(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】対基板作業機および対基板作業機システム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
H05K13/04 P
(21)【出願番号】P 2022147261
(22)【出願日】2022-09-15
(62)【分割の表示】P 2021524605の分割
【原出願日】2019-06-06
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篭嶋 裕之
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-204198(JP,A)
【文献】特開2013-038114(JP,A)
【文献】特開2015-153935(JP,A)
【文献】特開2009-110994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックアッププレートと、
前記バックアッププレートに配置されて基板を下方から支持するバックアップ部材と、
前記バックアップ部材を移動させる移動装置と、
前記バックアッププレートに配置される前記バックアップ部材の位置を示す位置プログラムに基づいて前記移動装置の動作を制御する移動制御部と、
前記基板に対する所定の対基板作業の実行に関する作業評価データに基づいて、前記バックアップ部材の増減および前記バックアップ部材の位置の変更を含む調整処理の要否を判定する判定部と、
機内に前記基板を搬入するとともに位置決めし、対基板作業の実行後に前記基板を機外へと搬出する搬送処理を実行する基板搬送装置と、
を備え
、
前記作業評価データには、複数回に亘り実行された前記搬送処理において位置決めされた前記基板の位置および角度を集計し、前記搬送処理における前記基板の位置決め予定位置および予定角度に対する前記基板の位置決め誤差の統計データが含まれ、
前記判定部は、前記統計データにおける前記基板の位置決め誤差の傾向に基づいて、前記調整処理の要否を判定する対基板作業機。
【請求項2】
前記作業評価データには、複数回に亘り実行された所定の対基板作業において前記基板に設定された複数の区画ごとに発生したエラーの種類および回数が含まれ、
前記判定部は、前記複数の区画の少なくとも一つ対象区画における所定種類の前記エラーの発生頻度が規定値よりも高い場合に、前記対象区画に対応する前記基板の裏面の領域に前記バックアップ部材を配置する前記調整処理が必要であると判定する、請求項
1に記載の対基板作業機。
【請求項3】
前記作業評価データには、複数回に亘り実行された所定の対基板作業において前記基板に設定された複数の区画ごとの作業精度が含まれ、
前記判定部は、前記複数の区画の少なくとも一つ対象区画における前記作業精度が規定値よりも低下している場合に、前記対象区画に対応する前記基板の裏面の領域に前記バックアップ部材を配置する前記調整処理が必要であると判定する、請求項1
または2に記載の対基板作業機。
【請求項4】
前記対基板作業機は、前記判定部が前記調整処理を必要と判定した場合に、前記調整処理が実行されるように前記位置プログラムを自動編集する編集部をさらに備える、請求項1-
3の何れか一項に記載の対基板作業機。
【請求項5】
前記編集部は、前記判定部による要否判定において前記バックアップ部材の増減および前記バックアップ部材の位置の変更が必要と判定された場合に、前記調整処理により前記要否判定の結果の要因が軽減されるように、前記バックアッププレートに配置すべき前記バックアップ部材の位置を前記作業評価データに基づいて設定して前記位置プログラムを編集する、請求項
4に記載の対基板作業機。
【請求項6】
前記対基板作業機は、
機内に前記基板を搬入するとともに位置決めし、対基板作業の実行後に前記基板を機外へと搬出する搬送処理を実行する基板搬送装置と、
前記基板が搬入または搬出される際に前記基板の裏面から前記バックアップ部材を下方に退避させて、前記基板の裏面に装着された部品と前記バックアップ部材とが干渉しない準備高さまで前記バックアッププレートを下降させる昇降装置と、をさらに備え、
前記編集部は、前記バックアップ部材を増加または前記バックアップ部材の位置を変更において複数の位置候補がある場合に、必要な前記準備高さが高いものを優先的に選択する、請求項
4または5に記載の対基板作業機。
【請求項7】
前記対基板作業機は、前記判定部が前記調整処理を必要と判定した場合に、作業者に対して前記調整処理が必要であることを通知する通知部をさらに備える、請求項1-
6の何れか一項に記載の対基板作業機。
【請求項8】
前記対基板作業機は、前記基板に部品を装着する部品装着機であり、
前記移動装置は、
移動台を水平方向に移動させるヘッド駆動装置と、
前記移動台に設けられ、供給される前記部品および前記バックアップ部材を保持可能な装着ヘッドと、を備える、請求項1-
7の何れか一項に記載の対基板作業機。
【請求項9】
バックアッププレートと、
前記バックアッププレートに配置されて基板を下方から支持するバックアップ部材と、
前記バックアップ部材を移動させる移動装置と、
前記バックアッププレートに配置される前記バックアップ部材の位置を示す位置プログラムに基づいて前記移動装置の動作を制御する移動制御部と、
前記基板に対する所定の対基板作業の実行に関する作業評価データに基づいて、前記バックアップ部材の増減および前記バックアップ部材の位置の変更を含む調整処理の要否を判定する判定部と、
機内に前記基板を搬入するとともに位置決めし、対基板作業の実行後に前記基板を機外へと搬出する搬送処理を実行する基板搬送装置と、
を備え
、
前記作業評価データには、複数回に亘り実行された前記搬送処理において位置決めされた前記基板の位置および角度を集計し、前記搬送処理における前記基板の位置決め予定位置および予定角度に対する前記基板の位置決め誤差の統計データが含まれ、
前記判定部は、前記統計データにおける前記基板の位置決め誤差の傾向に基づいて、前記調整処理の要否を判定する対基板作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対基板作業機および対基板作業システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
対基板作業機は、基板製品の生産に用いられる。特許文献1には、所定の対基板作業として基板に部品を装着する部品装着機が開示されている。このような部品装着機は、機内に搬入された基板を位置決めするとともに、下方からバックアップ部材を基板に接触させて支持する。上記のバックアップ部材は、実行予定の対基板作業や基板の種別、基板の裏面(位置決めされた基板の下面)の状態に応じて生成される位置プログラム(特許文献1の
図10に示されるバックアップピン座標データに相当)に基づいて配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、対基板作業機において位置プログラムが編集されると、裏面に装着されている部品とバックアップ部材との干渉が発生するおそれがある。そのため、対基板作業機における位置プログラムの編集は、原則的に禁止されるのが一般的である。これに対して、例えば所定の対基板作業が多数回に亘り実行されると、作業結果の傾向から位置プログラムの編集が求められることがある。しかしながら、仮に位置プログラムの編集を許可したとしても、作業者が位置決めされた基板の裏面を視認できなないため、バックアップ部材の適正な調整処理を行うことは容易でない。
【0005】
また、所定の対基板作業を多数回に亘り実行した場合に、例えば同様のエラーが複数回に亘り発生したとしてもバックアップ部材の位置の調整処理によりエラーが解決するか否かは判断が難しい。対基板作業機による好適な生産を維持するためには変動し得る生産環境に対応しつつ、バックアップ部材の位置の調整処理の要否が正確に判定されることが望ましい。
【0006】
本明細書は、第一の課題として、バックアップ部材の位置の調整処理が適正に実行されるように、位置プログラムの編集を許容することができる対基板作業を提供することを目的とする。また、本明細書は、第二の課題として、バックアップ部材の位置の調整処理の要否をより正確に判定することができる対基板作業機および対基板作業機システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、バックアッププレートと、前記バックアッププレートに配置されて基板を下方から支持するバックアップ部材と、前記バックアップ部材を移動させる移動装置と、前記バックアッププレートに配置される前記バックアップ部材の位置を示す位置プログラムに基づいて前記移動装置の動作を制御する移動制御部と、前記基板を示す基板画像に前記位置プログラムが示す前記バックアップ部材の位置を重ねて表示する表示部と、作業者による前記バックアップ部材の増減および前記バックアップ部材の位置の変更の要求を受け付けて前記位置プログラムを編集する編集部と、を備える第一の対基板作業機を開示する。
【0008】
本明細書は、バックアッププレートと、前記バックアッププレートに配置されて基板を下方から支持するバックアップ部材と、前記バックアップ部材を移動させる移動装置と、前記バックアッププレートに配置される前記バックアップ部材の位置を示す位置プログラムに基づいて前記移動装置の動作を制御する移動制御部と、前記基板に対する所定の対基板作業の実行に関する作業評価データに基づいて、前記バックアップ部材の増減および前記バックアップ部材の位置の変更を含む調整処理の要否を判定する判定部と、を備える第二の対基板作業機を開示する。
本明細書は、バックアッププレートと、前記バックアッププレートに配置されて基板を下方から支持するバックアップ部材と、前記バックアップ部材を移動させる移動装置と、前記バックアッププレートに配置される前記バックアップ部材の位置を示す位置プログラムに基づいて前記移動装置の動作を制御する移動制御部と、前記基板に対する所定の対基板作業の実行に関する作業評価データに基づいて、前記バックアップ部材の増減および前記バックアップ部材の位置の変更を含む調整処理の要否を判定する判定部と、を備える対基板作業システムを開示する。
【発明の効果】
【0009】
第一の対基板作業機の構成によると、作業者は、バックアップ部材の位置を重ねて表示された基板画像を参照しながら、バックアップ部材の調整を指示することができる。よって、対基板作業機は、バックアップ部材の位置の調整処理が適正に実行されるように、位置プログラムの編集を許容することができる。
【0010】
第二の対基板作業機および対基板作業システムの構成によると、対基板作業の実行に関する作業評価データに基づいて、バックアップ部材の位置の調整処理の要否を判定できる。これにより、必要な調整処理を確実に実行することができ、対基板作業の精度および効率を向上できる。また、不要な調整処理が実行されることを防止でき、生産性の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態における部品装着機を示す斜視図である。
【
図2】基板搬送装置のバックアップ装置を示す側面図である。
【
図4】第一態様における部品装着機の制御装置を示すブロック図である。
【
図5】制御装置の表示装置に表示された基板画像を含む各種情報を示す図である。
【
図6】第一態様の位置プログラムの編集処理を示すフローチャートである。
【
図7】第二態様における部品装着機の制御装置を示すブロック図である。
【
図9】第二態様の位置プログラムの編集処理を示すフローチャートである。
【
図10】第三態様における部品装着機の制御装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、対基板作業機を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。対基板作業機は、種々の基板製品を生産するために基板に所定作業を実行する。対基板作業機は、一例として基板製品を生産する生産ラインを構成する。生産ラインは、例えば基板にはんだを印刷する印刷機、基板に部品を装着する部品装着機、基板を加熱してはんだ付けを行うリフロー炉、基板製品の機能や外観を検査する検査機などにより構成される。
【0013】
生産ラインは、生産する基板製品の種別などに応じて、その構成を適宜追加、変更され得る。具体的には、生産ラインには、搬送される基板を一時的に保持するバッファ装置、基板供給装置、基板反転装置、シールド装着装置、接着剤塗布装置、紫外線照射装置などの対基板作業機が適宜設置され得る。本実施形態において例示する構成は、所定の対基板作業の実行中においてバックアップ部材を用いて基板を支持する対基板作業機に適用可能である。以下では、位置プログラムの編集を許容することができる構成、またはバックアップ部材の位置の調整処理の要否を判定することができる構成が、対基板作業機としての部品装着機に適用された態様を例示する。
【0014】
1.部品装着機1の構成
部品装着機1は、
図1に示すように、基板搬送装置10、部品供給装置20、部品移載装置30、部品カメラ41、基板カメラ42、および制御装置60を備える。以下の説明において、水平方向であって部品装着機1の前後方向(
図1の左下から右上に向かう方向)をY方向とし、Y方向に交差する水平方向であって部品装着機1の左右方向(
図1の左上から右下に向かう方向)をX方向とし、X方向およびY方向に直交する鉛直方向(
図1の上下方向)をZ方向とする。
【0015】
基板搬送装置10は、Y方向に並んで設置された複数の搬送機構11などにより構成される。複数の搬送機構11は、一対のガイドレール12,13、およびコンベアベルト14をそれぞれ有する。一対のガイドレール12,13は、基板の搬送方向(X方向)に延伸し、コンベアベルト14に載置されて搬送される基板70の周縁を支持する。一対のガイドレール12,13の少なくとも一方は、Y方向に移動可能に基台2に設けられる。
【0016】
基板搬送装置10は、基板70を搬送方向へと順次搬送するとともに、基板70を機内の所定位置に位置決めする。基板搬送装置10は、位置決めされた基板70をクランプするバックアップ装置15を有する。基板搬送装置10およびバックアップ装置15の詳細構成については後述する。基板搬送装置10は、部品の装着処理の実行後に、基板70を部品装着機1の機外に搬出する。
【0017】
部品供給装置20は、基板70に装着される部品を供給する。部品供給装置20は、X方向に並んでセットされたフィーダ21を備える。フィーダ21は、多数の部品が収納されたキャリアテープを送り移動させて、部品を採取可能に供給する。また、部品供給装置20は、例えば比較的大型の部品を、パレットに載置されたトレイ上に並べた状態で供給してもよい。上記のような構成において、部品供給装置20は、複数のパレットを収納する収納装置から装着処理に応じて所定のパレットを引き出して部品を供給する。
【0018】
部品移載装置30は、部品供給装置20により供給された部品を、基板搬送装置10により機内に搬入された基板70上の所定の装着位置まで移載する。部品移載装置30のヘッド駆動装置31は、直動機構により移動台32を水平方向(X方向およびY方向)に移動させる。移動台32には、図示しないクランプ部材により装着ヘッド33が交換可能に固定される。装着ヘッド33には、種々の保持部材が着脱可能に取り付けられる。上記の保持部材は、部品または後述するバックアップ部材50(
図2を参照)を保持する。
【0019】
吸着ノズル34は、供給される負圧エアを用いて部品を吸着して保持する。また、装着ヘッド33には、部品をクランプするチャックを取り付けることができる。さらに、装着ヘッド33には、例えばバックアップ部材50の所定部位と係合することによって、バックアップ部材50を保持する保持部材を取り付けることができる。上記のように、部品移載装置30は、バックアップ部材50を保持可能に構成され、バックアップ部材50を移動させる移動装置として機能する。部品移載装置30は、バックアップ部材50の配置処理および配置後の調整処理(増減および位置の変更)に用いられる。
【0020】
部品カメラ41、および基板カメラ42は、CMOSなどの撮像素子を有するデジタル式の撮像装置である。部品カメラ41、および基板カメラ42は、制御信号に基づいて撮像を行い、当該撮像により取得した画像データを送出する。部品カメラ41は、装着ヘッド33の吸着ノズル34に保持された部品を下方から撮像可能に構成される。基板カメラ42は、移動台32に設けられ、移動台32の移動に伴って装着ヘッド33と一体的に移動する。基板カメラ42は、基板70を上方から撮像可能に構成される。
【0021】
制御装置60は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。制御装置60は、基板70に部品を装着する装着処理を実行する。制御装置60は、装着処理において、各種センサから出力される情報や画像処理の結果、予め記憶された制御プログラムM2などに基づき、部品移載装置30の動作を制御する。これにより、装着ヘッド33に支持された複数の吸着ノズル34の位置および角度が制御される。また、制御装置60は、装着処理において基板搬送装置10が基板70を下方から支持するのに用いるバックアップ部材50の増設または除去、およびバックアップ部材50の位置の変更を含む調整処理を実行する。
【0022】
制御装置60は、
図1に示すように、記憶装置61を備える。記憶装置61は、ハードディスク装置などの光学ドライブ装置、またはフラッシュメモリなどにより構成される。この記憶装置61には、位置プログラムM1や制御プログラムM2などの各種データが記憶される。上記の「位置プログラムM1」は、
図3に示すように、基板70に対するバックアップ位置、バックアップ部材50の種別(ピンタイプ)、およびバックアップ部材50を配置すべき位置(ピン位置)などを示し、生産する基板製品の種別や生産工程に応じて設定される。
【0023】
上記の「バックアップ位置」と「ピン位置」とが相違するのは、バックアップ部材50における基板70との接触部位(バックアップ位置に相当)と、配置に係る基準部位(例えば、保持される部位でありピン位置に相当)とがXY方向にずれている場合である。上記の「制御プログラムM2」は、装着処理において基板70に装着される部品の装着位置および装着順序を示す。
【0024】
制御装置60は、表示装置62を備える。表示装置62は、作業者が視認可能に設けられ、各種情報を表示する。本実施形態において、表示装置62は、タッチスクリーンおよび複数のボタンを有するとともに、図示しないマウスなどの入力デバイスと連携し、作業者による操作を受け付ける。
【0025】
2.基板搬送装置10およびバックアップ装置15の詳細構成
基板搬送装置10は、上記のように複数の搬送機構11を備えるダブルトラックコンベア方式である。搬送機構11を構成する一対のガイドレール12,13は、Y方向に相対移動可能に基台2に設けられる。これにより、複数の搬送機構11は、基板70のY方向の寸法に対応して、一対のガイドレール12,13の間隔を調整される。
【0026】
バックアップ装置15は、搬送機構11により搬送された基板70を下方から支持するとともに、一対のガイドレール12,13との間で基板70をクランプする。本実施形態において、バックアップ装置15は、基板70の下面にバックアップ部材50を接触させて基板70を支持する。これにより、バックアップ装置15は、一対のガイドレール12,13との間で基板70をクランプするとともに、バックアップ部材50が接触した部位の高さを維持することで基板70の撓みを防止する。
【0027】
バックアップ装置15は、
図2に示すように、バックアッププレート16、および昇降装置17を備える。バックアッププレート16は、搬送機構11により位置決めされた基板70の下面に対向して配置される。バックアッププレート16は、Z方向に昇降可能に基台2に設けられる。本実施形態において、バックアッププレート16は、矩形状に形成される。バックアッププレート16の上面には、バックアップ部材50が着脱可能に配置される。
【0028】
昇降装置17は、バックアッププレート16を基台2に対して昇降させる。本実施形態において、昇降装置17は、ロッド18およびシリンダ本体19を有する複数のエアシリンダにより構成される。各エアシリンダのロッド18は、バックアッププレート16の四隅に着脱可能に固定される。各エアシリンダのシリンダ本体19は、空気圧に応じてロッド18をZ方向に進退させる。
【0029】
バックアップ装置15の昇降装置17は、基板70が搬入または搬出される際に基板70の裏面からバックアップ部材50を下方に退避させる。これにより、昇降装置17は、基板70の裏面に装着された部品(以下、「裏面部品81」と称する)とバックアップ部材50とが干渉しない準備高さTpまでバックアッププレート16を下降させる(
図2の二点鎖線にて示す)。また、昇降装置17は、装着処理の実行中において、バックアッププレート16をバックアップ高さTb(
図2の実線にて示す)まで上昇させる。これにより、バックアップ装置15は、基板70を下方から押し上げて支持する。
【0030】
ここで、バックアップ部材50は、バックアッププレート16の上面に脱着可能に配置される。本実施形態において、バックアップ部材50には、先端部が比較的硬い部材(例えば金属部材)で構成されているハードピン51と、先端部が比較的軟らかい部材(例えばゴム部材)で構成されているソフトピン52とが含まれる。ハードピン51およびソフトピン52は、下端に位置する基部に磁石が埋設され、磁力によいバックアッププレート16に固定される。また、ハードピン51およびソフトピン52は、基部の上方に同形状の係合部を形成される。係合部は、装着ヘッド33に取り付けられた保持部材と係合する。
【0031】
3.バックアップ部材50の配置処理の概要
部品装着機1の制御装置60は、例えば所定の基板製品に対応する装着処理を実行する前に、バックアップ部材50の移動装置として機能する部品移載装置30を用いて、位置プログラムM1に基づくバックアップ部材50の配置処理を実行する。配置処理を実行する目的は、例えば基板の寸法や装着する部品の数量や位置に応じて変動し得るバックアップ部材50の種別および配置すべき位置に対応するためである。
【0032】
なお、基板70の寸法が大きく、また装着時に基板に比較的強い押付力が加えられるなどの事情により基板の撓みが懸念される場合に、バックアップ部材50としては、基板の下面における被支持部の変位を最小限にできるハードピン51が適している。一方で、装着処理においてバックアップ部材50により支持される基板の下面に前工程で部品が既に装着されている場合に、バックアップ部材50としては、基板の下面の凹凸を吸収しつつ支持可能なソフトピン52が適している。
【0033】
そのため、部品装着機1は、生産する基板製品の種類が変わる際に、段取りの一つとしてバックアップ部材50の配置を必要に応じて変更する。この配置の変更には、バックアップ部材50を基板70の下方に位置するバックアッププレート16に固定することの他に、バックアップ部材50の除去(基板70の支持には用いないストック領域への移動)が含まれる。
【0034】
制御装置60は、バックアップ部材50の配置処理を実行に際して、装着ヘッド33にバックアップ部材50の保持部材を取り付ける。上記の保持部材は、例えば複数の吸着ノズル34を収容するノズルステーション(図略)に収容され、装着ヘッド33に取り付けられている吸着ノズル34と交換される。制御装置60は、部品移載装置30を駆動させて、対象のバックアップ部材50を位置プログラムM1により示される位置に適宜移動させる。制御装置60は、全てのバックアップ部材50の配置が完了した後に、ノズルステーションに保持部材を収容させて配置処理を終了する。また、制御装置60は、ストック領域を含む全てのバックアップ部材50の現在位置を記憶装置61に記憶する。
【0035】
4.制御装置60の詳細構成
4-1.第一態様の概要
ここで、上記のようなバックアップ部材50の配置処理に用いられる位置プログラムM1は、実行予定の装着処理に適するように予め設定される。しかしながら、同一の装着処理を繰り返し実行すると、作業結果の傾向からバックアップ部材50の配置を調整することの要請が発生し得る。具体的には、想定していたよりも基板70の撓みが大きかったり、位置決めされる基板70の多くに同様のずれが発生したりする場合が想定される。
【0036】
上記のような作業結果は、装着処理を実行する部品装着機1の保守を行う現場の作業者が認識することが多い。しかしながら、バックアップ部材50の配置を現場の作業者が調整することは、位置プログラムM1の編集に相当する。そして、例えば作業結果の傾向にのみ対応した調整を行うと、裏面に既に装着されている部品とバックアップ部材50が干渉したり、バックアップ部材50との接触を避けるべきランドなどの部位にバックアップ位置を設定してしまったりするおそれがある。そのため、生産ラインの管理上は、装着処理の現場における位置プログラムM1の編集は禁止することが望ましい。
【0037】
一方で、管理者に対して作業結果の傾向を通知し位置プログラムM1の編集を要望していたのでは、編集された位置プログラムM1が適用されるまでに時間を要する。そのため、現場における作業者の利便性や、生産性の維持の観点からは、バックアップ部材50の位置調整が許可されることが望ましい。しかしながら、仮に現場における位置プログラムM1の編集を許可したとしても、作業者は、基板70の裏面を視認することができないため、例えば増設するバックアップ部材50を具体的にどの位置に配置するかを適正に設定することは容易でない。
【0038】
そこで、本実施形態の第一態様において、部品装着機1は、所定の情報を作業者に表示することを前提として、位置プログラムM1の編集(バックアップ部材50の位置の調整)を受け付ける構成を採用する。具体的には、部品装着機1は、
図4に示すように、移動制御部63、表示部64、および編集部65を備える。第一態様において、移動制御部63、表示部64、および編集部65は、制御装置60に組み込まれている。
【0039】
4-1-1.移動制御部63
移動制御部63は、位置プログラムM1に基づいて移動装置(部品移載装置30)の動作を制御する。移動制御部63は、バックアップ部材50の配置処理および調整処理において、部品移載装置30の動作を制御する。移動制御部63は、後述する編集部65によって位置プログラムM1が編集されると、編集後の位置プログラムM1が示すバックアップ部材50の位置と、記憶装置61に記憶されているバックアップ部材50の現在位置との相違に基づいて、必要な調整処理を実行する。
【0040】
4-1-2.表示部64
表示部64は、
図5に示すように、基板70を示す基板画像170に位置プログラムM1が示すバックアップ部材50の位置(バックアップ位置P1-P4)を重ねて表示する。また、表示部64は、下記のように種々の表示情報について表示と非表示を切り換えることができる。第一態様において、表示部64は、
図5の右下部に示すように、作業者が表示を要求する項目についてチェックすることにより、当該項目に係る情報を基板画像170に重ねて表示する。
【0041】
表示部64は、基板画像170に基板70の裏面に装着された部品(裏面部品81)を示す裏面部品画像181を重ねて表示してもよい。表示部64は、裏面部品画像181の外形のみを表示してもよいし、加えて裏面部品81の向きや所定の特徴部分を併せて表示するようにしてもよい。これらの表示対象は、予め設定されていてもよいし、作業者の要求により表示と非表示を切り換えるようにしてもよい。
【0042】
また、表示部64は、基板画像170に基板70の裏面に装着された部品(裏面部品81)の高さを、数値、色彩、および模様の少なくとも一つにより表示してもよい。
図5は、作業者により選択された「数値」との態様により裏面部品81の高さを示している。上記の他に、表示部64は、高さに応じて色の濃淡を変動させたり、模様や記号、若しくはこれらを組み合わせたりして裏面部品81の高さを表示してもよい。このような構成により、作業者は、裏面部品81の高さを把握することができる。これにより、例えば準備高さTpがなるべく高くなるような位置にバックアップ部材50を配置できる。
【0043】
ここで、基板画像170および裏面部品画像181は、基板70に部品が装着された後に当該基板70を撮像して取得された画像データF1に基づいて生成された画像であってもよい。詳細には、基板70の裏面が上面にされた状態で上記の裏面部品81が装着された後に、このときの基板70の上面を撮像し、当該撮像により画像データF1が取得される。取得された画像データF1は、制御装置60の記憶装置61に記憶される。
【0044】
なお、上記の画像データF1は、例えば外観検査装置における撮像により取得されたものでもよいし、部品装着機1が部品を装着した後に基板カメラ42を用いた撮像により取得されたものでもよい。基板カメラ42のカメラ視野よりも撮像対象の基板70の方が大きい場合には、基板70に対して基板カメラ42を相対移動させて撮像を複数回に亘って行い、それぞれの撮像で取得した画像データを合成して上記の画像データF1としてもよい。
【0045】
表示部64は、基板画像170および裏面部品画像181を、表面を上面として表示する場合には、画像データF1を上下軸または左右軸で反転させて表示する。さらに、表示部64は、画像データF1から抽出した主要部を表示してもよい。このような構成により、作業者は、裏面部品81の実際の装着状態を把握することができ、基板70の裏面の状態に対応してバックアップ部材50を配置できる。
【0046】
また、基板画像170および裏面部品画像181は、実行予定の対基板作業により生産される基板製品の設計データF2に基づいて生成された画像であってもよい。詳細には、例えば制御プログラムM2を生成するために基板70に対する裏面部品81の位置および角度を示すデータに部品の外観を含むパートデータに基づいて設計データF2が生成される。また、設計データF2は、CADデータであってもよい。取得された設計データF2は、制御装置60の記憶装置61に記憶される。このような構成により、作業者は、基板70および裏面部品81の理想の装着状態を把握することができ、基板70の裏面の状態に対応してバックアップ部材50を配置できる。
【0047】
さらに、表示部64は、基板画像170に実行予定の対基板作業により装着される部品を示す表面部品画像182を重ねて表示してもよい。これにより、作業者は、基板70のうちどの領域に装着動作に伴う押付力が加えられるのかを把握できる。また、表面部品画像182の外形から部品種を概ね把握することができれば、作業者は、押付力の大きさを容易に想定することができ、適切なバックアップ部材50の位置を設定できる。
【0048】
また、表示部64は、基板画像170に当該基板70のランド171、ホール172、基準マーク173、および基板70に付された情報コード174の少なくとも一つを示す特徴画像を重ねて表示してもよい。なお、上記の特徴画像は、基板70の表面および裏面の何れか一方のみにあるものを対象としてもよいし、両面にあるものを対象としてもよい。これにより、作業者は、表示されている基板画像170を実際の基板70に近いものとして把握できる。また、裏面のランド171などを避けてバックアップ部材50を配置できる。
【0049】
さらに、表示部64は、基板画像170に基板70の裏面においてバックアップ部材50との接触が規制されたバックアップ部材50の配置規制領域Rgを重ねて表示してもよい。上記の配置規制領域Rgは、例えば管理者が現場において位置プログラムM1が編集されることを想定して、バックアップ部材50の配置には不適切な領域を定義するものである。なお、表示部64は、配置規制領域Rgに加えて、または換えて配置許可領域Rpを表示してもよい。このような構成により、誤って不適切な位置にバックアップ部材50が配置されることを防止できる。
【0050】
また、表示部64は、後述するように作業者によるバックアップ部材50の調整を受け付けた場合に、そのバックアップ部材50を基板画像170に重ねて表示する。表示部64は、既に配置されているバックアップ部材50および調整されたバックアップ部材50を識別可能に表示してもよい。また、表示部64は、表示するバックアップ部材50の種別を識別可能に、形状や色彩、文字、記号、若しくはこれらの組み合わせにより表示してもよい。
【0051】
4-1-3.編集部65
編集部65は、作業者によるバックアップ部材50の増減およびバックアップ部材50の位置の変更の要求を受け付けて位置プログラムM1を編集する。詳細には、編集部65は、表示装置62のタッチスクリーンや各種のボタンへの操作、または入力デバイスへの操作によりバックアップ部材50の増設、除去、位置の変更、種別の変更などを受け付ける。具体的には、作業者は、
図5の左下に示されるピン情報において、バックアップ部材50を追加する位置と種別を入力した後に、追加ボタンを押下する。これにより、バックアップ部材50がリストに追加されるとともに、表示部64により増設したバックアップ部材50が基板画像170に重ねて表示される。
【0052】
また、編集部65は、バックアップ部材50の少なくとも一つが現在状態と異なる状態とされた場合に、または作業者によるバックアップ部材50の位置の調整作業が終了した後に(例えばOKボタンが押下された後に)、位置プログラムM1を編集して記憶装置61に記憶させる。なお、編集部65は、作業者により配置規制領域Rgの内部へのバックアップ部材50の配置を受け付けた場合に、位置プログラムM1の編集を禁止する。このとき、編集部65は、バックアップ部材50の少なくとも一つが配置規制領域Rgにあること(または、配置許可領域Rpにないこと)を作業者に通知して、配置変更を促すようにしてもよい。
【0053】
4-1-4.位置プログラムM1の編集処理
位置プログラムM1の編集処理について、
図5および
図6を参照して説明する。部品装着機1は、例えば作業者によるバックアップ部材50の調整要求があった場合に、
図6に示すような処理を実行する。ここでは、所定の装着処理に対応する位置プログラムM1に基づく配置処理が既に実行され、所定の装着処理が複数回に亘って実行された状態にあるものとする。制御装置60の記憶装置61には、バックアップ部材50の現在位置が記憶されている。
【0054】
表示部64は、
図5に示すように、基板画像170に位置プログラムM1が示すバックアップ部材50の位置(現在位置に等しい)を重ねて表示装置62に表示する(S11)。このとき、表示部64は、作業者による表示切り換えの操作に応じて各項目について表示と非表示とを切り換える。作業者は、複数回に亘って実行された装着処理の結果の傾向に基づいて、表示されている基板画像170のどの辺りにバックアップ部材50を移動させるか増設すべきかなどを認識することができる。
【0055】
次に、編集部65は、作業者によるバックアップ部材50の増減およびバックアップ部材50の位置の変更の要求を受け付ける(S12)。続いて、編集部65は、S12にて配置されたバックアップ部材50が配置規制領域Rgに位置するか否かを判定する(S13)。編集部65は、全てのバックアップ部材50が配置規制領域Rgに位置していない場合に(S13:No)、位置プログラムM1を編集する(S14)。これにより、調整されたバックアップ部材50は、表示部64による表示対象となり、表示装置62に表示される(S11)。
【0056】
一方で、編集部65は、複数のバックアップ部材50の少なくとも一つが配置規制領域Rgに位置している場合に(S13:Yes)、配置規制領域Rgに位置するバックアップ部材50を表示装置62に表示するとともに当該バックアップ部材50の移動を作業者に促すように通知する(S15)。部品装着機1は、上記のような処理(S11-S15)を繰り返し、作業者による編集の受け付け(S12-S14)および再表示(S11)を行う。
【0057】
部品装着機1は、例えば
図5のOKボタンが押下されて、作業者によるバックアップ部材50の位置の調整作業が終了した後に、編集した位置プログラムM1を記憶装置61に記憶させる。移動制御部63は、編集部65によって位置プログラムM1が編集されると、編集後の位置プログラムM1が示すバックアップ部材50の位置と、記憶装置61に記憶されているバックアップ部材50の現在位置との相違に基づいて、必要な調整処理を実行する。上記の調整処理は、例えば次回の基板70の搬送時、または現在実行している装着処理の実行回数が所定回数に到達したときに実行される。
【0058】
このような構成によると、作業者は、バックアップ部材50の位置を重ねて表示された基板画像170を参照しながら、バックアップ部材50の調整を指示することができる。よって、対基板作業機である部品装着機1は、バックアップ部材50の位置の調整処理が適正に実行されるように、位置プログラムM1の編集を許容することができる。
【0059】
4-2.第二態様の概要
ここで、上記のようなバックアップ部材50の配置処理に用いられる位置プログラムM1は、実行予定の装着処理に適するように予め設定される。しかしながら、所定の装着処理を多数回に亘り実行した場合に、例えば同様のエラーが複数回に亘り発生したとしてもバックアップ部材の位置の調整処理により解決するか否かは判断が難しい。特に部品装着機1は、装着処理において多数の構成機器を用いて複雑な動作を行うため、エラーの原因および解決策を特定することは容易でない。
【0060】
これに対して、部品装着機1による好適な装着処理を維持するためには、変動し得る生産環境に対応しつつ、バックアップ部材50の位置の調整処理の要否が正確に判定されることが望ましい。そこで、本実施形態の第二態様において、部品装着機1は、基板70に対する対基板作業(例えば、部品の装着処理)の実行に関する作業評価データに基づいて、バックアップ部材50の調整処理の要否を判定する構成を採用する。
【0061】
具体的には、部品装着機1は、
図7に示すように、移動制御部63、編集部65、および判定部166を備える。第二態様において、部品装着機1は、通知部167をさらに備える。第二態様において、移動制御部63、編集部65、判定部166、および通知部167は、制御装置60に組み込まれている。また、上記の移動制御部63は、第一態様と実質的に同様であるため詳細な説明を省略する。
【0062】
4-2-1.判定部166
判定部166は、基板70に対する所定の対基板作業の実行に関する作業評価データHvに基づいて、バックアップ部材50の増減およびバックアップ部材50の位置の変更を含む調整処理の要否を判定する。ここで、上記の「作業評価データHv」は、
図8に示すように、対基板作業機としての部品装着機1が基板70に対して実行した対基板作業(搬送処理、装着処理など)ごとに、実行回数や種別、誤差などを集計し、統計的に割り出された作業評価を示す。
【0063】
作業評価データHvには、複数回に亘り実行された搬送処理において位置決めされた基板70の位置および角度を集計し、搬送処理における基板70の位置決め予定位置および予定角度に対する基板70の位置決め誤差の統計データHsが含まれてもよい。なお、上記の位置決め誤差は、搬送処理においてエラーとなる誤差だけではなく、許容範囲内であっても理想的な位置および角度からのずれ量として集計されるものである。
【0064】
具体的には、先ず基板搬送装置10による基板70の搬入処理が完了した後に、基板70の基準を示す1以上の基準マーク173が認識される。次に、認識された基準マーク173に基づいて、機内における基板70の位置および角度が認識される。そして、実際に位置決めされた基板70と理想的な姿勢(位置および角度)とのずれ量が位置決め誤差(XY誤差)および角度誤差として算出される。上記のXY誤差および角度誤差は、例えば基板70の搬送処理の実行ごとに集計され、作業評価データHvの統計データHsを構成する。
【0065】
ここで、バックアップ部材50は、基台2に対してXY方向に移動不能なバックアッププレート16に配置される。そのため、搬送処理による基板70の位置決め誤差は、基板70に対するバックアップ部材50によるバックアップ位置のずれとなる。バックアップ位置がずれると、バックアップ部材50と裏面部品81とが接近したり、バックアップ部材50が基板70の裏面のうち接触を禁止される部位に接触したりするおそれがある。
【0066】
上記のような事情を勘案すると、基板70の位置決め誤差が発生している場合には、バックアップ部材50の調整処理を実行することが望ましい。一方で、基板70の位置決め誤差には、一定の傾向がある場合がある。例えば、基板70の形状や既に装着された部品を含む重心位置、裏面の摩擦係数などに起因して、搬送処理において概ね同様にシフトしたり傾いたりする。そこで、判定部166は、統計データHsにおける基板70の位置決め誤差の傾向に基づいて、調整処理の要否を判定する。
【0067】
なお、上記のような位置決め誤差の傾向の有無については、統計データHsにおける位置決め誤差のばらつきの度合いを示す標準偏差の値が予め設定された閾値未満であるか否かによって判定してもよい。仮に統計データHsにおける位置決め誤差のばらつきが大きいのにも関わらず、例えばバックアップ部材50を位置決め誤差の平均値に基づいて調整すると、一部の基板70に対しては却って予定のバックアップ位置から大きくずれた位置でバックアップすることになる。よって、このような調整を防止するためには、上記のような判定を行うことが特に有用である。
【0068】
また、作業評価データHvには、複数回に亘り実行された所定の対基板作業において基板70に設定された複数の区画ごとに発生したエラーの種類および回数が含まれてもよい。さらに、作業評価データHvには、複数回に亘り実行された所定の対基板作業において基板70に設定された複数の区画D1-D4ごとの作業精度(例えば、装着精度)が含まれてもよい。上記の「複数の区画」は、例えば基板70を格子状に分けるように設定される。第二態様において、基板70の撓みを考慮して基板70の長手方向に4つの区画D1-D4を設定される。
【0069】
ここで、所定の区画において所定種類のエラーの発生頻度が高い場合や、部品の装着精度が低い場合には、基板70の所定の区画におけるバックアップが不十分であることが考えられる。例えば、基板70が湾曲しており装着動作の際に部品が基板70の表面に接触しないエラーや、接触したとしても十分な押圧力を加えることができずに装着精度が低下するおそれがある。このような場合には、基板70の湾曲を矯正するようにバックアップすることが必要とされ、結果としてバックアップ部材50の調整処理を実行することが望ましい。
【0070】
そこで、判定部166は、複数の区画D1-D4の少なくとも一つの対象区画Dtにおける所定種類のエラーの発生頻度が規定値よりも高い場合に、対象区画Dtに対応する基板70の裏面の領域にバックアップ部材50を配置する調整処理が必要であると判定する。なお、対象とするエラーの種類については、検出可能な範囲において任意に設定することができる。このような構成により、発生したエラーに基づいて、必要なバックアップ部材50の調整処理を実行または促すことができる。なお、発生した各種のエラーについては、例えばエラーの種類および位置(エラーに対応する装着動作に係る装着位置に相当)が集計され、作業評価データHvの統計データHsを構成する。
【0071】
また、判定部166は、複数の区画D1-D4の少なくとも一つ対象区画Dtにおける作業精度(装着精度など)が規定値よりも低下している場合に、対象区画Dtに対応する基板70の裏面の領域にバックアップ部材50を配置する調整処理が必要であると判定する。なお、作業精度の評価対象(XY誤差、角度誤差など)、および規定値については任意に設定することができる。このような構成により、装着精度に基づいて、必要なバックアップ部材50の調整処理を実行または促すことができる。
【0072】
装着精度については、基板カメラ42を用いた検査や外観検査装置などによる検査の結果に基づいて集計される。具体的には、装着処理の実行後に基板70の搬送方向下流側において当該基板70に対する外観検査が実行され、実際に装着された部品と理想的な部品の姿勢(位置および角度)とのずれ量が位置誤差(XY誤差)および角度誤差として算出される。また、部品の装着する指令位置に部品が存在しない場合には、対応する装着動作において装着エラーが発生したものとされる。上記のXY誤差、角度誤差、および装着エラーは、例えば装着処理の実行ごとに集計され、作業評価データHvの統計データHsを構成する。
【0073】
なお、判定部166は、各種の作業評価の何れか一つにより調整処理の実行の要否の判定を行ってもよいし、各種の作業評価を複合的に評価してもよい。また、各種の作業評価について重み付けをし、特に重要な作業評価については早期に且つ確実に改善するように、調整処理の実行の要否が判定されるようにしてもよい。例えば、装着動作におけるエラーについては、生産効率の観点からもバックアップ部材50の位置調整が優先的に実行されるようにしてもよい。
【0074】
4-2-2.編集部65
編集部65は、判定部166が調整処理を必要と判定した場合に、調整処理が実行されるように位置プログラムM1を自動編集する。本実施形態において、移動制御部63は、上記のように、編集後の位置プログラムM1が示すバックアップ部材50の位置と、記憶装置61に記憶されているバックアップ部材50の現在位置との相違に基づいて、必要な調整処理を実行する。そのため、編集部65は、判定部166による判定結果に基づいて、バックアップ部材50の位置が調整されるように位置プログラムM1を編集し、記憶装置61に記憶する。
【0075】
なお、編集部65は、要否判定においてバックアップ部材50の増減およびバックアップ部材50の位置の変更が必要と判定された場合に、調整処理により要否判定の結果の要因が軽減されるように、バックアッププレート16に配置すべきバックアップ部材50の位置を作業評価データHvに基づいて設定して位置プログラムM1を編集する。具体的には、基板70の搬送処理において位置決め誤差の傾向があることによって、バックアップ部材50の位置の変更処理が必要と判定された場合には、位置決め誤差の傾向を相殺するようにバックアップ部材50の位置を変更する。これにより、バックアップ部材50が本来予定されていた基板70の裏面におけるバックアップ位置に接近し、より適正なバックアップを行うことができる。
【0076】
ここで、基板搬送装置10は、バックアップ部材50と裏面部品81との干渉を防止するために、昇降装置17がバックアッププレート16を準備高さTpまで下降させる動作が完了した後に、基板70の搬出処理を開始する。また、昇降装置17は、基板搬送装置10による基板70の搬入処理が完了した後に、バックアッププレート16をバックアップ高さTb(
図2の実線にて示す)まで上昇させる。昇降装置17の動作の所要時間は、バックアップ高さTbと、準備高さTpとの差分である昇降量に比例する。
【0077】
上記のような事情を勘案して、バックアッププレート16の準備高さTpは、昇降装置17の可動範囲の下端高さよりも高く設定され得る。準備高さTpは、例えば裏面部品81の高さ(基板70の下面からZ方向下方への突出量に相当)に応じて設定される。詳細には、準備高さTpは、バックアップ部材50の上端が、裏面部品81のうち最も高い部品の下端より下方となる高さまでバックアップ部材50が退避されるように設定される。
【0078】
しかしながら、上記のような設定方法では、搬送される基板70に対するバックアップ部材50の移動軌跡上に裏面部品81のうち最も高い部品が位置していない場合には、準備高さTpを最低限必要な高さより余分に低く設定していることになる。これは、基板搬送装置10による基板70の位置決めにおいて基板70が予定位置からずれてクランプされたり、裏面部品81の装着位置が予定位置からずれて装着されたりすることを想定し、バックアップ部材50と裏面部品81との干渉を確実に防止するための措置である。
【0079】
これに対して、搬送された基板70の位置決め誤差の傾向、即ち誤差の量や方向性が認知可能であれば、裏面部品81との干渉が発生しない最低限必要な高さにより近付けた準備高さTpの設定を許容してもよい。本実施形態では、バックアップ部材50と裏面部品81との干渉を防止しつつ、従来と比較して準備高さTpを高く設定し得る構成を採用する。具体的には、編集部65は、バックアップ部材50を増加またはバックアップ部材50の位置を変更において複数の位置候補がある場合に、必要な準備高さTpが高いものを優先的に選択する。
【0080】
このような構成によると、バックアップ部材50をより適正な位置に変更することができるとともに、準備高さTpをより高くすることができる。よって、バックアップ高さTbと準備高さTpとの差分(昇降量)が小さくなり、昇降装置17の動作の所要時間を短縮することができる。結果として、生産処理の所要時間を短縮でき、生産効率を向上できる。
【0081】
4-2-3.通知部167
通知部167は、判定部166が調整処理を必要と判定した場合に、作業者に対して調整処理が必要であることを通知する。具体的には、通知部167は、例えば表示装置62に調整処理が必要であることを表示させる。このとき、通知部167は、調整処理が必要となった理由として、判定部166が当該判定に用いた作業評価データHvを表示させてもよい。さらに、通知部167は、推奨されるバックアップ部材50の調整位置を併せて表示させてもよい。
【0082】
上記の推奨される調整位置は、例えば編集部65と同様に、調整処理の要否判定の結果の要因が軽減されるように、バックアッププレート16に配置すべきバックアップ部材50の位置を作業評価データHvに基づいて設定してもよい。なお、判定部166が調整処理の実行が必要と判定した場合に、編集部65は、作業者に対して通知することなく位置プログラムM1を自動編集してもよいし、通知部167による通知に対する作業者の実行指示を入力してから編集してもよい。
【0083】
4-2-4.位置プログラムM1の編集処理
位置プログラムM1の編集処理について、
図9を参照して説明する。部品装着機1は、例えば所定の対基板作業としての装着処理が規定回数に亘って実行された場合に、
図9に示すような処理を実行する。ここでは、所定の装着処理に対応する位置プログラムM1に基づく配置処理が既に実行された状態にあるものとする。制御装置60の記憶装置61には、バックアップ部材50の現在位置が記憶されている。
【0084】
制御装置60は、先ず基板70の搬送処理や部品の装着処理などの対基板作業の実行により取得した各種データにより作業評価データHvを更新する(S21)。このとき、制御装置60は、対基板作業の実行回数や種別、誤差などを集計し、統計的に割り出された作業評価を示す。また、制御装置60は、基板70の位置決め誤差の統計データHsも同様に更新する。
【0085】
判定部166は、作業評価データHvに基づいて、バックアップ部材50の調整処理の要否を判定する(S22)。具体的には、判定部166は、基板70の搬送処理において一定の傾向にある位置決め誤差が発生しているか否か、装着処理において複数の区画D1-D4の何れかに所定頻度でエラーが発生しているか否か、装着処理において複数の区画D1-D4の何れかで装着精度が低下しているか否かに基づいて、調整処理の要否を判定する。
【0086】
バックアップ部材50の調整処理が必要であると判定された場合に(S22:Yes)、編集部65は、バックアップ部材50の位置候補を割り出す(S23)。このとき、編集部65は、S22の調整処理の要否判定の結果の要因が軽減されるように、バックアッププレート16に配置すべきバックアップ部材50の位置を割り出す。具体的には、例えば複数の区画D1-D4の何れか一つにおいて所定種類のエラーが所定頻度で発生している場合に、編集部65は、当該区画を対象区画Dtとし、対象区画Dtに対応する基板70の裏面の領域にバックアップ部材50を配置するものとする。さらに編集部65は、裏面部品81の状態、装着予定の表面部品の位置などを勘案して1以上の位置候補を割り出す。
【0087】
編集部65は、S23により2以上の位置候補が割り出された場合に、例えば予め設定された優先事項に基づいて1つの位置候補を選択する(S24)。例えば、編集部65は、上記の優先事項として準備高さTpがより高いものと設定されている場合には、複数の位置候補のうち必要な準備高さTpが高いものを優先的に選択する。編集部65は、S23において割り出された位置候補が一つの場合には、当該位置候補の選択処理(S24)を省略する。
【0088】
続いて、通知部167は、作業者に対して調整処理が必要であることを通知する(S25)。具体的には、通知部167は、表示装置62に、バックアップ部材50の調整処理が必要であることを表示させる。さらに通知部167は、調整処理が必要となった理由、バックアップ部材50の現在位置、基板70の画像、1以上の位置候補、および推奨されるバックアップ部材50の調整位置(S24にて選択した位置候補)を適宜表示させてもよい。
【0089】
編集部65は、バックアップ部材50の位置が調整されるように位置プログラムM1を自動編集する(S26)。具体的には、編集部65は、S24にて選択された位置候補に基づいて位置プログラムM1を編集し、記憶装置61に記憶する。移動制御部63は、編集部65によって位置プログラムM1が編集されると、編集後の位置プログラムM1が示すバックアップ部材50の位置と、記憶装置61に記憶されているバックアップ部材50の現在位置との相違に基づいて、必要な調整処理を実行する。上記の調整処理は、例えば次回の基板70の搬送時、または現在実行している装着処理の実行回数が所定回数に到達したときに実行される。
【0090】
このような構成によると、対基板作業である部品装着機1の実行に関する作業評価データHvに基づいて、バックアップ部材50の位置の調整処理の要否を判定できる。これにより、必要な調整処理を確実に実行することができ、対基板作業(基板70の搬送処理、部品の装着処理など)の精度および効率を向上できる。また、不要な調整処理が実行されることを防止でき、生産性の低下を防止できる。
【0091】
4-3.第三態様の概要
上記のように、現場における作業者の利便性や、生産性の維持の観点からは、作業者による要求に応じてバックアップ部材50の位置調整が許可されることが望ましい。また、作業者による要求がない場合でも、部品装着機1による好適な装着処理を維持するためには、変動し得る生産環境に対応しつつ、バックアップ部材50の位置の調整処理の要否が正確に判定されることが望ましい。
【0092】
そこで、本実施形態の第三態様において、部品装着機1は、所定の情報を作業者に表示することを前提として、位置プログラムM1の編集(バックアップ部材50の位置の調整)を受け付ける構成を採用する。さらに、部品装着機1は、基板70に対する対基板作業(例えば、部品の装着処理)の実行に関する作業評価データに基づいて、バックアップ部材50の調整処理の要否を判定する構成を採用する。具体的には、部品装着機1は、
図10に示すように、移動制御部63、表示部64、編集部65、および判定部166を備える。第三態様において、部品装着機1は、通知部167をさらに備える。
【0093】
第三態様において、移動制御部63、表示部64、編集部65、判定部166、および通知部167は、制御装置60に組み込まれている。また、上記の各部63-65,166,167は、第一態様および第二態様と実質的に同様であるため詳細な説明を省略する。第三態様の部品装着機1は、作業者による位置プログラムM1の編集を受け付けるとともに、作業評価データHvに基づいて位置プログラムM1の自動編集を行う。このような構成によると、第一態様および第二態様と同様の効果を奏する。
【0094】
5.実施形態の変形態様
5-1.バックアップ部材50について
実施形態において、バックアップ部材50は、ハードピン51またはソフトピン52であるものとした。これに対して、バックアップ部材50として種々の態様を採用し得る。具体的には、バックアップ部材50は、基板70の下面に接触して基板70を支持する支持部を複数備える構成としてもよい。また、保持部材に支持される被支持部は、実施形態において例示したように係合部を有する他に、1以上の平面状に形成されてもよい。このような保持部材は、保持部材としての吸着ノズル34により吸着により保持される。
【0095】
5-2.対基板作業機について
実施形態において、対基板作業機は、基板70に部品を装着する部品装着機1であるものとして説明した。これに対して、第一態様にて例示した位置プログラムの編集を許容することができる構成、または第二態様にて例示したバックアップ部材の位置の調整処理の要否を判定することができる構成は、種々の対基板作業機のうち所定の対基板作業の実行中においてバックアップ部材50を用いて基板70を支持するものに適用することができる。具体的には、対基板作業機は、基板70にはんだを印刷する印刷機としてもよい。なお、部品装着機1や印刷機などの対基板作業機において、バックアップ部材50を移動させる移動装置は、それぞれの機内に配置される専用装置であってもよい。
【0096】
5-3.その他
実施形態において、移動制御部63、表示部64、編集部65、判定部166、および通知部167の各部は、制御装置60に組み込まれる構成とした。これに対して、上記の各部63-65,166,167の少なくとも一部は、制御装置60の外部に設けられてもよい。例えば、上記の各部63-65,166,167の少なくとも一部は、対基板作業機と通信可能なホストコンピュータや専用の外部装置に組み込まれる構成としてもよい。これに伴って、各種データM1,M2,F1,F2,Hv,Hsについてもアクセス可能な記憶装置に記憶される。
【符号の説明】
【0097】
1:部品装着機(対基板作業機)、 10:基板搬送装置、 15:バックアップ装置、 16:バックアッププレート、 30:部品移載装置(移動装置)、 50:バックアップ部材、 60:制御装置、 61:記憶装置、 62:表示装置、 63:移動制御部、 64:表示部、 65:編集部、 166:判定部、 167:通知部、 70:基板、 81:裏面部品、 170:基板画像、 171:ランド(特徴画像)、 172:ホール(特徴画像)、 173:基準マーク(特徴画像)、 174:情報コード(特徴画像)、 181:裏面部品画像、 182:表面部品画像、 P1-P4:バックアップ位置、 Rg:配置規制領域、 Rp:配置許可領域、 M1:位置プログラム、 M2:制御プログラム、 F1:画像データ、 F2:設計データ、 Hv:作業評価データ、 Hs:統計データ、 D1-D4:(複数の)区画、 Dt:対象区画、 Tb:バックアップ高さ、 Tp:準備高さ