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特許7398508カラムのバックフラッシュを有するLCシステムおよび方法
<図1A>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】カラムのバックフラッシュを有するLCシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/40 20060101AFI20231207BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20231207BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G01N30/40
G01N30/26 M
G01N30/86 V
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022074810
(22)【出願日】2022-04-28
(65)【公開番号】P2022171634
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】21171685.7
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ライネンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】アールト ピートル ファン ドールン
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/116544(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0305228(US,A1)
【文献】国際公開第00/045929(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
B01J 20/281-20/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体クロマトグラフィ(LC)システム(100)であって、
高速トラップおよび溶出LCカラムとは区別される少なくとも1つのHPLCカラムを備える複数の流体流(11、12、13)と、
前記複数の流体流(11、12、13)に接続され、弁-検出器導管(30)を介して検出器(60)に接続可能な下流弁(20)であって、前記複数の流体流(11、12、13)が、前記下流弁(20)を介して前記弁-検出器導管(30)に交互に接続可能である、下流弁(20)と
を備え、
前記LCシステム(100)が、前記少なくとも1つのHPLCカラムをバックフラッシュし、それにより洗浄するために、前記下流弁(20)に流体的に接続され、前記下流弁(20)を介して前記複数の流体流(11、12、13)に交互に接続可能な下流ポンプ(40)であって、前記弁-検出器導管(30)を洗浄するために、前記下流弁(20)を介して前記弁-検出器導管(30)にも接続可能な下流ポンプ(40)をさらに備え
前記下流ポンプ(40)が、後続の流体流からの液体が前記弁-検出器導管(30)に入る前に以前の流体流からの液体を前記弁-検出器導管(30)から洗浄するために、2つの連続する流体流の間で前記弁-検出器導管(30)に接続するように構成され、
前記下流ポンプ(40)が、洗浄選択弁(70)を介して前記下流弁(20)に接続され、前記洗浄選択弁(70)が、前記下流弁(20)を介して前記複数の流体流(11、12、13)のいずれか1つおよび前記弁-検出器導管(30)に交互に接続するように構成されてい
ことを特徴とする、LCシステム(100)。
【請求項2】
前記洗浄選択弁(70)が、前記下流弁(20)に流体的に接続されるそれぞれの三方弁(16、17、18)を介して前記複数の流体流(11、12、13)に接続可能であり、前記三方弁(16、17、18)が、洗浄選択弁入口ポートと、下流弁出口ポートと、廃棄物出口ポートとを備える、請求項に記載のLCシステム(100)。
【請求項3】
一定間隔で、および/または前記複数の流体流中の所定の閾値を超える圧力上昇の検出時、および/または所定の閾値を下回る前記少なくとも1つのHPLCカラムの性能低下の検出時に、前記少なくとも1つのHPLCカラムを自動的にバックフラッシュするように構成されたコントローラ(90)を備える、請求項1または2に記載のLCシステム(100)。
【請求項4】
前記コントローラ(90)が、前記下流弁(20)、前記洗浄選択弁(70)、前記三方弁(16、17、18)のうちのいずれか1つまたは複数の切り替えを制御することによって、前記流体流(11、12、13)と前記弁-検出器導管(30)との間の接続時間である流体流-検出器間接続時間、前記下流ポンプ(40)と前記弁-検出器導管(30)との間の接続時間である下流ポンプ-検出器間接続時間、および前記流体流(11、12、13)と前記下流ポンプ(40)との間の接続時間である下流ポンプ-流体流間接続時間を管理するようにさらに構成されている、請求項2に従属する請求項に記載のLCシステム(100)。
【請求項5】
弁-検出器導管(30)を介して複数の流体流(11、12、13)を検出器(60)に交互に接続するために、高速トラップおよび溶出LCカラムとは区別される少なくとも1つのHPLCカラムを備える前記複数の流体流(11、12、13)を下流弁(20)に流体的に接続することを含む自動化されたLC方法であって、
前記少なくとも1つのHPLCカラムをバックフラッシュし、それにより洗浄するために、前記下流弁(20)を介して下流ポンプ(40)を前記複数の流体流(11、12、13)に、および、前記弁-検出器導管(30)を洗浄するために、前記下流弁(20)を介して前記下流ポンプ(40)を前記弁-検出器導管(30)に流体的に交互に接続することと、
後続の流体流からの液体が前記弁-検出器導管(30)に入る前に以前の流体流からの液体を前記弁-検出器導管(30)から洗浄するために、2つの連続する流体流の間で前記下流ポンプ(40)を前記弁-検出器導管(30)に接続することと、
洗浄選択弁(70)を介して前記下流ポンプ(40)を前記下流弁(20)に接続することと、前記下流弁(20)を介して前記複数の流体流(11、12、13)のいずれか1つおよび前記弁-検出器導管(30)に前記洗浄選択弁(70)を交互に接続することと
をさらに含む、LC方法。
【請求項6】
前記下流弁(20)に流体的に接続されたそれぞれの三方弁(16、17、18)を介して前記洗浄選択弁(70)を前記複数の流体流(11、12、13)に接続することを含み、前記三方弁(16、17、18)が、洗浄選択弁入口ポートと、下流弁出口ポートと、廃棄物出口ポートとを備える、請求項に記載のLC方法。
【請求項7】
一定間隔で、および/または前記複数の流体流(11、12、13)中の所定の閾値を超える圧力上昇の検出時、および/または所定の閾値を下回る前記少なくとも1つのHPLCカラムの性能低下の検出時に、前記少なくとも1つのHPLCカラムを自動的にバックフラッシュすることを含む、請求項5または6に記載のLC方法。
【請求項8】
コントローラ(90)によって、前記下流弁(20)、前記洗浄選択弁(70)、前記三方弁(16、17、18)のうちのいずれか1つまたは複数の切り替えを制御することによって、前記流体流(11、12、13)と前記弁-検出器導管(30)との間の接続時間である流体流-検出器間接続時間、前記下流ポンプ(40)と前記弁-検出器導管(30)との間の接続時間である下流ポンプ-検出器間接続時間、および前記流体流(11、12、13)と前記下流ポンプ(40)との間の接続時間である下流ポンプ-流体流間接続時間を自動的に管理することを含む、請求項に記載のLC方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体クロマトグラフィカラムのバックフラッシュを含む自動液体クロマトグラフィシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動化されたインビトロ診断分析器は、臨床検査室および病院環境において一般的である。これらの装置は、機能の追加および試料スループットの増加により、ますます複雑になっている。その結果、多数の装置構成要素においてエラーおよび誤動作が発生する可能性があり、分析器の生産性の低下および/または信頼性の低い測定結果の可能性が高まる。特に、質量分析、より具体的には、インビトロ診断用途のための臨床検査室での質量分析に結合された液体クロマトグラフィ(LC)の実装に対する関心が高まっており、これは、自動化に関してさらなるレベルの複雑さおよび技術的課題をもたらす。
【0003】
システムのいくつかの構成要素、特にLCシステムに課される激しい作業負荷は、頻繁な保守手順を必要とする場合がある。
【0004】
特に、HPLCカラムは、試料注入の回数が増加するにつれて、その性能の連続的な劣化を受ける場合があり、例えば、バックグラウンドの増加、保持時間のシフト、カラム寿命の短縮、コストの増加、および頻繁な保守の必要性をもたらし、これは主にカラムヘッドにおける粒子の蓄積に起因する。
【0005】
HPLCカラムをバックフラッシュすることは、より高い試料スループット、より長い稼働時間、より少ない保守、より低いコスト、より高いデータ品質、およびより長い持続する較正を提供することができる。これは、典型的には、カラムを流れシステムから手動で切り離し、カラムを通る流れ方向を逆にするなどのためにカラムの出口側を流れ入口に再接続することによって行われるが、カラムからの流れは、典型的には、検出器を汚染しないために廃棄物に向けられる。この手動手順は、カラムが正しい流れ方向で元の向きに再接続され、続いて再平衡化および品質管理が行われる前に、各カラムに対して15~20分以上かかる場合がある。
【0006】
この手動手順は、手間がかかり、時間がかかり、外部サービス担当者または熟練した検査室担当者の介入を必要とする可能性があり、その間、分析器またはその構成要素は、追加のコストを発生させ、エラーおよび誤動作、さらにはシステム損傷のリスクをもたらすことに加えて、使用のために利用できない可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態が従来技術に勝るある自明でない利点および進歩を提供することは上記を背景にしている。特に、本発明者らは、カラムバックフラッシュを含むLCシステムおよび方法の改善の必要性を認識している。
【0008】
本開示の実施形態は、特定の利点または機能性に限定されないが、本開示は、他の機能の中でも自動HPLCカラムバックフラッシュを可能にし、それによって手動の介入なしに、したがってユーザの利便性を向上させながら、システムの継続的な分析性能およびHPLCカラム寿命の延長を保証するLCシステムおよび方法を提供することに留意されたい。他の利点は、システムのダウンタイムが最小限に抑えられ、コストが削減され、エラー、誤動作、およびシステム損傷のリスクが排除されることである。
【0009】
特に、本明細書に開示される液体クロマトグラフィ(LC)システムは、少なくとも1つのHPLCカラムと、少なくとも1つの流体流に接続され、弁-検出器導管を介して検出器に接続可能な下流弁とを備える少なくとも1つの流体流を備え、少なくとも1つの流体流は、下流弁を介して弁-検出器導管に接続可能である。LCシステムは、少なくとも1つのHPLCカラムをバックフラッシュし、それにより洗浄するために、下流弁に流体的に接続され、下流弁を介して少なくとも1つの流体流に接続可能な下流ポンプをさらに備える。
【0010】
「液体クロマトグラフィまたはLC」は、例えば、後続の検出、例えば、質量分析検出に依然として干渉する場合がある、マトリックス成分、例えば、試料調製後の残留マトリックス成分から関心の被分析物を分離するために、および/または、それらの個々の検出を可能にするために関心の被分析物を互いから分離するために、試料注入器によって注入される試料に、LCカラムを通してクロマトグラフ分離を受けさせる分析プロセスである。「高性能液体クロマトグラフィ」またはHPLC、「超高性能液体クロマトグラフィ」またはUHPLC、「マイクロ液体クロマトグラフィ」またはμLCおよび「スモールボア液体クロマトグラフィ」またはスモールボアLCは、所定の圧力下で実施される液体クロマトグラフィの形態である。
【0011】
「液体クロマトグラフィシステムまたはLCシステム」は、液体クロマトグラフィを実施するための分析装置またはモジュールあるいは分析装置内のユニットである。LCシステムは、1つの流体流を有する単一チャネルとして、または並列および/または直列に配置された1つ以上のLCカラムを備える複数の流体流を有するマルチチャネルシステムとして具体化されることができる。LCシステムはまた、試料用注入器、バルブ、液体源、流体接続部および部品(例えば、液体の混合、液体の脱気、液体の焼き戻しなどのため)、圧力センサおよび温度センサなどの1つ以上のセンサ、ならびに特に少なくとも1つのLCポンプなどの要素を備えてもよい。この列挙は徹底的なものではない。
【0012】
実施形態によれば、検出器は、イオン化源を介して弁-検出器導管に接続される質量分析計とすることができる。しかしながら、検出器は、質量分析計以外のもの、例えば光学検出器、例えばUVまたは蛍光検出器、インピーダンス検出器、導電率検出器などであってもよい。
【0013】
実施形態によれば、LCシステムは、特に、質量分析計による検出の前に関心の被分析物を分離するために、質量分析のために試料を調製するようにおよび/または調製済み試料を質量分析計まで移動させるように設計された分析モジュールとして構成されることができる。特に、典型的には、LC動作中、質量分析計は、特定の質量範囲を走査するように設定されることができる。LC/MSデータは、個々の質量の走査中にイオン電流を加算し、時間に対する強度点として「合計した」イオン電流をグラフ化することによって表されることができる。結果として得られるプロットは、被分析物ピークを有するHPLC UVトレースのように見える。
【0014】
「流体流」は、液体が流れることができ、特に試料注入点からの試料が検出器、例えば質量分析計または他の検出器に移送されることができ、試料がクロマトグラフィプロセスを受けることができる流体経路である。流体流の異なる部分を通る流体接続は、不連続とすることができる。これは、流体流が、交互接続を築き、流体流の異なる部分の間の流体流をそれぞれ異なる時間で確立することができる切り替えバルブなどの素子を備えることができることが理由である。流体流は、少なくとも1つのLCカラムを備えることができる。少なくとも1つのLCカラムは交換可能とすることができる。特に、LCシステムは、流体流よりも多くのLCカラムを備えることができ、複数のLCカラムが選択可能であり、例えば、同じ流体流に交換可能に連結されることができる。LCカラムをバイパスするために毛細管も使用されることができる。流体流は、複数の副流を含んでもよい。
【0015】
特に、本開示の1つ以上の実施形態にかかるLCシステムは、一度に1つの流体流から検出器へと流れを導くための下流弁に接続される複数の流体流を備えることができる。
【0016】
「LCカラム」は、クロマトグラフの性質の分離を実行するためのカラム、カートリッジ、毛細管などのいずれかを指すことができる。カラムは、典型的には、固定相で充填または装填され、これを通して移動相が圧送され、一般に知られるように、例えば、その極性またはlog P値、サイズまたは親和性に応じて選択された条件下で、対象の分析物を捕捉および/または分離および溶出および/または移送する。この固定相は、粒状またはビーズ様または多孔質モノリスとすることができる。しかしながら、用語「カラム」はまた、固定相で充填または装填されていない毛細管またはチャネルを指すこともあるが、分離を実現するための毛細管内壁または幾何構造の表面積に依存する。ある例は、固体シリコンウエハから間隙容量をエッチングして除去し、ピラーアレイを残すことによって分離床が形成されるピラーアレイクロマトグラフィによって実現される。床部分を、ピーク分散を制限する最適化された流れ分配器と結合することによって、結果として得られたチャネルが小さな実装面積に折り畳まれることができる。これは、再現可能な秩序パターンでまとめられた固定相支持構造物を作り出す。
【0017】
LCカラムは、交換可能であるおよび/または1つ以上の他のLCカラムに対して並列にまたはシーケンスで動作することができる。LCカラムは、例えば、高速トラップおよび溶出LCカラムまたは略して「トラップカラム」、HPLCカラムまたはUHPLCカラムとすることができ、マイクロLCカラムおよびスモールボアLCカラムまたはピラーアレイLCカラムを含む任意のサイズとすることができる。トラップカラムの場合、目的の分析物を保持する固定相が選択されることができるが、任意の塩、緩衝液、洗剤および他のマトリックス成分は保持されずに洗い流される。このプロセスは、典型的には、例えば、異なる移動相または溶媒勾配を用いるバックフラッシュモードにおいて、被分析物の溶出を伴う。被分析物に応じて、一部の被分析物の分離がいくつかの場合に予想されることができる。一方、多重反応モニタリング(MRM)において同一の質量(同重体)および/または重複する娘イオンスペクトルを有する分析物の場合、質量分析に関して言えば、より広範なクロマトグラフィ分離が典型的であり得る。その場合、HPLCまたはUHPLCカラムにおける分離が有利であり得る。
【0018】
本開示の目的のために、少なくとも1つの流体流は、高速トラップおよび溶出LCカラムとは区別される少なくとも1つのHPLCカラム(簡単にするために「HPLC」という用語は、UHPLCまたはμ-LCおよび小口径カラムなどの他の高性能カラムも包含する)を備え、これは、通常、分析実行中にバックフラッシュを受けず、通常、カラムを切断し、カラムを逆向きに再接続することによって流れ方向を反転させ、カラムを洗浄するためだけにバックフラッシュするために流れを廃棄するようにして検出器に導かずに手動で介入する必要がある。
【0019】
「液体クロマトグラフィポンプまたはLCポンプ」は、耐圧強度が変動し得るが、LCチャンネルを通して一定且つ再現可能な体積流量を得ることができる高圧ポンプである。HPLCの圧力は、典型的には、60MPaほどの高い値または約600気圧に到達することができ、一方、UHPLCおよびμLCシステムは、さらに高い圧力で、例えば、140MPaまたは約1400気圧まで、作動するように開発されており、したがって、LCカラム内ではるかに小さい(<2μm)粒径を使用することができる。LCポンプは、例えば、最大4種の溶出溶媒間の比を漸進的に変動させることによる溶出勾配の使用を要する条件の場合の、バイナリポンプまたはさらにはクオータナリポンプとして構成されることができる。
【0020】
一実施形態によれば、LCポンプは、60MPa~140MPa、典型的には75MPa~100MPa、より典型的には80MPaの圧力を生むことができる。
【0021】
一実施形態によれば、LCポンプは、1μl/min~500μl/min以上、典型的には最大1500μl/minの流量、より典型的には100μl/min~300μl/minの流量および例えば約±5%以下の精度で操作するように構成されることができる。
【0022】
LCポンプは、複数のポンプヘッドを備えることができる。例えば、バイナリポンプは、2つのポンプヘッドを備え、各ポンプヘッドは、典型的には、ポンプヘッド内部の液体圧をほぼ一定に維持しながら液体を注入するために互いに協働する一次ポンプヘッドおよび二次ポンプヘッドを備える。特に、一次ポンプヘッドおよび二次ポンプヘッドは、それぞれ、典型的には内壁面およびシリンダ筐体を通って並進することができるプランジャを有する注射器様シリンダ筐体を含むシリンジ様ポンプであり、プランジャがシリンダ筐体を通って並進するとき、内壁面とプランジャとの間に隙間を残す。
【0023】
流体流に関連する用語「液体」は、例えば、使用される溶媒または溶媒混合物としての、例えば、移動相または溶出剤(溶出溶媒)としての、および当該技術分野において公知の、液体クロマトグラフィにおいて一般に使用される液体を指す。
【0024】
「下流ポンプ」は、少なくとも1つのHPLCカラムを洗浄するために少なくとも1つのHPLCカラムをバックフラッシュする機能を含む、LCポンプ、場合によっては多機能ポンプと少なくとも機能的に区別される補助ポンプである。別の可能な機能は、弁-検出器導管内の液体交換を容易にし、高速化することである。一般に、下流ポンプは、LCポンプに比べて低圧で大容量(高流量)のポンプであり、下流弁と流体的に接続されている。典型的には、本開示にかかる下流ポンプはまた、より低精度のポンプであり、したがって、LCポンプと比較して構造がより簡単であり、より安価である。本開示の実施形態によれば、下流ポンプは、正圧ポンプである。洗浄液または移動相を液体源からバックフラッシュ内の少なくとも1つのHPLCカラムを通しておよび/または流れ選択弁を介して弁-検出器導管を通して能動的に圧送するために陽圧を生成するのに適した任意のポンプ、例えば膜/ダイヤフラムポンプ、シングルプランジャ高速ポンプ、シリンジピストンポンプ、ギアポンプなどが使用されることができる。実施形態によれば、正圧および能動的圧送は、例えば加圧ガスによって、例えば窒素供給源によって、上流入口弁に接続される密封液体容器内に空気圧を加えることによって達成されることができる。
【0025】
実施形態によれば、下流ポンプは、流体流の流量よりも高い、例えば数倍高い、例えば5倍、10倍、20倍以上の流量で、HPLCカラムおよび/または弁-検出器導管を通して洗浄液を圧送するように構成されている。例えば、約1μL/分の典型的な流量を有するμ-LCの場合、5μL/分の洗浄ポンプ流量が既に有益であり得る。約100μL/分の流体流の流量の場合、下流ポンプの有効流量は、約500~1000μL/分以上とすることができる。いくつかの実施形態によれば、5000μL/分までの下流ポンプの流量が可能である。流量は、洗浄液がHPLCカラムに向けられるか、または弁-検出器導管に向けられるかに応じて可変とすることができる。
【0026】
「洗浄液」は、複数の試料注入サイクル中にHPLCカラムヘッド上に蓄積した粒子状物質、吸着マトリックス成分などを洗い流し、最終的には溶解するのに適した液体とすることができる。洗浄液は、例えば質量分析計によって使用される検出器と依然として互換性がありながら、弁-検出器導管から最終的に微量の試料を洗い出し、最終的には溶解するのに適した液体とすることができる。洗浄液は、クロマトグラフィに使用される溶出溶媒と同じまたは類似していてもよく、カラムの種類に応じて、またはカラムを通過する試料および分析物の種類が異なっていてもよい。例えば、典型的に逆相クロマトグラフィが使用される分析物の場合、適切な溶媒は、メタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、および/またはイソプロピルアルコールなどの有機溶媒とすることができる。これらの溶媒はまた、互いにおよび/または水と混合されてもよい。酸性または塩基性添加剤が添加されてpHを調整してもよい。典型的な添加剤は、ギ酸、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどを含むことができる。例えば、典型的には順相クロマトグラフィが使用される分析物の場合、適切な溶媒は、ヘキサン、ヘプタンなどの溶媒を、酢酸エチル、クロロホルムまたは2-プロパノールなどの極性有機溶媒と混合したものを含むことができる。洗浄液は、HPLCカラムに応じて、HPLCカラムをバックフラッシュするため、および弁-検出器導管を洗浄するためにそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0027】
「弁」という用語は、流れを制御、方向転換、制限、または停止するための、特にLC切替弁、すなわちポートに接続される要素間の流れを制御するマルチポート弁を指す。これは、典型的には、異なる要素間の連通を切り換えるために1つ以上の弁導管を移動させることによって達成される。要素は、パイプ、チューブ、毛細管、マイクロ流体チャネル、および同様なもののような、さらなる導管を介して、且つ、ネジ/ナットおよびフェルールのようなフィッティング、または、例えば、クランプ機構によって所定の場所に維持される代替の液密シールによって、ポートに流体的に接続されることができる。LCスイッチング弁は、通常、HPLCのために使用される大きさ以上のオーダーの液体圧力を可能にすることができる。
【0028】
特に、「下流弁」は、HPLCカラムから検出器への通常の流れ方向において少なくとも1つのHPLCカラムに対して下流に配置されたLC切替弁である。下流弁は、各流体流のためのポート、弁-検出器導管のためのポート、1つ以上の下流ポンプポートおよび1つ以上の廃棄物ポートを含むことができる。
【0029】
実施形態によれば、下流弁は、0.6mm未満、典型的には約0.5mmから0.2mm、より典型的には約0.4mm、さらにより典型的には約0.25mmの内径を有する内側弁導管を有する。しかしながら、内側弁導管は、典型的に使用される範囲内の任意の他の直径を有することができる。
【0030】
実施形態によれば、下流弁は、約500ms以下の典型的なスイッチング時間を有する。しかしながら、スイッチング時間は、500msよりも長くすることもできる。
【0031】
実施形態によれば、LCシステムは、下流弁を介して弁-検出器導管に交互に接続可能な複数の流体流を備える。
【0032】
実施形態によれば、下流ポンプはまた、弁-検出器導管を洗浄するために、下流弁を介して弁-検出器導管に接続可能である。
【0033】
実施形態によれば、下流ポンプは、後続の流体流からの液体が弁-検出器導管に入る前に以前の流体流からの液体を弁-検出器導管から洗浄するために、2つの連続する流体流の間で弁-検出器導管に接続するように構成されている。
【0034】
実施形態によれば、下流ポンプは、洗浄選択弁を介して下流弁に接続され、洗浄選択弁は、下流弁を介して少なくとも1つの流体流のいずれか一方および弁-検出器導管に交互に接続するように構成されている。
【0035】
「洗浄選択弁」は、下流ポンプと下流弁との間に配置され、下流ポンプ入口ポートと、バックフラッシュされる各流体流に対して1つの洗浄出口ポートとを備えるLC切替弁であり、出口ポートとそれぞれの流体流との間の流体的接続は、下流弁、最終的には下流弁を介して弁-検出器導管に接続可能な1つの洗浄出口ポートを介している。
【0036】
実施形態によれば、洗浄選択弁は、下流弁に流体的に接続されるそれぞれの三方弁を介して少なくとも1つの流体流に接続可能であり、三方弁は、洗浄選択弁入口ポートと、下流弁出口ポートと、廃棄物出口ポートとを備える。
【0037】
LCシステムは、例えば、少なくとも1つのHPLCカラムの使用中のシグナルバックグラウンドの増加、分析物保持時間のシフト、ピーク形状の変化などのデータを監視することによって、一定間隔で、および/または少なくとも1つの流体流中の所定の閾値を超える圧力上昇の検出時、および/または所定の閾値を下回る性能低下の検出時に、少なくとも1つのHPLCカラムを自動的にバックフラッシュするように構成されたコントローラを備えることができる。
【0038】
実施形態によれば、コントローラは、下流弁、洗浄選択弁、三方弁のうちのいずれか1つ以上の切り替えを制御することによって、少なくとも1つの流体流と弁-検出器導管との間の接続時間である流体流-検出器間接続時間、下流ポンプと弁-検出器導管との間の接続時間である下流ポンプ-検出器間接続時間、および少なくとも1つの流体流と下流ポンプとの間の接続時間である下流ポンプ-流体流間接続時間を管理するようにさらに構成されている。
【0039】
実施形態によれば、流体流と検出器との接続時間は固定されており、各流体流について同じである。さらに、下流ポンプから検出器への接続時間は固定されており、流体流から検出器への接続時間の一部であり、それによって少なくとも一時的に一定のペースで連続的に切り替えられる。下流ポンプから検出器への接続時間が流体流から検出器への接続時間の20%以下、典型的には10%以下、またはより典型的には5%以下であり、例えば流量および/または洗浄液に関する下流ポンプの条件が、下流ポンプから検出器への接続時間が最小化されるように適合されることが特に有益であり得る。絶対的に言えば、下流ポンプから検出器への接続時間は、数秒程度、典型的には5秒以下、より典型的には3秒以下とすることができる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「コントローラ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、縮小命令回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理回路、および本明細書に記載の機能/方法を実行することができる任意の他の回路またはプロセッサなどの処理ユニットを意味することができる。
【0041】
コントローラは、分析システムに統合されていてもよく、またはネットワークインターフェース装置を介して、有線もしくは無線の直接接続を介して、または有線もしくは無線の通信ネットワーク、例えばインターネットまたは医療提供者のローカルエリアネットワークもしくはイントラネットを介して有線もしくは無線の通信ネットワークを介して間接的に分析システムと通信する別個の論理エンティティであってもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサは、例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、スマートフォン、タブレット、PDAなどのコンピューティング装置上に実装されたデータ管理ユニットと一体であってもよい。プロセッサは、サーバコンピュータを含んでもよく、および/または複数の分析システムにわたって/複数の分析システムの間で分散/共有されてもよい。さらに、分析システムは、コントローラ、またはリモートPC/サーバもしくはクラウドベースのシステムと有線または無線(例えば、赤外線、セルラー、ブルートゥース(登録商標))を介して通信するリモート装置、サーバおよびクラウドベースの要素を含むことができる。コントローラはまた、ワークフローおよびワークフローのステップが分析システムによって実行されるように分析システムを制御するように構成可能であってもよい。特に、プロセッサは、様々な接続時間および弁切り替えの管理と組み合わせて、到来する試験注文および/または受信された試験注文、ならびに試験注文の実行に関連するスケジュールされたプロセス動作の数を考慮に入れるために、スケジューラおよび/またはデータマネージャと通信および/または協働することができる。
【0042】
本開示の別の実施形態によれば、自動化されたLC方法であって、少なくとも1つのHPLCカラムを備える少なくとも1つの流体流を下流弁に流体的に接続して、少なくとも1つの流体流を弁-検出器導管を介して検出器に接続することを含み、本方法が、下流ポンプを少なくとも1つの流体流に流体的に接続することをさらに含む(下流弁を介して、少なくとも1つのHPLCカラムをバックフラッシュし、それによって洗浄する)方法も本明細書に開示される。
【0043】
実施形態によれば、LC方法は、下流弁を介して複数の流体流を弁-検出器導管に交互に接続することを含む。
【0044】
実施形態によれば、LC方法は、弁-検出器導管を洗浄するために、下流弁を介して下流ポンプを弁-検出器導管に接続することを含む。
【0045】
実施形態によれば、LC方法は、後続の流体流からの液体が弁-検出器導管に入る前に以前の流体流からの液体を弁-検出器導管から洗浄するために、2つの連続する流体流の間で下流ポンプを弁-検出器導管に接続することを含む。
【0046】
実施形態によれば、LC方法は、洗浄選択弁を介して下流ポンプを下流弁に接続することと、下流弁を介して洗浄選択弁を少なくとも1つの流体流のいずれか一方および弁-検出器導管に交互に接続することとを含む。
【0047】
実施形態によれば、LC方法は、下流弁に流体的に接続されるそれぞれの三方弁を介して洗浄選択弁を少なくとも1つの流体流に接続することを含み、三方弁は、洗浄選択弁入口ポート、下流弁出口ポートおよび廃棄物出口ポートを備える。
【0048】
実施形態によれば、LC方法は、例えば、少なくとも1つのHPLCカラムの使用中のシグナルバックグラウンドの増加、分析物保持時間のシフト、ピーク形状の変化などのデータを監視することによって、一定間隔で、および/または少なくとも1つの流体流中の所定の閾値を超える圧力上昇の検出時、および/または所定の閾値を下回る性能低下の検出時に、少なくとも1つのHPLCカラムを自動的にバックフラッシュすることを含む。
【0049】
実施形態によれば、LC方法は、下流弁、洗浄選択弁、三方弁のうちのいずれか1つ以上の切り替えを制御することによって、少なくとも1つの流体流と弁-検出器導管との間の接続時間である流体流-検出器間接続時間、下流ポンプと弁-検出器導管との間の接続時間である下流ポンプ-検出器間接続時間、および少なくとも1つの流体流と下流ポンプとの間の接続時間である下流ポンプ-流体流間接続時間を自動的に管理することを含む。
【0050】
実施形態によれば、本方法は、流選択弁の切り替えを制御することによって、流体流接続時間、すなわち各流体流と弁-検出器導管との間の接続時間、および洗浄ポンプ接続時間、すなわち洗浄ポンプと弁-検出器導管との間の接続時間を自動的に管理することをさらに含むことができる。
【0051】
別の実施形態によれば、流体流接続時間は、固定されることができ、各流体流について同じであり、洗浄ポンプ接続時間は、固定され、流体流接続時間の一部であり、それによって少なくとも一時的に一定のペースで連続的に切り替わる。
【0052】
他のおよびさらなる目的、特徴、および利点は、図面および添付した特許請求の範囲と組み合わせた例示的な実施形態の以下の説明から明らかになる。特許請求の範囲は、本明細書に記載の特徴および利点の具体的な説明ではなく、その中の列挙によって定義されることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
本開示の実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照符号で示される以下の図面と併せて読むと最もよく理解されることができる。
【0054】
図1A】下流弁に接続される下流ポンプを含むLCシステムおよび下流ポンプを使用することを含むLC方法の第1のステップを概略的に示している。
図1B図1Aの同じLCシステムおよび同じ方法の第2のステップを概略的に示している。
図1C図1Aの同じLCシステムおよび同じ方法の第3のステップを概略的に示している。
図1D図1Aの同じLCシステムおよび同じ方法の第4のステップを概略的に示しており、これは図1BのLCシステムと同一である。
図1E図1Aの同じLCシステムおよび同じ方法の第5のステップを概略的に示している。
図1F図1Aの同じLCシステムおよび同じ方法の第6のステップを概略的に示しており、これは図1Bおよび図1DのLCシステムと同一である。
図2A図1A図1Fの同じLCシステムと、流体流をバックフラッシュするために下流ポンプを使用する方法の第1のステップとを概略的に示している。
図2B図2Aの同じLCシステムおよび同じ方法の第2のステップを概略的に示している。
図2C図2Aの同じLCシステムおよび同じ方法の第3のステップを概略的に示している。
図3A図1A図1EのLCシステムおよび方法のさらなる態様を概略的に示している。
図3B図3Aの同じLCシステムおよび図2A図2Cの方法のさらなる態様を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0055】
当業者は、図中の要素が単純化および明瞭化のために示されており、必ずしも縮尺どおりに描かれていないことを理解している。例えば、図中の要素のいくつかの寸法は、本開示の実施形態の理解を改善するのを助けるために、他の要素に対して誇張されている場合がある。
【0056】
図1A図1Fおよび図2A図2Cは、ともに、弁-検出器導管30を介して検出器60に接続される下流弁20を介して共通の検出器60に交互に接続可能な複数の流体流11、12、13を備える液体クロマトグラフィ(LC)システム100の概略例を示し、流体流11、12、13のそれぞれは、少なくとも1つのHPLCカラムを備える。LCシステム100は、下流弁20に流体的に接続され、且つ後続の流体流からの液体が弁-検出器導管30に入る前に以前の流体流からの液体を弁-検出器導管30から洗浄するために、2つの連続する流体流11、12;12、13;13、11の間で弁-検出器導管30に接続するように構成された下流ポンプ40をさらに備える。
【0057】
特に、下流弁20は、この場合、各流体流11、12、13のそれぞれについての流体流ポート21、22、23と、廃棄物50に通じる各流体流11、12、13のそれぞれについての廃棄物ポート21’、22’、23’とを備え、廃棄物ポート21’、22’、23’は、流体流ポート21、22、23を介して流体流11、12、13にそれぞれ接続可能な下流ポンプ入口ポート21’、22’、23’としても機能して、流体流11、12、13をバックフラッシュし、それによって洗浄することができる。下流弁20は、弁-検出器導管30に接続され、流体流ポート21、22、23をそれぞれ介して流体流11、12、13のそれぞれに交互に接続可能な弁-検出器導管ポート25をさらに備える。下流弁20は、弁-検出器導管ポート25を介して弁-検出器導管30にも接続可能な追加の下流ポンプ入口ポート24と、下流ポンプ入口ポート24に接続されるときに廃棄物50に通じる下流ポンプ廃棄物ポート24’とをさらに備える。これは、一例にすぎず、ポートおよび接続の数、ならびに流体ストリーム間の切り替えの順序は、必要に応じて、且つ流体ストリームの数に応じて適合されることができることは明らかである。
【0058】
下流ポンプ40は、この例では、例えば、水、アセトニトリル、メタノール、テトラヒドロフランまたはイソプロピルアルコールなどのそれぞれの洗浄液41、42、43、44を収容する4つの洗浄液容器に接続されており、これらは、例えば、LC条件、HPLCカラムの種類、その間を流れる試料および/または分析物の種類、ならびに所望の洗浄効果に応じて、個別にポンプ輸送されてもよく、または任意の組み合わせおよび比率で互いに混合されてもよい。特に、洗浄ポンプ40は、それぞれの上流のLCポンプ(図1A図1F図2A図2Cには示されていない)によって流体流11、12、13の流量15よりも高い流量45で、バックフラッシュモードで弁-検出器導管30および/または流体流11、12、13を通って洗浄液を圧送するように構成されてもよい。
【0059】
下流ポンプ40は、洗浄選択弁70を介して下流弁20に接続されている。洗浄選択弁70は、下流ポンプ40を流体流11、12、13のいずれかのいずれか1つおよび下流弁20を介して弁-検出器導管30に交互に接続するように構成されている。特に、洗浄選択弁70は、下流ポンプ入口ポート21’、22’、23’をそれぞれ介して下流弁20に流体的に接続されるそれぞれの三方弁16、17、18に通じるそれぞれの流体流洗浄ポート71、72、73を介して流体流11、12、13に接続可能であり、三方弁16、17、18は、それぞれ、洗浄選択弁入口ポート、下流弁出口ポートおよび廃棄物50に通じる廃棄物出口ポートを含む。洗浄選択弁70は、下流ポンプ入口ポート24を介して下流弁20に接続される弁-検出器-導管洗浄ポート74をさらに備える。
【0060】
LCシステム100は、それぞれの流体流11、12、13のHPLCカラムを一定間隔で、および/または少なくとも1つの流体流中の所定の閾値を超える圧力上昇の検出時、および/または所定の閾値を下回るHPLCカラムの性能低下の検出時に、自動的にバックフラッシュするように構成されたコントローラ90をさらに備える。
【0061】
コントローラ90は、下流弁20、洗浄選択弁70および三方弁16、17、18の切り替えを制御することによって、流体流11、12、13と弁-検出器導管30との間の接続時間である流体流-検出器間接続時間、下流ポンプ40と弁-検出器導管30との間の接続時間である下流ポンプ-検出器間接続時間、および流体流11、12、13と下流ポンプ40との間の接続時間である下流ポンプ-流体流間接続時間を管理するようにさらに構成されている。
【0062】
引き続き図1A図1F図2A図2Cを併せて参照すると、LC方法はまた概略的に示されており、本方法は、少なくとも1つのHPLCカラムを備える少なくとも1つの流体流11、12、13を下流弁20に流体的に接続して、少なくとも1つの流体流11、12、13を弁-検出器導管30を介して検出器60に接続することを含み、本方法は、下流弁20を介して下流ポンプ40を少なくとも1つの流体流11、12、13に流体的に接続して、少なくとも1つのHPLCカラムをバックフラッシュし、それによって洗浄することをさらに含む。
【0063】
LC方法は、下流弁20を介して複数の流体流11、12、13を弁-検出器導管30に交互に接続することをさらに含む。
【0064】
LC方法は、下流弁20を介して下流ポンプ40を弁-検出器導管30に接続し、弁-検出器導管30を洗浄することをさらに含む。
【0065】
LC方法は、後続の流体流からの液体が弁-検出器導管30に入る前に以前の流体流からの液体を弁-検出器導管30から洗浄するために、2つの連続する流体流11、12;12、13;13、11の間で下流ポンプ40を弁-検出器導管30に接続することをさらに含む。
【0066】
LC方法は、洗浄選択弁70を介して下流ポンプ40を下流弁20に接続することと、下流弁20を介して洗浄選択弁70を少なくとも1つの流体流11、12、13のいずれか1つおよび弁-検出器導管30に交互に接続することとをさらに含む。
【0067】
特に、LC方法は、下流弁20に流体的に接続されるそれぞれの三方弁16、17、18を介して洗浄選択弁70を少なくとも1つの流体流11、12、13に接続することを含み、三方弁16、17、18は、洗浄選択弁入口ポート、下流弁出口ポートおよび廃棄物出口ポートを含む。
【0068】
実施形態によれば、LC方法は、一定間隔で、および/または少なくとも1つの流体流中の所定の閾値を超える圧力上昇の検出時、および/または所定の閾値を下回る少なくとも1つのHPLCカラムの性能低下の検出時に、少なくとも1つのHPLCカラムを自動的にバックフラッシュすることをさらに含む。
【0069】
LC方法は、コントローラ90によって、下流弁20、洗浄選択弁70、三方弁16、17、18のうちのいずれか1つ以上の切り替えを制御することによって、少なくとも1つの流体流11、12、13と弁-検出器導管30との間の接続時間である流体流-検出器間接続時間、下流ポンプ40と弁-検出器導管30との間の接続時間である下流ポンプ-検出器間接続時間、および少なくとも1つの流体流11、12、13と下流ポンプ40との間の接続時間である下流ポンプ-流体流間接続時間を自動的に管理することをさらに含んでもよい。
【0070】
特に、図1Aは、流体流11が弁-検出器導管30に接続されて導かれる一方で、他の流体流12、13が廃棄物ポート22’、23’および三方弁17、18をそれぞれ介して廃棄物50に導かれるなど、下流弁20が切り替えられる方法の第1のステップを示している。下流ポンプ40からの洗浄液はまた、下流弁20を介して廃棄物50に導かれ、洗浄選択弁70は、弁-検出器-導管洗浄ポート74を介して下流ポンプ入口ポート24に接続され、下流ポンプ入口ポート24は、下流ポンプ廃棄物ポート24’に接続される。
【0071】
図1Bは、下流ポンプ40が弁-検出器導管30に直接接続される下流ポンプ入口ポート24を有することによって、下流ポンプが弁-検出器導管ポート25に接続されるなど、下流弁20が切り替えられる一方で、全ての流体流11、12、13が、廃棄物ポート21’、22’、23’および三方弁16、17、18をそれぞれ介して廃棄物50に導かれる方法の第2のステップを示している。
【0072】
図1Cは、流体流12が弁-検出器導管30に接続される一方で、他の流体流11、13が廃棄物ポート21’、23’および三方弁16、18をそれぞれ介して廃棄物50に導かれるなど、下流弁20が切り替えられる方法の第3のステップを示している。下流ポンプ40からの洗浄液はまた、図1Aのように下流弁20の下流ポンプ廃棄物ポート24’を介して廃棄物50に導かれる。
【0073】
図1Dに示す方法の第4のステップは、図1Bの第2のステップと同一である。
【0074】
図1Eは、流体流13が弁-検出器導管30に接続される一方で、他の流体流11、12が廃棄物ポート21’、22’および三方弁16、17をそれぞれ介して廃棄物50に導かれるなど、下流弁20が切り替えられる方法の第5のステップを示している。下流ポンプ40からの洗浄液はまた、図1Aおよび図1Cのように、下流弁20の下流ポンプ廃棄物ポート24’を介して廃棄物50に導かれる。
【0075】
図1Fに示す方法の第6のステップは、図1Aの第1のステップから再び開始する前に、図1Bの第2のステップおよび図1Bの第4のステップと同一である。
【0076】
図2Aは、本方法のさらなるステップを概略的に示しており、下流ポンプ40が流体流11をバックフラッシュするために使用される。特に、洗浄選択弁70、下流弁20および三方弁16は、下流ポンプ40が流体流洗浄ポート71、三方弁16、下流ポンプ入口ポート21’および流体流ポート21を介して流体流11に接続されるように切り替えられる。同時に、流体流12は、流体流ポート22および弁-検出器導管ポート25を介して弁-検出器導管30に接続され、流体流13は、それぞれ、流体流ポート23、廃棄物ポート23’および三方弁18を介して廃棄物50に導かれる。図2Aでは、流体流11の流れ15の方向が反転していることに留意されたい。
【0077】
図2Bは、本方法のさらなるステップを概略的に示しており、下流ポンプ40が流体流12をバックフラッシュするために使用される。特に、洗浄選択弁70、下流弁20および三方弁17は、下流ポンプ40が流体流洗浄ポート72、三方弁17、下流ポンプ入口ポート22’および流体流ポート22を介して流体流12に接続されるように切り替えられる。同時に、流体流11は、流体流ポート21および弁-検出器導管ポート25を介して弁-検出器導管30に接続され、流体流13は、それぞれ、流体流ポート23、廃棄物ポート23’および三方弁18を介して廃棄物50に導かれる。図2Bでは、流体流12の流れ15の方向が反転していることに留意されたい。
【0078】
図2Cは、本方法のさらなるステップを概略的に示しており、下流ポンプ40が流体流13をバックフラッシュするために使用される。特に、洗浄選択弁70、下流弁20および三方弁18は、下流ポンプ40が流体流洗浄ポート73、三方弁18、下流ポンプ入口ポート23’および流体流ポート23を介して流体流13に接続されるように切り替えられる。同時に、流体流11は、流体流ポート21および弁-検出器導管ポート25を介して弁-検出器導管30に接続され、流体流12は、それぞれ、流体流ポート22、廃棄物ポート22’および三方弁17を介して廃棄物50に導かれる。図2Cでは、流体流13の流れ15の方向が反転していることに留意されたい。
【0079】
図3Aは、図1A図1EのLCシステム100および方法のさらなる態様を概略的に示している。特に、LCシステム100は、各流体流11(簡略化のために図3Aに示されている1つの流体流のみ)用の上流LCポンプ10と、特に上流弁8を介して流体流11に合流する2つのポンプヘッド9、9’を備えるバイナリLCポンプとをさらに備える。上流弁8は、この例では、ポンプヘッド9、9’にそれぞれ流体的に接続される2つの上流ポンプ入口ポート1、1’と、流体流11に通じる2つの上流ポンプ出口ポート2、2’と、ポンプヘッド9、9’によってそれぞれ圧送された液体を廃棄物50に導く2つの上流ポンプ廃棄物ポート3、3’と、2つのバックフラッシュ廃棄物ポート4、4’とを備える8ポート/二方向弁として具体化される。図3Aの方法は、上流ポンプ入口ポート1、1’が上流ポンプ出口ポート2、2’にそれぞれ接続されて上流LCポンプ10から流体流1に、上流弁8を介して通常の流れ方向15に液体流を導くように、上流弁8を切り替えることを含む。
【0080】
図3Bは、図3Aの同じLCシステム100および図2A図2Cの方法のさらなる態様を概略的に示している。特に、本方法は、上流ポンプ入口ポート1、1’が上流ポンプ廃棄物ポート3、3’にそれぞれ接続され、したがって、ポンプヘッド9、9’によって圧送された液体を廃棄するように上流弁8を切り替えることを含む。また、上流ポンプ出口ポート2、2’は、流体流11を介して下流ポンプからの液体流を逆流方向15に廃棄物50に導くために、それぞれバックフラッシュ廃棄物ポート4、4’に接続される。
【0081】
上記の明細書では、本開示を十分に理解することができるように、多くの特定の詳細が記載されている。しかしながら、当業者には、本教示を実施するために特定の詳細を使用する必要がないことは明らかであろう。他の例では、本開示を曖昧にすることを回避するために、周知の材料または方法は詳細に説明されていない。
【0082】
特に、開示された実施形態の変更および変形は、上記の説明に照らして確かに可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、上記の例に具体的に記載されている以外の方法で本発明が実施されることができることを理解されたい。
【0083】
また、本明細書全体を通して「一実施形態」、「実施形態」、「一例」または「例」、「一態様」または「態様」への言及は、実施形態または例または態様に関して説明される特定の特徴、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な場所での「一実施形態では」、「実施形態では」、「一例」または「例」、「一態様」または「態様」という句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態または例または態様を指すとは限らない。
【0084】
さらにまた、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態または例または態様において、任意の適切な組み合わせおよび/またはサブ組み合わせで組み合わせられることができる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B