(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】タービンの支柱カバー
(51)【国際特許分類】
F01D 25/30 20060101AFI20231207BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
F01D25/30 B
F02C7/00 B
(21)【出願番号】P 2022554262
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(86)【国際出願番号】 US2020023838
(87)【国際公開番号】W WO2021188114
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】フリタン,ホリア
(72)【発明者】
【氏名】タレミ,ファルザード
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,リ シン
(72)【発明者】
【氏名】グスタフソン,ロス
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0107843(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0143813(US,A1)
【文献】特開2004-190664(JP,A)
【文献】特開2018-100666(JP,A)
【文献】特開2013-57302(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017118583(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/30
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って排気ガスの流れを生成するように動作可能なタービンであって、
排気ガスの流れの中に配置されるフロー部を有する支柱と、
前記支柱の前記フロー部を囲むように配置されて、長さを有する支柱カバーと、を有し、
前記支柱カバーは、前縁部、中間翼弦部、及び後縁部を含み、前記中間翼弦部は均一な断面を有し、
前記後縁部の有する後縁中心は、前記中間翼弦部と前記後縁部とが主翼弦面に関して対照的となるように配置され、
前記前縁部は、前縁ノーズを画定し、前記前縁部は、前記主翼弦面に関してねじられ、
前記前縁ノーズは前記長さに沿って前記主翼弦面と一致しない曲線を定める、
タービン。
【請求項2】
さらに、内側フローライナと外側フローライナとを含む排気部を含み、前記内側フローライナと前記外側フローライナとは協働して環状のフロー空間を画定し、前記フロー部は前記環状のフロー空間内に配置される、
請求項1に記載のタービン。
【請求項3】
前記支柱カバーは、前記内側フローライナと前記外側フローライナとに対して結合され、前記内側フローライナと前記外側フローライナとの間で前記長さが延びる、
請求項2に記載のタービン。
【請求項4】
さらに、前記内側フローライナと前記支柱カバーとの間に形成された第1の壁フィレットと、前記外側フローライナと前記支柱カバーとの間に形成された第2の壁フィレットとを備える、
請求項3に記載のタービン。
【請求項5】
前記支柱は、複数の支柱のうちの1つであり、前記支柱カバーは、複数の支柱カバーのうちの1つであり、前記複数の支柱の各支柱と前記複数の支柱カバーの各支柱カバーは、互いに円周方向に離間して配置されている、
請求項1に記載のタービン。
【請求項6】
前記複数の支柱カバーのうちの1つの支柱カバーは、前記タービンの半径方向軸に対して斜めの角度で配置される、
請求項
5に記載のタービン。
【請求項7】
前記前縁ノーズは、前記主翼弦面に対してねじられ
、前記前縁ノーズは、前記長さに沿って1つだけの位置で前記主翼弦面と交差する、
請求項1に記載のタービン。
【請求項8】
前記前縁
ノーズは
、単一の位置で、前記主翼弦面と交差する、
請求項
7に記載のタービン。
【請求項9】
前記主翼弦面は、前記タービンの
前記中心軸を含む半径方向面である、
請求項
1に記載のタービン。
【請求項10】
前記前縁部、
前記中間翼弦部、及び
前記後縁部
は協働して、
前記内側フローライナと前記外側フローライナとの間の軸に対して垂直に複数の断面を画定し、前記断面のそれぞれはキャンバ線を画定し、前記中間翼弦部と前記後縁部とでは前記キャンバ線は互いに重なり合い、前記前縁部では前記キャンバ線は互いに重なり合わない、
請求項2に記載のタービン。
【請求項11】
前記複数の断面のそれぞれは、前縁中心と
前記後縁中心とを含み、前記前縁中心から前記後縁中心までで測定される
距離を定め、前記
距離は、前記複数の断面では均一ではない、
請求項
10に記載のタービン。
【請求項12】
前記複数の断面のそれぞれの前記後縁部は、協働して、テーパー付けられた後縁部を定める、
請求項
11に記載のタービン。
【請求項13】
前記距離は、前記内側フローライナの近くの方が前記外側フローライナの近くの方よりも大きい、
請求項
11に記載のタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
タービンエンジン(ガスタービン及び蒸気タービンを含む)には、タービンから作動流体を排出するための排気部が含まれている。ガスタービンの場合、作動流体は燃焼ガスの流れであり、蒸気タービンの場合、蒸気及び/又は水蒸気の流れが排出されている。しばしば、この排出の流れの中に支柱(ストラット)を配置させて、この流れの中に位置する軸受(ベアリング)等の構成要素を支持させている。この支柱は、流れと干渉して、増大した背圧を生じさせることにより、タービンの効率を低下させることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明に係る態様の一つは、中心軸に沿って排気ガスの流れを生成するように動作可能なタービンであって、排気ガスの流れの中に配置されるフロー部を有する支柱と、支柱のフロー部を囲むように配置されて、長さを有する支柱カバーと、を有するタービンに関する。支柱カバーは、前縁部、中間翼弦部、及び後縁部を含む。中間翼弦部は均一な断面を有し、後縁部の有する後縁中心は、中間翼弦部と後縁部とが主翼弦面を定めるように配置される。前縁部は、前縁ノーズを画定し、前縁部は、主翼弦面に関してねじられ、前縁ノーズは上記長さに沿って主翼弦面と一致しない曲線を定める。
【0003】
本発明に係る別の態様は、排気部と、支柱カバーとを含むタービンに関する。排気部は、内側フローライナと外側フローライナとを含み、内側フローライナと外側フローライナとは協働して環状のフロー空間を画定し、環状のフロー空間は流動方向の流れを受け入れるように配置される。支柱カバーは、環状のフロー空間内に配置されて、内側フローライナと外側フローライナとの間で流動方向に対して垂直方向に長さを有する。支柱カバーは、主翼弦面を画定する均一な中間翼弦部と、主翼弦面上に位置する後縁中心を有する後縁部と、主翼弦面に対してねじられる前縁ノーズを有する前縁部とを含み、前縁ノーズは、長さに沿って1つだけの位置で主翼弦面と交差する。
【0004】
本発明に係るさらに別の態様は、排気部と、支柱と、支柱カバーとを含むタービンに関する。排気部は、内側フローライナと外側フローライナとを含み、内側フローライナと外側フローライナとは協働して環状のフロー空間を画定する。支柱は、環状のフロー空間内に配置されるフロー部を有し、内側フローライナと外側フローライナとの間で軸に沿って延在する。支柱カバーは、環状のフロー空間内に配置されて、内側フローライナと外側フローライナとの間で延在し、支柱カバーは、フロー部を囲み、前縁部、中間翼弦部、及び後縁部を含み、それらによって軸に対して垂直に複数の断面を画定する。断面のそれぞれはキャンバ線を画定し、中間翼弦部と後縁部とではキャンバ線は互いに重なり合い、前縁部ではキャンバ線は互いに重なり合わない。
【0005】
特定の構成要素又は動作の説明について、容易に識別できるように、参照番号中にアラビア数字(算用数字)が用いられているが、それぞれ、はじめに導入された構成要素について図面の番号を指している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】長手方向軸又は中心軸を含む面に沿って取られた、ガスタービンエンジンの長手方向軸の断面図である。
【
図2】一実施形態に係る支柱アセンブリを例示する図である。
【
図3】
図1に例示したガスタービンエンジン用の、複数の支柱アセンブリの第1の配列を例示する図である。
【
図4】
図1に例示したガスタービンエンジン用の、複数の支柱アセンブリの第2の配列を例示する図である。
【
図5】流動方向から見た支柱カバーの軸方向の図である。
【
図6】
図5の線1-1、線2-2、線3-3、線4-4、及び線5-5に沿って取られた、
図5の支柱カバーの複数の断面をともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る実施形態について詳述するが、本発明は、本明細書に記載され、又は添付した図面に例示した構成の詳細や、構成要素の配置に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態も可能であって、様々な方法で実装又は実施することができる。また、本明細書で使用されている表現法や専門用語は、説明の目的上、用いられており、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0008】
添付した図面を参照して、システムと方法に関する種々の技術について説明するが、その際、同様の参照番号は、一貫して、同様の構成要素を表している。本特許明細書において、以下で説明される図面と、本開示内容の技術思想を記述するために用いられる様々な実施形態とは、単に説明のためのものであり、本開示内容を限定することを意図したものではない。当業者であれば、本開示内容の技術思想は、任意の適当に配置された装置で実施できることを理解するであろう。あるシステムの構成要素によって実行されるものとして記載された機能は、複数の構成要素によって実行されてもよいことを理解されたい。同様に、例えば、複数の構成要素によって実行されるものとして記載された機能を、一つの構成要素によって実行するように構成することは可能である。本出願では、非限定的な実施形態を参照しながら、複数の革新的な教示内容について説明している。
【0009】
また、本明細書で使用される単語又は用語は、何らかの例において明示的に限定されていない限り、広義に解釈されるべきである。例えば、「・・・を含む(including)」、「・・・を有する(having)」、「・・・を構成する(comprising)」等の語彙、及びそれらの派生語は、包括的に意味し、限定的に意味していないことを理解されたい。さらに、単一の形態(英語の冠詞の「a」、「an」及び「the」等)は、複数の形態を含み得る。ただし、その文章の内容から、明示的にそうでないことが示されている場合を除く。さらに、本明細書で使用される用語「及び/又は(and/or)」は、列記された関連する項目のうちの1つ以上の任意の可能な組み合わせを示し、包含している。用語「又は」は、包含的で、「及び/又は」を意味する。ただし、その文章の内容から、明示的にそうでないことが示されている場合を除く。さらに、「・・・と関連する(associated with)」及び「・・・と関連する(associated therewith)」等の語彙、及びそれらの派生語は、含む(include)、含まれる(be included within)、つなげる(interconnect with)、収容する(contain)、収容された(be contained within)、接続する(connect to or with)、結合する(couple to or with)、連通する(be communicable with)、協働する(cooperate with)、とじ込む(interleave)、並置する(juxtapose)、近接する(be proximate to)、接続される(be bound to or with)、傾向がある(have a property of)等を含むように意味し得る。さらに、本明細書には複数の実施形態又は構造が記載されているが、ある実施形態について記載された任意の特徴、方法、ステップ、構成要素等は、同様に、他の実施形態に対しても適用可能である。ただし、その文章の内容から、明示的にそうでないことが示されている場合を除く。
【0010】
また、本明細書では、様々な構成要素、情報、機能、又は動作を指すために、用語「第1」、「第2」、「第3」等が使用されることがあるが、これらの構成要素、情報、機能、又は動作は、これらの用語によって限定されるべきではない。むしろ、これらの数詞は、構成要素、情報、機能又は動作について、互いに区別するために使用されている。例えば、第1の構成要素、情報、機能、又は動作は、第2の構成要素、情報、機能、又は動作として参照することができ、同様に、第2の構成要素、情報、機能、又は動作は、第1の構成要素、情報、機能、又は動作として参照することができるが、本開示内容の範囲から逸脱しないものとする。
【0011】
加えて、「隣接する(adjacent to)」という用語は、ある構成要素が比較的に近くにあるが、さらなる構成要素とは当接していないことを意味し得る。または、ある構成要素がさらなる部位と当接していることを意味し得る。ただし、その文章の内容から、明示的にそうでないことが示されている場合を除く。さらに、「基づく(based on)」という用語は、「少なくとも部分的に基づく」ことを意図している。ただし、その文章の内容から、明示的にそうでないことが示されている場合を除く。「約(about)」、「実質的に(substantially)」、又は類似の用語は、ある値の変動をカバーすることを意図しているが、その変動は、その寸法について通常の産業界の製造公差内にあるものとする。そのような業界標準が利用できない場合には、その用語の意味として、20%の変動が用いられ得る。ただし、その文章の内容から、明示的にそうでないことが示されている場合を除く。
【0012】
図1には、コンプレッサ(圧縮)部102と、燃焼部106と、タービン部110とを、中心軸114に沿って配置させたガスタービンエンジン100が例示されている。コンプレッサ部102には複数のコンプレッサ段116が含まれており、各コンプレッサ段116には一組の回転ブレード118と一組の静止ベーン120又は調整可能なガイドベーンが含まれている。ロータ122は、ブレード118を支持し、作動中、中心軸114を中心として回転する。幾つかの構造では、単一部品であるロータ122は、ガスタービンエンジン100の長さで延び、両端でベアリング(軸受)によって回転用に支持される。他の構成では、ロータ122は、幾つかの別々のスプールから組み立てられ、それらスプールは互いに取り付けられるか、又は複数のディスク部分を一つ又は複数のボルトによって取り付けている。
【0013】
ガスタービンエンジン100がコンプレッサ部102内に大気を吸い込むことができるようにするため、コンプレッサ部102はインレット(入口)部124と連通(流通)する。ガスタービンエンジン100の作動中、コンプレッサ部102は大気を吸引すると、その空気を圧縮して、燃焼部106に送る。なお、図示したコンプレッサ部102は、コンプレッサ部102の一例に過ぎず、他の配置や構成は可能である。
【0014】
図示した構造では、燃焼部106は、複数の別々の燃焼器126を含み、各燃焼器はそれぞれ作動して、コンプレッサ部102から送られる圧縮空気に対して燃料の流れを混合させて、その空気と燃料の混合物を燃焼させて、高温、高圧の燃焼ガス又は排気ガス128の流れを生成させる。なお、燃焼部106は、多くの異なる配置の仕方が可能である。
【0015】
タービン部110には、複数のタービン段130が含まれ、各タービン段130には、複数の回転タービンブレード(動翼)104と複数の静止タービンベーン(静翼)108とが含まれる。タービン段130は、タービンインレット(入口)132にて燃焼部106から送られる排気ガス128を受け取ると、そのガスを膨張させて、熱及び圧力エネルギーを回転又は機械的仕事に変換するように構成されている。タービン部110は、コンプレッサ部102を駆動させるように、コンプレッサ部102と接続されている。発電機又は原動機として用いられるガスタービンエンジン100では、タービン部110は、発電機、ポンプ又は他の被駆動装置とも接続される。コンプレッサ部102と同様、タービン部110についても、他の配置や構成は可能である。
【0016】
排気部112は、タービン部110内のタービン最終段130から出る排気ガス128の膨張した流れを受け入れるように、タービン部110の下流側に配置されている。排気部112は、タービン部110の効率的な動作を確保させるため、タービン部110から離れるように排気ガス128を効果的に案内するように配置されている。また、排気部112は、1つ又は複数の支柱アセンブリ(ストラット・アセンブリ)200を含むが、それについては、
図2を参照して後述する。排気部112についても、他の配置や構成は可能である。このように、図示の排気部112は、一例に過ぎず、他の配置や構成は可能である。
【0017】
ガスタービンエンジン100には制御システム134がつなげられている。制御システム134は、ガスタービンエンジン100の種々の動作パラメータを監視して、種々の動作を制御するように動作する。好適な構成では、制御システム134は、典型的にはマイクロプロセッサに基づき、メモリ・デバイスとデータ・ストレージ・デバイスとを含み、データの収集、分析、及び保存を行うことができる。さらに、制御システム134は、モニタ、プリンタ、インジケータ等を含む種々の装置に出力データを提供することができ、それによってユーザが制御システム134と交信(インターフェース)して、入力又は調整を行うことを可能にしている。発電システムについて例を挙げると、ユーザは、電力出力設定値を入力することができ、また制御システム134は、種々の制御入力を調整して、効果的な仕方で電力出力を達成することを可能にしている。
【0018】
制御システム134は、様々な動作パラメータを制御することができるが、それらについて非限定的な例を挙げると、可変入口ガイドベーン位置、燃料流量及び圧力、エンジン速度、弁位置、発電機負荷、及び発電機励起等を制御することができる。なお、他の態様では、より少ない制御可能装置を含むことができ、又はより多い制御可能装置を含むことができる。また、制御システム134は、様々なパラメータを監視して、ガスタービンエンジン100が適切に作動することを確保している。監視対象の幾つかのパラメータとして、入口空気温度、コンプレッサ出口温度及び圧力、燃焼器出口温度、燃料流量、発電機出力、ベアリング温度等がある。これら測定値の多くは、ユーザのために表示させたり、ログに記録することができ、そのため、後にレビューが必要とされる場合には、そのレビューを可能にしている。
【0019】
図2は、支柱アセンブリ200の拡大断面図である。多くのガスタービンエンジン100では、
図2に例示したものと類似の又は同様の支柱アセンブリ200が幾つか含まれていることを理解されたい。典型的には、複数の支柱アセンブリ200は、共通の軸方向位置に配置されていて、ガスタービンエンジン100の中心軸114の周囲に均等に配置されている(例えば、4つの支柱アセンブリ200が、それぞれ90度離れて配置されることがある)。なお、他の配置及び間隔も可能であって、例えば、不均等な間隔での配置、軸方向の間隔を変化させた配置、さらに異なる支柱アセンブリ200の変化させた配置も可能である。
【0020】
各支柱アセンブリ200は、支柱(ストラット)210と、支柱210を覆うように配置される支柱カバー(ストラット・カバー)500とを含む。例示した構造では、支柱210は、外側ケース(ケーシング)202に対して固定して取り付けられる第1の端部と、ベアリング(図示略)用の軸受ケース206に対して固定して取り付けられる第2の端部とを含む。支柱210のフロー部(流れ部分)216は、内側フローライナ208と外側フローライナ204との間に延在し、そこでは潜在的に排気ガス128に曝され得る。なお、各端部は、ガスタービンエンジン100を構成する上で必要とされる異なる構成要素に対して取り付けることができる。支柱210は、上記のように取り付けられることで、外側ケース202と軸受ケース206とを堅固に取り付ける役割を果たし、それによって軸受ケース206と、ベアリングによって支持されるロータ122とに対して必要な支持を提供している。支柱210は、外側フローライナ204と内側フローライナ208とを貫通し、外側フローライナ204と内側フローライナ208との一方又は双方に対して取り付けられることができるが、そのように取り付けられなくてもよい。外側フローライナ204と内側フローライナ208とは、協働して環状の流動空間(流れ域)218を画定し、そこを通って排気ガスが流動方向222に流れるようにしている。
【0021】
1つ又は複数の支柱210は、多くの構造では、中空状であって、ガスタービンエンジン100の内部と外部との間に通路(流路)を提供している。その通路は、しばしば、機器の配線、空気のライン、潤滑油のライン等を可能にするために用いられている。例示した構造では、複数の支柱210のうちの1つは、潤滑油のラインを含むことができ、それによってベアリングとの間で行き来するように潤滑流体を導いている。また、ベアリング内の振動センサでは、しばしば、センサからの信号をガスタービンエンジン100の外部に送り、さらに制御システム134へと送信するための配線を必要としている。
【0022】
幾つかの構成では、複数の支柱アセンブリ200の隣接する対のうちの幾つか又は全てで、交差支柱(クロス・ストラット)アセンブリが設けられている。交差支柱アセンブリは、必要に応じて、追加の支持と安定性とを提供している。各交差支柱アセンブリは、交差支柱(しばしばガセット/補強部品とも呼ばれる)を含み、交差支柱が排気流内に存在する場合には、交差支柱カバーを含むこともある。交差支柱は、所望の構造的支持を提供するが、所望の任意の形状、断面、又は構成を有することができる。例えば、交差支柱として、箱形梁(ボックスビーム)、I形梁(Iビーム)、又は中実梁(ソリッドビーム)を用いることができる。
【0023】
交差支柱カバーは、完全に又は少なくとも部分的に交差支柱を囲み、空気力学的に形成されていて、それによって、タービンから出る排気ガスの流れの中に交差支柱がある場合に、交差支柱が起因となって生じ得る背圧の増加を低減させている。交差支柱カバーは、必ずしも構造的支持を提供しなくてもよく、そのような場合、薄いシート材料から形成されることがある。しかしながら、幾つかの構成では、交差支柱カバーは、構造的支持を提供できるように、より剛性の高い材料又はより厚い材料から形成されていてもよい。なお、多くのガスタービンエンジン100の構造では、交差支柱アセンブリを含まないことや、必要とされないことがあることに留意されたい。
【0024】
好適な構造では、各支柱210は、外側ケース202と軸受ケース206とに対して溶接される。しかしながら、幾つかの構造では、締結具(ファスナ)等の他の取付け手段が用いられることがある。同様に、好ましくは、交差支柱を間から延出させる複数の支柱210に対して、各交差支柱が溶接される。
【0025】
引き続き
図2を参照すると、支柱カバー500は、外側フローライナ204から内側フローライナ208まで延在して、支柱210を覆っている。
図2に例示したように、各支柱カバー500は、外側フローライナ204と内側フローライナ208と協働して、2つの壁のフィレット(隅肉)220を画定している。なお、他の構造では、壁のフィレット220の一方又は双方を省くことができる。
【0026】
各支柱カバー500は、空気力学的に形成されて、複数の支柱210のうちの1つを覆い、その結果、支柱210の形状は、空気力学的については考慮することなく、強度と剛性とに基づいて選択され得る。従って、各支柱210は、ボックスビーム、Iビーム、ソリッドビーム、チャネルビーム、又は所望の任意の他の形状又は形状の組合せから形成されることができる。
【0027】
支柱カバー500の空気力学的形状には、湾曲又は楕円状の前縁部504と、より狭い湾曲又は楕円状の後縁部620とが含まれる。これら前縁部504と後縁部620との間に延在するテーパー面(テーパー付けられた面)によって中間翼弦部622(
図6に例示)が画定され、それによって形状を完成させている。
【0028】
例示した構造では、前縁部504は、支柱カバー500の長さに沿って延在し、一様の軸方向位置を保つ。即ち、前縁部504は、中心軸114に対して実質的に垂直である。例示した構造では、後縁部620は、中心軸114に対して垂直に配置されている。なお、幾つかの構造では、前縁部504と後縁部620との一方又は双方が、テーパー又は傾斜を有することは可能であって、それによって、前縁部504及び/又は後縁部620が中心軸114に対して斜めの角度を定めてもよい。例えば、
図6及び
図7に例示した支柱カバー500は、テーパー付けられた又は傾斜した後縁部620を含んでいる。
【0029】
図3では、複数の支柱アセンブリ300の第1の配列が例示されているが、その際、3つの別々の支柱アセンブリ200が、互いに(円周方向に)約120度離れて(即ち、典型的な製造公差の範囲内で)配置されている。
図3に図示したように、各支柱アセンブリ200は、ガスタービンエンジン100の半径方向軸(放射軸)に対して傾いた軸に沿って延在している。具体的には、各支柱アセンブリ200は、軸受ケース206と接している(正接している)線又は軸に沿って、内側フローライナ208から外側フローライナ204まで延在している。より具体的には、各支柱アセンブリ200の主翼弦面(マスターコード面)302が、軸受ケース206と接するように配置されている。
【0030】
図3には、3つの等間隔に配置された、非半径方向の支柱アセンブリ200が例示されているが、他の構成では、複数の支柱アセンブリ200の間の間隔を変えてもよく、追加の支柱アセンブリ200を含んでもよく、1つ又は複数の半径方向に配置された支柱アセンブリ200を含んでいてもよい。
【0031】
図4では、複数の支柱アセンブリ400の第2の配列が例示されているが、その際、6つの支柱アセンブリ200が軸受ケース206の周囲に配置されている。この構成では、上方(上死点)の支柱アセンブリ200と下方(下死点)の支柱アセンブリ200とは、主翼弦面302に沿って配置されているが、それら主翼弦面302は、中心軸114と交差する半径方向面(放射面)と一致する。さらなる2つの支柱アセンブリ200は、ガスタービンエンジン100の上部にある半径方向面と一致する主翼弦面302に沿って配置されている。さらなる2つの支柱アセンブリ200は、ガスタービンエンジン100の下部にある非半径方向の主翼弦面302に沿って配置されている。
【0032】
図3の構成と同様に、他の構成でも、複数の支柱アセンブリ200の間で、異なる間隔又は等しい間隔を含むことができ、また、さらなる支柱アセンブリ200又はより少ない支柱アセンブリ200を含むことができ、また、半径方向に整列したより多い主翼弦面302又はより少ない主翼弦面302を含むことができる。
【0033】
ガスタービンエンジン100内で用いられる支柱アセンブリ200の配置、位置、又は個数は、支柱カバー500の配置に関しては重大ではない。支柱カバー500の配置については、
図5乃至
図7を参照して説明されるが、その配置は、上記要因によって影響を受けない。
【0034】
図5は、排気ガス128の流動方向222から見た複数の支柱カバー500のうちの1つの軸方向の図である。主翼弦面302(スケルトン面又はセンター面とも呼ばれる)は、支柱カバー500の全長にわたって延在するとともに、支柱カバー500を実質的に二分する面として例示されている。支柱カバー500の流動方向と平行に取られた様々な断面において、前縁部504の最も遠い上流の点(即ち、前縁中心604)の位置として、前縁ノーズ502が定められている。
図5に例示したように、前縁ノーズ502は曲線を画定するが、それは、主翼弦面302上には存在せず、または一致せず、むしろオフセットされており、この構成では、ただ1つの位置で主翼弦面302と交差している。
【0035】
なお、幾つかの構造では、主翼弦面302とは決して交差しない曲線を定めるように、前縁ノーズ502を含むことができる。ただし、好適な構成では、それらは(前縁ノーズ502と主翼弦面302)一か所で交差する。幾つかの構成では、複数の交差が起こり得るが、その際、前縁ノーズ502は、放物線、双曲線、又は高次曲線に似ることがある。
【0036】
図6では、支柱カバー500の可能な配置において、その空気力学的形状についてより良好に例示している。具体的には、
図6では、支柱カバー500の長さにわたって、支柱カバー500の形状の変化を良好に示すため、内側フローライナ208からそれぞれ異なる距離で取られた5つの断面がともに例示されている。
【0037】
図6では、様々な断面を実質的に二分する主翼弦面302が例示されている(即ち、必ずしも二分されない前縁部504を除く)。主翼弦面302は、一般的な流動方向と平行であって、様々な断面について基準を提供する。
【0038】
主翼弦面302上に前縁中心604と後縁中心614とを有する各断面について、主翼弦面302は、キャンバ線を画定する。キャンバ線は、完全な支柱カバー500を定める第1の湾曲縁616と第2の湾曲縁618との間の中間の点の軌跡として定められる。ねじれていない(曲げられていない)前縁中心604を有する対称的な支柱カバー500の場合、キャンバ線は主翼弦面302の上に位置する。他の断面では、キャンバ線は、概して、後縁中心614から、前縁部504の近くの点まででは主翼弦面302と一致するが、各断面では、キャンバ線は、前縁部504のねじれに適合するように僅かにそれている。
【0039】
第1の断面602は、支柱カバー500と内側フローライナ208との交点に近い点で、
図5の線1-1に沿って取られている。第1の断面602は、主翼弦面302と交差する後縁中心614と、主翼弦面302からオフセットされている前縁ノーズ502とを定めている。第1の断面602の後縁中心614と前縁中心604との間の距離によって、支柱カバー500の第1の長さ624が画定されている。
【0040】
支柱カバー500の第2の断面606は、支柱カバー500と外側フローライナ204との交点に近い点で、
図5の線2-2に沿って取られている。第2の断面606は、主翼弦面302上にある後縁中心614と、主翼弦面302からオフセットされている前縁中心604とを画定する。第2の断面606の後縁中心614と前縁中心604との間の距離によって、支柱カバー500の第2の長さが定さめられいる。支柱カバー500が、テーパー付けられた又は傾斜した後縁部620を含むため、第2の長さ626は、第1の長さ624よりも短い。
【0041】
支柱カバー500の第3の断面608は、支柱カバー500のほぼ中間点にて、
図5の線3-3に沿って取られている。第3の断面608は、主翼弦面302上にある後縁中心614と、主翼弦面302からオフセットされている前縁中心604とを定める。第3の断面608の後縁中心614と前縁中心604との間の距離によって、支柱カバー500の第3の長さが定められている。第3の長さは、第1の長さ624と第2の長さ626の間である。
【0042】
支柱カバー500の第4の断面610は、支柱カバー500の第1の断面602と第3の断面608との間の点で、
図5の線4-4に沿って取られている。第4の断面610は、主翼弦面302上にある後縁中心614と、主翼弦面302からオフセットされている前縁中心604とを定めている。第4の断面610の後縁中心614と前縁中心604との間の距離によって、支柱カバー500の第4の長さが定められている。第4の長さは、第1の長さ624と第3の長さの間である。
【0043】
支柱カバー500の第5の断面612は、支柱カバー500の第2の断面606と第3の断面608の間の点で、
図5の線5-5に沿って取られている。第5の断面612は、主翼弦面302上にある後縁中心614と、主翼弦面302からオフセットされている前縁中心604とを定めている。第5の断面612の後縁中心614と前縁中心604との間の距離によって、支柱カバー500の第5の長さが定められている。第5の長さは、第2の長さ626と第3の長さの間である。
【0044】
図5、
図6、及び
図7に例示した各構造では、前縁ノーズ502は、第4の断面610の近傍で第1の断面602と第4の断面610との間のある点で、主翼弦面302と交差する。なお、他の構造では、異なる配置を含むことができ、その際、前縁ノーズ502は、異なる点で主翼弦面302を横切ることになる。さらに、異なるねじれが考えられるが、例えば、より大きなねじれ、より小さなねじれ、及び異なる方向のねじれが含まれ、その際、前縁ノーズ502が主翼弦面302と交差しない構成が含まれる。
【0045】
すべての断面にて、支柱カバー500の長さ方向と整合する第1の湾曲縁616と第2の湾曲縁618とに対して前縁部504が交じり合うように、各断面の前縁部504は、前縁中心604の位置にかかわらず、配置されている。即ち、
図6に例示したように、長さ方向で見ると、すべての断面にて、第1の湾曲縁616は互いに重なり合って、一致するように現れる。同様に、すべての断面にて、第2の湾曲縁618は、互いに重なり合って、一致するように現れる。
【0046】
引き続き
図6を参照すると、第1の湾曲縁616は、それぞれ、対応する後縁部620と交じり合うため、第1の湾曲縁616が対応する後縁部620に近づくにつれ、それぞれ互いに離れるようになる。同様に、第2の湾曲縁618は、それぞれ、対応する後縁部620と交じり合うため、第2の湾曲縁618が後縁部620に近づくにつれ、それぞれ互いに離れるようになる。
【0047】
後縁部620が傾斜又は勾配を有さない構成では、様々な断面の各後縁部620は、互いに重なり合うため、
図6に例示したように長さ方向で見ると、それぞれ一致するように現れ得る。
【0048】
図7は、支柱カバー500の前縁部504の拡大図であって、様々な断面での前縁部504のオフセットについてより良好に例示した図である。同図から理解できるように、第1の断面602は、第1の前縁中心702を画定するが、それは、主翼弦面302の上方にあるように例示されている。これは、流動方向(即ち、
図5参照)から見たとき、主翼弦面302の左側へのねじれ又は反時計回りへのねじれに対応し得る。第4の断面610は、第4の前縁中心704を画定するが、それは、主翼弦面302をわずかに下回るように例示されている。従って、前縁ノーズ502は、第1の断面602と第4の断面610との間の点で、主翼弦面302と交差する。残りの断面は主翼弦面302の下方でさらにオフセットされるが、第2の断面606と第5の断面612とは互いに非常に接近している。これらの断面のねじれは、流動方向(即ち、
図5参照)から見たとき、右側へのねじれ又は時計回りへのねじれに対応する。なお、異なるねじれの形状、方向、大きさ、及び交差点が可能であり、本明細書で例示した内容に本発明は限定されない。従って、
図6及び
図7に例示した支柱カバー500は、空気力学的形状を有し、主翼弦面302に対する前縁部分212のねじれが含まれているが、主翼弦面302に対して対称的である中間翼弦部622と後縁部214も含まれている。
【0049】
使用時には、外側ケース202と軸受ケース206又は他の内部部品に対して複数の支柱210が取り付けられて、所望の位置で軸受ケース206(又は任意の他の内部部品)を支持させる。支柱210の大きさ、形状、及び量は、軸受ケース206又は他の内部部品に対して所望の支持と剛性とを提供するように選択される。例示した構造では、軸受ケース206は、少なくとも部分的にロータ122を支持しており、その支持に必要な強度を備えるとともに、望ましくない振動を最小限に抑えるための十分な剛性を備える必要がある。
【0050】
支柱カバー500は、内側フローライナ208と外側フローライナ204との間で延在し、支柱210を覆うが、それにより、内部部品を排気ガス128と直接的に触れ合うことから保護し、さらに空気力学的形状を提供することにより、支柱210に起因して生じ得る流れの中断によって引き起こされ得る損失を低減させている。支柱カバー500は、前縁ノーズ502を画定する前縁部504を含むが、好ましくは、前縁ノーズ502への接線が流動方向に対して垂直となるように前縁ノーズ502を配置する。
【0051】
なお、動作中、タービン部110から出る流れは、何らかの旋回又はスピンを有し得る。同様に、支柱カバー500は、全ての位置にて流れに対して垂直に前縁ノーズ502を整列させるように、ねじれている。支柱カバー500の長さのある位置で、タービン部110から出る流れが、中心軸114と平行に流れるが、この位置では、前縁ノーズ502は、各支柱カバー500を分割する主翼弦面302と並ぶ。この位置と内側フローライナ208との間で、前縁ノーズ502は、第1の方向にねじれていてもよく、かつこの位置と外側フローライナ204との間で、前縁ノーズ502は、反対方向にねじれていてもよい。
【0052】
以上、本開示内容の例示的な実施形態について、詳細に説明したが、当業者は、本開示内容の最も広範な形態で、その技術思想及び範囲から逸脱することなく、本明細書の開示内容に対して様々な変更、置換、変形、及び改良を行い得ることを理解するであろう。
【0053】
なお、本出願の説明では、特定の構成要素、ステップ、行為又は機能について、特許請求の範囲に含まれる必要のある必須の構成要素であることを意味するものと読み替えるべきではない。特許対象の発明主題の範囲は、許容される特許請求の範囲によってのみ定められている。なお、請求項(英語の記載)において、厳密に「ミーンズ・フォー(means for)」に分詞が続く場合を除き、ミーンズ・プラス・ファンクション・クレームの適用を意図したものではないものとする。
【符号の説明】
【0054】
200 支柱アセンブリ(strut assembly)
204 外側フローライナ(outer flow liner)
208 内側フローライナ(inner flow liner)
210 支柱(strut)
216 フロー部(flow portion)
302 主翼弦面(master chord plane)
500 支柱カバー(strut cover)
504 前縁部(leading-edge portion)
620 後縁部(trailing-edge portion)
622 中間翼弦部(mid-chord portion)