(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】新規の熱架橋性組成物および対応する自己接着物品
(51)【国際特許分類】
C09J 201/10 20060101AFI20231207BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20231207BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231207BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231207BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20231207BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20231207BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231207BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231207BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C09J201/10
C09J175/04
C09J11/08
C09J11/06
C09J5/00
C09J7/30
B32B27/00 M
B32B27/00 101
B05D7/24 301P
B05D1/26 Z
(21)【出願番号】P 2021535620
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 FR2019052917
(87)【国際公開番号】W WO2020128200
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-19
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ギャルニエ, クレール
(72)【発明者】
【氏名】ラフェルテ, オリヴィエ
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-127120(JP,A)
【文献】国際公開第2018/215463(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 加水分解性アルコキシシラン基を含む少なくとも1つのポリマー(A);
- 少なくとも1つの粘着付与樹脂(B);
- 少なくとも1つのシルセスキオキサン樹脂(C);および
- 少なくとも1つの架橋触媒(D)
を含むことを特徴とする、熱架橋性接着剤組成物。
【請求項2】
ポリマー(A)が、式(I):
-Si(R
4)
p(OR
5)
3-p (I)
[式中、
- R
4は、1~4個の炭素原子を含
む線状または分枝状のアルキル基を表し、いくつかのR
4基が存在する場合、これらの基は同一であるまたは異なる可能性があり;
- R
5は、1~4個の炭素原子を含む線状または分枝状のアルキル基を表し、いくつかのR
5基が存在する場合、これらの基は同一であるまたは異なる可能性があり、2つのOR
5基は同じ環の中に結合されていてもよい可能性があり、
- pは、0
、1または2に等し
い整数である。]
の、少なくとも1
つの加水分解性基を含むことを特徴とする、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
ポリマー(A)が、式(II)、(III)または(IV):
[式中、
- Pは、1個または複数のヘテロ原子を任意選択で含み、100g/mol~48600g/molの範囲の数平均モル質量を有する、飽和または不飽和の、線状または分枝状のポリマー基を表し、
- R
1は、芳香族または脂肪族、線状、分枝状または環式であってもよい、5~15個の炭素原子を含む二価炭化水素系基を表し、
- R
3は、1~6個の炭素原子を含む、線状または分枝状の二価アルキレン基を表し、
- Xは、-NH-、-NR
7-または-S-か
ら選択される二価基を表し、
- R
7は、1~20個の炭素原子を含み、1個または複数のヘテロ原子もまた含んでもよい、線状または分枝状のアルキル基を表し、
- fは、1~6の範囲の整数である。]
のうちの1つに相当することを特徴とする、請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
ポリマー(A)が、式(II’),(III’)または(IV’):
[式中、
- R
2は、1個または複数のヘテロ原子を任意選択で含み、100g/mol~48600g/molの範囲の数平均モル質量を有する、飽和または不飽和の、線状または分枝状の二価炭化水素系基を表し、
- nは、0以上の整数である。]
のうちの1つに相当することを特徴とする、請求項3に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
ポリマー(A)が、式(III’)[式中、R
2は、ポリエーテルから誘導された二価基である。]のシリルポリマーであることを特徴とする、請求項3に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
樹脂(B)が、
- (i)Friedel-Crafts触媒の存在下、テルペン炭化水素とフェノール類との重合によって得られる樹脂;
- (ii)α-メチルスチレンの重合を含む方法によって得られる樹脂であり、前記方法がフェノール類との反応を含むこともまた可能である、樹脂;
- (iii)天然起源のロジンまたは変性ロジ
ン;
- (iv)石油留分から得られる、およそ5個、9個または10個の炭素原子を含有する不飽和脂肪族炭化水素の混合物の、水素化、重合または(芳香族炭化水素との)共重合によって得られる樹脂;
- (v)テルペン樹脂(一般にFriedel-Crafts触媒の存在下、テルペン炭化水
素の重合から得られる);
- (vi)天然テルペンをベースとする共重合
体;または
- (vii)100Pa・s未満の、100℃での粘度を有するアクリル樹脂
から選択されることを特徴とする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
シルセスキオキサン樹脂(C)が、一般式:
[RSiO
3/2]t
[式中、Rは、本来、同一であっても異なっていてもよく、有機基を表し、tは、6~12の範囲であってもよい整数である。]
を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
シルセスキオキサン樹脂(C)が、一般式(V):
[式中、R’
1~R’
8のうちからの各々は、互いに独立して、
- 水素原子、
- 線状または分枝状C1~C4アルコキシ基、1~30個の炭素原子を含む線状または分枝状アルキル基、2~30個の炭素原子を含むアルケニル基、6~30個の炭素原子を含む芳香族基、3~30個の炭素原子を含むアリル基、3~30個の炭素原子を含む環式脂肪族基、および1~30個の炭素原子を含むアシル基からなる群から選択される基、ならびに
-
-OSiR’
9R’
10基[式中、R’
9およびR’
10は、それぞれ、互いに独立して、水素原子、または線状もしくは分枝状C1~C4アルキル、線状もしくは分枝状C1~C4アルコキシ、C2~C4アルケニル、フェニル、C3~C6アリル基、環式C3~C8脂肪族基およびC1~C4アシル基からなる群から選択される基を表す。]
から選択される基を表し、
条件として、
- R’
1~R’
8基のうちからの少なくとも1つの基は、C1~C4アルコキシ基であり;
- R’
1~R’
8基のうちからの少なくとも1つの基は、フェニル基である。]
に相当することを特徴とする、
請求項7に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
- 3重量%~90重量%のポリマー(A);
- 15重量%~80重量%の粘着付与樹脂(B);
- 0.1重量%~30重量%のシルセスキオキサン樹脂(C);および
- 0.01重量%~10重量%の架橋触媒(D)
を含む、1成分型組成物の形態にあり、
これらの重量百分率が1成分型組成物の総重量に基づいて示されていることを特徴とする、
請求項1から8のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
- ポリマー(A);および
- 粘着付与樹脂(B)
を含む、組成物Uと、
- 架橋触媒(D);ならびに
- 300g/mol~100000g/molの範囲の数平均分子量を有する化合物(E1);および
- 0.08kPa以上の、20℃での蒸気圧を有する化合物(E2)
から選択される少なくとも1つの化合物(E)
を含む、組成物Vと
を含み、
シルセスキオキサン樹脂(C)が、組成物Uまたは組成物V中に含まれる、
多成分型組成物の形態にあることを特徴とする、
請求項1から8のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
自己接着層でコーティングされた支持体層を備えた自己接着物品であって、前記自己接着層が、架橋状態にある請求項1から10のいずれか一項に定義される接着剤組成物からなることを特徴とする、自己接着物品。
【請求項12】
請求項11に定義される自己接着物品を製造する方法であって、前記方法が、
- (a)請求項1から10のいずれか一項に定義される熱架橋性接着剤組成物を40℃と130℃との間の温度に予備加熱すること;
- (b)前記組成物の、コーティングによる軸受面上への適用;
- (c)前記組成物を50~200℃の範囲の温度に加熱することによって架橋すること;および次いで、
- (d)架橋接着剤組成物の層を、支持体層上または非粘着保護フィルム上に、積層または転写すること
を含むことを特徴とする、
方法。
【請求項13】
請求項10に定義される多成分型接着剤組成物を使用し、コーティングによる軸受面上への適用の工程(b)が、前記接着剤組成物の加熱適用(20)のための設備を用いて実施されることであって、設備が、
- 多成分型接着剤組成物を適用するためのノズル(50);
- 流体形態で適用される多成分型接着剤組成物中に含まれる組成物Uを供給するライン(88a);
- 流体形態で適用される多成分型接着剤組成物中に含まれる組成物Vを供給するライン(66a);
- 流体形態で適用される多成分型接着剤組成物をノズル(50)に供給するライン(88);および
- 多成分型接着剤組成物の少なくとも組成物UとVとを混合するためのミキサー(30)
を備え、
前記工程(b)が、
- 少なくとも組成物Uを供給ライン(88a)に供給すること;
- 少なくとも組成物Vを供給ライン(66a)に供給すること;
- 多成分型接着剤組成物の少なくとも組成物Uと組成物Vとをミキサー(30)を用いて混合すること;および
- 混合済み多成分型接着剤組成物(80)を支持体層上に、適用ノズル(50)を用いて加熱適用すること
を含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ミキサー(30)が、ダイナミックミキサーであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項11に定義される自己接着物品を用いた接合方法であって、
a)非粘着保護層を、このような層が存在する場合に除去する工程;
b)自己接着物品を製品の1つの面に適用する工程;および
c)前記物品に圧力をかける工程
を含むことを特徴とする、
接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの加水分解性アルコキシシラン基を含むポリマーをベースとする、新規の熱架橋性接着剤組成物に関する。本発明はまた、自己接着物品、特に、架橋状態にある前記組成物からなる自己接着層でコーティングされた支持体層を備えた自己接着支持体に関する。最後に、本発明は、前記物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧接着剤(PSA)は、その上にそれらがコーティングされている支持体層に、初期粘着力を常温にて付与する物質である。この初期粘着力は、用語「粘着」により示されることが多く、穏やかな短い圧力の影響下で、前記自己接着支持体の、全てのタイプの基材への即時の接着を可能にする。剥離試験によって通常評価されるその接着力に起因して、前記自己接着支持体は、このようにして接着シールにより、前記基材にしっかりと付着される。
【0003】
PSAは、自己接着物品の製造において広く使用されており、例としては、恒久的な接着接合操作の間または、一時的な接着接合操作の間の、情報(例えばバーコード、名前または価格)の提示の目的のための、および/または装飾の目的のための、物品に付着される自己接着ラベルがある。
【0004】
PSAはまた、様々に使用される自己接着テープの製造においても利用される。挙げることができるのは、例えば、日常生活において広く使用されている透明な接着テープ以外に、以下がある:厚紙包装の形成および組み立て;建築における、塗装操作のための表面保護;建築物または建造物の建設における、パネル、レンガ、突出物等の様々な要素の固定および維持;特に輸送産業における、平坦であるまたは特定のプロファイルを有する、金属、プラスチックまたはガラスの各部品、例えば電気ケーブル、プラスチックフィルム、窓枠、金属シート、表記物、ロゴ、シートの部品、ダッシュボード、プラスチックまたはテキスタイル壁、流体の循環のための導管またはパイプの固定および維持;建築物セクターにおける、両面接着テープによる固定カーペットの接着接合。
【0005】
自己接着物品(例えば自己接着ラベルおよび/またはテープ)の製造の目的では、PSAは、一般に、大型の(適当な場合、プリント可能な)支持体層の表面全体にわたり、「単位面積当たり重量」の用語によって以下に示される量(一般にg/m2で表される)において、連続コーティング方法により適用される。支持体層は、例えば、1つまたは複数の層を有するポリマー材料からなる紙またはフィルムである。支持体層を被う自己接着組成物の層は、例えばシリコーンフィルムからなる非粘着保護層(剥離ライナーとして知られていることが多い)で、それ自体、被われうる。得られた多層系は、最大で2mの幅を有して1mの直径を有する大型リールの形態に巻くことによって一般に包装され、これは貯蔵され輸送されうる。
【0006】
これらの多層系は、続いて、所望の情報要素および/または装飾要素を支持体層のプリント可能な面にプリンティングし、続いて所望の形状およびサイズに切断することを含む変形方法により、最終ユーザによって適用されうる自己接着ラベルへと転換されうる。非粘着保護ラベル層は、支持体層に付着したままとなる接着剤層を改質することなく容易に除去されうる。その非粘着保護層からの分離後、ラベルは、コーティングされる物品に、手で、または自動化包装ラインのラベリング機械を用いて、のいずれかで適用される。
【0007】
これらの多層系はまた、エレクトロニクス産業において、工業用途のためであれ消費者の目的のためであれ、それらの最終使用に有用な特定の形状、例としては多様なサイズおよび多様な形状の部品のアセンブリ用の切断または予備切断を伴って、所与の幅および長さのロールとして切断し包装することによって自己接着テープへと転換されうる。
【0008】
特許出願WO09/106699および欧州特許第2336208号は、加水分解性アルコキシラン末端基を保持するポリウレタン(またはポリエーテル)をベースとする熱架橋性接着剤組成物を既に特に開示しており、これは、支持体上にコーティングされ加熱されたときに、水分の存在下で実施された化学的架橋反応の結果、要請される接着力(または剥離力)および粘着特性を有する自己接着支持体の生産へと導く。この架橋反応は、シロキサン結合を含む三次元ポリマーネットワーク構造を有し、自己接着支持体の、基材への固定を確実にする、接着シールの形成へと導く。前記自己接着支持体は、このようにして、自己接着ラベルおよび/またはテープの製造に使用することができる。
【0009】
自己接着物品、特に自己接着ラベルおよびテープの、現在のまたは潜在的な多数の使用のために、しかしながら、2つの上記特許出願により開示されている自己接着支持体の特性、特にそれらの接着力およびそれらの粘着性を改善させることが望ましい。
【0010】
これらの特性の改善はまた、建設セクターにおいて、例えばアルミニウム窓枠における二重または三重ガラス窓の接合のために使用される傾向にある、単位面積当たり高重量を有する自己接着テープの分野においても強く期待されている。具体的には、このような用途について、窓の寿命の間に観察される機械応力および温度変化の面において全てのその効率性を保存するために、窓枠の二重または三重ガラス窓からなる剛性パネルのアセンブリを確実にする接着シールが、特に破断伸びおよび引張強度の点で改善されたエラストマー特性を有することが重要である。
【0011】
そのため、入手可能な自己接着物品を有すること、特に、加水分解性アルコキシシラン基を含有するポリマーをベースとする架橋性接着剤組成物によって得られうる自己接着支持体を有すること、およびそれについて破断伸びおよび引張強度が増強されることもまた望ましい。
【0012】
その上、有利な接着力および粘着特性を有する自己接着支持体を得るのに必要とされる架橋時間は、前記自己接着支持体の工業生産に関する特に重要なパラメータである。その理由は、架橋時間が、加熱に必要なオーブンのサイズの規模を決定し、さらにコーティング済み支持体層の対応する滞留時間、またはエネルギー消費量を決定し、そのようにして全体として該方法の生産効率を決定するためである。そのため、前記架橋時間を短くして前記方法の生産効率を上げることもまた望ましい。
【発明の概要】
【0013】
そのため、本発明の目的は、多様な基材上で、改善された接着力および/または粘着性を有する自己接着物品、特に自己接着支持体を提案することである。
【0014】
本発明の別の目的は、前記物品を支持体に固定した後に形成された接着シールの破断伸びおよび引張強度が増強されるような自己接着物品、特に自己接着支持体を提案することである。
【0015】
本発明の別の目的は、単位面積当たり高重量、典型的には100g/m2超、好ましくは450g/m2超を有する、自己接着物品、特に自己接着支持体について、先の目的に合致させることである。
【0016】
本発明の別の目的は、前記自己接着支持体の工業生産に要する架橋時間を同時に短くしながら、先の目的に合致させることである。
【0017】
これらの目的が、本明細書で以下に記載される接着剤組成物および自己接着物品によって総体的にまたは部分的に達成できることが、今や見出された。
【0018】
そのため、本発明の主題は、第1に、
- 加水分解性アルコキシシラン基を含む少なくとも1つのポリマー(A);
- 少なくとも1つの粘着付与樹脂(B);
- 少なくとも1つのシルセスキオキサン樹脂(C);および
- 少なくとも1つの架橋触媒(D)
を含むことを特徴とする、熱架橋性接着剤組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明による自己接着物品を製造する方法を実施するのに好適な設備20の一実施形態の概略表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ポリマー(A):
本発明の目的では、用語「加水分解性アルコキシシラン基を含むポリマー(A)」は、式(I):
-Si(R4)p(OR5)3-p (I)
[式中、
- R4は、1~4個の炭素原子を含む線状または分枝状のアルキル基を表し、いくつかのR4基が存在する場合、これらの基は同一であるまたは異なる可能性があり;
- R5は、1~4個の炭素原子を含む線状または分枝状のアルキル基を表し、いくつかのR5基が存在する場合、これらの基は同一であるまたは異なる可能性があり、2つのOR5基は同じ環の中に結合されていてもよい可能性があり、
- pは、0.1または2に等しい、好ましくは0または1に等しい整数である。]
の、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの加水分解性基を含むポリマーを意味する。
【0021】
加水分解性アルコキシシラン基は、好ましくは、前記ポリマーの末端位置にある。しかしながら、鎖の中程の位置は排除されない。ポリマー(A)は、接着剤組成物の適用前には架橋されない。接着剤組成物は、その架橋を可能にする条件下で適用される。
【0022】
ポリマー(A)は、このように、一般に多少なりとも粘性の液体であるシリルポリマーである。好ましくは、ポリマー(A)は、10~200Pa・sの範囲、好ましくは20~175Pa・sの範囲の粘度を有し、前記粘度は、例えば、ブルックフィールド式の方法に従って23℃および・相対湿度50%(針S28)にて測定されている。より一般には、本文中で示されている粘度は、別途指定がない限り、ブルックフィールド粘度である。
【0023】
ポリマー(A)は、好ましくは、式(I)の2つの基を含むが、それはまた式(I)の3~6つの基を含むこともできる。
【0024】
好ましくは、ポリマー(A)は、500~50000g/molの範囲、より好ましくは700~20000g/molの範囲の平均モル質量を有する。本発明による接着剤組成物のポリマーおよび多様な成分のモル質量は、当業者に周知の方法、例えばポリスチレン標準を用いたNMRおよびサイズ排除クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー(A)は、式(II)、(III)または(IV):
[式中、
- R
4、R
5およびpは、上記の式(I)中にあるのと同じ意味を有し、
- Pは、1個または複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄またはケイ素を任意選択で含み、100g/mol~48600g/molの範囲、より特定すると300g/mol~18600g/molまたは500g/mol~12600g/molの範囲の数平均モル質量を好ましくは有する、飽和または不飽和の、線状または分枝状のポリマー基を表し、
- R
1は、芳香族または脂肪族、線状、分枝状または環式であってもよい、5~15個の炭素原子を含む二価炭化水素系基を表し、
- R
3は、1~6個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子を含む、線状または分枝状の二価アルキレン基を表し、
- Xは、-NH-、-NR
7-または-S-から選択される二価基を表し、
- R
7は、1~20個の炭素原子を含み、1個または複数のヘテロ原子もまた含んでもよい、線状または分枝状のアルキル基を表し、
- fは、1~6の範囲、好ましくは2~5の範囲、好ましくは2~4、より好ましくは2~3の整数である。]
のうちの1つに相当する。
【0026】
好ましくは、上記の式(II)、(III)および/または(IV)中、Pは、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリオレフィンポリウレタン、ポリアクリレートポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、およびブロックポリエーテル/ポリエステルポリウレタンから非限定的に選択されるポリマー基を表す。
【0027】
例えば、欧州特許第2468783号は、式(II)[式中、Pは、ポリウレタン/ポリエステル/ポリエーテルブロックを含有するポリマー基を表す。]のシリルポリマーを記載している
【0028】
一実施形態によれば、シリルポリマーは、シリルポリウレタン、シリルポリエーテル、およびこれらの混合物から選択される。
【0029】
特定の実施形態によれば、シリルポリマー(A)は、式(II’)、(III’)または(IV’):
[式中、
- R
1、R
3、R
4、R
5、X、R
7およびpは、上記の式(II)、(III)および(IV)中にあるのと同じ意味を有し、
- R
2は、1個または複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄またはケイ素を任意選択で含み、100g/mol~48600g/molの範囲、より特定すると300g/mol~18600g/mol、または500g/mol~12600g/molの範囲の数平均モル質量を好ましくは有する、飽和または不飽和の、線状または分枝状の二価炭化水素系基を表し、
- nは、0以上の整数である。]
のうちの1つに相当する。
【0030】
上に定義した式(II’)、(III’)または(IV’)のシリルポリマーでは、R2基が1個または複数のヘテロ原子を含む場合、前記ヘテロ原子は鎖の末端に存在しない。換言すると、二価R2基の遊離原子価は、炭素原子にそれぞれ源を発するシリルポリマーに隣接する酸素原子に結合している。そのため、R2基の主鎖は、2つの末端のそれぞれにおいて炭素原子で末端化され、前記炭素原子はこのようにして遊離原子価を有する。
【0031】
一実施形態によれば、シリルポリマー(A)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリシロキサンポリオールおよびポリオレフィンポリオール、ならびにこれらの混合物から選択されるポリオールから得られ、より好ましくは、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリアクリレートジオール、ポリシロキサンジオール、ポリオレフィンジオール、およびこれらの混合物から選択されるジオールから得られる。上記の式(II’)、(III’)または(IV’)のポリマーの事例では、このようなジオールは、式HO-R2-OH[式中、R2は、式(II’)、(III’)または(IV’)中にあるのと同じ意味を有する。]によって表すことができる。
【0032】
例えば、式(II’)、(III’)または(IV’)中に存在しうるタイプR
2の基の中で挙げることができるのは、以下の二価基であり、それらの以下の式は、2つの遊離原子価を示す:
- ポリプロピレングリコールの誘導体:
- ポリエステルジオールの誘導体:
- ポリブタジエンジオールの誘導体:
- ポリアクリレートジオールの誘導体:
- ポリシロキサンジオールの誘導体:
【0033】
上式中、基および指数は、以下の意味を有する:
- qは、R2基の数平均分子量が100g/mol~48600g/molの範囲、好ましくは300g/mol~18600g/molの範囲、より好ましくは500g/mol~12600g/molの範囲であるような整数を表し、
- rおよびsは、R2基の数平均分子量が100g/mol~48600g/molの範囲、好ましくは、300g/mol~18600g/molの範囲、より好ましくは500g/mol~12600g/molの範囲であるようなゼロまたは非ゼロの整数を表し、和r+sがゼロ以外であることが理解され、
- Q1は、1~18個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子を好ましくは含有する、線状または分枝状の、飽和または不飽和の、芳香族または脂肪族の二価アルキレン基を表し、
- Q2は、2~36個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子を好ましくは含有する、線状または分枝状の二価アルキレン基を表し、
- Q3、Q4、Q5、Q6、Q7およびQ8は、互いに独立して、水素原子、または1~12個の炭素原子、好ましくは2~12個の炭素原子、より好ましくは2~8個の炭素原子を好ましくは含有するアルキル、アルケニルまたは芳香族基を表す。
【0034】
本発明による組成物の一実施形態によれば、シリルポリマー(A)は、式(II’)、(III’)および(IV’)中に現れるR2基が、ポリエーテル基、好ましくはポリ(オキシアルキレン)基、さらにより好ましくは、上に示した式に相当するポリプロピレングリコールから誘導された基を表すようなものである。
【0035】
一実施形態によれば、R
1は、以下の二価基のうちの1つから選択され、以下の式のそれらのものは、2つの遊離原子価を明らかにする:
a)イソプロピレンジイソシアネート(IPDI)から誘導された二価基:
b)ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(Hl2MDI)から誘導された二価基:
c)トルエンジイソシナネート(TDI)から誘導された二価基:
d)ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の4,4’および2,4’異性体から誘導された二価基:
e)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)-(CH
2)
6-から誘導された二価基:
f)m-キシレンジイソシアネート(m-XDI)から誘導された二価基:
【0036】
式(II)または(II’)のポリマーは、欧州特許第2336208号およびWO2009/106699に記載の方法に従って得ることができる。当業者であれば、異なるタイプのポリオールの使用の事例におけるこれら2つの文献中に記載されている製造方法にどのように適応させるかは既知である。式(II)に相当するポリマーの中で挙げることができるのは、以下である:
- Geniosil(登録商標)STP-E10(Wackerから入手可能):ジメトキシタイプの2つの基(I)(nは0に等しく、pは1に等しく、R4およびR5はメチル基を表す)を含み、8889g/molの数平均モル質量を有し、式中、R3はメチル基を表す、ポリエーテル;
- Geniosil(登録商標)STP-E30(Wackerから入手可能):14493g/molの平均モル質量を有し、これは、ジメトキシ(メチル)シリルメチルカルバメートからなる2つの末端基を有するポリプロピレングリコールであり、すなわち式(II’)中、nは0に等しく;pは1に等しく;R4およびR5はメチル基を表し、R3はメチル基を表す;
- Spur+(登録商標)1050MM(Momentiveから入手可能):トリメトキシタイプの2つの基(I)(nは0以外であり、pは0に等しく、R5はメチル基を表す)を含み、16393g/molの数平均モル質量を有し、式中、R3はn-プロピル基を表す、ポリウレタン;
- Spur+(登録商標)Y-19116(Momentiveから入手可能):トリメトキシタイプの2つの基(I)(nは0以外であり、R5はメチル基を表す)を含み、15000~17000g/molの範囲の数平均モル質量を有し、式中、R3はn-プロピル基を表す、ポリウレタン;
- Desmoseal(登録商標)S XP 2636(Bayerから入手可能):トリメトキシタイプの2つの基(I)(nは、0以外であり、pは0に等しく、R5はメチル基を表す)を含み、15038g/molの数平均モル質量を有し、式中、R3はn-プロピレン基を表す、ポリウレタン。
【0037】
式(III)または(III’)のポリマーは、例えば欧州特許第1829928号に記載の方法に従ってポリエーテルジアリルエーテルのヒドロシリル化によって得ることができる。式(III)に相当するポリマーの中で挙げることができるのは、以下である:
- ポリマーMS SAX(登録商標)350(株式会社カネカから入手可能)、ジメトキシタイプの2つの基(I)(pは1に等しく、R4およびR5はメチル基を表す)を含むポリエーテルに相当し、14000~16000g/molの範囲の数平均モル質量を有する;
- ポリマーMS SAX(登録商標)260(株式会社カネカから入手可能)、ジメトキシタイプの2つの基(I)(pは1に等しく、R4およびR5はメチル基を表す)を含むポリエーテルに相当し、16000~18000g/molの数平均モル質量を有し、式中、R3はエチル基を表す;
- ポリマーMS S303H(株式会社カネカから入手可能)、ジメトキシタイプの2つの基(I)(pは1に等しく、R4はメチル基を表す)を含むポリエーテルに相当し、約22000ダルトンの数平均分子量を有する。
【0038】
式(IV)または(IV’)のポリマーは、例えば、ポリオールを1つまたは複数のジイソシアネートと反応させて、続いてアミノシランまたはメルカプトシランと反応させることによって得ることができる。式(IV)または(IV’)のポリマーを調製する方法は、欧州特許第2583988号に記載されている。当業者であれば、異なるタイプのポリオールを使用する事例で、前記文献中に記載の製造方法にどのように適応させるかは既知である。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、接着剤組成物は、式(II)および/または(II’)の少なくとも1つのシリルポリマー、または式(III)および/または(III’)の少なくとも1つのシリルポリマーを含む。
【0040】
本発明の最も特に好ましい実施形態によれば、ポリマー(A)は、式(III’)[式中、R2は、ポリエーテルから、好ましくはポリ(オキシアルキレン)ジオールから、さらにより特定するとポリプロピレングリコールから誘導された二価基である。]のシリルポリマーである。
【0041】
粘着付与樹脂(B):
本発明による熱架橋性接着剤組成物はまた、少なくとも1つの粘着付与樹脂(B)も含む。
【0042】
前記樹脂は、シリルポリマー(A)と適合性のある任意の樹脂であってもよい。
【0043】
用語「適合性のある粘着付与樹脂」は、式(I)のポリマー(A)と50%50%の割合で混合された場合に実質的に均質な混合物を付与する粘着付与樹脂を示す。
【0044】
樹脂(B)は、有利には、
- (i)Friedel-Crafts触媒の存在下、テルペン炭化水素とフェノール類との重合によって得られる樹脂;
- (ii)α-メチルスチレンの重合を含む方法によって得られる樹脂であり、前記方法がフェノール類との反応を含むこともまた可能である;
- (iii)天然起源のロジンまたは変性ロジン、例としては生松脂から抽出されたロジン、木の根から抽出された木ロジン、および水素化された、二量体化された、重合された、またはモノアルコールもしくはポリアルコール、例えばグリセロールもしくはペンタエリトリトールでエステル化された、それらの誘導体;
- (iv)石油留分から得られる、およそ5個、9個または10個の炭素原子を含有する不飽和脂肪族炭化水素の混合物の、水素化、重合または(芳香族炭化水素との)共重合によって得られる樹脂;
- (v)テルペン樹脂(一般にFriedel-Crafts触媒の存在下、テルペン炭化水素、例としてはモノテルペン(もしくはピネン)の重合から得られる);
- (vi)天然テルペンをベースとする共重合体(例としてはスチレン/テルペン、α-メチルスチレン/テルペンおよびビニルトルエン/テルペン);または
- (vii)100Pa・s未満の、100℃での粘度を有するアクリル樹脂;
およびまた、これらの樹脂の混合物
から選択される。
【0045】
このような樹脂は、市販されており、かつ上で定義したタイプ(i)、(ii)、(iii)および(iv)のものの中で挙げることができるのは以下の製品である:
- タイプ(i)の樹脂:Dertophene(登録商標)1510、DRT社から入手可能であり、約870Daのモル質量Mnを有し;Dertophene(登録商標)H150、同社から入手可能であり、約630Daに等しいモル質量Mnを有し;Sylvarez(登録商標)TP 95、Arizona Chemical社から入手可能であり、約1200Daのモル質量Mnを有する;
- タイプ(ii)の樹脂:Cleartack(登録商標)W100、Cray Valley社から入手可能であり、フェノール類の作用なしでα-メチルスチレンの重合によって得られ、900Daの数平均モル質量を有し;Sylvarez(登録商標)510であり、これもまたArizona Chemical社から入手可能であり、約1740Daのモル質量Mnを有し、この製造方法もまたフェノール類の添加を含み;
- タイプ(iii)の樹脂:Sylvalite(登録商標)RE100、これはArizona Chemical社から入手可能な、ロジンとペンタエリトリトールとのエステルであり、約1700Daのモル質量Mnを有し;
- タイプ(iv)の樹脂:Picco(登録商標)AR100であり、Eastman社から入手可能であり、約550g/molのモル質量Mnを有する。
【0046】
好ましい変形形態によれば、樹脂(B)として、タイプ(i)または(iv)のものから選択される樹脂が使用される。
【0047】
シルセスキオキサン樹脂(C):
本発明による熱架橋性接着剤組成物はまた、少なくとも1つのシルセスキオキサン樹脂(C)も含む。
【0048】
シルセスキオキサン樹脂は、Si-O-Si結合を有する多角体構造またはポリマー構造を採ることができる有機ケイ素化合物である。それらは、一般式:
[RSiO3/2]t
[式中、Rは、同一であっても異なっていてもよく、本来、有機基を表し、tは6~12の範囲であってもよい整数、好ましくは6、8、10または12に等しい整数である。]
を有する。
【0049】
一実施形態によれば、シルセスキオキサン(C)は、多角体構造[またはPOSS、「多角体オリゴマーシルセスキオキサン(Polyhedral Oligomeric Silsesquioxane)」の略語]を有する。
【0050】
好ましくは、シルセスキオキサン(C)は、以下の一般式(V):
[式中、R’
1~R’
8のうちからの各々は、互いに独立して、
- 水素原子、
- 線状または分枝状C1~C4アルコキシ基、1~30個の炭素原子を含む線状または分枝状アルキル基、2~30個の炭素原子を含むアルケニル基、6~30個の炭素原子を含む芳香族基、3~30個の炭素原子を含むアリル基、3~30個の炭素原子を含む環式脂肪族基、および1~30個の炭素原子を含むアシル基からなる群から選択される基、ならびに
- OSiR’
9R’
10基[式中、R’
9およびR’
10は、それぞれ、互いに独立して、水素原子、または線状もしくは分枝状C1~C4アルキル、線状もしくは分枝状C1~C4アルコキシ、C2~C4アルケニル、フェニル、C3~C6アリル基、環式C3~C8脂肪族基およびC1~C4アシル基からなる群から選択される基を表す。]
から選択される基を表し、
条件として、
- R’
1~R’
8基のうちからの少なくとも1つの基は、C1~C4アルコキシ基であり;
- R’
1~R’
8基のうちからの少なくとも1つの基は、フェニル基である。]
に相当する。
【0051】
シルセスキオキサンは、特に特許出願WO2008/107331に記載されている既知の化合物である。いくつかはまた市販されており、すなわちDowから名称Dow Corning(登録商標)3074およびDow Corning(登録商標)3037(CAS番号=68957-04-0)で販売されている製品がある。
【0052】
架橋触媒(D):
本発明による熱架橋性接着剤組成物はまた、少なくとも1つの架橋触媒(D)を含む。
【0053】
前記触媒は、シラノールの濃縮のための、当業者に既知の任意の触媒であってもよい。
【0054】
架橋触媒(D)は、
(D1)有機金属化合物、
(D2)アミン、および
(D3)酸およびその誘導体
ならびにまた、それらの混合物
からなる群から選ぶことができる。
【0055】
それはまた、同じ群(D1)、(D2)または(D3)に属する触媒の混合物(例えば、いくつかのアミンの混合物)であってもよく、または群(D1)、(D2)および(D3)から選択される少なくとも2つの異なる群に属する触媒の混合物(例えば、アミンと有機金属化合物との混合物)であってもよい。
【0056】
本発明の文脈では、用語「有機金属化合物」は、有機基および少なくとも1つの金属を含む化合物を意味する。本発明の文脈では、用語「有機基」は、少なくとも1個の炭素原子を含む基を意味する。
【0057】
(D1)有機金属化合物:
有機金属化合物は、有機金属化合物(少なくとも1つの金属-炭素共有結合を含む化合物)、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、および1つまたは複数の有機配位子との金属配位錯体を含んでもよい。
【0058】
挙げることができる有機配位子の例には、アセチルアセトネートおよびオキシムがある。
【0059】
有機金属化合物の金属原子は、当業者に既知の任意の金属原子であってもよく、具体的には、スズ、アルミニウム、亜鉛、コバルト、鉄、ニッケル、ビスマス、チタンまたはジルコニウムから選ぶことができる。その上、有機金属化合物は、いくつかの金属原子を含んでもよい。
【0060】
少なくとも1つの金属-炭素共有結合を含む化合物:
少なくとも1つの金属-炭素共有結合を含む化合物(有機金属化合物)は、ジラウリン酸ジブチルスズ(DBTL)、二酢酸ジブチルスズ、ジエチルヘキサン酸ジブチルスズ、ジネオデカン酸ジオクチルスズ(例えば、TIB Chemicals社から名称TIB KAT(登録商標)223で入手可能)、ジオレイン酸ジブチルスズ、ベンジルマレイン酸ジブチルスズ、二酢酸ジフェニルスズ、およびこれらの混合物からなる群から選択される有機金属化合物のカルボキシレートであってもよい。
【0061】
金属アルコキシドは、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、およびこれらの混合物からなる群から選ぶことができる。
【0062】
金属カルボキシレートは、2-エチルカプロン酸亜鉛、二酢酸亜鉛、ジネオデカン酸亜鉛、ジウンデカン酸亜鉛、ジメタクリル酸亜鉛、アセチル酢酸コバルト、二酢酸コバルト、アセチルアセトン酸鉄、二酢酸鉄、アセチルアセトン酸ニッケル、二酢酸ニッケル、酢酸ビスマス、トリオクタン酸ビスマス、ジネオデカン酸ビスマス、ジネオデカン酸亜鉛ビスマス、およびこれらの混合物からなる群から選ぶことができる。
【0063】
1つまたは複数の有機配位子との金属配位錯体は、アセチルアセトン酸亜鉛、アセチルアセトン酸チタン(例えば、Dorf Ketal社から名称Tyzor(登録商標)AA75で市販されている)、テトラアセチルアセトン酸チタン、トリアセチルアセトン酸アルミニウム、アルミニウムキレート、例としてはビス(アセト酢酸エチル)モノアセチルアセトネート(例えば、King Industries社から名称K-KAT(登録商標)5218で市販)、テトラアセチルアセトン酸ジルコニウム、ジイソプロポキシビス(エチルアセトナト)チタン、およびこれらの混合物からなる群から選ぶことができる。
【0064】
(D2)アミン:
アミンは、第一級アミン、第二級アミンまたは第三級アミンであってもよい。
【0065】
好ましくは、アミンは、トリエチルアミン、トリブチルアミン、テトラメチルグアニジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノ-5-ネン、N,N-ビス(N,N-ジメチル-2-アミノエチル)メチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルフェニルアミン、N-エチルモルホリン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0066】
(D3)酸触媒およびそれらの誘導体:
酸触媒は、無機酸触媒、有機酸触媒、およびこれらの混合物から選ぶことができる。
【0067】
無機酸触媒の中で挙げることができる例には、リン酸またはオルトリン酸、亜リン酸、次亜リン酸または硫酸がある。
【0068】
有機酸触媒は、スルホン酸、カルボン酸、有機リン酸、有機ホスホン酸、ホスホン酸、およびこれらの混合物から選ぶことができる。
【0069】
好ましくは、有機および無機酸触媒は、6以下、好ましくは4以下、有利には2以下、有利には0以下のpKaを有する。
【0070】
スルホン酸は、任意選択で置換されている[例えばハロゲン(例えばフッ素)、ヒドロキシル、アルキル、アミン、およびこれらの混合物から選択される少なくとも1つの置換基で置換されている]脂肪族または芳香族であってもよく、モノ-またはジスルホン酸であってもよい。
【0071】
スルホン酸は、N-アルキルアミノアルキルスルホン酸およびN,N-ジアルキルアミノアルキルスルホン酸(双性イオン)、例としては2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸、4-[N-モルホリノ]ブタンスルホン酸、1,4-ピペラジンジエタンスルホン酸、N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、N-モルホリノメタンスルホン酸、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-メタンスルホン酸、ピペラジン-N,N’-ビス(メタンスルホン酸)、シクロヘキシルアミノメタンスルホン酸、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノメタンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノメタンスルホン酸;パラ-トルエンスルホン酸;ベンゼンスルホン酸;メタンスルホン酸;ドデシルベンゼンスルホン酸;ドデシルベンゼンジスルホン酸;ジノニルナフタレンジスルホン酸;ジノニルナフタレンスルホン酸;トリフルオロメチルスルホン酸;およびこれらの混合物から選ぶことができる。
【0072】
特定すると、スルホン酸は、パラ-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンジスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸、およびこれらの混合物から選択される。
【0073】
カルボン酸触媒の中で挙げることができる例には、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、シュウ酸、酢酸、乳酸、安息香酸、クエン酸、グリコール酸、およびこれらの混合物がある。
【0074】
本発明の文脈では、別途記載がない限り、用語「有機リン酸」は、少なくとも1つの-OH基を含むリン酸エステルを意味する。例えば、リン酸メチルは、2つの-OH基を含む有機リン酸であり、以下の構造:
を有する。
【0075】
詳細には、有機リン酸は、以下の式:
(RO)g-(P=O)-(OH)h
[式中、
- Rは、有機基、具体的には線状または分枝状C1~C22アルキル、シクロアルキル、アリール、およびこれらの混合物(前記アルキル、シクロアルキルおよびアリールの各基は、任意選択で置換されている)から選択される基であり、
- gおよびhは整数であり、g+h=3、h=1または2である。]
を有する。
【0076】
有機リン酸は、例えば、C1~C22モノ-またはジアルキルリン酸、およびこれらの混合物、例としてはリン酸ブチル、リン酸ジブチル、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、2-エチルヘキシルホスフェート、およびこれらの混合物;リン酸モノ-またはジアリール、およびこれらの混合物、例としてはリン酸モノフェニル、リン酸ジフェニル、およびこれらの混合物;リン酸アルキルフェニル;ならびにこれらの混合物からなる群から選ぶことができる。
【0077】
本発明の文脈では、別途記載がない限り、用語「有機ホスホン酸」は、以下の一般式:
R’-(P=O)-(OH)(OR’’)
[式中、R’およびR’’は、互いに独立して、線状または分枝状C1~C22アルキル、シクロアルキル、アリール、およびこれらの混合物(前記アルキル、シクロアルキルおよびアリールの各基は、任意選択で置換されている)から好ましくは選択される有機基である。]
を有するホスホン酸系化合物を意味する。
【0078】
有機ホスホン酸として挙げることができる例には、C1~C22モノアルキルホスホン酸がある。
【0079】
本発明の文脈では、別途記載がない限り、用語「ホスホン酸」は、以下の一般式:
R’’’-(P=O)-(OH)2
[式中、R’’’は、線状または分枝状C1~C22アルキル、シクロアルキル、アリール、およびこれらの混合物(前記アルキル、シクロアルキルおよびアリールの各基は、任意選択で置換されている)から好ましくは選択される有機基である。]
を有するホスホン酸系化合物を意味する。
【0080】
ホスホン酸の中で挙げることができる例には、N-アルキルアミノアルキルホスホン酸(双性イオン)、N,N-ジアルキルアミノアルキルホスホン酸(双性イオン)、C1~C20アルキルホスホン酸、例としてはメチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、t-ブチルホスホン酸、イソブチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、2-エチルヘキシルホスホン酸、および線状または分枝状の高級ホモログ、ベンジルホスホン酸、フェニルホスホン酸、トリルホスホン酸またはキシリルホスホン酸がある。
【0081】
挙げることができる有機酸触媒の例には、King Industriesにより販売されているNacure(登録商標)155(ジノニルナフタレンジスルホン酸、イソブタノール中に55%活性材料を含有する)、King Industriesにより販売されているNacure(登録商標)1051(ジノニルナフタレンスルホン酸、2-ブトキシエノタール中に50%活性材料を含有する)、King Industriesにより販売されているNacure(登録商標)5076(ドデシルベンゼンスルホン酸、イソプロパノール中に70%活性材料を含有する)、King Industriesにより販売されているK-Cure(登録商標)1040(パラ-トルエンスルホン酸、イソプロパノール中に40%活性材料を含有する)、King Industriesにより販売されているNacure(登録商標)4000(モノアルキルリン酸とジアルキルリン酸との混合物、100%活性材料)がある。
【0082】
本発明による酸誘導体は、酸無水物、酸エステルまたは酸アンモニウムの各塩であってもよく、酸は上に記載したものである。
【0083】
酸誘導体は、特に「マスクされた」または「隠れた」酸であり、これは、有利には、熱活性化(例えば70℃~170℃の範囲の温度にて、好ましくは90℃~120℃の範囲の温度にて)によって、または加水分解によって、または光活性化によって、好ましくは熱活性化によって、酸を放出することを可能にする。マスクされた酸は、有利には、触媒活性を有する種である酸を放出することを可能にする。例えば、アミノメチルプロパノールとパラ-トルエンスルホン酸との間で形成されたアンモニウム塩は、熱活性化によってパラ-トルエンスルホン酸を放出する、マスクされた酸(酸誘導体)である。
【0084】
酸誘導体は、対応する酸で出発する当業者に既知の任意の手段を介して、例えば典型的な酸/塩基反応を用いることによって、調製することができる。例えば、エステルを作製する方法は、典型的には、酸化合物を、ヒドロキシル基を含む化合物、例としてはアルコールと、またはオキシランタイプの化合物と縮合することを包含する。アンモニウム塩は、任意の上記の酸を、アンモニアと、または第一級、第二級または第三級アミンとから調製することができる。アミンは、少なくとも1つの官能基、例えばヒドロキシル基(アルカノールアミン)、C1~C4アルキル基を任意選択で含むことができる。アンモニウム塩(双性イオン)はまた、例えば、N-アルキルアミノアルキルホスホン酸、N,N-ジアルキルアミノアルキルホスホン酸、N-アルキルアミノアルキルスルホン酸またはN,N-ジアルキルアミノアルキルスルホン酸を含有する溶液のpHを調整することによっても調製することができる。
【0085】
好ましくは、触媒は、スルホン酸のアンモニウム塩(スルホン酸は上記のものである)、ホスホン酸のアンモニウム塩(ホスホン酸は上記のものである)、有機ホスホン酸のアンモニウム塩(有機ホスホン酸は上記のものである)、または有機リン酸のアンモニウム塩(有機リン酸は上記のものである)である。
【0086】
アンモニウム塩の調製のためのアミンとして挙げることができる例には、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリエチルアミン、アニリン、ピリジン、ジメチルアミノエタノール、アルキルピリジン、ジイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、オキサゾリジン、二環式オキサゾリジン、アミジン、ジアザビシクロオクタン、グアニジン、N-アルキルモルホリン、アミノピリジン、アミノアルキルピリジン、アミノピロリジン、インダゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、プリン、イミダゾリン、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルホリン、およびこれらの混合物がある。好ましくは、アミンは、第三級アミンである。
【0087】
挙げることができる酸誘導体の例には、King Industriesにより販売されているNacure(登録商標)3327またはNacure(登録商標)3525(アミンでマスクされたジノニルナフタレンジスルホン酸、イソプロパノールおよびイソブタノール中に25%活性材料を含有)、King Industriesにより販売されているNacure(登録商標)1557またはNacure(登録商標)1953(アミンでマスクされたジノニルナフタレンスルホン酸、ブタノールと2-ブトキシエタノールとの混合物中に25%活性材料を含有)、King Industriesにより販売されているNacure(登録商標)5225またはNacure(登録商標)5528またはNacure(登録商標)5925(アミンでマスクされたドデシルベンゼンスルホン酸、イソプロパノール中に25%活性材料を含有)、King Industriesにより販売されているNacure(登録商標)2107またはNacure(登録商標)2500(アミンでマスクされたパラ-トルエンスルホン酸、イソプロパノール中に25%または26%活性材料を含有)、King Industriesにより販売されているNacure(登録商標)2501またはNacure(登録商標)2530(アミンでマスクされたパラ-トルエンスルホン酸、イソプロパノールとメタノールとの混合物中に25%活性材料を含有)、King Industriesにより販売されているNacure(登録商標)4167(有機アミンでマスクされたリン酸ジアルキル、イソプロパノールとイソブタノールとの混合物中に25%活性材料を含有)、King Industriesにより販売されているNacure(登録商標)4575(アミンでブロックされたリン酸、メタノールとブタノールとの混合物中に25%活性材料を含有)がある。
【0088】
好ましくは、触媒は、有機金属化合物(具体的にはアルミニウム系配位錯体、より特定するとアルミニウムキレート)、オルトリン酸、有機リン酸(好ましくはC1~C22モノ-またはジアルキルリン酸、およびこれらの混合物)、アンモニウム塩(具体的にはスルホン酸のものまたは有機リン酸のもの)、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0089】
さらにより好ましくは、触媒は、オルトリン酸、有機リン酸(好ましくはC1~C22モノ-またはジルアルキルリン酸、およびこれらの混合物)、アンモニウム塩(具体的にはスルホン酸のものまたは有機リン酸のもの)からなる群から選択される。
【0090】
他の添加剤:
本発明による熱架橋性接着剤組成物はまた、吸湿剤、可塑剤、抗酸化剤、顔料、着色剤、接着促進剤、UV安定剤、難燃添加剤、あるいはカーボネート系充填剤等の充填剤、例えば炭酸カルシウムタイプのものからなる群から選択される1つまたは複数の添加剤も含んでよい。
【0091】
吸湿剤(または乾燥剤)は、例えば、トリメトキシシランおよびトリエトキシシラン誘導体から好ましくは選択される、500g/mol未満の分子量を有する非ポリマー加水分解性アルコキシシラン誘導体から選ぶことができる。このような剤は、典型的には、組成物が使用される前の貯蔵および輸送の間、その貯蔵寿命を延ばすことができる。挙げることができるのは、例えば、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(例えばMomentiveから商品名Silquest(登録商標)A-174で入手可能)、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン(例えばWackerから名称Geniosil(登録商標)XL33で入手可能)、ビニルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシランまたはフェニルトリメトキシシランである。
【0092】
吸湿剤の含有量は、組成物Aの総重量に対して、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下である。吸湿剤が存在する場合、それは、本発明による組成物の総重量に対して、例えば0.1重量%~3重量%、または1重量%~2重量%を占めることができる。
【0093】
本発明による組成物はまた、可塑剤を含んでもよい。
【0094】
使用されうる可塑剤の例として、接着剤の分野で通常使用されている任意の可塑剤、例としてはフタレート、ベンゾエート、トリメチロールプロパンエステル、トリメチロールエタンエステル、トリメチロールメタンエステル、グリセロールエステル、ペンタエリトリトールエステル、ナフテン系鉱油、アジペート、シクロヘキシルジカルボキシレート、流動パラフィン、(任意選択でエポキシド化された)天然油、ポリプロピレン、ポリブチレン、水素化ポリイソプレン、およびこれらの混合物を使用することができる。
【0095】
フタレートの中で挙げることができる例には、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジイソドデシル、フタル酸ジベンジルまたはフタル酸ブチルベンジルがある。
【0096】
ベンゾエートの中で挙げることができる例には、二安息香酸ネオペンチルグリコール(例えばLanxessから名称Uniplex(登録商標)512で入手可能)、二安息香酸ジプロピレングリコール(例えば、Eastmanから名称Benzoflex(登録商標)9-88SGで入手可能)、二安息香酸ジエチレングリコールと二安息香酸ジプロピレングリコールとの混合物(例えば、Kalama Chemicalから名称K-Flex(登録商標)850Sで入手可能)、または二安息香酸ジエチレングリコールと二安息香酸ジプロピルレングリコールと二安息香酸トリエチレングリコールとの混合物(例えば、Eastmanから名称Benzoflex(登録商標)2088で入手可能)がある。
【0097】
ペンタエリトリトールエステルの中で挙げることができる例には、四吉草酸ペンタエリトリチル(例えば、Perstorp社から名称Pevalen(商標)で入手可能)がある。
【0098】
シクロヘキサンジカルボキシレートの中で挙げることできる例は、ジイソノニル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート(例えば、BASFから名称Hexamoll Dinch(登録商標)で入手可能)である。
【0099】
本発明による組成物中の可塑剤の総含有量は、前記組成物の総重量に対して、0重量%~30重量%、好ましくは1重量%~30重量%、またはさらには例えば1重量%~15重量%の範囲であってもよい。
【0100】
本発明による組成物はまた、抗酸化剤(用語「UV安定剤」とも示される)も含んでよい。
【0101】
抗酸化剤は、組成物を、熱または光の作用によって形成されやすい酸素との反応から生じる分解から保護するために導入されうる化合物である。これらの化合物は、フリーラジカルを捕捉する第1の抗酸化剤を含んでもよい。第1の抗酸化剤は、単独で、または他の第2の抗酸化剤もしくはUV安定剤との組み合わせで使用することができる。
【0102】
挙げることができる例には、BASFにより販売されているIrganox(登録商標)1010、Irganox(登録商標)B561、Irganox(登録商標)245、Irganox(登録商標)1076およびIrgafos(登録商標)168がある。
【0103】
本発明による組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~3重量%、好ましくは1重量%~3重量%の範囲の抗酸化剤の量が、一般に使用される。
【0104】
本発明による接着剤組成物は、1成分型接着剤組成物の形態にあってもよく、または多成分型接着剤組成物、好ましくは2成分型接着剤組成物の形態にあってもよい。
【0105】
I.1成分型接着剤組成物:
第1の実施形態によれば、本発明による接着剤組成物は、1成分型接着剤組成物の形態にある。
【0106】
この実施形態によれば、前記1成分型組成物は、
- 3重量%~90重量%、好ましくは5重量%~80重量%、優先的には10重量%~70重量%、有利には20重量%~60重量%の、加水分解性アルコキシシラン基を含む少なくとも1つのポリマー(A);
- 15重量%~80重量%、好ましくは20重量%~70重量%、優先的には25重量%~70重量%、特定すると30重量%~60重量%、有利には40重量%~60重量%の、少なくとも1つの粘着付与樹脂(B);
- 0.1重量%~30重量%、好ましくは1重量%~20重量%、優先的には2重量%~15%、有利には3重量%~12重量%の、少なくとも1つのシルセスキオキサン樹脂(C);および
- 0.01重量%~10重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%、優先的には0.05重量%~4重量%、有利には0.1重量%~3重量%、特定すると0.5重量%~2重量%の架橋触媒(D)
を一般に含み、これらの総重量割合は1成分型組成物の総重量に基づいて示されている。
【0107】
1成分型組成物は、
- 空気の排除を伴って、好ましくは不活性雰囲気下、ポリマー(A)を粘着付与樹脂(B)およびシルセスキオキサン樹脂(C)と、50℃から180℃の間、好ましくは100℃から150℃の間の温度にて混合する工程、
- 前記混合物を、50℃~130℃の範囲、有利には約70℃の温度に冷却する工程、ならびに次いで、
- 前記混合物中に、架橋触媒(D)、および適当な場合に他の任意選択の添加剤を組み込む工程
を含む、方法を介して調製することができる。
【0108】
II. 多成分型接着剤組成物:
第2の実施形態によれば、本発明による接着剤組成物は、
- 先に定義した、加水分解性アルコキシシラン基を含むポリマー(A);および
- 先に定義した粘着付与樹脂(B)
を含む、組成物U(第1の成分として)と、
- 先に定義した架橋触媒(D);ならびに
- 300g/mol~100000g/molの範囲の数平均分子量を有する化合物(E1);および
- 0.08kPa以上の、20℃での蒸気圧を有する化合物(E2);
およびまた、これらの混合物
から選択される、少なくとも1つの化合物(E)
を含む、組成物V(第2の成分として)と
を含み、
シルセスキオキサン樹脂(C)が、組成物Uまたは組成物V中に含まれる、多成分型組成物の形態にある。
【0109】
前記多成分型接着剤組成物の多様な成分は、以下に記載される自己接着支持体を製造する方法に従って、架橋反応の実施時に混合されることが企図される。
【0110】
多成分型接着剤組成物は、組成物UおよびVに加え、1つまたは複数の追加の組成物を含んでもよく、前記追加の組成物は、任意のタイプの化合物を含む可能性がある。例えば、多成分型接着剤組成物は、例えば組成物Uのために上に記載したものから選択される少なくとも1つの粘着付与樹脂を含む追加の組成物Wを含んでもよい。本発明による多成分型接着剤組成物はまた、水を含む組成物Wもまた含むことができる。水は、液体の形態にあっても気体状の形態にあってもよく、または成分の化学構造中に内包または吸収または含有されていてもよい。水は、1つまたは複数の成分から誘導されてもよく、続いてそれを解放し入手可能にすることができる。
【0111】
本発明による多成分型接着剤組成物は、有利には、以下に記載される自己接着支持体を製造する方法のための高い架橋率へと導く。改善された反応性は、有利には、オーブン中の処理を回避することを可能にし、または自己接着支持体の調製の間に架橋オーブン中の滞留時間を短くすることを可能にし、そのため、オーブン中の短い滞留時間、すなわち例えば5分未満、好ましくは1分未満、優先的には30秒未満、有利には10秒未満に達することを可能にする。本発明による多成分型接着剤組成物は、このようにして、架橋後の良好な自己接着特性も同時に有する高い工業生産率へと有利にも導く。
【0112】
(混合前の)前記接着剤組成物中に含まれる組成物UおよびVは、貯蔵時に、昇温にて、および/または上昇する水分含有量にて、安定である。経時的により安定であることは、それらの生産とそれらの加熱適用との間に、より長期の貯蔵、および反応するリスクの少ない取り扱い、組成物UおよびVの解重合または架橋を有利にも可能にする。
【0113】
本発明による多成分型接着剤組成物は、粒またはゲルの、制御されず不均質な形成の問題を一切有していない均一な接着剤層の形成を有利にも可能にし、かつ/または支持体層全体にわたる均一な架橋を有利にも可能にする。
【0114】
多成分型接着剤組成物は、有利にも、自己接着物品の生産中に、その中で接着剤の成分が循環する管の中で固体へのセッティングを起こすことなく、高い触媒含有量を含むことができる。
【0115】
さらにより好ましい実施形態によれば、本発明による多成分型接着剤組成物は、上記組成物UおよびVからなる2成分型接着剤組成物である。
【0116】
II.1. 組成物U:
組成物Uは、
- 3重量%~90重量%の、加水分解性アルコキシシラン基を含むポリマー(A)、好ましくは5重量%~80重量%、優先的には10重量%~70%、有利には20重量%~60重量%;
- 15重量%~80重量%の粘着付与樹脂(B)、好ましくは20重量%~70重量%、優先的には25重量%~70重量%、特定すると30重量%~60重量%、有利には40重量%~60重量%;適当な場合には、
- 0.1重量%~30重量%、好ましくは1重量%~20重量%、優先的には2重量%~15重量%、有利には3重量%~12重量%の少なくとも1つのシルセスキオキサン樹脂(C)
を一般に含み、これらの重量割合は組成物Uの総重量に基づいて示されている。
【0117】
加えて、組成物Uはまた、吸湿剤、可塑剤、抗酸化剤、顔料、着色剤、接着促進剤、UV安定剤および充填剤からなる群から選択される、先に記載した1つまたは複数の添加剤も含んでよい。
【0118】
組成物Uは、多様な成分の組み込みの順序に関係なく、前記組成物Uの成分のうちの全てを混合することによって調製することができる。成物Uのいくつかの成分を一緒に混合して、次いで、続いて前記組成物Uの他の成分と混合してもよい。
【0119】
混合は、23℃~200℃の範囲の温度にて実施することができる。
【0120】
II.2. 組成物V:
組成物Vは、
- 先に定義した架橋触媒(D);
- 300g/mol~500000g/molの範囲の数平均分子量を有する化合物(E1);
- 0.08kPaに等しい20℃での蒸気圧を有する化合物(E2)
-(E1)と(E2)との混合物;
から選択される少なくとも1つの化合物(E)
およびまた、適当な場合には、
- 先に定義したシルセスキオキサン樹脂(C)
を含む。
【0121】
一実施形態によれば、組成物Vは、
- 化合物(E1);
- 異なる化合物(E1)の混合物;
- 化合物(E2);
- 異なる化合物(E2)の混合物;または
- 少なくとも1つの化合物(E1)と少なくとも1つの化合物(E2)との混合物
を含む。
【0122】
II.2.1. 化合物(E):
化合物(E)の存在は、組成物V中での架橋触媒(D)の希釈を可能にし、そのため、前記組成物Vの引火点の増加を有利にも可能にする。これは、特に、自己接着物品を調製する方法の安全性を有利にも改善させる効果を有する。
【0123】
加えて、特に組成物V中50重量%以上の含有量における化合物(E)の存在は、使用している間、例えば有機金属触媒の毒性のリスクを下げることを有利にも可能にする。
【0124】
その上、組成物V中の化合物(E)の存在は、(組成物Uと組成物Vとを混合した後に得られた)2成分型接着剤組成物中の触媒(D)の、より良好な分散を有利にも可能にする。この、より良好な分散は、最終コーティングの最適な品質を損なう粒および/またはゲルの形成の問題が一切存在しない、または接合される表面上へのコーティングの、欠陥のない適用を妨げない、均一な接着剤層でのコーティングへと有利にも導く。
【0125】
さらに、組成物V中の化合物(E)の存在は、添加する触媒(D)がきわめて少量であることを有利にも可能にする。
【0126】
化合物(E)は、有利には、触媒(D)に関して不活性であり、すなわちそれらは前記触媒と反応しない。
【0127】
II.2.1.1 化合物(E1):
化合物(E1)は、好ましくは、1000g/mol~50000g/mol、好ましくは1000g/mol~20000g/mol、特定すると2000~20000g/mol、優先的には3000~20000g/mol、例えば4000~18000g/mol、有利には5000g/mol~10000g/mol、特に7000g/mol~9000g/molの範囲の数平均分子量を有する。
【0128】
化合物(E1)の数平均分子量は、当業者に周知の方法によって、例えばポリスチレン標準を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0129】
化合物(E1)は、好ましくは、10mPa・s~100000mPa・s、特定すると500~50000mPa・s、好ましくは500~20000mPa・s、優先的には500~15000mPa・s、有利には500~10000mPa・s、例えば1000~5000mPa・s、好ましくは1000~3000mPa・sの範囲の、23℃での粘度を有する。
【0130】
本発明によれば、化合物(E1)は、
(E1-1)ポリオール;
(E1-2)オルガノシラン;
(E1-3)粘着付与樹脂;
(E1-4)ポリオールエステル;
(E1-5)モノシリルまたはジシリルポリマー;
(E1-6)ポリエーテルアミン;
およびまた、これらの混合物
からなる群から選ぶことができる。
【0131】
本発明によれば、化合物(E1)は、反応性化合物であっても非反応性化合物であってもよく、これはまた、用語反応性または非反応性希釈剤によっても示される。用語「反応性」は、それが、組成物Uと組成物Vとを混合する間に、組成物Uのシリルポリマーのアルコキシシラン官能基と反応することができる少なくとも1つの官能基を含むことを意味する。例えば、ポリオール、粘着付与樹脂およびポリオールエステルは、非反応性化合物である。例えば、オルガノシランならびにモノシリルまたはジシリルポリマーは、反応性化合物である。
【0132】
反応性化合物(E1)の使用は、混合した後に、より良好な耐熱性を有する接着剤組成物へと導くことを有利にも可能にする。
【0133】
ポリオール(E1-1):
一実施形態によれば、化合物(E1)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラヒドロフランポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオール、ポリエステルカーボネートポリオール、ポリアセチルポリオール、ポリ(エステル-アミド)ポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリオールであり、化合物(E1)は、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、およびこれらの混合物から選択される。
【0134】
本発明の文脈では、用語「ポリオール」は、少なくとも2つのヒドロキシル(OH)官能基を含む、任意の線状または分枝状の、環式または非環式の、飽和または不飽和の、芳香族または脂肪族の炭化水素系化合物を意味する。ポリオールは、官能基で任意選択で置換されていてもよく、かつ/またはエーテル(-O-)およびカルボキシル(-C(=O)O-または-OC(=O)-)の各基から選択される1つまたは複数の二価基を含んでもよい。
【0135】
ポリオールは、ジオール、トリオール、およびこれらの混合物から選ぶことができる。
【0136】
一実施形態によれば、化合物(E1)は、5~500mgKOH/g、好ましくは5~250mgKOH/g、優先的には6~50mgKOH/g、特定すると10~28mgKOH/gの範囲のIOHを有するポリオールからなる群から選択されるポリオールである。
【0137】
ポリオールのヒドロキシル数IOHは、ポリオール1グラム当たりのヒドロキシル官能基の数を表し、規格ISO14900:2001に従った滴定法によって実験で決定される、ヒドロキシル官能基のアッセイにおいて使用される水酸化カリウム(KOH)のミリグラムの等数の形態で表される。ポリオールの混合物の事例では、IOHはまた、ポリオールのそれぞれの既知のIOH値から、および前記混合物中のそれらのそれぞれの重量含有量から算出することができる。
【0138】
ポリアセタルポリオールは、例えば、グリコール(例としてはジエチレングリコール)とホルムアルデヒドとの間の反応によって調製されるものであってもよい。ポリアセタールはまた、環式アセタールの重合によっても調製されうる。
【0139】
ポリオレフィンポリオールは、ヒドロキシル末端基を含むブタジエンホモポリマーおよび共重合体であってもよい。
【0140】
ポリカーボネートポリオールは、2~10個の炭素原子を含む少なくとも1つのジオール(例としては1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコールまたはテトラエチレングリコール)の、3~20個の炭素原子を含む少なくとも1つの炭酸ジアリール、例としては炭酸ジフェニルとの間の反応、またはホスゲンとの間の反応によって得られるものであってもよい。
【0141】
ポリエステルポリオールは、
- 天然起源のポリエステルポリオール、例えばヒマシ油;
- 少なくとも1つのラクトン環(好ましくは3~7個の炭素原子を含む)の、少なくともジオール、例えばポリカプロラクトンポリオールでの環開を有する重合から誘導されるポリエステルジオール;
- ○少なくとも1つのジカルボン酸、または対応する無水物もしくはそれらのジエステルのうちの1つと;
○少なくとも1つのジオールと
の間の縮合から得られるポリエステルポリオール
であってもよい。
【0142】
上記ポリエステルポリオールの合成に使用されうるジカルボン酸は、3~40個の炭素原子、優先的には6~10個の炭素原子を好ましくは含む。
【0143】
好ましくは、上記ポリエステルポリオールの合成に使用されうるジカルボン酸は、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、1,3-または1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、3-メチル-1,5-ペンタンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0144】
上記ポリエステルポリオールの合成に使用されうるジオールは、ポリアルキレンジオール、ポリオキシアルキレンジオール、およびこれらの混合物から選ぶことができ、これらの化合物のアルキレン(飽和)部分は、好ましくは線状または分枝状であり、2~40個の炭素原子、優先的には2~8個の炭素原子を好ましくは含む。
【0145】
好ましくは、上記ポリエステルポリオールの合成に使用されうるジオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0146】
ポリエステルポリオールの中で挙げることができる例には、2に等しいヒドロキシル官能性を有する以下の製品がある:
- Tone(登録商標)0240(Union Carbideから入手可能)、これは、約2000Daの数平均分子量、56に等しいIOHを有し、約50℃の融点を有する;
- Dynacoll(登録商標)7381(Evonikから入手可能)、約3500Daの数平均分子量、30に等しいIOHを有し、約65℃の融点を有する;
- Dynacoll(登録商標)7360(Evonikから入手可能)、アジピン酸とヘキサンジオールとの縮合から得られるもの、約3500Daの数平均分子量、30に等しいIOHを有し、約55℃の融点を有する;
- Dynacoll(登録商標)7330(Evonikから入手可能)、約3500Daの数平均分子量、約30に等しいIOHを有し、約85℃の融点を有する;
- Dynacoll(登録商標)7363(Evonikから入手可能)、アジピン酸とヘキサンジオールとの縮合から得られるもの、約5500Daの数平均分子量、21に等しいIOHを有し、約57℃の融点を有する。
【0147】
本発明の文脈では、用語「ポリエステルポリオールのヒドロキシル官能性」は、ポリエステルポリオール1モル当たりのヒドロキシル官能基の平均数を意味する。
【0148】
ポリエステルポリオールは、非晶質であっても結晶性であってもよく、好ましくは非晶質である。
【0149】
好ましくは、ポリエステルポリオールは、アジピン酸と、ネオペンチルグリコール、エチレングリコールおよび1,6-ヘキサンジオールの混合物との間の縮合反応によって得られるものであり;またはアジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールとの間の縮合反応によって得られるものである。
【0150】
ポリエーテルポリオールは、ジオールのオキシアルキル誘導体(例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール)であってもよく、トリオールのオキシアルキル誘導体(例としてはグリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサン-1,2,6-トリオール)であってもよく、またはテトラオールのオキシアルキル誘導体(例としてはペンタエリトリトール)であってもよい。ポリエーテルポリオールは、触媒の存在下、対応するアルキオキシドの重合によって得ることができる。
【0151】
好ましくは、ポリエーテルポリオールは、2または3に等しいヒドロキシル官能性を特に有すし、好ましくは、1~1.6、好ましくは1~1.4の範囲の多分散指数を有する、ポリプロピレングリコール(またはPPG)である。
【0152】
本発明の文脈では、用語「多分散指数」は、特にGCによって測定される、重量平均分子量と数平均分子量との間の比を意味する。
【0153】
2に等しいヒドロキシル官能性を有するポリプロピレングリコールの中で挙げることができるのは、以下である:
- Voranol(登録商標)EP1900:約4008g/molの数平均分子量、および28mgKOH/gに等しいヒドロキシル数IOHを有する二官能性PPG;
- Acclaim(登録商標)8200:8016g/molの数平均分子量、および14mgKOH/gに等しいヒドロキシル数IOHを有する二官能性PPG;
- Acclaim(登録商標)12200:11222g/molの数平均分子量、および10mgKOH/gに等しいヒドロキシル数IOHを有する二官能性PPG;
- Acclaim(登録商標)18200:17265g/molの数平均分子量、および6.5mgKOH/gに等しいヒドロキシル数IOHを有する二官能性PPG。
【0154】
3に等しいヒドロキシル官能性を有するポリプロピレングリコールの中で挙げることができるのは、以下である:
- Voranol(登録商標)CP755:約710g/molの数平均分子量、および237mgKOH/gに等しいヒドロキシル数IOHを有する三官能性PPG;
- Voranol(登録商標)CP3355:約3544g/molの数平均分子量、および47.5mgKOH/gのヒドロキシル数IOHを有する三官能性PPG;
- Acclaim(登録商標)6300:約5948g/molの数平均分子量、および28.3mgKOH/gに等しいヒドロキシル数IOHを有する三官能性PPG。
【0155】
本発明の文脈では、用語「ポリエーテルポリオールのヒドロキシル官能性」は、ポリエーテルポリオール1モル当たりのヒドロキシル官能基の平均数を意味する。
【0156】
好ましい一実施形態によれば、ポリエーテルポリオールは、2に等しい官能性、および好ましくは3000~20000g/mol、優先的には4000~19000g/mol、特定すると5000~15000g/mol、有利には7000~13000g/molの範囲の数平均分子量を有する。
【0157】
好ましい一実施形態によれば、ポリエーテルポリオールは、3に等しい官能性、および好ましくは、500~20000g/mol、優先的には500~10000g/mol、特定すると500~5000g/mol、有利には500~4000g/molの範囲の数平均分子量を有する。
【0158】
オルガノシラン(E1-2):
一実施形態によれば、化合物(E1)は、オルガノシランから選択され、特定するとアミノシラン、メルカプトシラン、グリシドキシシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、(メタ)アクリレートシラン、グリコキシシラン、無水シラン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0159】
本発明の文脈では、用語「オルガノシラン」は、Si-C結合によってSi原子に結合している有機基を含む化合物を意味する。
【0160】
好ましくは、オルガノシランは、Si-О結合によってSi原子に連結している、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、またはさらには3つのアルコキシ基を含む。
【0161】
オルガノシランは、モノマーであってもオリゴマーであってもよい。
【0162】
オルガノシランの中で挙げることができる例には、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(例えばMomentive社から名称Silquest(登録商標)A1110で入手可能)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(例えばMomentive社から名称Silquest(登録商標)A-187で入手可能)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(例えばMomentive社から名称Silquest(登録商標)A-189で入手可能)、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、N-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(例えばMomentive社から名称Silquest(登録商標)A-174NTで入手可能)、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(例えばMomentive社から名称Silquest(登録商標)Y-11597で入手可能)、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド(例えばMomentive社から名称Silquest(登録商標)A-1289で入手可能)、ビス(3-トリメトキシシリル)ジスルフィド(例えばMomentive社から名称Silquest(登録商標)A-1589で入手可能)、β-(3,4-エエポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(例えばMomentive社から名称Silquest(登録商標)A-186で入手可能)、ビス(トリエトキシシリル)エタン(例えばMomentive社から名称Silquest(登録商標)Y-9805で入手可能)、ガンマ-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(例えばMomentive社から名称Silquest(登録商標)A-Link35で入手可能)、(メタクリロキシメチル)トリ(メ)エトキシシラン(例えばWacker社から名称Geniosil(登録商標)XL33でまたはGeniosil(登録商標)XL36で入手可能)、(メタクリロキシメチル)(メ)エチルジメトキシシラン(例えばWacker社から名称Geniosil(登録商標)XL32またはGeniosil(登録商標)XL34で入手可能)、(イソシアナトメチル)メチルジメトキシシラン(例えばWacker社から名称Geniosil(登録商標)XL42で入手可能)、(イソシアナトメチル)トリメトキシシラン(例えばWacker社から名称Geniosil(登録商標)XL43で入手可能)、(メタクリロキシメチル)メチルジエトキシシラン、2-アクリロキシエチルメチルジメトキシシラン、2-メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-メチル-1,3-プロパンジオールとビニルトリメトキシシランとの間の反応から誘導されるグリコキシシラン、およびこれらの混合物がある。
【0163】
粘着付与樹脂(E1-3):
一実施形態によれば、化合物(E1)は、特に100g/mol~6000g/mol、好ましくは300g/mol~4000g/molの範囲の数平均分子量を有する粘着付与樹脂から選択される。
【0164】
粘着付与樹脂は、例えば、粘着付与樹脂(B)について定義した任意の粘着付与樹脂であってもよい。
【0165】
ポリオールエステル(E1-4):
一実施形態によれば、化合物(E1)は、ポリオールエステから選択される。ポリオールエステルは、例えば、ポリオールの、例えばテトロールの、例としてはペンタエリトリトールの、エステル化反応によって調製することができる。
【0166】
挙げることができるポリオールエステルの例は、四吉草酸ペンタエリトリチルである。
【0167】
モノシリルまたはジシリルポリマー(E1-5):
一実施形態によれば、化合物(E1)は、モノシリルポリマー、ジシリルポリマー、およびこれらの混合物から選択される。
【0168】
ジシリルポリマーは、シリルポリマー(A)の定義について先に挙げたもののうちの任意のものであってもよく、特定すると上記の式(II’)、(III’)または(IV’)のポリマーである。
【0169】
好ましくは、モノシリルポリマーは、上記の式(I)の基を含む。
【0170】
ポリエーテルアミン(E1-6):
本発明の文脈では、別途記載がない限り、用語「ポリエーテルアミン」は、ポリエーテル主鎖、および少なくとも1つのアミン官能基(またはさらには少なくとも2つのアミン官能基)を含む化合物を意味する。
【0171】
一実施形態によれば、化合物(E1)は、ポリエーテルアミンから選択される。
【0172】
ポリエーテルアミンの中で特に挙げることができるのは、Huntsman社により販売されているJeffamine製品、例としては13.49meq/gの主要アルカリ度を有する式H2N-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-NH2のポリエーテルジアミン(例えばHuntsman社から商品名Jeffamine(登録商標)ED148で入手可能)である。
【0173】
II.2.1.2 化合物(E2):
組成物Vに含まれる化合物(E)はまた、0.08kPaに等しい、20℃での蒸気圧を有する化合物(E2)(用語「非反応性希釈剤」により示される)でもある。
【0174】
化合物(E2)は、好ましくは、0.08kPaから13kPaの間、優先的には0.08kPaから8kPaの間、さらにより優先的には0.1kPaから5kPaの間の、20℃での蒸気圧を有する。
【0175】
化合物(E2)は、アルコールから、例えばイソプロパノール、イソブタノール、ブタノール、メタノール、2-ブトキシエタノール、およびこれらの混合物から選択される。
【0176】
有利には、化合物(E2)は、接着剤組成物を支持体層に適用している間にエバポレートされる。
【0177】
好ましい一実施形態によれば、組成物V中に含まれる架橋触媒が上記の酸誘導体である場合、化合物(E)は化合物(E1)である。
【0178】
好ましい一実施形態によれば、架橋触媒が上記の酸誘導体ではない場合、化合物(E)は化合物(E1)または(E2)である。
【0179】
好ましくは、触媒が、無機酸、例としてはオルトリン酸である場合、化合物(E)はポリオールから選択されない。
【0180】
II.2.2. 組成物Vの成分の重量含有量:
組成物Vは、それがシルセスキオキサン樹脂(C)を含まない場合、
- 0.01重量%~95重量%の架橋触媒(D)、好ましくは1重量%~90重量%、優先的には5重量%~90重量%、より優先的には10重量%~80重量%、さらにより優先的には10%~70重量%、有利には20重量%~60重量%、特定すると20重量%~50重量%;および
- 5重量%~99.99重量%の化合物(E)、好ましくは10重量%~99重量%、例えば10重量%~95重量%、優先的には20%~90重量%、さらにより優先的には30重量%~80%、有利には40重量%~70%
を一般に含み、これらの重量割合は組成物Vの総重量に基づいて示されている。
【0181】
組成物Vがまたシルセスキオキサン樹脂(C)も含む場合、そうであれば、前記組成物Vの成分の含有量は、
- 0.01重量%~95重量%の架橋触媒(D)、好ましくは1重量%~90重量%、優先的には5重量%~90重量%、より優先的には10重量%~80重量%、さらにより優先的には10重量%~70重量%、有利には20重量%~60重量%、特定すると20重量%~50重量%;
- 0重量%~99.99重量%の化合物(E)、好ましくは10重量%~99重量%、例えば10重量%~95重量%、優先的には20重量%~90重量%、さらにより優先的には30重量%~80重量%、有利には40重量%~70重量%;および
- 0.1重量%~99.99重量%の樹脂(C)、好ましくは2重量%~99重量%、例えば10重量%~95重量%、優先的には20重量%~90重量%、さらにより優先的には30重量%~80重量%、有利には40重量%~85重量%
の範囲であってもよく、これらの重量割合は組成物Vの総重量に基づいて示されている。
【0182】
本発明の文脈では、別途記載がない限り、触媒の質量含有量は、固体含有量(活性材料と称される)である。
【0183】
好ましくは、触媒(D)が有機金属化合物から選択される場合、組成物V中の触媒の含有量は、組成物Vの総重量に対して、15重量%~90重量%、好ましくは30重量%~60重量%、有利には45重量%~55重量%の範囲である。
【0184】
好ましくは、触媒(D)が、酸、特に無機酸から選択される場合、組成物V中の触媒の含有量は、組成物Vの総重量に対して、2重量%~60重量%、好ましくは5重量%~50重量%、特定すると5重量%~30重量%、有利には5重量%~20重量%の範囲である。
【0185】
好ましくは、触媒(D)が、酸誘導体、具体的にはスルホン酸のアンモニア塩、または有機リン酸のアンモニア塩から選択される場合、組成物V中の触媒の含有量は、組成物Vの総重量に対して、5重量%~60重量%、好ましくは10重量%~50重量%、有利には15重量%~40重量%、特定すると20重量%~30重量%の範囲である。
【0186】
一実施形態によれば、組成物B中の、架橋触媒(D):化合物(E)の比は、0.01:99.99~95:5、好ましくは5:95~95:5、特定すると5:95~60:40、優先的には10:90~50:50、有利には20:80~50:50の範囲である。
【0187】
II.2.3. 組成物V中に含まれる任意選択の添加剤:
組成物Vは、水を含んでもよい。水は、組成物Vの化合物に源を発してもよく、かつ/または組成物Vに添加されてもよい。
【0188】
組成物V中の水含有量は、組成物Vの総質量に対して、0.05質量%~50質量%、好ましくは0.1質量%~30質量%、優先的には0.5質量%~15質量%、有利には0.5質量%~10質量%、特定すると0.5質量%~5質量%の範囲であってもよい。
【0189】
一実施形態によれば、組成物Vは、特に化合物(E)がオルガノシランまたはモノシリルもしくはジシリルポリマーではない少なくとも1つの化合物(E1)を含む場合、水を含む。
【0190】
一実施形態によれば、組成物Vは、特に化合物(E)が化合物(E2)である場合、水を含む。
【0191】
一実施形態によれば、組成物Vは、水を含まない。用語「水を含まない」は、200ppm以下、好ましくは100ppm以下、例えば50ppm以下、またはさらには20ppm以下の水含有量を意味する。好ましくは、組成物Vは、化合物(E)が、オルガノシラン、モノシリルまたはジシリルポリマー、およびこれらの混合物から選択される少なくとも1つの化合物(E1)を含む場合、水を含まない。
【0192】
水含有量は、例えば規格ISO760に従ってKarl Fischerアッセイにより測定することができる。
【0193】
組成物V中に含有されている水は、液体の形態にあっても気体状の形態にあってもよく、または成分の化学構造中に内包もしくは吸収もしくは含有されていてもよく、これは、続いてそれを自由にし利用可能にすることができる。
【0194】
水は、前記組成物Vの1つまたは複数の成分から誘導されてもよい。
【0195】
組成物Vは、先に挙げた群から、ならびに吸湿剤、可塑剤、抗酸化剤、顔料、着色剤、接着促進剤、UV安定剤および充填剤からなる群から選択される、少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。
【0196】
組成物Vは、NH4F、Bu4NF、HF、BF3、Et2NSF3、HSO3F、少なくとも1つのフッ素基を含むポリエーテルポリオールPPG等のタイプのポリマー、少なくとも1つのSi-F結合を保持する化合物、およびこれらの混合物から選択される化合物を含有してもよい。
【0197】
組成物Vは、多種の成分の組み込みの順序に関係なく、前記組成物の成分のうちの全てを混合することによって調製することができる。組成物Vのいくつかの成分が一緒に混合され、次いで、続いて前記組成物Vの他の成分と混合されてもよい。
【0198】
混合は、23~200℃の範囲の温度にて実施することができる。
【0199】
II.2.4. 組成物Vの特性:
一実施形態によれば、組成物Vは、3mPa・s~50000mPa・s、好ましくは600mPa・s~25000mPa・s、優先的には800mPa.s~16000mPa・s、有利には1000mPa・s~5000mPa・s、例えば1100mPa・s~2000mPa・s、特定すると1200mPa.s~1500mPa・sの範囲の、23℃での粘度を有する。
【0200】
一実施形態によれば、組成物Vは、50mPa・s~500000mPa・s、好ましくは600mPa・s~100000mPa・s、優先的には1200mPa・s~50000mPa・s、有利には1200mPa・s~10000mPa・s、例えば1200mPa・s~5000mPa・sの範囲の、40℃~160℃、好ましくは60℃~100℃の範囲の温度での粘度を有する。
【0201】
組成物Vの構成物は、好ましくは、組成物Vが有利には経時的に安定であるように選択される。好ましくは、組成物Vは、比
(Vfinal-Vinitial)/Vinitial
が30%以下、好ましくは20%以下、優先的には10%以下であるようなものであり、
- Vfinalは、40℃での28日間の加熱後の、23℃にて測定した組成物Vの粘度であり;
- Vinitialは、前記加熱前の、23℃にて測定した組成物Vの粘度である。
【0202】
架橋触媒(D)は、上記化合物(E)(および適当な場合は(C))中で可溶型であるように有利には選択され、有利には、特に23℃での貯蔵時に、または40℃にて28日間加熱した後に、均質である組成物Vを形成する。用語「均質な」は、組成物V中、触媒と化合物(C)との間に相分離(凝結または沈降)がないことを意味する。
【0203】
II.3. 多成分型接着剤組成物の他の特徴:
前記多成分型接着剤組成物の好ましい変形形態によれば、前記多成分型接着剤組成物、好ましくは2成分型接着剤組成物の総重量で割った組成物Vの重量は、0.02%~40%、好ましくは0.05%~40%、優先的には0.05%~20%、より優先的には0.05%~10%、さらにより優先的には0.05%~5%の範囲である。
【0204】
多成分型接着剤組成物中に含まれる触媒は、組成物V中に含まれる架橋触媒(D)である。
【0205】
本発明による多成分型接着剤組成物、好ましくは2成分型接着剤組成物中の架橋触媒(D)の総含有量は、前記2成分型接着剤組成物の総含有量に対して、0.01重量%~10重量%、好ましくは、0.01重量%~5重量%、優先的には0.05重量%~4重量%、有利には0.1重量%~3重量%、特定すると0.5重量%~2重量%の範囲であってもよい。
【0206】
一実施形態によれば、架橋触媒(D)が酸およびそれらの誘導体から選択される場合、多成分型接着剤組成物、好ましくは2成分型接着剤組成物中のその総含有量は、前記組成物の総重量に対して、1%以下、好ましくは0.5%以下、有利には0.2%以下、優先的には0.1%以下、またはさらには0.05%以下である。
【0207】
好ましくは、本発明による接着剤組成物は、少なくとも2つの別々の区画、すなわち組成物Uのための第1の区画および組成物Vのための第2の区画、ならびに任意選択で追加の組成物のための他の区画を備えたキット中に包装される。
【0208】
キット:
本発明はまた、2つの別々の区画中に少なくとも上記組成物Uおよび組成物Vを備えたキットにも関する。区画は、例えば、ドラム、カートリッジまたはバッグであってもよい。多成分型接着剤組成物が他の組成物を含む場合、それらは、キットの他の区画中に収容される。
【0209】
自己接着物品:
本発明の主題はまた、前記自己接着層でコーティングされた支持体層を備えた自己接着物品であって、自己接着層が、架橋形態にある本発明による接着剤組成物からなることを特徴とする、自己接着物品でもある。
【0210】
本発明の目的では、用語「自己接着物品」は、手、または装置のアイテムでの圧力の動作のみにより、糊または接着剤の使用なしで表面に接着的に接合されうる任意の物品を含む。
【0211】
自己接着物品は、感圧自己接着物品である。
【0212】
自己接着層でコーティングされた支持体層はまた、用語「自己接着支持体」とも示される。
【0213】
これらの物品は、接合される表面に適用されるという目的を特に有し、一緒にする、維持する、固定する、または単に動かないようにする、形態、ロゴ、画像または情報を曝すようにする。これらの物品は、多くの分野、例えば医療分野、衣類、包装物、自動車両(例えば、ロゴ、レタリングを付着するため、車内防音、内装品、客室における接合)、または建設(例えば、遮音、断熱、窓の組み立て)において使用することができる。それらは、それらの最終用途の機能として形づくられてもよく、例えばテープの形態で、例えば工業用使用のためのテープ、日曜大工作業用テープ、または仕事場での固定する使用のため、片面テープまたは両面テープ、またはラベル、絆創膏、ドレッシング材、パッチまたはグラフィックフィルムの形態で形づくられてもよい。
【0214】
一実施形態によれば、自己接着物品は自己接着多層系であり、特に、片面であっても両面であってもよい自己接着ラベルまたはテープである。
【0215】
支持体層用に使用されうる材料は、例えば、任意のタイプの、剛性の支持体であっても可撓性の支持体であってもよい。挙げることができる例には、1つまたは複数の層を有する、ポリマー材料の、発泡体、フェルト、不織布の各支持体、プラスチック、膜、紙またはフィルム等のタイプの支持体が挙げられ、特に非粘着保護紙またはプラスチックフィルムが挙げられる。
【0216】
支持体層は、例えば、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、含まれるのは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、および線状超低密度ポリエチレン;ポリプロピレンおよびポリブチレン;ポリスチレン;天然または合成ゴム;ビニル共重合体、例えば可塑化されていてもされていなくてもよいポリ塩化ビニル、およびポリ(酢酸ビニル);オレフィン共重合体、例えばエチレン/メタクリレート共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、およびエチレン/プロピレン共重合体;アクリルポリマーおよび共重合体;ポリウレタン;ポリエーテル、ポリエステル、およびこれらの混合物から選択される材料で作製される。好ましくは、支持体層は、アクリルポリマー、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)をベースとし、これらは、延伸されている、延伸されていないまたは二軸延伸されているポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、または紙であってもよい。
【0217】
一実施形態によれば、本発明による接着剤組成物から得られた自己接着物品は、接着剤層でコーティングされた恒久的支持体層を備える。好ましくは、接着剤層はまた、好ましくはシリコーン処理された非粘着保護紙またはプラスチックフィルムでもコーティングされる。
【0218】
別の実施形態によれば、本発明による接着剤組成物から得られた自己接着物品は、好ましくはシリコーン処理された第1の非粘着保護紙またはプラスチックフィルムからなる非恒久的支持体を備え、前記層は、それ自体もまた第2の非粘着保護紙またはプラスチックフィルムでコーティングされていてもよい接着層でコーティングされている。この実施形態は、接合による窓の組み立てに特に好適であり、より特定すると窓枠の二重または三重ガラス窓からなる剛性パネルの組み立てに特に好適である。この実施形態によれば、前記非恒久的支持体層は、窓の組み立ての目的のために自己接着物品を適用した瞬間にユーザによって取り外されることが企図されている。
【0219】
非粘着保護フィルムの代替として、接着剤層でコーティングされていない恒久的支持体層の背面は、非粘着表面、例えばシリコーン処理保護層を有してもよい。
【0220】
別の実施形態によれば、恒久的支持体層は、同一であっても異なっていてもよい接着剤組成物で両面をコーティングされ、2種の接着剤組成物のうちの少なくとも1つは、本発明によるものであり、有利には「両面」テープの製造へと導く。
【0221】
好ましくは、支持体層は、10ミクロン~50mmの範囲、より好ましくは10ミクロン~20mmの範囲、好ましくは20ミクロン~10mm、より好ましくは20ミクロン~1mmの範囲の厚さを有する。
【0222】
一定の特定の事例では、その上にコーティングする工程の間、接着剤層の付着性を高めるために、支持体層上の表面処理を実施する必要がある。
【0223】
そのため、本発明による自己接着物品は、2つの基材を接合することができる。その上に自己接着物品が適用されることが企図される基材(「接合される基材」と称される)は、可撓性であっても剛性であってもよい。詳細には、それは、上記の支持体層と同じ可撓性の特性を有して、例えば先に記載したリールの形態に巻き上げられて包装されてもよい。
【0224】
別法として、接合される基材は、剛性であってもよい。この事例では、基材は、例えば先に記載したリールの形態に巻き上げられ得ず包装され得ない。接合される基材は、例えば、コンクリート、紙、ポリオレフィンタイプの基材、ガラス、セラミックおよび金属、特にアルミニウムから選ぶことができる。
【0225】
本発明による架橋状態にある接着剤組成物からなり、本発明による自己接着物品中で支持体層を被う、自己接着層は、好ましくは10μm~5000μmの範囲のきわめて多様な厚さを有してもよい。
【0226】
10μm~100μm、好ましくは20~50μmの範囲の厚さは、自己接着ラベルの事例においてより特に好ましく、一方で3~5000μmの範囲のはるかに広い間隔の範囲の厚さは、自己接着テープのために合致されうる。
【0227】
一実施形態によれば、自己接着物品はまた、非粘着保護層(剥離ライナー)を備える。
【0228】
一実施形態によれば、前記非粘着層は、接着剤組成物の架橋後に接着剤層に適用される。
【0229】
支持体層は、その2つの面のうちの1つ、接着層で、非粘着保護層で、例えばシリコーンフィルムでコーティングされない背面上で被われうる。この方法では、自己接着物品は、それ自体の上で巻き上げられ得、次いで接着剤層の、シリコーン処理面への接着の不在のおかげで一切の問題なくほどかれうる。
【0230】
自己接着物品を製造する方法:
本発明の主題はまた、先に定義した自己接着物品を製造する方法であって、前記方法が、
- (a)先に定義した熱架橋性接着剤組成物を40℃と130℃との間の温度に予備加熱すること;
- (b)前記組成物の、コーティングによる軸受面上への適用;
- (c)前記組成物を50~200℃の範囲の温度に加熱することによって架橋すること;および次いで、
- (d)架橋接着剤組成物の層を、支持体層上または非粘着保護フィルム上に、積層または転写すること
を含むことを特徴とする、
方法である。
【0231】
熱架橋性接着剤組成物が、ポイントIに記載の第1の実施形態に従った1成分型組成物である場合、それは、工程(a)に従って予備加熱され、次いで工程(b)に従って軸受面に適用され、最後に工程(c)に従って架橋される、前記1成分型組成物である。
【0232】
熱架橋性接着剤組成物が、ポイントIIに記載の第2の実施形態に従った多成分型組成物、好ましくは2成分型組成物である場合、工程(a)に従った予備加熱は、前記組成物の成分のそれぞれに関連する。
【0233】
好ましくは、予備加熱は、2成分型組成物の2つの組成物UおよびVのそれぞれに関連する。
【0234】
次いで、予備加熱の工程(a)は、40~130℃の範囲の温度にて組成物UとVとを混合する工程(a’)へと続き、形成された混合物から得られた組成物は、次いで、工程(b)に従って軸受け表面に適用され、次いで工程(c)に従って架橋される。
【0235】
本発明の目的では、用語「軸受面」は、非粘着層か、非粘着保護フィルム(「剥離ライナー」)か、支持体層か、のいずれかでコーティングされたベルトコンベアーを意味すると理解されるべきである。
【0236】
軸受面が非粘着保護フィルムである事例では、本発明による自己接着物品を製造する方法は、架橋接着剤層を支持体層上に転着する工程(d)を含んでもよい。
【0237】
軸受面が支持体層または非粘着保護フィルムである事例では、本発明による自己接着物品を製造する方法はまた、接着剤層を非粘着保護フィルム上に積層する工程(d)も含んでもよい。
【0238】
本発明の好ましい変形形態によれば、上記の方法の工程(d)は、架橋接着剤層を分解温度未満の温度まで、または支持体層が構成されている材料の軟化点まで冷却した後に、架橋接着剤層を可撓性支持体層(これはプラスチックフィルムであってもよい)上に転着することからなる。
【0239】
一実施形態によれば、本発明による自己接着物品を製造する方法はまた、本発明による接着剤組成物の第2の層を支持体層上にコーティングする工程(e)、続いて工程(e)でコーティングされた接着剤組成物を20~200℃の範囲の温度に加熱することによって架橋する工程(f)を含む。この実施形態によれば、両面の自己接着物品が得られる。
【0240】
コーティングする工程(b)は、既知のコーティング装置、例としてはリップノズルまたはカーテンタイプのノズルによって、あるいはローラーで実施することができ、それは、単位面積当たり重量10g/m2~5000g/m2の範囲の接着剤組成物を使用する。
【0241】
自己接着ラベルの製造に必要な接着剤組成物の単位面積当たり重量は、10~100g/m2、好ましくは20~50g/m2の範囲であってもよい。自己接着テープの製造に必要な単位面積当たり重量は、1面当たり3~5000g/m2、好ましくは、15~250g/m2から延びる、はるかにより広い範囲内で多様でありうる。
【0242】
一実施形態によれば、コーティング済み接着剤組成物はまた、工程(c)の間に、特に、そこで水分子が10から200g/m3の間の気体において存在する気体環境における水分レベルを特徴とする、湿潤雰囲気下での処理にも供される。
【0243】
好ましくは、湿潤雰囲気は、そこで分子のうちの2%~100%が水分子である、好ましくは分子の3%~50%、より好ましくは3%~10%が水分子である雰囲気である。
【0244】
水分レベルは、単位体積当たりの水の百分率として表され、これは、体積の単位中の分子の総数で割った水分子の数に相当する。この尺度の直線の性質のおかげで、水分レベルは、例えばP.I.D[比例-積分-微分(Proportional-Integral-Derivative)]タイプのモニターを用いることによって即座に測定されモニターされる。重量百分率は、分子の総数に対する水分子の数の百分率を、0.622の関数とかけることによって算出することができる。多様な環境中の水分レベルに関する一般情報は、W.Wagnerらにより、International Steam Tables-Properties of Water and Steam based on the Industrial Formulation IAPWS-IF97により記載されている。
【0245】
熱架橋の工程は、特に、雰囲気水分の作用下での接着剤組成物のアルコキシシラン末端基を保持する加水分解性ポリマー鎖同士の間にシロキサンタイプの結合を創製する効果を有し、これは、三次元ポリマーネットワークの形成へと導く。このようにして架橋された接着剤組成物は、特に、それでコーティングされている支持体層に、所望の接着量および粘着性を付与する感圧接着剤である。
【0246】
好ましくは、コーティングは、支持体層にわたり、または非粘着保護層にわたり、均一に実施されるが、コーティングはまた、最終自己接着物品の所望の形状にも適合されうる。
【0247】
一実施形態によれば、接着剤組成物でのコーティングは、支持体層の2つの面のうちの少なくとも1部分にわたって実施される。支持体層のうちの2つの面がコーティングされている場合、接着剤組成物は、2つの面において同一であっても異なっていてもよく、単位面積当たり重量は、2つの面において同一であっても異なっていてもよい。
【0248】
本発明の一実施形態によれば、自己接着物品は、1つの面の少なくとも1部分の上に、または支持体層の2つの面の少なくとも1部分の上に、接着剤層を備え、前記接着剤層は、非粘着保護層で任意選択でコーティングされている。一実施形態によれば、自己接着物品は、2つの接着剤層のそれぞれの上に、2つの非粘着保護層を備える。この事例では、2つの保護層は、同一のまたは異なる材料で作製され得、かつ/またはそれらは、同一のまたは異なる厚さを有することができる。
【0249】
本発明による自己接着物品を製造する方法の好ましい変形形態によれば、先に定義した多成分型接着剤組成物を用いて、軸受面上に、例えばコーティングによる支持体層(96)上への適用の工程(b)は、前記接着剤組成物の加熱適用(20)のための設備によって実施され、該設備は、
- 多成分型接着剤組成物を適用するためのノズル(50);
- 流体形態で適用される多成分型接着剤組成物中に含まれる組成物Uを供給するライン(88a);
- 流体形態で適用される多成分型接着剤組成物中に含まれる組成物Vを供給するライン(66a);
- 流体形態で適用される多成分型接着剤組成物をノズル(50)に供給するライン(88);および
- 多成分型接着剤組成物の少なくとも組成物UとVとを混合するためのミキサー(30)
を備え、
前記工程(b)は、
- 少なくとも組成物Uを供給ライン(88a)に供給すること;
- 少なくとも組成物Vを供給ライン(66a)に供給すること;
- 多成分型接着剤組成物の少なくとも組成物Uと組成物Vとをミキサー(30)を用いて混合すること;および
- 混合済み多成分型接着剤組成物(80)を支持体層上に、適用ノズル(50)を用いて加熱適用すること
を含む。
【0250】
ミキサーは、スタティックミキサーであってもダイナミックミキサーであってもよい。
【0251】
好ましくは、スタティックまたはダイナミックミキサーは、温度制御され得なければならない。好ましくは、ミキサー(30)はダイナミックミキサーであり、有利には、高せん断での混合、および多成分型組成物の少なくとも組成物UとVとを混合して得られた接着剤組成物のより良好な均質性の獲得を可能にする。
【0252】
ミキサー(30)は、少なくとも組成物Uを供給するライン(88a)および組成物Vを供給するライン(66a)と供給ライン(88)との間に配置されてもよく、多成分型接着剤組成物、特に2成分型接着剤組成物を構成する組成物の均質な混合を可能にすることができる。
【0253】
本発明による方法は、多成分型組成物の少なくとも組成物Uと組成物Vとをミキサー(30)を用いて混合することを含む。混合する工程は、多成分型組成物の組成物Uを組成物Vと、および任意選択で1つまたは複数の追加の組成物と混合することであってもよい。
【0254】
設備は、前記組成物をポンピング温度に上げるために、好ましくは、少なくとも組成物Uを、50℃から140℃の間、好ましくは、80℃から120℃の間、より優先的には90℃から110℃の間のポンピング温度に上げるために、多成分型組成物の組成物Uまたは組成物Vまたは別の追加の組成物を収容する貯蔵リザーバ(82)中に置かれるのに好適な加熱手段(44)を備えてもよい。
【0255】
好ましくは、多成分型接着剤組成物は、(少なくとも組成物UとVとを混合した後に)50℃から140℃の間、好ましくは80℃から120℃の間、より優先的には90℃から110℃の間の温度にて適用される。
【0256】
図1は、本発明による自己接着物品を製造する方法を実施するのに好適な設備20の一実施形態の概略表示を示す。
【0257】
一実施形態によれば、少なくともダブルの供給の結果として、組成物V(66)は、少なくとも組成物Uを供給するライン(88a)および組成物Vを供給するライン(66a)と、他方で、適用される多成分型接着剤組成物を供給するライン(88)との間に置かれたミキサー(30)に至るまで、組成物U(68)から分離される。換言すると、ミキサー(30)は、インラインであり、組成物(66)と組成物(68)との別々の供給が実施される均質な混合の工程を可能にする。組成物V(66)の、組成物U(68)への注入を、例えば
図1で例示しているようにミキサー(30)中で実施して、これらの組成物の即座の混合を可能にする。
【0258】
本発明による多成分型接着剤組成物を構成している多種の組成物は、完全に分離されてもよく、すなわち各組成物は、加熱適用設備(20)に別々に供給される。特に、多成分型接着剤組成物の組成物A(68)の注入、組成物B(66)の注入、および任意選択の追加の組成物の注入は、ミキサー(30)中で実施される。
【0259】
本発明による設備では、組成物U(68)は、少なくとも1つの架橋触媒を含む組成物V(66)の分離に起因して組成物U(68)の架橋をもたらすことなく、加熱手段(44)によって貯蔵リザーバ(82)中で加熱されてもよい。ドラムの形態において表される貯蔵リザーバ(82)中の加熱は、特に、分けられた組成物V(66)との任意の接触前に、特に組成物U(68)の粘度を低下させることを可能にし、例えばポンプ(46)を用いて、設備(20)内のポンピングを促進する。
【0260】
この加熱手段(44)(好ましくはホットプレート)は、組成物U(68)を適用温度に上げることに向けて特に寄与する。適用温度は、そこで、適用される接着剤組成物が、混合済み多成分型接着剤組成物(80)の、表面(96)上への適用、換言するとコーティングを可能にするのに十分低い粘度を有する。
【0261】
詳細には、組成物V(66)と組成物U(68)とを混合した後、多成分型接着剤組成物(80)が構成され、適用ノズル(50)を用いて支持体(96)に加熱適用されうる。多成分型接着剤組成物(80)の適用のための温度は、このように、そこで多成分型接着剤組成物の粘度が50Pa・s以下、好ましくは10Pa・s以下であるような温度に相当しうる。例によれば、多成分型接着剤組成物(80)は、60℃~120℃の範囲の適用温度にて5±1Pa・sの粘度を有しうる。多成分型接着剤組成物(80)の、表面(96)への適用に続き、コーティング済み支持体(98)は、制御された温度に供され、任意選択で制御された水分レベルに供されて、多成分型接着剤組成物の架橋を可能にする。
【0262】
制御された温度は、オーブンまたはチャンバを用いて得ることができる。制御された温度は、多成分型接着剤組成物(80)の架橋の温度に相当し、それは、例えば50℃から200℃の間、好ましくは80℃から160℃の間、特定すると100℃から150℃の間である。
【0263】
同様に、組成物V(66)は、それらが混合される前に架橋するリスク一切なしで、それが組成物U(68)と混合される前に、それ自体もまた加熱されうる。これも同様に、本発明による多成分型組成物の任意の組成物についての事例である。
【0264】
それらを混合する前の、別々の組成物V(66)とU(68)との全ての加熱は、それらがミキサー(30)中で混合される前に架橋するリスク一切なしで、これらの組成物を適用温度に持ち込むことを特に可能にする。
【0265】
本発明による自己接着物品は、最終的に、これもまた本発明の主題である接合方法において使用することができ、その方法は、
a)非粘着保護層を、このような層が存在する場合に取り外す工程;
b)自己接着物品を製品の1つの面に適用する工程;
c)前記物品に圧力をかける工程
を含むことを特徴とする。
【0266】
工程b)において、自己接着物品は、(自己接着層によって形成された)物品の自己接着部分が製品の表面に面するように適用される。
【0267】
そこで自己接着物品が両面物品である実施形態によれば、接合方法はまた、そこで製品の第2の表面が、製品の第1の表面に接合される物品に適用されるか、または製品の第1の表面に接合された物品が、製品の第2の表面に適用されるか、のいずれかの工程を含む。
【0268】
以下の実施例は、本発明の例示によってのみ付与され、その範囲を限定するためであると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0269】
実施例A(参照例):シルセスキオキサンなしでの、Geniosil(登録商標)STP-E30をベースとする熱架橋性接着剤組成物
A1. 組成物の調製:
表1に付与した組成物を、最初に、粘着付与樹脂 Dertophene(登録商標)H150を、減圧下でガラス反応器中に全て導入しておよそ160℃に加熱して調製する。次いで、樹脂が完全に溶融したら、Geniosil(登録商標)STP-E30を添加する。
【0270】
混合物を減圧下で15分間撹拌し、次いで70℃に冷却する。次いで、触媒(K-KAT(登録商標)5218)を導入する。混合物を減圧下で保持し、さらに10分間撹拌しながら保持する。
【0271】
A2. 60g/m2に等しい単位面積当たり重量にて架橋組成物でコーティングしたPET支持体層の調製:
厚さ50μmで寸法20cm×40cmのポリエチレンテレフタレート(PET)の長方形のシートを支持体層として使用する。
【0272】
ポイントA1において得た組成物を100℃近くの温度に予備加熱し、カートリッジ中に導入し、そこからビーズを抽出し、それを、その幅に平行してシートの端近くに堆積させる。
【0273】
次いで、このビーズ中に含まれる組成物をシートの表面全体にわたって広げ、実質的に定常な厚さの均一な層を得る。フィルムスプレッダ(フィルムアプリケータとしても知られる)を使用してこれを行い、シートの端から反対の端へと動かす。60g/m2の単位面積当たり重量に相当する組成物の層をこのようにして堆積させ、これはおよそ60μmの桁の厚さを占める。
【0274】
このようにしてコーティングしたPETシートを、次いで、組成物の架橋のために、120℃にて、湿潤雰囲気(相対湿度40%)下、オーブン中に5分間置き、次いで、同じ寸法の長方形のシリコーン処理フィルムシートからなる非粘着保護層上に積層する。
【0275】
得られた三重層を、以下に記載する2つの試験に供する。
【0276】
ステンレス鋼プレート上の180°剥離試験:
接着力を、ステンレス鋼プレート上の180°剥離試験によって評価し、これは、FINAT Technical Handbook、第6版、2001において公開されているFINAT method No.1に記載されている。FINATは、International Federation of Self-Adhesive Label Manufacturers and Convertersである。この試験の原理は以下の通りである:
長方形の片(25mm×175mm)の形態にある試験標本を、先に得た三重層から切り取る。
この標本を調製した後、これを70℃の温度にて、湿度50%の雰囲気下、7日間貯蔵する。次いでそれを、(非粘着保護層の相当する部分の取り外し後に)その長さの2/3にわたって、ステンレス鋼プレートからなる基材に付着させる。得られたアセンブリを常温にて20分間放置する。次いでそれを引張試験装置に入れ、フリーのままである長方形の片の端から出発して、180°の角度および300mm/分の分離速度で、片の剥離または分離を実施することができる。装置は、これらの条件下で片を分離するのに必要な力を測定する。
【0277】
対応する結果をN/cmで表し、表1に示す。
【0278】
粘着試験(ループ試験としても知られる):
初期粘着力(または粘着性)を、FINAT method No.9に記載の「ループ」粘着試験によって評価し、該試験の原理は以下のとおりである:
長方形の片(25mm×175mm)の形態にある試験標本を、先に得た三重層から切り取る。この標本を調製した後、これを、70℃の温度にて、湿度50%の雰囲気下、7日間貯蔵する。非粘着保護層を全て取り外した後、この片の2つの端を繋いでループを形成し、その接着剤層が外に向くようにする。繋いだ2つの端を、前後に動ける垂直軸に沿って300mm/分の移動速度を課すことができる引張試験装置の可動型ジョー中に置く。垂直位置で置いたループの低部を、最初に、およそ25mmの側長を有する正方形領域にわたり、25mm×30mmのガラスの水平シートとの接触に持ち込む。この接触が成立したら、ジョーの移動の方向を逆にする。粘着性は、ループが完全にシートから分離するのに必要な力の最大値である。
【0279】
対応する結果をN/cm2で表し、表1に示す。
【0280】
A3. 500g/m2に等しい単位面積当たり重量での、非粘着表面処理を伴って架橋組成物でコーティングしたPET支持体層の調製:
ポイントA1において得た架橋組成物でコーティングしたPET支持体層を、
- 非粘着表面処理を前もって受けたPET支持体層、
- 前記層の500μmの桁のおよその厚さを表す500g/m2に等しい(支持体の非粘着側に積載させた)組成物の層についての単位面積当たり重量、および
- オーブン中30分の架橋時間
を伴って、ポイントA2のプロトコールを繰り返して調製する。
【0281】
得られた三重層を以下に記載する試験に供する。
【0282】
引張試験による引張強度および破断伸びの測定:
測定の原理は、引張試験装置中でのドローイング(可動型ジョーを300mm/分に等しい定常速度で移動、試験標本は架橋接着剤組成物からなる)、および試験標本が破断する瞬間の、試験標本の加えられた力(Nで)、さらには伸び(%で)の記録からなる。
【0283】
試験標本は、500μmの厚さで9cm長さおよび2.5cm幅であり、PET支持体層および非粘着保護層を取り外した後で、上で得た三重層から切り取ることによって得る。
【0284】
得られた測定の結果を表1に付与する。
【0285】
実施例1および2(本発明による):5重量%および10重量%のシルセスキオキサンを伴う、Geniosil(登録商標)STP-E30をベースとする熱架橋性接着剤組成物
実施例Aを、表1に付与した組成物で繰り返す。
【0286】
これらの組成物を、Dow Corning(登録商標)3074を同時に触媒として導入することを除いて、プロトコールA1に従って調製する。
【0287】
剥離試験、粘着性試験および引張試験の結果もまた、表1に示す。引張試験に関して、試験標本の破壊は、試験条件下では観察していない。
【0288】
参照実施例Aに対する、剥離および粘着性、さらには破断伸びおよび引張強度の有意な上昇を観察している。
【0289】
実施例B(参照例):シルセスキオキサンなしでの、Geniosil(登録商標)STP-E30をベースとする熱架橋性接着剤組成物
表2で付与している組成物を、粘着付与樹脂Dertophene(登録商標)H150を粘着付与樹脂 Picco(登録商標)AR100に置き換えて、実施例AのポイントA1で示しているように調製する。
【0290】
ポイントA2で示しているプロトコールを、このようにして得た組成物で繰り返して、60g/m2に等しい単位面積当たり重量の架橋組成物でコーティングしたPET支持体層を調製する。
【0291】
次いで、得られた三重層を、以下に記載する3種の試験に供する:
- ステンレス鋼プレート上での180°剥離試験であり、それを調製した後で試験標本を23℃にて1日貯蔵することを除き、実施例Aに従って実施する;
- 高密度ポリエチレン(またはHDPE)プレート上での180°剥離試験であり、それを調製した後で試験標本を23℃にて1日貯蔵することを除き、および基材として使用するステンレス鋼プレートをHDPEプレートに置き換えることを除き、実施例Aに従って実施する;
- ポリプロピレン(またはPP)プレート上での180°剥離試験であり、それを調製した後で試験標本を23℃にて1日貯蔵することを除き、および基材として使用するステンレス鋼プレートをPPプレートに置き換えることを除き、実施例Aに従って実施する。
【0292】
得られた結果を表2で照合する。
【0293】
実施例3(本発明による):5重量%のシルセスキオキサンを伴う、Geniosil(登録商標)STP-E30をベースとする熱架橋性接着剤組成物
実施例Bを、表2で付与している組成物で繰り返す。
【0294】
この組成物を、Dow Corning(登録商標)3074を同時に触媒として導入することを除き、プロトコールA1に従って実施する。
【0295】
剥離試験の結果もまた表2に示す。
【0296】
参照実施例Bと比べ、剥離力の著しい上昇を、試験した3種の基材上で観察している。