(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/00 20060101AFI20231207BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20231207BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20231207BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20231207BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
F25D23/00 301Z
F25D23/00 301G
H01Q13/08
H01Q3/26 Z
H01Q1/22 Z
G06K7/10 264
G06K7/10 132
G06K7/10 240
(21)【出願番号】P 2023004922
(22)【出願日】2023-01-17
(62)【分割の表示】P 2019175359の分割
【原出願日】2019-09-26
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 久功
(72)【発明者】
【氏名】上甲 康之
(72)【発明者】
【氏名】林 正二
(72)【発明者】
【氏名】庄司 敬一
(72)【発明者】
【氏名】丸山 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 功一
(72)【発明者】
【氏名】金子 智則
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-319043(JP,A)
【文献】特開2003-185326(JP,A)
【文献】特開2009-250480(JP,A)
【文献】特開2003-029851(JP,A)
【文献】特開2005-300004(JP,A)
【文献】特開2017-015298(JP,A)
【文献】特開2006-317109(JP,A)
【文献】特開平10-316210(JP,A)
【文献】特開2018-173272(JP,A)
【文献】特開2006-090608(JP,A)
【文献】国際公開第2006/035714(WO,A1)
【文献】韓国公開実用新案第20-2016-0003764(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
G06K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室と、食品を検知する食品センサと、前記食品センサで検知した前記食品の情報を庫外に送信する通信モジュールと、を備えた冷蔵庫において、
前記食品センサは、庫外にある食品を検知
し、前記通信モジュールが庫外に送信する前記情報には、前記食品が庫外か庫内かを特定する情報が含まれ、
前記庫外か庫内かを特定する情報には、前記食品が庫外の場合は前記食品が置かれた位置に関する情報が含まれることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記食品センサは、前記食品に付されたRFIDタグと無線通信するアレイアンテナであり、庫外の食品を検知するときと庫内の食品を検知するときとで、前記アレイアンテナの指向性を切り替えることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記食品センサは、庫内用食品センサと、庫外用食品センサと、を有することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
請求項3に記載の冷蔵庫において、
前記庫外用食品センサは、前記食品に付されたRFIDタグと無線通信するアレイアンテナであることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項5】
請求項4に記載の冷蔵庫において、
前記アレイアンテナは、マイクロストリップアンテナを素子としたものであって、前記貯蔵室の扉に設けられていることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項6】
請求項3に記載の冷蔵庫において、
前記庫内用食品センサは、前記貯蔵室内を撮影するカメラであることを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
貯蔵室内の食品を管理する冷蔵庫が提案されている。このような冷蔵庫では、カメラで撮影した貯蔵室内の収納状況を、ネットワークを介してスマートフォン等の端末で確認できるようになっている。また、この貯蔵室内の収納状況を管理するために用いられるカメラ以外の手段としては、食品に貼付されたRFIDタグを読み取るRFIDリーダが知られている。例えば、特許文献1には、「無線タグが貼付された物品を収納する収納庫であって、収納庫本体内に電波を放射し、前記無線タグと無線通信するアンテナと、該アンテナから前記無線タグに記憶されている無線タグ情報を読み取る無線タグリーダと、前記収納庫本体内の電波状態を変更することで、前記収納庫本体内部全体を、前記無線タグの読み取り可能領域としてカバーする電波状態変更手段と、前記収納庫本体内の前記無線タグから読み取った無線タグ情報を処理する制御手段とを備えた」と記載されている(同文献の請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等に記載された従来の冷蔵庫は、いずれも冷蔵庫の内部に貯蔵された食品を検知し、庫内の食品を管理するためのものである。しかし、実際には、冷蔵庫以外の場所にも食品は置かれており、このような食品を重複して購入してしまう可能性がある。また、上記した従来の冷蔵庫では、冷蔵庫以外の場所に置かれた食品のストックがなくなったかどうかまでは管理できない。
【0005】
本発明の目的は、庫外に置かれた食品の管理ができる冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、貯蔵室と、食品を検知する食品センサと、前記食品センサで検知した前記食品の情報を庫外に送信する通信モジュールと、を備えた冷蔵庫において、前記食品センサは、庫外にある食品を検知し、前記通信モジュールが庫外に送信する前記情報には、前記食品が庫外か庫内かを特定する情報が含まれ、前記庫外か庫内かを特定する情報には、前記食品が庫外の場合は前記食品が置かれた位置に関する情報が含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、庫外に置かれた食品の管理ができる冷蔵庫を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例1に係る冷蔵庫の斜視図である。
【
図2】実施例1に係る冷蔵庫の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図3】実施例1に係る冷蔵庫におけるアンテナ及びRFIDリーダの構成を示すブロック図である。
【
図4】実施例1に係る食品管理システムの全体構成を示す図である。
【
図5】実施例1に係る冷蔵庫で食品を読み取る動作を示すフローチャートである。
【
図6】携帯端末においてアプリケーションソフトを起動したときの画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、冷蔵庫の基本構成について説明する。
【0011】
<冷蔵庫の基本構成>
図1は、本発明の実施例1の冷蔵庫1の斜視図である。
図1に示すように、本実施例の冷蔵庫1は、断熱箱体と、この断熱箱体で区画された複数の貯蔵室と、各貯蔵室の前面側を開閉する貯蔵室扉と、を備えている。
【0012】
断熱箱体は、金属製の外箱と、樹脂製の内箱と、これら外箱と内箱との間には、真空断熱材とともに発泡断熱材を充填して形成される。また、各貯蔵室は、上方から冷蔵室、左右に並設された製氷室及び上段冷凍室、下段冷凍室、野菜室となっている。なお、上段冷凍室、下段冷凍室及び野菜室は、必要に応じて冷凍温度帯から冷蔵温度帯まで切り替えられる切替室であっても良い。また、各貯蔵室の開口部にある扉のうち、冷蔵室扉2は、左右に分割された回転式の扉であり、他の貯蔵室の扉はいずれも引き出し式となっている。
【0013】
各貯蔵室の扉は、表面に設けられたガラス製の外板と、外板の周縁に設けられた扉枠と、外板の裏面に配置された真空断熱材と、外板と扉枠とで形成された空間に重点された発泡断熱材と、扉枠の裏面に設けられた内板と、を備えて構成される。特に、冷蔵室扉2には、庫内の温度設定の操作等を行う操作パネル12が設けられている。
【0014】
また、図示していないが冷蔵庫1の背面には、冷気を生成する冷却器と、冷気を各貯蔵室へ供給する送風ファン18と、各貯蔵室への風量を調整するダンパ19と、を有している。さらに、上記冷却器の他に、冷媒を圧縮する圧縮機17と、外気に放熱する放熱器と、冷媒の減圧手段であるキャピラリチューブと、によって冷凍サイクルを構成して、冷媒を循環することで各貯蔵室を冷却する。
【0015】
断熱箱体の天面の後方側には、凹部7が形成されており、この凹部7に、制御基板8と通信モジュール9が収納されている。通信モジュール9は、冷蔵庫1が庫外と通信を行うためのものであり、無線LANやBluetooth(登録商標)等の無線通信方式により、ルータ24との間で通信を行う。なお、通信モジュール9と制御基板8とは、信号線によって接続されているが、同じ凹部7内に配置されているので、信号線が短くて済む。
【0016】
さらに、本実施例の冷蔵庫1は、冷蔵室の天面に庫内用アンテナ(第1アンテナ)10を有し、冷蔵室扉2に庫外用アンテナ(第2アンテナ)11を有している。これらのアンテナは、食品に貼付されたRFIDタグと無線通信するものであり、これらのセンサで検出した信号に基づいて、RFIDタグに格納された各種情報をRFIDリーダ14が読み取る。なお、本実施例においては、RFIDタグとの無線通信で使用する電波の周波数帯として、920MHz帯(いわゆるUHF帯)を利用する。
【0017】
図2は、本実施例の冷蔵庫1の電気的な構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御基板8には、冷蔵庫1全体の制御を行う主制御部(マイクロコントローラ)13と、RFIDタグの読み取りを行うRFIDリーダ14と、が設けられている。
【0018】
主制御部13は、扉センサ15、温度センサ16、圧縮機17、送風ファン18、ダンパ19及び操作パネル12等からの入力信号を受信する。そして、主制御部13は、温度センサ16からの入力信号を受信すると、この温度センサ16によって検知された貯蔵室の温度に基づいて、圧縮機17の回転数等を決定し、圧縮機17に出力信号を送信する。
また、主制御部13は、温度センサ16によって検知された貯蔵室の温度に基づいて、送風ファン18をON/OFFしたり、風路の途中に設けたダンパ19の開度を調整したりする信号を、これらに出力する。さらに、この主制御部13は、扉センサ15から扉が開いていることを示す入力信号を受信すると、その旨を知らせる表示をするよう出力信号を、操作パネル12に送信する。また、主制御部13は、操作パネル12により貯蔵室内の温度を変更するような操作があり、操作パネル12からの入力信号を受信すると、圧縮機17、送風ファン18又はダンパ19等に出力信号を送信する。また、主制御部13は、通信モジュール9と接続されているため、貯蔵室内の温度等の情報もルータ24等を介して庫外から受信することが可能となっている。
【0019】
図3は、RFIDタグと無線通信するアンテナと、このアンテナで検出した信号によりRFIDタグの情報を読み取るRFIDリーダ14と、の構成を示すブロック図である。
【0020】
<アンテナ>
まず、アンテナについて説明する。庫内用アンテナ10及び庫外用アンテナ11は、指向性の制御が可能なアレイアンテナで構成されている。このアレイアンテナは、複数のアンテナ素子を有し、各アンテナ素子への信号入出力の振幅比及び位相差を調整することで、電波を放射する向きを制御することができる。
【0021】
図3に示す通り、本実施例の庫内用アンテナ10及び庫外用アンテナ11は、主アンテナエレメント10-0,11-0と、N個の副アンテナエレメント10-1~10-N,11-1~11-Nと、可変減衰器20と、可変位相器21と、1対N+1のポートをもつ電力合成・分配器22と、で構成されている。主アンテナエレメントに繋がる給電点は、可変減衰器20及び可変位相器21を介して、電力合成・分配器22に分配されたポートのひとつと接続される。副アンテナエレメントのそれぞれに繋がる給電点は、電力合成・分配器22に分配されたN個のポートと接続される。
【0022】
可変減衰器20は、主アンテナエレメントの給電点電圧E1を個別に制御し、可変位相器21は、主アンテナエレメントの位相を個別に制御する。このため、可変減衰器20及び可変位相器21を制御することで、主アンテナエレメントの給電点電圧E1と、副アンテナエレメントの給電点電圧E2との振幅比(E1/E2)及び位相差(φ)が調整できる。この振幅比(E1/E2)及び位相差(φ)は放射特性に大きく影響するため、これらを適切に調整することで、指向性の強さを必要に応じて変更することが可能となっている。
【0023】
庫内用アンテナ10は、冷蔵室の天面に配置され、庫内に電波を放射する。なお、上述の制御基板8及び通信モジュール9は、真空断熱材より上方に設けられるが、この庫内用アンテナ10は、真空断熱材よりも下方に設けられる。したがって、庫内用アンテナ10は、庫内灯と同じケース内に収納しても良い。また、庫内用アンテナ10は、マイクロストリップアンテナをアンテナ素子としたアレイアンテナとなっている。冷蔵室の天面は比較的広い平面を有するため、基板上に多数のアンテナ素子を配置でき、高性能のアレイアンテナを実現することが可能である。
【0024】
庫外用アンテナ11は、冷蔵室扉2に配置され、庫外に電波を放射する。この庫外用アンテナ11は、真空断熱材よりも外側に設けられる。したがって、庫外用アンテナ11は、操作パネル12と同じケース内に収納しても良い。また、庫外用アンテナ11も、マイクロストリップアンテナをアンテナ素子としたアレイアンテナとなっている。冷蔵室扉2は比較的広い平面を有するため、基板上に多数のアンテナ素子を配置でき、高性能のアレイアンテナを実現することが可能である。
【0025】
<RFIDリーダ>
次に、RFIDリーダ14の構成について説明する。
図3に示す通り、RFIDリーダ14は、送信部(回路)14aと、受信部(回路)14bと、サーキュレータ14cと、RF制御部14dと、電源部14eと、スイッチ14fと、を有し、アンテナを介してRFIDタグとの通信を行う。
【0026】
ここで、送信部14aは、パワーアンプ14a1を含んでおり、パワーアンプ14a1の出力がサーキュレータ14cに入力される。受信部14bは、サーキュレータ14cからの受信信号の帯域を制限するBPF(バンドパスフィルタ)14b1と、BPF14b1に接続されたLNA(ローノイズアンプ)14b2と、を含んでいる。サーキュレータ14cは、送信部14aからの送信信号をアンテナへ導くと共に、アンテナで受信したRFIDタグからの受信信号を受信部14bへ導くものである。RF制御部14dは、マイクロプロセッサ等で構成され送信部14aや受信部14bの動作を制御する信号処理部14d1と、読取処理等を実行可能な所定のプログラム等が予め格納するメモリ14d2と、で構成される。電源部14eは、各部に動作用の電源を供給するものであり、スイッチ14fは、第1アンテナと第2アンテナとを切り替えるものである。
【0027】
そして、RFIDリーダ14が送信部14aとアンテナによって電波を送信し、その電波をRFIDタグが受信すると、RFIDタグからRF応答信号が送信される。このRF応答信号を、RFIDリーダ14の受信部14bが受信し、信号処理部14d1にて読み取った食品情報をメモリ14d2に記憶させる。なお、本実施例のRFIDリーダ14は、冷蔵庫1全体の制御を行う主制御部13と共通の制御基板8上に設けられているが、主制御部13の制御基板8と別の基板上に設けても良い。
【0028】
<食品管理システム>
次に、上述した冷蔵庫1を用いた食品管理システムについて説明する。
図4は、本実施例に係る食品管理システムの全体構成を示す図である。食品管理システムでは、携帯端末26等の表示装置によって、冷蔵庫1内の食品状況を確認できるようになっている。
図4に示すように、食品管理システムは、冷蔵庫1と、携帯端末26と、ルータ24と、インターネット等のネットワーク25と、サーバ27と、で構成されている。
【0029】
≪冷蔵庫≫
冷蔵庫1は、住居23内のキッチンに置かれ、通信モジュール9を搭載している。この通信モジュール9は、住居23内のルータ24を介して、ネットワーク25に接続されている。そして、通信モジュール9は、自身の識別情報や、RFIDリーダ14で読み取った食品の情報を、ルータ24に送信する。なお、通信モジュール9は、ルータ24を介さず直接ネットワーク25に接続するものであっても良いし、無線でなく有線であっても良い。
【0030】
≪表示装置≫
表示装置は、冷蔵庫1内外の食品の状況を表示する装置であり、無線LAN等によりルータ24と接続された表示端末であっても、冷蔵庫1の扉等に設けられた表示部であっても良い。本実施例では、スマートフォン等の携帯端末26を例に挙げて説明する。この携帯端末26は、ルータ24を介してネットワーク25と接続することも可能であり、ルータ24を介さずに直接ネットワーク25に接続できることも可能である。また、Bluetooth(登録商標)等によって、冷蔵庫1の通信モジュール9と直接接続しても良い。
【0031】
さらに、この携帯端末26には、冷蔵庫1内外の食品を管理するための専用のアプリケーションソフトウェアがインストールされており、このアプリケーションを起動することで、冷蔵庫1内外の食品情報を表示できる。アプリケーションソフトウェアは、冷蔵庫メーカのホームページ等を経由してアクセスされるサーバ27から、ダウンロードやアップデートできるようにしても良い。
【0032】
≪サーバ≫
サーバ27は、ネットワーク25を介して携帯端末26や冷蔵庫1と接続されている。また、サーバ27は、冷蔵庫1のRFIDリーダ14で読み取った食品情報を格納するデータベースを有している。サーバ27は、携帯端末26からアクセスがあった際、冷蔵庫1と対応付けて登録された識別情報と一致するかどうかを認証し、認証が正常に行われた場合、携帯端末26が、サーバ27内のデータベースに接続すること許可する。そして、このサーバ27は、携帯端末26から情報の呼び出し信号を受信すると、データベースに格納された食品情報を携帯端末26に対して送信する。サーバ27は、単一のコンピュータで構築されるものであっても、多数のコンピュータ群で構築されるクラウド型のものであっても良い。
【0033】
<RFIDタグの読み取り動作>
本実施例の食品管理システムにおける、FRIDタグの読み取り動作について説明する。
図5は、冷蔵庫1の内外の食品を読み取る動作を示すフローチャートである。
図5に示す通り、まず、扉センサ15により貯蔵室扉が閉じられたことを検知する(ステップS101)と、RFIDリーダ14は、スイッチ14fを庫内用アンテナ10に切り替え、庫内用アンテナ10から電波を放射した後、RFIDタグからRF応答信号を受信し、冷蔵庫1内にある食品のRFIDタグを読み取る(ステップS102)。再び貯蔵室扉が開閉されない限り、冷蔵庫1内の食品の出し入れは無いと考えられるため、冷蔵庫1内の食品のRFIDタグの読み取りは、これで終了とする。
【0034】
次に、RFIDリーダ14は、スイッチ14fを庫外用アンテナ11に切り替え、庫外用アンテナ11から電波を放射した後、RFIDタグからRF応答信号を受信し、キッチンなど冷蔵庫1外にある食品のRFIDタグを読み取る(ステップS103)。ここで、本実施例では、ステップS102にて庫内のRFIDタグの読み取りを先に行っているが、庫外のRFIDタグを先に読み取っても良い。また、これらの読み取りは、貯蔵室扉が閉じられた直後でなくても、所定時間が経過したタイミングで行っても構わない。
【0035】
冷蔵庫1外にある食品は、貯蔵室扉の開閉と関係なく、増減する可能性がある。このため、ステップS104のように、所定時間(例えば60分)経過毎に、庫外用アンテナ11から電波を放射して、庫外のRFIDタグの読み取りを行う。本実施例によれば、消費電力を抑制しながら、継続的に食品の増減を把握することが可能となっている。
【0036】
<RFIDタグ>
RFIDタグは、RFIDリーダ14から受信した電波のエネルギーにより電力を発生させ、信号化されたタグ内情報をRF応答信号として自身のアンテナを介して送信する。RFIDタグには、食品の種類、食品の賞味/消費期限、等の食品の属性情報が含まれており、これらの情報がRFIDリーダ14によって読み取られる。このとき、RFIDリーダ14は、RFIDタグの位置情報、すなわち食品が置かれた位置に関する情報も、読み取ることが可能である。RFIDタグの位置情報は、庫内用アンテナ10や庫外用アンテナ11の指向性をより細かくして制御することで、庫内か庫外かを区別するだけでなく、庫内のどの位置か、庫外のどの位置か、も区別して認識することが可能である。例えば、庫内でも、チルド室、野菜室、冷蔵室の何段目の棚、棚の手前、棚の奥などを区別したり、庫外でも、シンク下部のストッカー、上部のストッカーなどを区別したりできる。
【0037】
<データベース>
RFIDリーダ14が読み取った、食品の属性情報や位置情報は、通信モジュール9を介してサーバ27へ送信され、サーバ27内のデータベースに、食品情報として整理された状態で格納される。このとき、通信モジュール9(冷蔵庫1)とサーバ27との間で送受信される通信パケットには、食品情報のそれぞれに対応するビット列を設けることにより、データ通信トラフィックを低減することが可能である。
【0038】
なお、食品情報を格納するデータベースは、冷蔵庫1やホームサーバに置いても良い。
データベースを冷蔵庫1に置く場合には、断熱箱体の天面付近に形成された凹部7内に、制御基板8と並べてハードディスクを設けたり、制御基板8内に専用の半導体メモリを設けたりする構成が考えられる。
【0039】
<アプリケーション>
図6は、携帯端末26において、食品管理に関する所定のアプリケーションソフトを起動したときの画面の例を示す図である。
図6のように、画面の上部には、キッチンと冷蔵庫の2つのタブが設けられている。そして、キッチンを選択すると、冷蔵庫1の外にある食品の一覧が表示される。表示される順番は、賞味/消費期限の迫っている食品の順であったり、アプリに登録された日時の新しい食品の順であったり、を適宜選んで並び替えすることもできる。初めて閲覧する食品については新規であることを示す表示をしたり、賞味/消費期限までの所定の期間となった場合にはアラートを発したり、しても良い。冷蔵庫1内へ保管すべき食品が冷蔵庫1外にあった場合にも、アラートを出すこともできる。
【0040】
なお、
図6では、キッチンか冷蔵庫か、すなわち、冷蔵庫1の外か中かの情報しか表示していないが、キッチンのどこにあるか、冷蔵庫1のどの貯蔵室にあるか、等の情報も必要に応じて表示できるようにしても良い。また、本実施例のアプリケーションソフトで提供される機能は、このような食品の閲覧機能やアラート機能には限られない。例えば、冷蔵庫1内外にある食品で調理可能な料理の中でお薦め料理のレシピを表示する機能や、常備品として登録しておいた食品の在庫が少なくなった場合に自動で発注する機能も、提供することができる。
【0041】
<本実施例の効果>
本実施例によれば、食品が置かれることの多いキッチン付近において、常に電源の入っている冷蔵庫を利用することで、庫外に置かれた食品についても継続的に検知できるので、冷蔵庫を含めたキッチン付近全体の食品管理が可能となる。このため、冷蔵/冷凍していない食品の重複購入を防止したり、キッチン等の常備品のストック切れや減少を知らせたりすることができる。また、冷蔵庫の内外にある食品情報が自動的にデータベース化されるので、賞味/消費期限に関するアラートやレシピ等の提供が、より的確に行える。その結果、使用者の使い勝手が向上するだけでなく、食品ロスの低減にもつながる。
【実施例2】
【0042】
食品を検知する食品センサとして、実施例1ではRFIDリーダ用アンテナを用いたが、実施例2ではRFIDリーダ用アンテナとカメラを併用する。そして、本実施例の制御基板8には、RFIDリーダ14とともに、カメラ制御装置が搭載されている。このカメラ制御装置には、信号処理部、メモリ及び電源部等が備えられている。
【0043】
食品センサとしてカメラを用いた場合、画像識別に関するデータ処理が必要となるため、色彩補正、明度補正、外形抽出、パターン認識、等の画像解析を信号処理部で実施する。しかし、データの前処理に大規模なデータ解析を要することがあるため、信号処理部は、例えば、MPUチップ、FPGA、専用ASICチップ、GPUチップ、もしくはこれらの組み合わせ等の高性能プロセッサが用いられる。
【0044】
なお、カメラ制御装置は、冷蔵庫1全体の制御を行う主制御部13の制御基板8と別の基板上に設けても良いし、冷蔵庫1外に置かれた情報処理リソースであっても良い。冷蔵庫1外の情報リソースを用いて画像識別に関するデータ処理を行う場合、データ処理前の比較的大容量のデータを送信する手段を具備する必要がある。このため、冷蔵庫1の通信モジュール9が無線LAN等によって、大容量データを送信できるようにしておくことが望ましい。冷蔵庫1外に置かれた情報処理リソースとしては、クラウド型のサーバでも良いし、ホームサーバ装置等でも良い。
【0045】
本実施例では、庫外用食品センサをアンテナで構成し、庫内用食品センサをカメラで構成している。庫内用食品センサとしてのカメラは、冷蔵室扉2の内板や回転仕切体に設けられ、冷蔵室扉2を閉めたときに、冷蔵室の正面から後方に向かって広範囲を撮影できるようになっている。本実施例では、冷蔵室内を撮影するカメラのみを設けているが、冷凍室など他の貯蔵室内を撮影するカメラも設けても良い。また、庫内用食品センサとして、カメラとアンテナの両方を用いても良い。本実施例のようにカメラを用いると、RFIDタグで読み取れない食品、例えば、調理後に冷蔵庫1内に置かれた食品等を読み取ることが可能となる。
【0046】
また、冷蔵庫1の正面に食品が置かれる場合には、庫外用食品センサについてもカメラにすることが可能である。この場合は、冷蔵室扉2の操作パネル12や、断熱箱体の天面前方等の場所に、カメラを着脱可能に設けるのが良い。冷蔵庫1外の食品を1つのカメラで撮影しきれない場合には、複数のカメラを冷蔵庫1に設けても良い。なお、カメラの種類としては、可視光カメラ以外に、赤外線カメラ、マルチスペクトルカメラ、TOFカメラ等であっても良い。
【実施例3】
【0047】
実施例1のように冷蔵庫1に設けた庫外用アンテナ11だけで、キッチン等の食品のRFIDタグを読み取るのは困難な場合がある。例えば920MHz帯のRFIDシステムでは、RFIDタグの送受信可能距離は数m~10m程度である。また、金属体や人体等の電磁的な障害物の有無でも、受信特性は変動する。そこで、実施例3は、冷蔵庫1と連携する、付加的な送受信装置(通信補助装置)を設け、より安定した食品の読み取りを図ったものである。
【0048】
この通信補助装置は、例えば、信号処理部、メモリ、電源部及びアンテナ等で構成され、冷蔵庫1から比較的離れた位置、好適には天井等の見通しの良い位置に設置される。この通信補助装置を設置することで、冷蔵庫1から電磁気的に死角となる場所に置かれた食品のRFIDタグも読み取り、冷蔵庫1へデータ送信することができる。なお、食品情報のデータベースがホームサーバやクラウド型のサーバに設けられる場合には、通信補助装置が読み取った食品情報は、冷蔵庫1を経由せず、直接サーバへ送信しても良い。この場合は、冷蔵庫1本体が読み取った食品情報と、通信補助装置が読み取った食品情報とが、サーバ上で統合される。
【0049】
なお、本発明は、上述の実施例1~3に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、食品センサとしては、電波的手段であるRFIDリーダ用アンテナや、光学的手段であるカメラ以外に、音波的手段である超音波センサや、これらを組み合わせたセンサフュージョンであっても良い。さらに、実施例1では920MHz帯のRFIDシステムを用いたが、2.4GHz帯のRFIDシステムや、ミリ波帯等のレーダシステムを用いても良い。
【0050】
アンテナの種類や設置場所も上述の実施例1~3に限定されない。例えば、一定の面積を要するマイクロストリップアンテナでなく、線状アンテナをアンテナ素子としたアレイアンテナを用いても良い。また、庫外用アンテナを冷蔵室扉に設けると意匠性や断熱性能に影響を与える可能性があるので、デッドスペースにも設置可能な線状アンテナを貯蔵室のコーナ部等に設けることで、意匠性と断熱性能の低下を抑制できる。
【0051】
さらに、庫外用アンテナと庫内用アンテナを区別することなく、共用のアンテナとし、アンテナの指向性を切り替えることで、庫外から庫内までを読み取るようにしても良い。
また、庫内(例えば冷凍室等)の食品のRFIDタグは読み取らず、食品を冷蔵庫から出し入れする際に、使用者が自ら庫外用アンテナによる読み取り位置に当該食品を近づけることで、庫内の食品を管理しても良い。
【0052】
上述の実施例1~3は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 冷蔵庫
2 冷蔵室扉
3 製氷室扉
4 上段冷凍室扉
5 下段冷凍室扉
6 野菜室扉
7 凹部
8 制御基板
9 通信モジュール
10 庫内用アンテナ(第1アンテナ)
11 庫外用アンテナ(第2アンテナ)
12 操作パネル
13 主制御部
14 RFIDリーダ
14a 送信部
14a1 パワーアンプ
14b 受信部
14b1 BPF(バンドパスフィルタ)
14b2 LNA(ローノイズアンプ)
14c サーキュレータ
14d RF制御部
14d1 信号処理部
14d2 メモリ
14e 電源部
14f スイッチ
15 扉センサ
16 温度センサ
17 圧縮機
18 送風ファン
19 ダンパ
20 可変減衰器
21 可変位相器
22 電力合成・分配器
23 住居
24 ルータ
25 ネットワーク
26 携帯端末
27 サーバ