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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20231207BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20231207BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W40/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022050620
(22)【出願日】2022-03-25
(65)【公開番号】P2023143310
(43)【公開日】2023-10-06
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥西 晋一
(72)【発明者】
【氏名】小西 達也
(72)【発明者】
【氏名】秋保 敬太
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-053490(JP,A)
【文献】特開2018-060572(JP,A)
【文献】特開2019-125361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行制御を行う制御装置であって、
前記車両の周辺にある物体を検出可能な第1種別の第1センサ及び第2種別の第2センサの出力情報を取得可能なプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記車両の周辺領域に設定される複数の範囲のうち、特定物体を含む第1範囲を、前記第1センサの出力情報に基づいて認識する第1処理と、前記複数の範囲のうち、特定物体を含む第2範囲を、前記第2センサの出力情報に基づいて認識する第2処理と、を行い、
前記第1範囲に基づいて、前記第1範囲を除く前記複数の範囲から第3範囲を選択し、
前記第3範囲に対する前記第2処理の認識結果に基づいて、前記第1範囲の認識結果の信頼度を判定し、
前記プロセッサは、前記第3範囲の中に前記第2範囲が含まれる場合に、前記第1処理の認識結果の信頼度が閾値以上であると判定し、
前記プロセッサは、前記複数の範囲における前記第1範囲に少なくとも隣接する前記範囲を、前記第3範囲として設定する制御装置。
【請求項2】
請求項に記載の制御装置であって、
前記プロセッサは、前記車両の左右方向における位置が同じとなる2つの前記第1範囲がある場合には、前記2つの前記第1範囲の間の前記範囲を、前記第3範囲として設定する、制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制御装置であって、
前記プロセッサは、前記車両の左右方向において、前記第1範囲の両隣にある前記範囲を前記第3範囲として設定する、制御装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記プロセッサは、
前記第2範囲に基づいて、前記第2範囲を除く前記複数の範囲から第4範囲を選択し、
前記第4範囲に対する前記第1処理の認識結果に基づいて、前記第2範囲の認識結果の信頼度を判定する、制御装置。
【請求項5】
請求項に記載の制御装置であって、
前記プロセッサは、前記第4範囲の中に前記第1範囲が含まれる場合に、前記第2処理の認識結果の信頼度が閾値以上であると判定する、制御装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の制御装置であって、
前記第1センサは、レーダであり、
前記第2センサは、デジタルカメラであり、
前記プロセッサは、前記複数の範囲のうち、前記車両の左右方向における位置が前記第2範囲と同じ位置にあるすべての前記範囲を、前記第4範囲として選択する、制御装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記特定物体は、パイロンであり、
前記プロセッサは、前記第1範囲及び前記第2範囲を認識し、且つ、前記第1処理の認識結果の信頼度と前記第2処理の認識結果の信頼度が共に閾値以上である場合に、前記車両の周辺環境が、走行を制限される走行制限区間であると判定する、制御装置。
【請求項8】
請求項に記載の制御装置であって、
前記プロセッサは、前記周辺環境が前記走行制限区間であると判定した後は、前記第1処理によって前記第1範囲が認識されない第1状態と、前記第2処理によって前記第2範囲が認識されない第2状態と、のいずれか一方又は両方が継続された場合に、前記周辺環境が前記走行制限区間ではないと判定する、制御装置。
【請求項9】
請求項に記載の制御装置であって、
前記プロセッサは、
前記第1状態且つ前記第2状態の状態が、前記車両が第1距離を走行する期間にわたって継続する場合に、前記周辺環境が前記走行制限区間ではないと判定し、
前記第1状態と前記第2状態のいずれか一方のみの状態が、前記車両が第2距離を走行する期間にわたって継続する場合に、前記周辺環境が前記走行制限区間ではないと判定し、
前記第2距離は、前記第1距離よりも長い、制御装置。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記プロセッサは、
前記車両の車線変更制御を行い、
前記周辺環境が前記走行制限区間であると判定した場合には、前記車線変更制御を制限する、制御装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記車両の前後方向における前記周辺領域の幅は、前記車両の左右方向における前記周辺領域の幅よりも大きく設定され、
前記周辺領域における前記車両の位置が、前記前後方向における後ろ側に偏心した位置に設定される、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の自動運転及び運転支援の導入が急速に進んでいる。車両の自動運転及び運転支援の技術として、運転者が操舵等の操作を行わなくても車両が車線変更を行う自動車線変更(ALC:Auto Lane Changing)等の技術が開発されている。
【0003】
特許文献1には、自車両の周辺状態を認識する外界認識部と、前記外界認識部の認識結果に基づいて前記自車両が行うべき行動を判断する行動計画部と、前記行動計画部の判断結果に基づいて前記自車両の走行制御を行う車両制御部と、を備える車両制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-156192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、工事又は事故等によって車線規制がなされている区間等、道路において走行が制限される区間(本明細書では、この区間を走行制限区間と定義)を認識することは、車両の走行制御を行う際の安全性を高める上で重要である。
【0006】
本発明は、安全性の向上を図ることを目的としている。そして、延いては交通の安全性をより一層改善して持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の制御装置は、車両の走行制御を行う制御装置であって、前記車両の周辺にある物体を検出可能な第1種別の第1センサ及び第2種別の第2センサの出力情報を取得可能なプロセッサを備え、前記プロセッサは、前記車両の周辺領域に設定される複数の範囲のうち、特定物体を含む第1範囲を、前記第1センサの出力情報に基づいて認識する第1処理と、前記複数の範囲のうち、特定物体を含む第2範囲を、前記第2センサの出力情報に基づいて認識する第2処理と、を行い、前記第1範囲に基づいて、前記第1範囲を除く前記複数の範囲から第3範囲を選択し、前記第3範囲に対する前記第2処理の認識結果に基づいて、前記第1範囲の認識結果の信頼度を判定する、ものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】制御装置100を搭載した車両システム1の全体構成を示すブロック図である。
図2】車両システム1に含まれる車両Mの外観構成例を示す模式図である。
図3】第1制御部120及び第2制御部160の構成の一例を示す図である。
図4】運転モードの具体例を示す図である。
図5】車両Mの周辺のうち、認識部130によってパイロンの認識が可能な領域を模式的に示す図である。
図6】周辺領域DAの分割例を示す模式図である。
図7】第1範囲、第3範囲の例を示す模式図である。
図8】第2範囲、第4範囲の例を示す模式図である。
図9】制御装置100の動作を説明するためのフローチャートである。
図10図9のステップS8の処理が行われた後の制御装置100の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態である制御装置100を含む車両システム1について、図面を参照して説明する。図面は、符号の向きに見るものとする。本明細書では説明を簡単かつ明確にするために、前後、左右の各方向は、図2に示す車両Mの運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両Mの前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、として示す。
【0011】
<車両システム1の全体構成>
図1は、制御装置100を搭載した車両システム1の全体構成を示すブロック図である。図2は、車両システム1に含まれる車両Mの外観構成例を示す模式図である。車両Mは、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。図2では、車両Mが四輪車である例を示している。
【0012】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、運転者(ドライバ)モニタカメラ50と、ナビゲーション装置60と、MPU(Map Positioning Unit)70と、運転操作子80と、制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220と、を備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続されている。
【0013】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。例えば、図2に示すように、カメラ10は、車両Mの車室内におけるバックミラー(不図示)近傍、及び車両Mの車室外における右側ドア前部・左側ドア前部などに設けられる。カメラ10により撮像された車両Mの進行方向前方、右後側方、及び左後側方のそれぞれの画像情報(カメラ10の出力情報)は、制御装置100へ送られる。
【0014】
レーダ装置12は、車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射するとともに、物体で反射された電波(反射波)を検出して、物体における電波の反射点の分布情報(複数の反射点のそれぞれの距離と方位)を取得する。電波としては、レーザ、マイクロ波、ミリ波、超音波などを適宜用いることができる。レーダ装置12は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。例えば、図2に示すように、レーダ装置12は、前側に3つ、後側に2つの都合5つ設けられている。レーダ装置12の出力情報は、制御装置100へ送られる。
【0015】
LIDAR14は、車両Mの周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、物体の有無、及び物体までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザ光である。LIDAR14は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。例えば、図2に示すように、LIDAR14は、前側に2つ、後側に3つの都合5つ設けられている。LIDAR14の出力情報は、制御装置100へ送られる。
【0016】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi(登録商標)網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0017】
HMI30は、車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0018】
車両センサ40は、車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0019】
運転者モニタカメラ50は、例えば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子を利用したデジタルカメラである。運転者モニタカメラ50は、車両Mの運転席に着座した乗員(以下、運転者)の頭部を正面から(顔面を撮像する向きで)撮像可能な位置及び向きで、車両Mにおける任意の箇所に取り付けられる。
【0020】
ナビゲーション装置60は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機61と、ナビHMI62と、経路決定部63とを備える。ナビゲーション装置60は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報64を保持している。
【0021】
GNSS受信機61は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、車両Mの位置を特定する。車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定又は補完されてもよい。
【0022】
ナビHMI62は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI62は、前述したHMI30と一部又は全部が共通化されてもよい。
【0023】
経路決定部63は、例えば、GNSS受信機61により特定された車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI62を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報64を参照して決定する。第1地図情報64は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報64は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU70に出力される。
【0024】
ナビゲーション装置60は、地図上経路に基づいて、ナビHMI62を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置60は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0025】
MPU70は、例えば、推奨車線決定部71を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報72を保持している。推奨車線決定部71は、ナビゲーション装置60から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報72を参照してブロック毎に推奨車線を決定する。推奨車線決定部71は、例えば、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部71は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0026】
第2地図情報72は、第1地図情報64よりも高精度な地図情報である。第2地図情報72は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報72には、道路情報、交通規制情報、住所情報、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報72は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0027】
運転操作子80は、例えば、ステアリングホイール82の他、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ウインカー、その他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、及びステアリング装置220のうち一部又は全部に出力される。
【0028】
ステアリングホイール82は、必ずしも環状である必要は無く、異形ステアやジョイスティック、ボタンなどの形態であってもよい。ステアリングホイール82には、ステアリング把持センサ84が取り付けられている。ステアリング把持センサ84は、静電容量センサなどにより実現され、運転者がステアリングホイール82を把持しているか否かを検知可能な信号を制御装置100に出力する。
【0029】
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、このプロセッサの動作に必要な記憶媒体と、を少なくとも含む。このプロセッサが、記憶媒体に記憶されたプログラム実行することにより、第1制御部120及び第2制御部160として機能する。制御装置100は、単一のプロセッサによって処理を行うものに限らず、複数のプロセッサによって処理を分担して行うものであってもよい。
【0030】
<第1制御部120及び第2制御部160の構成>
図3は、第1制御部120及び第2制御部160の構成の一例を示す図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140と、モード決定部150と、を備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence:人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。
【0031】
例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
【0032】
認識部130は、例えば、車両Mが走行している走行環境を認識する。例えば、認識部130は、第2地図情報72から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、車両Mの走行車線を認識する。なお、認識部130は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置60から取得される車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部130は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識する。
【0033】
認識部130は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部130は、例えば、車両Mの基準点の車線中央からの乖離、及び車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する車両Mの相対位置及び姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部130は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線又は道路境界)に対する車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0034】
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、及びLIDAR14のうち一部又は全部の出力情報に基づいて、車両Mの周辺環境を認識する。例えば、認識部130は、車両Mの周辺にある物体の位置、及び物体の種別(動体か静止物か)等を認識する。物体の位置は、例えば、車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標(車両Mの代表点を通り且つ左右方向に平行なY軸(図6のY軸Ay)と、車両Mの代表点を通り且つ前後方向に平行なX軸(図6のX軸Ax)とで示されるXY平面)上の位置として認識され、各種の制御に使用される。
【0035】
車両Mの周辺にある物体としては、動体(周辺を走行する他車両等)と、静止物(植栽、壁、中央分離帯などの道路の境界を形成する物体、工事時や事故時に特有の設置物(コーン、ガードレール、看板、仮設信号機等)と、が挙げられる。この設置物には、道路において離散的に配置され得る特定物体(具体的にはパイロン)が含まれる。認識部130は、車両Mの周辺における特定物体の認識処理として、レーダ装置12の出力に基づいてパイロンを認識する第1処理と、カメラ10の出力情報に基づいてパイロンを認識する第2処理と、をそれぞれ行う。
【0036】
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、及びLIDAR14のうち一部又は全部の出力情報に基づいて、車両Mの周辺環境が走行制限区間であることを認識する処理を行う。“車両Mの周辺環境が走行制限区間である”とは、車両Mが走行制限区間を走行している状況、及び、車両Mの所定距離前方に走行制限区間が存在する状況のいずれかのことを言う。“車両Mの周辺環境が走行制限区間ではない”とは、車両Mが走行制限区間を走行しておらず、且つ、車両Mの前方に走行制限区間が存在していない状況のことを言う。
【0037】
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部71により決定された推奨車線を走行し、更に、車両Mの周辺状況に対応できるように、車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)毎の車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)毎の目標速度及び目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間毎の、そのサンプリング時刻における車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0038】
行動計画生成部140は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してもよい。自動運転のイベントには、定速走行イベント、低速追従走行イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベント、テイクオーバーイベントなどがある。行動計画生成部140は、起動させたイベントに応じた目標軌道を生成する。
【0039】
モード決定部150は、車両Mの運転モードを、運転者に課されるタスクが異なる複数の運転モードのいずれかに決定する。また、モード決定部150は、決定した運転モード(以下、現運転モード)のタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに車両Mの運転モードを変更する。モード決定部150は、車両Mの走行速度及び操舵の少なくともいずれかの制御の自動化モードを複数の運転モードの中から選択して設定する制御状態設定部の一例である。
【0040】
<運転モードの具体例>
図4は、運転モードの具体例を示す図である。車両Mの運転モードには、例えば、第1運転モードから第5運転モードの5つのモードがある。制御状態すなわち車両Mの運転制御の自動化度合いは、第1運転モードが最も高く、次いで第2運転モード、第3運転モード、第4運転モードの順に低くなり、第5運転モードが最も低い。この逆に、運転者に課されるタスクは、第1運転モードが最も軽度であり、次いで第2運転モード、第3運転モード、第4運転モードの順に重度となり、第5運転モードが最も重度である。なお、第1運転モード以外の運転モードでは自動運転でない制御状態となるため、制御装置100としては自動運転の制御を終了し、運転支援又は手動運転に移行させるまでが責務である。以下、それぞれの運転モードの内容について例示する。
【0041】
第1運転モードでは、自動運転の状態となり、運転者には、前方監視、ステアリングホイール82の把持のいずれも課されない。但し、第1運転モードであっても運転者は、制御装置100からの要求に応じて速やかに手動運転に移行できる体勢であることが要求される。なお、ここで言う自動運転とは、操舵、加減速のいずれも運転者の操作に依らずに制御されることをいう。前方とは、フロントウインドシールドを介して視認される車両Mの進行方向の空間を意味する。第1運転モードは、例えば、高速道路などの自動車専用道路において、所定速度以下(例えば60[km/h]程度)で車両Mが走行しており、追従対象の前走車両が存在するなどの条件が満たされる場合に実行可能な運転モードである。
【0042】
第2運転モードでは、運転支援の状態となり、運転者には、車両Mの前方を監視するタスク(以下、前方監視)が課されるが、ステアリングホイール82を把持するタスクは課されない。第3運転モードでは、運転支援の状態となり、運転者には前方監視のタスクと、ステアリングホイール82を把持するタスクが課される。第4運転モードは、車両Mの操舵と加減速のうち少なくとも一方に関して、ある程度の運転者による運転操作が必要な運転モードである。例えば、第4運転モードでは、ACC(Adaptive Cruise Control)やLKAS(Lane Keeping Assist System)といった運転支援が行われる。第5運転モードでは、操舵、加減速ともに運転者による運転操作が必要な手動運転の状態となる。第4運転モード、第5運転モードともに、当然ながら運転者には車両Mの前方を監視するタスクが課される。
【0043】
図3に戻り、第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに車両Mが通過するように制御する。第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166と、を備える。
【0044】
取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200(図1参照)又はブレーキ装置210(図1参照)を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220(図1参照)を制御する。速度制御部164及び操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。
【0045】
制御装置100において、行動計画生成部140と第2制御部160を合わせたものが走行制御部170を構成する。走行制御部170は、認識部130によって認識される車両Mの走行環境あるいは周辺環境等の認識結果に基づいて、車両Mにおける自動車線変更の制御を実行する。また、走行制御部170は、運転者による運転操作子80(例えばウインカーレバー)の操作に基づいて運転者の車線変更の意図を検出する。
【0046】
走行制御部170は、車両Mの運転者による関与の度合いが異なる複数の車線変更態様の中から1つの車線変更態様を選択し、選択された車線変更態様に従って走行制御(車線変更制御ともいう)を行う。車両Mの運転者による関与の度合いが異なる複数の車線変更態様とは、自動化度合いが異なる複数の車線変更態様ということもできる。運転者による関与の度合いが小さいほど自動化度合いが高く、運転者による関与の度合いが大きいほど自動化度合いが低い。
【0047】
例えば、複数の車線変更態様は、以下の3つの自動車線変更の態様を含んでもよい。1つ目の自動車線変更は、車両Mの運転者が自ら車線変更を意図し、車両Mの運転者が車線変更の開始を指示する意図自動車線変更(ALC-カテゴリC)である。意図自動車線変更においては、車両Mの運転者が、他車両の走行状況、目的地への経路等を考慮して、車線変更すべきであるかどうかを判定する。車両Mの運転者は、車線変更すべきである場合には、運転操作子80を操作することにより、車両Mに対して車線変更の開始の指示を与える。走行制御部170は、この指示に基づいて、周囲の走行状況を考慮しつつ、実行可能なタイミングで自動車線変更を開始する。
【0048】
2つ目の自動車線変更は、走行制御部170が車線変更を提案し、車両Mの運転者が車線変更を承認する提案自動車線変更で(ALC-カテゴリD)ある。提案自動車線変更においては、走行制御部170が、他車両の走行状況、目的地への経路等に基づいて、車線変更すべきであるかどうかを判定する。走行制御部170は、車線変更すべきである場合に、運転者に対して車線変更を提案する。車両Mの運転者は、車線変更の提案を承認する場合には、承認スイッチを操作することにより、車両Mに対して車線変更の開始の指示を与える。承認スイッチは、承認専用のスイッチでもよいし、他の機能を兼用する操作子(一例としては運転操作子80)でもよい。走行制御部170は、この指示に基づいて、周囲の走行状況を考慮しつつ、実行可能なタイミングで自動車線変更を開始する。したがって、運転者が車線変更の提案を承認しない場合、すなわち運転操作子80を操作しない場合には、自動車線変更は実行されない。
【0049】
3つ目の自動車線変更は、走行制御部170が車線変更を判断し、走行制御部170が車線変更の開始を決定する判断自動車線変更(ALC-カテゴリE)である。判断自動車線変更においては、走行制御部170が、他車両の走行状況、目的地への経路等に基づいて、車線変更すべきであるかどうかを判定する。走行制御部170は、車線変更すべきである場合には、周囲の走行状況を考慮して、実行可能なタイミングで自動車線変更を開始する。判断自動車線変更の場合、車両Mの運転者は、当該車線変更へ関与しない。
【0050】
制御装置100は、運転モードに応じた自動車線変更を実行する。例えば、制御装置100は、第1運転モードにおいて、判断自動車線変更を実行し得る。制御装置100は、第2運転モード、第3運転モード、及び第4運転モードにおいて、提案自動車線変更を実行し得る。制御装置100は、第3運転モード、及び第4運転モードにおいて、意図自動車線変更を実行し得る。制御装置100は、第5運転モードにおいて、いずれの自動車線変更も実行しない。
【0051】
図1に戻り、走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、及び変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成要素を制御する。
【0052】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。
【0053】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0054】
<パイロンを含む範囲の認識処理>
図5は、車両Mの周辺のうち、認識部130によってパイロンの認識が可能な領域を模式的に示す図である。図5には、カメラ10によって物体を検出可能な範囲10Aと、レーダ装置12によって物体を検出可能な範囲12Aとが示されている。認識部130は、例えば、範囲12Aに内包され且つ範囲10Aの一部と重複する領域であって、カメラ10及びレーダ装置12による物体の検出分解能が十分に高くなる周辺領域DAを、パイロンの認識対象領域として設定している。周辺領域DAは、前後方向の幅が左右方向の幅よりも大きく設定されている。また、周辺領域DAは、車両Mの位置が、前後方向における後側に偏心した位置となるように設定されている。つまり、周辺領域DAは、車両Mの位置よりも前側の前後方向の幅が、車両Mの位置よりも後側の前後方向の幅よりも大きくなっている。
【0055】
認識部130は、この周辺領域DAを複数の範囲に分割して管理する。図6は、周辺領域DAの分割例を示す模式図である。図6に示す例では、周辺領域DAが、左右方向に7分割され且つ前後方向に18分割されて、126個の範囲AR(図中の左右方向に細長い矩形)に分割されている。以下では、特定の範囲ARを他と区別する場合には、この範囲ARを範囲AR*(*は任意の数字)と記載する。各範囲ARの位置(中心位置)は、XY平面上の座標として表現される。図6中の範囲AR1は、車両Mを含む範囲を示しており、範囲AR1の位置は、車両Mの位置に一致する。
【0056】
認識部130は、周辺領域DAにおけるレーダ装置12の出力情報を取得し、この出力情報に基づいてパイロンの位置及び方位を認識して、周辺領域DAを構成する範囲ARのうち、パイロンを含む範囲AR(以下、第1範囲と記載)を認識する第1処理を行う。図7には、第1処理により、範囲AR121から範囲AR126の6つが第1範囲として認識された例を示している。
【0057】
また、認識部130は、周辺領域DAにおけるカメラ10の出力情報を取得し、この出力情報に基づいてパイロンの位置及び方位を認識して、周辺領域DAを構成する範囲ARのうち、パイロンを含む範囲AR(以下、第2範囲と記載)を認識する第2処理を行う。図8には、第2処理により、範囲AR10と範囲AR11がそれぞれ第2範囲として認識された例を示している。
【0058】
<第1処理の認識結果の信頼度の判定>
認識部130は、第1範囲を認識した場合には、この第1範囲の位置に基づいて、周辺領域DAのうちの第1範囲を除く残りの範囲ARから、少なくとも1つの範囲ARを、第3範囲として選択する。具体的には、認識部130は、第1範囲と少なくとも隣接する範囲ARを選択する。
【0059】
例えば、認識部130は、左右方向の位置が同じであり、且つ、前後方向に1つ又は2つの範囲ARを挟んで並ぶ2つの第1範囲がある場合には、これら2つの第1範囲の間の全ての範囲ARを第3範囲として選択する。図7の例では、範囲AR121と範囲AR122の間の範囲AR、範囲AR123と範囲AR124の間の2つの範囲AR、及び範囲AR125と範囲AR126の間の範囲AR(これらを纏めて、範囲AR121aと図示)が、第3範囲として選択される。
【0060】
また、認識部130は、左右方向で位置が隣接しており、且つ、前後方向の距離が1つの範囲AR分又は2つの範囲AR分離れている2つの第1範囲がある場合には、この2つの第1範囲で囲まれる範囲ARを第3範囲として選択する。図7の例では、左右方向で位置が隣接しており、且つ、前後方向の距離が1つの範囲AR分離れている第1範囲として、範囲AR122と範囲AR123が存在する。したがって、範囲AR122と範囲AR123で囲まれる4つの範囲AR(これらを纏めて範囲AR121bと図示)が、第3範囲として選択される。
【0061】
更に、認識部130は、第1範囲と、ここまでで選択済みの範囲ARと、を除く残りの範囲ARのうち、第1範囲と選択済みの範囲ARのそれぞれの左右方向に隣接する範囲ARを第3範囲として選択する。図7の例では、範囲AR121から範囲AR126、範囲AR121a、及び範囲AR121bのそれぞれの左右方向に隣接する範囲AR(これらを纏めて範囲AR121cと図示)が、第3範囲として選択される。
【0062】
なお、第3範囲の選択方法は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、認識部130は、各第1範囲の左右方向に隣接する範囲ARを少なくとも第3範囲として選択したり、各第1範囲の左右方向及び前後方向に隣接する範囲ARを少なくとも第3範囲として選択したり、各第1範囲に隣接する全ての範囲ARを少なくとも第3範囲として選択したり、してもよい。
【0063】
認識部130は、第3範囲の選択を完了すると、第2処理の結果を取得し、全ての第3範囲の中に、第2処理によってパイロンを含む第2範囲として認識したものがあるか否かを判定する処理を行う。認識部130は、この処理において、判定の結果がYESであれば、第1範囲の認識結果の信頼度が閾値以上であると判定し、判定の結果がNOであれば、第1範囲の認識結果の信頼度が閾値未満であると判定する。つまり、認識部130は、第1範囲の認識結果(その第1範囲にパイロンを含むとした認識結果)の信頼度を、その第1範囲に隣接する第3範囲に対する第2処理の認識結果(その第3範囲にパイロンを含むか否か)に基づいて判定する。
【0064】
図7の例では、認識部130は、例えば、範囲AR121に隣接する5つの第3範囲の中に第2範囲として認識したものが含まれていれば、範囲AR121~AR125を第1範囲として認識した認識結果の信頼度が閾値以上であると判定し、すべての第3範囲に第2範囲として認識したものが含まれていなければ、範囲AR121~AR125を第1範囲として認識した第1処理の認識結果の信頼度が閾値未満であると判定する。
【0065】
このように、第1処理によって第1範囲を認識した場合であっても、その第1範囲の認識結果の信頼度を、その第1範囲の周囲から選択した第3範囲に対する第2処理の識別結果によって判断できる。このため、第1センサの誤差等で第1範囲が誤って認識されていた場合でも、この結果を採用せずにすむようになる。したがって、第1処理の識別結果を後の制御で用いる場合に、その制御の精度を向上させることができる。
【0066】
<第2処理の認識結果の信頼度の判定>
認識部130は、第1処理の認識結果の信頼度の判定だけでなく、第2処理の認識結果の信頼度の判定も行う。認識部130は、第2範囲を認識した場合には、この第2範囲の位置に基づいて、周辺領域DAのうちの第2範囲を除く残りの範囲ARから、少なくとも1つの範囲ARを、第4範囲として選択する。具体的には、認識部130は、第2範囲と少なくとも隣接する範囲ARを第4範囲として選択する。好ましくは、認識部130は、第2範囲と少なくとも前後方向に隣接する範囲ARを第4範囲として選択する。
【0067】
例えば、認識部130は、範囲ARのうち、第2範囲と左右方向の位置が同じものすべてを第4範囲として選択する。図8の例では、左右方向における位置が範囲AR10と同じである17個の範囲AR10aが、第4範囲として選択され、左右方向における位置が範囲AR11と同じである17個の範囲AR11aが、第4範囲として選択される。
【0068】
認識部130は、第4範囲の選択を完了すると、第1処理の結果を取得し、全ての第4範囲の中に、第1処理により第1範囲として認識したものがあるか否かを判定する。認識部130は、この判定の結果がYESであれば、第2範囲の認識結果の信頼度が閾値以上であると判定し、この判定の結果がNOであれば、第2範囲の認識結果の信頼度が閾値未満であると判定する。つまり、認識部130は、第2範囲の認識結果(その第2範囲にパイロンを含むとした認識結果)の信頼度を、その第2範囲と左右方向の位置が同じ第4範囲に対する第1処理の認識結果(その第4範囲にパイロンを含むか否か)に基づいて判定する。
【0069】
図8の例では、認識部130は、範囲AR10aと範囲AR11aの中に、第1範囲として認識したものが含まれていれば、範囲AR10、AR11を第2範囲として認識した第2処理の認識結果の信頼度が閾値以上であると判定し、範囲AR10aと範囲AR11aの中に第1範囲が含まれていなければ、範囲AR10、AR11を第2範囲として認識した第2処理の認識結果の信頼度が閾値未満であると判定する。
【0070】
このように、第2処理によって第2範囲を認識した場合であっても、その第2範囲の認識結果の信頼度を、その第2範囲の周囲から選択した第4範囲に対する第1処理の識別結果によって判断できる。このため、第2センサの誤差等で第2範囲が誤って認識されていた場合でも、この結果を採用せずにすむようになる。したがって、第2処理の識別結果を後の制御で用いる場合に、その制御の精度を向上させることができる。
【0071】
<走行制限区間の認識処理>
認識部130は、第1範囲及び第2範囲を認識し、第1処理の認識結果の信頼度と第2処理の認識結果の信頼度が共に閾値以上である場合に、車両Mの周辺環境が走行制限区間であると認識する。このように、第1処理と第2処理の結果の信頼度がいずれも高い場合に、車両Mの周辺環境が走行制限区間であると認識することで、走行制限区間の認識を高精度に行うことができる。
【0072】
なお、認識部130は、第1範囲と第2範囲の両方を認識している場合には、第1範囲と第2範囲のいずれかの認識結果の信頼度が閾値以上である場合に、車両Mの周辺環境が走行制限区間であると認識してもよい。このようにしても、カメラ10やレーダ装置12の誤差の影響を排除して、走行制限区間の認識を高精度に行うことは可能である。
【0073】
認識部130によって走行環境が走行制限区間であると認識された場合には、走行制御部170が、車両Mの走行制御を制限することが好ましい。具体的には、走行制御部170は、車線変更制御を制限する。車線変更制御の制限とは、車線変更制御を禁止したり、車線変更制御を実行するものの車線変更態様の一部を禁止したり、することを言う。このように、車両Mが走行制限区間を走行している状況や、車両Mが走行制限区間に近づいている状況では、制御装置100による車線変更制御を制限することで、車両Mを安全に走行させることが可能となる。
【0074】
以下、制御装置100の動作を、フローチャートを参照して説明する。図9は、制御装置100の動作を説明するためのフローチャートである。図9に示す処理は、例えば、図4に示した第1運転モードから第4運転モードのいずれかの実行中に行われる。
【0075】
認識部130は、レーダ装置12の出力情報を取得すると、この出力情報に基づいて、周辺領域DAを構成する全ての範囲ARのうち、パイロンを含む第1範囲を認識する第1処理を実行する(ステップS1)。
【0076】
また、認識部130は、カメラ10の出力情報を取得すると、この出力情報に基づいて、周辺領域DAを構成する全ての範囲ARのうち、パイロンを含む第2範囲を認識する第2処理を実行する(ステップS2)。
【0077】
認識部130は、ステップS1にて第1範囲を認識した場合(ステップS3:YES)には、その認識した第1範囲に基づいて、その第1範囲の周囲に、第3範囲を設定する(ステップS4)。認識部130は、ステップS1にて第1範囲を認識しなかった場合(ステップS3:NO)には、走行環境が走行制限区間ではないと判定し(ステップS9)、処理を終了する。
【0078】
認識部130は、ステップS3の判定がYESであった場合には、ステップS2にて第2範囲を認識していれば(ステップS5:YES)、その認識した第2範囲に基づいて、その第2範囲の周囲に、第4範囲を設定する(ステップS6)。認識部130は、ステップS2にて第2範囲を認識しなかった場合(ステップS5:NO)には、走行環境が走行制限区間ではないと判定し(ステップS9)、処理を終了する。
【0079】
ステップS6の後、認識部130は、第3範囲の中に第2範囲として認識されたものがあり、且つ、第4範囲の中に第1範囲として認識されたものがあるかを判定する(ステップS7)。認識部130は、ステップS7の判定がYESであれば、走行環境が走行制限区間であると判定し、走行制御部170による車線変更制御を禁止して(ステップS8)、処理を終了する。認識部130は、ステップS7の判定がNOの場合には、ステップS9の処理を行う。以上の処理が、ステップS8の処理が行われるまで繰り返される。
【0080】
図10は、図9のステップS8の処理が行われた後の制御装置100の動作を説明するためのフローチャートである。
【0081】
認識部130は、第1処理によって第1範囲が認識されていない第1状態と、第2処理によって第2範囲が認識されない第2状態と、の両方の状態であった場合(ステップS11:YES)には、車両Mの走行距離のカウントを開始し、ステップS12において、走行距離が閾値TH1に達したか否かを判定する(ステップS12)。認識部130は、ステップS12の判定がNOの場合には、ステップS11に処理を戻し、ステップS12の判定がYESの場合には、走行環境が走行制限区間ではないと判定して(ステップS13)、図9に示す処理へと復帰する。
【0082】
認識部130は、ステップS11の判定がYESの場合、つまり、第1処理と第2処理の少なくとも一方でパイロンが認識されている場合には、走行距離のカウント値を初期値に戻し、第1処理と第2処理のうち、第2処理のみでパイロンが認識されている状態か否かを判定する(ステップS14)。認識部130は、ステップS14の判定がYESの場合には、車両Mの走行距離のカウントを開始し、走行距離が閾値TH2に達したか否かを判定する(ステップS15)。認識部130は、ステップS15の判定がNOの場合には、ステップS14に処理を戻し、ステップS15の判定がYESの場合には、走行環境が走行制限区間ではないと判定して(ステップS13)、図9に示す処理へと復帰する。
【0083】
認識部130は、ステップS14の判定がNOの場合には、走行距離のカウント値を初期値に戻し、第1処理のみによってパイロンが認識されている状態か否かを判定する(ステップS16)。認識部130は、ステップS16の判定がYESの場合には、車両Mの走行距離のカウントを開始し、走行距離が閾値TH3に達したか否かを判定する(ステップS17)。認識部130は、ステップS17の判定がNOの場合には、ステップS16に処理を戻し、ステップS17の判定がYESの場合には、走行環境が走行制限区間ではないと判定して(ステップS13)、図9に示す処理へと復帰する。認識部130は、ステップS16の判定がNOの場合、つまり、第1状態と第2状態のいずれでもない場合(第1処理と第2処理の双方でパイロンが認識されている場合)には、走行距離のカウント値を初期値に戻し、ステップS11に処理を戻す。閾値TH2及び閾値TH3は、閾値TH1よりも大きい値である。また、閾値TH2は、閾値TH3よりも大きい値である。
【0084】
このように、認識部130は、周辺環境が走行制限区間であると判定した後は、第1処理によって第1範囲が認識されない第1状態と、第2処理によって第2範囲が認識されない第2状態と、のいずれか一方又は両方が継続された場合に、周辺環境が走行制限区間ではないと判定する。このため、一度、走行制限区間であると判定してからは、走行制限区間ではないと判定するまでに複雑な処理が不要となるため、処理負荷を軽減できる。
【0085】
また、第1状態且つ第2状態の状態が継続するということは、車両Mの周辺には、高い確度でパイロンが存在しないことを意味する。このため、この場合には、早めに走行制限区間ではないと判定することで、車線変更制御の禁止を早期に解除することができる。一方、第1状態と第2状態のどちらかのみが継続するということは、車両Mの周辺にパイロンが存在する可能性があることを意味する。このため、この場合には、走行制限区間ではないと判定するまでの時間を長くすることで、車線変更制御を適切に禁止して、安全性を高めることができる。
【0086】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0087】
(1)
車両(車両M)の走行制御を行う制御装置(制御装置100)であって、
上記車両の周辺にある物体を検出可能な第1種別の第1センサ(レーダ装置12)及び第2種別の第2センサ(カメラ10)の出力情報を取得可能なプロセッサを備え、
上記プロセッサは、
上記車両の周辺領域(周辺領域DA)に設定される複数の範囲(範囲AR)のうち、特定物体(パイロン)を含む第1範囲(範囲AR121から範囲AR126)を、上記第1センサの出力情報に基づいて認識する第1処理と、上記複数の範囲のうち、特定物体を含む第2範囲(範囲AR10、範囲AR11)を、上記第2センサの出力情報に基づいて認識する第2処理と、を行い、
上記第1範囲に基づいて、上記第1範囲を除く上記複数の範囲から第3範囲(範囲AR121a、範囲AR121b、範囲AR121c)を選択し、
上記第3範囲に対する上記第2処理の認識結果に基づいて、上記第1範囲の認識結果の信頼度を判定する、制御装置。
【0088】
(1)によれば、第1センサの誤差等によって第1処理の認識結果の精度が低くなっていた場合でも、第2処理の認識結果によって、この第1処理の認識結果の信頼性を判断して、第1処理の認識結果を後の処理に利用したり、或いは、利用しないようにしたりできる。したがって、特定物体の認識結果に基づいて行われる各種の制御の精度を高めることができる。
【0089】
(2)
(1)に記載の制御装置であって、
上記プロセッサは、上記第3範囲の中に上記第2範囲が含まれる場合(例えば範囲AR121に隣接する範囲AR121cが第2範囲と認識されている場合)に、上記第1処理の認識結果(範囲AR121~AR125がパイロンを含む範囲であるとする認識結果)の信頼度が閾値以上であると判定する、制御装置。
【0090】
(2)によれば、例えば第1範囲に近接する第3範囲において、第2処理により、特定物体があるとの認識がなされていれば、第1処理の認識結果の信頼性は高いと判断できるため、信頼性が閾値以上であると判定される。したがって、第1処理の認識結果に基づいて行われる各種の制御の精度を高めることができる。
【0091】
(3)
(1)又は(2)に記載の制御装置であって、
上記プロセッサは、上記複数の範囲における上記第1範囲に少なくとも隣接する上記範囲を、上記第3範囲として設定する、制御装置。
【0092】
(3)によれば、第1処理の認識結果の信頼性の判定を高精度に行うことができる。
【0093】
(4)
(3)に記載の制御装置であって、
上記プロセッサは、上記車両の左右方向における位置が同じとなる2つの上記第1範囲がある場合には、上記2つの上記第1範囲の間の上記範囲を、上記第3範囲として設定する、制御装置。
【0094】
(4)によれば、第1処理の認識結果の信頼性の判定を高精度に行うことができる。
【0095】
(5)
(3)又は(4)に記載の制御装置であって、
上記プロセッサは、上記車両の左右方向において、上記第1範囲の両隣にある上記範囲を上記第3範囲として設定する、制御装置。
【0096】
(5)によれば、第1処理の認識結果の信頼性の判定を高精度に行うことができる。
【0097】
(6)
(1)から(5)のいずれかに記載の制御装置であって、
上記プロセッサは、
上記第2範囲に基づいて、上記第2範囲を除く上記複数の範囲から第4範囲(範囲AR10a、範囲AR11a)を選択し、
上記第4範囲に対する上記第1処理の認識結果に基づいて、上記第2範囲の認識結果の信頼度を判定する、制御装置。
【0098】
(6)によれば、第2センサの誤差等によって第2処理の認識結果の精度が低くなっていた場合でも、第1処理の認識結果によって、この第2処理の認識結果の信頼性を判断して、第2処理の認識結果を後の処理に利用したり、或いは、利用しないようにしたりできる。したがって、特定物体の認識結果に基づいて行われる各種の制御の精度を高めることができる。
【0099】
(7)
(6)に記載の制御装置であって、
上記プロセッサは、上記第4範囲の中に上記第1範囲が含まれる場合(例えば範囲AR10に隣接する範囲AR10aが第1範囲と認識されている場合)に、上記第2処理の認識結果(範囲AR10、AR11がパイロンを含む範囲であるとする認識結果)の信頼度が閾値以上であると判定する、制御装置。
【0100】
(7)によれば、例えば第2範囲に近接する第4範囲において特定物体があるとの認識がなされていれば、第2処理の認識結果の信頼性は高いと判断できるため、信頼性が閾値以上であると判定される。したがって、第2処理の認識結果に基づいて行われる各種の制御の精度を高めることができる。
【0101】
(8)
(6)又は(7)に記載の制御装置であって、
上記第1センサは、レーダであり、
上記第2センサは、デジタルカメラであり、
上記プロセッサは、上記複数の範囲のうち、上記車両の左右方向における位置が上記第2範囲と同じ位置にあるすべての上記範囲(範囲AR10a、範囲AR11a)を、上記第4範囲として選択する、制御装置。
【0102】
カメラによる前後方向の撮影可能範囲は、レーダによる前後方向の検出可能範囲よりも狭い傾向にある。(8)によれば、カメラの出力に基づいて認識した第2範囲に対して、前後方向にある範囲を第4範囲として選択することで、カメラの検出不能範囲をレーダによって補って、第2範囲の認識結果の信頼度の判定を行うことができ、信頼度の判定を高精度に行うことができる。
【0103】
(9)
(6)から(8)のいずれかに記載の制御装置であって、
上記特定物体は、パイロンであり、
上記プロセッサは、上記第1範囲及び上記第2範囲を認識し、且つ、上記第1処理の認識結果の信頼度と上記第2処理の認識結果の信頼度が共に閾値以上である場合に、上記車両の周辺環境が、走行を制限される走行制限区間であると判定する、制御装置。
【0104】
(9)によれば、第1処理と第2処理の両方で特定物体が認識され、それぞれの認識結果の信頼度が高い場合に、走行制限区間であると判定される。このため、走行制限区間であるか否かの判定を高精度に行うことができる。
【0105】
(10)
(9)に記載の制御装置であって、
上記プロセッサは、上記周辺環境が上記走行制限区間であると判定した後は、上記第1処理によって上記第1範囲が認識されない第1状態と、上記第2処理によって上記第2範囲が認識されない第2状態と、のいずれか一方又は両方が継続された場合に、上記周辺環境が上記走行制限区間ではないと判定する、制御装置。
【0106】
(10)によれば、一度、走行制限区間であると判定してからは、走行制限区間ではないと判定するまでに複雑な処理が不要となるため、処理負荷を軽減できる。
【0107】
(11)
(10)に記載の制御装置であって、
上記プロセッサは、
上記第1状態且つ上記第2状態の状態が、上記車両が第1距離(閾値TH1)を走行する期間にわたって継続する場合に、上記周辺環境が上記走行制限区間ではないと判定し、
上記第1状態と上記第2状態のいずれか一方のみの状態が、上記車両が第2距離(閾値TH2、閾値TH3)を走行する期間にわたって継続する場合に、上記周辺環境が上記走行制限区間ではないと判定し、
上記第2距離は、上記第1距離よりも長い、制御装置。
【0108】
(11)によれば、第1状態且つ第2状態の状態が継続するということは、車両の周辺には、高い確度で特定物体が存在しないことを意味する。このため、この場合には、早めに走行制限区間ではないと判定することで、例えば走行制限区間において制限していた機能を早期に復帰させることができる。一方、第1状態と第2状態のどちらかのみが継続するということは、車両の周辺に特定物体が存在する可能性があることを意味する。このため、この場合には、走行制限区間ではないと判定するまでの時間を長くすることで、例えば走行制限区間において制限していた機能を継続させることができる。
【0109】
(12)
(9)から(11)のいずれかに記載の制御装置であって、
上記プロセッサは、
上記車両の車線変更制御を行い、
上記周辺環境が上記走行制限区間であると判定した場合には、上記車線変更制御を制限する、制御装置。
【0110】
(12)によれば、走行制限区間において車線変更が制限されるため、安全性を向上させることができる。
【0111】
(13)
(1)から(12)のいずれかに記載の制御装置であって、
上記車両の前後方向における上記周辺領域の幅は、上記車両の左右方向における上記周辺領域の幅よりも大きく設定され、
上記周辺領域における上記車両の位置が、上記前後方向における後ろ側に偏心した位置に設定される、制御装置。
【符号の説明】
【0112】
100 制御装置
10 カメラ
12 レーダ装置
M 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10