IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツディーゼル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-燃料供給装置 図1
  • 特許-燃料供給装置 図2
  • 特許-燃料供給装置 図3
  • 特許-燃料供給装置 図4
  • 特許-燃料供給装置 図5
  • 特許-燃料供給装置 図6
  • 特許-燃料供給装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/26 20060101AFI20231207BHJP
   F02B 67/00 20060101ALI20231207BHJP
   F01L 1/18 20060101ALI20231207BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
F01L1/26 Z
F02B67/00 C
F01L1/18 C
F02M21/02 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022149281
(22)【出願日】2022-09-20
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390033042
【氏名又は名称】ダイハツディーゼル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(74)【代理人】
【識別番号】100224627
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 稔
(72)【発明者】
【氏名】梶 佳則
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-119902(JP,U)
【文献】特開平10-121920(JP,A)
【文献】特開平11-072011(JP,A)
【文献】特開平08-114108(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014007011(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/26
F02B 67/00
F01L 1/18
F02M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室に給気通路および給気ポートを介して空気を供給するとともに、前記燃焼室にガス燃料通路およびガス燃料ポートを介してガス燃料を供給する燃料供給装置であって、
軸を中心に揺動する弁腕と、
前記弁腕の一端部に接続され、前記弁腕を揺動させる揺動部材と、
前記弁腕の他端部に取り付けられた押さえ部材と、
前記弁腕の揺動に応じて前記給気ポートを開閉する給気バルブと、
前記弁腕の揺動に応じて前記ガス燃料ポートを開閉するガス燃料バルブと
を備え、
前記ガス燃料バルブは、前記給気バルブが前記給気ポートを開いているときに前記ガス燃料ポートを開くように、前記給気バルブに前記押さえ部材を介して連結されている、または前記弁腕に取り付けられており、
前記給気バルブと前記ガス燃料バルブとは、前記押さえ部材に固定されている、燃料供給装置。
【請求項2】
前記押さえ部材は、前記給気バルブが前記給気ポートを閉じ、前記ガス燃料バルブが前記ガス燃料ポートを閉じるように、ばねにより付勢されている、請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記押さえ部材は、
ガイドによって移動方向に案内される胴部と、
前記胴部から径方向外側に伸び、前記給気バルブと前記ガス燃料バルブが固定されたアーム部と
を備える、請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記押さえ部材は、前記弁腕の揺動に応じた前記ガス燃料バルブのリフト量を調整可能なように構成されている、請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項5】
前記燃焼室の一部を画定するピストンと、
前記ピストンに連結されたクランク軸と、
前記燃焼室に液体燃料を供給する液体燃料供給装置と、
前記クランク軸により駆動され、前記液体燃料供給装置に液体燃料を加圧して供給する液体燃料加圧装置と
を更に備え、
前記揺動部材は、前記クランク軸に機械的に接続されており、前記クランク軸により駆動される、請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料供給装置としては、ポンプハウジングと、ポンプハウジングに支持され、軸方向に駆動されることにより燃料を加圧するプランジャと、プランジャに連結されたポンプ駆動用カムとを備える機械式の燃料供給装置がある(例えば、特許文献1参照)。このポンプ駆動用カムは、内燃機関のクランクと連結されており、クランクからの動力伝達により駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-54530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、温室効果ガスである二酸化炭素の排出量を削減するため、水素またはアンモニアなどの非炭化水素系のガス燃料を内燃機関に用いることがある。このようなガス燃料を内燃機関に用いる場合、電子制御式の燃料供給装置を用いることが一般的である。電子制御式の燃料供給装置は、クランクまたはカムなどの回転体の角度を検出するセンサと、センサの検出信号を用いてガス燃料を供給するタイミングを制御する電子制御機器とを必要とする。
【0005】
機械式の燃料供給装置では上述したようなセンサが設けられていないため、機械式の燃料供給装置を有する既存の内燃機関において電子制御式の燃料供給装置を追加するためには、回転体にセンサを取り付ける必要がある。この場合、回転体から発電機などの被駆動体を取り外して移動させる必要があるが、発電機は一般的に大型で重量もあるため、移動が困難であり、既存の設備が船舶などに設置されている場合には、スペースの制約上不可能な状況も生じる。
【0006】
本発明は、電子制御に頼らずにガス燃料を供給することができる燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、
燃焼室に給気通路および給気ポートを介して空気を供給するとともに、前記燃焼室にガス燃料通路およびガス燃料ポートを介してガス燃料を供給する燃料供給装置であって、
軸を中心に揺動する弁腕と、
前記弁腕に取り付けられた押さえ部材と、
前記弁腕の揺動に応じて前記給気ポートを開閉する給気バルブと、
前記弁腕の揺動に応じて前記ガス燃料ポートを開閉するガス燃料バルブと
を備え、
前記ガス燃料バルブは、前記給気バルブが前記給気ポートを開いているときに前記ガス燃料ポートを開くように、前記給気バルブに前記押さえ部材を介して連結されている、または前記弁腕に取り付けられている、燃料供給装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、給気バルブが給気ポートを開いているときにガス燃料バルブがガス燃料ポートを開くように、給気バルブとガス燃料バルブとが連動して動作する。これにより、ガス燃料バルブの動作を制御するための電子制御機器を別途設けることなく、ガス燃料バルブの開閉タイミングを制御することができる。その結果、機械式の燃料供給装置を有する既存の内燃機関において、電子制御に頼らずにガス燃料を供給することができる。
【0009】
また、ガス燃料として水素またはアンモニアのような非炭化水素系のガス燃料を用いる場合には、温室効果ガスである二酸化炭素の排出量を低減することができる。
【0010】
本発明の第2態様の燃料供給装置は、前記第1態様の燃料供給装置において、前記押さえ部材が、前記押さえ部材の移動による前記ガス燃料バルブのリフト量を調整可能なように構成されている。
【0011】
この構成によれば、ガス燃料バルブのリフト量が調整可能であるので、ガス燃料の供給量を調整することができる。
【0012】
本発明の第3態様の燃料供給装置は、前記第1または第2態様の燃料供給装置において、前記ガス燃料ポートに取り付けられ、貫通孔を有する拡散部材を備え、前記ガス燃料通路と前記給気通路とは前記ガス燃料ポートを介して互いに連通し、前記ガス燃料通路からのガス燃料が前記拡散部材の前記貫通孔から前記給気通路に噴き出す。
【0013】
この構成によれば、拡散部材によりガス燃料が拡散されるので、給気通路を流れる空気とガス燃料との混合を促進することができる。
【0014】
本発明の第4態様の燃料供給装置は、前記第1~第3態様の燃料供給装置において、前記ガス燃料バルブが、前記給気バルブが前記給気ポートを開いた後に前記ガス燃料ポートを開くように構成されている。
【0015】
給気バルブと排気弁とが同時に開いている状態、つまり所謂バルブオーバーラップにおいて、ガス燃料ポートが開いていると、未燃焼のガス燃料が排気側に流れて大気中に排出される所謂未燃焼ガススリップが発生することがある。これに対して、この構成によれば、ガス燃料ポートが開くタイミングは、給気ポートが開くタイミングよりも遅い。これにより、バルブオーバーラップにおいてガス燃料が燃焼室に供給されることが抑制されるので、未燃焼ガススリップが発生することを抑制することができる。
【0016】
本発明の第5態様の燃料供給装置は、前記第1~第4態様の燃料供給装置において、前記ガス燃料バルブが、スライドバルブである。
【0017】
この構成によれば、燃料通過穴の設定により、給気バルブの開くタイミングとガス燃料バルブを開いてガス燃料を供給するタイミングとをずらすことができる。これにより、バルブオーバーラップにおいてガス燃料バルブを閉じてガス燃料を給気通路に供給しないようにすることで、未燃焼ガススリップが発生することを抑制することができる。
【0018】
本発明の第6態様は、前記第1~第5態様の燃料供給装置において、前記押さえ部材のアーム部に取り付けられ、前記ガス燃料バルブの前記押さえ部材側の端部に接触するラッシュアジャスタを備える。
【0019】
ガス燃料バルブの押さえティ側の端部と押さえティのアーム部との間の隙間、つまりバルブクリアランスが大きくなると、ガス燃料バルブのリフト量が小さくなり、ガス燃料の供給量が意図せず減少することがある。また、バルブクリアランスが大きくなると、ガス燃料バルブが開くタイミングが変化し、意図しない噴射タイミングとなることがある。これに対して、この構成によれば、ラッシュアジャスタによりバルブクリアランスが自動的にゼロに調整されるので、ガス燃料供給の意図しない変化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、機械式の燃料供給装置を有する内燃機関において、電子制御に頼らずにガス燃料を供給することができる燃料供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料供給装置の概略構成図である。
図2図1の燃料供給装置の要部を示す断面図である。
図3図1の燃料供給装置の第1変形例を示す概略構成図である。
図4図1の燃料供給装置の第2変形例を示す概略構成図である。
図5図1の燃料供給装置の第3変形例の要部を示す断面図である。
図6図1の燃料供給装置の第4変形例の要部を示す断面図である。
図7図1の燃料供給装置の第5変形例の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る舶用エンジン(以下、単にエンジンという)1の燃料供給装置の概略構成図である。図2は、本実施形態に係る燃料供給装置の要部を示す断面図である。本実施形態のエンジン1は、重油などの液体燃料と、水素またはアンモニアなどの非炭化水素系のガス燃料とを燃焼させ、燃焼により発生した動力を用いて発電機2などの被駆動体を駆動させる。エンジン1は、ガス燃料のみを用いたガスエンジンであってもよい。
【0024】
図1を参照すると、エンジン1は、ピストン10と、ピストン10が収容されたシリンダブロック11と、シリンダブロック11上に配置されたシリンダヘッド12とを備える。ピストン10と、シリンダブロック11と、シリンダヘッド12は、燃焼室13を画定している。言い換えれば、燃焼室13は、ピストン10と、シリンダブロック11と、シリンダヘッド12とに取り囲まれる空間である。本実施形態では、シリンダブロック11とシリンダヘッド12とで本発明のシリンダを構成している。
【0025】
シリンダヘッド12には、燃焼室13に空気を供給するための給気通路14と、給気通路14にガス燃料を供給するためのガス燃料通路15とが設けられている。給気通路14と燃焼室13とは、給気ポート16を介して連通している。ガス燃料通路15と給気通路14とは、ガス燃料ポート17を介して連通している。給気通路14には、図示しない給気口を介して空気が供給される。ガス燃料通路15には、ガス燃料供給部18が接続されており、ガス燃料供給部18から燃料ガスが供給される。燃焼室13には、給気通路14および給気ポート16を介して空気が供給され、ガス燃料通路15およびガス燃料ポート17を介してガス燃料が供給される。
【0026】
ピストン10は、シリンダブロック11内を往復運動する。また、ピストン10には、クランク軸20が連結されている。クランク軸20は、ピストン10の往復運動を回転運動に変換する。クランク軸20は、フライホイール21を介して発電機2に接続されている。クランク軸20の回転運動がフライホイール21を介して発電機2に伝達されることで、発電機2が駆動される。
【0027】
エンジン1は、シリンダヘッド12に取り付けられた液体燃料供給装置30と、液体燃料供給装置30に液体燃料(本実施形態では、重油)を供給する液体燃料加圧装置31とを備える。液体燃料供給装置30は、燃焼室13に液体燃料を噴射する。液体燃料加圧装置31は、液体燃料を加圧して液体燃料供給装置30に供給する。
【0028】
液体燃料加圧装置31は、ハウジング31aと、ハウジング31a内に収容されたプランジャ31bとを備える。プランジャ31bは、複数のギア22およびカム軸23を介してクランク軸20と機械的に接続されている。クランク軸20の回転運動は、複数のギア22を介してカム軸23に伝達され、カム軸23によりプランジャ31bの往復運動に変換される。プランジャ31bがハウジング31a内を往復運動することにより、ハウジング31a内の液体燃料が加圧されて、液体燃料供給装置30に供給される。
【0029】
図1および図2を参照すると、エンジン1は、弁腕40と、押さえティ50と、2個の給気バルブ60(図1では、1個のみを示す)と、ガス燃料バルブ70とを備える。本実施形態では、弁腕40と、押さえティ50と、給気バルブ60と、ガス燃料バルブ70とにより本発明の燃料供給装置が構成されている。
【0030】
弁腕40は、軸41に支持されている。弁腕40は、軸41を中心に揺動可能である。弁腕40の一方の端部40aには、押さえティ50の頂部50aが取り付けられている。弁腕40の他方の端部40bには、プッシュロッド42が取り付けられている。プッシュロッド42は、軸方向に移動可能にシリンダヘッド12に取り付けられている。図1に示すようにプッシュロッド42は、クランク軸24を介してカム軸23に機械的に接続されている。カム軸23の回転運動がクランク軸24を介してプッシュロッド42に伝達されることで、プッシュロッド42は軸方向に往復運動する。プッシュロッド42が軸方向に往復運動することで、弁腕40は、軸41を中心に揺動する。
【0031】
図2を参照すると、押さえティ50の頂部50aは、弁腕40の端部40aに回動自在に取り付けられている。押さえティ50は、胴部51と、アーム部52とを備える。
【0032】
胴部51は、筒状である。胴部51の内径は、シリンダヘッド12に固定された円柱状の押さえティガイド53の外径よりも僅かに大きい。胴部51内には、押さえティガイド53が挿し通されている。これにより、押さえティ50は、押さえティガイド53に支持される。また、押さえティ50は、押さえティガイド53に案内されつつ、押さえティガイド53の軸方向に直線運動できる。
【0033】
アーム部52は、胴部51から横方向に向けて延びている。言い換えれば、アーム部52は、胴部51の軸心を中心とする仮想円の径方向に延びている。
【0034】
給気バルブ60は、ステム61と、ステム61に固定されたリテーナ62とを備える。本実施形態の給気バルブ60は、ポペットバルブである。
【0035】
ステム61は、押さえティ50のアーム部52に固定されている。また、ステム61は、シリンダヘッド12に設けられた略円筒状のバルブガイド63に挿し通されている。これにより、ステム61は、バルブガイド63に案内されつつ、バルブガイド63の軸方向に直線移動できる。ステム61は、弁腕40の揺動に応じて押さえティ50が軸方向へ移動すると、バルブガイド63の軸方向に沿って移動して、シリンダヘッド12内に設けられた給気ポート16を開閉する。
【0036】
リテーナ62とシリンダヘッド12との間には、スプリング64が配置されている。スプリング64は、圧縮された状態でリテーナ62とシリンダヘッド12との間に配置されている。ステム61は、スプリング64の復元力により、給気ポート16を閉じる方向に付勢される。
【0037】
ガス燃料バルブ70は、ステム71と、ステム71に固定されたリテーナ72とを備える。本実施形態のガス燃料バルブ70は、ポペットバルブである。
【0038】
ステム71は、押さえティ50のアーム部52に固定されている。また、ステム71は、シリンダヘッド12に設けられた略円筒状のバルブガイド73に挿し通されている。これにより、ステム71は、バルブガイド73に案内されつつ、バルブガイド73の軸方向に直線移動できる。ステム71は、弁腕40の揺動に応じて押さえティ50が軸方向へ移動すると、バルブガイド73の軸方向に沿って移動して、シリンダヘッド12内に設けられたガス燃料ポート17を開閉する。
【0039】
本実施形態では、給気バルブ60のステム61とガス燃料バルブ70のステム71とが押さえティ50に固定されている。言い換えれば、ガス燃料バルブ70は、押さえティ50を介して給気バルブ60に連結されている。このため、本実施形態のガス燃料バルブ70のステム71は、給気バルブ60のステム61と連動して動作する。具体的には、給気バルブ60給気ポート16を開いているときにガス燃料バルブ70がガス燃料ポート17を開くように構成されている。本実施形態では、給気ポート16が開くタイミングと同じタイミングでガス燃料ポート17が開く。
【0040】
リテーナ72とシリンダヘッド12との間には、スプリング74が配置されている。スプリング74は、圧縮された状態でリテーナ72とシリンダヘッド12との間に配置されている。ステム71は、スプリング74の復元力により、ガス燃料ポート17を閉じる方向に付勢される。
【0041】
本実施形態に係る燃料供給装置は、以下の機能を有する。
【0042】
この構成によれば、給気バルブ60が給気ポート16を開いているときにガス燃料バルブ70がガス燃料ポート17を開くように、給気バルブ60とガス燃料バルブ70とが連動して動作する。これにより、ガス燃料バルブ70の動作を制御するための電子制御機器を別途設けることなく、ガス燃料バルブ70がガス燃料ポート17を開閉するタイミングを制御することができる。その結果、機械式の燃料供給装置を有する既存の内燃機関において、電子制御に頼らずにガス燃料を供給することができる。
【0043】
一般的に、電子制御式の燃料供給装置に必要な電子制御機器は、高額である。これに対して、この構成によれば、高額な電子制御式の燃料供給装置を用いることなく、ガス燃料として水素またはアンモニアのような非炭化水素系のガス燃料を使用できるので、低コストで二酸化炭素の排出量の削減に向けた燃料の切り替えを促進することができる。
【0044】
この構成によれば、電子制御機器が不要であるので、機械式の燃料供給装置を取り扱ってきたユーザがメンテナンスまたは修理などの取り扱いがし易い。
【0045】
本実施形態の燃料供給装置は、次のように構成することもできる。
【0046】
(第1変型例)
図3は、本実施形態の第1変型例の燃料供給装置の概略構成図である。図3を参照すると、第1変形例のアーム部52には、ラッシュアジャスタ154,155が取り付けられている。ラッシュアジャスタ154は、給気バルブ60の押さえティ50側の端部に接触している。ラッシュアジャスタ155は、ガス燃料バルブ70の押さえティ50側の端部に接触している。ラッシュアジャスタ154,155は、バルブクリアランスを自動的にゼロに調整する。
【0047】
ガス燃料バルブ70の押さえティ50側の端部と押さえティ50のアーム部52との間の隙間、つまりバルブクリアランスが大きくなると、ガス燃料バルブ70のリフト量が小さくなり、ガス燃料の供給量が意図せず減少することがある。また、バルブクリアランスが大きくなると、ガス燃料バルブ70が開くタイミングが変化し、意図しない噴射タイミングとなることがある。これに対して、第1変形例の燃料供給装置によれば、ラッシュアジャスタ155によりバルブクリアランスが自動的にゼロに調整されるので、ガス燃料供給の意図しない変化を抑制することができる。
【0048】
(第2変形例)
図4は、本実施形態の第2変形例の燃料供給装置の概略構成図である。図4を参照すると、第2変形例の押さえティ250は、弁腕40の揺動による給気バルブ60のリフト量とガス燃料バルブ70のリフト量とが異なるように構成されている。
【0049】
押さえティ250は、第1部分251と、第2部分252と、第3部分253とを備える。
【0050】
第1部分251は、L字状の部材である。第1部分251の一端部は、弁腕40の端部40aに取り付けられている。第1部分251の他端部は、第2部分252に接続されている。第1部分251は、弁腕40の揺動に応じて、給気バルブ60を軸方向に移動させる。
【0051】
第2部分252は、直線状の部材である。第2部分252の一端部は、第1部分251に接続されている。第2部分252が延びる方向における第1部分251の取り付け位置は、変更可能である。第2部分252の他端部は、回動軸252aに回動可能に取り付けられている。これにより、第2部分252は、回動軸252aを中心に回動可能である。
【0052】
第3部分253は、L字状の部材である、第3部分253の一端部は、第2部分252に回動可能に取り付けられている。第3部分253の他端部は、回動軸253aに回動可能に取り付けられている。第3部分253は、回動軸253aを中心に回動可能である。第3部分253は、弁腕40の揺動に応じて、ガス燃料バルブ70を軸方向に移動させる。
【0053】
弁腕40の揺動に応じて、第1部分251が下方に移動すると、第1部分251により、給気バルブ60が軸方向に移動することで、給気ポート16が開閉する。また、第1部分251が下方に移動することで、第2部分252が回動軸252aを中心に回動して、第3部分253を下方に押す。第3部分253は、第2部分252により下方に押されると、回動軸253aを中心に回動する。第3部分253の回動により、ガス燃料バルブ70が軸方向に移動することで、ガス燃料ポート17が開閉する。
【0054】
本変形では、第1部分251と給気バルブ60との接点Aの第2部分252の回動軸252aからの距離と、第2部分252と第3部分253との接点Bの第2部分252の回動軸252aからの距離との比率によって、給気バルブ60のリフト量に対するガス燃料バルブ70のリフト量が変わる。例えば、図4に示す例では、ガス燃料バルブ70のリフト量は、給気バルブ60のリフト量の半分程度である。本変形例では、第2部分252が延びる方向における第1部分251の取り付け位置を変更することで、ガス燃料バルブ70のリフト量を調整することができる。また、ガス燃料バルブ70のリフト量を調整するために、回動軸252aの位置を調整可能にしてもよい。
【0055】
本変形例によれば、ガス燃料バルブ70のリフト量が調整可能であるので、ガス燃料の供給量を調整することができる。
【0056】
(第3変形例)
図5は、本実施形態の第3変形例の燃料供給装置の要部を示す断面図である。
【0057】
図5を参照すると、第3変形例の燃料供給装置は、ガス燃料ポート17を覆うように、ガス燃料バルブ70に取り付けられた拡散キャップ375を備える。拡散キャップ375は、円筒状の胴部375aと、半球状の先端部375bとを備える。先端部375bには、拡散キャップ375の内部と給気通路14とを連通する複数の貫通孔375cが設けられている。複数の貫通孔375cは、ガス燃料ポート17から放出されたガス燃料が、径方向外側に向かって噴き出すように形成されている。先端部375bの形状は、半球状に限定されず、円筒状または三角錐状などの他の形状であってもよい。拡散キャップ375は、胴部375aを有していなくてもよい。本変形例の拡散キャップ375は、本発明に係る拡散部材の一例である。なお、貫通孔375cは、1つであってもよい。また、貫通孔375cからガス燃料が噴き出す方向は、径方向に限定されない。
【0058】
本変形例によれば、拡散キャップ375によりガス燃料が拡散されるので、給気通路14を流れる空気とガス燃料との混合を促進することができる。
【0059】
(第4変形例)
図6は、本実施形態の第4変形例の燃料供給装置の要部を示す断面図である。
【0060】
図6を参照すると、本変形例のガス燃料バルブ470は、給気バルブ60が給気ポート16を開いた後にガス燃料ポート17を開くように構成されている。本変形例のガス燃料バルブ470は、スライドバルブである。ガス燃料バルブ470のステム71の下端部には、略円筒状の摺動部材475が取り外し可能に取り付けられている。摺動部材475は、給気通路14に連通した第1連通部475aと、第1連通部475aと連通し、摺動部材475の外周面に開口475cを形成する第2連通部475bとを備える。
【0061】
摺動部材475は、弁腕40の揺動に応じて押さえティ50が軸方向へ移動すると、バルブガイド73の軸方向に沿って移動する。摺動部材475の第2連通部475bがガス燃料通路15に連通すると、ガス燃料通路15内のガス燃料は、第1連通部475a、第2連通部475b、および開口475cとを通って給気通路14に供給される。ガス燃料バルブ470は、軸方向における開口475cの位置に応じて、第2連通部475bとガス燃料通路15とが連通するタイミングを変更することができる。すなわち、ガス燃料バルブ470がスライドバルブであるため、摺動部材475を開口475cの軸方向における位置が異なる摺動部材475に交換することで、ガス燃料ポート17が開くタイミングを容易に変更することができる。
【0062】
給気バルブ60と排気バルブ(図示せず)とが同時に開いている状態、つまり所謂バルブオーバーラップにおいて、ガス燃料バルブが開いていると、未燃焼のガス燃料が排気側に流れて大気中に排出される所謂未燃焼ガススリップが発生することがある。これに対して、本変形例の燃料供給装置によれば、ガス燃料ポート17が開くタイミングを、給気ポート16が開くタイミングよりも遅くすることができる。これにより、バルブオーバーラップにおいてガス燃料が燃焼室13に供給されることが抑制されるので、未燃焼ガスストリップが発生することを抑制することができる。
【0063】
また、本変形例の燃料供給装置によれば、ガス燃料バルブ470がスライドバルブであるので、燃料通過穴の設定により、給気バルブ60が給気ポート16を開くタイミングとガス燃料ポート17を開いてガス燃料を供給するタイミングとをずらすことができる。これにより、適切なタイミングでガス燃料を供給することができる。
【0064】
(第5変形例)
図7は、本実施形態の第5変形例の燃料供給装置の要部を示す断面図である。
【0065】
図7を参照すると、本変形例のガス燃料バルブ70は、押さえティ50ではなく、弁腕40の端部40cにガス燃料バルブ押さえ部材543を介して取り付けられている。本変形例においても、ガス燃料バルブ70は、弁腕40の揺動に応じて、給気バルブ60と連動して動作する。
【0066】
(その他の変形例)
ガス燃料ポート17は、燃焼室13に連通するように設けてもよい。
【0067】
前記実施形態または変形例のうちの任意の実施形態または変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態と変形との組み合わせまたは変形例同士の組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態または変形例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【0068】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0069】
1 エンジン
2 発電機
10 ピストン
11 シリンダブロック
12 シリンダヘッド
13 燃焼室
14 給気通路
15 ガス燃料通路
16 給気ポート
17 ガス燃料ポート
18 ガス燃料供給部
20 クランク軸
21 フライホイール
22 ギア
23 カム軸
24 クランク軸
30 液体燃料供給装置
31 液体燃料加圧装置
31a ハウジング
31b プランジャ
40 弁腕
41 軸
42 プッシュロッド
50 押さえティ(押さえ部材)
51 胴部
52 アーム部
53 押さえティガイド
60 給気バルブ
61 ステム
62 リテーナ
63 バルブガイド
64 スプリング
70 ガス燃料バルブ
71 ステム
72 リテーナ
73 バルブガイド
74 スプリング
154 ラッシュアジャスタ
155 ラッシュアジャスタ
250 押さえティ
251 第1部分
252 第2部分
253 第3部分
375 拡散キャップ(拡散部材)
375a 胴部
375b 先端部
375c 貫通孔
470 ガス燃料バルブ
475 摺動部材
475a 第1連通部
475b 第2連通部
475c 開口
543 ガス燃料バルブ押さえ部材
【要約】
【課題】電子制御式の燃料供給装置に必要な構成を追加することなく、ガス燃料の供給タイミングを制御することができる燃料供給装置を提供することを目的とする。
【解決手段】燃焼室、燃焼室に連通した給気ポート、給気ポートに連通した給気通路、給気通路に連通したガス燃料ポート、およびガス燃料ポートに連通し、給気通路にガス燃料を供給するための燃料通路を有する燃料供給装置は、軸を中心に揺動する弁腕と、頂部が弁腕の端部に回動自在に取り付けられ、弁腕の揺動に応じて移動する押さえティと、弁腕の揺動に伴う押さえティの移動に応じて給気ポートを開閉する給気バルブと、給気バルブが給気ポートを開いているときにガス燃料ポートを開くように、弁腕の揺動に応じてガス燃料ポートを開閉するガス燃料バルブとを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7