施形態では、フィコールは、スクロース及びエピクロロヒドリンの共重合によって生成される多糖類である。
【0049】
本システムの幾つかの実施形態では、ポリマーは、親水性多糖類、重合シクロデキストリン又は重合糖類、球状タンパク質、球状タンパク質のオリゴ糖鎖を付加することによって生成される球状糖タンパク質、他の、球状タンパク質の誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0050】
本システムの幾つかの実施形態では、ポリマーは親水性多糖類である。
【0051】
本システムの幾つかの実施形態では、多糖類は、スクロース及びエピクロロヒドリンの共重合によって生成される。
【0052】
本システムの幾つかの実施形態では、媒体は、外側容器と少なくとも1つの凍結保護保管装置との間の空間の一部又は全体を満たし、媒体は、少なくとも膜の表面を内部キャビティから離れる方向に覆うのに十分な量で用意される。
【0053】
本システムの幾つかの実施形態では、凍結保護保管装置の外側の媒体の組成が、凍結保護保管装置の内部キャビティ内の媒体の組成と異なっていても同じであってもよい。
【0054】
更に別の態様では、試料を、極低温凍結中の損傷から保護する方法が提供され、本方法は、内部キャビティを有するハウジングを用意するステップであって、ハウジングは半透過性膜を含む、ハウジングを用意する上記ステップと、ハウジングの内部キャビティ内に試料と第1の凍結可能媒体とを用意するステップと、ハウジングを、ハウジングの外側の第2の凍結可能媒体中に置くステップであって、ハウジングは一部又は全体が第2の凍結可能媒体に沈められ、第2の凍結可能媒体は、第1の凍結可能媒体と同じであっても異なっていてもよい、上記置くステップと、第2の凍結可能媒体を極低温に曝すステップであって、ハウジングの外側の、第2の凍結可能媒体中に第1のサイズの氷晶が生成される、上記曝すステップと、を含み、第2の凍結可能媒体中の第1のサイズの氷晶の成長が膜によって止められ、膜の細孔径より小さい第2のサイズの氷晶だけが、膜を通り抜けて、ハウジングの内部キャビティ内の第1の凍結可能媒体中での氷生成をもたらすことが可能であり、それによって、ハウジングの外側の第2の凍結可能媒体中で生成される氷晶より小さいサイズの氷晶がハウジング内に生成される。
【0055】
本方法の幾つかの実施形態では、ハウジングの第1の縦方向端部に第1の開口部が形成されており、膜は、ハウジングに形成された第2の開口部の上に配置されている。
【0056】
本方法の幾つかの実施形態では、ハウジングは、第1の開口部を通して試料を内部キャビティに収容するように構成されている。
【0057】
本方法の幾つかの実施形態では、ハウジングは、膜が取り付けられて内部キャビティが画定される浮揚性支持物であり、浮揚性支持物の少なくとも一部分がハウジングの外側の凍結可能媒体に沈まないで、膜がハウジングの外側の凍結可能媒体に沈むことが可能である。
【0058】
本方法の幾つかの実施形態では、第1及び/又は第2の凍結可能媒体は、親水性且つ非毒性の高分子と水性液体とを含む。
【0059】
本方法の幾つかの実施形態では、第1及び/又は第2の凍結可能媒体は更に凍結保護剤を含み、第1の凍結可能媒体の温度が下がるにつれて、チャンバの内側の第1の凍結可能媒体中の水が膜を通り抜けて、極低温凍結中の第1の凍結可能媒体中の凍結保護剤の濃度が上がる。
【0060】
本方法の幾つかの実施形態では、水が膜を通り抜けて第1の凍結可能媒体から第2の凍結可能媒体に浸透することによって、第1の凍結可能媒体中の溶質の濃度が上がるか、且つ/又は第1の凍結可能媒体の凍結温度が下がって、第1の凍結可能媒体の過冷却が防止される。
【0061】
本方法の幾つかの実施形態では、第2の凍結可能媒体中で生成される氷晶は、第1の凍結可能媒体中で生成される氷晶よりも大きく、且つ、より高い温度で生成され、膜は多孔質物質を含み、この多孔質物質の細孔径は、第2の凍結可能媒体中で生成される氷晶の径より小さく、且つ/又は、水を透過させる膜がないハウジングに試料を保管する場合に比べて相対的に試料の損傷が低減される。
【0062】
本方法の幾つかの実施形態では、膜は、第2の開口部の上に配置されて、膜を通り抜ける流体連通を可能にする。
【0063】
幾つかの実施形態では、本方法は、膜が第2の開口部の上でハウジングに固定されるように、ハウジングに支持リングを取り付けるステップを含み、支持リングには、膜を通り抜ける、第1の凍結可能媒体と第2の凍結可能媒体との間の流体連通を可能にする1つ以上の開口が形成されている。
【0064】
本方法の幾つかの実施形態では、ハウジングは凍結保護保管装置の一部である。
【0065】
幾つかの実施形態では、本方法は、第2の凍結可能媒体を収容した外側容器を用意してから、第2の凍結可能媒体の温度を前記極低温に曝すステップを含み、第2の凍結可能媒体の温度を極低温に曝す上記ステップは、外側容器を極低温の周囲環境に置くステップを含み、ハウジングは外側容器内に置かれ、それによって、ハウジングは一部又は全体が第2の凍結可能媒体に沈められる。
【0066】
本方法の幾つかの実施形態では、外側容器はクライオバイアルを含む。
【0067】
本方法の幾つかの実施形態では、試料及び第1の凍結可能媒体は、第1の開口部から内部チャンバに入れられる。
【0068】
幾つかの実施形態では、本方法は、第1の開口部の上にカバーを固定するステップを含む。
【0069】
本方法の幾つかの実施形態では、カバーが第1の開口部の上に固定されると、内部キャビティ内の余分な第1の凍結可能流体が全て内部キャビティから押し退けられ、それによって、カバーが第1の開口部の上に固定されると、内部キャビティはほぼ空気がなくなる。
【0070】
本方法の幾つかの実施形態では、試料は、第1の凍結可能媒体中に懸濁している細胞又は少なくとも1つの組織試料を含む。
【0071】
本方法の幾つかの実施形態では、組織試料は、天然生物学的組織、人工組織、又はこれらの組み合わせを含む。
【0072】
本方法の幾つかの実施形態では、天然生物学的組織は、ヒト、動物、植物、又は微生物の複数の細胞組織、又はこれらの組み合わせを含む。
【0073】
本方法の幾つかの実施形態では、人工組織は、人工の、ヒト、動物、植物、又は微生物の複数の細胞組織、又はこれらの組み合わせを含む。
【0074】
本方法の幾つかの実施形態では、組織試料は、角膜組織又は網膜組織を含む。
【0075】
本方法の幾つかの実施形態では、細胞は、1つ以上の真核細胞、1つ以上の原核細胞、又はこれらの組み合わせを含む。
【0076】
本方法の幾つかの実施形態では、1つ以上の真核細胞は、少なくとも1つの哺乳類細胞を含む。
【0077】
本方法の幾つかの実施形態では、少なくとも1つの哺乳類細胞は、1つ以上のマウス細胞、1つ以上のブタ細胞、1つ以上のヒト細胞、又はこれらの組み合わせを含む。
【0078】
本方法の幾つかの実施形態では、少なくとも1つの哺乳類細胞は、1つ以上の幹細胞、1つ以上の体細胞、1つ以上の生殖細胞、又はこれらの組み合わせを含む。
【0079】
本方法の幾つかの実施形態では、1つ以上の原核細胞は、少なくとも1つのバクテリア細胞、少なくとも1つの古細菌細胞、又はこれらの組み合わせを含む。
【0080】
本方法の幾つかの実施形態では、極低温は約-273℃から約0℃まで(端値を含む)である。
【0081】
本方法の幾つかの実施形態では、極低温は約-196℃から約-20℃まで(端値を含む)である。
【0082】
本方法の幾つかの実施形態では、極低温は約-100℃から約-40℃まで(端値を含む)である。
【0083】
本方法の幾つかの実施形態では、極低温は約-85℃から約-65℃まで(端値を含む)である。
【0084】
本開示は、半透過性膜を使用して試料を細胞外氷との直接接触から保護することによって細胞又は組織の凍結保存の有効性を高める装置、システム、及び方法に関する。本装置は又、組織凍結保存の臨床応用を促進する特別な特徴を有しており、そのような特徴として、1回だけ使用できる使い捨て式の設計を達成する任意選択の構造設計と、組織のロードと装置の気密封止とを改善する機械的設計とがある。
【0085】
本明細書では、凍結温度を-273℃から0℃の範囲の温度として定義している。
【0086】
幾つかの態様では、封止されたハウジングが、凍結可能媒体中に細胞又は組織の懸濁物を収容し、この凍結可能媒体は凍結保存媒体であってよい。ハウジングのサイズは、凍結可能媒体の体積に適合するように選択され、ハウジングの1つ以上の壁又は側面又はカバーが、凍結温度で半透過性であるような膜で作られ、或いはそのような膜に固定されるように構成される。
【0087】
幾つかの態様では、1つ以上のそのようなハウジングを保持する外側容器が用意され、そのようなハウジングは、外側容器内の別の凍結可能媒体に沈められる(この凍結可能媒体は、ハウジング内の凍結可能媒体と同じであっても異なっていてもよい凍結保護媒体であってもよい)。
【0088】
幾つかの態様では、膜は、ハウジングの内側の凍結可能媒体を、(例えば、外側容器内の)ハウジングの外側の凍結可能媒体から切り離す。
【0089】
幾つかの態様では、試料の極低温凍結中に、(例えば、容器内の)ハウジングの外側の凍結可能媒体中の氷生成によって、上記チャンバの外側にある溶質の濃度が徐々に上昇する。
【0090】
幾つかの態様では、試料の極低温凍結中に、ハウジングの外側の凍結可能媒体が凍結するにつれて、ハウジングの内側の凍結可能媒体の水分が半透過性膜を通してハウジングの外側の凍結可能媒体に移動して、膜の両側の化学ポテンシャルの均衡が保たれる。
【0091】
幾つかの態様では、試料の極低温凍結中に、ハウジングの内側の凍結可能媒体は、ハウジングの内側の凍結可能媒体の温度が十分に低くなって、(例えば、ハウジングの外側の膜の表面の)ハウジングの外側にある氷晶が膜を通り抜けることが可能になり、ハウジングの内側に氷晶核が生成され、ハウジングの内側に氷晶が生成されるまで、氷晶がないままであり、ハウジングの内側に生成される氷晶はチャンバの外側にある氷晶よりサイズが格段に小さい為、極低温凍結過程の間の氷晶の生成による、ハウジングの内側の試料(例えば、細胞又は組織)の機械的損傷が最小限に抑えられる。
【0092】
幾つかの態様では、ハウジングの外側にある氷晶が膜を通り抜けることが可能になる温度は、凍結可能媒体の凝固点より低いが、極低温保管温度(例えば、極低温凍結過程の間に凍結可能媒体が曝される周囲温度)より高い。
【0093】
幾つかの態様では、ハウジングのカバー及び/又は壁の1つが組み立て前のハウジングから切り離されると、試料をハウジング内にロードすることが可能になる。幾つかのそのような態様では、ハウジングのカバー及び/又は壁の1つが凸状面を有し、これは、試料のロード中、又はシステムの組み立て中にハウジング内の余分な凍結可能媒体をはじくか脇に押しやる。幾つかのそのような態様では、ハウジングのカバー及び/又は壁の1つにベントチャネルが設けられているか、且つ/又は形成されており、これは、余分な凍結可能媒体を解放することにより、膜を損傷したりハウジングの漏れを引き起こしたりする可能性があるハウジング内の圧力上昇を防ぐ。幾つかのそのような態様では、ベントはベントチャネルの形態であり、これが組み立て後にハウジングの壁で覆われることにより、ハウジングの気密封止が確実に行われ、気泡生成が防止される。
【0094】
幾つかの態様では、ハウジングの膜の下にX字形の支持リングが取り付けられる。幾つかのそのような態様では、支持リングは、最小限の機械的力で容易にハウジングから取り外すことが可能である。幾つかのそのような態様では、支持リングは1回だけ使用できる様式であり、その為、エンドユーザは、解凍処理後に試料をハウジングから取り出す為に、支持リングを取り外して、膜を取り外す必要がある。幾つかのそのような態様では、カバー、膜、及び支持リングのうちの1つ以上の組み付け後は、ハウジングを封止できなくなるようにハウジングを壊さない限り、ハウジングを開けることができない。
【0095】
幾つかの他の態様では、本明細書に開示の装置及び/又はシステム、又はこれらの1つ以上の部分が再利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1】試料(例えば、生物学的試料)を極低温で凍結保管する装置の一例示的実施形態の断面図である。
図2】試料(例えば、生物学的試料)を極低温で凍結保管する装置の等角図である。
図3A図2に示した装置の断面図である。
図3B図2に示した装置の分解図である。
図4】装置の内側と外側の、図2の膜のすぐそばの温度を経時測定した結果のグラフィカルユーザインタフェースプロットであり、極低温凍結中に装置内で生成された氷晶のサイズの減少を示す図である。
図5A】乃至
図5C】極低温凍結過程の間の幾つかの段階における、図2の装置の中での氷晶生成の進行を示す図である。
図6A】乃至
図6D】試料が中に置かれた図2の装置の断面図であり、極低温凍結過程の間の幾つかの段階における氷晶生成の進行を示す図である。
図6E】乃至
図6H】試料が中に置かれ、膜が省かれた図2の装置の断面図であり、極低温凍結過程の間の幾つかの段階における氷晶生成の進行を示す図である。
図7図2に示した装置で(但し分画分子量の値が異なる膜を利用して)極低温凍結された後に解凍されたヒト角膜の内皮の生存率を比較したグラフィカル表現である。
図8図7の、分画分子量の値が異なる膜を有する、図2に示した装置内で極低温凍結される前とされた後のヒト角膜の内皮の画像を示す図である。
図9図2の装置が外側容器内に配置された極低温保管システムの上面斜視図である。
図10図9のシステムの断面図である。
図11A】乃至
図11B】極低温凍結された後に解凍された、図9の装置の内側(図11A)と外側(図11B)の液体の生存率を示す、自動細胞計数器からの概略図である。
図12】装置内に有機試料が配置された、図9のシステムの上面斜視図である。
図13図12のシステムの断面図である。
図14】極低温凍結された後に解凍された、図12に示した有機試料の立体顕微鏡像の一例である。
図15】従来の極低温技術に従って極低温凍結された、図12に示した有機試料とほぼ同様の有機試料の立体顕微鏡像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0097】
以下では、本開示対象についてより詳細に説明する。そこでは本開示対象の全てではないが幾つかの実施形態について説明する。実際には、本開示対象は多様な形態で実施されてよく、本明細書に記載の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。
【0098】
明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明することだけを目的としており、本開示対象を限定するものではない。
【0099】
以下の用語は、当業者には十分に理解されるものと考えられるが、本開示対象の説明を容易にする為に以下の定義を明記する。
【0100】
本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、以下において別段の定義がない限り、当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有するものとする。本明細書において採用されている技術への参照は、当該技術分野において一般的に理解されているようにその技術を参照するものとし、これには、当業者には明らかであると考えられる、それらの技術のバリエーション、又は等価な技術の置換が含まれる。以下の用語は、当業者には十分に理解されるものと考えられるが、本開示対象の説明を容易にする為に以下の定義を明記する。
【0101】
本開示対象の説明では、当然のことながら、多数の技術及びステップが開示される。これらのそれぞれに固有の利点があり、それぞれは、他の開示技術のうちの1つ以上(場合によっては全て)との組み合わせで使用されてもよい。
【0102】
従って、明確さの為に、本明細書では、個々のステップのあらゆる可能な組み合わせを不必要に繰り返すことを行わない。しかしながら、本明細書及び特許請求項は、そのような組み合わせが完全に本開示及び特許請求項の範囲内であることを理解の上で読まれるべきである。
【0103】
本明細書に記載の全ての発行物、特許出願、特許、及び他の文献は、参照によって、その参照が提示された文及び/又は段落に関係する教示の為に完全な形で本明細書に組み込まれている。
【0104】
長く続いている特許法の慣習に従うと、「a」、「an」、及び「the」は、特許請求項を含む本出願において使用される場合には「1つ以上の」を意味する。従って、例えば、「細胞(a cell)」への参照は、複数のそのような細胞等を包含する。
【0105】
特に断らない限り、本明細書及び特許請求項において使用されている、成分、反応条件、その他の量を表す全ての数値は、あらゆる場合において「約(about)」という語句で修飾されるものと理解されたい。従って、反対のことが示されない限り、本明細書及び添付の特許請求項に記載された数値パラメータは、本開示対象により得られることが求められている所望の特性に応じて様々であってよい近似である。
【0106】
本明細書では、「約(about)」という語は、組成、質量、重量、温度、時間、体積、濃度、割合等の値又は量に言及した場合に、明示された量からの、実施形態によっては±20%、実施形態によっては±10%、実施形態によっては±5%、実施形態によっては±1%、実施形態によっては±0.5%、実施形態によっては±0.1%のばらつきを包含していて、そのようなばらつきが、本開示の方法の実施、又は本開示の組成の採用において適切なものであることを意味する。
【0107】
「含む(comprising)」という語は、「含む(including)」、「含む(containing)」、又は「を特徴とする(characterized by)」と同義であって、包含的又はオープンエンドであり、未記載の要素又は方法ステップの追加を排除しない。「含む(comprising)」は、指定された要素は必須であるが、他の要素が追加されても引き続き請求項の範囲内の構成を形成することが可能であることを意味する、請求項の言い回しで使用される専門用語である。
【0108】
本明細書では、「からなる(consisting of)」という語句は、請求項で指定されない要素、ステップ、又は成分を全て排除する。「からなる(consisting of)」という語句は、請求項のプリアンブルの直後ではなく要部の句中に現れた場合には、その句中に明記された要素のみを限定し、他の要素は請求項全体からは排除されない。
【0109】
本明細書では、「のみからなる(consisting essentially of)」という語句は、請求項の範囲を、指定された材料又はステップ、並びに請求対象の基本的且つ新規な特性に実質的に影響しない材料又はステップに限定する。
【0110】
「含む(comprising)」、「からなる(consisting of)」、及び「のみからなる(consisting essentially of)」という語句に関しては、これら3つの語句の1つが本明細書で使用される場合には、本開示対象及び請求対象は、それ以外の2つの語句のいずれかの使用を包含することが可能である。
【0111】
本明細書では、「及び/又は(and/or)」という用語は、エンティティのリストの文脈で使用された場合には、単独で、又は組み合わせで存在しているエンティティを参照する。従って、例えば、「A、B、C、及び/又はD(A, B, C, and/or D)」という語句は、A、B、C、及びDを個別に包含し、更に、A、B、C、及びDのあらゆる組み合わせ及び副組み合わせを包含する。
【0112】
本明細書では、「ほぼ(substantially)」という語は、組成、質量、重量、温度、時間、体積、濃度、割合等の値、アクティビティ、又は量に言及した場合に、明示された量からの、実施形態によっては±40%、実施形態によっては±30%、実施形態によっては±20%、実施形態によっては±10%、実施形態によっては±5%、実施形態によっては±1%、実施形態によっては±0.5%、実施形態によっては±0.1%のばらつきを包含していて、そのようなばらつきが、本開示の方法の実施、又は本開示の装置及びデバイスの採用において適切なものであることを意味する。例えば、培地又は環境が「ほぼ低酸素(substantially hypoxic)」であるのは、それが少なくとも60%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、並びに場合によっては少なくとも99%である場合である。
【0113】
「基礎培地(basal medium)」という用語は、本明細書では、他の成分を追加できる最小必須タイプの培地(例えば、ダルベッコ改変イーグル培地、ハムF-12、イーグル培地、RPMI、AR8等)を意味する。この用語は、特定用途向けに用意又は企図された培地であって、改変後は他の細胞型等に使用可能である培地を排除しない。
【0114】
「化合物(compound)」は、本明細書では、薬品、治療薬、調剤、小分子、又はこれらとして使用される為の候補、並びにこれらの組み合わせ及び混合物であると一般的に見なされる任意のタイプの物質又は薬剤を意味する。
【0115】
「検出する(detect)」という語とその文法的変化形の使用は、定量化を伴わない種の測定を意味するものとし、「測定する(determine)」又は「測定する(measure)」という語とその文法的変化形の使用は、定量化を伴う種の測定を意味するものとする。「検出する(detect)」及び「識別する(identify)」という用語は、本明細書では区別なく使用される。
【0116】
「成分(ingredient)」という用語は、化学的起源であれ生物学的起源であれ、細胞の増殖、生存、又は分化を維持又は促進する為に細胞培地で使用可能な任意の化合物を意味する。「成分(component)」、「栄養素(nutrient)」、「サプリメント(supplement)」、及び「成分(ingredient)」という用語は区別なく使用可能であり、これらは全て、そのような化合物を意味するものとする。細胞培地で使用される典型的且つ非限定的な成分として、アミノ酸、塩、金属、糖、脂質、核酸、ホルモン、ビタミン、脂肪酸、タンパク質等がある。具体的なニーズに応じて、細胞の培養をエクスビボで促進又は維持する他の成分が当業者によって選択されてよい。
【0117】
「抑制する(inhibit)」という用語は、本明細書では、「抑制する(inhibit)」という用語が使用される文脈に応じて、述べられた機能、レベル、活動、速度等を低下させたり遅らせたりする、化合物、薬剤、又は方法の能力を意味する。抑制は、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、更により好ましくは少なくとも50%であり、最も好ましくは、機能は少なくとも75%抑制される。「抑制する(inhibit)」という用語は、「低下させる(reduce)」及び「妨げる(block)」と区別なく使用される。
【0118】
「材料(material)」という用語は、本明細書では、合成材料及び天然材料(例えば、マトリックス成分)を意味する。「材料及び化合物(materials and compounds)」という用語は、本明細書では、とりわけ、材料、化合物、細胞、ペプチド、核酸、薬品、マトリックス成分、及び造影剤を意味する。
【0119】
「調節する(modulate)」という用語は、本明細書では、活動、機能、又はプロセスのレベルを変化させることを意味する。「調節する(modulate)」という用語は、活動、機能、又はプロセスを抑制することと刺激することの両方を包含する。「調節する(modulate)」という用語は、本明細書では「調節する(regulate)」という用語と区別なく使用される。
【0120】
「防ぐ(prevent)」という用語は、本明細書では、何かが起こるのを止めること、或いは、多かれ少なかれ起こりうる何かが起こらないように予防措置をとることを意味する。例えば、本開示対象の文脈では、「防止(prevention)」は、概して、凍結保存中の氷生成及び/又は組織/細胞損傷の可能性を減らす為にとられるアクションを意味する。
【0121】
「調節する(regulate)」という用語は、関心対象の機能又は活動を刺激したり抑制したりすることを意味する。
【0122】
「試料(sample)」は、本明細書では、被験者から採取された生物学的試料を意味し、これには正常組織試料、罹患組織試料、生検試料、血液、唾液、糞、精液、涙、尿等が含まれ、これらに限定されない。試料は、被験者から採取された、関心対象の細胞、組織、又は流体を含む他の任意の素材供給源であってもよい。
【0123】
「刺激する(stimulate)」という用語は、本明細書では、活動又は機能を誘導したり、そのレベルを対照値より高くなるように上げたりすることを意味する。刺激は、直接又は間接的なメカニズムにより行われてよい。一態様では、活動又は機能は、対照値に比べて少なくとも10%刺激され、より好ましくは少なくとも25%刺激され、更により好ましくは少なくとも50%刺激される。「刺激物(stimulator)」という用語は、本明細書では、それを適用することによって関心対象のプロセス又は機能が刺激される任意の組成物、化合物、又は薬剤を意味し、そのようなプロセス又は機能として、創傷治癒、血管形成、骨折治癒、骨芽細胞の生成及び機能、並びに破骨細胞の生成、分化、及び活動等があり、これらに限定されない。
【0124】
「組織(tissue)」は、(1)特定の機能を実施する為に合体した同様の細胞の群、(2)同様の構造及び機能を有する細胞の凝集体で構成される有機体の一部分、及び/又は(3)構造及び機能によって同様に特徴付けられた細胞の集団(筋組織や神経組織等)を意味する。
【0125】
本明細書の別の場所に記したように、氷前面が成長して組織を包み込んだときに氷と組織試料の外面とが接触すると、成長した氷前面の鋭い氷のデンドライトが組織表面の細胞を機械的に損傷する。結果として、表面に機能細胞層がある組織(例えば、内皮細胞層を有する角膜)は、このタイプの機械的損傷に対して脆弱である。そこで、本開示対象によれば、そのような凍結保存装置及び/又はシステムの中に半透過性膜を設けて、大きな氷のデンドライトを「フィルタリング」し、(例えば、先行技術の凍結保存装置、システム、及び方法において知られていた大きな氷のデンドライトの生成を引き起こさずに)小さい(微細な)結晶構造を有する氷晶が膜を通り抜けて成長することだけを可能にすることが有利である。そのような半透過性膜を内蔵することにより、組織試料の外側細胞層と、先行技術において知られていたような、氷前面に存在する鋭い氷のデンドライトとの直接接触によって引き起こされる機械的損傷を防ぐことが可能である。
【0126】
本開示対象によれば、凍結保存の凍結過程の間の氷成長バリアとして、半透過性膜(例えば、細胞プラズマ膜)が使用されてよい。例えば、細胞膜上のチャネルの細孔径は10-10mのオーダーであってよく、そのような径の細孔であれば、約-20℃の過冷却で氷晶が細孔を通り抜けて成長することだけが可能になる。この、細胞内液(例えば、凍結保存媒体)の過冷却により、細胞内液の溶質濃度が細胞外液の溶質濃度より低く保たれ、それによって、細胞内液と細胞外液との化学ポテンシャル差が駆動する形で細胞内液が膜を透過して細胞外液に混入する。この作用により、細胞内溶質濃度が上昇し、細胞内液の凝固点が更に下がり、より重要なことには、細胞内オルガネラと細胞外氷との直接接触が防止される。その結果、適正な冷却速度が選択されれば、細胞内液は、氷がない状態が保たれ、ガラス化される(即ち、凍結保存の凍結過程の完了時に形成される氷晶が極めて小さい(例えば、氷晶サイズが1~100ナノメートル(nm)))。そのような細胞膜を組織凍結保存に使用することにより、大きな氷晶と生物学的物質との直接接触が最小限に抑えられて、凍結保存される生物学的物質の機械的損傷が最小限に抑えられる。単離細胞の場合は、細胞膜に加えて、そのような膜の別の層が、細胞の表面上又は本体上の細胞微細構造を更に保護する(特に精子尾部や神経樹状突起の場合)。
【0127】
そこで、本開示対象は、生物学的物質(例えば、それぞれの凍結保存媒体中の組織又は細胞)を含む試料を緩慢凍結処置中の氷生成から切り離すことによって、大きな氷晶の生成による凍結損傷作用を最小限に抑える装置に関する。そのような装置の一例示的実施形態(全体で100)を図2~3Bに示す。本装置は、半透過性膜140を使用して、試料と成長する氷前面との直接接触を防ぎ、温度が十分低くなるまで、比較的大きな氷晶の成長を妨げる(膜140がない場合、それらの氷晶は膜140の占有エリアを通り抜けて成長することになる)。極低温凍結過程の間に、主に装置100のハウジング110の外側で氷生成が発生する。氷晶が生成されると、装置100のハウジング110の外側の極低温媒体中の溶質濃度が上昇する。膜140を挟んで(例えば、ハウジング100の内側と外側の極低温媒体の間で)化学ポテンシャルが不均衡になると、ハウジング110の内側の水が膜140を越えて、且つ/又は通り抜けてハウジング110の外側に透過する。このように水が膜140をまたいで透過することは、試料を収容した本装置が収容される外側区画(例えば、図9、10、12、及び13)の過冷却の防止にもなり、そのような防止がない場合には、過冷却作用によって即座に大きな氷晶が試料を直接取り囲んで生成されたり、試料の内側に生成されたりする可能性がある。水が膜140をまたいで透過することは、鋭い氷晶(例えば、デンドライト)が生成されて、そのような生物学的物質試料(例えば、角膜表面の角膜内皮)の外側表面の機能細胞に直接接触して損傷することの防止にもなる。
【0128】
本明細書の別の場所で様々な実施例を提示して詳述するが、装置100は、極低温凍結過程の間に大きな氷晶が膜140を通り抜けて成長するのを有効に防ぐことによって、装置100内の試料を、従来の極低温凍結過程の間に生成される成長する氷前面から効果的に切り離す。装置100は、試料の領域での、膜140を通り抜けて成長する大きな氷晶の生成を抑えることによって、組織凍結保存の有効性を大幅に高める。実施形態によっては、膜140は軟質の半透過性膜である。幾つかの実施形態では、膜140の表面積が、極低温で処理される試料の表面積とほぼ同じ大きさであるか、それより大きい。幾つかの実施形態では、膜140の表面積は、試料のうちの保護されるべき部分、例えば、組織のうちの大事な領域(例えば、角膜であってよい)の表面積とほぼ同じ大きさであるか、それより大きい。「半透過性」という用語は、膜140が、水に対しては透過性であるが、塩、イオン、何らかの大きな有機分子等に対しては不透過性であることを意味する。膜は、幾つかの実施形態では、小さな有機分子(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びエチレングリコール)に対しては透過性でも不透過性でもよい。幾つかの実施形態では、膜140は合成ポリマーを含み、合成ポリマーは、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、エチレンビニルアルコールコポリマー、又はこれらの任意の組み合わせ又は化学的誘導体を含む。幾つかの実施形態では、膜140はセルロース物質であり、これは、再生セルロース、変性セルロース、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、又はこれらの任意の組み合わせ又は化学的誘導体を含んでよい。幾つかの実施形態では、装置100は、試料(例えば、角膜組織を含む)の凍結保存の有効性を大幅に高める。
【0129】
図1に示した一実施形態によれば、本装置は、本明細書の別の場所に記載の半透過性膜140を含み、半透過性膜140は、膜140の内側にある流体310と膜140の外側にある流体310との間の氷バリアとして働く。試料10は、膜140で形成されたチャンバの中に置かれ、その後、チャンバの少なくとも一部分が凍結可能媒体(例えば、極低温又は非極低温の凍結温度で凍結する流体)の槽に沈められる。凍結可能媒体が凍結すると、十分小さい氷晶(膜140の細孔のサイズ(径)と同等以下のサイズ(径)を有する氷晶)だけが膜140を通り抜けて試料の表面の周囲で凍結することが可能であり、その結果として、試料は、膜140の細孔のサイズ(径)とほぼ同等(例えば、25%以内、10%以内、5%以内、1%以内)のサイズを有する氷晶に曝されるだけである。膜140が図示された形態であることを可能にするには、膜140を支持部材(例えば、浮揚性環状部材)に取り付けることが有利であろう。支持部材は、3次元に延びることを含めて任意の形状になることによって、凍結中且つ/又は凍結保存中に膜140の任意の所望の形状を実現することが可能である。幾つかの実施形態では、膜140は、底部がほぼ平らである。幾つかの実施形態では、膜140は、凍結中又は凍結保存中に試料10を保持する為の袋又は可撓容器を形成する。
【0130】
装置100はハウジング110を含み、ハウジング110は、試料が凍結保存の為にロードされる内部キャビティを定義する。装置100は膜140を含み、膜140は、ハウジング110の内部キャビティの外側に配置されるが、内部キャビティに隣接して内部キャビティの底面を定義する位置でハウジング110に固定される。膜140は支持リング150でハウジング110に固定され、支持リング150は、膜140の反対側からハウジング110に(例えば、留め具、締まり嵌め等により)取り付けられて、膜をハウジング110に固定する。支持リング150は、全体的に環状形状であって、膜の形状とほぼ同様の形状である。支持リング150及び膜140は、ハウジング110の内部キャビティがその底面でほぼ封止されるような任意の適切な形状であってよい。支持リング150は、膜140に対する垂直方向の支持物として働く、「X」字形をなす2つの横材を有するように示されている。支持リング150については任意の数の横材が想定され、幾つかの実施形態では、支持リング150は横材が全く無くてよい。装置100は更にカバー120を含み、カバー120は、ハウジング110の上面に固定されてよい。膜140がハウジング110の内部キャビティの底面に設置され、カバー120がハウジング110の内部キャビティの上部に固定された時点で、本装置は、ハウジング110、カバー120、及び膜140がほぼ封止されたチャンバを形成するように組み立てられている。幾つかの実施形態では、ハウジング及び膜140は、膜140がハウジング110及び/又はカバー120の側壁に位置して、装置100のどの部分でも半透過性境界を定義するように構成されてよい。幾つかの実施形態では、装置100は、ハウジング110の底面、ハウジング110の側壁、及び/又はカバー120のうちの2つ以上又は全てに膜140が配置されてよい。従って、カバー120の一部、及び/又はハウジング110の側壁又は底部が、膜140に関して本明細書で開示されているような半透過性膜材料で作られてよい。実施形態によっては、装置100の底部は、変性セルロース膜140を、装置100又は装置100のハウジング110に結合されたフレーム(例えば、支持リング150)で固定する構造である。
【0131】
幾つかの実施形態では、カバー120は、1つ以上の試料が装置100にロードされたときに凍結保存媒体がハウジング110内を流れることを可能にすること、並びに、凍結保存媒体で満たされていて1つ以上の試料を収容するハウジング110を封止して装置100内での泡生成を防ぐことにより、凍結保存処理中に装置100内で発生する圧力をすべて解放することを行うように構成されている。幾つかの実施形態では、カバー120は、その底面に凸形状を有し、この凸形状は、カバー120が装置100のハウジング110上に置かれたとき、且つ/又はハウジング110に固定されたときに内部キャビティ内に突き出る。幾つかのそのような実施形態では、カバー120に少なくとも1つのベントチャネルが形成されている。そのようなカバー120の凸形状により、凍結保存媒体がハウジングの外周部に向かって、泡を生成することなく押し出され、ベントチャネルにより、凍結保存媒体がハウジング110内から、ハウジング内の圧力を高めることなく解放されることが可能になる。
【0132】
幾つかの実施形態では、凍結保存処理中にカバー120によって凍結保存媒体のハウジングへの流入が可能になったときに、支持リング150が膜140を機械的な損傷又は変形から保護する。幾つかの実施形態では、支持リング150は、装置100の底部に結合されるフレームを含む。幾つかのそのような実施形態では、支持リング150のフレームは、薄い横材で形成されたX字形である。幾つかの実施形態では、支持リング150は、最小限の機械力で装置100から取り外し可能でありながら、凍結保存処理中に支持リング150がハウジングから外れて膜を損傷したり変形させたりするのを防ぐのに十分な強度でハウジング110につながっていることが有利である。装置100内の試料へのアクセスが必要な場合は、装置100を解凍し、支持リング150をハウジング110から切り離し、膜を壊すこと、変形させること、取り外すこと等によって、試料に直接アクセスできる。従って、幾つかの実施形態では、装置100は、試料の凍結保存を繰り返す場合に再利用可能ではない。
【0133】
図9、10、12、及び13は、凍結保存システムの一例示的実施形態(全体で101)を示しており、これは、上述の、図2~3Aに示した凍結保存装置100を保持する外側容器(全体で300)を含む。実施形態によっては、外側容器300は、装置100の外側であって外側容器300の内側であるとして定義される空間(全体で310)において、装置100を保持するのに十分な空間と、十分な量の凍結保護剤溶液と、を提供するクライオバイアル又はクライオチューブであってよい。
【0134】
本発明の幾つかの態様を、以下の非限定的な実施例で説明する。
【0135】
実施例1。本装置は、凍結保存媒体の凍結中の大きな氷晶の成長を阻止するように設計された。
【0136】
(中にほぼ円筒形の内部キャビティが形成されている)ハウジング110を有する装置100は、外形が2.5センチメートル(cm)、高さが1.4cmである。そのような装置の一例示的実施形態を図2~3Bに示した。カバー120は、ほぼ円板状であり、上から見ると円形であり、底面に高さ約2ミリメートル(mm)の凸面が形成されており、外周部のあたりに4つの小さいベントチャネルが形成されている。ハウジング100は、全体的に円筒形の構造であり、高さが1cm、外形が2.5cm、内径が2cmである。支持リング150は、ハウジング110の外面に形成された凹部に挿入されるもので、その外側リングは、外径が2cm、内径が1.8cmであり、そのリングの内側半径方向表面に薄いX字形フレームが付けられており、このフレームは厚さが1mmであり、フレームの横材は幅が1mmである。支持リング150は、ハウジング110の底部外面に形成された相補形状の凹部にきつく挿入されることによってハウジングに接続される。相補形状という用語は、凹部の内径が支持リング150の外径より若干小さいか、そうでなければほぼ同じであって、この例ではハウジング110の凹部の内径が2cmであることを意味する。ハウジングには高さ3mmの脚が4つあり、これによって、ハウジングは、脚の接触面から間隔を置いて位置することでハウジング110の下にキャビティを形成することが可能であり、キャビティの高さは脚の高さで決まる。ハウジング110の脚によって、本装置は、図9、10、12、及び13に示したように、凍結保存システムの外側キャビティ(例えば、15ミリリットル(mL)のクライオバイアル)の中で直立したままでいることが可能である。装置100の構成要素は、任意の適切な製造技術で成形されてよく、例えば、射出成形、積層造形等で成形されてよい。
【0137】
この例では、装置100に、-80℃での低温保管中の再結晶を防ぐポリマー凍結保護剤として、10%のDMSOと10%のフィコールとを含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)溶液を2mLロードし、その後、カバー120を閉じた。カバー120を閉じる操作により、余分な凍結保存媒体は全て、ハウジング110から押し出された。装置100は、やはり10%のDMSOと10%のフィコールとを含むDMEM溶液を10mLロードした15mLのクライオバイアル(例えば、図9、10、12、及び13の300)の中に置いた。通常の使われ方では必須ではないが、装置100によって提供される利点を実証する為に、この説明例の為にのみ設けた穴を通してハウジング110の中心に第1の熱電対を配置した。ハウジング110の外側の、膜のすぐ隣に第2の熱電対を配置した。第2の熱電対は、支持リング150の横材の1つに固定した。その後、クライオバイアルを(例えば、極低温冷凍庫内の)-80℃の周囲温度環境に曝して、0.5℃/分の冷却速度で-80℃までゆっくり冷却した。
【0138】
2つの熱電対から読み取った温度プロファイルを記録して、図4に示した。ハウジング110の外側の温度変化は、-80℃までの冷却の途中の、第2の熱電対に氷前面が接触した時点で発熱ピークを示す。氷前面から放出される潜熱によって、過冷却されていた熱電対が溶液の凝固点まで戻る。対照的に、ハウジング110の内側に位置する第1の熱電対で測定される温度変化は、膜140が凍結過程の間の氷の成長を阻止するという事実の結果として、発熱ピークとしてのごく最小限の温度「隆起」を示す。従って、膜140は、バリアとして、ハウジング110に収容されている試料に大きな氷晶が直接接触することを防いで、過冷却を大幅に小さくし、更に、ハウジング110に収容されているあらゆる試料の機械的損傷を防ぐように働く。凍結保存中の試料の機械的損傷は、典型的には、過冷却の過程で生成される特徴的なデンドライト氷晶によって引き起こされる。これらの結果は、中性子磁気共鳴(NMR)技術を用いてハウジング110の内側と外側の氷生成を直接観察することによって得られた、図5A~5Cに示す結果とよく一致する。
【0139】
実施例2。NMR画像化は、本発明の装置の膜構造によって分離される氷の氷生成過程の違いを直接的に示す。
【0140】
装置100の内側の凍結保存媒体の凍結過程のNMR画像化を、内径が10cmの直角位相駆動バードケージRFコイルを装備した7T/210mm水平ボアVarian Unity Inova MRIシステム(バリアンインコーポレイテッド(Varian Inc.)、米国カリフォルニア州パロアルト)で実施した。上述の実施例1に示したようにロードされた装置100を、高さが5cm、径が5cmの小さい外側容器(例えば、ポリプロピレン製のバケツ)の中にマウントした。この容器の底部に粉砕ドライアイス(約10mL)を並べた。装置100の底部(例えば、ハウジング110の底面)をドライアイス(1.01×10Paにおいて表面上で-78℃)に直接接触させることで、-80℃の周囲環境での冷却過程をシミュレートした。図5A~5Cに示すように、氷前面が膜140に近づくにつれて、氷前面の進行(例えば、氷晶の生成)が膜140によって止められるが、氷前面はハウジング110の側壁に沿って成長し続ける。膜140における凍結保存媒体の温度が十分に低ければ(例えば、約-40℃であれば)、小さな氷晶が膜140を通り抜けて、湾曲しているがどちらかと言えば均一な形状の氷前面をハウジング110の内側に生成することが可能であり、この氷前面は膜140の内面からハウジング110内へと進行する。ハウジング110内のこれらの小さな氷晶の成長速度は、ハウジング110の外側にある大きな氷晶の成長速度に比べて非常にゆっくりである。図5A~5CのNMR画像に示された結果は、ハウジング110の外側にある氷のモルフォロジがデンドライト構造を有し、このモルフォロジが、ハウジング110の内側にある氷前面のモルフォロジとは対照的に非常に鋭いことを明示している。従って、このことは、膜140が、十分に低い温度で、大きな氷晶がハウジング110に入るのを阻止し、小さな氷晶が膜140を通り抜けることだけを可能にする氷ふるいとして働くことを示している。
【0141】
図5Aは、凍結保存の初期段階の装置100を示しており、この段階では、氷前面が膜140を通り抜けて、ハウジング110の内部キャビティ(全体で200)に入り込んでいる。内部キャビティ200内の小さな氷晶202は、細かいクロスハッチパターンによって、ハウジング110の外側の領域210で生成された大きな氷晶212から分けられている。内部キャビティ内の凍結保存媒体の大部分は液体204であり、領域210にある外側の凍結保存媒体の大部分は液体214である。図5Bは、凍結保存の中間段階の装置100を示しており、この段階では、氷前面が内部キャビティ200及び領域210に更に入り込んでいる。その為、この時点では内部キャビティ200内の凍結保存媒体の大部分が小さな氷晶202の形態であり、内部キャビティ200内の残りの凍結保存媒体が液体204の形態である。同様に、領域210内の凍結保存媒体の大部分が大きな氷晶212の形態であり、領域210内の残りの凍結保存媒体が液体214の形態である。図5Cは、凍結保存の進行した段階の装置100を示しており、この段階では、氷前面が内部キャビティ200の全体を通り過ぎており、その為、内部キャビティ200の全体が小さな氷晶202で占められている。同様に、領域210内の凍結保存媒体の大部分が、図5Bに示した大きな氷晶212の形態であり、領域210内の残りの凍結保存媒体が液体状態である。
【0142】
実施例3。NMR画像化により、角膜内皮と成長する鋭い氷デンドライトとの直接接触を本装置がどのように防ぐかが分かる。
【0143】
この実施例3では、実施例2で示したものと同じMRIシステム及び冷却処置を用いた。氷デンドライトの細部を調べる為に分解能を高くした。その結果を図6A~6Hに示す。2つの試料10(例えば、ヒト角膜組織)を2つの異なる装置100にマウントした。第1のそのような装置では図2~3Aに示したように半透過性膜140を配置し、第2のそのような装置100では膜140を省略した。両方の装置100、及び各装置100を保持するそれぞれのクライオバイアル(例えば、図9、10、12、及び13の300)に充填した凍結保存媒体は、10%のDMSOと10%のフィコールとを含むDMEM溶液である。
【0144】
図6A~6Dに示したように、膜140を有する装置100は有効に、ハウジング110内での氷の生成を遅らせ、更に、角膜内皮層(組織のうちの、膜140と向き合う面)に近づく成長する氷前面から鋭い氷デンドライトを除去した。
【0145】
図6Aでは、氷前面は膜140のところにあり、一部は膜140を通り抜けており、ハウジング110内の内部キャビティ200のほとんど全部(例えば、90%以上)が液体凍結保存媒体204で占められており、内部キャビティ200のわずかな部分が小さな氷晶202で占められている。ハウジング110の外側の、領域210内の凍結保存媒体は一部が凍結しており、大きな氷晶212がハウジング110の底部の下の、膜140のすぐ近くの領域に生成されており、領域210内の残りの凍結保存媒体は液体状態である。図6A~6Dに大きいハッチングパターンで示したように、内部キャビティ200内の小さな氷晶202のサイズは、領域210内の大きな氷晶212のサイズより(例えば、少なくとも1桁)小さい。
【0146】
図6Bでは、氷前面は内部キャビティ200内に進んでおり、小さな氷晶202が試料10の一部を包んでいるが、内部キャビティ200内の凍結保存媒体の大部分はまだ液体状態204である。ハウジング110の外側の、領域210内の凍結保存媒体は、図6Aに示したものより更に多く凍結しており、大きな氷晶212が、ハウジング110の底部の下の、膜140のすぐ近くの領域に生成されていて、且つ、ハウジング110の側面の周囲を進んでおり、領域210内の残りの凍結保存媒体は液体状態である。内部キャビティ200内で生成された小さな氷晶202は、本明細書の別の場所で示したように、ハウジング110の外側で生成された大きな氷晶212より小さいままである。
【0147】
図6Cでは、氷前面は内部キャビティ200内を進んでいて、小さな氷晶202が試料10のほぼ全体を包んでおり、この時点では内部キャビティ200内の凍結保存媒体の大部分が小さな氷晶202の形態であり、内部キャビティ内のわずかな凍結保存媒体が液体形態204である。ハウジング110の外側の、領域210内の凍結保存媒体は、図6Bに示したものより更に多く凍結しており、大きな氷晶212が、ハウジング110の底部の下の、膜140のすぐ近くの領域に生成されていて、且つ、ハウジング110の側面の周囲を更に進んでおり、領域210内の残りの凍結保存媒体は液体状態である。内部キャビティ200内で生成された小さな氷晶202は、本明細書の別の場所で示したように、ハウジング110の外側で生成された大きな氷晶212より小さいままである。
【0148】
図6Dでは、氷前面は内部キャビティ200内を進んでいて、小さな氷晶202が試料10のほぼ全体を包んでおり、この時点では内部キャビティ200の全容積が小さな氷晶202の形態であり、内部キャビティ内の凍結保存媒体のうち、液体形態204の部分はない(又はほとんどない)。ハウジング110の外側の、領域210内の凍結保存媒体は、図6Cに示したものより更に多く凍結しており、大きな氷晶212が、ハウジング110の底部の下の、膜140のすぐ近くの領域に生成されていて、且つ、ハウジング110の側面のほぼ全ての周囲に進んでおり、領域210内の残りの凍結保存媒体は液体状態である。凍結保存の凍結過程が進むにつれて、領域210内の凍結保存媒体が全て凍結して大きな氷晶212が生成され、これにより、ハウジング110内の全ての凍結保存媒体が小さな氷晶202の形態になり、ハウジング110の外側の全ての凍結保存媒体が大きな氷晶202の形態になる。内部キャビティ200内で生成された小さな氷晶202は、本明細書の別の場所で示したように、ハウジング110の外側で生成された大きな氷晶212より小さいままである。
【0149】
図6E~6Hに示すように、装置100にそのような膜140が存在しなかった場合には、装置100は、角膜内皮に対して保護機能を全く提供せず、その結果、角膜内皮と鋭い氷デンドライトとが直接接触した。
【0150】
図6Eでは、氷前面は、ハウジング110の、膜を設置できるスロットのところにあり、一部はそのスロットを越えて内部キャビティ200に入り込んでおり、ハウジング110内の内部キャビティ200のほとんど全部(例えば、90%以上)が液体凍結保存媒体204で占められており、内部キャビティ200のわずかな部分が大きな氷晶212で占められている。ハウジング110の外側の、領域210内の凍結保存媒体は一部が凍結しており、大きな氷晶212がハウジング110の底部の下の、膜140のすぐ近くの領域に生成されており、領域210内の残りの凍結保存媒体は液体状態である。大きな氷晶212については、図6E~6Hにおいて同じハッチングパターンで示すように、内部キャビティ200内の大きな氷晶212のサイズは、領域210内の大きな氷晶212のサイズと同じである。
【0151】
図6Fでは、氷前面は内部キャビティ200内に進んでおり、大きな氷晶212が試料10の一部を包んでいるが、内部キャビティ200内の凍結保存媒体の大部分はまだ液体状態204である。ハウジング110の外側の、領域210内の凍結保存媒体は、図6Eに示したものより更に多く凍結しており、大きな氷晶212が、ハウジング110の底部の下の、膜140のすぐ近くの領域に生成されていて、且つ、ハウジング110の側面の周囲を進んでおり、領域210内の残りの凍結保存媒体は液体状態である。内部キャビティ200内で生成された大きな氷晶212は、本明細書の別の場所で示したように、ハウジング110の外側で生成された大きな氷晶212とほぼ同じサイズのままである。
【0152】
図6Gでは、氷前面は内部キャビティ200内を進んでいて、大きな氷晶212が試料10のほぼ全体を包んでおり、この時点では内部キャビティ200内の凍結保存媒体の大部分が大きな氷晶212の形態であり、内部キャビティ内のわずかな凍結保存媒体が液体形態204である。ハウジング110の外側の、領域210内の凍結保存媒体は、図6Fに示したものより更に多く凍結しており、大きな氷晶212が、ハウジング110の底部の下の、膜140のすぐ近くの領域に生成されていて、且つ、ハウジング110の側面の周囲を更に進んでおり、領域210内の残りの凍結保存媒体は液体状態である。内部キャビティ200内で生成された大きな氷晶212は、本明細書の別の場所で示したように、ハウジング110の外側で生成された大きな氷晶212とほぼ同じサイズのままである。
【0153】
図6Hでは、氷前面は内部キャビティ200内を進んでいて、大きな氷晶212が試料10のほぼ全体を包んでおり、この時点では内部キャビティ200の全容積が大きな氷晶212の形態であり、内部キャビティ内の凍結保存媒体のうち、液体形態204の部分はない(又はほとんどない)。ハウジング110の外側の、領域210内の凍結保存媒体は、図6Gに示したものより更に多く凍結しており、大きな氷晶212が、ハウジング110の底部の下の、膜140のすぐ近くの領域に生成されていて、且つ、ハウジング110の側面のほぼ全ての周囲に進んでおり、領域210内の残りの凍結保存媒体は液体状態である。凍結保存の凍結過程が進むにつれて、領域210内の凍結保存媒体が全て凍結して大きな氷晶212が生成され、これにより、ハウジング110内、及びハウジング110の外側の全ての凍結保存媒体が大きな氷晶212の形態になる。内部キャビティ200内で生成された大きな氷晶212は、本明細書の別の場所で示したように、ハウジング110の外側で生成された大きな氷晶212とほぼ同じサイズのままである。
【0154】
実施例4。本装置を使用することにより、-80℃の凍結保存の為の角膜の凍結保存の改良を達成した。
【0155】
本明細書に開示の作用メカニズムによる、生物学的物質を含む試料の凍結保存に装置100を使用することによって、凍結過程の間の試料と大きな氷晶との直接接触を防ぐことの有効性を実証する為に、図2~3Bに示した実施形態とほぼ同様の装置100に6つのヒト角膜を保存した。この実証の為に積層造形技術を用いて装置100を製作したが、本開示対象の範囲から逸脱しない限り、任意のタイプの製作が想定される。2つの異なるタイプの膜140をそれぞれの装置の中に取り付けた。第1のサブセットの装置100に取り付けた第1のタイプの膜は、分画分子量(MWCO)が7,500グラム/モル(g/mol)の再生セルロース膜であった。第2のサブセットの装置100に取り付けた第2のタイプの膜は、MWCOが10,000g/molの再生セルロース膜であった。そのような再生セルロース膜は、ミリポア(Millipore)等の製造元から調達可能である。ハウジング110の内部及び周囲に加えた凍結保存媒体は、5%のDMSO、10%のフィコール、1%のデキストラン40、及び2%のコンドロイチン硫酸塩を含有した。これらの装置の1つのハウジング110に各角膜をマウントし、その装置を今述べた凍結保存媒体で満たして、-80℃の周囲環境(例えば、極低温冷凍庫内)に保管した。3か月保管した後、各装置100を37℃の水槽に直接突っ込んで解凍した。解凍後の内皮細胞の集計及びモルフォロジを図7及び8に示す。角膜に対する従来の凍結保存方法では、典型的には50%以上の内皮細胞が凍結保存中に失われる。それに比べると、第1又は第2のタイプの膜140で達成される有効性は、(例えば、ヒト角膜組織の凍結保存の場合に)本開示の装置100によって大幅に(例えば、約90%以上まで)向上する。
【0156】
実施例5。本装置は、凍結保護添加剤を使用しない媒体を使用した極低温凍結処置の間の哺乳類細胞の損傷を軽減する。
【0157】
装置100による細胞外氷モルフォロジの改変を適用することにより、細胞浸透性凍結保護添加剤を全く使用しない媒体を使用する凍結での細胞の損傷を軽減することが可能である。本明細書の別の場所で開示したような特定の凍結保存媒体を使用しない場合でも装置100の有効性を実証する為に、マウス間充織幹細胞(mMSC)を試料として使用し、それらを装置100内のそれらのオリジナルの培地で-20℃で凍結させた。具体的には、細胞培養物試料からの約200マイクロリットル(μL)のmMSC懸濁液(全体で310)(自動細胞計数器で計測した細胞密度が105~6個/mLのオーダー)を、装置100の底部に広げた。装置100は、本明細書の別の場所で開示した、MWCOが7500の薄い変性セルロース膜の形態の膜140を含んでいた。すると、細胞細胞懸濁液310は、膜140の上に薄い液体層(例えば、径が約2cm、厚さが1mm未満)を形成した。同じmMSC培養物試料から更に3mLの細胞懸濁液310を15mLのクライオバイアル(内径が2.5cm)に加えると、これは、ハウジング110の外側の、クライオバイアル(例えば、図9、10、12、及び13の300)の底部に高さ約0.8cmの液体部分を形成した。次に、細胞懸濁液310の層を保持した装置100を、図9及び10に示すようにクライオバイアル内にマウントした。ハウジング110の下部の少なくとも一部が、クライオバイアル内の、ハウジング110の外側に収容された細胞懸濁液310に沈められている。
【0158】
その結果、本装置の内側と外側の培地及び細胞は膜140によって分離されている。次に、このクライオバイアルを-20℃の実験室冷凍庫に入れた。90分後、全ての液体構成要素(例えば、装置100の内側と外側の細胞懸濁液310)が完全に凍結した(例えば、全体が液相から固相に移行した)。次に、装置100を37℃の水槽に入れて解凍し、装置100の内側と外側の解凍された細胞懸濁液310中のmMSCの解凍後生存率を、標準的な自動細胞計数器での標準トリパンブルー色素排除アッセイにより分析した。
【0159】
この実験は、5つの異なる細胞培養物試料からの細胞懸濁液310を使用して5回繰り返した。装置100の内側の懸濁液層の解凍後生存率を自動細胞計数器で計測したところ、45.8±6.0%であった。これに対し、(例えば、クライオバイアル内の)装置100の外側の細胞懸濁液の解凍後生存率は16.8±8.1%にとどまった。図11A及び11Bは、凍結過程の間に、装置100によって保護された細胞懸濁液310の場合(図11A)と、装置100によって保護されなかった(例えば、装置100の外側の)細胞懸濁液310の場合の、自動細胞計数器による典型的な結果を示す。図11Aでは、全体の細胞濃度を測定したところ、2.46×10個/mLであった。このうち、生細胞の濃度は1.29×10個/mL(52%)であり、死細胞の濃度は1.17×10個/mL(48%)であった。これに対し、図11Bでは、全体の細胞濃度を測定したところ、3.99×10個/mLであった。このうち、生細胞の濃度は4.69×10個/mL(12%)であり、死細胞の濃度は3.52×10個/mL(88%)であった。
【0160】
明らかに示されたとおり、(例えば、装置100内で)膜で保護された細胞の解凍後生存率は、保護されなかった細胞の場合よりほぼ200%高い。本装置の内側の細胞の半数が凍結中に死滅した理由についての1つの仮説は、冷凍庫温度の-20℃が、浸透性凍結保護剤(例えば、DMSO)がない場合の哺乳類細胞の細胞内氷の核形成温度に非常に近かったことである。この作用は、場合によっては、細胞集団全体に対するランダム且つ進行性のプロセスとして、致死的な細胞内氷生成をもたらす可能性がある。従って、細胞浸透性凍結保護剤が使用されない場合でも、本発明の装置は、細胞外氷生成によって引き起こされる細胞損傷を軽減することが可能であるが、そのような機能が、ランダムな細胞内氷生成の結果である損傷作用から細胞を完全に保護できるわけではない。
【0161】
実施例6。本装置は、凍結保護添加剤を全く使用しない凍結処置の間の植物組織の損傷を軽減する。
【0162】
装置100による細胞外氷モルフォロジの改変を適用することにより、凍結保護剤を全く使用しない凍結の間の、植物組織を含む試料の損傷を軽減することが可能である。この適用の有効性を実証する為に、最上層が表皮細胞層であるオニオンパルプ組織を試料10として使用した。この試料を1cm×1cmのサイズにカットし、平均的な厚さを約3~4mmとした。体積が1mLのPBS(標準塩類)溶液310の試料を装置100のハウジング110に加え、次に1つの試料10をそのPBS溶液に沈めた。表皮細胞層を変性セルロース膜140(ここではMWCOが7500)に向けた。次に、図12及び13に示すように、3mLのPBS溶液310を収容する15mLのクライオバイアル(例えば、300)に装置100を入れ、ハウジングの少なくとも一部をPBS溶液310に沈めた。従って、装置100の内側と外側にあるPBS溶液310は、膜140で分離されている。次に試料全体を(例えば、極低温冷凍庫内の)-80℃の周囲環境に曝した。60分後、試料10、並びに装置100内及びクライオバイアル内のPBS溶液はほぼ又は完全に凍結しており、これらを37℃の水槽に沈めて解凍した。解凍した試料10の表皮細胞層をトリパンブルーで染色し、標準的な立体顕微鏡を使用して細胞生存率及び組織構造を分析した。
【0163】
比較の為に、同じサイズの新鮮な組織を、装置100を使用せずに、15mLのクライオバイアル内の3mLのPBS溶液310内に直接ロードし、その後、上述の同じ手順に従って凍結させ、解凍し、分析した。立体顕微鏡で観察された、解凍後の染色された試料10の典型的なモルフォロジを図14及び15に示す。これらは、凍結過程の間にそのような装置100によって保護された組織(図14)、又はそのような装置100によって保護されなかった組織(図11B)のものである。図14に示すように、装置100によって保護された組織の場合は、試料10の組織構造がよく保存されており、全ての細胞モルフォロジが新鮮な組織と同様であり、それらの染色された細胞核の外観によれば試料の細胞の約半数が死滅している。これに対し、図15に示すように、そのような装置100によって保護されなかった試料10の組織構造は変形しており、全ての細胞が構造的に激しく損傷している。
【0164】
従って、本明細書に開示の装置100は、細胞浸透性凍結保護添加剤を溶かした凍結保存媒体の使用を全く必要とせずに、植物組織構造を保存し、それらの細胞生存率を向上させることに使用可能である。オニオン組織を装置100の保護の有無にかかわらず-20℃で凍結させたところ、死滅した細胞はなく、組織構造は損傷しなかった。これは細胞壁の保護作用によるものであり、細胞壁は、構造的には、装置100で使用される変性セルロース膜140とよく似ている。このように、本発明の装置は、-20℃より低い温度までの凍結過程の間に、類似の植物組織の細胞壁によって提供される保護よりも優れた保護を提供すると結論づけられる。従って、この結果は、本開示の装置100が細胞保護において、植物組織の細胞壁(その主要な成分の1つがセルロースである)によって自然に形成された何らかの類似の保護機構よりも高い有効性をもたらすことを更に実証した一例である。
【0165】
当然のことながら、本開示対象の範囲から逸脱しない限り、本開示対象の様々な細部を変更することが可能である。更に、ここまでの記述は、例示のみを目的としており、限定を目的とするものではない。
〔付記1〕
試料を、凍結保存中の機械的損傷から保護する凍結保護装置であって、
内部キャビティを形成するハウジングであって、前記ハウジングは、凍結可能媒体を前記内部キャビティに収容するように構成されており、前記ハウジングは半透過性膜を含み、前記膜は、前記膜の平均細孔径より有意に大きい氷晶に対して不透過性であることによって、そのような氷晶が前記ハウジングの外側の領域から前記内部キャビティに入ることを全て阻止し、それによって、前記ハウジングの内側の前記媒体中で生成される氷晶の結晶サイズが、前記ハウジングの外側の凍結可能媒体中で生成される氷晶より小さくなる、前記ハウジング
を含む装置。
〔付記2〕
前記ハウジングの第1の縦方向端部に第1の開口部が形成されており、前記膜は、前記ハウジングに形成された第2の開口部の上に配置されている、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記3〕
前記ハウジングは、前記第1の開口部を通して前記試料を前記内部キャビティに収容するように構成されている、付記2に記載の凍結保護保管装置。
〔付記4〕
前記ハウジングは、前記膜が取り付けられて前記内部キャビティが画定される浮揚性支持物であり、前記浮揚性支持物の少なくとも一部分が前記ハウジングの外側の前記凍結可能媒体に沈まないで、前記膜が前記ハウジングの外側の前記凍結可能媒体に沈むことが可能である、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記5〕
前記ハウジングは、ほぼ全体が前記膜から形成されている、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記6〕
前記膜は多孔質固体層である、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記7〕
前記多孔質固体層は、水及び液体状態の物質を透過させる一方、前記膜の細孔径より大きい氷晶が前記膜を通り抜けることを阻止し、前記氷晶は、前記装置が極低温に曝されたときに前記ハウジングの外側の前記凍結保存における凝固によって生成される、付記6に記載の凍結保護保管装置。
〔付記8〕
前記多孔質固体層は細孔を含み、前記細孔の細孔径は約0.1ナノメートル(nm)から約1ミリメートル(mm)、約0.5nmから約0.1mm、約1nmから約100nm、又は約2nmから約10nmの範囲である、付記6に記載の凍結保護保管装置。
〔付記9〕
前記膜は天然ポリマー又は合成ポリマーを含む、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記10〕
前記膜は合成ポリマーを含み、前記合成ポリマーは、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、エチレンビニルアルコールコポリマー、又はこれらの任意の組み合わせ又は化学的誘導体を含む、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記11〕
前記膜はセルロース物質を含む、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記12〕
前記セルロース物質は、再生セルロース、変性セルロース、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、又はこれらの任意の組み合わせ又は化学的誘導体を含む、付記11に記載の凍結保護保管装置。
〔付記13〕
前記膜は、変性セルロースで作られた透析膜である、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記14〕
前記膜は、水、有機且つ/又は無機の液体溶剤、又はこれらの任意の組み合わせに対して透過性である、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記15〕
前記膜は、前記第2の開口部を覆う為に選択的にマウントされるように構成された分離可能膜である、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記16〕
前記媒体は、凍結保護物質が添加剤として懸濁している凍結保護媒体を含む、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記17〕
前記ハウジングは、前記膜が前記第2の開口部を覆う為に前記ハウジングにマウントされる凹部を含み、前記装置は支持リングを含み、前記支持リングは、前記支持リングが前記ハウジングに取り付けられた場合に前記膜を第2の開口部の上に固定する為に、前記ハウジングに選択的に取り付けられるように構成されている、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記18〕
前記支持リングは、前記支持リングを貫通するように形成された穴を有する外側支持部材を含み、それによって、前記膜は、前記支持リングが前記ハウジングにマウントされた場合に、前記支持リングに形成された前記穴を通して、前記ハウジングの外側の前記媒体に曝される、付記17に記載の凍結保護保管装置。
〔付記19〕
前記ハウジングは、前記支持リングを前記ハウジングに固定する為に前記支持リングとロック係合する少なくとも1つのロッキングタブを含む、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記20〕
前記第1の開口部は、前記内部キャビティに前記試料を入れることが可能なように構成されている、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記21〕
前記ハウジングに固定されて前記第1の開口部を閉じるように構成されているカバーを含む、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記22〕
前記カバーは、前記カバーの外周部に形成された少なくとも1つのベントを含むことにより、前記カバーが前記ハウジングに固定されたときに前記内部キャビティ内の前記媒体が前記少なくとも1つのベントを通り抜けて流れることを可能にする、付記21に記載の凍結保護保管装置。
〔付記23〕
前記カバーは、凸形状を有する内側表面を含み、これによって、前記カバーは、前記カバーの中心部が前記カバーの外周部よりも前記内部キャビティの中に突出している、付記21に記載の凍結保護保管装置。
〔付記24〕
前記ハウジングはほぼ円筒形状であり、断面が円形である、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記25〕
前記凍結可能媒体は、約25℃で液体であり、約-20℃で固体である、付記1に記載の凍結保護保管装置。
〔付記26〕
試料を極低温で保管するシステムであって、
少なくとも1つの、付記1に記載の凍結保護保管装置と、
1つ以上の前記凍結保護保管装置を収容するように構成された外側容器と、
前記ハウジングの前記内部キャビティ内、及び前記ハウジングの外側の前記外側容器内で使用される凍結可能媒体と、
を含むシステム。
〔付記27〕
前記凍結可能媒体は、親水性且つ非毒性の高分子と水性液体とを含む、付記23に記載のシステム。
〔付記28〕
前記凍結可能媒体は凍結保護剤を含む、付記27に記載のシステム。
〔付記29〕
前記凍結保護剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール、プロパンジオール、スクロース、グルコース、デキストラン及び他の多糖類、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコール及び他のポリマー、他の非浸透性凍結保護剤(コンドロイチン硫酸塩及びラクトビオン酸を含み、これらに限定されない)、又はこれらの任意の組み合わせを含む、付記28に記載のシステム。
〔付記30〕
前記親水性且つ非毒性の高分子はポリマーである、付記28に記載のシステム。
〔付記31〕
前記ポリマーは、水性液体に溶けるとほぼ球形の3次元構造を形成する、付記30に記載のシステム。
〔付記32〕
前記水性液体は、細胞培地、栄養培地、塩類、又はこれらの任意の組み合わせを含む、付記27に記載のシステム。
〔付記33〕
前記水性液体は、血清、ウシ胎仔血清(FBS)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、フラッシングホールディングメディア(FHM)、リン酸緩衝血清(PBS)、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)、ロズウェルパーク記念研究所培地(RPMI)、BF5培地、EX-CELL培地、リソジェニーブロス(LB)培地、CaCl2水溶液、NaCl水溶液、KCl水溶液、又はこれらの任意の組み合わせを含む、付記27に記載のシステム。
〔付記34〕
前記媒体中の前記ポリマーの濃度が約5%(w/v)超、約10%(w/v)超、約20%(w/v)超、又は約50%(w/v)超である、付記30に記載のシステム。
〔付記35〕
前記媒体中の前記凍結保護剤の濃度が、前記媒体中の前記ポリマーの前記濃度の約20%以上、約50%以上、約75%以上、又は約100%以上である、付記30に記載のシステム。
〔付記36〕
前記媒体は、約10%(w/v)のフィコール、約5%(w/v)のDMSO、約2%(w/v)のコンドロイチン硫酸塩、及び約1%(w/v)のデキストラン40を含有する、付記24に記載のシステム。
〔付記37〕
フィコールは、スクロース及びエピクロロヒドリンの共重合によって生成される多糖類である、付記36に記載のシステム。
〔付記38〕
前記ポリマーは、親水性多糖類、重合シクロデキストリン又は重合糖類、球状タンパク質、球状タンパク質のオリゴ糖鎖を付加することによって生成される球状糖タンパク質、他の、球状タンパク質の誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、付記30に記載のシステム。
〔付記39〕
前記ポリマーは親水性多糖類である、付記30に記載のシステム。
〔付記40〕
前記多糖類は、スクロース及びエピクロロヒドリンの共重合によって生成される、付記37に記載のシステム。
〔付記41〕
前記媒体は、前記外側容器と前記少なくとも1つの凍結保護保管装置との間の空間の一部又は全体を満たし、前記媒体は、少なくとも前記膜の表面を前記内部キャビティから離れる方向に覆うのに十分な量で用意される、付記26に記載のシステム。
〔付記42〕
前記凍結保護保管装置の外側の前記媒体の組成が、前記凍結保護保管装置の前記内部キャビティ内の前記媒体の組成と異なっていても同じであってもよい、付記41に記載のシステム。
〔付記43〕
試料を、凍結中の損傷から保護する方法であって
内部キャビティを形成するハウジングを用意するステップであって、前記ハウジングは半透過性膜を含む、前記ハウジングを用意する前記ステップと、
前記ハウジングの前記内部キャビティ内に前記試料と第1の凍結可能媒体とを用意するステップと、
前記ハウジングを、前記ハウジングの外側の第2の凍結可能媒体中に置くステップであって、前記ハウジングは一部又は全体が前記第2の凍結可能媒体に沈められ、前記第2の凍結可能媒体は、前記第1の凍結可能媒体と同じであっても異なっていてもよい、前記置くステップと、
前記第2の凍結可能媒体を凍結温度に曝すステップであって、前記ハウジングの外側の、前記第2の凍結可能媒体中に第1のサイズの氷晶が生成される、前記曝すステップと、を含み、
前記第2の凍結可能媒体中の前記第1のサイズの前記氷晶の成長が前記膜によって止められ、前記膜の細孔径より小さい第2のサイズの氷晶だけが、前記膜を通り抜けて、前記ハウジングの前記内部キャビティ内の前記第1の凍結可能媒体中での氷生成をもたらすことが可能であり、それによって、前記ハウジングの外側の前記第2の凍結可能媒体中で生成される氷晶より小さいサイズの氷晶が前記ハウジング内に生成される、
方法。
〔付記44〕
前記凍結は極低温凍結を含み、前記凍結温度は極低温を含む、付記43に記載の方法。
〔付記45〕
前記凍結は非極低温凍結を含み、前記凍結温度は非極低温を含む、付記43に記載の方法。
〔付記46〕
前記試料及び第1の凍結可能媒体は、天然又は従来式の媒体及び/又は溶液中に細胞懸濁物又は生物学的組織を含み、前記第1の凍結可能媒体は凍結保護剤を含まない、付記45に記載の方法。
〔付記47〕
前記ハウジングの第1の縦方向端部に第1の開口部が形成されており、前記膜は、前記ハウジングに形成された第2の開口部の上に配置されている、付記43に記載の方法。
〔付記48〕
前記ハウジングは、前記第1の開口部を通して前記試料を前記内部キャビティに収容するように構成されている、付記47に記載の方法。
〔付記49〕
前記ハウジングは、前記膜が取り付けられて前記内部キャビティが画定される浮揚性支持物であり、前記浮揚性支持物の少なくとも一部分が前記ハウジングの外側の前記凍結可能媒体に沈まないで、前記膜が前記ハウジングの外側の前記凍結可能媒体に沈むことが可能である、付記43に記載の方法。
〔付記50〕
前記第1及び/又は前記第2の凍結可能媒体は、親水性且つ非毒性の高分子と水性液体とを含む、付記73に記載の方法。
〔付記51〕
前記第1及び/又は前記第2の凍結可能媒体は凍結保護剤を含み、
前記第1の凍結可能媒体の温度が下がるにつれて、前記ハウジングの内側の前記第1の凍結可能媒体中の水が前記膜を通り抜けて、前記極低温凍結中の前記第1の凍結可能媒体中の前記凍結保護剤の濃度が上がる、
付記44に記載の方法。
〔付記52〕
前記水が前記膜を通り抜けて前記第1の凍結可能媒体から前記第2の凍結可能媒体に浸透することによって、前記第1の凍結可能媒体中の溶質の濃度が上がるか、且つ/又は前記第1の凍結可能媒体の凍結温度が下がって、前記第1の凍結可能媒体の過冷却が防止される、付記51に記載の方法。
〔付記53〕
前記第2の凍結可能媒体中で生成される前記氷晶は、前記第1の凍結可能媒体中で生成される氷晶よりも大きく、且つ、より高い温度で生成され、
前記膜は多孔質物質を含み、前記多孔質物質の細孔径は、前記第2の凍結可能媒体中で生成される前記氷晶の径より小さく、且つ/又は、
水を透過させる膜がないハウジングに前記試料を保管する場合に比べて相対的に前記試料の損傷が低減される、
付記52に記載の方法。
〔付記54〕
前記膜は、前記第2の開口部の上に配置されて、前記膜を通り抜ける流体連通を可能にする、付記47に記載の方法。
〔付記55〕
前記膜が前記第2の開口部の上で前記ハウジングに固定されるように、前記ハウジングに支持リングを取り付けるステップを含み、前記支持リングには、前記膜を通り抜ける、前記第1の凍結可能媒体と前記第2の凍結可能媒体との間の流体連通を可能にする1つ以上の開口が形成されている、付記47に記載の方法。
〔付記56〕
前記ハウジングは凍結保護保管装置の一部である、付記47に記載の方法。
〔付記57〕
前記第2の凍結可能媒体を収容した外側容器を用意してから、前記第2の凍結可能媒体の温度を前記極低温に曝すステップを含み、前記第2の凍結可能媒体の温度を前記極低温に曝す前記ステップは、前記外側容器を極低温の周囲環境に置くステップを含み、前記ハウジングは前記外側容器内に置かれ、それによって、前記ハウジングは一部又は全体が前記第2の凍結可能媒体に沈められる、付記47に記載の方法。
〔付記58〕
前記外側容器はクライオバイアルを含む、付記57に記載の方法。
〔付記59〕
前記試料及び前記第1の凍結可能媒体は、前記第1の開口部から前記内部キャビティに入れられる、付記43に記載の方法。
〔付記60〕
前記第1の開口部の上にカバーを固定するステップを含む、付記43に記載の方法。
〔付記61〕
前記カバーが前記第1の開口部の上に固定されると、前記内部キャビティ内の余分な第1の凍結可能流体が全て前記内部キャビティから押し退けられ、それによって、前記カバーが前記第1の開口部の上に固定されると、前記内部キャビティはほぼ空気がなくなる、付記60に記載の方法。
〔付記62〕
前記試料は、前記第1の凍結可能媒体中に懸濁している細胞又は少なくとも1つの組織試料を含む、付記43に記載の方法。
〔付記63〕
前記組織試料は、天然生物学的組織、人工組織、又はこれらの組み合わせを含む、付記62に記載の方法。
〔付記64〕
前記天然生物学的組織は、ヒト、動物、植物、又は微生物の複数の細胞組織、又はこれらの組み合わせを含む、付記63に記載の方法。
〔付記65〕
前記人工組織は、人工の、ヒト、動物、植物、又は微生物の複数の細胞組織、又はこれらの組み合わせを含む、付記63に記載の方法。
〔付記66〕
前記組織試料は、角膜組織又は網膜組織を含む、付記62に記載の方法。
〔付記67〕
前記細胞は、1つ以上の真核細胞、1つ以上の原核細胞、又はこれらの組み合わせを含む、付記62に記載の方法。
〔付記68〕
前記1つ以上の真核細胞は、少なくとも1つの哺乳類細胞を含む、付記67に記載の方法。
〔付記69〕
前記少なくとも1つの哺乳類細胞は、1つ以上のマウス細胞、1つ以上のブタ細胞、1つ以上のヒト細胞、又はこれらの組み合わせを含む、付記68に記載の方法。
〔付記70〕
前記少なくとも1つの哺乳類細胞は、1つ以上の幹細胞、1つ以上の体細胞、1つ以上の生殖細胞、又はこれらの組み合わせを含む、付記68に記載の方法。
〔付記71〕
前記1つ以上の原核細胞は、少なくとも1つのバクテリア細胞、少なくとも1つの古細菌細胞、又はこれらの組み合わせを含む、付記67に記載の方法。
〔付記72〕
前記凍結温度は約-273℃から約0℃まで(端値を含む)である、付記43に記載の方法。
〔付記73〕
前記凍結温度は約-196℃から約-20℃まで(端値を含む)である、付記43に記載の方法。
〔付記74〕
前記凍結温度は約-100℃から約-40℃まで(端値を含む)である、付記43に記載の方法。
〔付記75〕
前記凍結温度は約-85℃から約-65℃まで(端値を含む)である、付記43に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15