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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/042 20160101AFI20231207BHJP
【FI】
H02K11/042
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021558585
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021013005
(87)【国際公開番号】W WO2022201523
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】辻田 泰久
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-168760(JP,A)
【文献】特開2003-127602(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110979166(CN,A)
【文献】特開2012-133937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/042
H02K 7/18
B60C 23/04
B60C 19/00
H02K 11/20
H02K 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤホイールと一体回転するステータと、前記タイヤホイールの回転軸上で回転するロータと、を有する発電機と、
前記ロータに固定され、自重により一定姿勢を維持する慣性部材と、
前記タイヤホイールに固定され、前記回転軸に対して板厚方向が平行に配置される回路基板と、
前記回路基板に実装され、前記発電機の出力を整流して負荷に付与するための整流回路と、
前記整流回路に複数設けられ、それら複数の全体の重心が回転の中心部に配置されるように前記回転軸を中心とする架空の円上に配置される複数の平滑コンデンサと、を備える給電装置。
【請求項2】
前記複数の平滑コンデンサは、1対の接続端末の間に並列接続又は直列接続されかつリング部材に固定されて1つの素子ユニットになっている請求項1に記載の給電装置。
【請求項3】
タイヤホイールと一体回転するステータと、前記タイヤホイールの回転軸上で回転するロータと、を有する発電機と、
前記ロータに固定され、自重により一定姿勢を維持する慣性部材と、
前記タイヤホイールに固定され、前記回転軸に対して板厚方向が平行に配置される回路基板と、
前記回路基板に実装され、前記発電機の出力を整流して負荷に付与するための整流回路と、
前記整流回路に含まれ、その重心が回転の中心部に配置されるように前記回転軸を中心とする環状をなした平滑コンデンサと、を備える給電装置。
【請求項4】
前記回転軸を中心軸とする両端有底の筒形の第1部屋を有し、前記タイヤホイールに固定されるハウジングを備え、
前記ステータは、一端面を前記第1部屋の一端の外面に重ねて固定され、
前記ロータは、前記ステータの内側に収容されているロータ本体と、前記ステータの一端面から突出して前記第1部屋を内外に貫通する回転入力軸と、を有し、
前記慣性部材は、前記回転入力軸に固定されて前記第1部屋に回転可能に収容され、
前記回路基板は、前記第1部屋の外側に配置されている請求項1から3の何れか1の請求項に記載の給電装置。
【請求項5】
前記回路基板は、前記第1部屋との間に前記ステータを間に挟んで対向配置され、
前記複数の平滑コンデンサは、前記ステータの側方に配置されている請求項4に記載の給電装置。
【請求項6】
前記ステータの側方で隣合う平滑コンデンサの間に配置されて、前記回路基板と前記第1部屋の外面との間を連絡する複数の支柱を備える請求項5に記載の給電装置。
【請求項7】
前記負荷には、前記タイヤホイールに装着されるタイヤの状態を監視するためのタイヤ監視装置が含まれている請求項1から6の何れか1の請求項に記載の給電装置。
【請求項8】
前記負荷には、二次電池が含まれている請求項1から7の何れか1の請求項に記載の給電装置。
【請求項9】
前記負荷には、電飾用の発光素子が含まれている請求項1から8の何れか1の請求項に記載の給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転体に取り付けられる回路基板を備えた給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回路基板として、例えばタイヤホイールに固定されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-278923号公報(段落[0022]、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した一例のように回転体に取り付けられる回路基板やそれを含む装置では、回転に伴う遠心力を受けるために耐久性が問題になることがある。そこで、本開示では、回転体に取り付けられる回路基板を含む装置の耐久性を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた本開示の給電装置は、タイヤホイールと一体回転するステータと、前記タイヤホイールの回転軸上で回転するロータと、を有する発電機と、前記ロータに固定され、自重により一定姿勢を維持する慣性部材と、前記タイヤホイールに固定され、前記回転軸に対して板厚方向が平行に配置される回路基板と、前記回路基板に実装され、前記発電機の出力を整流して負荷に付与するための整流回路と、前記整流回路に複数設けられ、それら複数の全体の重心が回転の中心部に配置されるように前記回転軸を中心とする架空の円上に配置される複数の平滑コンデンサと、を備える給電装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の第1実施形態に係る車両の斜視図
図2】給電装置の側断面図
図3】給電装置の分解斜視図
図4】給電装置の分解斜視図
図5】(A)回路基板の前面図,(B)回路基板の後面図
図6】給電装置と負荷の回路図
図7】給電装置とタイヤ監視装置の接続を説明する概念図
図8】第2実施形態に係る給電装置の回路基板及び発電機の斜視図
図9】変形例に係る給電装置の回路基板及び発電機の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
図1図7を参照して本開示の第1実施形態に係る給電装置10Aについて説明する。この給電装置10Aは、図1に示すように、車両100の各車輪101の中心部に取り付けられている。また、給電装置10Aを取り付けるために、各車輪101のタイヤホイール11の中心部には、図2に示すように外側に向かって開口し、奥側が閉塞された円形凹部14が備えられている。円形凹部14の内側には、開口側の端部を段付き状に拡径して大径部14Aが設けられ、段差面14Dより奥側の小径部14Bに、給電装置10Aの後述する係止突起26が係止する係止溝14Nが形成されている。また、段差面14Dには、給電装置10Aの後述する回り止め突起27と凹凸係合する複数の係合凹部14Kが形成されている。
【0008】
図3及び図4に示すように、給電装置10Aは、ハウジング20に発電機30と回路基板50とが取り付けられたユニット構造をなしている。ハウジング20は、例えば、樹脂製であってハウジング本体21と蓋体22とに分かれている。ハウジング本体21は、外径に比べて軸長が短い扁平で略円筒状の筒壁24を備え、その中心軸がタイヤホイール11(本開示の「回転体」に相当する)の回転軸J1(図2参照)と一致するように配置される。以下、給電装置10Aにおいて回転軸J1と平行な方向を「前後方向」ということとする。
【0009】
筒壁24内は、その前後方向の途中位置に備えた仕切壁23によって前側の第1部屋24Aと後側の第2部屋24Bとに二分されている。そして、蓋体22により筒壁24の前端の開口が閉塞され、第1部屋24Aが両端有底の筒形部屋になっている。また、蓋体22と筒壁24との間は、防水処理が施されている。さらには、蓋体22の外面には、エンブレム22Aが成形されている。
【0010】
なお、本実施形態の筒壁24には、第1部屋24Aと第2部屋24Bとが備えられていたが、筒壁24の後端に仕切壁23を備えて第1部屋24Aのみを備える構造にしてもよいし、筒壁24内が軸方向で3つの部屋に仕切られていてもよい。
【0011】
筒壁24の外側面の後端寄り位置には、段差面24Dが形成されて、段差面24Dより後側が小径部24Sになっている。また、筒壁24の後面のうち外側面から僅かに内側にずれた位置からは、複数の係止片25が突出している。それら係止片25は、後方に延びる片持ち梁の先端に係止突起26を備えた構造をなしている。また、筒壁24の後面の外縁部からは、複数の回り止め突起27が突出している。そして、複数の係止片25及び複数の回り止め突起27が筒壁24の周方向に分散配置され、ハウジング20全体の重心が筒壁24の中心軸上に位置している。
【0012】
発電機30は、仕切壁23の後面に取り付けられて第2部屋24Bに収容されている。また、発電機30は、例えば、交流モータと同じ構造をなして交流電流を出力する。具体的には、発電機30は、一端に四角形のフランジ部39を有する扁平な円筒形ケース38に略全体を収容されている。図2に示されるように、発電機30のステータ33は、円筒形ケース38と、その内側面に固定されて円筒状のステータ側界磁部33Kとを有してなる。一方、発電機30のロータ32は、ステータ33内の中心部の空間に収容されたロータ本体32Hと、ロータ本体32Hの中心部を貫通する回転シャフト32Sとを有する。そして、回転シャフト32Sが、円筒形ケース38の両端部に固定された1対の軸受32Fに回転可能に支持されると共に、回転シャフト32Sの一端部が、フランジ部39の中心部から円筒形ケース38外に突出して回転入力部35になっている。また、発電機30の側面からは、例えば、ピン状の1対の出力電極37A,37Bが後方に突出し、それら出力電極37A,37Bの間に発電された交流が出力される。
【0013】
なお、本実施形態の発電機30は、交流を出力するために1対の出力電極37A,37Bを有するが、例えば3つの出力電極を有して三相交流を出力するようにしてよい。また、発電機30は、直流モータと同じ構造をなして直流を出力するものであってもよい。
【0014】
仕切壁23には、発電機30を取り付けるために中心部に貫通孔23Aが形成され、その周りに複数の螺子孔23Bが形成されている。そして、発電機30は、フランジ部39側の前端面を仕切壁23の後面(つまり、第1部屋24Aの一端の外面)に重ねた状態にされて、フランジ部39の四隅の貫通孔39Aに通した螺子を仕切壁23の螺子孔23Bに締め付けて固定されている。また、回転入力部35は、仕切壁23の貫通孔23Aを貫通して第1部屋24A内に突出している(図2参照)。
【0015】
第1部屋24A内では、回転入力部35に慣性部材40が固定されている。慣性部材40は、例えば、第1部屋24Aの内径より僅かに外径が小さい金属製の円板を、その中心部の残して全体を半円より僅かに小さくなる大きさにカットした構造をなしている。そして、その残された中心部を貫通する貫通孔40Aに、回転入力部35が嵌合固定されて、慣性部材40とロータ32とが、ステータ33に対して一体に回転する。
【0016】
なお、慣性部材40は、上記形状に限定されるものではなく、回転軸J1からずれた位置に重心を有するものでれば、どのような形状、どのような材質であってもよい。
【0017】
発電機30の後方には、回路基板50が配置され、その回路基板50を支持するために仕切壁23から後方に複数の支柱45が突出している。具体的には、支柱45は、円柱体の両端部の中心に螺子孔を備えた構造をなしている。また、仕切壁23の外縁部には、貫通孔23Aの中心とする架空の円を複数等分(例えば、3等分)する位置に複数の貫通孔23Cが形成されている。そして、各貫通孔23Cに第1部屋24A側から通した螺子にて複数の支柱45が仕切壁23に固定されて、発電機30の後面より後側となる位置まで延びている。
【0018】
回路基板50は、円板状をなし、その外縁部の複数箇所を複数の支柱45の後面に重ねて螺子止めされている。そして、回路基板50の中心を回転軸J1が直交している。また、発電機30の後面と回路基板50との間には、僅かな隙間が形成されている(図2参照)。
【0019】
回路基板50には、発電機30が出力する交流を直流に変換するための整流回路60が実装されている。図5(A)に示すように、整流回路60は、発電機30の出力電極37A,37Bに接続される1対の入力電極61A,61Bと、負荷に接続される1対の出力電極62A,62Bとを有する。1対の入力電極61A,61Bは、回路基板50の前面50Aの外縁部に固定されたコネクタ50C内に端子金具として備えられている。そして、発電機30の1対の出力電極37A,37Bが、コネクタ50Cに挿入されて1対の入力電極61A,61Bに接続されている。また、1対の出力電極62A,62Bは、例えば、回路基板50の前面50Aの外縁部に固定されたコネクタ50D内に端子金具として備えられ、後述する負荷と接続される。
【0020】
整流回路60は、入力電極61A,61Bに付与される交流を、ダイオード回路63で脈流に変換し、その脈流を平滑回路64で平滑化して1対の出力電極62A,62Bの間に出力する。ダイオード回路63は、例えば図6に示すように、例えば、4つのダイオード63Aを有する一般的なブリッジ回路である。また、平滑回路64は、整流回路60の1対の出力電極62A,62Bの間に、複数の平滑コンデンサ64Aを並列接続してなる。さらに、平滑回路64と一方の出力電極62Aとの間には、減流素子としての抵抗65が接続されている。
【0021】
ここで、本実施形態の平滑回路64は、上述の通り、1対の出力電極62A,62Bの間に並列接続された複数の平滑コンデンサ64Aを有するが、それら複数の平滑コンデンサ64Aを合わせた静電容量の1つの平滑コンデンサを1対の出力電極62A,62Bの間に接続するのが一般的である。なぜなら、1つの平滑コンデンサ64Aの方が、それを複数の平滑コンデンサ64Aに分けたものに比べて、配置スペース、総質量、コスト、配線の簡素化等の観点から有利な場合が多いからである。しかしながら、本実施形態では、回路基板50がタイヤホイール11と共に回転することに鑑み、平滑回路64に複数の平滑コンデンサ64Aを使用している。また、それら平滑コンデンサ64Aは、同じ質量をなし、図5(A)に示すように、それらの重心が発電機30の回転軸J1を中心とする共通の架空の円を均等分する位置に配置されて回路基板50の前面50Aに実装されている。これにより、回路基板50の全体の重心が回転軸J1の近傍(つまり、回路基板50の中心部)に位置している。
【0022】
また、回路基板50の全体の重心をより回転軸J1に近づけるために、複数のダイオード63Aや抵抗65の配置も考慮されている。具体的には、ダイオード回路63に含まれる複数のダイオード63Aも、複数の平滑コンデンサ64Aと同様に、同じ質量になっていて、それらの重心が発電機30の回転軸J1を中心とする共通の架空の円を均等分する位置に配置されて回路基板50の後面50Bに実装されている。さらに抵抗65は、回路基板50の中心に重心が配置されるように回路基板50の後面50Bの中央部に実装されている。これらにより、上述の通り、回路基板50の全体の重心が中心部に配置されている。
【0023】
なお、回路基板50の中心部とは、回転軸J1を中心とする円であって、回路基板50の表裏の一方の面積の10%を示す範囲を意味するものとする。
【0024】
なお、整流回路60におけるダイオード回路63は、上述した複数のダイオード63Aがブリッジ接続されたものに限定されない。即ち、整流回路60は、ブリッジ整流回路に限定されず、どのようなものであってもよい。具体的には、整流回路60は、例えば、ダイオードを1つのみ備えて交流の半周期分だけを取り出す半波整流回路や、トランスと1対のダイオードを備える両波整流回路や両波倍電圧整流回路であってもよい。また、上記説明において、周方向に均等配置された構成は、均等で無くても遠心力が相殺される配置であればよく、例えば、線対称配置であってもよい。
【0025】
ハウジング20は、以下のようにしてタイヤホイール11に固定される。即ち、ハウジング20の複数の回り止め突起27とタイヤホイール11の複数の係合凹部14K(図2参照)とを対向させて、複数の係止片25側からハウジング20がタイヤホイール11の円形凹部14に押し込まれる。すると、複数の係止片25が内側に窄むように撓み、複数の回り止め突起27が複数の係合凹部14Kと凹凸係合し、ハウジング20の段差面24Dが円形凹部14の段差面14Dに当接したところで複数の係止片25が弾性復帰して係止突起26がタイヤホイール11の係止溝14Nに係合する。これにより、ハウジング20がタイヤホイール11に一体回転可能に固定される。また、ハウジング20の筒壁24の内側面と円形凹部14の内側面との間には、シール材が塗布され、円形凹部14のうち段差面14Dより奥側の空間が防水状態に密閉され、第2部屋24B内も防水空間になる。
【0026】
本実施形態の給電装置10Aには、電気的な負荷として、図7に示すように、車輪101に備えたタイヤ監視装置90の接続される。タイヤ監視装置90は、タイヤホイール11のリム11Aに固定されたタイヤバルブ91の一端部に備えられ、タイヤ102内に配置されている。そして、タイヤ102内の圧力、温度を検出し、その検出結果を車両100の本体に搭載されている信号処理部93に無線送信する。また、図6に示すように、タイヤ監視装置90には、電源としての二次電池90Aが備えられると共に、二次電池90Aを充電するための充電回路90Bが備えられている。そして、その充電回路90Bの1対の入力電極92A,92Bが、タイヤバルブ91に含まれる2部品に接続されてタイヤ102の外に引き出されている。
【0027】
具体的には、タイヤバルブ91のうちリム11Aを貫通した状態に固定されるバルブステム91Aと、そのバルブステム91A内を直線移動するバルブシャフト91Bとは互いに絶縁されている。そして、それらバルブステム91Aとバルブシャフト91Bとが、タイヤ102内で上記充電回路90Bの1対の入力電極92A,92Bに接続されると共に、タイヤ102外でケーブル13の1対の芯線13A,13Bに接続されている。
【0028】
ケーブル13は、タイヤホイール11の径方向の延ばされてタイヤホイール11の外面に固定されている。また、図2に示すように、タイヤホイール11には、円形凹部14のうち段差面14Dより奥側部分と円形凹部14の側方のタイヤホイール11の外面との間を連絡する連絡孔12が形成されている。そして、連絡孔12にケーブル13が挿通され、円形凹部14内側のケーブル13の端部にコネクタ13Cが備えられる。なお、連絡孔12は、シーリング材を充填されて防水処理が施されている。そして、回路基板50の前述したコネクタ50Dにケーブル13のコネクタ13Cが結合されて、給電装置10Aからタイヤ監視装置90への給電が可能になっている。
【0029】
本実施形態の給電装置10Aの構成に関する説明は以上である。この給電装置10Aは、車両100が停車中は停止していて発電を行わない。なお、負荷であるタイヤ監視装置90の充電回路90Bに備えたダイオード90Cが備えられているので、タイヤ監視装置90の二次電池90Aから給電装置10Aへと電力が供給されることはない。
【0030】
車両100が走行すると、車輪101のタイヤホイール11に固定されている発電機30のステータ33がタイヤホイール11と共に路面に対して回転する一方、発電機30のロータ32は、慣性部材40の自重によって路面に対する回転を規制され、ロータ32がステータ33に対して相対回転する。このように本実施形態の給電装置10Aでは、タイヤホイール11の回転を利用して発電機30のステータ33に対してロータ32を相対回転させて発電を行うことができ、その発電された交流を整流回路60で整流して負荷であるタイヤ監視装置90に給電するができる。そして、タイヤ監視装置90の二次電池90Aが残量が少ない場合に充電が行われる。
【0031】
ところで、タイヤホイール11が回転すると給電装置10Aの回路基板50が遠心力を受け、その耐久性が問題になる。これに対し、本実施形態の給電装置10Aでは、回路基板50全体の重心が回転の中心部に配置されるように、回転軸J1の回りに複数の平滑コンデンサ64Aをはじめとする複数の素子が分散されているので、遠心力に起因する回路基板50の振動が抑えられる。また、複数の平滑コンデンサ64Aに関しては、一般的には1つの平滑コンデンサが使用されるところを、電気的に等価な複数の平滑コンデンサ64Aを使用して、それらを回転軸J1の周りに配置したので、回路基板50全体の重心を容易に回転の中心部に配置することができる。また、複数の平滑コンデンサ64Aを使用したことで、個々の平滑コンデンサ64Aの軽量化が図られて、各平滑コンデンサ64Aに生じる遠心力が小さくなり、回路基板50における各平滑コンデンサ64Aの支持部への負荷も軽減される。これらにより、回路基板50の耐久性が向上し、回路基板50を備える給電装置10Aの耐久性も向上する。
【0032】
また、回路基板50は、第1部屋24Aとの間に発電機30のステータ33を挟んで対向配置され、回路基板50に実装された複数の平滑コンデンサ64Aがステータ33の側方に配置されているので、ステータ33の側方空間が有効利用されて、給電装置10Aを回転軸J1方向でコンパクトにすることができる。
【0033】
また、回路基板50は、発電機30に固定されていてもよいが、本実施形態の給電装置10Aでは、回路基板50が発電機30を介さずに複数の支柱45にてハウジング20に固定されているので、回路基板50の固定が安定し、この点においても耐久性が向上する。
【0034】
さらに、本実施形態の給電装置10Aは、タイヤホイール11に固定されるハウジング20を備え、そのハウジング20の両端有底の筒形の第1部屋24A内に慣性部材40が配置されているので、慣性部材40の可動領域に異物が侵入することが確実に防がれる。
【0035】
なお、タイヤ監視装置90は、電池のみで駆動されるの一般的であるが、本実施形態のように車両100の走行に伴って発電を行う給電装置10Aからタイヤ監視装置90に給電するので電池のみでタイヤ監視装置90が駆動される場合に比べて、タイヤ監視装置90の使用可能な電力量が増え、タイヤ監視装置90の高機能化が可能になる。
【0036】
[第2実施形態]
本実施形態の給電装置10Bは、図8に示されており、平滑回路64の複数の平滑コンデンサ64Aが1つの素子ユニット68になって回路基板50に実装されている点が異なる。具体的には、素子ユニット68は、円環状で絶縁性のリング部材69を有し、その周方向を複数等分する位置に複数の平滑コンデンサ64Aが固定されている。そして、リング部材69に固定された1対の接続端末69A,69Bの間に、それら複数の平滑コンデンサ64Aが並列接続されている。即ち、素子ユニット68は、実質的には、全体が円環状をなした1つのコンデンサになっている。また、素子ユニット68は、その中心軸をタイヤホイール11の回転軸J1と一致させた状態にされて、回路基板50の前面50Aに図示しない絶縁性のスペーサを介して重ねてビス留めされている。そして、素子ユニット68の1対の接続端末69A,69Bが、第1実施形態で説明した整流回路60の1対の出力電極62A,62Bの間に接続されている。
【0037】
本実施形態の給電装置10Bによれば、第1実施形態の給電装置10Aと同様の効果を奏すると共に、複数の平滑コンデンサ64Aが1対の接続端末69A,69Bの間に並列接続された状態でリング部材69に固定された素子ユニット68になって回路基板50に実装されているので、複数の平滑コンデンサ64Aの回路基板50への実装が容易になる。また、複数の平滑コンデンサ64Aに生じる遠心力はリング部材69で受け止められて相殺されるので、遠心力に起因する回路基板50への負荷が軽減され、これにより回路基板50の耐久性が向上する。
【0038】
なお、リング部材69は、円環状のケースであってもよいし、円環状の回路基板であってもよい。また、円環状のケースの場合は、ケースにポッティング材を充填して複数の平滑コンデンサ64Aを固定してもよい。さらには、図9に示すように、素子ユニット68の代わりに円環状の1つの平滑コンデンサ64Aを特別に製造して回路基板50に実装してもよい。
【0039】
[他の実施形態]
(1)前記第1実施形態の給電装置10Aには、負荷としてタイヤ監視装置90が接続されていたが、負荷はタイヤ監視装置90に限定されるものではない。例えば、タイヤホイール11の電飾用の発光素子が負荷として給電装置10Aに接続されていてもよい。
【0040】
(2)前記第1実施形態の給電装置10Aは、負荷に二次電池が備えられていたが、給電装置10A側に二次電池を備えてもよい。そうすれば、車両100が停車中も給電装置10Aから負荷へと給電することができる。
【0041】
(3)前記実施形態では、回路基板50が、給電装置10A,10Bに備えられている例を示したが、給電装置以外で回転体に固定される回路基板において、「回路基板全体の重心が回転の中心部に配置されるように、前記回転軸の回りに複数の素子が分散されるか、又は、1つの素子が前記回転軸の中心とする環状に形成されるかして実装されている」構造としてもよい。また、その回路基板に実装される回路は、整流回路に限定されるものでなく、素子は、平滑コンデンサに限定されるものではない。具体的には、回路基板に分圧回路が実装され、その分圧回路に含まれる複数の素子である抵抗を、回転中心の周りに分散配置してもよい。また、発電機が直流モータと同じ構造を有して直流を発電し、回転基板にインバータ回路が実装されている構成のものにおいて、インバータ回路に含まれる複数のFETを回転中心の周りに分散配置してもよい。
【0042】
(4)前記第2実施形態の素子ユニット68は、平滑コンデンサとして利用されていたが、平滑コンデンサとしての利用でなくても、他の用途のコンデンサとして利用してもよい。また、素子ユニットの複数の素子及び接続構造を適宜変更してもよい。具体的には、複数の抵抗を直列接続してリング部材に固定した素子ユニットや、複数のスイッチを並列接続してリング部材に固定した素子ユニットを使用してもよい。
【0043】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0044】
10A,10B 給電装置
11 タイヤホイール
20 ハウジング
24 筒壁
24A 第1部屋
30 発電機
32 ロータ
32H ロータ本体
32S 回転シャフト
33 ステータ
35 回転入力部
40 慣性部材
45 支柱
50 回路基板
60 整流回路
64A 平滑コンデンサ
68 素子ユニット
69 リング部材
69A,69B 接続端末
90 タイヤ監視装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9