(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】アツバノリの抽出方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/04 20060101AFI20231207BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20231207BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231207BHJP
A61K 8/9717 20170101ALI20231207BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20231207BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20231207BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20231207BHJP
A23L 17/60 20160101ALI20231207BHJP
【FI】
A61K36/04
A61P17/10
A61Q19/00
A61K8/9717
A61Q7/00
A61P17/14
A23L33/105
A23L17/60 B
(21)【出願番号】P 2022099480
(22)【出願日】2022-06-21
【審査請求日】2022-06-21
(32)【優先日】2022-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】500447978
【氏名又は名称】台灣中油股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鄭▲シュ▼玉
(72)【発明者】
【氏名】高艾玲
(72)【発明者】
【氏名】翁▲ユ▼翔
(72)【発明者】
【氏名】黄冬梨
(72)【発明者】
【氏名】陳勁中
(72)【発明者】
【氏名】洪培景
(72)【発明者】
【氏名】王昭竣
(72)【発明者】
【氏名】張文騰
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-020828(JP,A)
【文献】特開2023-020827(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0047219(US,A1)
【文献】Chieh-Chih Shih,et al.,Int. J. Mol. Sci.,2017年,18, 2437
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/04
A61P 17/10
A61Q 19/00
A61K 8/9717
A61Q 7/00
A61P 17/14
A23L 33/105
A23L 17/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)乾燥したアツバノリの粉末を提供する
工程と、
(b)二酸化炭素流体で当該乾燥したアツバノリの粉末に対して抽出を行って抽出アツバノリの抽出液を取得
する工程であって、当該アツバノリの抽出液にアツバノリの抽出物と当該二酸化炭素流体溶剤とが含有され、抽出圧力は300-650barであり、抽出温度は45-55℃であり、抽出時間は2-6時間である、
工程と、
(c)当該アツバノリの抽出液から当該アツバノリの抽出物を分離
する工程であって、
分離圧力は30-100barである、
工程とを含む、
ことを特徴とするアツバノリの抽出物の抽出方法。
【請求項2】
前記抽出圧力は350barであり、
前記抽出温度は55℃であり、
前記抽出時間は2時間である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出圧力は365barであり、
前記抽出温度は55℃であり、
前記抽出時間は4時間である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出圧力は420barであり、
前記抽出温度は55℃であり、
前記抽出時間は4時間である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アツバノリの抽出方法、アツバノリの抽出物及びその用途、特に、超臨界流体による抽出により製造されるアツバノリの抽出物に関する創作である。
【背景技術】
【0002】
アツバノリ(Sarcodia)は、暗赤色の扁平状の藻体であり、現在、アツバノリには、食物繊維、ミネラル、人体に必須のアミノ酸、ビタミンE、オメガ脂肪酸その他の栄養素が豊富に含まれていることが知られている。よって、アツバノリは、人体の健康に有益である健康食品とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、現在、アツバノリは、栄養素を豊富に有し、健康食品としての利用に適していることが知られているが、未だにアツバノリから高い経済価値を有する成分は抽出されていない。よって、如何に新たな抽出方法を提供して、アツバノリから高い経済価値を有する成分を抽出するのかは、依然として未解決の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、前記問題に対処し、(a)乾燥したアツバノリの粉末を提供する、(b)二酸化炭素流体で当該乾燥したアツバノリの粉末に対して抽出を行って抽出アツバノリの抽出液を取得し、当該アツバノリの抽出液にアツバノリの抽出物と当該二酸化炭素流体溶剤とが含有され、抽出圧力は300-650barであり、抽出温度は45-55℃であり、抽出時間は2-6時間である、及び(c)当該アツバノリの抽出液から当該アツバノリの抽出物を分離し、分離圧力は30-100barである、前記(a)から(c)の工程を含むことを特徴とするアツバノリの抽出物の抽出方法を提供することである。
【0005】
上述に記載の方法の通り、抽出圧力は350barであり、抽出温度は55℃であり、抽出時間は2時間である。
【0006】
上述に記載の方法の通り、抽出圧力は365barであり、抽出温度は55℃であり、抽出時間は4時間である。
【0007】
上述に記載の方法の通り、抽出圧力は420barであり、抽出温度は55℃であり、抽出時間は4時間である。
【0008】
前記目的及びその他目的を達成するために、本発明は、当該アツバノリ抽出物を提供し、当該アツバノリ抽出物は以上に記載の抽出方法によって製造される。
【0009】
前記目的及びその他目的を達成するために、本発明は、当該アツバノリ抽出物の濃度は5μg/mL以上であることを特徴とする毛包細胞の成長活性を促進する薬物を調製する用途のための、前記アツバノリ抽出物を提供する。
【0010】
前記目的及びその他目的を達成するために、本発明は、当該アツバノリ抽出物の濃度は0.5mg/mL以上であることを特徴とするアクネ桿菌の成長を抑制する薬物又は化粧品を調製する用途のための前記アツバノリ抽出物を提供する。
【0011】
前記目的及びその他目的を達成するために、本発明は、当該アツバノリ抽出物の濃度は1μg/mL以上であり、角質細胞の移動活性を増進する薬物又は化粧品を調製する用途のための前記アツバノリ抽出物を提供する。
【0012】
前記目的及びその他目的を達成するために、本発明は、当該アツバノリ抽出物の濃度は6μg/mL以上であり、抽出物角質細胞の成長活性を増進する薬物又は化粧品を調製する用途のためのアツバノリの抽出物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上述のようなアツバノリの抽出物、その抽出方法及びその用途によって、新たな抽出方法を提供することで、アツバノリから高い経済価値を有する成分を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例11のアツバノリの抽出物の波長が210nmであるUV光下でのHPLC指紋プロファイルを示すものである。
【
図2】本発明の実施例11のアツバノリの抽出物の波長が254nmであるUV光下でのHPLC指紋プロファイルを示すものである。
【
図3】本発明の実施例11のアツバノリの抽出物の波長が280nmであるUV光下でのHPLC指紋プロファイルを示すものである。
【
図4】本発明の実施例11のアツバノリの抽出物のガスクロマトグラフィープロファイルを示すものである。
【
図5】本発明の実施例11のアツバノリの抽出物によるヒト毛包真皮乳頭細胞に対する細胞成長の促進に関する試験結果を示すものである。
【
図6】本発明の実施例12のアツバノリの抽出物によるヒト毛包真皮乳頭細胞に対する細胞成長の促進に関する試験結果を示すものである。
【
図7】本発明の実施例13のアツバノリの抽出物によるヒト毛包真皮乳頭細胞に対する細胞成長の促進に関する試験結果を示すものである。
【
図8】本発明の実施例14の異なるアツバノリの抽出物のHPLC指紋プロファイルの比較結果を示すものである。
【
図9】本発明の実施例16のアツバノリの抽出物の角質細胞の移動能力を促進する試験における蛍光画像を示すものである。
【
図10】本発明の実施例16のアツバノリの抽出物の角質細胞の移動能力を促進する試験における細胞移動率を示すものである。
【
図11】本発明の実施例17のアツバノリの抽出物の角質細胞成長を促進する試験の結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の目的、特徴および効果を十分に理解するために、以下の具体的な実施例によって、添付された図面とともに、本発明について詳細について以下にて説明する。
【0016】
実施例1のアツバノリの抽出物の抽出方法
【0017】
本実施例1のアツバノリの抽出物の抽出方法の略述は、以下の通りである。
【0018】
まず、乾燥したアツバノリの粉末を提供する。本実施例1における乾燥したアツバノリの粉末は、アツバノリの粉末の一般的な調製方法で製造されるが、市販のものを取得することも可能である。アツバノリの粉末の一般的な調製方法は、以下の通り、新鮮なアツバノリを収穫した後、洗浄し、アツバノリに乾燥処理を行い、乾燥処理の方法はアツバノリをオーブンに入れ50℃で24時間持続的に乾燥し行う、乾燥処理後のアツバノリは粉砕機で粉砕して粉にすることで、アツバノリの粉末を調製し、アツバノリの粉末の粒径は、より好ましくは、1-4mmであるが、その他の必要に応じてアツバノリの粉末の粒径を調整することができる。
【0019】
そして、超臨界流体の抽出設備を用意し、前記超臨界流体の抽出設備は金属工業研究発展センター(MIRDC)により提供されたものであり、モデル番号はSFE-350S-1000Rである。超臨界流体の抽出設備を使用して前記アツバノリの粉末からアツバノリの抽出物を抽出する。抽出方法は下記の通りであり、前記アツバノリの粉末を当該超臨界流体の抽出設備の抽出槽に入れ、アツバノリの粉末の使用量は抽出槽体の約90-99%の体積である(アツバノリの粉末の供給体積は850gから950gであり、抽出槽体の体積は1.2Lである)。そして、超臨界流体作を溶剤として、超臨界流体の抽出設備の操作マニュアルが提供する操作方法に基づき、当該乾燥したアツバノリの粉末に対して抽出を行い、本実施例1において使用される超臨界流体は二酸化炭素流体であり、抽出槽における抽出圧力は350barであり(製造工程の必要に応じて300bar-650barの間で調整することができる)、抽出槽における抽出温度は55℃であり(抽出温度は、製造工程の必要に応じて、45℃-55℃の間で調整することができる)、抽出時間は2時間であり、二酸化炭素流体の流量は10L/hに設定したが、抽出の製造工程の必要に応じて、二酸化炭素流体の流量は5~15L/hの範囲の間に設定することができる。抽出完了すると、アツバノリの抽出液を取得することができ、当該アツバノリの抽出液にはアツバノリの抽出物と当該二酸化炭素流体溶剤が含有され、当該アツバノリの抽出物は当該二酸化炭素流体溶剤に溶解している。
【0020】
最後に、当該アツバノリの抽出液を当該超臨界流体の抽出設備の分離槽に送入して減圧を行い、分離圧力は35barであり(分離圧力はアツバノリの抽出物の分離要件に基づいて30-100barの間で調整することができる)、これにより、当該アツバノリの抽出液からアツバノリの抽出物を分離することができ、当該アツバノリの抽出物と二酸化炭素流体溶剤とを分離した後、エタノールで当該超臨界流体の抽出設備の抽出配管を洗浄し、当該抽出配管に付着した当該アツバノリの抽出物を洗浄する、即ち、当該アツバノリの抽出物をエタノールに溶解させ、当該アツバノリの抽出物を含むエタノールを当該抽出配管から流出させ、これにより、当該アツバノリの抽出物を収集し、エタノールに融解した当該アツバノリの抽出物を室温下に置き、エタノールが室温で揮発するまで待てば、当該アツバノリの抽出物を取得することができる。
【0021】
実施例1のアツバノリの抽出物のHPLC分析
【0022】
実施例1のアツバノリの抽出物中の成分を分析するために、HPLCカラムで分析を行う。分析条件は以下の通りである。HPLCカラムPoroshellHPH-C188(4.6x100mm、2.7μm)を使用し、流速は1ml/minであり、紫外線/可視光線検出器Agilent1260DADを使用して検出を行い(検出過程は、Agilent1260DADの操作マニュアルを参照されたい)、検出光は波長210nm、254nm及び280nmのUV光に設定した。アツバノリの抽出物のHPLC指紋プロファイルは、
図1-3に示す通りである。
【0023】
実施例1のアツバノリの抽出物のGC/MS分析
【0024】
前記アツバノリの抽出物をガスクロマトグラフ(GC)(Agilent7890BGC/5977BEIMassSpec検出器)に置いて分析を行い、より明瞭なGCプロファイルを取得するため、前記アツバノリの抽出物のサンプルを別途採取してシリル化の前処理を行い、同一の方法でガスクロマトグラフィー分析を行い、前記ガスクロマトグラフィーが使用する分析カラムはZB-1XTSIMDISTcolumn(5mx0.53mmID、0.09μm膜厚)であり、ガスクロマトグラフィーの分析結果は、
図4に示す通りであり、当該アツバノリの抽出物にはミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸及び植物ステロールが含有されている。
【0025】
実施例1のアツバノリの抽出物によるヒト毛包真皮乳頭細胞の細胞成長を促進する試験
【0026】
まず、前記抽出方法でアツバノリの抽出物を調製すると同時に、ヒト毛包真皮乳頭細胞(FollicleDermalPapillaCell)細胞株HFDPC(PromoCell社から購入したものであり、製品モデルはC12071である)を用意する。
【0027】
そして、96穴の細胞培養皿を用意し、そのうちの9穴にHFDPC細胞を含有する細胞液(毛包真皮乳頭細胞の成長培養基FollicleDermalPapillaCellGrowthMedium(PromoCell、C-26501))を加え、各穴には5-8×103個の細胞が含有されており、三穴を一群とし、前記HFDPC細胞液を加えた9穴を制御群、実験群1及び実験群2に分け、制御群にはアツバノリの抽出物を完全に加えず、実験群1に最終濃度が5μg/mLであるアツバノリの抽出物を加え、実験群2に最終濃度が25μg/mLであるアツバノリの抽出物を加えた。実験群1及び実験群2にアツバノリの抽出物を加えた後、細胞培養皿を細胞培養箱に入れて37℃の環境で48時間培養し、それぞれ培養から24時間目及び48時間目に、各穴からサンプルを採取して、細胞の生存率に関する試験(MTT試験)により実験群1及び実験群2の細胞増加率を検査した。計算方法は(実験群の吸光値(1又は2)/制御群の吸光値)x100である。
【0028】
試験結果は以下の表一及び
図5に示すとおりであり、培養から24時間目における実験1の制御群に対する細胞成長率は106.5%であり、培養から48時間目における実験1の制御群に対する細胞成長率は108.3%であり、培養から24時間目における実験2の制御群に対する細胞成長率は113.1%であり、培養から48時間目における実験2の制御群に対する細胞成長率は109.2%であった。
【0029】
【0030】
実施例2のアツバノリの抽出物によるヒト毛包真皮乳頭細胞の細胞成長を促進する試験
【0031】
まず、実施例1のアツバノリの抽出方法に基づくが、抽出圧力を365barに調整することで、実施例2のアツバノリの抽出物を調製すると同時に、ヒト毛包真皮乳頭細胞の細胞株HFDPC(PromoCell社から購入したものであり、製品モデルはC12071である)を用意する。
【0032】
そして、細胞培養皿を用意し、そのうちの9穴にHFDPC細胞を含有する細胞液を加え、三穴を一群とし、前記HFDPC細胞液を加えた9穴を制御群、実験群1及び実験群2に分け、制御群にはアツバノリの抽出物を完全に加えず、実験群1に最終濃度が5μg/mLであるアツバノリの抽出物を加え、実験群2に最終濃度が25μg/mLであるアツバノリの抽出物を加えた。実験群1及び実験群2にアツバノリの抽出物を加えた後、細胞培養皿を細胞培養箱に入れて37℃の環境で48時間培養し、それぞれ培養から24時間目及び48時間目に、各穴からサンプルを採取して、MTT試験により各群の細胞増加率を検査した。
【0033】
試験結果は
図6に示す通りであり、培養から24時間目における制御群に対する実験群1の細胞成長率は107.2%であり、培養から48時間目における制御群に対する実験群1の細胞成長率は111.6%であり、培養から24時間目における制御群に対する実験2の細胞成長率は125.7%であり、培養から48時間目における制御群に対する実験2の細胞成長率は145.9%であった。
【0034】
実施例3のアツバノリの抽出物によるヒト毛包真皮乳頭細胞の細胞成長を促進する試験
【0035】
まず、実施例1のアツバノリの抽出方法に基づくが、抽出圧力を420barに調整することで実施例3のアツバノリの抽出物を調製すると同時に、ヒト毛包真皮乳頭細胞の細胞株HFDPC(PromoCell社から購入したものであり、製品モデルはC12071である)を用意した。
【0036】
そして、細胞培養皿を用意し、そのうちの9穴にHFDPC細胞を含有する細胞液を加え、三穴を一群とし、前記HFDPC細胞液を加えた9穴を制御群、実験群1及び実験群2に分け、制御群にはアツバノリの抽出物を完全に加えず、実験群1に最終濃度が5μg/mLであるアツバノリの抽出物を加え、実験群2に最終濃度が25μg/mLであるアツバノリの抽出物を加えた。実験群1及び実験群2にアツバノリの抽出物を加えた後、細胞培養皿を細胞培養箱に入れて37℃の環境で48時間培養し、それぞれ培養から24時間目及び48時間目に、各穴からサンプルを採取して、MTT試験により各群の細胞増加率を検査した。
【0037】
試験結果は
図7に示す通りであり、培養から24時間目における制御群に対する実験群1の細胞成長率は105.6%であり、培養から48時間目における制御群に対する実験群1の細胞成長率は110.3%であり、培養から24時間目における制御群に対する実験2の細胞成長率は116.2%であり、培養から48時間目における制御群に対する実験2の細胞成長率は126.1%であった。
【0038】
実施例4の異なるアツバノリの抽出物のHPLC指紋プロファイルの比較
【0039】
まず、比較のサンプルとしてのアツバノリの抽出物A-Eを提供する。
【0040】
アツバノリの抽出物Aは、前記実施例1におけるアツバノリの抽出物の抽出方法に基づき、抽出条件を以下の条件の通り設定して調製したものである。抽出溶剤は二酸化炭素流体であり、抽出槽における抽出圧力は350barであり、抽出槽における抽出温度は55℃であり、抽出時間は6時間である。
【0041】
アツバノリの抽出物Bは、前記実施例1におけるアツバノリの抽出物の抽出方法に基づき、抽出条件を以下の条件の通り設定して調製したものである。抽出溶剤は二酸化炭素流体であり、抽出槽における抽出圧力は650barであり、抽出槽における抽出温度は55℃であり、抽出時間は2時間である。
【0042】
アツバノリの抽出物Cは、酢酸エチルで抽出したアツバノリの抽出物であり、抽出温度は50℃であり、抽出圧力は1barであり、抽出時間は6時間である。
【0043】
アツバノリの抽出物Dは、純水で抽出したアツバノリの抽出物であり、抽出温度は50℃であり、抽出圧力は1barであり、抽出時間は6時間である。
【0044】
アツバノリの抽出物Eは、95%エタノールで抽出したアツバノリの抽出物であり、抽出温度は50℃であり、抽出圧力は1barであり、抽出時間は6時間である。
【0045】
そして、前記アツバノリの抽出物A-EのHPLC分析を行った。分析条件は以下の通りである。HPLCカラムTSKgelODS-100S(250x4.6mm)を使用し、流速は1ml/minであり、紫外線/可視光線検出器を使用して検出を行い、検出光は波長280nmのUV光に設定した。
【0046】
分析結果は
図8に示す通りであり、図中の各種アツバノリの抽出物のHPLC指紋プロファイル波頭から見ると、同様に、超臨界流体を用いるが、異なる抽出圧力で抽出したアツバノリの抽出物A、Bはその内容物の成分が比較的近く、酢酸エチル、水及びエタノールを溶剤として抽出したアツバノリの抽出物C-Eの内容物の成分は、アツバノリの抽出物A、Bの内容物の成分と異なる。
【0047】
実施例5のアツバノリの抽出物のアクネ桿菌の成長を抑制する試験
【0048】
まず、実施例1のアツバノリの抽出方法に基づき、アツバノリの抽出物を調製すると同時に、当該アツバノリの抽出物の抑菌効果の検査標的としてアクネ桿菌を用意し、選用されたアクネ桿菌の菌種はプロピオニバクテリウム・アクネス菌(Propionibacteriumacnes)(BCRC10723)である。並びに、四皿の強化クロストリジウム培養基(RCMmedium)を用意し、一つ目の培養基には濃度が50μg/mLである抗生物質ゲンタマイシン(Gentamycin)が含有されているものを制御群1とした。二つ目の培養基には別途成分を添加しないものを制御群2とした。三つ目の培養基には濃度が1mg/mLである前記アツバノリの抽出物を添加したものを実験群1とした。四つ目の培養基には濃度が0.5mg/mLである前記アツバノリの抽出物を添加したものを実験群2とした。
【0049】
そして、アクネ桿菌を強化クロストリジウム液体培地(RCM)培養液に接種し、アクネ桿菌の初期接種菌量は1.15×105CFU/mLであり、37℃で48時間嫌気培養すると、アクネ桿菌菌液が得られ、前記4群の培養基に100μLのアクネ桿菌菌液を均等に塗り、アクネ桿菌菌液を塗った前記4群の培養基を37℃の培養箱に入れて嫌気培養を48時間行い、培養が完了した後、培養箱から前記4群の培養基を取り出し、前記4群のコロニー形成単位(Colony-formingunit、CFU)を計算する。
【0050】
実施例5の試験結果は以下表二に示す通りであり、制御群1に抗生物質を添加したため、殺菌効果を奏することができた。実施例5のアツバノリの抽出物の濃度が0.5mg/mLに達したとき、制御群2と比較して、菌量成長を抑制する現象があった。実施例5のアツバノリの抽出物の濃度が1mg/mLに達したとき、殺菌効果があった。
【0051】
【0052】
実施例6のアツバノリの抽出物の角質細胞移動を促進する能力に関する試験
【0053】
まず、比較サンプルとしてアツバノリの抽出物F-Hを提供する。
【0054】
アツバノリの抽出物Fは、前記実施例1におけるアツバノリの抽出物の抽出方法に基づき、抽出条件を以下の条件の通り設定して調製したものである。抽出対象は番号1081204の乾燥したアツバノリ細粉であり、抽出溶剤は二酸化炭素流体であり、抽出槽における抽出圧力は365barであり、抽出槽における抽出温度は55℃であり、抽出時間は4時間である。
【0055】
アツバノリの抽出物Gは、前記実施例1におけるアツバノリの抽出物の抽出方法に基づき、抽出条件を以下の条件の通り設定して調製したものである。抽出対象は番号1081105-1の乾燥したアツバノリ細粉であり、抽出溶剤は二酸化炭素流体であり、抽出槽における抽出圧力は365barであり、抽出槽における抽出温度は55℃であり、抽出時間は4時間である。
【0056】
アツバノリの抽出物Hは、前記実施例1におけるアツバノリの抽出物の抽出方法に基づき、抽出条件を以下の条件の通り設定して調製したものである。抽出対象は番号1081105-2の乾燥したアツバノリ細粉であり、抽出溶剤は二酸化炭素流体であり、抽出槽における抽出圧力は420barであり、抽出槽における抽出温度は55℃であり、抽出時間は4時間である。
【0057】
そして、96穴の細胞培養皿及びOrisTMCellMigrationキットを用意し、そのうちの15個の穴にOrisTMCellMigrationキットの中のストッパを挿入し、ストッパに前記15個の穴に配置した後、それぞれ前記当該穴に2×104のヒト角質細胞株(ATCCCRL-2309)をそれぞれ接種し、三穴を一群とし、前記ヒト角質細胞株を接種した15穴を制御群1、制御群2、実験群1、実験群2及び実験群3に分けた。制御群1に0.05%のDMSOを加え、制御群2に0.05%のDMSO及び100ng/mLの表皮成長因子(EGF)(EGFはヒト角質細胞の移動を促進することができる)を加え、実験群1に0.05%のDMSO及び1μg/mLのアツバノリの抽出物Fを加え、実験群2に0.05%のDMSO及び1μg/mLのアツバノリの抽出物Gを加え、実験群3に0.05%のDMSO及び1μg/mLのアツバノリの抽出物Hを加えた。前記五群に検査したサンプルを加え終わった後、前記96穴の細胞培養皿を細胞箱に入れて、37℃の環境で24時間培養し、前記96穴の細胞培養皿で24時間培養した後に、各群の穴に配置されたストッパ取り出して、各群の穴の上清液を取り除き、50μLの生体蛍光染料(CalceinAM)(1μM)を加えて1時間静置した。
【0058】
最後に、蛍光顕微鏡OlympusCKX53で前記五群の穴の影像を撮影し、撮影した影像数値(即ち、蛍光信号の数値を選定した)から前記五群の穴のヒト角質細胞株の細胞移動率を計算した。
【0059】
試験結果は
図9及び
図10に示す通りである。
図9からわかる通り、ヒト角質細胞の移動を促進することができる成分を添加しない制御群1と比較して、実験群1、実験群2及び実験群3は明らかな細胞の移動傾向を有しており、
図10からわかる通り、実験群1、実験群2及び実験群3の細胞移動率はいずれも制御群1より高く、制御群1の移動率は100%であり、実験群1の移動率は165.78%であり、実験群2の移動率は190.25%であり、実験群3の移動率は156.08%であった。
【0060】
実施例7のアツバノリの抽出物の角質細胞の成長を促進する試験
【0061】
まず、実施例1のアツバノリの抽出方法に基づきアツバノリの抽出物を調製すると同時に本試験の検査標的として、ヒト角質細胞株(ATCCCRL-2309)を用意した。
【0062】
そして、96穴の細胞培養皿を用意し、そのうちの15個の穴に2×104ヒト角質細胞株(ATCCCRL-2309)を接種し、三穴を一群とし、前記接種したヒト角質細胞株の15穴を制御群1、制御群2、実験群1、実験群2及び実験群3に分けた。制御群1に1%のDMSOを加え、制御群2に1%のDMSO及び100ng/mLの表皮成長因子(EGF)を加え、実験群1に1%のDMSO及び1.2μg/mLのアツバノリの抽出物を加え、実験群2に1%のDMSO及び6.0μg/mLのアツバノリの抽出物を加え、実験群3に1%のDMSO及び24.1μg/mLのアツバノリの抽出物を加えた。
【0063】
前記五群に検査サンプルを加え終わった後、前記96穴の細胞培養皿を細胞培養箱に入れて37℃の環境で24時間培養し、前記96穴の細胞培養皿を24時間培養した後、MTS/PMS試験で細胞の生存率を検査する。本実施例7におけるMTS/PMS試験の大まかな過程は以下の通りである。96穴の細胞培養皿にMTS/PMS試薬を加えて4時間反応させ、波長490nmの箇所の吸光値を測定して細胞の生存率を計算する。
【0064】
試験結果は
図11に示す通りであり、濃度が6μg/mL以上であるアツバノリの抽出物は角質細胞の成長を促進する効果を有する。制御群1のOD
490吸光値は1.57に達し、制御群2のOD
490吸光値は1.62に達し、実験群1のOD
490吸光値は1.59に達し、実験群2のOD
490吸光値は1.68に達し、実験群3のOD
490吸光値は1.89に達した。これらの数値からわかる通り、実験群2(6.0μg/mLのアツバノリの抽出物を含有する)は制御群2(表皮成長因子を添加した)に相当する効果を有する。
【0065】
前記アツバノリの抽出物方法により、新たな抽出方法を提供することで、アツバノリから高い経済価値を有する成分を抽出する、即ち、前記方法より抽出したアツバノリの抽出物は、毛包細胞の成長活性を促進する薬物、アクネ桿菌の成長を抑制する薬物若しくは化粧品又は角質細胞の活性を増進する薬物若しくは化粧品を調製するために用いることができる。
【0066】
本発明は前記で好ましい実施例を開示しているものの、前記実施例は本発明を記述するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものと捉えてはならないと、当業者は理解するものとする。注意すべきは、前記実施例の等価変更や置換は何れも本発明の範疇に含まれるものとする。従って、本発明の保護範囲は下記の特許請求の範囲で定義するものを基準とする。
【符号の説明】
【0067】
無し