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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/26 20060101AFI20231207BHJP
   B60Q 1/50 20060101ALI20231207BHJP
   B60Q 1/34 20060101ALI20231207BHJP
   B60Q 1/54 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B60Q1/26 A
B60Q1/50 Z
B60Q1/34 Z
B60Q1/54
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022177354
(22)【出願日】2022-11-04
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】谷川 直純
(72)【発明者】
【氏名】虻川 義幸
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-226341(JP,A)
【文献】特開2020-083010(JP,A)
【文献】特開2003-123180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/26
B60Q 1/50
B60Q 1/34
B60Q 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配置した面に沿って移動可能な移動体であって、
本体部と、
前記本体部を全方向に移動させる移動手段と、
前記本体部の全周に沿って配置された表示灯と、
前記表示灯の表示を制御するための制御部と、
を備え、
前記表示灯は、前記移動体の動作モードに対応した表示を点灯することを特徴とし、
前記表示灯は、前記移動体の移動方向側の第1の表示部に第1の表示を点灯すると共に、他の表示部に全周方向に沿った流れ表示を点灯するように構成され、
前記動作モードが、前記移動体の直行、横行、又は斜行である場合は、前記表示灯における該流れ表示の開始点と前記第1の表示部とを繋ぐ直線が、前記移動体の進行方向と一致するように構成され、
前記動作モードが、前記移動体の曲行である場合は、前記第1の表示部における速度ベクトルと方向が一致する前記移動体の移動経路の接線と前記表示灯とが平面視で交差する部分を前記表示灯の該流れ表示の開始点とするように構成されている、移動体。
【請求項2】
前記表示灯は、前記移動体が移動を開始する所定の時間前に表示を点灯するように構成されている、請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記表示灯は、前記移動体の移動途中に前記動作モードを変更する場合に、次の前記動作モードに対応した表示を該変更する前に点灯するように構成されている、請求項2に記載の移動体。
【請求項4】
前記表示灯は、前記移動体の移動方向側の第1の表示部に他の表示部とは異色の第1の表示を点灯するように構成されている、請求項3に記載の移動体。
【請求項5】
前記流れ表示の流れ速度は、前記移動体の移動速度に対応して変化する、請求項3に記載の移動体。
【請求項6】
前記移動体が平行移動又は曲行する場合における前記第1の表示の色は白色である、請求項4に記載の移動体。
【請求項7】
前記移動体が平行移動又は曲行する場合における前記流れ表示は、第2の表示部と、前記第2の表示部と交互に連続する第3の表示部とを有し、前記第2の表示部及び前記第3の表示部は、前記表示灯の全周方向の長さが所定の長さに設定されている、請求項5に記載の移動体。
【請求項8】
前記移動体が旋回する場合における前記第1の表示は、複数個点灯し、前記他の表示部と一体で流れ表示を構成する、請求項4に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本体部の四隅に1個ずつ設けられた4個の方向指示器と、直進走行から進行方向を変えるときには曲がる方向に応じて左右方向のいずれかの方向指示器が点灯するように制御し、スピンターンするときには旋回方向に方向指示器の点灯位置が移り変わるように方向指示器の点灯を制御する制御手段と、を備えた走行車が開示されている。このため、周辺の作業者は、方向指示器の点灯方向を確認することによって走行車の旋回方向を把握することができ、走行車の動作を確実に把握することができる。また、特許文献2には、車体を正面視したときの周縁部に沿った枠形状を有する第一の灯体と、車体を背面視したときの周縁部に沿った枠形状を有する第二の灯体と、第一の灯体及び第二の灯体を方向指示器として機能するように点灯又は点滅させる制御部を備える車両が開示されている。このため、車体の形状を周辺の歩行者、他車両の運転者等へ好適に認識させることができる。
【0003】
しかしながら、引用文献1に記載の走行車の直進時に方向指示器が点灯しない側だけが見える場合や引用文献2に記載の車両の側面だけが見える場合には、これらの移動方向を把握することが困難になる。また、引用文献1に記載の方向指示器や引用文献2に記載の灯体を、例えば、全方向駆動型車輪を使用する無人搬送車のように、直行、横行、斜行、曲行及び旋回のような複数の動作モードを有する移動体に適用した場合には、移動体の周辺にいる人は、移動体との位置関係によっては移動方向だけでなく動作内容の把握も困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-249008号公報
【文献】特開2020-21612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情を鑑み、移動体との位置関係によることなく、移動体の周辺にいる人が移動体の移動方向及び動作内容を把握することができる移動体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様によれば、配置した面に沿って移動可能な移動体であって、本体部と、本体部を全方向に移動させる移動手段と、本体部の全周に沿って配置された表示灯と、表示灯を制御するための制御部と、を備え、表示灯は、移動体の動作モードに対応した表示を点灯することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一の態様によれば、表示灯は、移動体が移動を開始する所定の時間前に表示を点灯するように構成されてもよい。
【0008】
さらに、本発明の一の態様によれば、表示灯は、移動体の移動途中に動作モードを変更する場合に、次の動作モードに対応した表示を変更前に点灯するように構成されてもよい。
【0009】
また、本発明の一の態様によれば、表示灯は、移動体の移動方向側の第1の表示部に他の表示部とは異色の第1の表示を点灯するように構成されてもよい。
【0010】
さらに、本発明の一の態様によれば、表示灯は、他の表示部に全周方向に沿った流れ表示を点灯し、流れ表示の流れ速度は、移動体の移動速度に対応して変化してもよい。
【0011】
また、本発明の一の態様によれば、移動体が平行移動又は曲行する場合における第1の表示の色は白色でもよい。
【0012】
さらに、本発明の一の態様によれば、移動体が平行移動又は曲行する場合における流れ表示は、第2の表示部と、第2の表示部と交互に連続する第3の表示部とを有し、第2の表示部及び第3の表示部は、表示灯の全周方向の長さが所定の長さに設定されてもよい。
【0013】
また、本発明の一の態様によれば、移動体が旋回する場合における第1の表示は、複数個点灯し、他の表示部と一体で流れ表示を構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一の態様に係る移動体によると、移動体は、本体部を全方向に移動させる移動手段と、本体部の全周に沿って配置された表示灯と、表示灯の表示を制御するための制御部と、を備える。このため、移動体の周辺にいる人は、本体部の全周に沿って配置された表示灯の表示を確認することによって、移動体との位置関係によることなく、移動体の移動方向を把握することができる。また、移動体の表示灯は、移動体の動作モードに対応した表示を点灯することができる。このため、移動体の周辺にいる人は、移動体の動作内容を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態に係る移動体の斜視図を示す。
図2図2は、本実施形態に係る移動体の側面図を示す。
図3図3は、制御部のブロック図を示す。
図4図4は、流れ表示の説明図を示す。
図5a-5e】図5aから図5eは、表示灯の点灯状態を示す説明図であり、図5aは直行時、図5bは横行時、図5cは斜行時、図5dは曲行時、図5eは旋回時の状態を示す。
図6図6は、直行時の移動体の側面図を示す。
図7図7は、斜行時の移動体の側面図を示す。
図8図8は、旋回時の移動体の斜視図を示す。
図9図9は、表示灯の制御のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る移動体を説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺を変更して説明する場合がある。
【0017】
図1及び図2に、配置した面としての床面FSに配置された移動体としての無人搬送車10の斜視図及び側面図を示す。無人搬送車10は、人が運転操作をしなくても指示された目的地まで自動走行できる搬送車であり、工場等で使用されている。無人搬送車10は、本体部12と、本体部12を全方向に移動させる移動手段としてのメカナムホイール14とを備える。
【0018】
本体部12は、外周形状が直方体状に形成されており、上面が、例えば、製造部品等を載置するための載置面16とされている。ここでは、本体部12の長辺方向を前後方向LDと、短辺方向を横方向CDと称する。載置面16には、昇降可能に構成されたリフタ18を搭載することができる。このため、載置面16に物品を載せて搬送する標準仕様に加えて、リフタ18を昇降させることによって搬送する物品の載せ降ろしを自動化するリフタ仕様も構成することができる。これによって、物品の載せ降ろしをする作業者の負担を低減することができる。さらに、載置面16には、図示しない協働ロボットを搭載して協働ロボット仕様を構成することができる。これによって、例えば、ワークや工具の着脱、機械扉の開閉といった、物品の搬送先における様々な作業を自動化することができる。
【0019】
本体部12のコーナ部には、緊急時等に無人搬送車10を非常停止するための非常停止ボタン20が配置されている。また、本体部12のコーナ部のうち平面視で対角線上にある2つのコーナ部の下方側には、無人搬送車10から所定の距離内の人又は障害物を検知するための位置センサ22が取り付けられている。さらに、本体部12の側部には、無人搬送車10に発生中のアラームの確認及び解除、アラーム履歴の確認、モータの状態確認、並びに、保守作業時におけるパラメータ変更のためのタッチパネル24が配置されている。なお、無人搬送車10の移動速度、移動方向、並びに、直行、横行、斜行、曲行及び旋回等の挙動を含む動作モードの設定は、無人搬送車10から離れた遠隔において、図示しないコントローラを用いて遠隔で設定することができる。
【0020】
本体部12の下方側には、メカナムホイール14が回転可能に取り付けられている。ホイールは、通常のタイヤとホイールの組み合わせによって形成することができるが、好ましくは、メカナムホイール14によって形成される。メカナムホイール14はホイールの回転差を用いて旋回を行うことができる。また、ホイールの回転差を制御することによって、通常のホイールのようにホイールの回転方向への直線移動だけでなく、全方向への平行移動や直進旋回を行うことができる。これによって、無人搬送車10は、直行、横行、斜行、曲行、旋回、蛇行及びクランク等の複数の挙動の動作モードで移動することができる。
【0021】
無人搬送車10は、本体部12の上方側において全周に沿って配置された表示灯26を備える。ここでは、表示灯26は、長さ方向に沿ってLED30が配置されたLEDテープ28(図4参照)によって構成されている。ここで用いられるLEDテープ28は、5Vの電源、GND、及び、LED30(図4参照)と接続し、この色情報(RGB)を伝える信号線の3芯を有して構成されている。LEDテープ28上の各LED30は、デイジーチェーン(数珠つなぎ)接続され、表示信号は信号線を介して隣り合うLED30へ伝達するように構成されている。このため、信号伝達のインターバルを変更することによって点滅の速さ、すなわち点滅の時間間隔、及び、同じ表示の点灯位置が順次移動していくことによって表示が流れていくように見える、いわゆる流れ表示の流れ速度を変更することができる。
【0022】
本体部12は、また、このような表示灯26の表示を制御するための制御部としての移動体制御装置32と表示灯制御装置34とを備える。図3に示すように、移動体制御装置32は、プロセッサ36と、インタフェース44と、を含んで構成されている。プロセッサ36は、例えば、1つ又は複数のCPU等によって構成されている。プロセッサ36は、無人搬送車10の状態、すなわち、位置センサ22によって取得される移動経路上の地図及び人や障害物のような対象物の有無といったエリア情報やアラーム発生の要否をモニタすると共に、これらの情報を表示灯制御装置34に伝達するための移動体状態監視部38と、動作モードを本体部12及びメカナムホイール14に指令するための移動指令制御部40とを有する。また、プロセッサ36は、本体部12及びメカナムホイール14に指令すると共に、移動速度、移動方向を含む動作モードの情報を表示灯制御装置34に伝達するための通信データ生成部42を有する。さらに、インタフェース44は、例えば、I/Oポート等によって構成されている。これらの移動体制御装置32の構成要素は、図示しないバスによって互いに接続されている。
【0023】
表示灯制御装置34は、移動体制御装置32から受け取った移動速度、移動方向を含む動作モードの情報に基づいて、後述する表示灯26の表示を制御するように構成されており、例えば、1つ又は複数のCPU等によって構成されている。また、本体部12は、表示灯制御装置34及び表示灯26に電源を供給するための補助電源46を備える。
【0024】
本体部12は、また、図示しないスピーカを有しており、スピーカは、プロセッサ36と電気的に接続されている。スピーカ用のメモリには、複数の警告音及び楽曲が収録されている。このため、移動速度、移動方向を含む動作モードごとの警告音及び/又は楽曲を、表示灯26の表示と連動させて選択し、スピーカから流すことができる。
【0025】
図4には、流れ表示の変化を図の上から下への順番で時系列的に示す。図は、表示灯26のカバーを外して、LEDテープ28が露出した状態を示す。この例では、デイジーチェーン接続されたLED30は、複数の色AのLED30で構成された第2の表示部48と複数の色BのLED30で構成された第3の表示部50とを交互に点灯させる。ここでは、4個のLED30が連続して同じ色を点灯することによって、第2の表示部48と第3の表示部50とを所定の長さLLで表示するように設定されている。このため、第2の表示部48及び第3の表示部50を同じ色の帯状に表示することができ、表示灯の表示内容を視認しやすくなる。ここでは、所定の長さLLは、動作モードごとに設定されており、この長さLLに応じて連続して同じ色が点灯するLED30の個数が変わる。また、第2の表示部48と第3の表示部50との繋ぎ目、すなわち、色Aと色Bとの繋ぎ目になる位置のLEDの表示色を順次切り替えていくことによって、同じ色の帯が順次移動しているように表示することができ、いわゆる流れ表示を構成することができる。
【0026】
図5aから図5eには、一例として、直行、横行、斜行、曲行及び旋回の挙動の動作モードごとの表示灯26の点灯状態の説明図を示す。また、図6から図8には、表示灯26の点灯状態の具体例を示す。図5a及び図6は、直行時の表示灯26の点灯状態を示す。表示灯26は、移動方向を簡便に把握できるようにするために、無人搬送車10の移動方向側に第1の表示部としての点滅部52を設け、表示灯26の他の部分とは異色となる第1の表示としての白色表示を点滅するように構成されている。直行する場合は、点滅部52は、無人搬送車10の移動方向前方側の短辺に沿って配置されている表示灯26の横方向中央に設けられている。また、表示灯26は、無人搬送車10の移動方向後方側の短辺に沿って配置されている表示灯26の横方向中央を開始点SPとして、点滅部52へ向けて無人搬送車10の全周方向に沿って流れる流れ表示FDを点灯するように構成されている。このため、表示灯26の表示は、流れ表示FDの開始点SPと点滅部52とを繋ぐ直線が、無人搬送車10の直行方向SDと一致するように構成されている。ここでは、点滅部52の長さ並びに開始点SPにおける第2の表示部48及び第3の表示部50の長さLLは、表示灯26の全周方向の長さの約1/6に設定されている。また、開始点SP以外の第2の表示部48及び第3の表示部50の長さLLは、表示灯26の全周方向の長さの約1/22に設定されている。
【0027】
流れ表示FDは、無人搬送車10の移動速度に応じて流れ速度及び表示色を変化させるように構成されている。具体的には、無人搬送車10の移動速度が速くなるのにしたがって流れ速度が速くなるように構成されている。また、無人搬送車10は、動作モードの1つとして、通常走行モード及び接近走行モードの少なくとも2つの走行モードを切替可能に構成されている。これらの走行モードでは、位置センサ22が人や障害物といった対象物を検知する範囲の設定が異なる。具体的には、無人搬送車10が、対象物から所定の範囲以上離れて(距離をとって)走行する通常走行モードに対して、接近走行モードでは、通常走行モードの所定の範囲よりも狭い範囲、すなわち、より対象物に接近した状態での走行を許容する。接近走行モードでは、無人搬送車10は、第2の表示部48及び第3の表示部50の表示色を赤色及び緑色として所定の速度で移動する。通常走行モードでは、無人搬送車10は、例えば、一定速度以上で移動するときは、第2の表示部48及び第3の表示部50の表示色を青色及び緑色と設定することができる。また、低速よりも遅い極低速で移動するときは、第2の表示部48及び第3の表示部50の表示色を、例えば、黒色及びオレンジ色と設定することができる。なお、流れ表示FDの表示色は、これらに限らず、異なる色の組み合わせで設定されてもよい。
【0028】
図5bは、横行時の表示灯26の点灯状態を示す。横行する場合には、白色表示の点滅部52は、無人搬送車10の移動方向前方側の長辺に沿って配置されている表示灯26の前後方向中央に設けられている。また、表示灯26は、無人搬送車10の移動方向の後方側の長辺に沿って配置されている表示灯26の前後方向中央を開始点として、点滅部52へ向けて無人搬送車10の全周方向に沿って流れる流れ表示FDを点灯するように構成されている。このため、表示灯26の表示は、流れ表示FDの開始点SPと点滅部52とを繋ぐ直線が、無人搬送車10の横行方向TDと一致するように構成されている。ここでは、点滅部52の長さ並びに開始点SPにおける第2の表示部48及び第3の表示部50の長さLLは、表示灯26の全周方向の長さの約1/6に設定されている。また、開始点SP以外の第2の表示部48及び第3の表示部50の長さLLは、表示灯26の全周方向の長さの約1/22に設定されている。
【0029】
図5c及び図7は、斜行時の表示灯26の点灯状態を示す。斜行する場合には、白色表示の点滅部52は、無人搬送車10の4つのコーナ部のうち移動方向先端のコーナ部に設けられている。また、表示灯26は、点滅部52と平面視で対角線上にあるコーナ部を開始点SPとして、点滅部52へ向けて無人搬送車10の全周方向に沿って流れる流れ表示FDを点灯するように構成されている。このため、表示灯26の表示は、流れ表示FDの開始点SPと点滅部52とを繋ぐ直線が、無人搬送車10の斜行方向DDと一致するように構成されている。ここでは、点滅部52の長さ並びに開始点SPにおける第2の表示部48及び第3の表示部50の長さLLは、表示灯26の全周方向の長さの約1/6に設定されている。また、開始点SP以外の第2の表示部48及び第3の表示部50の長さLLは、表示灯26の全周方向の長さの約1/22に設定されている。
【0030】
図5dは、曲行時の表示灯26の点灯状態を示す。曲行する場合には、白色表示の点滅部52は、表示灯26が無人搬送車10の移動経路TPと平面視で重なる部分、すなわち、無人搬送車10の移動方向前方側の短辺に沿って配置されている部分と無人搬送車10の移動経路TPとが平面視で重なる部分に設けられている。また、表示灯26は、点滅部52における速度ベクトルと方向が一致する移動経路TPの接線CLと無人搬送車10の移動方向後方側の表示灯26とが平面視で交差する部分を開始点SPとして、点滅部52へ向けて無人搬送車10の全周方向に沿って流れる流れ表示FDを点灯するように構成されている。ここでは、点滅部52の長さ並びに開始点SPにおける第2の表示部48及び第3の表示部50の長さLLは、表示灯26の全周方向の長さの約1/6に設定されている。また、開始点SP以外の第2の表示部48及び第3の表示部50の長さLLは、表示灯26の全周方向の長さの約1/22に設定されている。
【0031】
図5e及び図8は、旋回時の表示灯26の点灯状態を示す。旋回する場合には、白色表示の点滅部52は、複数設けられている。ここでは、具体的には、点滅部52は、表示灯26の全周方向に沿って等間隔で3箇所、すなわち平面視で120度間隔の3箇所に設けられている。なお、点滅部52は、120度間隔の3箇所に設けるだけでなく、例えば、90度間隔の4箇所や60度間隔の6箇所等の異なる数で設けられてもよい。旋回する場合には、3箇所の点滅部52は、第2の表示部48及び第3の表示部50と共に流れ表示FDを構成し、表示灯26は、点滅部52と第2の表示部48及び第3の表示部50とが一体で無人搬送車10の全周方向に沿って旋回方向RDと同じ方向流れる流れ表示FDを表示する。ここでは、3箇所の点滅部52の長さ並びに第2の表示部48及び第3の表示部50の長さLLは、表示灯26の全周方向の長さの約1/12に設定されている。
【0032】
また、表示灯26は、無人搬送車10の移動開始前の所定の時間から移動開始の予告の表示を点灯するように構成されている。具体的には、例えば、移動開始の3秒前から次の進行方向を示して予告することができる。これによって、無人搬送車10の周辺にいる人は、無人搬送車10が移動を開始すること予め認識することができる。
【0033】
さらに、表示灯26は、無人搬送車10の移動途中に動作モードを変更する場合には、変更の予告の表示を点灯するように構成されている。具体的には、例えば、流れ表示FDの第2の表示部48及び第3の表示部50を青色及び緑色で表示して一定速度以上で直行する無人搬送車10が、旋回する場合に、間髪入れずに3箇所の白色表示の点滅部52を含む流れ表示FDに切り替えるのではなく、予告のために切り替え開始の3秒前から次の進行方向を示すことができる。これによって、無人搬送車10の周辺にいる人は、無人搬送車10の動作モードが変更されることを確実に認識することができる。
【0034】
本実施形態に係る無人搬送車10の作用効果を図9に示す制御のフローチャートを用いて以下に説明する。
【0035】
ステップS10において、ユーザは、プロセッサ36を通じて、無人搬送車10(移動体)の移動方向及び移動速度を含む動作モードを設定し、表示灯制御装置34は、これらの情報を取得する。移動方向及び移動速度の情報は、例えば、直行、横行、斜行及び曲行の場合は、速度ベクトルとして、旋回の場合は角速度として取り扱われる。また、表示灯制御装置34は、移動経路上の地図や障害物の有無といったエリア情報やアラーム発生の要否をプロセッサ36から取得する。設定並びにエリア情報及びアラーム発生の要否の取得が終了すれば、ステップS20へと移行する。
【0036】
ステップS20において、例えば、位置センサ22によって無人搬送車10の近傍に障害物が検知された場合や無人搬送車10の動作又は制御に不具合が発見された場合のような移動を開始するのに問題がある場合は、無人搬送車10は、表示灯26にアラームとしての赤色表示と白色表示とを交互に点灯すると共に、スピーカからアラーム音としての警報音を流す。移動を開始するのに問題がない場合は、ステップS30へと移行する。
【0037】
ステップS30において、無人搬送車10が充電中である場合には、無人搬送車10は、表示灯26に充電中であることを示す黄色を全周に点灯する。この黄色の点灯は、徐々に明るくなることと徐々に暗くなることとを繰り返す点滅をする専用のイルミネーションとすることができる。充電中ではない又は充電が完了した場合は、ステップS40へと移行する。
【0038】
ステップS40において、無人搬送車10がリフタ18仕様又は協働ロボット仕様の状態にあり、リフタ18又は協働ロボットを稼働している場合は、無人搬送車10は、表示灯26に稼働中を表す青色表示とオレンジ色表示とを交互に点灯すると共に、スピーカから稼働中であることを示す音楽を流す。これらの稼働中ではない場合には、ステップS50へと移行する。
【0039】
ステップS50において、移動開始予告の表示を点灯して、動作を開始する。無人搬送車10が直行、横行及び斜行の平行移動する場合又は曲行する場合は、ステップS60へと移行する。無人搬送車10の動作モードが、旋回である場合又は移動をすることなく停止している場合には、ステップS80へと移行する。
【0040】
ステップS60において、無人搬送車10が直行、横行及び斜行の平行移動する場合又は曲行する場合であって、無人搬送車10が通常走行モードではない場合、すなわち、接近走行モードの場合は、流れ表示FDの第2の表示部48及び第3の表示部50の表示色を赤色表示及び緑色表示の組み合わせで点灯すると共に、スピーカから接近走行モードで移動していることを示す音楽を流す。通常走行モードの場合は、ステップS70へと移行する。
【0041】
ステップS70において、無人搬送車10が通常走行モードで直行、横行及び斜行の平行移動する場合又は曲行する場合であって、無人搬送車10の移動速度が極低速の場合には、無人搬送車10は、流れ表示FDを黒色表示及びオレンジ色表示の組み合わせで点灯すると共に、スピーカから通常走行モードの極低速で移動していることを示す音楽を流す。また、極低速ではない場合には、無人搬送車10は、流れ表示FDを青色表示及び緑色表示の組み合わせで点灯すると共に、スピーカから通常走行モードの極低速ではない速度で移動していることを示す音楽を流す。
【0042】
ステップS80において、無人搬送車10が旋回する場合には、ステップS90へ移行し、無人搬送車10が通常走行モードではない場合、すなわち、接近走行モードの場合は、流れ表示FDの第2の表示部48及び第3の表示部50の表示色を赤色表示及び緑色表示の組み合わせで点灯すると共に、スピーカから接近走行モードで旋回していることを示す音楽を流す。通常走行モードの場合は、ステップS100へと移行する。無人搬送車10が旋回しない場合、すなわち、移動をすることなく停止している場合は、ステップS110へ移行する。
【0043】
ステップS100において、無人搬送車10が通常走行モードで旋回する場合であって、無人搬送車10の移動速度が極低速の場合には、無人搬送車10は、流れ表示FDを黒色表示及びオレンジ色表示の組み合わせで点灯すると共に、スピーカから通常走行モードの極低速で旋回していることを示す音楽を流す。また、極低速ではない場合には、無人搬送車10は、流れ表示FDを青色表示及び緑色表示の組み合わせで点灯すると共に、スピーカから通常走行モードの極低速ではない速度で旋回していることを示す音楽を流す。
【0044】
ステップS110において、無人搬送車10が動作することなく、すなわち移動することなく停止している場合は、無人搬送車10は、青色表示を点灯する。
【0045】
本実施形態に係る無人搬送車10によると、無人搬送車10は、配置された床面FSに沿って本体部12を全方向に移動させるメカナムホイール14と、本体部12の全周に沿って配置された表示灯26と、本体部12の動作モードに基づいて表示灯26を制御するための移動体制御装置32及び表示灯制御装置34とを備える。このため、無人搬送車10の周辺にいる人は、本体部12の全周に沿って配置された表示灯26の表示及び/又はアラーム音を認識することによって、無人搬送車10との位置関係によることなく、無人搬送車10の移動方向を把握することができる。また、無人搬送車10の表示灯26は、無人搬送車10の動作モードに対応して異なる表示を点灯することができる。このため、無人搬送車10の周辺にいる人は、無人搬送車10の動作内容を把握することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る無人搬送車10によると、表示灯26は、無人搬送車10の移動開始前の所定の時間から移動開始の予告の表示を点灯するように構成されている。このため、無人搬送車10の周辺にいる人は、無人搬送車10が移動を開始すること予め認識することができる。
【0047】
さらに、本実施形態に係る無人搬送車10によると、表示灯26は、無人搬送車10の移動途中に動作モードを変更する場合には、変更の予告の表示を点灯するように構成されている。このため、無人搬送車10の周辺にいる人は、無人搬送車10の動作モードが変更されることを確実に認識することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る無人搬送車10によると、点滅部52を第2の表示部48及び第3の表示部50とは異色の白色表示とすることによって、無人搬送車10の移動方向を無人搬送車10の周辺にいる人にわかりやすく伝達することができる。
【0049】
以上により、本実施形態に係る無人搬送車10によれば、無人搬送車10との位置関係によることなく、無人搬送車10の周辺にいる人が無人搬送車10の移動方向及び動作内容を把握することができる。
【0050】
なお、ここでは、動作モードの内の挙動例として、直行、横行、斜行、曲行及び旋回の場合について説明したが、これに限らず、例えば、蛇行、クランク等他の挙動についても別個の態様で表示灯が点灯されてもよい。
【0051】
また、ここでは、点滅部52は、白色表示であるとして説明したが、これに限らず、例えば、表示灯の他の部分と識別できる別の色で表示されてもよい。
【0052】
以上、無人搬送車10の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解できると考えられる。
【符号の説明】
【0053】
10 無人搬送車(移動体)
12 本体部
14 メカナムホイール(移動手段)
26 表示灯
32 移動体制御装置(制御部)
34 表示灯制御装置(制御部)
48 第2の表示部
50 第3の表示部
52 点滅部(第1の表示部)
FD 流れ表示
FS 床面(配置した面)
LL 所定の長さ
【要約】
【課題】移動体との位置関係によることなく、移動体の周辺にいる人が移動体の移動方向及び動作内容を把握することができる移動体を提供する。
【解決手段】配置した床面FSに沿って移動可能な無人搬送車10であって、本体部12と、本体部12を全方向に移動させるメカナムホイール14と、本体部12の全周に沿って配置された表示灯26と、表示灯26の表示を制御するための移動体制御装置32及び表示灯制御装置34と、を備え、表示灯26は、無人搬送車10の動作モードに対応した表示を点灯することを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5a-5e】
図6
図7
図8
図9