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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】包装機における故障予測の方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20231207BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021517237
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2019075296
(87)【国際公開番号】W WO2020064533
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】18197031.0
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391053799
【氏名又は名称】テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイ
【住所又は居所原語表記】70 Avenue General Guisan,CH-1009 Pully,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100151105
【弁理士】
【氏名又は名称】井戸川 義信
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ・ボルギ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ・カペリ
(72)【発明者】
【氏名】ジャコポ・カヴァラグリオ カマルゴ モラノ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ココンセッリ
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-147419(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0230941(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
G01M 13/00-13/045
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装容器を扱うように構成された独立して移動可能な物体(301)を備える包装機(300)における故障予測の方法(100)であって、前記独立して移動可能な物体は、トラック(303)に沿った前記独立して移動可能な物体の位置を制御するように構成された制御ユニット(302)と通信し、前記方法は、
前記トラックに沿った前記移動可能な物体の動きに関連するデータ値を記録し(101)、
前記データ値の分布を決定すること(102)、
前記分布における前記データ値の中心傾向の程度を計算すること(103)、
前記分布の形状の定量化された程度を計算すること(104)、
条件パラメータの結合されたセットとして、前記中心傾向の程度を前記形状の定量化された程度と関連付けること(105)、
前記独立して移動可能な物体の複数の運動サイクルに関連付けられた条件パラメータの複数の結合されたセットの分散度を決定すること(106)、及び
前記故障予測のために、前記分散度を分散閾値と比較すること(107)、又は経時的な前記分散度の傾向を決定すること(108)、
を含む方法(100)。
【請求項2】
前記分布における前記データ値の中心傾向の程度を計算することが、
平均値、及び/又は分布の中心傾向の他の程度を計算すること(103’)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分布の形状の定量化された程度を計算することが、
中心傾向の前記程度の周りの前記データ値の分布の程度を計算すること(104’)を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
中心傾向の前記程度の周りの前記データ値の分布の程度を計算することが、
標準正規分布からの偏差の程度を計算すること(104’’)を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記分布の形状の定量化された程度を計算することが、
前記分布の尖度値を計算すること(104’’’)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記データ値が、前記独立して移動可能な物体の振動データ、及び/又は加速度データ、及び/又は速度データ、及び/又は前記トラックに沿って前記独立して移動可能な物体を移動するために前記トラックに供給される電流を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
選択された独立して移動可能な物体が前記トラックの所定の位置を通過するときに、前記データ値が所定の時間間隔で記録される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
条件パラメータの複数の結合されたセットの分散度を決定することが、
条件パラメータの前記複数の結合されたセットの分布の中心(203)と、条件パラメータの各結合されたセットとの間の距離(202、202’)を決定すること(106’’)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
包装機(300)と、包装容器を扱うように構成された独立して移動可能な物体(301)を備える前記包装機(300)の故障を予測するように構成された装置(200)とを備えたシステムであって、前記独立して移動可能な物体は、トラック(303)に沿った前記独立して移動可能な物体の位置を制御するように構成された制御ユニット(302)と通信し、前記装置は、
前記トラックに沿った前記移動可能な物体の動きに関連するデータ値を記録する(101)ように構成されたセンサ(204)と、
処理ユニット(201)であって、
前記データ値の分布を決定し(102)、
前記分布における前記データ値の中心傾向の程度を計算し(103)、
前記分布の形状の定量化された程度を計算し(104)、
条件パラメータの結合されたセットとして、前記中心傾向の程度を前記定量化された程度と関連付け(105)、
前記独立して移動可能な物体の複数の運動サイクルに関連付けられた条件パラメータの複数の結合されたセットの分散度を決定し(106)、そして
障予測のために、前記分散度を分散閾値と比較する(107)か、又は経時的な前記分散度の傾向を決定する(108)
ように構成された処理ユニット(201)と
を備えるシステム。
【請求項10】
前記センサが、前記トラックに沿って前記独立して移動可能な物体を移動させるために前記トラックに供給される電流として前記データ値を記録するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記センサが、前記トラックに沿った前記独立して移動可能な物体の動きの振動データ、及び/又は加速度データ、及び/又は速度データとして前記データ値を記録するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
センサが、前記トラック上の選択された独立して移動可能な物体の設定位置と、前記トラック上の前記選択された独立して移動可能な実際の位置との間の差に関連付けられる位置誤差値として前記データ値を記録するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記センサが、前記トラックからデータ値を受信するように構成される、及び/又は前記独立して移動可能な物体に取り付けられるように構成される、請求項9~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記処理ユニットが、平均値、及び/又は前記分布の中心傾向の他の程度を計算すること(103’)によって、前記分布における前記データ値の中心傾向の程度を計算するように構成される、請求項9~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記処理ユニットが、前記分布の尖度値を計算すること(104’’’)によって前記分布の形状の定量化された程度を計算するように構成される、請求項9~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
プログラムがコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに請求項1~8のいずれか一項に記載の方法のステップを実行させる命令を備えるコンピュータプログラム製品。
【請求項17】
前記平均値は、算術平均、及び/又は幾何平均、及び/又は調和平均、及び/又は一般化平均であり、
前記分布の中心の他の傾向は、中央値又は最頻値である、
請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記平均値は、算術平均、及び/又は幾何平均、及び/又は調和平均、及び/又は一般化平均であり、
前記分布の中心傾向の他の程度は、中央値又は最頻値である、
請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に状態監視の分野に関する。より具体的には、本発明は、独立して動く物体を有する包装機における故障予測の方法、及び密封されたパッケージを製造するためのそのような包装機又は関連システムにおける故障を予測するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
充填及び包装機又は関連システムでの密封されたパッケージの製造などにおいて、生産ラインの機械構成要素の状態監視は、一定期間にわたる所望の機能、及び故障の予測を保証するために重要である。機械構成要素の動きの歪みを監視することは、所望の機能制御を実現し、摩耗に関連する破損を防ぐために不可欠である。例えばベアリングの振動の歪み分析は、産業予測保全プログラムの重要な部分であり、それにより機械が破損する前に摩耗や損傷を発見して修復できるようにし、かくして運用及び保守のコストが削減される。最近では、リニアモータ技術に基づくコンベヤシステムが、密封されたパッケージの製造において包装容器を扱うために使用される。これらのコンベヤシステムは、典型的には、閉ループトラックと、トラックに沿って複数のソレノイドを個別に制御することによってトラックに沿って独立して移動する複数の移動可能な物体又はカートとを備える。独立して移動可能な物体又はカートは、様々な動作において包装容器と係合するように制御される。このような独立して移動可能な物体に基づくシステムは、状態監視と故障予測の分野において新たな難題をもたらす。振動レベルの経験的評価は、構成要素の残り寿命を大幅に過小評価又は過大評価し得るエラーが発生しやすい活動である。ベアリングの故障を特徴付けるこれまでの解決策は周波数分析を含み、振動信号から特徴的な周波数シグネチャが抽出される。実装が複雑であることに加えて、周波数分析に基づく解決策は常に正確であるとは限らず、また計算に使用されるモデルに関して様々な仮定を行い、これにより独立して移動可能な物体を使用する前述のシステムに関して故障予測は最適でなくなる。特に、ベアリングが取り付けられているモータは、通常、一定の速度で回転すると仮定されている。サーボモータの一定の回転速度の仮定は、自動機械の分野では、特に独立した可変速度プロファイルでトラック上を移動する物体又はカートの場合、厳しい制限である。可変速度に対応する方法が採用されているが、そのような解決策は同じく実装が複雑であり得、他の制限及び望ましくない仮定に同じく関連付けられる可能性がある。
【0003】
したがって、改善された状態監視は有利であり、特に、より複雑でない故障予測方法を提供すること、短い実行時間を有すること、及びそれによって進行中の分析を可能にすることを含む、上記の問題及び妥協の多くを回避することを可能にし得、それにより独立して移動可能な物体のより時間のかからない堅牢なトラブルシューティングを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の例は、好ましくは、添付の特許請求の範囲によるデバイスを提供することによって、単独で又は任意の組み合わせにおいて、上で特定したものなど、当技術分野における1つ又は複数の欠陥、不利点又は問題を、軽減、緩和又は排除しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、包装機における故障予測の方法が提供される。包装容器を扱うように構成された独立して移動可能な物体を有する包装機、独立して移動可能な物体は、トラックに沿った独立して移動可能な物体の位置を制御するように構成された制御ユニットと通信する。この方法は、トラックに沿った移動可能な物体の動きに関連するデータ値を記録し、前記データ値の分布を決定し、分布におけるデータ値の中心傾向の程度を計算し、分布の形状の定量化された程度を計算し、条件パラメータの結合されたセットとして、中心傾向の程度を形状の前記定量化された程度と関連付け、独立して移動可能な物体の複数の運動サイクルに関連付けられた条件パラメータの複数の結合されたセットの分散度を決定し、前記故障予測のために、分散度を分散閾値と比較するか、又は経時的な分散度の傾向を決定することを含む。
【0006】
第2の態様によれば、包装機と、包装機の故障を予測するように構成された装置とを備えたシステムが提供される。包装容器を扱うように構成された独立して移動可能な物体を有する包装機。トラックに沿った独立して移動可能な物体の位置を制御するように構成された制御ユニットと通信する独立して移動可能な物体。この装置は、トラックに沿った移動可能な物体の動きに関連するデータ値を記録するように構成されたセンサと、前記データ値の分布を決定し、分布におけるデータ値の中心傾向の程度を計算し、分布の形状の定量化された程度を計算し、条件パラメータの結合されたセットとして中心傾向の程度を前記定量化された程度と関連付け、独立して移動可能な物体の複数の運動サイクルに関連付けられた条件パラメータの複数の結合されたセットの分散度を決定し、及び前記故障予測を行うために、分散度を分散閾値と比較するか、又は経時的な分散度の傾向を決定するように構成された処理ユニットとを備える。
【0007】
第3の態様によれば、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに第1の態様による方法のステップを実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品。
【0008】
本発明のさらなる例は従属請求項に定義されており、本開示の第2及び第3の態様の特徴は、必要な変更を加えて第1の態様の特徴と同様である。
【0009】
本開示のいくつかの例は、包装機のトラック上の独立して移動可能な物体などの機械構成要素の故障を予測するための改善された方法を提供する。
【0010】
本開示のいくつかの例は、機械構成要素の寿命の容易な予測を提供する。
【0011】
本開示のいくつかの例は、機械構成要素のより予測可能で効率的な保守スケジュールを提供する。
【0012】
本開示のいくつかの例は、実行時間が短く、それによって進行中の分析を可能にする故障予測の方法を提供する。
【0013】
本開示のいくつかの例は、機械構成要素のより時間のかからないトラブルシューティングを提供する。
【0014】
本開示のいくつかの例は、複数の独立して移動可能な物体を有する、充填機などの機械における改善された状態監視を提供する。
【0015】
本明細書で使用される場合「含む、備える(comprises/comprising)」という用語は、記載された特徴、整数、ステップ又は構成要素の存在を指定するために用いられるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素又はそのグループの存在及び追加を排除するものではないことが強調されるべきである。
【0016】
本発明の例が可能であるこれら及び他の態様、特徴、及び利点は、添付の図面を参照する本発明の例の以下の記載から明らかになり、解明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】トラックに沿って移動する独立して移動可能な物体を有する包装機の故障を予測するように構成された装置の概略図である。
図2a-d】位置(2a)、速度(2b)、位置誤差(2c)、及びトラックに供給される電流(2d)を含む、トラック及び/又は移動可能な物体に取り付けられたセンサによって記録された、トラックに沿った移動可能な物体の動きに関連するデータ値を示す図である。
図3】トラックに沿った移動可能な物体の動きに関連するデータ値の分布を示す図である。
図4a】条件パラメータの結合されたセットの図であり、各セット、すなわちデータポイントは、2つの異なる時間について、図1のデータ値の分布の中心傾向の程度対そのような分布の形状の定量化された程度として決定される。
図4b】時間tにおける図4aの条件パラメータの結合されたセットの拡大図である。
図5a】包装機における故障予測の方法のフローチャートである。
図5b】包装機における故障予測の方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、添付の図面を参照して、本発明の特定の例を記載する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の例に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの例は、本開示が徹底的且つ完全であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供されている。添付の図面に示されている例の詳細な記載で使用されている用語は、本発明を限定することを意図するものではない。図面中、同様の番号は同様の要素を指す。
【0019】
図1は、包装容器(図示せず)を扱うように構成された独立して移動可能な物体301を有する包装機300の故障を予測するように構成された装置200の概略図である。独立して移動可能な物体301は、トラック303に沿った独立して移動可能な物体301の位置を制御するように構成された制御ユニット302と通信する。トラック303は図1に例示されるように無限ループであり得る。トラック303は楕円形のトラックとして示されているが、トラック303は様々な形状を有し得る、すなわち、異なる曲率半径を有する様々な曲線に沿って延びると考えられる。図5aは、包装機における故障予測の関連する方法100のフローチャートを示している。方法100のステップが記載及び図示される順序は限定的であると解釈されるべきではなく、ステップは様々な順序で実行され得ると考えられる。
【0020】
再び図1に目を向けると、装置200は、トラック303に沿った移動可能な物体301の動きに関連するデータ値を記録する(101)ように構成されたセンサ204を備える。図2a~cは、時間に対するそのようなデータ値の例、すなわち、独立して移動可能な物体301のトラック上の位置(2a)、独立して移動可能な物体301の速度(2b)、独立して移動可能な物体301の位置誤差(2c)、及びトラックに供給される電流(2d)を示す。データ値は、トルク又は他の任意の力の値、振動データ、又は動きに関連する加速度など、方法100を実行する目的でセンサ204によって記録することができる、独立して移動可能な物体301の動きの様々な他の測定可能な特性を含み得ると考えられる。装置200は、データ値の分布を決定し(102)、分布におけるデータ値の中心傾向の程度を計算する(103)ように構成された処理ユニット201を備える。図3は、データ値の分布の例、この場合、時間の関数としての振動運動などの運動の振幅を示す。中心傾向の程度は、統計理論内の用語の通常の意味に従って解釈されるべきである、すなわち、例えば図3の例に示される分布の場合、確率分布の中心値又は典型的な値として解釈されるべきである。処理ユニット201は、決定された分布の形状の定量化された程度を計算する(104)ように構成される。また、分布の形状は、統計理論内の用語の通常の意味に従って解釈されるべきである、すなわち、データポイントの外れ値の数、つまり、分布の中心付近の主たる分布から遠く離れているデータポイントの数によって影響される、そのような分布の裾の特性、例えば分布の裾の幅又は薄さの程度など、図3における分布の曲率の形状を述べている。処理ユニット201は、中心傾向の程度を、結合された条件パラメータのセットとして、前述の定量化された程度と関連付ける(105)ように構成される。すなわち、各運動サイクルについて、条件パラメータのセットが決定され、ここで各セットは、中心傾向の程度と、分布の形状の定量化された程度とを含むデータポイントのペアである。図4a~bは、各データポイント(実線による小さな円)が、結合された条件パラメータのセットに対応する概略図である。分布の形状の定量化された程度は縦軸(K)上に与えられ、中心傾向の程度は横軸(M)上に与えられる。処理ユニット201は、独立して移動可能な物体の複数の運動サイクルに関連する複数の結合された条件パラメータのセットの分散度を決定する(106)ように構成される。分散は、条件パラメータの結合されたセットのそれぞれが互いにどれだけ離れているかを示す。図4aの例では、条件パラメータの複数の結合されたセットが、2つの時点、t及びtについて決定されている。時間tでは、分散度は時間tよりも大きい。処理ユニット201は、故障予測のために、分散度を分散閾値と比較する(107)か、又は経時的な分散度の傾向を決定する(108)ように構成される。したがって、閾値を超えることは、独立して移動可能な物体301の摩耗の増加を示すことができる。或いは、前記故障予測のために、経時的な分散度の傾向を決定する(108)ことができる。例えば、tからtに向かう分散の増加の傾向は、独立して移動可能な物体301の摩耗の増加を示し得る。
【0021】
したがって、中心傾向の程度を、結合された条件パラメータのセットとして、形状の定量化された程度と関連付け(105)、複数の動作サイクルについてその分散度を決定することによって、摩耗の増加の、又は一般に故障している独立した移動可能な物体301の容易で信頼できる示度を得ることができる。例えば、構成要素の運動特性の複雑な周波数分析は必要ない。したがって、そのような従来の周波数分析で行われた様々な仮定は不要であり、本開示に記載される故障予測の方法を使用して、様々な用途で信頼性の高い状態監視を実現することができる。装置200及び関連する方法100は、実行時間が短く、それにより進行中の分析を可能にし、一般に、独立して移動可能な物体301、並びにベアリング、ベルト、モータ及びそれらの関連する構成要素などの他の機械構成要素のより時間のかからないトラブルシューティングを可能にする故障予測の方法を提供する。このような改善された故障予測は、高スループットを維持するために状態監視が重要である高速生産ラインの充填機及びその関連する構成要素において特に有利である。
【0022】
図5aは、包装容器を扱うように構成された独立して移動可能な物体301を有する包装機300における故障予測の方法100のフローチャートを示している。方法100のステップが記載及び示される順序は限定的であると解釈されるべきではなく、ステップは様々な順序で実行されてもよいと考えられる。方法100は、トラックに沿った移動可能な物体の動きに関連するデータ値を記録し(101)、前記データ値の分布を決定し(102)、分布におけるデータ値の中心傾向の程度を計算し(103)、分布の形状の定量化された程度を計算し(104)、条件パラメータの結合されたセットとして、中心傾向の程度を、形状の前記定量化された程度と関連付け(105)、独立して移動可能な物体の複数の運動サイクルに関連する複数の結合された条件パラメータのセットの分散度を決定し(106)、そして、前記故障予測のために、分散度を分散閾値と比較する(107)か、又は経時的な分散度の傾向を決定する(108)ことを含む。
【0023】
したがって、方法100は、図1~4を参照して装置200に関して上に記載したような有利な利点を提供する。すなわち、方法100は、構成要素の運動特性の複雑な周波数分析を必要とすることなく、摩耗の増加又は一般に故障している機械構成要素の示度を有する、容易で信頼性の高い状態監視及び故障予測を提供する。
【0024】
センサ204は、独立して移動可能な物体301をトラック303に沿って移動させるためにトラックに供給される電流としてデータ値を記録するように構成されてもよい。これは、不具合又は摩耗の有利な指標を提供し得る。それというのも、電流はトラック303の摩擦を克服し、独立した移動可能な物体301を所望の方向に推進するのに必要な力に関連するからである。摩耗が増加すると、物体301を移動するのに必要な力、及び特定の物体301を移動するためにトラック301に供給される電流は増加する可能性がある。遠心力などの力が制限されるトラック303の直線部分上の移動について、及び関連する移動可能な物体301が一定速度を有する場合、電流を決定することは有利であり得る。これにより、構成要素の摩耗の寄与が簡単に分離される。センサ測定は、得られたデータ値のベースラインの初期決定により実行することができる。その後の測定は、そのようなデータ値のベースラインと比較することができる。
【0025】
図2a~dに関連して上述したように、センサ204は、トラック301に沿った独立して移動可能な物体の動きの振動データ、及び/又は加速度データ、及び/又は速度データとしてデータ値を記録するように構成されてもよい。センサ204はまた、物体301の動きを特徴付け得る他の種類のデータも記録してもよい。例えば、センサ204は、動きの音又は動きによって誘発される音を記録するマイクロフォンを備えてもよい。可動構成要素の摩耗が増えると、差し迫った故障又は破損の特徴である音が発生し得る。センサ204は、赤外線センサ、すなわち、独立して移動可能な物体301の温度を示す画像データを受信するように構成された赤外線カメラを含んでもよい。これは、摩擦及び摩耗の増加を示し得るいずれかの過熱した移動可能な物体301の識別を提供する。
【0026】
さらに、センサ204は、データ値を位置誤差値として記録するように構成され得る。位置誤差値は、トラック303上の選択された独立して移動可能な物体301の設定位置と、トラック303上の前記選択された独立して移動可能な物体301の実際の位置との間の差に関連付けられる。位置誤差値は、例えば、選択された移動可能な物体301をトラック303上の実際の位置から設定位置に移動するのに必要な時間であり得る。故障が発生した場合、又は摩耗が増加している場合、実際の位置と設定位置との差が大きくなる可能性があり、また、そのような誤差について動きを補正するために必要な時間が長くなる可能性がある。
【0027】
センサ204は、トラック303からデータ値を受信するように構成されてもよい。センサ204は、例えば、物体301が移動するときにトラック303から振動データを受信するために、トラック303の近くに取り付けられてもよい。センサ204は、そのようなデータを提供するために、トラック303の周りの様々な位置に配置された複数のセンサユニットを備え得る。以下でさらに記載するように、処理ユニット201は、選択された独立して移動可能な物体301がトラック303の定められた位置を通過するときに、定められた時間間隔でデータ値を記録するように構成され得る。したがって、特定の独立して移動可能な物体301の挙動を追跡することが可能である。
【0028】
或いは、又はさらに、センサ204は、独立して移動可能な物体301に取り付けられてもよい。これは、移動可能な物体301の1つに取り付けられた二次センサユニット204’によって図1に概略的に示されている。二次センサユニット204’は、トラック303上で移動可能な物体301と共に移動するときにデータを送信し、移動可能な物体301の加速度などの上記の特性のいずれかを含むデータを送信してもよい。センサ204’は、トラック303に供給されるエネルギーによって、又はバッテリなどのオンボード電源によって電力を供給されてもよい。センサ204’は、例えば、ある期間にわたって独立して移動可能な物体301の振動からエネルギーを生成するエネルギー収穫システムによって電力を供給され得ることも考えられる。例えば、電力はオンボードコンデンサで蓄積され、その後、定められた間隔で静的受信機にデータを送信するために利用されてもよい。
【0029】
特定の移動可能な物体301に取り付けられたセンサ204によって記録されたデータは、特定の時点における動きのシグネチャ又はフィンガプリントとしても使用でき、これは後で、その特定の移動可能な物体301について収集された後続のデータと比較して、健康状態の起こり得る悪化を予見することができる。
【0030】
追加のセンサユニットを機械300の他の部分に取り付けて、独立した移動可能な物体301から回収されたデータに影響を及ぼし得るそのような部分の運動特性を記録することができることも考えられる。したがって、独立して移動可能な物体301から記録されたデータは、他の移動部分からの寄与を差し引くことによって分離することができ、したがって信号対雑音比が改善される。
【0031】
図5bは、周期的に移動する機械構成要素の故障予測の方法100のさらなるフローチャートを示している。方法100のステップが記載及び示される順序は限定的であると解釈されるべきではなく、ステップは様々な順序で実行され得ると考えられる。
【0032】
データ値は、選択された独立して移動可能な物体301がトラック303の定められた位置を通過するときに、定められた時間間隔で記録することができる。したがって、特定の移動可能な物体301からの寄与を分離することが可能である。制御ユニット302は、したがって、データをセンサ204及び/又は処理ユニット204に送信して、特定の移動可能な物体301の位置を現在記録されているセンサデータに同期させるように構成することができる。
【0033】
上記のように、データ値は、独立して移動可能な物体301の振動データ、及び/又は加速度データ、及び/又は速度データ、及び/又はトラック303に沿って独立して移動可能な物体301を移動するためにトラック303に供給される電流を含んでもよい。
【0034】
分布のデータ値の中心傾向の程度を計算することは、算術平均、及び/又は二乗平均(quadratic mean)(RMS)などの幾何平均、及び/又は調和平均、及び/又は一般化平均などの平均値、及び/又は中央値又は最頻値などの分布の中心傾向の他の程度、及び/又はそれらの異なって重み付けされた及び/又は切り捨てられた変形を計算すること(103’)を含んでもよい。方法100は、採用される中心傾向の特定の程度に応じて、様々な用途に対し最適化することができる。これにより、様々な用途及び動作特性に対して、効率的な状態監視及び故障予測を実現することができる。
【0035】
前記分布の形状の定量化された程度を計算することは、中心傾向の程度の周りのデータ値の分布の程度を計算すること(104’)を含んでもよい。したがって、中心傾向の程度の周りの分布の形状が決定され、これはその後、特定の運動サイクルの結合された条件パラメータのセットを提供するために、中心傾向の程度に関連付けられる。
【0036】
中心傾向の前記程度の周りの測定データ値の分布の程度を計算することは、標準正規分布からの偏差の程度を計算すること(104’’)を含んでもよい。これにより、分布の形状が、例えば、分布の裾がより厚い場合(すなわち、中心傾向の程度に向かってより集中している場合)、又は裾がより薄い場合(すなわち、中心傾向の程度の周囲により大きな広がりを持つ、より均一な「低プロファイル」分布の場合)、標準正規分布とどのように異なるかの程度が提供される。したがって、分布の形状は、全体の形状に関連して分布の裾の形状を表す程度と見なすことができる。
【0037】
分布の形状の定量化された程度を計算することは、分布の尖度値を計算すること(104’’’)を含んでもよい。したがって、尖度は分布の形状のそのような程度である。通常、データのセットによって表示できる尖度の3つのカテゴリがある。尖度のすべての程度は、標準正規分布又はベルカーブと比較することができる。尖度の第1のカテゴリは、メソクルティック(mesokurtic)分布である。このタイプの尖度は、同様にベルカーブに似ているという点で、標準正規分布に最も似ている。しかしながら、メソクルティックであるグラフは、標準正規分布よりも裾が太く、わずかにより低いピークを有する。このタイプの尖度は正規に分布されたと見なされるが、標準正規分布ではない。第2のカテゴリはレプトクルティック(leptokurtic)分布である。レプトクルティックである分布は、メソクルティック分布よりも高い尖度を示す。このタイプの分布の特徴は、裾がより厚く、ピークがかなり薄くて高いことである。他のタイプの分布は、プラティクルティック(platykurtic)分布である。これらのタイプの分布は、細い裾及びメソクルティック分布よりも小さいピークを有する。データセットの正規分布からの非対称性を表す歪度など、分布の形状の他の程度を決定することができる。したがって、方法100は、採用される分布の形状の特定の程度に応じて、様々な用途に対して最適化することができる。
【0038】
条件パラメータの複数の結合されたセットの分散度を決定すること(106)は、設定された閾値分散内に含まれる条件パラメータの複数の結合されたセットの割合を決定すること(106’)を含んでもよい。閾値分散は、特定の半径(R)を有する円として示すことができ、その中に、所定量の結合された条件パラメータのセット(すなわち、図4a~bのデータポイント)が含まれるべきである。図4aの例では、分散度の上昇に対応するために半径がtにおいて増大しているので、データポイントの100%が時間t及びtにおいてそれぞれの円内に含まれている。しかしながら、半径を固定した状態に保つと、時間の経過と共に、半径内に含まれるデータポイントの割合が減少する。したがって、定められた半径内に含まれるデータポイントの割合の許容範囲を設定することができる。或いは、含まれるデータポイントの固定された割合を定めることもでき、ここで、それぞれの半径はある範囲内にある。
【0039】
条件パラメータの複数の結合されたセットの分散度を決定することは、条件パラメータの複数の結合されたセットの分布の中心203と、条件パラメータの各結合されたセットとの間の距離202、202’を決定すること(106’’)を含んでもよい。図4bは、2つの異なるデータポイント、すなわち、条件パラメータの結合されたセットまでの距離202、202’が、分布の決定された中心203に関してどのように決定されたかを概略的に示す。したがって、距離は、前述のポイント間のユークリッド距離である可能性がある。しかしながら、データポイントの分散の他の程度が利用され得ることが考えられる。
【0040】
分散度は、条件パラメータの結合されたセットの四分位範囲(IQR、IQR’)の広がりを計算することによって決定することができる。例えば、四分位範囲の増大、すなわち、データポイントの25~75%が含まれる半径の範囲の広がりが示される場合がある。したがって、分散が高まると、四分位範囲IQR’が増大し、条件パラメータの結合されたセットの分散の効率的な程度を提供する。
【0041】
プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに、図1~5に関連して上に記載した方法100のステップを実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【0042】
処理ユニット201は、算術平均、及び/又は幾何平均、及び/又は調和平均、及び/又は二乗平均(quadratic mean)(RMS)などの一般化平均などの平均値、及び/又は中央値又は最頻値などの分布の中心傾向の他の程度、及び/又はそれらの異なって重み付けされた及び/又は切り捨てられた変形を計算すること(103’)によって、分布におけるデータ値の中心傾向の程度を計算するように構成されてもよい。
【0043】
処理ユニット201は、データ分布の尖度値を計算すること(104’’’)によって、前記分布の形状の定量化された程度を計算するように構成されてもよい。
【0044】
処理ユニット201は、設定された閾値分散内に含まれる複数の結合された条件パラメータのセットの割合を計算すること(106’)によって、複数の結合された条件パラメータのセットの分散度を決定するように構成されてもよい。
【0045】
特定の例を参照して本発明を前述に記載した。しかしながら、上記以外の例も本発明の範囲内で同様に可能である。本発明の異なる特徴及びステップは、記載されたもの以外の組み合わせで組み合わせることができる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。
【0046】
より一般的には、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、本発明の教示が使用される特定の1つ又は複数の用途に依存することを容易に理解するであろう。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4a
図4b
図5a
図5b