(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】フローティングベアリングを有する医療用クロスコネクタ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/70 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
A61B17/70
(21)【出願番号】P 2021568149
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2020059961
(87)【国際公開番号】W WO2020233893
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】102019113097.2
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スベン クリューガー
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0137345(US,A1)
【文献】特表2015-515340(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0105765(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用クロスコネク
タであって、
2つの長手ロッ
ドを接続するためのクロス支
柱であって
、脊柱の椎骨の配向のため
に動作可能に係合させることができるクロス支
柱と、
アンギュラベアリン
グにおいて前記クロス支
柱に回動可能に取り付けられており、溝形状のロッド受け
部およびクランプね
じを有する少なくとも1つのクランプヘッ
ド、
を有し、
前記クランプね
じは、作動されると、ロッカーベアリン
グを介して回動
軸を中心に回動可能に取り付けられたクランプ
歯によって前記ロッド受け
部に挿入された少なくとも1つの前記長手ロッ
ドにクランプ力を加え、同時にまたは時間をずらして、前記クランプヘッ
ドと前記クロス支
柱との間の前記アンギュラベアリン
グの角度位
置を固定し、
前記ロッカーベアリン
グは、フローティングベアリングとして構成されており、
前記フローティングベアリングは、前記クランプ
歯の前記回動
軸の回動運動および横方向移
動を可能にし、
前記横方向移動は、前記長手ロッ
ドと前記クランプ
歯との間のクランプ力によって生じ、
力の流れを方向転換することによって前記クランプヘッ
ドと前記クロス支
柱との間の前記アンギュラベアリン
グの前記角度位
置を固定および/または係止するように作用する、
医療用クロスコネクタ。
【請求項2】
前記アンギュラベアリン
グは、前記角度位
置が少なくとも2
つの軸方
向で変更可能および/または固定可能であるように
、多軸であるように構成されている、請求項1に記載の医療用クロスコネク
タ。
【請求項3】
前記アンギュラベアリングが、前記クランプヘッドと前記クロス支柱との間において、ボール継手接続の形態である、請求項2に記載の医療用クロスコネクタ。
【請求項4】
多軸である前記アンギュラベアリン
グは、ばね要
素によって予荷重されるおよび/または予荷重可能であるように構成されている、請求項
2または3に記載の医療用クロスコネク
タ。
【請求項5】
前記クランプね
じは、可逆的に解放可能にねじ込み可能および/または自動ロック式でねじ込み可能である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の医療用クロスコネク
タ。
【請求項6】
前記クランプ
歯は、前記長手ロッ
ドの様々な直径に合わせて様々な形状および/または寸法になるように調整されているおよび/または調整可能であ
る、請求項
1~5のいずれか1項に記載の医療用クロスコネク
タ。
【請求項7】
前記長手ロッドの前記直径は、頸部または頸部領域で3~7mmであり、および/または、腰部または腰椎領域で5.5~6.0mmである、請求項6に記載の医療用クロスコネクタ。
【請求項8】
医療製品セット、好ましくは脊柱の安定化および/または矯正のための椎弓根ねじおよびフックシステムであって、
請求項
1~7のいずれか1項に記載の医療用クロスコネク
タを有し、
少なくとも、以下のもの、すなわち、
-長手ロッ
ド、好ましくは、複数の長手ロッ
ド、好ましくは、様々なサイズおよび/または硬度および/または材料の直線および/または湾曲形状の複数の長手ロッドのアセンブリの形態での前記複数の長手ロッ
ド、および/または、
-多軸ねじおよび/または一軸ねじなどの骨インプラント、および/または、
-茎フック、および/または、
-ロッド挿入鉗子、インプラントホルダ、ディストラクタなどの外科用器具、および/または、
-
対応するトルクレンチ、
を組み合わせて有する、医療用製品セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2つの長手ロッド、特にいわゆる脊柱ロッドを接続するための医療用クロスコネクタに関し、この医療用クロスコネクタは、脊柱の椎骨を配向するために使用されるように、好ましくは椎弓根ねじまたは同様の骨インプラントと動作可能に係合させることができる。本開示はさらに、対応するトルクレンチに関する。さらに、椎弓根ねじなどの少なくとも1つの骨インプラント、外科用器具、および/または他の適合する外科用アクセサリと医療用クロスコネクタを組み合わせて備える、対応する医療用製品セットが提案される。
【背景技術】
【0002】
脊椎手術の従来技術では、特に人間の脊柱の椎骨の配向、再位置決め、伸延、安定化等の目的のために、脊柱ロッドを接続するための医療用クロスコネクタを外科的に使用することが知られている。それぞれの脊椎ロッドは、通常、椎骨と能動的に係合する少なくとも1つの椎弓根ねじを有する。そのため、椎弓根ねじは、椎骨の椎弓根、すなわち椎体と椎弓との間の椎弓根領域に、骨インプラントとしてねじ込まれる。脊椎手術時に整形外科医又は再建外科医等のユーザが医療用クロスコネクタを使用する医学的適応には、変形円板疾患、外傷(骨折又は脱臼を含む)、外傷後の後彎症又は前彎症、腫瘍、脊椎すべり症、脊柱狭窄、変形(側彎症、後彎症及び/又は前彎症)、脊椎手術がうまくいかなかった場合の偽関節、症候性頚椎症、上記の適応に起因する外科的介入後の不安定性、過去の癒合の失敗による再手術等がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
患者の手術負担を最小限にするために、クロスコネクタの挿入に外科医が必要とする時間を最小限にし、患者の治癒と休養を最適に支援することが目的である。治療対象の解剖学的状態に対して、ひいては脊椎ロッドの三次元位置に対してクロスコネクタを調整するにはかなり時間がかかるので、迅速かつ柔軟に挿入および調整することができるクロスコネクタが必要とされている。
【0004】
欧州特許公開第1302169A1は、2本の脊椎ロッド用の医療用クロスコネクタを開示している。それに関して、クロスコネクタの第1の連結片は、第1のクランプ要素及び第2のクランプ要素と、脊椎ロッドを把持するために第1のクランプ要素と第2のクランプ要素とを互いに強固に保持するように構成された締結要素とを有する。この点に関し、この少なくとも1つの多軸継手の少なくとも一部は、締結部材が第1のクランプ部材と第2のクランプ部材とを結びつけた際に、当該一部が押しつぶされて、少なくとも1つの多軸継手の回転を防止するように、第1のクランプ部材と第2のクランプ部材との間に配置される。言い換えれば、外科医がアクセス可能なクランプねじを固定要素として動作させることによって、接続される2つの脊椎ロッドの間に多軸継手の空間位置が配置され、同時に2つの脊椎ロッドの一方が固定される(
欧州特許公開第1302169A1の
図3も参照されたい)。よって、ロッドの締め付けとクロスコネクタのクロス支柱のアンギュラベアリングが、1回の動作で固定される。
【0005】
しかしながら、上記に示された従来技術の解決策にはいくつかの欠点がある。第1に、脊椎ロッドの締め付けは、患者に対して前後方向で行われ、これは解剖学的に不利であり、非外傷性ではないと考えられるはずである。したがって、治癒の予後もより好ましくないものとなるはずである。第2に、締め付けられる脊椎ロッドの直ぐ近くにクランプねじを配置すると、患者に対して横方向に外科的アクセスを不利に拡大することになる。
【0006】
別の欠点は、2つの異なる締め付けの並列配置、すなわち、脊椎ロッドの締め付けとクロス支柱のアンギュラベアリングの締め付けの並列配置は、クランプねじを直接介して両方の締め付けが同じ動作で適切に固定され得る通路が狭いということを意味するということである。これは、クロス支柱の個々の機械要素の製造公差が非常に小さくなければならないという深刻な欠点を有する。最後に、2つの異なる締め付けの両方が、長期間にわたって安全な固定具の基本的な機能を果たすために、確実に働かなければならない。したがって、このような公知のクロスコネクタの製造は、どうしても複雑でコストがかかることになる。
【0007】
さらに、公知のクロスコネクタは理論的には様々なロッド直径の締め付けを可能にするが、この構造では、上述の2つの締め付けの機構の接続に起因して、ロッド直径の変化量は非常に小さい可能性が高い。
【0008】
したがって、本発明の目的は、骨インプラント、好ましくは脊椎インプラントの離間した2つの長手ロッドを接続するための医療用クロスコネクタを提供することであり、このクロスコネクタは上述の従来技術の欠点を克服する。まず第1に、迅速で、適応的で、長期間信頼性のある挿入と、解剖学的状態および様々なロッド直径への調整とが可能となるべきである。特に、主に非外傷性の挿入に適したクロスコネクタを外科医に提供することが、さらなる課題である。この点に関して、クロスコネクタの構造的設計は、周囲組織や神経根などの解剖学的構造の後退または損傷を最小限にするために、より小さい操作アクセス領域ならびにより小さい後部設計を必要とするはずである。外科的挿入の際に損傷を受けない構造が多いほど、治癒を促進するより多くの生理的環境が作り出される。別のさらなる課題は、製造されるクロスコネクタに要求される寸法公差及び適合に関して、より好ましい構造を作りだすことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この課題は請求項1の特徴によって解決される。
【0010】
本開示の第1の態様としての医療用クロスコネクタは、椎弓根ねじまたは同様の骨インプラントと好ましくは動作可能に係合させることができる2つの長手ロッドを接続するためのクロス支柱を備える。特に、この装置は、脊柱の椎骨の配向(位置決め)に使用することができる。さらに、当該医療用クロスコネクタは、少なくとも1つのクランプヘッドを備え、このクランプヘッドは、アンギュラベアリングにおいてクロス支柱に回動可能に取り付けられている。クランプヘッドは、溝形状のロッド受け部とクランプねじを備える。クランプヘッドまたはクロスコネクタのこの要素は、様々な直径の長手ロッドが順応にかつ長期の固定ホルダの形態でクロスコネクタによって把持されるように、長手ロッドを受け入れ、締め付ける役割を果たす。クランプねじは、作動されると、ロッカーベアリングを介して回動軸を中心に回動可能に取り付けられたクランプ歯によって、ロッド受け部に挿入された少なくとも1つの長手ロッドにクランプ力を加える。これによって、クランプねじは、同時にまたは時間をずらして、クランプヘッドとクロス支柱との間のアンギュラベアリングの角度位置を固定する。本発明によれば、ロッカーベアリングは、フローティングベアリングとして構成される。この場合、フローティングベアリングは、クランプ歯の回動軸の回動と横方向移動を可能にする。この横方向移動は、長手ロッドとクランプ歯との間のクランプ力によって生じる。このように生じる横方向移動は、クランプヘッドとクロス支柱との間のアンギュラベアリングの角度位置を固定および/または係止するように作用する。
【0011】
このように、本発明によると、長手ロッドの締め付け及びクロスコネクタのクロス支柱のアンギュラベアリングは、フローティングロッカーベアリングを介したクランプねじの作動によって一度に引き起こされるのではなく及び/又は固定されるのではなく、連続的に引き起こされる。クランプヘッドとクロス支柱が互いに対する固定および/または係止の際にとる角度位置の固定および/または係止は、クランプ力によって生じる横方向移動の結果として起こる。
【0012】
ロッカーベアリングの中心の横方向移動は、この目的のためにクランプヘッドにおいて構造的に構成された経路に沿って起こる。具体的には、横方向移動を導く経路は、クランプヘッドまたはクロスコネクタの長手方向および/または長手方向成分に沿って、例えば長手方向に設けられた長穴またはある角度で設けられた長穴に沿って、並んでいる。これにより、長穴は、直線状のコースだけでなく、例えば漸近的なコースなどの湾曲したコースを有してもよい。また、長手方向にわたる特定の曲線機能の特別なマッピングも考えられる。
【0013】
言い換えれば、クロスコネクタの長手ロッド側端部での長手ロッドの締め付け、および長手ロッドの締め付けとは反対側のクロスコネクタの端部、すなわち脊柱に面する可能性のある端部でのクロスコネクタの角度付けは、いわば「直列に接続されている」。これは、2つの締め付けが、力の流れの上にあることを意味するということである。
【0014】
これは、ロッカーベアリングにおいて回動可能に取り付けられたクランプ歯の回動軸(クロスコネクタの横方向)のベアリングのフローティング設計によって実現される。クランプ歯の回動軸は、クランプ歯が長手ロッドに接触すると直ちに、少なくともクロスコネクタの長手方向に横方向の力成分を受ける。次に、反力として、長手ロッドに抵抗する力が、その硬度または変形能の程度に応じて増大し、それによって変形が生じる。結果として生じる力の平衡において、この横方向の力成分は、ロッドの締め付けに至る力に対応する。
【0015】
フローティングベアリングを介して、クランプ歯の回動軸に作用するロッカーベアリングのこの横方向の力成分の反力は、アンギュラベアリングの締め付け、固定、または係止機構に伝達される。例えば、この力は、ロッカーベアリングから、クランプヘッドの中間要素を介して、好ましくはU字型のフォークマウントを介して、アンギュラベアリングに伝達される。アンギュラベアリングにおいて、この反力は、クロス支柱に対するクランプヘッドの角度またはクランプヘッドに対するクロス支柱の角度の固定及び/又は係止を引き起こす。特に、反力と平衡状態にある表面押圧力は、角度を固定するように及び/又は角度を係止するように、アンギュラベアリングの表面部に作用し得る。
【0016】
従って、第1の力の流れ段階では、ロッカーベアリングのクランプねじは、クランプ歯と長手ロッドとの間の接触線に沿った長手ロッドの締め付けが達成されるまで、第1の締め付け手段としてのクランプ歯を第1の回転軸としての回動軸を中心に長手ロッドに向かう方向に回転させるように構成される。次いで、第2の力の流れ段階において、回動軸を経路長に沿って長手ロッドから離れる方向に移動させるために、さらなる作動によって、クランプ歯を第2の回動軸としての接触線を中心に回動させる。経路は、クランプヘッドにおいて、ロッカーベアリングの横方向移動を可能にする、かつ/または表すように構成されている。したがって、ロッカーベアリングは、フローティングベアリングとして構成されている。ロッカーベアリングにおいて把持された長手ロッドとの力平衡をとる過程で生じる横方向移動は、アンギュラベアリングの締め付けに作用するクランプ力を増大させる。クランプ力のさらなる力平衡がアンギュラベアリングにおいて確立され、これによって、アンギュラベアリングの角度位置が固定および/または係止される。
【0017】
長手ロッドが円筒形であるか、準円筒形であるかは、本発明の意味において重要ではない。したがって、本明細書で使用される長手ロッドという用語は、一定の丸い断面を有する細長い形状を指すだけでなく、長手方向に沿って変化する断面を有する任意の長手部材、および/または、例えば、卵形、長方形、U字形、T字形、I字形、凸形および/または凹形などの非円形形状の断面を有する任意の長手部材も含む。より広義には、長手ロッドという用語はまた、支持プレート、好ましくは外周の少なくとも一部に沿って半円筒形ロッドを形成する外縁の外半径を有するプレートを含んでもよい。
【0018】
従属請求項は、本発明の好ましいさらなる実施形態を示す。
【0019】
好ましくは、医療用クロスコネクタのアンギュラベアリングは、多軸であるように構成される。これは、クランプヘッドとクロス支柱との間の角度位置が、一軸継手の一例であるヒンジ継手のように一軸方向に限られず、すなわち単一軸方向だけに限られずに、変更可能および/または固定可能であることを意味する。むしろ、この好ましい実施形態では、角度位置が、少なくとも2つ、好ましくは3つの軸方向に変更および/または固定されてよい。空間内の2つまたは3つの平面に従って多軸アンギュラベアリングがとる角度位置は、最終的に固定および/または係止される長手ロッドとクロス支柱との間の角度位置を決定するので、長手ロッドとクロス支柱の互いに対する空間位置がより多くなる。この利点は、解剖学的状態に対してより良好かつより適応するように、クロスコネクタを調整できるということである。したがって、クロスコネクタ及び/又はクロスコネクタが挿入される周囲のシステム全体における好ましくない張力又はねじれの発生を回避しやすい。
【0020】
好ましくは、3軸継手が、クランプヘッドとクロスコネクタとの間でボールジョイントアンギュラベアリングの形態で構成される。3軸継手は、アンギュラベアリングの3つの軸方向である長手方向、垂直方向、および横方向、およびそれぞれのケースにおいて正の軸方向および/または負の軸方向に関して、3つの自由度を有する。基本的に制限を受けないボールジョイントの可動性は、ベアリング機能を果たす及び/又はガイドを提供するアンギュラベアリングの構造要素によってのみ制限される。3軸継手としてのこのような特に好ましい実施形態は、理想的にほぼ完全な3つの自由度に従った角度を可能にする。これによって、外科医などのユーザによって角度位置が決定される前に、空間の3つ全ての平面において、クロスコネクタ自体及び/又は周囲のシステム全体に関して内部補償移動が可能となる。
【0021】
好ましくは、多軸アンギュラベアリングが、ばね要素又は予荷重要素によって予荷重される及び/又は予荷重可能であるように構成される。この点に関して、ばね要素の好ましい実施形態は、ロッカーベアリングの部品に一体的に形成された引張ばねおよび/または圧縮ばねに関する。
【0022】
好ましくは、ロッカーベアリングの部品は、クランプヘッドの中間要素であり、特に好ましくはU字形のフォークマウントである。あるいは及び/又は加えて、ばね要素は、好ましくは、長手ロッドを締め付けるために長手ロッドに先行スナップを生じさせるように配置される。
【0023】
好ましくは、クランプねじは可逆的に解放可能である。これにより、ユーザは、仮締め付け後に再調整を行うことができる。あるいは又は加えて、クランプねじは、自動ロック式の締結要素として構成される。これにより、意図しない緩みに対して、ひいてはクロスコネクタの望ましくない不具合に対して、ある程度まで、締め付けをさらに固定することができる。
【0024】
好ましくは、クランプ歯は、長手ロッドの様々な直径に合わせて、様々な形状および/または寸法になるように調整されるおよび/または調整可能である。クランプ歯が、3~7mm間隔で長手ロッドの直径に合わせて構成されることがさらに好ましく、3.5~4.0mm間隔で頸部または頸部領域に合わせて構成され、および/または5.5~6.0mmの間隔で腰部または腰椎領域に合わせて構成されることが特に好ましい。これは、種々のクランプ歯をモジュール式にクランプヘッド内に設置することができるということである。このようにして、解剖学的状態全体またはシステム全体による特定の必要性を満たすように、クロスコネクタの適応性をさらに高めることができる。
【0025】
好ましくは、クロスコネクタの部品または要素、および/または長手ロッドは、セラミックなどの生体適合性材料から作られる。特に好ましくは、クロスコネクタの少なくとも1つ又は全ての部品又は要素、および/または長手ロッドは、チタン合金で作られる。長手ロッドは、軟質材料および/または硬質材料から形成されてもよい。
【0026】
本開示の第2の態様として、本発明による医療用クロスコネクタのクランプねじに好適に適合されるトルクレンチが提案される。ここで、この対応するトルクレンチは、最小許容トルクおよび/または最大許容トルクを加えるように調整される及び/又は調整可能である。このトルクレンチは、ロッド受け部に挿入された少なくとも1つの長手ロッドに加えられるクランプ力が最小許容第1力限界を下回らず、かつ/または最大許容第2力限界を超えないように構成される。あるいは又は加えて、トルクレンチは、クランプヘッドとクロス支柱との間のアンギュラベアリングの角度位置を固定するようにおよび/または係止するように作用する横方向移動によって生じる対抗力が、最小許容第3力限界を下回らず、かつ/または最大許容第4力限界を超えないように構成される。あるいは又は加えて、頸部又は頸部領域において長手ロッドを接続するためのクランプねじを締め付けるためのトルクは、好ましくは2.3~3.3Nm、特に好ましくは2.8Nmであり、及び/又は、腰部又は腰椎領域において長手ロッドを接続するためのクランプねじを締め付けるためのトルクは、好ましくは4.5~5.5Nm、特に好ましくは5.0Nmである。トルクレンチは、例えば六角形状または内側六角形丸形の雌ねじ付きレバーハンドル、または多角形のスクリュードライブプロファイル(「トルクス」(登録商標)としても知られている)を有するスクリュードライバを収容するように構成されてよい。
【0027】
そのようなトルクレンチは、クランプねじを操作することによってユーザによって設定されるロッカーベアリングおよびアンギュラベアリングでのクランプ力が、有利な限界内または間隔内にあることが製造業者によって保証されているという特定の利点を有する。適切なトルクレンチを使用することによって、操作者などの個々のユーザの手の力がロッドの締め付けならびに角度位置の固定および/または係止に与える影響が排除されるか、または人に依存するばらつきが回避される。
【0028】
好ましくは、対応するトルクレンチは、長手ロッドの様々な直径に合わせて、好ましくは予め設定された間隔で、調節可能でありかつ/又は様々に構成される。これにより、ユーザは、所望のトルク及びその結果生じるクランプ力を、個別ではあるが製造者の案内に沿って直感的に設定することができる。
【0029】
本開示の第3の態様としてさらに、本発明による医療用クロスコネクタを備える、医療製品セット、好ましくは脊柱の安定化および/または矯正のための椎弓根ねじおよびフックシステムが提案される。この点に関して、医療用クロスコネクタの組み合わせは、少なくとも1つの長手ロッド、好ましくは、様々なサイズおよび/または硬度および/または材料の直線および/または湾曲形状の長手ロッドのアセンブリのうちの複数の長手方向ロッドと、および/または多軸ねじおよび/または単軸ねじなどの骨インプラントと、および/または茎フックと、および/またはロッド挿入鉗子、インプラントホルダ、ディストラクタなどの外科用器具と、を含む。このような製品セットは、医師および準備臨床スタッフを治療することによって特に有用であると考えられる。特に、このような製品セットは、カスタマイズされた手術準備をサポートする。さらに、製造者の領域や臨床エリアでの物流プロセスにも利点がある。
【0030】
本開示の第3の態様による製品セットは、本開示の第2の態様によるトルクレンチをさらに含んでもよい。
【0031】
最後に、本発明による医療用クロスコネクタは、脊柱ロッドを使用する脊柱の椎骨の脊椎配向手術における使用のみに限定されないことに留意されたい。本発明は、類似の医療用途、特に、外科関連、顎顔面関連、スポーツ医療関連、整形外科関連、再建関連、治癒関連および/またはリハビリテーション関連の様々な状況および処置に等しく有利である。特に、同じ基本的な医療原理および治療目標は、例えば脚や足の骨折などの四肢の骨折治療、および脊椎固定の基礎をなす。
【0032】
この点に関して、長手ロッドまたは対応するクロスコネクタという用語は、この目的のために、医学的または特に有用な構成、および/またはサイズ寸法、および/または材料のすべてを含む。例えば、可塑性審美的及び/又は再建的な顎手術又は歯列矯正の分野では、比較的小さいスケールの、本発明による長手ロッド(脊椎ロッドの場合、このようなロッドは3~7mmの好ましい直径を有する)又は本発明による対応するクロスコネクタが想定される。したがって、好ましい実施形態、すなわち、特に他の解剖学的状態に合わせたスケールで適合または寸法決めされた実施形態、特に現在の比率因子に合わせて小型化された実施形態は、排除されるべきではなく、本開示に包含される。
【0033】
本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって与えられ、明細書において説明されるかまたは図面に示された特徴によって限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本開示による医療用クロスコネクタの第1の実施形態に係る(わずかに斜視した)正面図であり、長手ロッドが締め付けられている。
【
図2】
図2は、医療用クロスコネクタの第1の実施形態に係る第1の斜視正面図であり、クランプヘッドのハウジングが図示されておらず、クランプ歯が、ロッカーベアリングを介して回動可能に取り付けられていることを示す。
【
図3】
図3は、医療用クロスコネクタの第1実施形態に係る上面図であり、特にフローティングロッカーベアリングからアンギュラベアリングへの力の流れを示す。
【
図4】
図4は、医療用クロスコネクタの第1実施形態に係る第2の斜視正面図である(長手ロッドは図示されていない)。
【
図5】
図5a~
図5cは、機能シーケンスにおける[a)開放、b)ロッドの締め付け、c)角度固定]の3つの時点における医療用クロスコネクタの第2実施形態に係る上面図をそれぞれ示す。ここでは、特に、第1の長手ロッドをクランプするクランプ歯のフローティングロッカーベアリングの機能を説明する。フローティングロッカーベアリングは、アンギュラベアリングの角度固定に作用する。
【
図6】
図6a~
図6cは、上記
図5a~
図5cの3つの時点における、医療用クロスコネクタの第2の実施形態に係る縦断面の正面図をそれぞれ示す。
【
図7】
図7は、
図6cの第1の長手ロッドよりも太い第2の長手ロッドによる角度固定(角度係止)状態である第3の時点における医用クロスコネクタの第2の実施形態に係る縦断面の正面図である。
【
図8】
図8は、フォークホルダの弾性構造に関する、本発明の第2(または第1の)実施形態の好ましい変形例に係る縦断面の正面図の詳細である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態による2つのクロスコネクタの中央結合配置の斜視図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態による2つのクロスコネクタの中央結合配置の(部分的な)縦断面の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示の第1の実施形態を、対応する
図1~
図4に基づいて説明する。これにより、本発明のさらなる詳細、特徴、および利点が明らかになるであろう。
【0036】
図1~4は、本発明による医療用クロスコネクタ100の第1の実施形態に係る様々な図を示す。
図1は、医療用クロスコネクタ100のわずかに斜視した正面図を示し、医療用クロスコネクタ100は、長手ロッド(
図1の左側)としての脊椎ロッド10を締め付けている。まず、医療用クロスコネクタ100は、2つの脊椎ロッド10を中央で接続するためのクロス支柱20(
図1の右側)を含み、2つの脊椎ロッド10のうちの第2の脊椎ロッドは、図示されていない。ほとんどの場合(図示せず)、2つのクロスコネクタ100は、互いに結合され、患者に対して中央に、すなわち脊柱の中心の上方に配置される(比較のために、第2の実施形態の
図9および
図10も参照されたい)。この点に関して、
図1~4の全ての図は途中で切れており、このことは、技術図面の表現標準に従って波線(
図1~4の右側)によって示されている。クロスコネクタ100は、患者に対して横方向に、すなわち実質的に肋骨の方向に、脊柱の中心を横切って架橋する。そして、個々のクロスコネクタはまた、個々の椎骨の配向のために脊柱を安定化させる全体的なシステムに一体化される。脊椎外科手術の過程において、それぞれの脊椎ロッド10または支持プレートは、骨インプラント式の椎弓根ねじ(図示せず)によって、椎骨と能動的に係合される。
【0037】
さらに、クロスコネクタ100は、溝形状のロッド受け部31(
図1、
図3、及び
図4では左側に示されており、クロスコネクタ100の横方向ヘッド側に設けられている)を有するハウジング形状のクランプヘッド30を含む。溝形状のロッド受け部31は、把持される脊椎ロッド10とほぼ相補的な形状に形成された内側ベアリング面32を有する。ここで、内側ベアリング面32は、脊椎ロッド10の半径よりも幾分大きい半径で形成されてカップ状に延びており、脊椎ロッド10の円筒形外側の第1の表面部11と係合するようにフックジョーのように構成されている。クランプ歯42は、略直径方向に対向する脊椎ロッド10の第2の表面部12に対向要素として係合する。この目的ために、クランプ歯42は、クランプヘッド30内に設けられたロッカーベアリングS1を介して、回動軸A1を中心として回動するように取り付けられている。脊椎ロッド10を保持するために、クランプ歯42は、回動軸A1を中心とする回動運動(
図1では時計回り)によって脊椎ロッド10に押し付けられ、クランプ歯42の凸状先端と脊椎ロッド10の第2の表面部12との間に接触線B1を形成する。ここで、接触線B1は、回動軸A1に対して略平行である。
【0038】
回動軸A1を形成するために、クランプヘッド30の対向する側面に設けられた2つの長穴35にシリンダピン43が横方向Zに受け入れられている。シリンダピン43を長穴35への取り付けることにより、ロッカーベアリングS1はフローティングベアリングとして構成される。この点に関して、フローティングベアリングは、回動軸A1を構成するシリンダピン43の長穴35に沿った相対的な移動、または回避的な移動を可能にし、ロッカーベアリングS1の回動軸A1の横方向移動ベクトルVを表現する。
【0039】
クロスコネクタ100の内側角度は、一軸アンギュラベアリングとしてのヒンジ継手S2(
図1~
図4の右側に示す)の自由度で変更可能である。この目的のために、ヒンジ継手S2では、クランプヘッド30がクロス支柱20に回動可能に取り付けられている。クランプヘッド30の中心本体軸とクロス支柱20との間の角度を角度脚として決定する角度位置αは、ヒンジ継手S2における回転軸としての単一のヒンジ軸A2周りで変更可能である。
図1に示す例では、継手軸A2がクランプヘッド30の垂直方向Yと一致している。これにより、角度位置αは、長手方向Xと横方向Zとによって広がる平面内で回動可能である(
図2参照)。
【0040】
さらに、クロスコネクタ100は、クランプねじ40(
図1の上部に示されている)を含む。クランプねじ40は、例えば脊椎外科医などのユーザによって、後側からクロスコネクタ100のクランプ機構を作動させるために使用される。まず、クランプねじ40を前進させることで、回動可能に取り付けられたクランプ歯42によって、クロスコネクタ100が脊柱ロッド10へ締め付けられる。そして、力の流れを方向転換(偏向)することによって、クロスコネクタ100の内側角度位置、すなわち角度位置αが固定される。その間に、ユーザは、再度、正確な位置、張力のない位置、または所望の位置にヒンジ継手S2を正確に合わせおよび/または再調整してよく、クランプねじ40をさらに作動させることによって、現在の角度位置αを固定および/または係止してよい。概して、連続的または一時的にのみ中断される係止プロセスにおいて、ユーザは、脊椎ロッド10の締め付けを既に終えた(引き起こした)クランプヘッド30内へとクランプねじ40を、理想的には適度に、さらにねじ込んでよい。
【0041】
この目的のために、フローティングロッカーベアリングS1は、クランプ歯42の回動軸A1の横方向移動(ベクトル)Vを可能にし、横方向移動(ベクトル)Vは、長手ロッド10とクランプ歯42との間のクランプ力によって生じ、長穴35によって案内および/または制限される。これは、クランプ歯42の凸状先端と脊椎ロッド10の第2の表面部12との間に形成された接触線B1を中心とする回動軸A1の回避運動を伴う。換言すれば、シリンダピン43は、シリンダピン43によって接触線B1に沿って支持されたクランプ歯42を介して長手ロッド10から押し離され、長穴35に沿って横方向移動ベクトルVの形で回避運動を行う。これにより、フローティングロッカーベアリングS1のシリンダピン43は、横方向移動ベクトルVだけシフトする、すなわち、長手ロッド10から離れてヒンジ継手S2へと向かう。このメカニズムは次に、クランプヘッド30とクロス支柱20との間のヒンジ継手S2の角度位置αを固定および/または係止するように作用する(
図3に記号で示される力の矢印も参照のこと)。
【0042】
図2および
図3は、フローティングロッカーベアリングS1での相互作用またはヒンジ継手S2までの力の流れを実現する、クロスコネクタ100のクランプヘッド30内の構造詳細を示す。すなわち、
図3は、医療用クロスコネクタ100の第1の実施形態に係る上面図を示し、特に、構成の中央に描かれた矢印は、クランプ力の力の流れを示すことを意図している。繰り返しになるが、
図2は、医療用クロスコネクタ100の実施形態に係る第1の斜視正面図を示し、ロッカーベアリングS1を介して回動可能に取り付けられているクランプ歯42を示す目的で、クランプヘッド30の外側ハウジングなしで示されている。したがって、クランプ歯42の回動取り付けが妨げられずに図示されており、回動取り付けは、U字型構造のフォークホルダ
50の対向面にある2つのシリンダ穴51に取り囲まれたシリンダピン43によって実施される。フォークホルダ
50は、クランプヘッド30内でクランプ歯42の押圧要素41の外側に配置されており、それらの間で動くことができる。これにより、クランプ歯42または押圧要素41は、ロッド受け部31とは反対を向きかつヒンジ継手S2に対向するフォークホルダ
50の前側によってU字状に包囲される。一方、ヘッド側のロッド受け部は、フォークホルダ
50によって囲まれていないか、又はフォークホルダ
50から自由な状態である。クランプ歯42または押圧要素41を支持するシリンダピン43の横方向移動ベクトルVに沿った移動中に、フォークホルダ
50は、その外側面において、クランプヘッド30の対応する内面39、39によってクランプヘッド30内を移動可能に案内される。クロス支柱20に対向するヒンジ継手S2の凸面部F2において表面押圧力として細矢印によって示されるように、フォークホルダ
50の横方向移動ベクトルVに起因して、クロス支柱20への移行中にヒンジ継手S2の領域において角度固定クランプ力が生じる。その結果、クランプねじ40は最終的に、クランプヘッド30とクロス支柱20との間のヒンジ継手S2の角度位置αを固定および/または係止する。
【0043】
図4は、
図1と比較してより斜視的な医療用クロスコネクタ100の正面図を示すが、クランプされた脊椎ロッド10は図示されていない。繰り返しを避けるために、
図1に関する説明を参照されたい。
【0044】
以下では、
図5a~
図7を参照して本発明の第2の実施形態を説明し、基本的に第1の実施形態とは異なる構造的特徴のみを説明する。他のすべての特徴および動作モードに関しては、図面の前述の説明を参照されたい。
【0045】
第2の実施形態では、クロスコネクタ100の第1の実施形態から既知のヒンジ継手S2として構成される単軸アンギュラベアリングが、クランプヘッド30とクロス支柱20との間でボール継手S2として構成される多軸アンギュラベアリングに置き換えられる。
【0046】
具体的には、上述した2つの締め付けの機能的動作が、3つの関連した図である5a~5cおよび6a~6cのシーケンスで示され、5a~5cおよび
図6a~6cはそれぞれ、異なる3つの時点に対応する。ここで、
図5a~
図5cは、クランプねじ40とは反対側からのクロスコネクタ100の上面図を示しており、したがって、挿入された脊椎ロッド10も示されている。それに対応して、
図6a~
図6cは、同じ3時点をクロスコネクタ100の縦断面で示している。脊椎ロッド10は、
図5a~6cの全図において比較的小さい直径を有する(比較のために、比較的大きい直径の代替脊椎ロッド10を示す
図7を参照されたい)。このように、先に述べた連続する締め付け動作のメカニズムまたはキネマティクス、つまり、クロスコネクタ100に挿入された脊椎ロッド10をフローティングロッカーベアリングS1に取り付けられたクランプ歯
42によってまず締め付け、次にボール継手S2において三次元回動位置に関して締め付けを行うことが、3つの特徴的な時点において図示されている。すなわち、
図5aおよび
図6aにそれぞれ示される第1の時点は、クランプねじ40がねじ込まれる前および/または作動される前の初期位置を示し、この時点では、脊椎ロッド10は、ロッド受け部31に緩く受け入れられている、および/またはロッド受け部31内に緩く配置されている。
図5b及び
図6bにそれぞれ示される続く第2の時点は、初期締め付け位置を示す。ここでは、クランプねじ40をさらに作動させて押圧要素41を時計回りに回動させることによって、クランプ歯
42が脊椎ロッド10と最初に接触し、その結果、クランプ歯
42と脊椎ロッド10との間でクランプ力が増大する。
図5cおよび
図6cにそれぞれ図示される第3の時点は、締め付けられた脊椎ロッド10から横方向に離れるようにフローティング
ロッカーベアリングS1が回避することによって、ボール継手S2の係止機構への力の流れが生じる位置を示す。これにより、力の流れが、この時点でボール継手S2が現在位置する空間的な角度位置αに対して角度固定効果を及ぼす。
【0047】
図7は上述した
図6cに対応し、同様に、ボール継手S2に対する角度固定又は角度
係止効果が達成される第3の時点におけるクロスコネクタの縦断面を示す。
図6cとは対照的に、
図7には、比較的大きな直径の代替脊椎ロッド10を有する最終状態が示されている。この点に関して、
図7のより太い脊椎ロッド10は、自身の断面円周周りで、ロッド受け部31とほぼ相補的である半径とほぼ完全に接触している。2つの図の対比は、フローティングロッカーベアリングS1に取り付けられたクランプ歯
42による締め付け構成により、様々な直径の脊椎ロッド10をしっかりと取り囲んで締め付けることができ、同時に、ボール継手に良好な角度固定クランプ効果を与えることができることを示している。
【0048】
以下、
図8を参照して、本発明の第2(または第1)の実施形態の好ましい変形例を説明する。したがって、基本的には、特に第2の実施形態に関して具体化された、ばね要素60によって予荷重される及び/又は予荷重可能なボール継手S2の構造的特徴のみに注意が払われるべきである。この具体的な実施形態では、バネ要素は、例えば、切断製造、鋸引き加工、またはワイヤ浸食工程等によって蛇行した輪郭を有するU字型のフォーク
ホルダ50(対比のために、
図2も参照)へ一体的にカットされた機械的な圧縮バネとして認識可能である。他のすべての特徴および機能性に関しては、第2の実施形態(ボール継手S2、すなわち多軸)または第1の実施形態(ヒンジ継手、すなわち一軸)についての上記の図の説明を参照されたい。
【0049】
図9及び
図10は2つのクロスコネクタの配置を示しており、これらのクロスコネクタは、2つのボール継手それぞれの非常に高い三次元自由度を示すために第2の実施形態にしたがって図示されている。
図9は、(後方からの)斜視図を示す。一方、対応する
図10は、わずかに斜視的な縦断面を示す。
図10では、図の方向は、右側に断面で示されている第2の脊椎ロッド10の長手軸(すなわち、紙の表面に直交する長手軸)に平行であるか、またはわずかに傾斜している、つまりわずかに斜視した上面図で左側に断面で示されている第1の脊椎ロッド10の長手軸にほぼ平行である。
【0050】
患者の脊柱(図示せず)に関して、2つのクロスコネクタ100の伸長した配置は、患者に対して中央で、すなわち脊柱の中心の上方で結合される配置と考えられるべきである。2つのクロスコネクタ100の互いに対する中心結合又は中央結合は、クロスコネクタ中央接続部70によって達成される。それによって、第1の脊椎ロッド10(左側に示されている)から2つのクロスコネクタ100を横切って第2の脊椎ロッド10(右側に示されている)までの配置の横方向のコースは、脊柱の中心上に解剖学的に好ましい湾曲したアーチを形成する(
図9では、脊柱の中心がクロスコネクタ中央接続部70の下に配置されていると考えられる)。
【0051】
この場合にも、第1の実施形態の全ての利点を実現することができる。しかしながら、完全を期すために、第1の実施形態の2つのクロスコネクタの配置については異なる画像が得られないが、そのような配置の全体的な角度形成についてはより小さい自由度が適用されることに留意されたい。原則として、異なる実施形態の2つのクロスコネクタがクロスコネクタ中央接続部70を介して結合され得ることは、当業者には容易に明らかである。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
医療用クロスコネクタ(100)であって、
2つの長手ロッド(10)を接続するためのクロス支柱(20)であって、特に脊柱の椎骨の配向のために、好ましくは椎弓根ねじまたは同様の骨インプラントと動作可能に係合させることができるクロス支柱(20)と、
アンギュラベアリング(S2)において前記クロス支柱(20)に回動可能に取り付けられており、溝形状のロッド受け部(31)およびクランプねじ(40)を有する少なくとも1つのクランプヘッド(30)、
を有し、
前記クランプねじ(40)は、作動されると、ロッカーベアリング(S1)を介して回動軸(A1)を中心に回動可能に取り付けられたクランプ歯(42)によって前記ロッド受け部(31)に挿入された少なくとも1つの前記長手ロッド(10)にクランプ力を加え、同時にまたは時間をずらして、前記クランプヘッド(30)と前記クロス支柱(20)との間の前記アンギュラベアリング(S2)の角度位置(α)を固定し、
前記ロッカーベアリング(50)は、フローティングベアリングとして構成されており、
前記フローティングベアリングは、前記クランプ歯(42)の前記回動軸(A1)の回動運動および横方向移動(V)を可能にし、
前記横方向移動は、前記長手ロッド(10)と前記クランプ歯(42)との間のクランプ力によって生じ、前記クランプヘッド(30)と前記クロス支柱(20)との間の前記アンギュラベアリング(S2)の前記角度位置(α)を固定および/または係止するように作用する、
医療用クロスコネクタ。
(項目2)
前記アンギュラベアリング(S2)は、前記角度位置(α)が少なくとも2つ、好ましくは3つの軸方向(X、Y、Z)で変更可能および/または固定可能であるように、前記クランプヘッド(30)と前記クロス支柱(20)との間において、特にボール継手接続の形態で、多軸であるように構成されている、項目1に記載の医療用クロスコネクタ(100)。
(項目3)
多軸である前記アンギュラベアリング(S2)は、ばね要素(60)によって予荷重されるおよび/または予荷重可能であるように構成されている、項目2に記載の医療用クロスコネクタ(100)。
(項目4)
前記クランプねじ(40)は、可逆的に解放可能にねじ込み可能および/または自動ロック式でねじ込み可能である、項目1~3のいずれか1項に記載の医療用クロスコネクタ(100)。
(項目5)
前記クランプ歯(42)は、前記長手ロッド(10)の様々な直径に合わせて様々な形状および/または寸法になるように調整されているおよび/または調整可能であり、
さらに好ましくは、前記長手ロッド(10)の前記直径は、3~7mmであり、特に好ましくは頸部または頸部領域で3.5~4.0mmであり、および/または、腰部または腰椎領域で5.5~6.0mmである、
項目1~4のいずれか1項に記載の医療用クロスコネクタ(100)。
(項目6)
項目1~5のいずれか1項に記載の医療用クロスコネクタ(100)のクランプねじ(40)に適合されるトルクレンチであって、
前記トルクレンチは、
-前記ロッド受け部(31)に挿入された少なくとも1つの前記長手ロッド(10)に加えられるクランプ力が、最小許容第1力限界を下回らず、かつ/または最大許容第2力限界を超えない、および/または、
-前記クランプヘッド(30)と前記クロス支柱(20)との間の前記アンギュラベアリング(S2)の角度位置(α)を固定および/または係止するように作用する前記横方向移動(X)によって生じる対抗力が、最小許容第3力限界を下回らず、かつ/または最大許容第4力限界を超えない、および/または、
-前記長手ロッド(10)を接続するためのクランプねじ(40)を締め付けるためのトルクは、頸部または頸部領域では、好ましくは2.3~3.3Nm、特に好ましくは2.8Nmであり、および/または、腰部または腰椎領域では、好ましくは4.5~5.5Nm、特に好ましくは5.0Nmである、
という構成を満たすように最小および/または最大許容トルクを加えるよう調整されているおよび/または調整可能である、
トルクレンチ。
(項目7)
前記トルクレンチは、好ましくは予め設定された間隔で、前記長手ロッド(10)の様々な直径に合わせて調整可能であるおよび/または様々に構成されている、項目6に記載のトルクレンチ。
(項目8)
医療製品セット、好ましくは脊柱の安定化および/または矯正のための椎弓根ねじおよびフックシステムであって、
項目1~4のいずれか1項に記載の医療用クロスコネクタ(100)を有し、
少なくとも、以下のもの、すなわち、
-長手ロッド(10)、好ましくは、複数の長手ロッド(10)、好ましくは、様々なサイズおよび/または硬度および/または材料の直線および/または湾曲形状の複数の長手ロッドのアセンブリの形態での前記複数の長手ロッド(10)、および/または、
-多軸ねじおよび/または一軸ねじなどの骨インプラント、および/または、
-茎フック、および/または、
-ロッド挿入鉗子、インプラントホルダ、ディストラクタなどの外科用器具、および/または、
-項目6または7に記載のトルクレンチ、
を組み合わせて有する、医療用製品セット。
【符号の説明】
【0052】
100:クロスコネクタ
10:長手ロッド
11:第1の表面部
12:第2の表面部
20:クロス支柱
30:クランプヘッド
31:ロッド受け部
32:ベアリング面
35:長穴
39:内面
40:クランプねじ
41:押圧要素
42:クランプ歯
43:シリンダピン
50:フォークホルダ
51:シリンダ穴
60:ばね要素
70:クロスコネクタ中央接続部
A1:回動軸
B1:回転軸(接触線)
S1:ロッカーベアリング
A2:回動軸
F2:内面部
S2:アンギュラベアリング
V:横方向移動(ベクトル)
X:長手方向
Y:垂直方向
Z:横方向
α:角度位置