(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】混和除濁装置
(51)【国際特許分類】
B04C 5/04 20060101AFI20231207BHJP
B04C 5/081 20060101ALI20231207BHJP
B04C 5/103 20060101ALI20231207BHJP
B01D 21/26 20060101ALI20231207BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20231207BHJP
B01D 21/08 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B04C5/04
B04C5/081
B04C5/103
B01D21/26
B01D21/01 C
B01D21/08 E
(21)【出願番号】P 2021519344
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 JP2020017542
(87)【国際公開番号】W WO2020230582
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2019090721
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 康彦
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106976930(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108821404(CN,A)
【文献】特開2010-214248(JP,A)
【文献】特開2010-046627(JP,A)
【文献】欧州特許第00311763(EP,B1)
【文献】特開2014-144442(JP,A)
【文献】米国特許第04265740(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04C 1/00-11/00
B01D 21/02-21/34
C02F 1/52- 1/56
B01D 35/06
B01D 43/00
B01D 57/00-57/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に対して凝集剤を投入して凝集剤含有水とする凝集剤投入部と、
前記凝集剤含有水を混和してフロックを形成してから固液分離する槽と、を含み、
前記槽が、前記凝集剤含有水を槽内に流入させる流入口を有する外筒と、前記槽の上部側から、前記外筒の前記流入口よりも下部側まで挿入配置され、前記槽内にて下端が開放された内筒とを備
え、
前記槽が、前記外筒と、前記内筒との間の間隙内であって、前記外筒の上端と、前記内筒の下端との間に位置する、前記凝集剤含有水を急速撹拌する急速撹拌部を備え、さらに、
前記外筒の内壁が、前記槽の上部側に向かって先細のテーパー形状を有しており、
前記急速撹拌部が、前記外筒の前記内壁と、前記内筒の外壁とにより区画された、流路により構成され、そして、
前記槽が、前記流路から出た前記凝集剤含有水を処理済水として前記内筒により前記槽の外へと流出させるように構成されてなる、
混和除濁装置。
【請求項2】
前記内筒の外壁が、前記槽の下部側に向かって先細のテーパー形状を有しており、
前記急速撹拌部が、前記外筒の内壁と、前記内筒の前記外壁とにより区画された流路により構成される、請求項
1に記載の混和除濁装置。
【請求項3】
前記外筒の内壁が、該内壁周面の少なくとも一周にわたり、前記周面に沿って形成された細流路を有しており、
前記細流路が前記急速撹拌部を構成する、請求項
1又は2に記載の混和除濁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混和除濁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の水処理施設において、被処理水を膜ろ過処理して処理水とする膜ろ過装置が採用されてきた。膜ろ過装置は、使用に伴い、被処理水中に含まれていた固形物等によりろ過膜が目詰まりする。このため、目詰まりを解消してろ過膜のろ過機能を再生させるために、ろ過膜を定期的に洗浄することが必要である。
【0003】
近年、多くの地域において、集中豪雨の発生頻度が高まっている。例えば、被処理水が湖沼及び河川等から採取した水である場合には、集中豪雨の発生に応じて、被処理水中の濁質濃度が急激に高まる。濁質濃度が高い被処理水が膜ろ過処理に供されれば、ろ過膜の固形物負荷が高まるので、ろ過膜の洗浄周期が短くなる。
【0004】
従来、フィルタ装置の前段に、固液分離装置を配置してなる固液分離システムが検討されてきた(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された固液分離システムによれば、固液分離装置により懸濁水から固形物を分離して清浄水を得て、かかる清浄水をフィルタ装置にて処理することで、飲料水を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の固液分離システムでは、固液分離装置による固液分離能に一層の向上の余地があった。そこで、本発明は、固液分離能に優れる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の混和除濁装置は、被処理水に対して凝集剤を投入して凝集剤含有水とする凝集剤投入部と、前記凝集剤含有水を混和してフロックを形成してから固液分離する槽と、を含み、前記槽が、前記凝集剤含有水を槽内に流入させる流入口を有する外筒と、前記槽の上部側から、前記外筒の前記流入口よりも下部側まで挿入配置され、前記槽内にて下端が開放された内筒とを備える、ことを特徴とする。このように、被処理水に対して凝集剤を投入して得た凝集剤含有水を混和することによりフロックを形成し、かかるフロックと液分とを固液分離することで、除濁する本発明の混和除濁装置によれば、高い固液分離能を発揮することができる。
【0008】
ここで、本発明の混和除濁装置にて、前記槽が、前記外筒と、前記内筒との間の間隙内であって、前記外筒の上端と、前記内筒の下端との間に位置する、前記凝集剤含有水を急速撹拌する急速撹拌部を備える、ことが好ましい。混和除濁装置が外筒の上端と内筒の下端との間に位置する急速撹拌部を有していれば、槽内におけるフロック形成効率を効果的に高めることができ、結果的に、高い固液分離能を発揮することができる。
【0009】
また、本発明の混和除濁装置にて、前記外筒の内壁が、前記槽の上部側に向かって先細のテーパー形状を有しており、前記急速撹拌部が、前記外筒の前記内壁と、前記内筒の外壁とにより区画された、流路により構成されることが好ましい。或いは、本発明の混和除濁装置にて、前記内筒の外壁が、前記槽の下部側に向かって先細のテーパー形状を有しており、前記急速撹拌部が、前記外筒の前記内壁と、前記内筒の前記外壁とにより区画された流路により構成されることが好ましい。急速撹拌部が、少なくとも何れか一方がテーパー形状として形成された外筒内壁及び内筒外壁により画定された流路として実装されていれば、槽内にて凝集剤含有水を異なる撹拌強度で撹拌することができるため、槽内におけるフロック形成効率を一層効果的に高めることができるからである。そして、フロック形成効率が高まる結果、本発明の混和除濁装置により一層高い固液分離能を発揮することができるようになる。
【0010】
また、本発明の混和除濁装置にて、前記外筒の内壁が、該内壁周面の少なくとも一周にわたり、前記周面に沿って形成された細流路を有しており、前記細流路が前記急速撹拌部を構成することが好ましい。外筒内壁が、周面の少なくとも一周にわたる細流路を有していれば、槽内にて凝集剤含有水を異なる撹拌強度で撹拌することができるため、槽内におけるフロック形成効率を一層効果的に高めることができるからである。そして、フロック形成効率が高まる結果、本発明の混和除濁装置により一層高い固液分離能を発揮することができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、固液分離能に優れる装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の混和除濁装置を水処理施設に実装する際のイメージ図である。
【
図2】本発明に従う混和除濁装置の一例の概略構成を示す説明図である。
【
図3】本発明の混和除濁装置に備えられうる急速撹拌部の第1の例に係る態様を概略的に示す図である。
【
図4】本発明の混和除濁装置に備えられうる急速撹拌部の第2の例に係る態様を概略的に示す図である。
【
図5】本発明の混和除濁装置に備えられうる急速撹拌部の第3の例に係る態様を概略的に示す図である。
【
図7】下部にらせん状のリブを備える内筒の一例の概略構成図である。
【
図8】
図1に示す水処理施設を用いて、被処理水(原水)を水処理した場合の、原水濁度に対する混和除濁装置流出水の濁度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一の構成要素を示すものとする。
【0014】
本発明の混和除濁装置は、特に限定されることなく、固形物を含む被処理水を処理する際に用いることができる。
【0015】
ここで、固形物としては、特に限定されることなく、例えば、土砂、スラッジ、及び有機物質などが挙げられる。
【0016】
また、被処理水としては、特に限定されることなく、例えば、湖沼、河川等から採取した水;各種工場で生じる工業排水;下水処理場、し尿処理場、ゴミ処理場等の各種処理場で生じる排水等が挙げられる。
【0017】
図1に、本発明の混和除濁装置100を水処理施設に実装する際のイメージ図を示す。
図1に示す水処理施設200は、一次貯水槽201と、混和除濁装置100と、膜ろ過装置202と、二次貯水槽203と、を備える。一次貯水槽201は、被処理水を貯水し、混和除濁装置100に対して供給する。そして混和除濁装置100を経た混和除濁装置流出水は、後段の膜ろ過装置202に対して供給され、膜ろ過装置202にて膜ろ過される。そして、膜ろ過装置202を経た処理済水は、二次貯水槽203にて貯留される。二次貯水槽203の水位と、一次貯水槽201の水位との高さの差分(即ち、水位差)により、一次貯水槽201から二次貯水槽203方向に向かう被処理水の流れが生じる。なお、図示のような態様に限定されることなく、例えば、ポンプ等の動力を用いて被処理水の流れを人工的に生じさせても良い。
【0018】
水処理施設200では、膜ろ過装置202の前段に混和除濁装置100が配置され、膜ろ過装置202に流入する前の段階で被処理水中の懸濁物質の少なくとも一部が除去される。よって、仮に、集中豪雨が発生して一時的に濁質濃度が高い被処理水が一次貯水槽201に対して流入した場合であっても、混和除濁装置100において濁質を除去してから、膜ろ過装置202に対して被処理水を供給することができるため、膜ろ過装置202に対して過度に高い固形物負荷が課されないようにすることができる。従って、混和除濁装置100を含む水処理施設200では、膜ろ過装置202の洗浄周期が被処理水の濁質濃度の変化に応じて過度に短くなることを抑制することができる。その結果、濁質濃度が高い被処理水が流入した場合であっても、過度に高頻度で膜ろ過装置202を洗浄する必要性が低くなり、水処理施設200による水処理効率を高めることができる。
【0019】
本発明の混和除濁装置100の一例を、
図2を参照して詳述する。本発明の混和除濁装置100は、凝集剤投入部10及び槽20を備える。さらに、槽20は、凝集剤含有水を槽20内に流入させる流入口210を有する外筒21と、槽20の上部側から、外筒21の流入口210よりも下部側まで挿入配置され、槽20内にて下端が開放された内筒22とを備える。混和除濁装置100は、被処理水に対して凝集剤を投入して得た凝集剤含有水を混和することによりフロックを形成し、かかるフロックと液分とを固液分離することで、被処理水を除濁する。よって、混和除濁装置100によれば、高い固液分離能を発揮することができる。
【0020】
凝集剤投入部10は、被処理水に対して凝集剤を投入する機能を有する。凝集剤投入部10は、特に限定されることなく、貯蔵槽、注入配管、及びポンプ等の既知の部材により実装することができる。より具体的には、凝集剤を貯蔵する貯蔵槽と、当該貯蔵槽に対して接続された注入配管と、当該注入配管に対して取り付けられ、凝集剤の注入及び注入停止を切り替えることができるポンプと、により凝集剤投入部10が実装されうる。
【0021】
図2では、凝集剤投入部10が、流入口210に接続した被処理水流入ライン30に対して取り付けられた態様を図示する。図示したように、凝集剤投入部10が被処理水に対して凝集剤を投入する位置は、流入口210よりも上流側の位置であることが好ましい。なお、「上流側」とは、被処理水の流れ方向を基準として、被処理水供給源(例えば、
図1に示した一次貯水槽201)により近い側であることを意味する。流入口210よりも上流側の位置にて、被処理水に対して凝集剤を投入するように凝集剤投入部10が配置されていれば、被処理水と凝集剤との混和時間を長くとることができ、混和除濁装置100による固液分離能を一層高めることができるからである。
【0022】
なお、図示の態様に限定されることなく、本発明の混和除濁装置の他の例においては、凝集剤投入部が、槽内で被処理水に対して凝集剤を投入するように取り付けられていても良い。このような態様では、凝集剤投入部が被処理水に対して凝集剤を投入する位置が、槽内において流入口に近い位置であることが好ましい。より具体的には、槽内に流入した直後の被処理水に対して凝集剤を投入し得る位置に、凝集剤投入部が配置されていることが好ましい。このような配置態様とすることで、被処理水と凝集剤との混和時間を長くとることができ、混和除濁装置による固液分離能を一層高めることができるからである。
【0023】
そして、凝集剤としては、特に限定されることなく、硫酸アルミニウム及びポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム系凝集剤;並びに、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、及びポリシリカ鉄等の鉄系凝集剤を用いることができる。なお、凝集剤の注入量等は、被処理水の濁度等に応じて、任意に制御することができる。
【0024】
槽20は、流入口210を経て槽20内に流入してきた凝集剤含有水を混和してフロックを形成してから固液分離する機能を有する。流入口210を経て槽20内に流入してきた凝集剤含有水は、一部を矢印Fにて概略的に示したような、流れを形成しながら、外筒21の内周面及び内筒22の外周面により画定される流路を、内筒22の周りを周回しつつ、槽20内を流下し得る。槽20は、流入口210より槽内に流入してきた凝集剤含有水を処理済水として内筒22により槽外へと流出させるように構成された水槽により、構成されうる。槽20は、特に限定されることなく、例えば、断面円形の筒状胴部(外筒21に相当)を有する耐圧水槽により実装されうる。この場合、内筒22も断面円形の筒状胴部を有し、外筒21及び内筒22は軸線を共有していても良いし、両者の軸線がずれていても良い。尚、槽20は、下部に固形物引き抜き機構を備え得る。なお、槽20の外筒21は、図示したように、上部において、内筒22の外壁に対して接続されることで閉塞している。換言すると、外筒21と内筒22との間隙は、槽20の上部にて閉塞されている。
【0025】
槽20においては、外筒21と内筒22との間隙が、凝集剤含有水を撹拌してフロックを形成するフロック形成領域として機能する。フロック形成領域では、撹拌作用によりフロックが形成されるだけでなく、フロックサイズが大きくなり得る。その一方で、内筒22の下端付近及び内筒22の下端以下の領域にて、凝集剤含有水の流速が低下する。そして、最終的に、フロック形成領域にて形成されたフロックが、沈降速度V2にて沈降する。内筒22の下端付近では、液分が内筒22内を流速V1で流れる上向流にひきつけられて槽20より流出しようとするが、液分よりも重く、かつ、流速V1よりも速い沈降速度V2で沈降するフロックは、その殆どが流速V1に抗して槽20の底部に向かう。その結果、槽20からは液分が流出し、槽20の下部にはフロックとなった固形物が蓄積することとなり、凝集剤含有水が除濁される。このようにして、内筒22の下端以下の領域が、固液分離領域として機能する。なお、槽20より流出する液分は、固液分離しきれなかった固形物を同伴し得るが、その量は、槽20に流入する凝集剤含有水の固形物量よりも格段に少ない。
【0026】
ここで、装置の固液分離能を高めるためには、凝集剤含有水を撹拌する撹拌時間を長くすることが有効である。上記の通り、外筒21と内筒22との間隙がフロック形成領域として機能するため、内筒22の長さが長い程、フロック形成領域のサイズを大きくすることができる。その一方で、固液分離領域は、フロック形成領域で形成されたフロックを沈降させるために充分な長さを有することを必要とする。内筒22の長さは、フロック形成能と、固液分離能とをバランスするように、決定することができる。
【0027】
槽20は、
図2に示したように、下部が下方向に向かって先細のテーパー形状となっていることが好ましい。より具体的には、
図2に示したように、槽20を構成する外筒21が、直胴部を含み、さらに、下部に、上記直胴部から連続するテーパー状部を有していても良い。かかる形状の槽20によれば、フロックの沈降を促進することができ、結果的に、混和除濁装置100による固液分離能を一層高めることができる。
【0028】
さらに、槽20は、下部に、固形物排出機構40を備え得る。図示の例において、固形物排出機構40は、固形物排出管41及び固形物排出弁42により構成されている。固形物排出弁42は、槽20の底部に蓄積した固形物を引き抜くタイミングで開放状態とされ、その他のタイミングでは閉塞状態とされうる。なお、固形物排出弁42を開放するタイミングは、任意に設定することができる。
【0029】
ここで、混和除濁装置100による固液分離能を一層高める観点から、槽20が、外筒21と、内筒22との間の間隙内であって、外筒21の上端と、内筒22の下端との間に、凝集剤含有水を急速撹拌する急速撹拌部を備えることが好ましい。かかる急速撹拌部は、槽20内に流入してきた直後の凝集剤含有水の水流の速度(初速)が、所定の速度よりも速くなる限りにおいて特に限定されることなく、あらゆる構造部により実装されうる。かかる「所定の速度」としては、流入口210を経て槽20内に流入してきた凝集剤含有水の流入速度以上の速度が好ましく、外筒21と内筒22との間隙を少なくとも一周周回するために充分な流速以上の速度がより好ましい。以下、
図3~6を参照して、種々の急速撹拌部の実装態様について説明する。なお、
図3~5では、凝集剤投入部の図示は省略するが、各図面に示した混和除濁装置は、全て凝集剤投入部を備えるものとする。
【0030】
図3は、本発明の混和除濁装置に備えられうる急速撹拌部の第1の例に係る態様を概略的に示す図である。
図3に示す混和除濁装置101においては、外筒21Aの内壁が、槽20Aの上部側に向かって先細のテーパー形状を有しており、急速撹拌部が、外筒21Aの内壁と、内筒22の外壁とにより区画された流路により構成される。被処理水流入ライン30を経て槽20A内に流入してきた凝集剤含有水はかかる流路を周回しながら、槽20Aの下部方向に向かって徐々に流下していく。このとき、流路の断面積が下部方向になる程、大きくなるため、流路内を流れる凝集剤含有水の流速も低下する。従って、槽20A内に流入してきた直後の流速と比較すると、流速が徐々に遅くなる。このため、流入直後には早い流速に従って流路内を流れることで急速撹拌されていた凝集剤含有水が、流路内を流下していくに従って緩速撹拌されることとなる。このような、撹拌強度の変化が、フロックサイズを大きくすることに効果的に寄与し得る。よって、本例に係る混和除濁装置101は、固液分離能に一層優れる。
【0031】
図4は、本発明の混和除濁装置に備えられうる急速撹拌部の第2の例に係る態様を概略的に示す図である。
図4に示す混和除濁装置102においては、内筒22Bの外壁が、槽20Bの下部側に向かって先細のテーパー形状を有しており、外筒21の内壁と、内筒22Bの外壁とにより区画された流路により、急速撹拌部が構成される。
図3に示した態様と同様に、被処理水流入ライン30を経て槽20B内に流入してきた凝集剤含有水はかかる流路を周回しながら、槽20Bの下部方向に向かって徐々に流下していく。
図3に示した態様と同様の原理により、流入直後に生じていた凝集剤含有水に対する急速撹拌作用が、流路内を流下していくに従って徐々に消失し、緩速撹拌作用に切り替わることとなる。このような、撹拌強度の変化が、フロックサイズを大きくすることに効果的に寄与し得る。よって、本例に係る混和除濁装置102も、固液分離能に一層優れる。
【0032】
図5は、本発明の混和除濁装置に備えられうる急速撹拌部の第3の例に係る態様を概略的に示す図である。
図5に示す混和除濁装置103においては、外筒21Cの内壁が、該内壁周面の少なくとも一周にわたり、周面に沿って形成された細流路23を有している。かかる細流路23が、流入口210を経て流入した凝集剤含有水を急速で流すことで、急速撹拌部として機能する。細流路23は、細流路壁部23wと、細流路支持部23sと、外筒21Cの内壁面とにより画定されうる。細流路壁部23wは、外筒21Cの内壁面と並行であっても良いし、外筒21Cの内壁面に対して、傾斜していても良い。なお、細流路壁部23wが、外筒21Cの内壁面に対して傾斜している場合には、細流路壁部23wの上側における、外筒21Cの内壁面と細流路壁部23wとの間の距離が、細流路壁部23wの下側における外筒21Cの内壁面と細流路壁部23wとの間の距離よりも大きくなるような態様で傾斜(例えば、両者のなす角が0°超30°以下)していることが好ましい。
図5に示す例では、流入口210の付近における外筒21Cの内壁面と細流路壁部23wの距離をL1とし、細流路壁部23wの上端における外筒21Cの内壁面と細流路壁部23wとの間の距離をL2とした場合に、L1<L2である。さらに、
図5に示す例において、細流路壁部23wの上端における細流路壁部23wの内筒22C側の壁面と内筒22Cの外壁面との間の距離をL3とすると、L2とL3とが等しいか、或いは、L2よりもL3が大きい。即ち、
図5に示す例では、L1<L2、且つ、L2≦L3の関係が成立している。
【0033】
細流路支持部23sは、外筒21Cの内壁面の全周にわたって、内周面に対して密着して取り付けられている。これにより、急速撹拌部における凝集剤含有水の流れが短絡することを防ぐことができる。従って、槽20C内にて凝集剤含有水が撹拌される時間を長くすることができ、結果的にフロックを形成し、更には、フロックを成長させることを一層促進することが可能となる。
【0034】
細流路23の構造を説明する目的で、
図5におけるI-I断面図を
図6に示す。I-I断面は、流入口210の中心を通り、槽20Cの鉛直方向に対して垂直な面である。
図6より明らかなように、細流路23は、外筒21Cの内壁全周にわたって、途切れることが無いように形成されている。ここで、
図6に示す断面上における、細流路壁部23wと外筒21Cの内壁面との間の距離D
aと、細流路壁部23wと内筒22Cの外壁面との間の距離D
bとを比較した場合に、D
a<D
bである。D
a<D
bの関係が満たされていれば、流入口210を経て槽20C内に流入してきた凝集剤含有水に対して、細流路23内で急速撹拌作用を付与した後に、内筒22Cの外壁と細流路壁部23wとの間に延在する領域(以下、「緩速撹拌部」とも称する。)にて、凝集剤含有水を緩速撹拌することができるため、フロック形成を効率的に促進することが可能となる。
【0035】
凝集剤含有水は、細流路23を周回した後に、細流路23の上側の開放端から流出し、緩速撹拌部に至る。そして、緩速撹拌部にて内筒22Cの周りを周回しながら、流下する。
【0036】
なお、
図6では、D
a及びD
bがそれぞれ一定の値であるものとして図示したが、図示の態様に限定されることは無い。例えば、ある変形例に係る混和除濁装置において、流入口210付近におけるD
aの値が最も小さく、流入口210の反対側付近におけるD
aの値が最も大きくなるように、細流路23を設計しても良い。この場合、槽20Cの鉛直方向に対して垂直な面内において、細流路23内における撹拌強度に変化を付けることができるため、フロック形成を一層促進することが可能となる。
【0037】
さらに、
図5に示すように、内筒22Cは、下部側、より好ましくは、細流路支持部23sよりも下側に、テーパー状部22Ctを有している。テーパー状部22Ctがあれば、テーパー状部22Ctがフロックの沈降促進作用を呈することで、緩速撹拌部を経て流下してきた凝集剤含有水に含まれるフロックの沈降効率を一層高めることができる。
【0038】
さらにまた、
図5に示すように、内筒22Cは、テーパー状部22Ctに連続して、大口径端部22Caを有している。大口径端部22Caを備えることで、サイズの小さいフロック等を内筒22C内に吸いこみ難くすることができる。大口径端部22Caの口径は特に限定されることなく、例えば、内管22C内にて上向流を形成可能な程度に小さく、且つ、沈降速度V2よりも低速の流れを創出可能な程度に大きい口径から、任意に選択することができる。
【0039】
図3~6を参照して説明してきたように、本発明の混和除濁装置において、種々の態様により実装されうる急速撹拌部を採用することで、凝集剤含有水中におけるフロックの形成及び成長を促進することができ、装置の固液分離能を一層高めることができる。この他に、装置の固液分離能を高め得る他の構成としては、
図7を参照して説明するような、らせん状のリブが挙げられる。
【0040】
図7は、下部にらせん状のリブを備える内筒22Dの概略構成図である。図示のような構成を有する内筒22Dは、特に限定されることなく、
図2~6を参照して説明してきたような、あらゆる態様の混和除濁装置にて採用することができる。
図7に示すように、内筒22Dは、その下部にらせん状の第1リブ24a、及び第2リブ24bが配置されている。なお、図示の態様に限定されることなく、内筒は、3枚以上の、或いは、1枚のリブを有していても良い。このような形状の第1リブ24a、及び第2リブ24bは、それぞれ、フロックの沈降を促進するように作用する。従って、第1リブ24a、及び第2リブ24bを含む混和除濁装置の固液分離能を一層高めることができる。また、
図7では内筒22Dのテーパー状の外壁に対してらせん状の第1リブ24a、及び第2リブ24bが配置されている様子を示したが、内筒22Dの形状は、テーパー状に限定されない。より具体的には、直胴型の内筒22Dに対して、少なくとも1枚のらせん状のリブが設けられていても良い。
【0041】
なお、図示しないが、らせん状のリブが、内筒ではなく、槽を構成する外筒の内壁に設けられていても良い。この場合にも、らせん状のリブが、内筒に設けられた場合と同様の、フロック沈降促進効果を呈することができる。また、混和除濁装置の鉛直方向におけるらせん状のリブの位置は、特に限定されることなく、例えば、凝集剤含有水を槽内に流入させる流入口よりも下であり得る。
【0042】
以上、本発明の混和除濁装置の幾つかの例について説明したが、本発明の混和除濁装置は上述した内容に限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例にて採用した態様に限定されるものではない。
【0044】
(実施例)
図1に示す水処理施設200と同様の構造を有する実験機を用いて、被処理水を以下の条件で処理した。なお、本例で採用した混和除濁装置の構造は、
図2に示した構造に従うものであった。より具体的には、混和除濁装置の構造は以下の通りであった。
<混和除濁装置の構造>
被処理水流入ライン:直径15mm
流入口径:15mm
内筒径:65mm
外筒径:100mm
内筒長:400mm
内筒下端から外筒の直胴部下端までの距離:100mm
<処理条件>
凝集剤:ポリ塩化アルミニウム(注入率:80mg/L)
混和除濁装置に対する凝集剤含有水流入速度:1.34L/分
<濁度測定>
被処理水(凝集剤投入前)、及び、混和除濁装置から流出した直後の処理済み水をそれぞれサンプリングし、希釈して濁度計(日本電色工業株式会社、「WA6000」)で濁度を測定した。
上記に従って得られた結果を
図8に示す。
【0045】
図8より、本発明の混和除濁装置によれば、原水濁度が変動しても、混和除濁装置から流出する水の濁度を略一定に維持することができたことが分かる。よって、原水濁度に関わらず、高い固液分離能を発揮することができたことが分かる。従って、かかる水処理施設では、集中豪雨の発生等により、原水中の濁質濃度が不規則に変化する事態が生じた場合であっても、膜ろ過装置の固形分負荷が一時的に過度に高まることが無い。このため、混和除濁装置によれば、水処理施設による水処理効率を高めることが可能となることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の混和除濁装置によれば、高い固液分離能を発揮することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 凝集剤投入部
20,20A,20B,20C 槽
21,21A,21C 外筒
22,22B,22C,22D 内筒
22Ca 大口径端部
22Ct テーパー状部
23 細流路
23s 細流路支持部
23w 細流路壁部
24a 第1リブ
24b 第2リブ
30 被処理水流入ライン
40 固形物排出機構
41 固形物排出管
42 固形物排出弁
100,101,102,103 混和除濁装置
200 水処理施設
201 一次貯水槽
202 膜ろ過装置
203 二次貯水槽
210 流入口