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特許7398449半導体デバイス検査方法及び半導体デバイス検査装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】半導体デバイス検査方法及び半導体デバイス検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20231207BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H01L21/66 C
G01R31/28 L
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021522685
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2020015982
(87)【国際公開番号】W WO2020241083
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2019102283
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】竹嶋 智親
(72)【発明者】
【氏名】樋口 貴文
(72)【発明者】
【氏名】堀田 和宏
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-072290(JP,A)
【文献】特開2007-064975(JP,A)
【文献】特開2010-271307(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0121155(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0097848(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01R 31/26-31/3193
G01M 11/00-11/06
G01N 21/88-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスにおける複数の駆動素子が含まれた第1のスポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第1の混信波形を取得するステップと、
前記第1のスポットの一部と領域が重複し複数の駆動素子が含まれた第2のスポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第2の混信波形を取得するステップと、
前記第1及び第2の混信波形の時間変化を取得し、各時間における前記第1及び第2の混信波形の波高を実現するように、前記第1及び第2のスポット内の駆動素子毎に位置及び波形信号を推定し、推定した該波形信号を分離するステップと、を備える半導体デバイス検査方法。
【請求項2】
分離後の前記波形信号と、参照用の半導体デバイスの波形信号又は論理シミュレーションによって生成された波形信号とを並べて表示するステップを更に備える、請求項1記載の半導体デバイス検査方法。
【請求項3】
分離後の前記波形信号と、参照用の半導体デバイスの波形信号又は論理シミュレーションによって生成された波形信号とを比較するステップを更に備える、請求項2記載の半導体デバイス検査方法。
【請求項4】
分離後の前記波形信号と、論理シミュレーションによって生成された波形信号との比較結果に基づき、前記半導体デバイスと、前記半導体デバイスのレイアウト画像との位置合わせを行うステップを更に備える、請求項3記載の半導体デバイス検査方法。
【請求項5】
分離後の前記波形信号に基づき前記第1及び第2のスポット内の各駆動素子の位置を特定し、特定した各駆動素子の位置に基づき、前記半導体デバイスと、前記半導体デバイスのレイアウト画像との位置合わせを行うステップを更に備える、請求項1~4のいずれか一項記載の半導体デバイス検査方法。
【請求項6】
前記第1のスポットの中心と前記第2のスポットの中心との離間距離は、前記駆動素子を構成するゲート間の離間距離の4倍以下である、請求項1~5のいずれか一項記載の半導体デバイス検査方法。
【請求項7】
前記第1及び第2の混信波形に対してノイズ除去フィルタリングを行うステップを更に備える、請求項1~6のいずれか一項記載の半導体デバイス検査方法。
【請求項8】
前記第1及び第2の混信波形に基づいて、前記第1及び第2のスポット内における任意の位置の波形信号を再構成するステップを更に備える、請求項1~7のいずれか一項記載の半導体デバイス検査方法。
【請求項9】
前記第1及び第2のスポットに光を照射するステップと、
前記第1のスポットに照射された光に対する反射光である前記第1のスポットからの光、及び、前記第2のスポットに照射された光に対する反射光である前記第2のスポットからの光を検出するステップと、を更に備える、請求項1~8のいずれか一項記載の半導体デバイス検査方法。
【請求項10】
前記第1のスポットにおける前記半導体デバイスからの発光である前記第1のスポットからの光、及び、前記第2のスポットにおける前記半導体デバイスからの発光である前記第2のスポットからの光を検出するステップと、を更に備える、請求項1~8のいずれか一項記載の半導体デバイス検査方法。
【請求項11】
半導体デバイスにおける複数の駆動素子が含まれた第1のスポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第1の混信波形を取得するステップと、
前記第1のスポットの一部と領域が重複し複数の駆動素子が含まれた第2のスポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第2の混信波形を取得するステップと、
前記第1及び第2の混信波形から、前記第1及び第2のスポットで取得される波高を取得し、該波高と、位置をランダムに設定した前記複数の駆動素子の影響を合算した信号の波高とを比較する処理を繰り返すことにより前記複数の駆動素子の位置及び波形信号を推定し、推定した該波形信号を分離するステップと、を備える半導体デバイス検査方法。
【請求項12】
半導体デバイスからの光を検出する光検出器と、
解析部と、を備え、
前記解析部は、
前記光検出器が検出する光のうち、前記半導体デバイスにおける複数の駆動素子が含まれた第1のスポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第1の混信波形を取得することと、
前記光検出器が検出する光のうち、前記第1のスポットの一部と領域が重複し複数の駆動素子が含まれた第2のスポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第2の混信波形を取得することと、
前記第1及び第2の混信波形の時間変化を取得し、各時間における前記第1及び第2の混信波形の波高を実現するように、前記第1及び第2のスポット内の駆動素子毎に位置及び波形信号を推定し、推定した該波形信号を分離することと、を実行するように構成されている、半導体デバイス検査装置。
【請求項13】
分離後の前記波形信号と、参照用の半導体デバイスの波形信号又は論理シミュレーションによって生成された波形信号とを並べて表示する表示部を更に備える、請求項1記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項14】
前記解析部は、分離後の前記波形信号と、参照用の半導体デバイスの波形信号又は論理シミュレーションによって生成された波形信号とを比較することを更に実行するように構成されている、請求項1記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項15】
前記解析部は、分離後の前記波形信号と、論理シミュレーションによって生成された波形信号との比較結果に基づき、前記半導体デバイスと、前記半導体デバイスのレイアウト画像との位置合わせを行うことを更に実行するように構成されている、請求項1記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項16】
前記解析部は、分離後の前記波形信号に基づき前記第1及び第2のスポット内の各駆動素子の位置を特定し、特定した各駆動素子の位置に基づき、前記半導体デバイスと、前記半導体デバイスのレイアウト画像との位置合わせを行うことを更に実行するように構成されている、請求項12~14のいずれか一項記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項17】
前記第1のスポットの中心と前記第2のスポットの中心との離間距離は、前記駆動素子を構成するゲート間の離間距離の4倍以下である、請求項12~16のいずれか一項記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項18】
前記解析部は、前記第1及び第2の混信波形に対してノイズ除去フィルタリングを行うことを更に実行するように構成されている、請求項12~17のいずれか一項記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項19】
前記解析部は、前記第1及び第2の混信波形に基づいて、前記第1及び第2のスポット内における任意の位置の波形信号を再構成することを更に実行するように構成されている、請求項12~18のいずれか一項記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項20】
前記第1及び第2のスポットに照射される光を発生する光発生部を更に備え、
前記光検出器は、前記第1のスポットに照射された光に対する反射光である前記第1のスポットからの光、及び、前記第2のスポットに照射された光に対する反射光である前記第2のスポットからの光を検出する、請求項12~19のいずれか一項記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項21】
前記光検出器は、前記第1のスポットにおける前記半導体デバイスからの発光である前記第1のスポットからの光、及び、前記第2のスポットにおける前記半導体デバイスからの発光である前記第2のスポットからの光を検出する、請求項12~19のいずれか一項記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項22】
半導体デバイスからの光を検出する光検出器と、
解析部と、を備え、
前記解析部は、
前記光検出器が検出する光のうち、前記半導体デバイスにおける複数の駆動素子が含まれた第1のスポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第1の混信波形を取得することと、
前記光検出器が検出する光のうち、前記第1のスポットの一部と領域が重複し複数の駆動素子が含まれた第2のスポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第2の混信波形を取得することと、
前記第1及び第2の混信波形から、前記第1及び第2のスポットで取得される波高を取得し、該波高と、位置をランダムに設定した前記複数の駆動素子の影響を合算した信号の波高とを比較する処理を繰り返すことにより前記複数の駆動素子の位置及び波形信号を推定し、推定した該波形信号を分離することと、を実行するように構成されている、半導体デバイス検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体デバイス検査方法及び半導体デバイス検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを検査する技術として、EOP(Electro Optical Probing)やEOFM(Electro-Optical Frequency Mapping)と称される光プロービング技術が知られている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。光プロービング技術では、光源から出射された光を半導体デバイスに照射し、半導体デバイスで反射された反射光を光センサで検出して、検出信号を取得する。そして、取得した検出信号において、信号の時間変化を波形として表示したり、目的とする周波数を選び出し、その振幅エネルギーの時間的な経過を2次元のマッピングとして表示したりする。これにより、指定箇所の動作が正常か異常かを判断したり、目的とした周波数で動作している回路の位置を特定することができる。光プロービング技術は、半導体デバイスにおける故障個所及び故障原因などを特定し解析し得ることから、極めて有効な検査技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-64975号公報
【文献】特開2010-271307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、半導体デバイスが小型化することにより、半導体デバイスに向けて出射される光のビームスポットが半導体デバイスにおける複数の駆動素子に跨ることが考えられる。この場合、検出信号においては混信(複数の駆動素子それぞれの反射光に応じた信号の混在)が生じる。混信状態の検出信号に基づく波形(混信波形)からは、半導体デバイスの検査を高精度に行うことができないおそれがある。
【0005】
本発明の一態様は上記実情に鑑みてなされたものであり、半導体デバイス検査の高精度化を図ることができる半導体デバイス検査方法及び半導体デバイス検査装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る半導体デバイス検査方法は、半導体デバイスにおける複数の駆動素子が含まれた第1のスポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第1の混信波形を取得するステップと、第1のスポットの一部と領域が重複し複数の駆動素子が含まれた第2のスポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第2の混信波形を取得するステップと、第1及び第2の混信波形に基づいて、第1及び第2のスポット内の駆動素子毎に波形信号を分離するステップと、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る半導体デバイス検査方法では、複数の駆動素子が含まれた第1のスポットからの光に基づく第1の混信波形と、第1のスポットの一部と領域が重複し複数の駆動素子が含まれた第2のスポットからの光に基づく第2の混信波形とが取得され、第1及び第2の混信波形に基づいて、第1及び第2のスポット内の駆動素子毎に波形信号が分離される。例えば、互いに領域が重複するスポットそれぞれの混信波形の時間変化が取得されることにより、混信波形に係るスポットに含まれた複数の駆動素子の位置に応じた影響度(それぞれの混信波形における各駆動素子の信号の関与状況)を推定することができる。このような複数の駆動素子の位置に応じた影響度を考慮することによって、混信波形から、スポット内の各駆動素子の波形信号を適切に分離することができる。このように、混信波形から各駆動素子の波形信号(本来の波形)が適切に分離されることによって、分離後の駆動素子の波形信号に基づき、半導体デバイス検査を高精度に行うことができる。
【0008】
上記半導体デバイス検査方法は、分離後の波形信号と、参照用の半導体デバイスの波形信号又は論理シミュレーションによって生成された波形信号とを並べて表示するステップを更に備えていてもよい。これにより、半導体デバイスの検査時において、参照サンプル(参照用の半導体デバイスの波形信号又は論理シミュレーションによって生成された波形信号)との差異を分かり易くユーザに表示することができる。このことで、半導体デバイス検査をより高精度に行うことができる。
【0009】
上記半導体デバイス検査方法は、分離後の波形信号と、参照用の半導体デバイスの波形信号又は論理シミュレーションによって生成された波形信号とを比較するステップを更に備えていてもよい。これにより、半導体デバイスの検査時において、参照サンプル(参照用の半導体デバイスの波形信号又は論理シミュレーションによって生成された波形信号)との差異を特定することができる。このことで、半導体デバイス検査をより高精度に行うことができる。
【0010】
上記半導体デバイス検査方法は、分離後の波形信号と、論理シミュレーションによって生成された波形信号との比較結果に基づき、半導体デバイスと、半導体デバイスのレイアウト画像との位置合わせを行うステップを更に備えていてもよい。これにより、波形信号の類似度に基づいて上記位置合わせを行い、位置合わせ後においてはレイアウト画像に基づき半導体デバイス検査(故障位置の特定等)をより高精度に行うことができる。
【0011】
上記半導体デバイス検査方法は、分離後の波形信号に基づき第1及び第2のスポット内の各駆動素子の位置を特定し、特定した各駆動素子の位置に基づき、半導体デバイスと、半導体デバイスのレイアウト画像との位置合わせを行うステップを更に備えていてもよい。駆動素子の位置に基づいて位置合わせが行われることにより、波形信号を比較する場合等と比較してより容易に上記位置合わせを行うことができ、位置合わせ後においてはレイアウト画像に基づき半導体デバイス検査(故障位置の特定等)をより高精度に行うことができる。
【0012】
上記半導体デバイス検査方法において、第1のスポットの中心と第2のスポットの中心との離間距離は、駆動素子を構成するゲート間の離間距離の4倍以下であってもよい。これにより、第1のスポットからの光に応じた波形及び第2のスポットからの光に応じた波形を、適切に混信波形(複数の駆動素子からの信号に基づく第1の混信波形、及び、複数の駆動素子からの信号に基づく第2の混信波形)とすることができる。
【0013】
上記半導体デバイス検査方法は、第1及び第2の混信波形に対してノイズ除去フィルタリングを行うステップを更に備えていてもよい。例えばディープラーニング等を利用してノイズを除去することによって、ノイズを除去した混信波形に基づき、波形信号の分離を適切に行うことができる。
【0014】
上記半導体デバイス検査方法は、第1及び第2の混信波形に基づいて、第1及び第2のスポット内における任意の位置の波形信号を再構成するステップを更に備えていてもよい。これにより、単に駆動素子の波形信号(混信波形から分離した波形信号)を取得するだけでなく、分離した波形信号に基づいて任意の位置の波形信号を取得することができる。
【0015】
上記半導体デバイス検査方法は、第1及び第2のスポットに光を照射するステップと、第1のスポットに照射された光に対する反射光である第1のスポットからの光、及び、第2のスポットに照射された光に対する反射光である第2のスポットからの光を検出するステップと、を更に備えていてもよい。これにより、反射光に応じて、例えばEOP等の光プロービング技術を用いて、半導体デバイス検査を高精度に行うことができる。
【0016】
上記半導体デバイス検査方法は、第1のスポットにおける半導体デバイスからの発光である第1のスポットからの光、及び、第2のスポットにおける半導体デバイスからの発光である第2のスポットからの光を検出するステップと、を更に備えていてもよい。これにより、半導体デバイスからの発光に応じて、例えば時間分解発光解析等の技術を用いて、半導体デバイス検査を高精度に行うことができる。
【0017】
本発明の一態様に係る半導体デバイス検査装置は、半導体デバイスからの光を検出する光検出器と、解析部と、を備え、解析部は、光検出器が検出する光のうち、半導体デバイスにおける複数の駆動素子が含まれた第1のスポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第1の混信波形を取得することと、光検出器が検出する光のうち、第1のスポットの一部と領域が重複し複数の駆動素子が含まれた第2のスポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第2の混信波形を取得することと、第1及び第2の混信波形に基づいて、第1及び第2のスポット内の駆動素子毎に波形信号を分離することと、を実行するように構成されている。
【0018】
上記半導体デバイス検査装置は、分離後の波形信号と、参照用の半導体デバイスの波形信号又は論理シミュレーションによって生成された波形信号とを並べて表示する表示部を更に備えていてもよい。
【0019】
上記半導体デバイス検査装置において、解析部は、分離後の波形信号と、参照用の半導体デバイスの波形信号又は論理シミュレーションによって生成された波形信号とを比較することを更に実行するように構成されていてもよい。
【0020】
上記半導体デバイス検査装置において、解析部は、分離後の波形信号と、論理シミュレーションによって生成された波形信号との比較結果に基づき、半導体デバイスと、半導体デバイスのレイアウト画像との位置合わせを行うことを更に実行するように構成されていてもよい。
【0021】
上記半導体デバイス検査装置において、解析部は、分離後の波形信号に基づき第1及び第2のスポット内の各駆動素子の位置を特定し、特定した各駆動素子の位置に基づき、半導体デバイスと、半導体デバイスのレイアウト画像との位置合わせを行うことを更に実行するように構成されていてもよい。
【0022】
上記半導体デバイス検査装置において、第1のスポットの中心と第2のスポットの中心との離間距離は、駆動素子を構成するゲート間の離間距離の4倍以下であってもよい。
【0023】
上記半導体デバイス検査装置において、解析部は、第1及び第2の混信波形に対してノイズ除去フィルタリングを行うことを更に実行するように構成されていてもよい。
【0024】
上記半導体デバイス検査装置において、解析部は、第1及び第2の混信波形に基づいて、第1及び第2のスポット内における任意の位置の波形信号を再構成することを更に実行するように構成されていてもよい。
【0025】
上記半導体デバイス検査装置は、第1及び第2のスポットに照射される光を発生する光発生部を更に備え、光検出器は、第1のスポットに照射された光に対する反射光である第1のスポットからの光、及び、第2のスポットに照射された光に対する反射光である第2のスポットからの光を検出してもよい。
【0026】
上記半導体デバイス検査装置は、光検出器は、第1のスポットにおける半導体デバイスからの発光である第1のスポットからの光、及び、第2のスポットにおける半導体デバイスからの発光である第2のスポットからの光を検出してもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、半導体デバイス検査の高精度化を図ることができる半導体デバイス検査方法及び半導体デバイス検査装置を提供することがきる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態に係る半導体デバイス検査装置の構成図である。
図2】デバイスパターンと光ビームスポットの関係の一例を示す図である。
図3】混信波形を説明する図である。
図4】光ビームスポットの設定例を示す図である。
図5】各光ビームスポットにおける混信波形について説明する図である。
図6】異常発生個所の特定手法の概要を説明する図である。
図7】不良サンプルと参照サンプルの混信波形同士を比較する場合の、各波形の一致度を示す図である。
図8】不良サンプルと参照サンプルの分離波形同士を比較する場合の、各波形の一致度を示す図である。
図9】互いに領域の一部が重複する3つの光ビームスポットそれぞれのグリッド点に関して取得した、混信波形の時間変化を示している。
図10図9に示されるグリッド点を含む、各グリッド点の波高の時間変化を表現した図である。
図11図10(c)に示される時刻:t3における各グリッド点の波高を再現する信号分布を示す図である。
図12】混信波形の時間変化から駆動素子の位置を推定する処理を説明する図である。
図13】各時刻について再現された混信波形の波高曲面を示す図である。
図14】駆動素子の位置分布について説明する図である。
図15】駆動素子毎に波形信号を分離する処理を説明する図である。
図16】波形信号の分離処理を説明する図である。
図17】波形信号の分離処理を説明する図である。
図18】波形信号の分離処理を説明する図である。
図19】任意の位置に再構成された波形信号を考慮して異常発生個所を特定する処理を説明する図である。
図20】半導体デバイスとレイアウト画像との位置合わせについて説明する図である。
図21】半導体デバイス検査装置が行う半導体デバイス検査方法に係る処理を示すフローチャートである。
図22】モニタにおける画面イメージの一例である。
図23】モニタにおける画面イメージの一例である。
図24】モニタにおける画面イメージの一例である。
図25】モニタにおける画面イメージの一例である。
図26】モニタにおける画面イメージの一例である。
図27】モニタにおける画面イメージの一例である。
図28】モニタにおける画面イメージの一例である。
図29】モニタにおける画面イメージの一例である。
図30】モニタにおける画面イメージの一例である。
図31】光ビームスポットの設定例を示す図である。
図32】各駆動素子の動作タイミングを説明する図である。
図33】混信波形に含まれる各発光波形を示す図である。
図34】信号のタイミングに基づく波形信号の分離を説明する図である。
図35】再構成された波形信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る半導体デバイス検査装置1の構成図である。半導体デバイス検査装置1は、被検査デバイス(DUT:Device Under Test)である半導体デバイス100において異常発生箇所を特定するなど、半導体デバイス100を検査(計測)するための装置である。
【0031】
半導体デバイス100としては、トランジスタ等のPNジャンクションを有する集積回路(IC:Integrated Circuit)、あるいは大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)であるロジックデバイス、メモリデバイス、アナログデバイス、さらに、それらを組み合わせたミックスドシグナルデバイス、または、大電流用/高圧用MOSトランジスタ、バイポーラトランジスタ、IGBT等の電力用半導体デバイス(パワーデバイス)であってもよい。
【0032】
半導体デバイス検査装置1は、光プロービング技術を利用して半導体デバイス100を検査する。本実施形態では、半導体デバイス検査装置1は、EOP(Electro Optical Probing)と称される光プロービング技術を利用して半導体デバイス100を検査するとして説明する。なお、半導体デバイス検査装置1は、その他の光プロービング技術によって半導体デバイス100を検査するものであってもよい。EOPにより半導体デバイス100を検査する場合には、半導体デバイス100のゲート100aに電圧パターン(動作パルス信号)がテスタ(不図示)により掃引されることによって半導体デバイス100のドレインポテンシャルが変化し、半導体デバイス100のキャリア密度が変化し、半導体デバイス100の屈折率及び光吸収率が変化する。この状態において、光源11から出射された光が半導体デバイス100に照射されると、屈折率及び光吸収率の変化に応じて、反射光の強度及び位相が変化する。このような反射光を光検出器16で検出して、検出信号を取得する。そして、取得した検出信号において、その振幅エネルギーを時間的な経過として表示することによって、波形(EOP波形)を得ることができる。半導体デバイス検査装置1は、例えばEOP波形に基づいて、半導体デバイス100における異常発生個所の特定を行う。
【0033】
半導体デバイス検査装置1は、EOP波形を得るに際して、半導体デバイス100の駆動素子毎に波形信号を分離する。以下では、図2図8を参照して、半導体デバイス検査装置1が行う波形信号の分離に関する説明を行う。
【0034】
図2は、デバイスパターンと光ビームスポットの関係の一例を示す図である。図2(a)は180nmプロセスを用いた半導体デバイスのデバイスパターンと光ビームスポットBSの関係を示しており、図2(b)は45nmプロセスを用いた半導体デバイスのデバイスパターンと光ビームスポットBSの関係を示しており、図2(c)は10nmプロセスを用いた半導体デバイスのデバイスパターンと光ビームスポットBSの関係を示している。ここで、波長1300nmの光を固浸レンズ(SIL:Solid Immersion Lens)と呼ばれる像分解能を向上させる特殊なレンズで集光した時、固浸レンズの性能を決定する開口率(NA:Numerical Aperture)と呼ばれる物理量が3.1とした場合、理論的にレイリーの計算式に従うと、256nmが像分解能と計算される。その時の光のスポットはFWHMに対応する直径が214nm、エアリーディスクと呼ばれるスポット全体の直径に対応する大きさが512nmとなる。図2では、光ビームスポットBSの中央部の色の濃い部分の直径が214nmのFWHM、周辺の色の薄い部分の直径が512nmのエアリーディスクとして表記している。図2(a)に示される180nmプロセスを用いた半導体デバイスにおいては、コンタクトゲートのピッチが比較的大きく設計されているため、光ビームスポットBSが1つの駆動素子150aにのみ重なっている(すなわち、1つの駆動素子150aにのみ光を照射することができる)。この場合には、1つの駆動素子の反射光に応じた検出信号が取得される。一方で、図2(b)に示される45nmプロセスを用いた半導体デバイスにおいては、180nmプロセスを用いた半導体デバイスと比較してコンタクトゲートのピッチが小さくなるため、光ビームスポットBSが複数の駆動素子150bに跨っている(すなわち、複数の駆動素子150bに光が照射される)。この場合には、検出信号においては混信(複数の駆動素子150bそれぞれの反射光に応じた信号の混在)が生じる。同様に、更に小型化された図2(c)に示される10nmプロセスを用いた半導体デバイスにおいても、光ビームスポットBSが複数の駆動素子150cに跨っており、検出信号においては混信が生じる。このように、近年の小型化された半導体デバイスを光プロービング技術により検査する場合には、検出信号における混信が問題となる。
【0035】
図3は、混信波形を説明する図である。混信状態の検出信号に基づくEOP波形(混信波形)は、複数の駆動信号の波形信号が重ね合わされて形成されている。例えば図3に示される例では、駆動素子Aの波形信号と駆動素子Bの波形信号との位相差がπ/4程度ある。このような2つの波形信号が重ね合わされた混信波形においては、波高が2段階になっている。
【0036】
半導体デバイス検査装置1は、上記のような混信波形から、各駆動素子の波形信号を分離することによって、半導体デバイス100の検査精度を高めるものである。図4は、光ビームスポットBSの設定例を示す図である。図4に示される例では、複数の駆動素子150(図4中に示される「素子1~素子9」)がグリッド状に配置されている。そして、半導体デバイス検査装置1では、複数の光ビームスポットBSが互いの領域の一部が重なり合うようにして、グリッド状に設定される。例えば、図4に示される例では、光ビームスポットBS1は、光ビームスポットBS2,BS3,BS4,BS5,BS6と、その領域の一部が重なり合うように設定されており、光ビームスポットBS2は、光ビームスポットBS1,BS3,BS4,BS5,BS6と、その領域の一部が重なり合うように設定されている。そして、本実施形態では、半導体デバイス100として、例えば45nmプロセスを用いた半導体デバイス(又はそれよりも小型化された半導体デバイス)が用いられており、各光ビームスポットBSが複数の駆動素子150に跨っている。例えば図4に示される例では、光ビームスポットBS1は、「素子1」「素子2」「素子4」「素子5」で示される駆動素子150に跨っており、光ビームスポットBS2は、「素子1」「素子2」「素子3」「素子4」「素子5」「素子6」で示される駆動素子150に跨っている。このため、各光ビームスポットからの光(反射光)に応じて取得される信号には、複数の駆動素子150からの信号が混信している。すなわち、半導体デバイス検査装置1は、各光ビームスポットからの光に応じて、それぞれ混信波形を取得することができる。なお、光ビームスポットBSの設定時においては、各光ビームスポットBSとどの駆動素子150とが重なっているかは分かっていない。
【0037】
図5は、各光ビームスポットBSにおける混信波形について説明する図である。図5(a)は、各駆動素子150(「素子1」~「素子9」)の波形信号を示す図である。図5(b)は、各光ビームスポットBS(BS1~BS9)における混信波形を示す図である。上述したように、各光ビームスポットBSにおいて取得される信号には複数の駆動素子150からの信号が混信しているため、図5(b)に示されるように、各光ビームスポットBSにおいて取得される波形は混信波形となる。半導体デバイス100における異常発生個所を特定する場合等においては、図5(a)に示されるような各駆動素子150(「素子1」~「素子9」)毎の波形信号を取得することが重要である。そこで、本実施形態の半導体デバイス検査装置1は、図5(b)に示されるような、各光ビームスポットBSにおいて取得される混信波形から、図5(a)に示されるような各駆動素子150(「素子1」~「素子9」)の波形信号を取得(分離)する。波形信号の分離手法については後述する。
【0038】
そして、半導体デバイス検査装置1は、混信波形から分離して得た分離波形(駆動素子毎の波形信号)に基づいて、異常発生個所の特定を行う。図6は、異常発生個所の特定手法の概要を説明する図である。図6(a)においては、異常発生が疑われる半導体デバイス(不良サンプル)の複数の混信波形から分離波形を取得することが示されている。また、図6(b)においては、異常が発生していない半導体デバイス(参照サンプル)の複数の混信波形から分離波形を取得することが示されている。半導体デバイス検査装置1は、不良サンプルの分離波形と参照サンプルの分離波形とを比較し、波形同士が類似しているものの、タイミングずれ等が生じており互いの一致度が低い箇所を特定する。半導体デバイス検査装置1は、このようなタイミングずれ等が生じている箇所に基づいて、不良サンプルにおける異常発生個所を特定する。
【0039】
不良サンプルと参照サンプルの分離波形同士を比較して異常発生個所を特定することの優位性(混信波形同士を比較する場合と比べた、精度面での有意性)について、図7及び図8を参照して説明する。図7は、不良サンプルと参照サンプルの混信波形同士を比較する場合の、各波形の一致度を示す図である。図7に示されるように、上から5個目の波形において、不良サンプルの波形と参照サンプルの波形との一致度が0.8603となっている。図8は、不良サンプルと参照サンプルの分離波形同士を比較する場合の、各波形の一致度を示す図である。図8に示されるように、上から5番目の波形において、不良サンプルの波形と参照サンプルの波形との一致度が0.8059となっている。上述したように、異常発生個所を特定するに際しては、不良サンプルの波形と参照サンプルの波形との一致度が低い箇所を特定するところ、分離波形同士を比較する場合のほうが、異常発生個所における不良サンプルの波形と参照サンプルの波形との一致度を低く導出することができている。このことから、分離波形同士を比較することによって、異常発生個所の特定を、より確実且つ高精度に行うことができると言える。なお、一致度は、例えばピアソンの相関係数が計算されることにより導出される。
【0040】
図1に戻り、半導体デバイス検査装置1の構成について説明する。半導体デバイス検査装置1は、光源11(光発生部)と、導光レンズ12と、光分岐光学系13と、対物レンズ14と、集光レンズ15と、光検出器16と、制御装置20(解析部)と、モニタ30(表示部)と、暗箱50とを備えている。暗箱50は、上述した構成のうち制御装置20及びモニタ30以外の構成を収容しており、収容した各構成に外部の光の影響が及ぼされることを回避するために設けられている。
【0041】
光源11は、半導体デバイス検査装置1の光ビームスポットに照射される光を発生させ、該光を出力する。光源11は例えばSLD(Super Luminescent Diode)で構成されている。なお、光源11は、LD(LaserDiode)などのレーザー光源やLED(Light Emitting Diode)、又はランプ光源を用いたインコヒーレント光源等であってもよい。導光レンズ12は、例えば単独又は複合の凸レンズであり、光源11から出力された光を光分岐光学系13に導く。
【0042】
ここで、互いに隣り合う光ビームスポット同士の間隔と、互いに隣り合う駆動素子を構成するゲート同士の間隔との関係について説明する。本実施形態に係る波形信号の分離手法においては、隣り合う光ビームスポットに同じ駆動素子が含まれた状態で各光ビームスポットにおいて混信状態となっている必要がある。そのため、光ビームスポットの間隔(グリッドピッチ)及びゲートの間隔(ゲートピッチ)は、上述した混信状態となるように、特定の範囲内に設定される。例えばグリッドピッチをゲートピッチと無関係に設定された場合においては、光ビームスポット毎に混信比率が変化してしまう。光ビームスポット毎の混信比率を互いに一定とするためには、グリッドピッチを例えばゲートピッチの整数倍等としてもよい。また、グリッドピッチをゲートピッチに対して過度に大きくした場合には、混信しない(適切に情報が入らない)光ビームスポットが生じてしまう。例えば、ビーム条件を、波長λ=1300nm、対物レンズ14の開口率NA=3.1、半値全幅FWHM(full width at half maximum)=214nmとし、半導体デバイス100のデバイス条件として、ゲート長l=28nm、ゲートピッチをゲート長lの4倍程度としたような場合においては、グリッドピッチをゲートピッチの4倍よりも大きくすると、適切に混信が生じないおそれがある。すなわち、第1の光ビームスポットの中心と、該第1の光ビームスポットと隣り合う第2の光ビームスポットの中心との離間距離は、駆動素子を構成するゲート間の離間距離の4倍以下としてもよい。
【0043】
光分岐光学系13は、光源11から出力されると共に導光レンズ12を経て到達した光を半導体デバイス100方向に透過する。光分岐光学系13は、半導体デバイス100上を照射光で走査する光走査光学系を更に備えていてもよい。対物レンズ14は、光分岐光学系13によって導かれた光(照射光)を半導体デバイス100に集光する。なお、半導体デバイス100における集光ポイントである光ビームスポットは、例えば、半導体デバイス100を保持するチャック(不図示)がXY方向(前後・左右方向)、すなわちチャックにおける半導体デバイス100の載置面に沿った方向に移動させられることによって切り替えられる。このようなチャックは、例えばXYステージ(不図示)によってXY方向(前後・左右方向)に移動させられる。XYステージは、制御装置20による制御に応じて、予め設定されている複数の光ビームスポットが順次、照射光の照射領域とされるように、チャックをXY方向に移動させる。
【0044】
また、光分岐光学系13は、半導体デバイス100に照射された光に対して半導体デバイス100が反射した反射光を光検出器16方向に導く。集光レンズ15は、反射光を光検出器16に集光する。
【0045】
光検出器16は、光分岐光学系13及び集光レンズ15を経て到達した反射光を検出し、該反射光に応じた検出信号を出力する。光検出器16は、APD(Avalanche Photo Diode)やPD(Photo Diode)、PMT(Photo Multiplier Tube)等である。
【0046】
制御装置20は、XYステージ(不図示)、光源11、及び光検出器16を制御する。具体的には、制御装置20は、XYステージを制御することにより照射光の照射領域(光ビームスポット)の切り替えを制御する。制御装置20は、光源11を制御することにより照射の出射調整並びに照射光の波長及び振幅等の調整を行う。制御装置20は、光検出器16を制御することにより反射光の検出に係る調整を行う。また、制御装置20は、各光ビームスポットにおいて取得される反射光に応じて各混信波形を取得し、各混信波形に基づいて、各光ビームスポット内の駆動素子毎に波形信号を分離する。波形信号の分離に係る制御装置20の機能については後述する。
【0047】
なお、制御装置20は、コンピュータであって、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、CPU等のプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部を備えて構成されている。かかる制御装置20としては、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス(スマートフォン、タブレット端末など)などが挙げられる。制御装置20は、メモリに格納されるプログラムをコンピュータシステムのCPUで実行することにより機能する。また、制御装置20はマイコンやFPGAで構成されていてもよい。
【0048】
次に、波形信号の分離に係る制御装置20の機能について詳細に説明する。
【0049】
制御装置20は、光検出器16が検出する反射光のうち、半導体デバイス100における複数の駆動素子が含まれた第1の光ビームスポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第1の混信波形を取得することと、光検出器16が検出する反射光のうち、第1の光ビームスポットの一部と領域が重複し複数の駆動素子が含まれた第2の光ビームスポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第2の混信波形を取得することと、第1及び第2の混信波形に基づいて、第1及び第2の光ビームスポット内の駆動素子毎に波形信号を分離することと、を実行するように構成されている。第1及び第2の光ビームスポットとは、互いに領域の一部が重複する光ビームスポットが複数(少なくとも2つ以上)あることを示している。また、第1及び第2の混信波形とは、駆動素子毎に波形信号を分離するに際して複数(少なくとも2つ以上)の混信波形を用いることを示している。以下では、各光ビームスポットの中心(混信波形を取得する点)をグリッド点と記載する場合がある。
【0050】
具体的な波形信号の分離処理の一例について説明する。ここでは、各混信波形の時間変化を取得し、各時間における各混信波形の波高を実現するように、各駆動素子の位置及び波形信号(混信波形から分離される各波形信号)を推定する手法を説明する。
【0051】
図9は、互いに領域の一部が重複する3つの光ビームスポットそれぞれのグリッド点I~IIIに関して取得した、混信波形の時間変化を示している。図9(a)はグリッド点Iについての混信波形の時間変化(時刻:t1~t3を含む)を示している。図9(b)はグリッド点IIについての混信波形の時間変化(時刻:t1~t3を含む)を示している。図9(c)はグリッド点IIIについての混信波形の時間変化(時刻:t1~t3を含む)を示している。図10は、図9に示されるグリッド点I~IIIを含む、各グリッド点の波高の時間変化を表現した図である。図10(a)は、時刻:t1における各グリッド点の波高を示している。図10(b)は、時刻:t2における各グリッド点の波高を示している。図10(c)は、時刻:t3における各グリッド点の波高を示している。本手法では、グリッド点毎の波高を再現することによって、混信以前の波形(すなわち、各駆動素子の波形信号)を求める。
【0052】
図11は、図10(c)に示される時刻:t3における各グリッド点の波高を再現する信号分布を示す図である。制御装置20は、例えばグリッド設定範囲内に、複数の解析点を設定する。解析点は、例えばグリッド内を画像表示した際の各ピクセルとされてもよい。そして、制御装置20は、例えば各解析点にビーム径に相当するガウス分布を適宜仮定して計算を繰り返し、各グリッド点の特定時刻における波高(図11に示される縦棒線の長さ)を再現する組み合わせ(各解析点の波形信号の組み合わせ)を求める。これにより、各解析点の中から駆動素子に相当する点(位置)及び波形信号を推定することができる。なお、上述したガウス分布を仮定することに変えて、ビーム収束分布により近いベッセル関数を使用してもよい。適当な位置にガウス分布(又はベッセル関数)を設定し、各位置の寄与を加算することにより、グリッド設定平面上の混信波形変化を求めることができる。
【0053】
図12は、混信波形の時間変化から駆動素子の位置を推定する処理を説明する図である。図12においては、上段から順に、時刻:t1における各グリッド点での波高、時刻:t2における各グリッド点での波高、時刻:t3における各グリッド点での波高を示している。図12においては、横軸が位置、縦軸が波高を示しており、縦棒線がグリッド点で検出された波高を示している。制御装置20は、各時刻について、グリッド点での波高を再現する信号の組み合わせを求める。すなわち、制御装置20は、グリッド点での波高が再現されるように、グリッド範囲内のグリッド内域点(解析点)からの信号の関与状況を表すガウス分布の位置を計算し、各信号によってグリッド点での波高を再現することによって、混信状態を示す曲線(図12参照)を導出する。混信状態を再現するグリッド内域点は、最初は適宜ランダムに設定され、グリッド点での波高が再現されるように繰り返し計算され、計算が収束することによって座標(位置)が求まる。このような計算を、異なった時刻においてそれぞれ実施することによって、グリッド内域点は複数の定まった座標に収束することとなる。
【0054】
図12に示される例では、例えばグリッド内域点は、座標:a,b,c,e,f,hとなり、座標:a,b,c,e,f,hからの信号の寄与だけで各時刻におけるグリッド点での波高を再現することができる。このことは、座標:a,b,c,e,f,hに、ハイ/ロー変化を示す信号の発生源(すなわち駆動素子)が存在していることを意味している。一方で、図12に示される座標:d,gについては、どの時刻においても波高変化の再現には用いられておらず、座標:d,gには駆動素子が存在していないと言える。上述したような駆動素子の位置は、多くの時刻に関して計算を行うことによって、より高精度に導出することができる。駆動素子の座標の一部を求めた後においては、その座標に信号発生源が存在するとして、その座標でガウス分布をオン/オフして波高を再現することが可能となり、他の駆動素子の座標を求める際の計算時間を短縮することができる。
【0055】
図13は、各時刻について再現された混信波形の波高曲面を示す図である。図13(a)は時刻:t1における混信波形の波高曲面、図13(b)は時刻:t2における混信波形の波高曲面、図13(c)は時刻:t3における混信波形の波高曲面を示す図である。図14は、駆動素子の位置分布について説明する図である。図13(a)~図13(c)に示されるように混信波形の波高曲面が時間変化している場合において、該波高曲面を形成するガウス分布の設定座標(波高曲面再現ポイント)が図14(a)のハッチングで示される各位置であったとする。このような波高曲面再現ポイントとは、駆動素子の位置であると言い換えることができるので、駆動素子(信号出力素子)の分布は図14(b)に示されるようになる。一方、半導体デバイス100のレイアウト画像からは、信号を出力可能な駆動素子(トランジスタ)を特定することができる。図14(c)に示されるレイアウト画像においては、模式的に駆動素子(トランジスタ)が狭い3本の長方形、信号を発しないパターンが広い長方形で示されている。そして、図14(b)に示される駆動素子の分布と、図14(c)に示されるレイアウト画像とが比較対照されることによって、図14(d)に示されるスーパーインポーズイメージを生成することが可能である。図14(d)のスーパーインポーズイメージを用いることにより、レイアウト画像上のどの位置から信号を検出しているかを認識することができる。
【0056】
上述したように駆動素子の座標が求められた後においては、各駆動素子の信号の時間変化を認識することによって、混信波形に関与する駆動素子毎に波形信号を分離することができる。図15は、駆動素子毎に波形信号を分離する処理を説明する図である。図15(a)は各時刻における混信波形、及び混信波形を再現する信号(各駆動素子の信号)を示す図である。図15(b)は、各駆動素子の信号レベル時間変化を示す図である。図15(a)に示されるように、駆動素子が存在すると想定される座標:a,b,c,e,f,hにおけるガウス分布形状信号の存在有無によって混信波形が再現できている場合を考える。図15(a)において、信号が存在することはハイ(図中において数字「1」で示した四角)、信号が存在しないことはロー(図中において数字「0」で示した四角)で出力されていることに相当する。図15(b)は、このような各駆動素子の時間毎のハイローレベル(信号レベル)を表示したものである。このような、各駆動素子(座標毎)の信号レベル時間変化を示した波形が、混信波形から分離される各駆動素子の波形信号に相当する。
【0057】
具体的な波形信号の分離処理の他の例について説明する。ここでは、駆動素子の位置をランダムに設定して、設定した駆動素子の影響を合算した信号の波高と、グリッド点で取得された波高とを比較する処理を繰り返すことにより、各駆動素子の波形信号(混信波形から分離される各波形信号)を推定する手法を説明する。
【0058】
図16図17、及び図18は、波形信号の分離処理を説明する図である。これらの図においては、横軸が位置、縦軸が波高を示している。これらの図における破線(例えば図16(a)に示される破線)は、正解(実際)の駆動素子の位置及び波形を示している。また、これらの図における一点鎖線(例えば図16(a)に示される一点鎖線)は、ランダムに設定された駆動素子候補の位置及び波形を示している。また、これらの図における太い実線(例えば図16(b)に示される太い実線)は、ランダムに設定された駆動素子候補の信号を合算した信号の波形を示している。また、これらの図における細い実線(例えば図16(c)に示される細い実線)は、各グリッド点g1,g2,g3,g4,g5,g6,g7における波高、及び各波高から推定される波形を示す図である。また、これらの図における点線(例えば図16(c)に示される点線)は、各グリッド点に関する波形にマージン(ノイズを考慮したばらつきのα値)を付加した波形を示している。
【0059】
例えば、図16(a)に示されるように、駆動素子候補の波形として、ランダムに波形R1,R2,R3が設定されたとする。この状態においては、正解(実際)の駆動素子の位置及び波形CAについては認識できていない。
【0060】
そして、図16(b)に示されるように、ランダムに設定された波形R1,R2,R3が合算されることにより、駆動素子候補の周辺への影響を示した合算波形ISが導出される。
【0061】
図16(c)には、各グリッド点g1,g2,g3,g4,g5,g6,g7における波高、及び各波高から推定される波形SRが示されている。また、図16(c)には、波形SRにマージンを付加した波形SRmが示されている。いま、合算波形ISと波形SRmとを比較すると、合算波形ISが波形SRmをオーバーする点として、グリッド点g2,g6,g7が特定される。そして特定された各グリッド点g2,g6,g7における、オーバー量(合算波形ISが波形SRmをオーバーする量)Ov1,Ov2,Ov3が特定される(図16(d)参照)。
【0062】
そして、最もオーバー量が大きいオーバー量Ov3のグリッド点g7に着目し、その位置に影響を与える全ての駆動素子候補が抽出される。今回の例では、図16(e)に示されるように、波形R2,R3に係る2つの駆動素子候補が抽出される。そして、抽出された2つの駆動素子候補の波形R2,R3について、合算波形ISが波形SRmをオーバーしていない箇所(グリッド点)での影響度(関与状況)が導出される。
【0063】
図17(a)には、波形R2に係る駆動素子候補についての影響度導出イメージが示されている。図17(b)には、波形R3に係る駆動素子候補についての影響度導出イメージが示されている。図17(a)に示されるように、合算波形ISが波形SRmをオーバーしていないグリッド点g5において取得される波高のうち、影響度Im2が、波形R2の影響を受けた値である。同様に、図17(b)に示されるように、合算波形ISが波形SRmをオーバーしていないグリッド点g5において取得される波高のうち、影響度Im3が、波形R3の影響を受けた値である。そして、影響度Im2及び影響度Im3を比較すると、明らかに、波形R2の影響度Im2が大きい。この場合には、図17(c)に示されるように元々3つであった駆動素子候補の波形のうち、上述した比較によって影響度が小さいと判定された駆動素子候補の波形R3が削除され、図17(d)に示されるように、2つの駆動素子候補の波形R1,R2のみが残る。すなわち、波形R3に係る駆動素子候補が、間違いである(駆動素子ではない)ことが特定される。
【0064】
そして、図17(e)に示されるように、グリッド点g2においても合算波形ISが波形SRmをオーバーしているため、続いてグリッド点g2に着目し、その位置に影響を与える全ての駆動素子候補が抽出される。いま、図18(a)に示されるように、グリッド点g2に影響を与える駆動素子候補は波形R1に係る1つの駆動素子候補のみである。図18(b)に示されるように、駆動素子候補が1つであって、あるグリッド点(グリッド点g2)において合算波形ISが波形SRmをオーバーしている時点で、波形R1に係る駆動素子候補が間違いである(駆動素子ではない)ことが特定される。この場合には、図18(c)に示されるように元々2つであった駆動素子候補の波形のうち、間違いであると特定された駆動素子候補の波形R1が削除され、図18(d)に示されるように、1つの駆動素子候補の波形R2のみが残る。
【0065】
このような、駆動素子候補のランダム設定、判定、削除が繰り返し行われることにより、全ての駆動素子の位置を推定することができる。駆動素子の位置が推定されることにより、上述した手法等を用いて、各駆動素子の波形信号を推定する(混信波形から各駆動素子の波形信号を分離する)ことができる。なお、上記ではオーバーだけを採り上げて計算しているが、アンダーも採り上げて計算することも可能である。ただし、その場合、アンダー側は符号を反転させて計算するような工夫が必要である。
【0066】
なお、上記では駆動素子候補の位置をランダムに設定する方式を開示しているが、別の方式によって駆動素子の位置を設定してもよい。例えば、デバイスの設計ルールに基づいて、駆動素子候補の位置を設定してもよい。デバイスの設計ルールには一定の規則性があるため、それを適用することで駆動素子候補の位置の探索時間を短縮することができる。つまり、不規則なランダムロジック部であっても電源ラインとグランドラインの巾として規定されるセル列の高さを設計上定まっており、それを参考に電源/グランド部に駆動素子候補位置を設定する必要はない。また、規則的に素子が配置されている設計の場合には、最初の駆動素子候補位置が判明すれば、その規則性に従って他の駆動素子候補位置を推定して計算を進めることが可能となる。このようにレイアウトデータを活用した時間短縮の方法はデバイスの設計ルールにより、各種の方式が適用可能である。
【0067】
また、制御装置20は、複数の混信波形に基づいて、光ビームスポット内における任意の位置の波形信号を再構成してもよい。すなわち、制御装置20は、上述した手法等によって混信波形から駆動素子毎に波形を分離し、該分離した波形の情報に基づいて、光ビームスポット内の任意の位置の波形信号を再構成してもよい。このように任意の位置の波形信号が再構成されることによって、異常発生個所(不良位置)をより高精度に特定することが可能となる。
【0068】
図19は、任意の位置に再構成された波形信号を考慮して異常発生個所を特定する処理を説明する図である。図19に示される例では、不良発生が疑われるサンプル(不良サンプル)において、2つのグリッド点gr(プローブポイント)と、該2つのグリッド点grに挟まれる波形再構成ポイントrpとにおいて、再構成によって波形信号が取得されている。また、参照サンプルの同じポイントに関して、同様に再構成によって波形信号が取得されている。そして、不良サンプル及び参照サンプルにおける同一ポイントの波形同士が比較されて、それぞれのポイントに関して波形の一致度が導出されている。いま、図19に示される左側から右側に信号が伝達しているとして、図19に示されるような波形の一致度となった場合、波形の一致度が悪化している中で最も上流側(左側)のポイント(波形の一致度が0.8059のポイント)が異常発生個所であると特定することができる。このような異常発生個所は、例えば該箇所の駆動素子(トランジスタ)につながる配線又はビアに欠陥が存在する箇所である。モニタ30(詳細は後述)においては、図19に示されるように、異常発生個所であると疑われる点を色で表示してもよいし、相関係数のグラフで表示してもよい。
【0069】
また、制御装置20は、混信波形に基づいて波形を分離し任意の位置の波形信号を再構成した場合において、分離後の波形信号と、論理シミュレーションによって生成された波形信号との比較結果に基づき、半導体デバイス100と半導体デバイスのレイアウト画像Liとの位置合わせを行うことを更に実行してもよい(図20参照)。半導体デバイスのレイアウト画像Liとは、例えばCAD画像である。
【0070】
図20は、半導体デバイス100とレイアウト画像Liとの位置合わせについて説明する図である。図20(a)に示されるように、半導体デバイス100について、複数のグリッド点grにおいて取得された混信波形に基づいて、任意の位置rp1,rp2,rp3,rp4,rp5の波形信号が再構成されているとする(図20(b)参照)。また、図20(c)に示されるレイアウト画像Liの中心点cpについて、図20(d)に示される論理シミュレーション波形が取得されているとする。いま、図20(d)の論理シミュレーション波形は、半導体デバイス100の位置rp3の波形(図20(b)参照)との一致度が高い。このことから、図20(e)に示されるように、レイアウト画像Liの中心点cpが半導体デバイス100の位置rp3に一致するように、半導体デバイス100の画像にレイアウト画像Liを重畳させることにより、半導体デバイス100と半導体デバイスのレイアウト画像Liとを正確に位置合わせすることができる。
【0071】
なお、制御装置20は、波形信号の分離処理において駆動素子の位置が特定されている場合には、特定した各駆動素子の位置に基づき、半導体デバイス100とレイアウト画像との位置合わせを行ってもよい。
【0072】
次に、半導体デバイス検査装置1が行う半導体デバイス検査方法に係る処理について、図21を参照して説明する。図21は、半導体デバイス検査装置1が行う半導体デバイス検査方法に係る処理を示すフローチャートである。各処理の説明においては、モニタ30における画面イメージの一例(図22図30)についても併せて説明する。
【0073】
図21に示されるように、最初に、1つ目のサンプルの半導体デバイス100の画像が読み込まれてモニタ30に表示され(図22参照)、半導体デバイス100の座標系とレイアウト画像の座標系とに基づいて座標系のロックが行われる(ステップS1)。なお、図22に示される例では、半導体デバイス100の画像は波形解析のためのGUI(Graphical User Interface)内に表示されているが、GUI内に読み込まずに既存の各種ウィンドウに表示してプロービング位置等を設定してもよい。つづいて、半導体デバイス100の解析領域にアクセスされて(ステップS2)、適切なレンズが選択される(ステップS3)。つづいて、制御装置20に波形取得条件が設定される(ステップS4)。
【0074】
つづいて、対象とする駆動素子(又は対象とする駆動素子のまとまり)がプローブポイントpp(図23参照)となるように設定される(ステップS5)。プローブポイントppの設定等の各処理については、図23に示されるように、それぞれ設定ボタン(例えば「プローブ点設定」ボタン)が押下されることにより実行される。なお、図23においては、レイアウトパターンに近い画像が示されているが、実際にはLSM画像が表示されていてもよい。
【0075】
つづいて、プローブポイントppを囲うようにグリッド点gr(図24参照)が設定される(ステップS6)。モニタ30においては、「グリッド設定」ボタンが押下されることにより、グリッド点のXピッチ及びYピッチを入力するポップアップが表示されてもよい。この場合の入力値は、予め記憶されている複数の数値から選択されてもよいし、ユーザによって任意に入力される値であってもよい。また、縦横のグリッド数についてもユーザに入力されてもよい。この場合、グリッド数に応じて、図24の右側の波形表示数(行数)が変化してもよい。図24に示される例では、グリッド数が9つであるので、波形表示数(行数)が9つとされている。
【0076】
つづいて、半導体デバイス100に電圧パターン(テストパターン)が掃引され(ステップS7)、ドリフト補正が行われる(ステップS8)。なお、ドリフト補正は、モニタ30における波形表示画面とは別画面で実施されてもよい。
【0077】
つづいて、各グリッド点grからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく混信波形がそれぞれ取得され、それぞれ、モニタ30における取得波形の欄(図25参照)に表示される(ステップS9)。混信波形はシーケンシャルに取得される。なお、制御装置20は、取得した混信波形(EPO波形)について、ディープラーニング等を利用したノイズ除去フィルタリングを行うことにより整形してもよい。上記ステップS8、ステップS9は、設定した全グリッド点について繰り返して実施してもよい。
【0078】
つづいて、複数の混信波形に基づいて、駆動素子毎に波形信号が分離される(ステップS10)。分離された各波形信号は、図26に示されるように、モニタ30における分離波形の欄に表示される。モニタ30における分離波形の行数は、駆動素子の数に応じて変化する。なお、必ずしも各グリッド点grで波形が分離できるとは限らず、グリッド間の任意の箇所の波形を再構成する処理を行って、最も混信の少ない箇所をピックアップしてもよい。
【0079】
そして、2つ目のサンプルの半導体デバイスについて、1つ目のサンプルと同様に混信波形が取得されて表示され(図27参照)、混信波形に基づいて波形信号が分離される(図28参照)。この場合、1つ目のサンプルが不良サンプルで2つ目のサンプルが参照サンプルであってもよいし、1つ目のサンプルが参照サンプルで2つ目のサンプルが不良サンプルであってもよい。図28に示されるように、モニタ30は、分離後の波形信号と参照用の波形信号とを並べて表示する。
【0080】
つづいて、制御装置20によって、2つのサンプルの同じポイントに関して波形が比較され、ポイント毎に一致度が導出されて、該一致度がモニタ30に表示される(図29参照)。そして、一致度を考慮して波形の解析が行われ(ステップS11)、異常発生個所(不良位置)が特定される。図29に示される例では、例えば一致度が0.796の位置について、異常発生個所であると特定される。
【0081】
なお、上述した2つのサンプルで波形を取得して相互に対照する方式に代えて、参照波形として論理シミュレーション波形を提供してもよい(図30参照)。すなわち、モニタ30が、分離後の波形信号と論理シミュレーションとを並べて表示してもよい。この場合には、2つのサンプルで波形を取得する場合と比較して処理を簡易化することができる。
【0082】
次に、第1実施形態に係る半導体デバイス検査装置1及び半導体デバイス検査方法の作用効果について説明する。
【0083】
本実施形態に係る半導体デバイス検査方法は、半導体デバイス100における複数の駆動素子が含まれた第1の光ビームスポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第1の混信波形を取得するステップと、第1のスポットの一部と領域が重複し複数の駆動素子が含まれた第2の光ビームスポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第2の混信波形を取得するステップと、第1及び第2の混信波形に基づいて、第1及び第2のスポット内の駆動素子毎に波形信号を分離するステップと、を備える。
【0084】
このような半導体デバイス検査方法では、複数の駆動素子が含まれた第1の光ビームスポットからの光に基づく第1の混信波形と、第1の光ビームスポットの一部と領域が重複し複数の駆動素子が含まれた第2の光ビームスポットからの光に基づく第2の混信波形とが取得され、第1及び第2の混信波形に基づいて、第1及び第2の光ビームスポット内の駆動素子毎に波形信号が分離される。例えば、互いに領域が重複する光ビームスポットそれぞれの混信波形の時間変化が取得されることにより、混信波形に係る光ビームスポットに含まれた複数の駆動素子の位置に応じた影響度(それぞれの混信波形における各駆動素子の信号の関与状況)を推定することができる。このような複数の駆動素子の位置に応じた影響度を考慮することによって、混信波形から、光ビームスポット内の各駆動素子の波形信号を適切に分離することができる。このように、混信波形から各駆動素子の波形信号(本来の波形)が適切に分離されることによって、分離後の駆動素子の波形信号に基づき、半導体デバイス検査を高精度に行うことができる。
【0085】
上記半導体デバイス検査方法は、分離後の波形信号と、参照用の半導体デバイスの波形信号又は論理シミュレーションによって生成された波形信号とを並べて表示するステップを備えている。これにより、半導体デバイス100の検査時において、参照サンプル(参照用の半導体デバイスの波形信号又は論理シミュレーションによって生成された波形信号)との差異を分かり易くユーザに表示することができる。このことで、半導体デバイス検査をより高精度に行うことができる。
【0086】
上記半導体デバイス検査方法は、分離後の波形信号と、参照用の半導体デバイスの波形信号又は論理シミュレーションによって生成された波形信号とを比較するステップを更に備えている。これにより、半導体デバイス100の検査時において、参照サンプル(参照用の半導体デバイスの波形信号又は論理シミュレーションによって生成された波形信号)との差異を特定することができる。このことで、半導体デバイス検査をより高精度に行うことができる。
【0087】
上記半導体デバイス検査方法は、分離後の波形信号と、論理シミュレーションによって生成された波形信号との比較結果に基づき、半導体デバイス100と、半導体デバイス100のレイアウト画像との位置合わせを行うステップを更に備えている。これにより、波形信号の類似度に基づいて上記位置合わせを行い、位置合わせ後においてはレイアウト画像に基づき半導体デバイス検査(故障位置の特定等)をより高精度に行うことができる。
【0088】
上記半導体デバイス検査方法は、分離後の波形信号に基づき第1及び第2の光ビームスポット内の各駆動素子の位置を特定し、特定した各駆動素子の位置に基づき、半導体デバイス100と、半導体デバイス100のレイアウト画像との位置合わせを行うステップを更に備えている。駆動素子の位置に基づいて位置合わせが行われることにより、波形信号を比較する場合等と比較してより容易に上記位置合わせを行うことができ、位置合わせ後においてはレイアウト画像に基づき半導体デバイス検査(故障位置の特定等)をより高精度に行うことができる。
【0089】
上記半導体デバイス検査方法において、第1の光ビームスポットの中心と第2の光ビームスポットの中心との離間距離は、駆動素子を構成するゲート間の離間距離の4倍以下である。これにより、第1の光ビームスポットからの光に応じた波形及び第2の光ビームスポットからの光に応じた波形を、適切に混信波形(複数の駆動素子からの信号に基づく第1の混信波形、及び、複数の駆動素子からの信号に基づく第2の混信波形)とすることができる。
【0090】
上記半導体デバイス検査方法は、第1及び第2の混信波形に対してノイズ除去フィルタリングを行うステップを更に備えている。例えばディープラーニング等を利用してノイズを除去することによって、ノイズを除去した混信波形に基づき、波形信号の分離を適切に行うことができる。
【0091】
上記半導体デバイス検査方法は、第1及び第2の混信波形に基づいて、第1及び第2のスポット内における任意の位置の波形信号を再構成するステップを更に備えている。これにより、単に駆動素子の波形信号(混信波形から分離した波形信号)を取得するだけでなく、分離した波形信号に基づいて任意の位置の波形信号を取得することができる。
【0092】
上記半導体デバイス検査方法は、第1及び第2の光ビームスポットに光を照射するステップと、第1の光ビームスポットに照射された光に対する反射光である第1の光ビームスポットからの光、及び、第2の光ビームスポットに照射された光に対する反射光である第2の光ビームスポットからの光を検出するステップと、を更に備えている。これにより、反射光に応じて、例えばEOP等の光プロービング技術を用いて、半導体デバイス検査を高精度に行うことができる。
【0093】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0094】
第2実施形態では、半導体デバイス検査装置1が、時間分解発光解析(TREM:Time Resolved Emission Microscopy)により半導体デバイス100を検査する。TREMは、半導体デバイス100を動作させることによってゲートが中間電位を通過するトランジスタのオンオフ又はオフオンの遷移時の発光を検出し、発光の検出タイミングに基づいて解析を行う手法である。発光は、半導体デバイス100のゲート100aに電圧パターン(動作パルス信号)が掃引され、電圧が中間電位を通過する際に発生する。本実施形態に係る半導体デバイス検査装置1は、超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SSPD:Super conducting nanowire Single Photon Detector)等の高感度のディテクタを光検出器16として有している。そして、半導体デバイス検査装置1では、光源11が励起光を半導体デバイス100に照射し、該励起光に応じた半導体デバイス100からの発光(蛍光)を、光検出器16が検出する。
【0095】
図31は、光検出スポットDSの設定例を示す図である。いま、図31に示されるように、互いの領域の一部が重なり合うように、光検出スポットDS101,DS102,DS103,DS104,DS105が設定されているとする。そして、光検出スポットDS101は「素子a」「素子b」「素子c」で示される駆動素子150に跨っており、光検出スポットDS102は「素子a」「素子b」「素子c」「素子d」で示される駆動素子150に跨っており、光検出スポットDS103は「素子a」「素子b」「素子c」「素子d」で示される駆動素子150に跨っており、光検出スポットDS104は「素子a」「素子b」「素子c」「素子d」で示される駆動素子150に跨っており、光検出スポットDS105は「素子b」「素子c」「素子d」で示される駆動素子150に跨っている。
【0096】
光検出スポット101からの発光に応じて取得される混信波形は、その位置関係から、「素子a」の影響が最も大きく、「素子b」及び「素子c」の影響は同程度である。光検出スポット102からの発光に応じて取得される混信波形は、その位置関係から、「素子b」の影響が最も大きく、「素子a」及び「素子d」の影響が次いで大きく、「素子c」の影響が最も小さい。光検出スポット103からの発光に応じて取得される混信波形は、その位置関係から、「素子b」及び「素子c」の影響が最も大きく、「素子a」及び「素子d」の影響は同程度である。光検出スポット104からの発光に応じて取得される混信波形は、その位置関係から、「素子c」の影響が最も大きく、「素子a」及び「素子d」の影響が次いで大きく、「素子b」の影響が最も小さい。光検出スポット105からの発光に応じて取得される混信波形は、その位置関係から、「素子d」の影響が最も大きく、「素子b」及び「素子c」の影響は同程度である。
【0097】
ここで、各駆動素子150(「素子a」「素子b」「素子c」「素子d」)は、その位置や回路構成によって動作パルス信号が届くタイミング(すなわち動作タイミング。動作クロック)が異なっている。図32は、各駆動素子150の動作タイミングを説明する図である。図32(a)~(d)は、各駆動素子150の波形(上側)及び発光波形(下側)を示している。また、図32(a)~(d)においては、破線が動作パルス信号の基本クロックを示している。図32(a)に示されるように「素子a」は、基本クロック(破線)よりも早く、発光が検出されている。また、図32(b),(c)に示されるように、「素子b」「素子c」は、基本クロックと同じタイミングで発光が検出されている。また、図32(d)に示されるように、「素子d」は基本クロックよりも遅く発光が検出されている。本実施形態に係る半導体デバイス検査装置1は、このような駆動素子150毎の動作タイミングの違いに着目し、混信波形から各駆動素子150の波形信号を分離するものである。すなわち、第2実施形態の半導体デバイス検査装置1では、制御装置20が、混信波形を取得すると共に、混信波形に係る複数の駆動素子の動作タイミングに基づいて、混信波形から各駆動素子の波形信号を分離することを実行するように構成されている。
【0098】
図33は、混信波形に含まれる各発光波形を示す図である。図33(a)に示されるように、BS101の混信波形には、動作タイミングが早い「素子a」の発光波形(以下、早タイミングの発光波形EWaと記載する)と、動作タイミングが普通である「素子b」及び「素子c」の発光波形(以下、中タイミングの発光波形EWb,EWcと記載する)とが含まれている。また、図33(b)に示されるように、BS102の混信波形には、早タイミングの発光波形EWaと、中タイミングの発光波形EWb,EWcと、動作タイミングが遅い「素子d」の発光波形(以下、遅タイミングの発光波形EWdと記載する)とが含まれている。図33(c)に示されるように、BS103の混信波形には、早タイミングの発光波形EWaと、中タイミングの発光波形EWb,EWcと、遅タイミングの発光波形EWdとが含まれている。図33(d)に示されるように、BS104の混信波形には、早タイミングの発光波形EWaと、中タイミングの発光波形EWb,EWcと、遅タイミングの発光波形EWdとが含まれている。図33(e)に示されるように、BS105の混信波形には、中タイミングの発光波形EWb,EWcと、遅タイミングの発光波形EWdとが含まれている。
【0099】
図34は、信号のタイミングに基づく波形信号の分離を説明する図である。図34(a)はBS101の混信波形から波形信号を分離する処理を説明する図である。図34(a)に示されるように、制御装置20は、信号のタイミングに基づいて、BS101の混信波形から早タイミングの発光波形EWaと中タイミングの発光波形EWb,EWcとを分離している。図34(b)はBS102の混信波形から波形信号を分離する処理を説明する図である。図34(b)に示されるように、制御装置20は、信号のタイミングに基づいて、BS102の混信波形から早タイミングの発光波形EWaと中タイミングの発光波形EWb,EWcと遅タイミングの発光波形EWdとを分離している。図34(c)はBS103の混信波形から波形信号を分離する処理を説明する図である。図34(c)に示されるように、制御装置20は、信号のタイミングに基づいて、BS103の混信波形から早タイミングの発光波形EWaと中タイミングの発光波形EWb,EWcと遅タイミングの発光波形EWdとを分離している。図34(d)はBS104の混信波形から波形信号を分離する処理を説明する図である。図34(d)に示されるように、制御装置20は、信号のタイミングに基づいて、BS104の混信波形から早タイミングの発光波形EWaと中タイミングの発光波形EWb,EWcと遅タイミングの発光波形EWdとを分離している。図34(e)はBS105の混信波形から波形信号を分離する処理を説明する図である。図34(e)に示されるように、制御装置20は、信号のタイミングに基づいて、BS105の混信波形から中タイミングの発光波形EWb,EWcと遅タイミングの発光波形EWdとを分離している。
【0100】
ここで、早タイミングの発光波形EWaには、「素子a」の発光波形のみが含まれている。このため、早タイミングの発光波形EWaに基づいて、「素子a」で示される駆動素子150の波形信号を得ることができる。制御装置20は、「素子a」が代表的信号である、BS101の混信波形から分離された早タイミングの発光波形EWa(図34(a)参照)に基づいて、「素子a」で示される駆動素子150の波形信号を再構成する(図35(a)参照)。また、遅タイミングの発光波形EWdには、「素子d」の発光波形のみが含まれている。このため、遅タイミングの発光波形EWdに基づいて、「素子d」で示される駆動素子150の波形信号を得ることができる。制御装置20は、「素子d」が代表的信号である、BS105の混信波形から分離された遅タイミングの発光波形(図34(e)参照)に基づいて、「素子d」で示される駆動素子150の波形信号を再構成する(図35(d)参照)。
【0101】
一方で、中タイミングの発光波形には、「素子b」及び「素子c」の発光波形の両方が含まれている。このため、信号のタイミングだけから、「素子b」及び「素子c」それぞれの個別の発光波形を得ることは困難である。制御装置20は、第1実施形態において説明した手法(信号の位置依存を考慮した波形信号の分離)によって、「素子b」及び「素子c」の波形信号を再構成することができる。すなわち、制御装置20は、第1実施形態において説明した手法を用いることにより、「素子b」で示される駆動素子150の波形信号を再構成すると共に(図35(b)参照)、「素子c」で示される駆動素子150の波形信号を再構成する(図35(c)参照)。このように、第2実施形態に係る半導体デバイス検査方法の処理は、第1実施形態に係る半導体デバイス検査方法の処理に先んじて行われてもよい。すなわち、第1実施形態において説明した半導体デバイス検査方法の各処理は、第2実施形態に係る半導体デバイス検査方法に続けて(第2実施形態に係る半導体デバイス検査方法と共に)実行されてもよい。
【0102】
次に、第2実施形態に係る半導体デバイス検査装置1及び半導体デバイス検査方法の作用効果について説明する。
【0103】
本実施形態に係る半導体デバイス検査方法は、半導体デバイス100における複数の駆動素子が含まれた第1の光検出スポットからの光に応じて、複数の駆動素子からの信号に基づく第1の混信波形を取得するステップと、複数の駆動素子の動作タイミングに基づいて、第1の混信波形から、駆動素子毎に波形信号を分離するステップと、を備える。本実施形態に係る半導体デバイス検査方法では、複数の駆動素子が含まれた第1の光検出スポットからの光に基づく第1の混信波形が取得され、複数の駆動素子の動作タイミングに基づき、第1の混信波形から駆動素子毎に波形信号が分離される。半導体デバイス100に含まれる複数の駆動素子は、動作パルス信号に応じた動作タイミングが互いに異なっている。このため、第1の混信波形に含まれる複数の駆動素子からの信号のタイミング(動作タイミング)を考慮することによって、第1の混信波形から、各駆動素子の波形信号を適切に分離することができる。このように、混信波形から各駆動素子の波形信号(本来の波形)が適切に分離されることによって、分離後の駆動素子の波形信号に基づき、半導体デバイス検査を高精度に行うことができる。
【0104】
上記半導体デバイス検査方法は、第1の光検出スポットにおける半導体デバイス100からの発光である第1の光検出スポットからの光、及び、第2の光検出スポットにおける半導体デバイス100からの発光である第2の光検出スポットからの光を検出するステップと、を備えていてもよい。これにより、半導体デバイス100からの発光に応じて、例えば時間分解発光解析等の技術を用いて、上述した動作タイミングに基づく波形信号の分離を適切に行い、半導体デバイス検査を高精度に行うことができる。
【符号の説明】
【0105】
1…半導体デバイス検査装置、11…光源(光発生部)、16…光検出器、20…制御装置(解析部)、30…モニタ(表示部)、100…半導体デバイス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図33
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