(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】結紮用デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20231207BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
A61B17/12
A61B1/00 650
(21)【出願番号】P 2022543254
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2020031703
(87)【国際公開番号】W WO2022038783
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 大輔
(72)【発明者】
【氏名】塚本 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】桂田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】水上 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲柳▼ 勝義
【審査官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-253555(JP,A)
【文献】特開2000-014634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筒体と、
前記第1筒体の基端部に接続され、内視鏡の先端部に着脱可能に構成された第2筒体と、
筒状をなし、前記第1筒体の外周に装着され、前記第1筒体に対しその長軸方向に沿って相対移動可能であるスライダと、
前記第1筒体の外周に装着され、前記スライダとともに前記第1筒体に対して相対移動可能な結紮用リングと、を備え、
前記第2筒体は、強度が他の部分よりも低い脆弱部を有
し、
前記脆弱部により前記第2筒体の少なくとも一部が破断するように構成されている、結紮用デバイス。
【請求項2】
前記第2筒体の前記脆弱部に少なくも一部が接合され、前記スライダを押して相対移動させるための流体が通過するように構成されたチューブをさらに備え、
前記チューブを引っ張り前記第2筒体から離間させたとき、前記脆弱部により前記第2筒体の少なくとも一部が破断するように構成されている、請求項1に記載の結紮用デバイス。
【請求項3】
前記脆弱部は、前記第2筒体の外周面に前記第2筒体の長軸方向に沿って形成された凹部又は孔部を有し、
前記チューブは、前記凹部又は前記孔部に沿って配置され、前記凹部又は前記孔部に樹脂により固定されている、請求項2に記載の結紮用デバイス。
【請求項4】
前記脆弱部は、前記第2筒体の長軸方向に沿って形成されたスリットを有し、
前記チューブは、前記スリットに沿って配置され、前記スリットに樹脂により固定されている、請求項2に記載の結紮用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、結紮用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の消化管等に形成された憩室及び静脈瘤のような患部を結紮する結紮用デバイスが知られている。この種の結紮用デバイスは、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された結紮用キットでは、内筒の基端部に固定された装着用筒に対し、内視鏡が固定されている。装着用筒は、軟質プラスチック又はゴム等の適度な柔軟性とシール性とを有する材質で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された結紮用キットでは、装着用筒が内視鏡の外周面に密着しているため、使用後に内視鏡から結紮用キットを取り外すのが容易ではない。
【0005】
本開示は、内視鏡から容易に取り外すことが可能な結紮用デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る結紮用デバイスは、第1筒体と、前記第1筒体の基端部に接続され、内視鏡の先端部に着脱可能に構成された第2筒体と、筒状をなし、前記第1筒体の外周に装着され、、前記第1筒体に対しその長軸方向に沿って相対移動可能であるスライダと、前記第1筒体の外周に装着され、前記スライダとともに前記第1筒体に対して相対移動可能な結紮用リングと、を備え、前記第2筒体は、強度が他の部分よりも低い脆弱部を有する。
【0007】
前記第2筒体の前記脆弱部に少なくも一部が接合され、前記スライダを押して相対移動させるための流体が通過するように構成されたチューブをさらに備え、前記チューブを引っ張り前記第2筒体から離間させたとき、前記脆弱部により前記第2筒体の一部が破断するように構成されていてもよい。
【0008】
前記脆弱部は、前記第2筒体の外周面に前記第2筒体の長軸方向に沿って形成された凹部又は孔部を有し、前記チューブは、前記凹部又は前記孔部に沿って配置され、前記凹部又は前記孔部に樹脂により固定されていてもよい。
【0009】
前記脆弱部は、前記第2筒体の長軸方向に沿って形成されたスリットを有し、前記チューブは、前記スリットに沿って配置され、前記スリットに樹脂により固定されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、内視鏡から容易に取り外すことが可能な結紮用デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】スライダが基端側に位置する状態の結紮用デバイスを示す縦断面図である。
【
図1B】スライダを前進させた状態の結紮用デバイスを示す縦断面図である。
【
図3】結紮用デバイスを内視鏡から取り外す動作の説明図である。
【
図5A】変形例に係る接合部材を基端側から見た端面図である。
【
図5B】変形例に係る接合部材を基端側から見た端面図である。
【
図7】変形例に係る接合部材を基端側から見た端面図である。
【
図8】
図7の接合部材にチューブを接合する接合工程の説明図である。
【
図9】変形例に係る結紮用デバイスを内視鏡に装着した状態の縦断面図である。
【
図10】変形例に係る接合部材を基端側から見た端面図である。
【
図11A】変形例に係る接合部材を基端側から見た端面図である。
【
図11B】変形例に係る接合部材を脆弱部側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面に示した結紮用デバイスの寸法は、実施内容の理解を容易にするための模式的な寸法であり、実際の寸法に対応するとは限らない。
【0013】
図1A及び
図1Bは、本実施形態に係る、内視鏡2に装着した状態の結紮用デバイス1を示す縦断面図である。
図1Aでは、後述するスライダ40が基端側に位置する状態が示され、
図1Bでは、スライダ40を前進させた状態が示されている。
【0014】
図1A及び1Bは、結紮用デバイス1が装着された内視鏡2の先端部のみを示している。なお、スライダ40は、そのスライダ片45のみが図示されている。また、内視鏡2は、便宜上、外観を図示しており、断面図としては図示していない(以降の図も同様である)。
【0015】
図1A及び1Bにおいて、左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が基端側(手元側、近位側)である。内視鏡2には、図示せぬ鉗子を挿通するための鉗子孔2aが形成されている。
【0016】
結紮用デバイス1は、内側筒体10と、接合部材20と、外側筒体30と、スライダ40と、シール部材50と、結紮用リング60、61及び62と、チューブ70を有する。内側筒体10は第1筒体に相当し、接合部材20は第2筒体に相当する。
【0017】
内側筒体10は、内視鏡先端部2bに位置し、気密状態又は液密状態で内視鏡先端部2bに装着されている。内側筒体10は、基端部11と、中間部12と、先端部13とを有する。基端部11は、中間部12よりも薄く、外径が小さい。基端部11の外周には、外方へ突出する環状の凸部14が設けられている。
【0018】
中間部12は、基端部11の先端側に位置している。中間部12の内周面15には、内方に突出する環状の突起16が設けられている。突起16には、長軸方向において、内視鏡先端部2bの先端が当接する。
【0019】
先端部13は、中間部12の先端側に位置している。先端部13は、内視鏡2の先端面2cよりも先端側に突出している。先端部13は、先端側に向かって先細るテーパ形状を有し、傾斜面17を有する。先端部13と内視鏡2の先端面2cとにより、凹部空間18が形成される。
【0020】
内側筒体10を構成する材料は、特に制限されないが、例えば、金属材料、樹脂材料又はセラミックス材料などである。金属材料の例としては、ステンレス鋼、チタン及びニッケルチタン合金等が挙げられる。樹脂材料の例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン又はポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。セラミックス材料の例としては、例えば、ガラス又はファインセラミックス等が挙げられる。
【0021】
内側筒体10を構成する材料としては、後述のように内側筒体10には結紮用リング60、61及び62が装着されるため、それに耐える強度を有すると共に、生体適合性を有しているものでもよい。また、内側筒体10を構成する材料としては、処置時の視野を広く保つために、透光性材料(例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、アクリル樹脂等)でもよい。
【0022】
接合部材20は、結紮用デバイス1を内視鏡2に固定するための部材であり、内視鏡2の外周に装着される。
【0023】
図2は、接合部材20を基端側から見た端面図である。
【0024】
図1A及び
図2に示すように、接合部材20は、円筒状を有し、弾性材料により形成される。接合部材20は、基端部21と、先端部22とを有する。接合部材20に外力が作用していない状態では、接合部材20の内径は、内側筒体10の基端部11の外径よりも小さく構成されている。接合部材20の先端部22は、その周方向に伸張された状態で、内側筒体10の基端部11に装着されている。より具体的には、接合部材20は、接合部材20の先端部22が内側筒体10の基端部11の外周を覆い、かつ、接合部材20の基端部21は内側筒体10の基端部11よりも基端側に位置した状態で、内側筒体10の基端部11に装着されている。
【0025】
内視鏡2は、接合部材20の基端部21を伸張させた状態で、基端部21及び内側筒体10に挿入されている。このため、接合部材20の基端部21は、その弾性力により内視鏡2の外周面に密着し、結紮用デバイス1を内視鏡2に固定する。
【0026】
接合部材20には、長軸方向に延びる横断面が略矩形の凹部24を有する脆弱部25が形成されている。凹部24は、接合部材20の外周面23に形成されている。脆弱部25は、接合部材20の横断面において、接合部材20の他の部分よりも薄いため、脆弱部25の強度が接合部材20の他の部分よりも低い。
図1A及び
図1Bに示すように、凹部24に沿って、後述のチューブ70の一部が凹部24に挿入され、接着剤(樹脂)により接合部材20に固定されている。換言すると、チューブ70の一部が、脆弱部25に接着(接合)されている。なお、チューブ70の一部は、凹部24に挿入されず、凹部24を覆うように配置され、接着剤(樹脂)により脆弱部25に接着されていてもよい。
【0027】
接合部材20を構成する材料としては、結紮用デバイス1を内視鏡2に対して外れないように固定できる強度と生体適合性とを有している限り、特に限定されず、上記のように、天然ゴム、合成ゴム又は熱可塑性エラストマー等の弾性材料を用いることができる。合成ゴムの例としては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム又はシリコーンゴム等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーの例としては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー又はポリアミド系エラストマー等が挙げられる。
【0028】
接着剤としては、チューブ70に引っ張り力を加えたときにチューブ70が脆弱部25から離間しない強度と生体適合性とを有している限り、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、シリコーン系接着剤又はフェノール樹脂系接着剤等が挙げられる。
【0029】
外側筒体30は、内側筒体10の中間部12の外周に設けられた外筒部31と、外筒蓋32とを有する。内側筒体10と外側筒体30との間にスライド空間19が形成される。
【0030】
外筒部31の先端には、内方に向かって突出する環状の凸部33が設けられている。凸部33と中間部12とにより、スライド空間19が開口する環状の開口部34が形成される。外筒蓋32は、外筒部31の基端部に接着剤により接着されている。外筒蓋32の内周側の先端面は、内側筒体10の中間部12の基端部に固定されている。外筒蓋32により、スライド空間19の基端側は閉じられている。外筒蓋32には、スライド空間19に連通する貫通孔35が形成されている。外筒部31の先端は、長軸方向において、内側筒体10の突起16とほぼ同じ位置に配置されている。
【0031】
外側筒体30を構成する材料としては、後述のように流体の圧力に耐える強度と生体適合性とを有している限り、特に限定されず、例えば、内側筒体10の材料として例示した材料を用いることができる。また、接着剤の材料としては、流体の圧力に耐える強度と生体適合性とを有している限り、特に限定されず、上述したチューブ70を接合部材20に固定するための接着剤と同様の接着剤を用いることができる。
【0032】
スライダ40は、筒状形状を有し、内側筒体10と外側筒体30との間に設けられ、内側筒体10の外周に、気密又は液密の状態で長手方向に沿って内側筒体10に対して相対移動可能に装着されている。具体的には、スライダ40は、内側筒体10の中間部12の外周面上を、先端部13又は基端部11に向かって、摺動することができる。スライダ40の先端部及び/又は基端部における、スライダ40と内側筒体10との間の間隔は、後述の結紮用リング60、61及び62の太さよりも小さく構成されている。スライダ40の長軸方向の長さは、外側筒体30の外筒部31とほぼ等しく構成されている。
【0033】
スライダ40は、筒状部41と、フランジ部42とを有する。筒状部41の内周面43には、3本の環状溝44a、44b及び44cが長軸方向に沿って所定間隔に形成されている。環状溝44a、44b及び44cの寸法は、後述の結紮用リング60、61及び62を収容可能な寸法に構成されている。
図1A及び
図1Bに示すように、スライダ40が、内側筒体10に対し長軸方向に沿って相対移動することにより、スライダ40の環状溝44a、44b及び44cは、スライド空間19から先端部13へ前進及び後退が行われる。スライダ40が最も先端側に位置する状態では、フランジ部42が凸部33に当接し、スライダ40がスライド空間19から抜け出ることが防止される。
【0034】
スライダ40は、その長軸方向に延びる中心軸を含む平面に沿って、円筒状のスライダ40を半割した2つのスライダ片により構成されている。各スライダ片を接着剤により互いに接着することにより、2つのスライダ片が一体となり、スライダ40が形成される。
【0035】
スライダ40を構成する材料としては、内側筒体10との摺動性が優れ、かつ、生体適合性を有している限り、特に限定されず、内側筒体10の材料として例示した材料を用いることができる。スライダ40を構成する材料としては、処置時の視野を広く保つために、透光性材料(例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、アクリル樹脂等)であってもよい。また、接着剤の材料としては、流体の圧力に耐える強度と生体適合性とを有している限り特に限定されず、例えば、上述した接着剤と同様の接着剤を用いることができる。
【0036】
シール部材50は、環状形状を有し、外筒部31の内周と内側筒体10の外周とに当接しながらスライド空間19内を長軸方向に沿って移動できるように設けられている。すなわち、シール部材50は、外筒部31の内周面と内側筒体10の外周面とに摺動しながら移動できる。また、シール部材50は、スライダ40と共に移動できるようにスライダ40の基端部に固定されている。これにより、シール部材50、外筒蓋32、内側筒体10及び外筒部31により囲まれた空間が気密に保持される。シール部材50を構成する材料としては、当該空間の気密を可能にし、かつ、生体適合性を有している限り、特に限定されず、例えば、接合部材20の材料として例示した材料を用いることができる。
【0037】
結紮用リング60、61及び62は、Oリングであり、内側筒体10の外周に装着され、環状溝44a、44b及び44c内に位置する。結紮用リング60、61及び62を構成する材料としては、内側筒体10に装着可能に十分に伸び、患部を壊死させるのに十分な結紮力を有すると共に、生体適合性を有している限り特に限定されず、例えば、接合部材20の材料として例示した材料を用いることができる。なお、結紮用リング60、61及び62を構成する材料は、例えば、金、白金、タングステン、これらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金など)、又は硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、次炭酸ビスマス等の放射線不透過性材料、あるいはこれらの放射線不透過性材料の粉末を含んだものでもよい。結紮用リング60、61及び62の縦断面形状(内側筒体10の外周に装着した状態において、内側筒体10の長軸方向に沿った断面に現れる形状)は、円形に限らず、矩形状等の他の形状であってもよい。結紮用リング60、61及び62の色は、周辺組織との違いが際立つ、黒色等の色であることが好ましい。
【0038】
チューブ70は、内視鏡2に沿って、その先端部から基端部まで延びている。チューブ70の基端部には、空気のような気体の流体をスライダ40へ送るための図示せぬシリンジが接続されている。チューブ70の先端は、外筒蓋32の貫通孔35の基端部に気密状態で接続されている。上記のように、チューブ70の先端部の一部は、接合部材20の凹部24に挿入され、凹部24に接着剤により接着されている。
【0039】
チューブ70を構成する材料としては、内視鏡2の変形に追従可能な柔軟性と生体適合性とを有している限り、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0040】
次に、結紮用デバイス1の使用態様の一例について説明する。ここでは、消化管の壁面に形成された憩室を結紮する方法を例に挙げて説明する。
【0041】
先ず、
図1Aに示すように、スライダ40全体をスライド空間19に位置させた状態で、結紮用デバイス1を装着した内視鏡2を消化管内に挿入し、消化管内を観察する。出血している憩室を特定し、当該憩室へ内視鏡2及び結紮用デバイス1を近接させて、鉗子孔2aを介して憩室を吸引し、憩室が内視鏡2へ向かって凸形状となるように反転させ、憩室を凹部空間18内へ位置させる。
図1Bに示すように、図示せぬシリンジを操作して流体をチューブ70を介してスライダ40に向けて放出する。流体は、スライダ40の基端部に固定されたシール部材50の基端側に対して圧力を加え、当該圧力を駆動源として、スライダ40及びシール部材50を前進させる。流体は、スライダ40及びシール部材50が前進するに連れて形成される、シール部材50と外筒部31と内側筒体10の中間部12と外筒蓋32との間の空間に蓄積され、シール部材50の基端側に対して圧力を加え続ける。これにより、スライダ40が内側筒体10の先端側に移動して、最先端に位置する結紮用リング60が先端部13へ移動する。その結果、結紮用リング60が縮径しながら先端部13の傾斜面17を先端側に移動して、先端部13から離脱して、吸引した憩室を結紮用リング60により結紮する。次に、結紮用デバイス1を装着した内視鏡2を消化管内から取り出す。その後、結紮された憩室は、壊死して、結紮用リング60と共に体外に排出される。
【0042】
図3は、結紮用デバイス1を内視鏡2から取り外す動作の説明図である。
図4は、接合部材20が裂ける様子の説明図である。
【0043】
結紮用デバイス1を使用後に、結紮用デバイス1を内視鏡2から取り外す際には、
図3に示すように、チューブ70に対して結紮用デバイス1から離れる方向に引っ張り力Fを加えることにより、脆弱部25が接合部材20の他の部分から離間され、引きはがされる。このとき、
図4に示すように、接合部材20の脆弱部25に相当する部分に、長軸方向に沿って破断スリット26が形成され、接合部材20の内視鏡2に対する接合状態が解除される。これにより、結紮用デバイス1を内視鏡2から容易に取り外すことができる。
【0044】
本実施形態の結紮用デバイス1によれば、接合部材20は、強度が他の部分よりも低い脆弱部25を有するので、内視鏡2に取り付けられた結紮用デバイス1を、その使用後に取り外す際に、脆弱部25を介して接合部材20を破断することにより、結紮用デバイス1を容易に内視鏡2から取り外すことが可能となる。よって、術者等は、次の作業にすぐに取り掛かることができ、手技を効率よく進めることができる。
【0045】
また、本実施形態では、チューブ70を引っ張って接合部材20から離間させたとき、脆弱部25により接合部材20の一部が破断するように構成されているので、接合部材20を容易に破断させることができ、結紮用デバイス1を容易に内視鏡2から取り外すことができる。
【0046】
また、本実施形態では、凹部24は、接合部材20の外周面23に接合部材20の長軸方向に沿って形成され、チューブ70は、凹部24に沿って配置され、凹部24に樹脂により固定されている。このため、確実に接合部材20を長軸方向に沿って破断させることができ、結紮用デバイス1を容易に内視鏡2から取り外すことができる。
【0047】
以上、本開示の実施形態について述べてきたが、本開示は、これらの実施形態に限られるものではなく、種々の変形が可能である。
【0048】
例えば、上述の実施形態では、
図2に示すように、脆弱部25の凹部24は、横断面が略矩形であったが、
図5Aに示すように、凹部24aは横断面が略V字状であってもよい。脆弱部25の凹部24は、接合部材20の外周面23に形成したが、
図5Bに示すように、凹部24bを接合部材20の内周面27に形成してもよい。さらに、凹部24(24a及び24b)を外周面23及び内周面27の両方に形成してもよい。
【0049】
図1に示すように、脆弱部25の凹部24は、接合部材20の長軸方向の一端から他端の全体に渡って形成したが、
図6A、6B及び6Cに示すように、脆弱部25の凹部24cを基端側のみ、凹部24dを先端側のみ、凹部24eを中間部のみに形成してもよい。さらに、複数の凹部を一定間隔に長軸方向に沿って形成してもよい。また、脆弱部25は、凹部24により構成される代わりに、接合部材20の側面を貫通する複数の孔部を一定間隔に長軸方向に沿って、いわゆるミシン目状に形成したものでもよい。なお、孔部と孔部の間隔は一定でなくてもよい。
【0050】
脆弱部25は、凹部24により構成されていたが、
図7に示すように、長軸方向に沿って延びるスリット28により構成されていてもよい。なお、スリット28の幅は適宜設定可能である。スリット28が形成された接合部材20では、例えば、
図8に示す接合工程により、チューブ70が接合部材20に対して接合される。
図8では、上段が接合部材20の上面図を示し、下段が接合部材20の端面図を示している。
図8において、上下に並ぶ接合部材20は、当該接合工程における同一の工程にあり、(a)~(d)の順で接合工程が進む。
【0051】
先ず、
図8(a)に示す接合部材20のスリット28に対し、接着剤29Aを充填し、
図8(b)に示すように、スリット28を接着剤29Aにより塞ぐ。続いて、
図8(c)に示すように、接着剤29A上にチューブ70を長軸方向に沿って配置する。
図8(d)に示すように、チューブ70を接着剤29Bにより被覆し、チューブ70全体を接着剤29A及び29Bで被覆する。このようにして、チューブ70は、接合部材20に対し接合される。接着剤29A及び29Bの材料としては、生体適合性を有している限り、特に限定されず、上述した接着剤と同様の接着剤を用いることができる。
【0052】
このように、スリット28は、接合部材20の長軸方向に沿って形成され、チューブ70は、スリット28に沿って配置され、スリット28に樹脂により固定されている。つまり、脆弱部25はスリット28とスリット28に充填された樹脂部材とから構成されている。また、チューブ70がこの樹脂部材に接合(接着)されている。このため、より確実に接合部材20を長軸方向に沿って破断させることができ、結紮用デバイス1を容易に内視鏡2から取り外すことができる。
【0053】
上記の実施形態では、チューブ70を脆弱部25に接着していたが、
図9に示すように、脆弱部25とチューブ70とを、接合部材20の周方向において異なる位置に配置して、チューブ70を脆弱部25に接着しない構成であってもよい。よって、
図9では、脆弱部25のみが図示されており、チューブ70は図示されていない。
図9及び
図10に示すように、脆弱部25は、その凹部24に樹脂層25Aを備える。樹脂層25Aの後端部25Bは、接合部材20の後端よりも後方へ突出して、術者が把持するための把持部として機能する。
【0054】
図9及び
図10で示した例では、結紮用デバイス1を内視鏡2から取り外す際には、術者が把持部である後端部25Bを把持して、樹脂層25Aに引っ張り力を加える。これにより、脆弱部25が接合部材20の他の部分から離間され、引きはがされる。このとき、接合部材20の脆弱部25に相当する部分に、長軸方向に沿って破断スリット26(
図4を参照)が形成され、接合部材20の内視鏡2に対する接合状態が解除される。この場合でも、結紮用デバイス1を内視鏡2から容易に取り外すことができる。
【0055】
なお、把持部である後端部25Bを設けなくてもよい。この場合、術者は凹部24上の樹脂層25Aを指でつまんで引きはがすことにより、破断スリット26が形成され、接合部材20の内視鏡2に対する接合状態が解除される。また、
図11A及び
図11Bに示すように、脆弱部25は、そのスリット28に樹脂層25A及び後端部25Bを備える構成であってもよい。
【0056】
また、結紮用リングは、上記の実施形態では、3つあったが、1つ以上であればよい。また、スライダ40を駆動させる流体は空気等の気体であったが、生理食塩水等の液体であってもよい。なお、結紮用リングとして、例えば、形状記憶合金から構成されたリング状の部材を用いることができる。このような、リング状の部材は、スライダの環状溝から離脱した際に、その形状が円形から非円形に変化するため、患部の形状に応じた結紮が可能になる。また、結紮用リングとして、形状記憶合金で形成されたクリップを用いることもできる。このようなクリップは、スライダの環状溝に収容されている際にはリング状であり、スライダの環状溝から離脱した際に、その形状が予め記憶されている形状に変形する。
【符号の説明】
【0057】
1:結紮用デバイス 2:内視鏡 10:内側筒体 20:接合部材 24、24a、24b、24c、24d、24e:凹部 25:脆弱部 25A:樹脂層 25B:後端部 28:スリット 29A~29B:接着剤 40:スライダ 60、61、62:結紮用リング 70:チューブ