(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20231207BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20231207BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W40/06
(21)【出願番号】P 2022050619
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥西 晋一
(72)【発明者】
【氏名】小西 達也
(72)【発明者】
【氏名】秋保 敬太
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/130643(WO,A1)
【文献】特開2014-199221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行制御を行う制御装置であって、
前記車両の周辺にある物体を当該物体からの反射波に基づいて検出可能なセンサの出力情報を取得可能なプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記センサの出力情報に基づいて、前記車両の周辺の第1領域における前記物体の第1検出点群データを取得し、前記第1検出点群データに基づいて、前記車両の周辺に存在する
静止物である第1特定物体の認識を行い、
前記第1特定物体の存在を認識した場合には、前記車両の周辺における前記第1領域よりも狭い第2領域における前記第1検出点群データに基づいて、前記車両の周辺に
おける走行制限区間に存在する第2特定物体の認識を行う、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記第2領域は、前記車両の左右方向と前後方向のそれぞれにおける幅が、前記第1領域よりも小さい、制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記プロセッサは、
前記第2領域における前記第1検出点群データに基づいて、前記車両の前後方向に延びて存在する既定物体を認識した場合には、前記第2領域のうち、前記車両の左右方向において前記既定物体よりも内側の領域の前記第1検出点群データに基づいて、前記第2特定物体の認識を行う、制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記プロセッサは、
前記第1検出点群データを周期的に取得し、
複数周期分の前記第1検出点群データに基づいて、前記第2特定物体を認識する、制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の制御装置であって、
前記プロセッサは、
同一の物体から検出された前記複数周期分の第1検出点群データに含まれる検出点データの総数が閾値を超える場合には、当該複数周期分の第1検出点群データのうち、取得タイミングが古い検出点群データを除いたものを、前記第2特定物体の認識に使用する、制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記プロセッサは、
前記車両の車線変更制御を行い、
前記第2特定物体の認識結果に基づいて、前記車線変更制御を制限する、制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記第2特定物体は、パイロンである、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の自動運転及び運転支援の導入が急速に進んでいる。車両の自動運転及び運転支援の技術として、運転者が操舵等の操作を行わなくても車両が車線変更を行う自動車線変更(ALC:Auto Lane Changing)等の技術が開発されている。
【0003】
特許文献1には、スキャン範囲内の物体を検知するレーダ装置であって、送信波に対する反射波に基づいて前記スキャン範囲内の物体を検知し、前記物体の検知結果を出力する検知手段と、前記検知結果が、一定時間内に前記スキャン範囲で検知された検知対象以外の物体を含むと、前記検知対象以外の物体を検知しないようにスキャン範囲を狭める調整手段を備え、前記調整手段は、速度が第1の値未満の物体を前記検知対象以外の物体と判断することを特徴とする、レーダ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工事又は事故等によって車線規制がなされている区間等、道路において走行が制限される区間(本明細書では、この区間を走行制限区間と定義)を認識することは、車両の走行制御を行う際の安全性を高める上で重要である。車両が走行制限区間を通過又はこれに近づいている状況では、車両の周辺に、パイロン等の物体が多数存在し得る。このため、広範囲において、こういった物体を検出していると、誤検出の発生確率が高くなり、走行制限区間の認識精度に影響を与える可能性がある。
【0006】
本発明は、安全性の向上を図ることを目的としている。そして、延いては交通の安全性をより一層改善して持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の制御装置は、車両の走行制御を行う制御装置であって、前記車両の周辺にある物体を当該物体からの反射波に基づいて検出可能なセンサの出力情報を取得可能なプロセッサを備え、前記プロセッサは、前記センサの出力情報に基づいて、前記車両の周辺の第1領域における前記物体の第1検出点群データを取得し、前記第1検出点群データに基づいて、前記車両の周辺に存在する静止物である第1特定物体の認識を行い、前記第1特定物体の存在を認識した場合には、前記車両の周辺における前記第1領域よりも狭い第2領域における前記第1検出点群データに基づいて、前記車両の周辺における走行制限区間に存在する第2特定物体の認識を行う、ものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】制御装置100を搭載した車両システム1の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】車両システム1に含まれる車両Mの外観構成例を示す模式図である。
【
図3】第1制御部120及び第2制御部160の構成の一例を示す図である。
【
図5】車両Mの周辺のうち、レーダ装置12によって物体の検出が可能な領域を模式的に示す図である。
【
図6】認識部130によって取得された検出点群データの一例を示す模式図である。
【
図7】周辺領域DA2内の検出点群データに基づいて、既定物体OBの存在が認識された例を示している。
【
図8】複数周期分の検出点群データについて説明するための模式図である。
【
図9】制御装置100の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態である制御装置100を含む車両システム1について、図面を参照して説明する。図面は、符号の向きに見るものとする。本明細書では説明を簡単かつ明確にするために、前後、左右の各方向は、
図2に示す車両Mの運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両Mの前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、として示す。
【0011】
<車両システム1の全体構成>
図1は、制御装置100を搭載した車両システム1の全体構成を示すブロック図である。
図2は、車両システム1に含まれる車両Mの外観構成例を示す模式図である。車両Mは、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
図2では、車両Mが四輪車である例を示している。
【0012】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、運転者(ドライバ)モニタカメラ50と、ナビゲーション装置60と、MPU(Map Positioning Unit)70と、運転操作子80と、制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220と、を備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続されている。
【0013】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。例えば、
図2に示すように、カメラ10は、車両Mの車室内におけるバックミラー(不図示)近傍、及び車両Mの車室外における右側ドア前部・左側ドア前部などに設けられる。カメラ10により撮像された車両Mの進行方向前方、右後側方、及び左後側方のそれぞれの画像情報(カメラ10の出力情報)は、制御装置100へ送られる。
【0014】
レーダ装置12は、車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射するとともに、物体で反射された電波(反射波)を検出して、反射波によって特定される物体の一部が存在する位置(以下、検出点とも記載)の情報(以下、検出点データとも記載)を出力する。電波としては、レーザ、マイクロ波、ミリ波、超音波などを適宜用いることができる。レーダ装置12は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。例えば、
図2に示すように、レーダ装置12は、前側に3つ、後側に2つの都合5つ設けられている。レーダ装置12の出力情報は、制御装置100へ送られる。
【0015】
LIDAR14は、車両Mの周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、物体の有無、及び物体までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザ光である。LIDAR14は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。例えば、
図2に示すように、LIDAR14は、前側に2つ、後側に3つの都合5つ設けられている。LIDAR14の出力情報は、制御装置100へ送られる。
【0016】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi(登録商標)網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0017】
HMI30は、車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0018】
車両センサ40は、車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0019】
運転者モニタカメラ50は、例えば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子を利用したデジタルカメラである。運転者モニタカメラ50は、車両Mの運転席に着座した乗員(以下、運転者)の頭部を正面から(顔面を撮像する向きで)撮像可能な位置及び向きで、車両Mにおける任意の箇所に取り付けられる。
【0020】
ナビゲーション装置60は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機61と、ナビHMI62と、経路決定部63とを備える。ナビゲーション装置60は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報64を保持している。
【0021】
GNSS受信機61は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、車両Mの位置を特定する。車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定又は補完されてもよい。
【0022】
ナビHMI62は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI62は、前述したHMI30と一部又は全部が共通化されてもよい。
【0023】
経路決定部63は、例えば、GNSS受信機61により特定された車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI62を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報64を参照して決定する。第1地図情報64は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報64は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU70に出力される。
【0024】
ナビゲーション装置60は、地図上経路に基づいて、ナビHMI62を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置60は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0025】
MPU70は、例えば、推奨車線決定部71を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報72を保持している。推奨車線決定部71は、ナビゲーション装置60から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報72を参照してブロック毎に推奨車線を決定する。推奨車線決定部71は、例えば、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部71は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0026】
第2地図情報72は、第1地図情報64よりも高精度な地図情報である。第2地図情報72は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報72には、道路情報、交通規制情報、住所情報、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報72は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0027】
運転操作子80は、例えば、ステアリングホイール82の他、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ウインカー、その他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、及びステアリング装置220のうち一部又は全部に出力される。
【0028】
ステアリングホイール82は、必ずしも環状である必要は無く、異形ステアやジョイスティック、ボタンなどの形態であってもよい。ステアリングホイール82には、ステアリング把持センサ84が取り付けられている。ステアリング把持センサ84は、静電容量センサなどにより実現され、運転者がステアリングホイール82を把持しているか否かを検知可能な信号を制御装置100に出力する。
【0029】
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、このプロセッサの動作に必要な記憶媒体と、を少なくとも含む。このプロセッサが、記憶媒体に記憶されたプログラム実行することにより、第1制御部120及び第2制御部160として機能する。制御装置100は、単一のプロセッサによって処理を行うものに限らず、複数のプロセッサによって処理を分担して行うものであってもよい。
【0030】
<第1制御部120及び第2制御部160の構成>
図3は、第1制御部120及び第2制御部160の構成の一例を示す図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140と、モード決定部150と、を備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence:人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。
【0031】
例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
【0032】
認識部130は、例えば、車両Mが走行している走行環境を認識する。例えば、認識部130は、第2地図情報72から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、車両Mの走行車線を認識する。なお、認識部130は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置60から取得される車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部130は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識する。
【0033】
認識部130は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部130は、例えば、車両Mの基準点の車線中央からの乖離、及び車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する車両Mの相対位置及び姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部130は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線又は道路境界)に対する車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0034】
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、及びLIDAR14のうち一部又は全部の出力情報に基づいて、車両Mの周辺環境を認識する。例えば、認識部130は、車両Mの周辺にある物体の位置、及び物体の種別(動体か静止物か)等を認識する。物体の位置は、例えば、車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標(車両Mの代表点を通り且つ左右方向に平行なY軸(
図6のY軸Ay)と、車両Mの代表点を通り且つ前後方向に平行なX軸(
図6のX軸Ax)とで示されるXY平面)上の位置として認識され、各種の制御に使用される。
【0035】
車両Mの周辺にある物体としては、動体(周辺を走行する他車両等)と、静止物(植栽、壁、中央分離帯などの道路の境界を形成する物体、工事時や事故時に特有の設置物(コーン、ガードレール、看板、仮設信号機等)と、が挙げられる。この設置物には、道路において離散的に配置され得る特定物体(具体的にはパイロン)が含まれる。
【0036】
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、及びLIDAR14のうち一部又は全部の出力情報に基づいて、車両Mの周辺環境が走行制限区間であることを認識する処理を行う。“車両Mの周辺環境が走行制限区間である”とは、車両Mが走行制限区間を走行している状況、及び、車両Mの所定距離前方に走行制限区間が存在する状況のいずれかのことを言う。“車両Mの周辺環境が走行制限区間ではない”とは、車両Mが走行制限区間を走行しておらず、且つ、車両Mの前方に走行制限区間が存在していない状況のことを言う。認識部130は、レーダ装置12の出力情報に基づいて、車両Mからの距離がほぼ等しい検出点データの集合を検出点群データとして纏めて、検出点群データを取得する処理を行う。
【0037】
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部71により決定された推奨車線を走行し、更に、車両Mの周辺状況に対応できるように、車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)毎の車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)毎の目標速度及び目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間毎の、そのサンプリング時刻における車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0038】
行動計画生成部140は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してもよい。自動運転のイベントには、定速走行イベント、低速追従走行イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベント、テイクオーバーイベントなどがある。行動計画生成部140は、起動させたイベントに応じた目標軌道を生成する。
【0039】
モード決定部150は、車両Mの運転モードを、運転者に課されるタスクが異なる複数の運転モードのいずれかに決定する。また、モード決定部150は、決定した運転モード(以下、現運転モード)のタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに車両Mの運転モードを変更する。モード決定部150は、車両Mの走行速度及び操舵の少なくともいずれかの制御の自動化モードを複数の運転モードの中から選択して設定する制御状態設定部の一例である。
【0040】
<運転モードの具体例>
図4は、運転モードの具体例を示す図である。車両Mの運転モードには、例えば、第1運転モードから第5運転モードの5つのモードがある。制御状態すなわち車両Mの運転制御の自動化度合いは、第1運転モードが最も高く、次いで第2運転モード、第3運転モード、第4運転モードの順に低くなり、第5運転モードが最も低い。この逆に、運転者に課されるタスクは、第1運転モードが最も軽度であり、次いで第2運転モード、第3運転モード、第4運転モードの順に重度となり、第5運転モードが最も重度である。なお、第1運転モード以外の運転モードでは自動運転でない制御状態となるため、制御装置100としては自動運転の制御を終了し、運転支援又は手動運転に移行させるまでが責務である。以下、それぞれの運転モードの内容について例示する。
【0041】
第1運転モードでは、自動運転の状態となり、運転者には、前方監視、ステアリングホイール82の把持のいずれも課されない。但し、第1運転モードであっても運転者は、制御装置100からの要求に応じて速やかに手動運転に移行できる体勢であることが要求される。なお、ここで言う自動運転とは、操舵、加減速のいずれも運転者の操作に依らずに制御されることをいう。前方とは、フロントウインドシールドを介して視認される車両Mの進行方向の空間を意味する。第1運転モードは、例えば、高速道路などの自動車専用道路において、所定速度以下(例えば60[km/h]程度)で車両Mが走行しており、追従対象の前走車両が存在するなどの条件が満たされる場合に実行可能な運転モードである。
【0042】
第2運転モードでは、運転支援の状態となり、運転者には、車両Mの前方を監視するタスク(以下、前方監視)が課されるが、ステアリングホイール82を把持するタスクは課されない。第3運転モードでは、運転支援の状態となり、運転者には前方監視のタスクと、ステアリングホイール82を把持するタスクが課される。第4運転モードは、車両Mの操舵と加減速のうち少なくとも一方に関して、ある程度の運転者による運転操作が必要な運転モードである。例えば、第4運転モードでは、ACC(Adaptive Cruise Control)やLKAS(Lane Keeping Assist System)といった運転支援が行われる。第5運転モードでは、操舵、加減速ともに運転者による運転操作が必要な手動運転の状態となる。第4運転モード、第5運転モードともに、当然ながら運転者には車両Mの前方を監視するタスクが課される。
【0043】
図3に戻り、第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに車両Mが通過するように制御する。第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166と、を備える。
【0044】
取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200(
図1参照)又はブレーキ装置210(
図1参照)を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220(
図1参照)を制御する。速度制御部164及び操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。
【0045】
制御装置100において、行動計画生成部140と第2制御部160を合わせたものが走行制御部170を構成する。走行制御部170は、認識部130によって認識される車両Mの走行環境あるいは周辺環境等の認識結果に基づいて、車両Mにおける自動車線変更の制御を実行する。また、走行制御部170は、運転者による運転操作子80(例えばウインカーレバー)の操作に基づいて運転者の車線変更の意図を検出する。
【0046】
走行制御部170は、車両Mの運転者による関与の度合いが異なる複数の車線変更態様の中から1つの車線変更態様を選択し、選択された車線変更態様に従って走行制御(車線変更制御ともいう)を行う。車両Mの運転者による関与の度合いが異なる複数の車線変更態様とは、自動化度合いが異なる複数の車線変更態様ということもできる。運転者による関与の度合いが小さいほど自動化度合いが高く、運転者による関与の度合いが大きいほど自動化度合いが低い。
【0047】
例えば、複数の車線変更態様は、以下の3つの自動車線変更の態様を含んでもよい。1つ目の自動車線変更は、車両Mの運転者が自ら車線変更を意図し、車両Mの運転者が車線変更の開始を指示する意図自動車線変更(ALC-カテゴリC)である。意図自動車線変更においては、車両Mの運転者が、他車両の走行状況、目的地への経路等を考慮して、車線変更すべきであるかどうかを判定する。車両Mの運転者は、車線変更すべきである場合には、運転操作子80を操作することにより、車両Mに対して車線変更の開始の指示を与える。走行制御部170は、この指示に基づいて、周囲の走行状況を考慮しつつ、実行可能なタイミングで自動車線変更を開始する。
【0048】
2つ目の自動車線変更は、走行制御部170が車線変更を提案し、車両Mの運転者が車線変更を承認する提案自動車線変更で(ALC-カテゴリD)ある。提案自動車線変更においては、走行制御部170が、他車両の走行状況、目的地への経路等に基づいて、車線変更すべきであるかどうかを判定する。走行制御部170は、車線変更すべきである場合に、運転者に対して車線変更を提案する。車両Mの運転者は、車線変更の提案を承認する場合には、承認スイッチを操作することにより、車両Mに対して車線変更の開始の指示を与える。承認スイッチは、承認専用のスイッチでもよいし、他の機能を兼用する操作子(一例としては運転操作子80)でもよい。走行制御部170は、この指示に基づいて、周囲の走行状況を考慮しつつ、実行可能なタイミングで自動車線変更を開始する。したがって、運転者が車線変更の提案を承認しない場合、すなわち運転操作子80を操作しない場合には、自動車線変更は実行されない。
【0049】
3つ目の自動車線変更は、走行制御部170が車線変更を判断し、走行制御部170が車線変更の開始を決定する判断自動車線変更(ALC-カテゴリE)である。判断自動車線変更においては、走行制御部170が、他車両の走行状況、目的地への経路等に基づいて、車線変更すべきであるかどうかを判定する。走行制御部170は、車線変更すべきである場合には、周囲の走行状況を考慮して、実行可能なタイミングで自動車線変更を開始する。判断自動車線変更の場合、車両Mの運転者は、当該車線変更へ関与しない。
【0050】
制御装置100は、運転モードに応じた自動車線変更を実行する。例えば、制御装置100は、第1運転モードにおいて、判断自動車線変更を実行し得る。制御装置100は、第2運転モード、第3運転モード、及び第4運転モードにおいて、提案自動車線変更を実行し得る。制御装置100は、第3運転モード、及び第4運転モードにおいて、意図自動車線変更を実行し得る。制御装置100は、第5運転モードにおいて、いずれの自動車線変更も実行しない。
【0051】
図1に戻り、走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、及び変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成要素を制御する。
【0052】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。
【0053】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0054】
<物体の検出可能範囲>
図5は、車両Mの周辺のうち、レーダ装置12によって物体の検出が可能な領域を模式的に示す図である。
図5には、レーダ装置12によって物体を検出可能な範囲12Aが示されている。本形態では、例えば、範囲12Aに内包され且つレーダ装置12による物体の検出分解能が十分に高くなる周辺領域DA1が設定されている。認識部130は、この周辺領域DA1内の検出点群データを取得する。つまり、周辺領域DA1に何らかの物体が存在していると、その物体の検出点データがレーダ装置12から出力され、この検出点データから、その物体に対応する検出点群データが認識部130によって取得される。検出点群データの位置は、
図5に示すX軸AxとY軸Ayで示されるXY平面上の座標として管理される。
図5に示す原点Oは、車両Mの代表点を示している。
【0055】
<走行制限区間の認識処理>
図6は、認識部130によって取得された検出点群データの一例を示す模式図である。
図6は、周辺領域DA1に存在する物体の検出点群データとして、検出点群データDa、検出点群データDb、検出点群データDc、検出点群データDd、及び検出点群データDeの5つが取得された例を示している。
【0056】
認識部130は、周辺領域DA1内の検出点群データを取得すると、その検出点群データに基づいて、その検出点群データに対応する物体が第1特定物体(具体的には、自律的に移動しない静止物)であるか否かを判定する静止物認識処理を行う。静止物の例としては、壁、ガードレール、又はパイロン等が挙げられる。認識部130は、周辺領域DA1において第1特定物体(静止物)の存在を認識した場合には、車両Mの周辺に、周辺領域DA1よりも狭い周辺領域DA2を設定し、この周辺領域DA2内の検出点群データに基づいて、車両Mの周辺に存在する第2特定物体の認識を行う。第2特定物体は、具体的には、走行制限区間において離散的に設置され得る物体であり、例えばパイロンである。つまり、認識部130は、周辺領域DA1内の検出点群データに基づいて第1特定物体(静止物)の存在を認識した場合には、検出点群データの利用範囲を周辺領域DA1から周辺領域DA2に縮小する。
【0057】
図6に示すように、周辺領域DA2は、原点O(車両Mの代表点)を含み、前後方向の幅と左右方向の幅のそれぞれが周辺領域DA1よりも小さい領域である。認識部130は、
図6に示す周辺領域DA2内の検出点群データに基づいて、その検出点群データに対応する物体が第2特定物体であるか否かを判定する特定物体認識処理を行う。
【0058】
また、認識部130は、周辺領域DA2内の検出点群データに基づいて、その検出点群データに対応する物体が既定物体であるか否かを判定する既定物体認識処理も行う。既定物体は、前後方向に連続して配置される物体であり、例えばガードレール又は壁である。
図6の例では、検出点群データDa、Db、Dc、Dd、Deに基づいて周辺領域DA1に第1特定物体(静止物)が存在することが認識された場合には、周辺領域DA2の外側の検出点群データDc、Ddは、第2特定物体の認識には用いられず、周辺領域DA2内の検出点群データDa、Db、Deだけが、第2特定物体の認識に用いられることになる。
【0059】
認識部130は、この特定物体認識処理により、周辺領域DA2において第2特定物体の存在を認識した場合には、車両Mの周辺環境が走行制限区間であると認識する。
【0060】
なお、認識部130は、検出点群データの利用範囲を周辺領域DA1から周辺領域DA2に縮小した後、周辺領域DA2内の検出点群データに基づいて、周辺領域DA2内に既定物体の存在を認識した場合には、周辺領域DA2のうち、左右方向においてこの既定物体よりも内側(車両Mの存在している側)の領域の検出点群データに基づいて、第2特定物体の認識を行うことが好ましい。
【0061】
図7は、周辺領域DA2内の検出点群データに基づいて、既定物体OBの存在が認識された例を示している。
図7の例では、周辺領域DA2のうち既定物体OBよりも右側の領域にある検出点群データDbは、第2特定物体の認識には用いられず、周辺領域DA2のうち既定物体OBよりも左側の領域にある検出点群データDa、Deだけが、第2特定物体の認識に用いられることになる。
【0062】
なお、認識部130は、レーダ装置12の出力周期に同期して、検出点群データの取得を周期的に行うことが好ましい。
図8には、周辺領域DA2内にある同一物体の検出点群データとして、認識部130によって取得された最新の検出点群データD4と、検出点群データD4の1つ前の周期で取得された検出点群データD3と、検出点群データD3の1つ前の周期で取得された検出点群データD2と、検出点群データD2の1つ前の周期で取得された検出点群データD1と、が示されている。認識部130は、これら取得タイミングの異なる検出点群データD1、D2、D3、D4に基づいて、これら検出点群データD1、D2、D3、D4のグループに対応する物体が第2特定物体であるか否かを判定する。このように、最新の検出点群データと、過去の検出点群データと統合して第2特定物体の認識を行うことで、第2特定物体の認識精度を高めることができる。
【0063】
処理負荷の軽減やメモリの有効利用の観点から、第2特定物体の認識に用いる検出点データの総数には上限を設けておくことが好ましい。つまり、これら検出点群データD1、D2、D3、D4のグループに含まれる検出点データの総数には上限値を設定しておくことが好ましい。このように上限値を設定した場合、認識部130は、検出点群データD1、D2、D3、D4のグループに含まれる検出点データの総数が上限値を超えている場合には、検出点群データD1、D2、D3、D4のうち、最も古い検出点群データD1を削除し、残りの検出点群データD1、D2、D3に基づいて、第2特定物体の認識を行えばよい。
【0064】
以下、制御装置100の動作を、フローチャートを参照して説明する。
図9は、制御装置100の動作を説明するためのフローチャートである。
図9に示す処理は、例えば、
図4に示した第1運転モードから第4運転モードのいずれかの実行中に行われる。
【0065】
認識部130は、レーダ装置12の出力情報に基づいて、周辺領域DA1内の検出点群データを取得し(ステップS1)、取得した検出点群データに基づいて、周辺領域DA1における静止物(第1特定物体)の存在を認識する(ステップS2)。ステップS2において周辺領域DA1に静止物が存在すると認識された場合(ステップS2:YES)には、ステップS3の処理が行われる。ステップS2において周辺領域DA1に静止物が存在しないと認識された場合(ステップS2:NO)には、ステップS1に処理が戻る。
【0066】
ステップS3において、認識部130は、検出点群データの利用範囲を周辺領域DA2に縮小する。その後、認識部130は、周辺領域DA2内の検出点群データに基づいて、周辺領域DA2における既定物体の存在を認識する(ステップS4)。認識部130は、周辺領域DA2に既定物体が存在しないと認識した場合(ステップS4:NO)には、周辺領域DA2内の全ての検出点群データに基づいて、周辺領域DA2における第2特定物体(パイロン)の認識を行う(ステップS10)。
【0067】
認識部130は、周辺領域DA2に既定物体が存在すると認識した場合(ステップS4:YES)には、周辺領域DA2のうち、左右方向において既定物体よりも外側の領域の検出点群データをパイロンの認識に利用する検出点群データから除外する(ステップS5)。
【0068】
ステップS5の後、認識部130は、周辺領域DA2内の同一物体に対応する異なるタイミングで取得した複数の検出点群データのグループとして、検出点データの総数が上限値を超える特定グループがあるか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6の判定がYESの場合には、認識部130は、特定グループに含まれる複数の検出点群データのうち、最も古いものを、パイロンの認識に利用する検出点群データから除外する(ステップS7)。ステップS7の後と、ステップS6の判定がNOの場合には、ステップS8の処理が行われる。ステップS8において、認識部130は、周辺領域DA2の検出点群データのうち、除外されなかった残りの検出点群データに基づいて、周辺領域DA2におけるパイロンの認識を行う。
【0069】
ステップS8、ステップS10のいずれかにおいて、周辺領域DA2にパイロンがあると認識した場合には、認識部130は、車両Mの周辺環境が走行制限区間であると認識する。認識部130によって走行環境が走行制限区間であると認識された場合には、走行制御部170が、車両Mの走行制御を制限する。具体的には、走行制御部170は、車線変更制御を制限する。車線変更制御の制限とは、車線変更制御を禁止したり、車線変更制御を実行するものの車線変更態様の一部を禁止したり、することを言う。このように、車両Mが走行制限区間を走行している状況や、車両Mが走行制限区間に近づいている状況では、車線変更制御を制限することで、車両Mを安全に走行させることが可能となる。
【0070】
ステップS8、ステップS10のいずれにおいても、周辺領域DA2にパイロンがないと認識された場合には、ステップS2に処理が戻る。
【0071】
以上のように、車両Mの周辺に静止物が存在するということは、車両Mの周辺環境が走行制限区間である可能性が高いため、ステップS3において、パイロンの認識可能範囲を狭くすることで、パイロンの誤認識を防いだり、処理負荷を軽減したりすることが可能となる。例えば、走行制限区間に近づいている状況では、周辺領域DA2の外側の範囲の物体(車両Mから距離の遠い物体)の検出点群データも認識部130によって取得される。このような物体の検出点群データは、誤差を含む可能性が高いことから、このような物体の検出点群データをパイロンの認識には用いないようにすることで、パイロンの誤認識を防いだり、処理負荷を軽減したりすることが可能となる。
【0072】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0073】
(1)
車両(車両M)の走行制御を行う制御装置(制御装置100)であって、
上記車両の周辺にある物体をその物体からの反射波に基づいて検出可能なセンサ(レーダ装置12)の出力情報を取得可能なプロセッサを備え、
上記プロセッサは、
上記センサの出力情報に基づいて、上記車両の周辺の第1領域(周辺領域DA1)における上記物体の第1検出点群データを取得し、上記第1検出点群データに基づいて、上記車両の周辺に存在する第1特定物体(静止物)の認識を行い、
上記第1特定物体の存在を認識した場合には、上記車両の周辺における上記第1領域よりも狭い第2領域(周辺領域DA2)における上記第1検出点群データに基づいて、上記車両の周辺に存在する第2特定物体(パイロン)の認識を行う、制御装置。
【0074】
(1)によれば、車両の周辺に静止物等の第1特定物体が存在するということは、車両の周辺環境が走行制限区間である可能性が高いため、第2特定物体の認識可能範囲を狭くすることで、第2特定物体の誤認識を防いだり、処理負荷を軽減したりすることが可能となる。誤認識の防止や処理負荷の軽減が可能になることで、第2特定物体の認識結果を走行制御に用いる場合に、その走行制御を高精度に行うことができ、安全性を向上させることができる。
【0075】
(2)
(1)に記載の制御装置であって、
上記第2領域は、上記車両の左右方向と前後方向のそれぞれにおける幅が、上記第1領域よりも小さい、制御装置。
【0076】
(2)によれば、より車両に近い第2特定物体のみを認識可能となるため、第2特定物体の誤検知を防いだり、処理負荷を軽減したりすることができる。
【0077】
(3)
(2)に記載の制御装置であって、
上記プロセッサは、
上記第2領域における上記第1検出点群データに基づいて、上記車両の前後方向に延びて存在する既定物体(壁又はガードレール等)を認識した場合には、上記第2領域のうち、上記車両の左右方向において上記既定物体よりも内側の領域の上記第1検出点群データに基づいて、上記第2特定物体の認識を行う、制御装置。
【0078】
(3)によれば、第2領域に例えば壁やガードレール等の既定物体が存在する場合に、第2領域のうちの、その壁やガードレールよりも外側の領域の第1検出点群データは第2特定物体の認識に用いられない。このため、必要な領域に絞って第2特定物体の認識を行うことができ、第2特定物体の認識を高速かつ高精度に行うことができる。
【0079】
(4)
(1)から(3)のいずれかに記載の制御装置であって、
上記プロセッサは、
上記第1検出点群データを周期的に取得し、
複数周期分の上記第1検出点群データに基づいて、上記第2特定物体を認識する、制御装置。
【0080】
(4)によれば、連続して取得した物体の第1検出点群データによって、物体が第2特定物体かどうかの判定やその物体の位置の判定を高精度に行うことができる。
【0081】
(5)
(4)に記載の制御装置であって、
上記プロセッサは、
同一の物体から検出された上記複数周期分の第1検出点群データに含まれる検出点データの総数が閾値を超える場合には、その複数周期分の第1検出点群データのうち、取得タイミングが古い検出点群データを除いたものを、上記第2特定物体の認識に使用する、制御装置。
【0082】
(5)によれば、処理負荷を軽減することができる。
【0083】
(6)
(1)から(5)のいずれかに記載の制御装置であって、
上記プロセッサは、
上記車両の車線変更制御を行い、
上記第2特定物体の認識結果に基づいて、上記車線変更制御を制限する、制御装置。
【0084】
(6)によれば、例えば第2特定物体の存在を認識した場合に、車線変更制御を制限することで、走行制限区間において例えば車線変更がなされなくなり、安全性を向上させることができる。
【0085】
(7)
(1)から(6)のいずれかに記載の制御装置であって、
上記第2特定物体は、パイロンである、制御装置。
【符号の説明】
【0086】
100 制御装置
10 カメラ
12 レーダ装置
M 車両