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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】固形物を含有する容器詰飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/02 20060101AFI20231207BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20231207BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20231207BHJP
   A23L 2/42 20060101ALI20231207BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20231207BHJP
   A23F 3/16 20060101ALN20231207BHJP
【FI】
A23L2/02 Z
A23L2/00 W
A23L2/38 C
A23L2/42 101
A23L2/52 101
A23F3/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022088011
(22)【出願日】2022-05-30
【審査請求日】2023-07-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】泉 達宏
(72)【発明者】
【氏名】益子 祥
(72)【発明者】
【氏名】安井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】青木 美和
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-154506(JP,A)
【文献】特開2005-348652(JP,A)
【文献】特開平08-322524(JP,A)
【文献】特開昭53-009344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00- 5/50
A23L 2/00- 2/84
C12H 1/00- 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
果肉片と液体とが容器に密封されている容器詰飲料であって、
4cm以上の果肉片を2つ以上含有し、飲料の総量に対する果肉片の割合が10~50重量%である、上記飲料。
【請求項2】
飲料の総量が100~400gである、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
前記液体のエタノール濃度が1v/v%未満である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
容器が樹脂製容器である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項5】
樹脂製容器の厚さが0.3mm以上である、請求項に記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用固形物と液体とが密封容器に収容されてなる容器詰飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
缶や樹脂製容器などの各種容器に飲料を充填・密封することにより得られる容器詰飲料は、比較的長期に保存することができ、携帯性に優れる、手軽に入手することができるといった利便性の高さから広く普及している。また、容器詰飲料は、開封してそのまますぐに飲用できるRTD飲料(Ready To Drink)としても消費者に広く親しまれている。
【0003】
冷蔵された容器詰飲料について、十分に冷えた状態は飲用に適しているが、夏場に持ち運んだり、開栓後に時間をかけて飲用(いわゆる「ちびだら飲み」)したりする場合には、外気温の影響等により飲料内容液の温度が徐々に上昇してぬるくなり、飲料の風味が低下するという問題があった。
【0004】
そこで、容器詰飲料の内容液について、その温度を低く維持するための技術が提案されている。例えば、特許文献1には、ペットボトルの飲み口から投入する大きさの氷を収納体に収納したペットボトル飲料用の氷が提案されており、特許文献2には、ペットボトルの開口部から投入可能な、ペットボトルの開口径よりも小さな直径を有する円柱状の冷却保持体が記載されている。
【0005】
また、果汁を含有する容器詰飲料について、ちびだら飲みにより内容液の温度が変化した場合であっても、飲料の組成を工夫することによって飲料の風味変化を抑制することが提案されている。すなわち、特許文献3には、ブリックス値を0.4~5.0に調整し、果汁由来ポリフェノール類を含有する果汁含有飲料に所定の茶由来ポリフェノール類を調整すると共に、甘味料を添加しないことにより、冷えた状態では果実感が感じられその風味が良好でありながらも、飲料内溶液の温度が上昇して温くなった場合においても果汁感が重たく感じられることなく、飲用後に口内におけるベタ付き感が生じにくく、且つ後味のキレ(後切れ感)を良好に維持することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3061007号公報
【文献】特開2021-62908号公報
【文献】特開2017-46604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、内容液の温度が上昇しにくい容器詰飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定の体積を有する食用固形物を飲料に複数個含有させることで、内容液の温度上昇を効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
これに限定されるものではないが、本発明は以下に関する。
[1] 食用固形物と液体とが容器に密封されている容器詰飲料であって、4cm以上の食用固形物を2つ以上含有し、飲料の総量に対する食用固形物の割合が10~50重量%である、上記飲料。
[2] 飲料の総量が100~400gである、[1]に記載の飲料。
[3] 食用固形物が果肉片である、[1]または[2]に記載の飲料。
[4] 前記液体のエタノール濃度が1v/v%未満である、[1]~[3]のいずれかに記載の飲料。
[5] 容器が樹脂製容器である、[1]~[4]のいずれかに記載の飲料。
[6] 樹脂製容器の厚さが0.3mm以上である、[5]に記載の飲料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、内容液の温度が上昇しにくく、長時間にわたって美味しく飲用可能な容器詰飲料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】飲料容器の一態様を示す側面図である。
図2】実験1で用いた桃の果肉片を示す概略図である。
図3】実験1の結果を示すグラフである。
図4】実験2で用いたパインアップルの果肉片を示す概略図である。
図5】実験2の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の飲料は、食用固形物と液体を含んでなる容器詰飲料である。本明細書でいう「食用固形物」とは、果実やゲル状食品などの食用可能な固形物をいう。果実としては、特に制限はないが、モモ、サクランボ等の核果果実、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ミカン等の柑橘類果実、ナシ、リンゴ等の仁果果実、キウイフルーツ、マンゴー、パパイヤ、バナナ等の熱帯産果実、イチゴ、パイナップル、メロン、スイカ等の果実的野菜、これら以外のブドウ、ブルーベリー等の果実を挙げることができる。また、本明細書中においては、便宜上、アロエ葉肉も果実として扱う。果実は、生果であってもよいし、凍結及び/又は糖浸漬などの処理がされた加工果実であってもよい。また、食用固形物として果実片を用いる場合、果皮が付いていてもよいし、果皮が付いていなくてもよい。ゲル状食品としては、特に制限はないが、ナタデココ、寒天、ゼラチン、コンニャクゲル、その他ゲル化剤で調製されたゼリー状食品などを挙げることができる。
【0013】
本発明の飲料は、特定の大きさを有する食用固形物を飲料に含有させ、固形物の冷却保持(蓄冷)機能を利用して、飲料内容液の温度上昇を抑制することを特徴とする。蓄冷機能に必要な食用固形物は、その体積が4.0cm以上であり、好ましくは6.0cm以上、より好ましくは8.0cm以上であり、10.0cm以上や12.0cm以上であってもよい。一般に、容器詰飲料を冷蔵庫から出すと、外気温の影響等により内容液の温度が徐々に上昇するが、上記の特定の大きさを有する固形物を含有させておくと、含有していない場合と比較して、内容液の温度上昇を緩和させることができる。固形物は、容器に収容できる大きさであれば制限されないが、例えば、100cm以下であり、好ましくは80cm以下、より好ましくは60cm以下であり、50cm以下や40cm以下であってもよい。
【0014】
本発明の効果は、4.0cm以上の固形物を複数個含有させることで、より効果的に発現する。本発明の飲料は、好ましい態様において、4.0cm以上の固形物を3個以上含有し、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上含有させる。含有させる固形物の個数について、その上限は特にないが、例えば、20個以下とすることができ、15個以下や12個以下としてもよい。
【0015】
本発明の所期の効果を発現させるためには、蓄冷体となる食用固形物と内容液との割合も重要である。すなわち、本発明においては、食用固形物の量が飲料の総量に対して10~50重量%であり、好ましくは15~45重量%、より20~40重量%程度である。ここで、飲料の総量とは、食用固形物と液体とを合わせた重量を意味し、容器の重量は含まないものである。
【0016】
固形物の形状は特に制限されないが、略立方体や直方体など、厚みのある形状であると、薄板状の場合と比較して、蓄冷されやすい傾向にある。したがって、固形物は略立方体や直方体など、厚みのある形状が好ましく、固形物として果実を用いる場合、ダイス状にカットしたものや、くし切りしたものを好適に使用することができる。例えば、固形物の厚さは0.3cm以上であり、好ましくは0.5cm以上、より好ましくは0.8cm以上、さらに好ましくは1.0cm以上である。ここで、本明細書で固形物の厚さをいうときは、固形物の各切片の長さにおいて一番短い長さ部分をいう。
【0017】
飲料中の内容液が、外気温の影響等により温度が上昇した場合に、食用固形物中の冷却された水分とゆっくりと置換されることにより、内容液の温度上昇を抑制することができると推察される。したがって、食用固形物は水分を多く含む構造であることが好ましい。水分を多く含む固形物とは、ゲル状食品や果肉などを指し、具体的には、水分を85重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重要%以上含有する固形物である。ここで、果肉とは果実の可食部で、不可食部(果皮、種子など)を含まない部分をいう。一般に、果実の不可食部の水分含量は60~80重量%程度である。固形物が可食部のみからなる果肉片は、本発明の好適な態様の一例である。
【0018】
本発明の飲料は、特定の大きさを有する食用固形物を特定量配合することにより、液体部分の温度上昇を抑制するものである。飲料の製造時、保存時又は輸送時などにおいて、食用固形物の形状の崩れ、溶融、溶解その他の変化があると、液体部分の見た目や食感等に影響を及ぼしたり、本発明の所期の効果を阻害したりする可能性がある。果実や耐熱性ゼリーなど、食用固形物は耐熱性であることが好ましい。耐熱性ゼリーとしては、寒天、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸塩、ジェランガムから選択されるいずれか1以上を原料とするゼリーや、ココナッツ果汁を発酵させてゲル化させたナタデココを例示できる。
【0019】
食用固形物の形状の崩れを抑制する観点から、本発明の飲料中の食用固形物の硬さは80g/cm以上であることが好ましい。100g/cm以上がより好ましく、200g/cm以上がさらに好ましく、300g/cm以上が特に好ましい。硬さの上限は特に制限されないが、飲料と一緒に味わうことができるという観点から1500g/cm以下が好ましく、1300g/cm以下がより好ましく、1000g/cm以下がさらに好ましい。ここで、本明細書中でいう硬さとは、固形物が破断するときの破断強度(単位:g/cm)を意味し、具体的には、レオメーター(サン科学製:CR-3000EX-S)を用い、直径10mmの球型プランジャー、進入速度300mm/分の測定条件(圧縮試験)で固形物が破断したときの破断強度を測定すればよい。
【0020】
本発明の飲料中の食用固形物は4cm以上と比較的大きいサイズであり、通常、飲料中に浮遊せず、容器の底部付近に堆積する。容器詰飲料の内容量が多すぎる場合には、本発明の所期の効果が十分に発揮できないこともあるので、本発明の飲料は、飲料の総量が100~400g程度であることが好ましく、140~350gや180~300gであることがより好ましい。ここで、飲料の総量とは、食用固形物と液体とを合わせた重量をいう。
【0021】
本発明の飲料は、食用固形物と液体(内容液)を含有する。液体は、飲用可能な液体であれば特に制限されない。本発明の飲料に係る液体としては、例えば、水、ニアウォーター、果汁入り飲料、乳入り飲料、乳性飲料、茶飲料、コーヒー飲料、その他の清涼飲料などを挙げることができる。好ましい態様において、液体として茶飲料を用いることができるが、茶飲料としては、茶樹(Camellia sinensis)の葉や茎を用いて製造された茶葉を原料とする茶(緑茶などの不発酵茶、烏龍茶などの半発酵茶、紅茶などの発酵茶を含む)はもちろん、ハーブティーなど植物を原料とする抽出液(広義の茶飲料)を用いることができる。本発明に係る飲料はアルコール飲料であってもよいが、ソフトドリンクなどの非アルコール飲料であってもよい。エタノールなどのアルコールは、水よりも熱伝導率が低いため、本発明の飲料がアルコール飲料の場合は、本発明の課題が顕在化しにくい。本発明の効果の顕著さから、本発明の飲料は、非アルコール飲料であることが好ましい。ここで、非アルコール飲料とは、アルコール分が1v/v%未満の飲料をいう。
【0022】
非アルコール飲料において、0.001v/v%以上1v/v%未満という極微量のエタノールを含有させることが好ましい。水分子の中に極微量のエタノール分子が混在することにより、エタノールの気化熱で水分子中の熱が吸収されるため、より一層、内容液の温度上昇を抑制できる。
【0023】
本発明の液部には、上記成分以外に、必要に応じて、飲料調製に用いることができる各種成分が含まれていてもよい(例えば、『最新・ソフトドリンクス』,全国清涼飲料工業会他監修,光琳,2003年を参照)。例えば砂糖、果糖などの糖類、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤、ビタミンC等の酸化防止剤、甘味料、香料、色素成分、保存料、調味料、ビタミン、カルシウム、アミノ酸等を含有してもよい。
【0024】
容器詰飲料
本発明の飲料は、食用固形物と液体(内容液)とが密封容器に収容されてなる容器詰飲料である。容器の材質は、飲料として通常使用されている紙、樹脂(プラスチック)、金属、ガラスなどいずれのものを用いてもよいが、熱伝導率の低い樹脂製容器を用いると、本発明の効果を享受しやすいことから、好ましい態様の一例である。樹脂製容器は、可撓性を有するものであってもよいが、成形された硬質の容器が好ましく、特に、厚さが0.3mm以上の樹脂製容器が好ましく、厚さ0.4mm以上の樹脂製容器がより好ましい。このような容器としては、図1に示すような断面略台形状でフルオープンの開口部を有するプラスチックカップ容器を例示でき、密封する場合はフィルムなどによって上部の開口部を封止すればよい。
【0025】
本発明の飲料は、食用固形物を蓄冷体とすることで、内容液の温度上昇を抑制する効果と同時に、飲料に食感や味の変化を付与する効果を有する。すなわち、冷却保持体(蓄冷体)が氷であれば、氷が融けていくに従い内容液が薄まってしまうが、本発明の飲料では、内容液の味が薄まらずに、固形物の食感を楽しむこともできる。したがって、本発明の容器には、固形物が取り出しやすい大きな開口部があることが好ましい。具体的には、開口部の口径が5~15cmである容器が好適に用いられる。
【0026】
本発明に係る容器詰飲料は、そのままRTD飲料(RTD=Ready To Drink:蓋を開けてすぐ飲める容器詰飲料)として飲用してもよいが、RTS飲料(RTS=Ready To Serve)として氷や炭酸水などと混合して飲用してもよい。なお、本発明に係る容器詰飲料は、比較的大きな可食性固形片を含有するため、食品表示上、果肉入飲食品などと表記される場合がある。
【0027】
一つの態様において、本発明は容器詰飲料の製造方法である。特に制限されないが、本発明の容器詰飲料を製造する場合、4cm以上の大きさの食用固形物を調製する工程、内容液を調製する工程、食用固形物の割合が10~50重量%となるように食用固形物と内容液を容器に充填して密封する工程、加熱殺菌する工程などを実施してよい。
【実施例
【0028】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0029】
実験1.桃果肉入り紅茶飲料
糖度20°の糖液で浸漬処理された缶詰の桃を図2に示す略三角柱状にカットし、果肉片を調製した(果肉片1つあたりの重量:約7g、果肉片1つあたりの体積:4.5cm3)。果肉片7つ(約50g)と市販のフルーツ風味の紅茶飲料150gを、透明な樹脂製パウチ容器(厚さ0.1mm)に充填して密封した後、F値が4以上となる条件でレトルト殺菌し、果肉片入り容器詰飲料を調製した(サンプル1-1)。果肉片の硬さは、650g/cmであった。
【0030】
また、表1に示すように、比較例として下記の容器詰飲料を調製した。
・サンプル1-2:果肉片を1つのみとした以外はサンプル1-1と同様にして調製した容器詰飲料
・サンプル1-3:果肉片を含まず紅茶飲料150gだけを充填した以外はサンプル1-1と同様にして調製した容器詰飲料
・サンプル1-4:果肉片を含まず紅茶飲料200gだけを充填した以外はサンプル1-1と同様にして調製した容器詰飲料
果肉片入り紅茶飲料を冷蔵庫で1日間冷却し、液体部分の温度を7.5℃とした後、この果肉片入り紅茶飲料を冷蔵庫から取り出し、容器ごと25℃の恒温室に静置して、容器内の液体部分の温度を測定した。図3に温度履歴を示すが、複数個の果肉片を入れた本発明の飲料は、他の飲料に比べて液体部分の温度上昇が抑制されていた。
【0031】
【表1】
【0032】
実験2.パインアップル果肉入り紅茶飲料
果肉片として、糖度21°の糖液で浸漬処理された缶詰のパインアップルを図4に示すような略四角柱状にカットしたものを調製した(果肉片1つあたりの重量:約13.5g、果肉片1つあたりの体積:8.1cm3)。このようなパインアップルの果肉片と紅茶液を下表に示すように透明な樹脂製容器に充填し、実験1と同様の手順により果肉入り紅茶飲料を製造した。果肉片の硬さは、750g/cmであった。
【0033】
表2に示す加熱殺菌済みの果肉片入り紅茶飲料について、実験1と同様に、冷蔵庫から取り出した後の温度変化を測定した。図5に結果を示すが、複数の果肉片を充填した本発明に係る容器詰飲料は、果肉片としてパインアップルを用いた場合も経時的な飲料の温度上昇が抑制されていた。
【0034】
【表2】
【0035】
実験3.リンゴ果肉入り清涼飲料(1)
果肉片として、糖度22°の糖液で浸漬処理された缶詰のリンゴを、下表に示す大きさのダイス状(立方体または直方体)にカットしたものを使用した。
【0036】
また、容器詰飲料に充填する液体として、ショ糖:6.0重量%、無水クエン酸:0.12重量%、クエン酸三ナトリウム:0.07重量%及び水を混合して総量100重量%とし、加熱沸騰させてから冷却したものを使用した(クエン酸換算の酸度:0.12%、pH:3.65)。
【0037】
上記のようにして調製した果肉片と液体を、下表に基づいて、図1に示すようなカップ状の樹脂製容器に入れ(上部口径:8.0cm、底部径:6.0cm、容器の厚さ:0.4mm)、プラスチックフィルム(厚さ:0.1mm)によって上部開口部を封止して容器詰飲料を製造した。果肉片の硬さは、885g/cmであった。
【0038】
この容器詰飲料を冷蔵庫で1日間冷却し、液体部分の温度を7.5℃とした後、冷蔵庫から取り出し、容器ごと25℃の恒温室に静置して、容器内の液体部分の温度を測定し、液体部分の温度が15℃に到達するまでの時間を計測した。下表に示す結果から明らかなように、本発明に係る容器詰飲料は、飲料の経時的な温度上昇が効果的に抑制されていた。
【0039】
【表3】
【0040】
実験4.リンゴ果肉入り清涼飲料(2)
容器詰飲料を構成する液体に微量のエタノールを添加した以外は、実験3のサンプル3-7と同様にして容器詰飲料を調製した。
【0041】
実験3と同様に、容器詰飲料を冷蔵庫から取り出した際の液体部分の温度を測定し、15℃に到達するまでの時間を計測した。下表に示す結果から明らかなように、容器詰飲料を構成する液体に微量のエタノールを含有させることで、飲料の温度上昇をより効果的に抑制することができた。
【0042】
【表4】
【0043】
実験5.食用固形物入り清涼飲料
下記の食用固形物を用いて、実験3のサンプル3-4と同様にして容器詰飲料を調製した。
・サンプル5-1:糖度20°の糖液で浸漬処理されたナタデココ(1.5cm×1.5cm×1.8cm、1つあたりの重量:6.0g、硬さ:990g/cm
・サンプル5-2:マンゴーの生果をダイス状にカットした果肉片(1.5cm×1.5cm×1.8cm、1つあたりの重量:5.6g、硬さ:88g/cm
実験3と同様に、容器詰飲料を冷蔵庫から取り出した際の液体部分の温度を測定し、15℃に到達するまでの時間を計測した。下表の結果から明らかなように、食用固形物を含有しない飲料(サンプル3-1)と比較して、本発明に基づいて複数個の食用固形物を入れた飲料は液体部の温度上昇が抑制された。
【0044】
【表5】
【要約】
【課題】本発明の課題は、内容液の温度が上昇しにくい容器詰飲料を提供することである。
【解決手段】本発明によって、飲料の総量に対する食用固形物の割合が10~50重量%になるように4cm以上の食用固形物を2つ以上含有させた容器詰飲料が提供される。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4
図5