(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F25B 41/20 20210101AFI20231207BHJP
F25B 31/00 20060101ALI20231207BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20231207BHJP
F25B 41/40 20210101ALI20231207BHJP
F24F 1/30 20110101ALI20231207BHJP
【FI】
F25B41/20 D
F25B31/00 A
F25B1/00 396A
F25B41/40 A
F24F1/30
(21)【出願番号】P 2023022083
(22)【出願日】2023-02-16
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 賢
(72)【発明者】
【氏名】坂本 純一
(72)【発明者】
【氏名】清水 克浩
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/053924(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0081537(US,A1)
【文献】特開2017-190903(JP,A)
【文献】特開2001-304699(JP,A)
【文献】国際公開第2020/188756(WO,A1)
【文献】特許第5791807(JP,B2)
【文献】特公昭62-055586(JP,B2)
【文献】特開2017-62082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/26 - 1/34
F25B 1/00
F25B 31/00 - 31/02
F25B 41/00 - 41/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、室外熱交換器及び膨張機構を備えた室外ユニットと、室内熱交換器を備えた室内ユニットとが冷媒配管により接続され、冷媒としてR32が循環し、冷房及び暖房を含む空調運転を実施する空気調和装置において、
前記圧縮機が複数台設置され、これら複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられ、
これら複数の逆止弁のそれぞれは、前記圧縮機の空調能力当りの弁口径が(Φ0.21~Φ0.42)mm/kWに設定されて構成されたことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
圧縮機、室外熱交換器及び膨張機構を備えた室外ユニットと、室内熱交換器を備えた室内ユニットとが冷媒配管により接続され、冷媒としてR32が循環し、冷房及び暖房を含む空調運転を実施する空気調和装置において、
前記圧縮機が複数台設置され、これら複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられ、
これら複数の逆止弁のそれぞれは、前記圧縮機の空調能力当りの流量係数Cvが(0.105~0.21)/kWに設定されて構成されたことを特徴とする空気調和装置。
【請求項3】
複数台の前記圧縮機は、運転周波数が異なって設定されて運転周波数に差が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
複数台の前記圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管は、合流角度が90度以下に設定されたことを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記冷媒は、冷媒種としてのR32が30%未満含有される混合冷媒であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数台の圧縮機を有し、これらの圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁を備えた空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機、室外熱交換器及び室外膨張弁を備えた室外ユニットと、室内熱交換器を備えた室内ユニットとが冷媒配管により接続されて冷媒が循環し、冷房及び暖房運転を含む空調運転を実施する空気調和装置には、圧縮機が複数台設置されたものがある。これらの圧縮機に接続される吐出配管には、圧縮機からの吐出ガス冷媒の逆流を防止するために逆止弁が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気調和装置において冷媒がR410AからR32に切り替えられた場合、圧縮機に接続される吐出配管に設けられた逆止弁では、冷媒の密度差から流量が低下し、逆止弁における弁体の自重と冷媒の流れによる抵抗とが釣り合って、開弁と閉弁を短時間に繰返すチャタリングが発生する可能性がある。特に、圧縮機が複数台ある場合、それぞれの圧縮機に対応して設けられた逆止弁では、互いに他の圧縮機の吐出圧力が逆圧として作用し、チャタリングを発生する可能性が高い。
【0005】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に設けられた逆止弁のチャタリングを抑制することができる空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態における空気調和装置は、圧縮機、室外熱交換器及び膨張機構を備えた室外ユニットと、室内熱交換器を備えた室内ユニットとが冷媒配管により接続され、冷媒としてR32が循環し、冷房及び暖房を含む空調運転を実施する空気調和装置において、前記圧縮機が複数台設置され、これら複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられ、これら複数の逆止弁のそれぞれは、前記圧縮機の空調能力当りの弁口径が(Φ0.21~Φ0.42)mm/kWに設定されて構成されたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の実施形態における空気調和装置は、圧縮機、室外熱交換器及び膨張機構を備えた室外ユニットと、室内熱交換器を備えた室内ユニットとが冷媒配管により接続され、冷媒としてR32が循環し、冷房及び暖房を含む空調運転を実施する空気調和装置において、前記圧縮機が複数台設置され、これら複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられ、これら複数の逆止弁のそれぞれは、前記圧縮機の空調能力当りの流量係数Cvが(0.105~0.21)/kWに設定されて構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に設けられた逆止弁のチャタリングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る空気調和装置の構成を示す系統図。
【
図3】逆止弁がそれぞれ配設された複数本の吐出配管が合流して接続される状態を示し、(A)は合流角度θが90度の場合、(B)は合流角度θが180度の場合をそれぞれ示す斜視図。
【
図4】第2実施形態に係る空気調和装置の構成を示す系統図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(
図1~
図3)
図1は、第1実施形態に係る空気調和装置の構成を示す系統図である。
図1に示す空気調和装置10は、室外ユニット11と複数の室内ユニット12とが、液冷媒連絡配管13及びガス冷媒連絡配管14により接続されて冷媒が循環し、冷房及び暖房運転を含む空調運転を実施するものである。
【0011】
室外ユニット11は、複数台の圧縮機(例えば2台の圧縮機18A、18B)、四方弁19、室外熱交換器20、室外膨張機構としての室外膨張弁21、室外ファン22、アキュムレータ23、複数の逆止弁(例えば2個の逆止弁24A、24B)、オイルセパレータ25、液側パックドバルブ26L及びガス側パックドバルブ26Gを備えて構成される。
【0012】
更に、この室外ユニット11は、複数台の圧縮機18A、18Bにそれぞれ接続される複数本の吐出配管(例えば吐出配管16A、16B)と複数本の吸込配管(例えば吸込配管17A、17B)とを備えた室外冷媒配管15を有する。吐出配管16Aに逆止弁24Aが、吐出配管16Bに逆止弁24Bがそれぞれ配設される。また、吐出配管16A、16Bの合流点Mから下流側の室外冷媒配管15にオイルセパレータ25、四方弁19、室外熱交換器20及び室外膨張弁21が順次配設される。また、吸込配管17、17Bが分岐する室外冷媒配管15の分岐点Nの上流側にアキュムレータ23が配設される。
【0013】
圧縮機18A及び18Bは、例えばインバータにより運転周波数が制御されて、ガス冷媒の吐出容量が変更可能に構成される。また、逆止弁24Aは圧縮機18Aからの吐出ガス冷媒を、逆止弁24Bは圧縮機18Bからの吐出ガス冷媒を、それぞれオイルセパレータ25及び四方弁19の方向へのみ流し、逆流を防止する。更に、オイルセパレータ25は、圧縮機18A及び18Bから吐出された吐出ガス冷媒から冷凍機油を分離し、冷凍機油を圧縮機18A及び18Bへ戻す。
【0014】
四方弁19は、冷媒の流れを切り換える弁であり、冷房運転時に室外熱交換器20を凝縮器とし、且つ室内熱交換器30(後述)を蒸発器として機能させる。四方弁19は、冷房運転時に、
図1の実線に示すように、圧縮機18A及び8Bの吐出側と室外熱交換器20のガス側とを接続させると共に、圧縮機18A及び8Bの吸込側(つまりアキュムレータ23)とガス側パックドバルブ26G(つまりガス冷媒連絡配管14)とを接続させる。また、四方弁19は、暖房運転時に室内熱交換器30を凝縮器とし、且つ室外熱交換器20を蒸発器として機能させる。四方弁19は、この暖房運転時に、
図1の破線に示すように、圧縮機18A及び8Bの吐出側とガス側パックドバルブ26G(つまりガス冷媒連絡配管14)とを接続させると共に、圧縮機18A及び8Bの吸込側(つまりアキュムレータ23)と室外熱交換器20のガス側とを接続させる。
【0015】
室外熱交換器20は、伝熱管と多数のフィンにより構成され、上述の如く冷房運転時に凝縮器として、暖房運転時に蒸発器としてそれぞれ機能する。この室外熱交換器20は、ガス側が四方弁19に、液側が液側パックドバルブ26L(つまり液冷媒連絡配管13)に接続されている。
【0016】
室外膨張弁21は、室外冷媒配管15内を流れる冷媒の圧力や流量を調整するために室外熱交換器20に流入する冷媒量を調整するものであり、室外熱交換器20の液側に接続される。この室外膨張弁21は、弁開度の調整が容易な電子膨張弁が好ましい。
【0017】
室外ファン22は、室外ユニット11内に外気を吸い込んで、室外熱交換器20において外気を冷媒と熱交換させた後に室外ユニット11外へ排出する。この室外ファン22は、室外熱交換器20に供給する外気の風量を変更可能なファンである。
【0018】
アキュムレータ23は、四方弁19と圧縮機18A及び8Bとの間で室外冷媒配管15に配設されており、室外冷媒配管15内に発生した過剰な冷媒を貯溜する容器である。このアキュムレータ23は、液冷媒とガス冷媒とを分離して、ガス冷媒のみを圧縮機18A及び8Bに吸い込ませる。
【0019】
液側パックドバルブ26Lは、室外ユニット11の外部の配管である液冷媒連絡配管13との接続口に設けられた弁であり、室外膨張弁21に接続される。また、ガス側パックドバルブ26Gは、室外ユニット11の外部の配管であるガス冷媒連絡配管14との接続口に設けられた弁であり、四方弁19に接続される。
【0020】
複数の室内ユニット12のそれぞれは、液冷媒連絡配管13及びガス冷媒連絡配管14に接続される室内冷媒配管29を有する。この室内冷媒配管29に室内熱交換器30、室内膨張機構としての室内膨張弁31が順次配設される。更に、室内ユニット12のそれぞれは、室内熱交換器30近傍に室内ファン32を有すると共に、室温センサ33等を備える。
【0021】
室内熱交換器30は、伝熱管と多数のフィンにより構成された熱交換器であり、冷房運転時に蒸発器として機能して室内空気を冷却し、暖房運転時に凝縮器として機能して室内空気を加熱する。また、室内膨張弁31は、室内冷媒配管29内を流れる冷媒の流量等を調整するために室内熱交換器30に流入する冷媒量を調整するものであり、室内熱交換器30の液側に接続される。この室内膨張弁31は、弁開度の調整が容易な電子膨張弁が好ましい。
【0022】
室内ファン32は、室内ユニット12内に室内空気を吸入し、この吸入空気を室内熱交換器30において冷媒と熱交換させた後に室内に供給する。また、室温センサ33は、室内熱交換器30における空気の流入側に設けられて、室内ユニット12に流入する室内空気の温度を測定する。
【0023】
上述の室外ユニット11及び室内ユニット12では、室外ユニット11の圧縮機18A及び8B、四方弁19、室外熱交換器20及び室外膨張弁21、室内ユニット12の室内膨張弁31及び室内熱交換器30、並びに室外ユニット11のアキュムレータ23は、冷媒が循環することで冷凍サイクルを構成する。この冷凍サイクルを流れる冷媒は、冷媒種としてのR32が30%未満含有された混合冷媒が好ましい。
【0024】
次に、空気調和装置10の空調運転である冷房運転及び暖房運転について述べる。
(A)冷房運転
冷房運転時には、四方弁19が
図1の実線に示される状態、つまり、圧縮機18A及び8Bの吐出側が室外熱交換器20のガス側に接続され、且つ圧縮機18A及び8Bの吸込側が、ガス側パックドバルブ26G及びガス冷媒連絡配管14を介して室内熱交換器30のガス側に接続される。
【0025】
この状態で、圧縮機18A及び8B、室外ファン22及び室内ファン32が起動すると、低圧のガス冷媒は、圧縮機18A及び8Bに吸い込まれて圧縮され、高圧のガス冷媒となる。その後、高圧のガス冷媒は、四方弁19を経由して室外熱交換器20に送られ、室外ファン22によって供給される外気と熱交換を行って凝縮し、高圧の液冷媒になる。この高圧の液冷媒は、液冷媒連絡配管13を経由して室内ユニット12に送られる。
【0026】
室内ユニット12に送られた高圧の液冷媒は、室内膨張弁31により圧縮機18A及び8Bの吸込圧力近くまで減圧され、低圧の気液二相状態の冷媒となって室内熱交換器30に送られ、この室内熱交換器30において室内空気と熱交換を行って室内空気を冷却すると共に蒸発し、低圧のガス冷媒となる。
【0027】
この低圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡配管14を経由して室外ユニット11に送られ、四方弁19を経由してアキュムレータ23に流入する。このアキュムレータ23に流入した低圧のガス冷媒は、再び圧縮機18A及び8Bに吸い込まれる。
【0028】
(B)暖房運転
暖房運転時には、四方弁19が
図1の破線に示された状態、つまり圧縮機18A及び8Bの吐出側が、ガス側パックドバルブ26G及びガス冷媒連絡配管14を介して室内熱交換器30のガス側に接続され、且つ圧縮機18A及び8Bの吸込側が室外熱交換器20のガス側に接続される。
【0029】
この状態で、圧縮機18A及び8B、室外ファン22及び室内ファン32が起動すると、低圧のガス冷媒は、圧縮機18A及び8Bに吸い込まれて圧縮され、高圧のガス冷媒となり、四方弁19及びガス冷媒連絡配管14を経由して室内ユニット12に送られる。
【0030】
室内ユニット12に送られた高圧のガス冷媒は、室内熱交換器30において、室内空気と熱交換を行って室内空気を加熱すると共に凝縮し、高圧の液冷媒となった後、室内膨張弁31を通過する際に、この室内膨張弁31の弁開度に応じて流量が調整される。
【0031】
室内膨張弁31を通過した冷媒は、液冷媒連絡配管13を経由して室外ユニット11に送られ、室外膨張弁21を経由して減圧された後に、室外熱交換器20に流入する。この室外熱交換器20に流入した低圧の気液二相状態の冷媒は、室外ファン22により供給される外気と熱交換を行って蒸発して低圧のガス冷媒となり、四方弁19を経由してアキュムレータ23に流入する。このアキュムレータ23に流入した低圧のガス冷媒は、再び圧縮機18A及び8Bに吸い込まれる。
【0032】
ところで、上述の空気調和装置10における逆止弁24A及び24B、吐出配管16A及び16B、並びに圧縮機18A及び18Bについて更に詳説する。
【0033】
逆止弁24A及び24Bは、
図2に示すように、弁ケーシング35内に弁座36が固着され、この弁座36に弁体37が接離可能に構成される。逆止弁24A及び24Bは、弁体37が自重により弁座36に当接することで閉弁される。また、逆止弁24A及び24Bは、圧縮機18A及び18Bからの吐出ガス冷媒が弁座36の弁ポート38を流れることで、弁体37が弁座36から離反して開弁される。これらの逆止弁24A及び24Bでは、圧縮機18A及び18Bの空調能力当りの弁口径d(つまり、弁ポート38の口径)は、(Φ0.21~Φ0.42)mm/kWの範囲に設定される。ここで、Φは直径を表す。
【0034】
例えば、同容量の圧縮機18A、18Bが2台設置された室外ユニット11の空調能力が67.2kWに設定されている場合、圧縮機18A、18Bの1台当りの空調能力は33.6kWになる。従って、逆止弁24A、24Bのそれぞれの弁口径dは、Φ0.21mm/kW×33.6kW≒Φ7.0mm以上で、且つΦ0.42mm/kW×33.6kW≒Φ14mm以下の範囲になる。ここで、kWは、カタログ等に記載された冷房定格条件時の空調(冷房)能力を指し、2.8kW=1HPとしてHPに読み替えてもよい。
【0035】
事前の試験結果によれば、逆止弁24A、24Bの弁口径dがΦ14mmを超えた場合(例えばd=Φ16mm)、特に圧縮機18A及び18Bの運転周波数が低いときには、逆止弁24Aでは他方の圧縮機18Bからの吐出圧力が逆圧として作用し、逆止弁24Bでは他方の圧縮機18Aからの吐出圧力が逆圧として作用して、逆止弁24A及び24Bが開弁と閉弁を短時間に繰り返すチャタリングを発生してしまう。また、逆止弁24A、24Bの弁口径dがΦ12mm、Φ14mmと小さな場合には、逆止弁24A及び24Bには上述の逆圧によるチャタリングが発生しない試験結果が得られた。
【0036】
また、逆止弁24A及び24Bの弁口径dがΦ7.0mm未満の場合には、逆止弁24A及び24Bの圧力損失が増大して、圧縮機18A及び18Bの吐出圧力の上昇を招くので、空気調和装置10の性能が大幅に低下してしまう。
【0037】
図1に示す圧縮機18A及び18Bの運転周波数は、逆止弁24A及び24Bにおける上述のチャタリングを抑制する観点から、異なって設定されて差が設けられる。例えば、圧縮機18Aの運転周波数が高く、圧縮機18Bの運転周波数が低い場合、圧縮機18A側の逆止弁24A(即ち、圧縮機18Aに接続される吐出配管16Aに配設された逆止弁24A)では、運転周波数の低い圧縮機18Bから逆圧として作用する吐出圧力が低減されるので、チャタリングの発生が抑制される。また、圧縮機18B側の逆止弁24B(即ち、圧縮機18Bに接続される吐出配管16Bに配設された逆止弁24B)では、運転周波数が高い圧縮機18Aから吐出圧力が逆圧として作用するが、所定時間経過後に圧縮機18Bによる吐出圧力により逆止弁24Bが開弁し、この場合もチャタリングは発生しない。
【0038】
図1に示すように、吐出配管16Aと16Bは合流点Mにおいて合流するが、逆止弁24A及び24Bのチャタリングを抑制する観点から、合流角度θが
図3(A)に示すように90度以下に設定される。
図3(B)に示すように、吐出配管16Aと16Bの合流角度θが180度に設定される場合には、圧縮機18Aと18Bとからそれぞれ吐出されるガス冷媒が正面で衝突する。このため、逆止弁24Aは、圧縮機18Bから逆圧として作用する吐出圧力の影響を受け易く、また、逆止弁24Bは、圧縮機18Aから逆圧として作用する吐出圧力の影響を受け易い。この結果、逆止弁24A及び24Bでは、逆圧によるチャタリングが発生してしまう。
【0039】
これに対し、
図3(A)に示すように、吐出配管16Aと16Bの合流角度θが90度に設定された場合には、圧縮機18Aと18Bとからそれぞれ吐出されるガス冷媒の正面での衝突が回避される。このため、逆止弁24Aは、圧縮機18Bから逆圧として作用する吐出圧力の影響を受け難くなり、また、逆止弁24Bは、圧縮機18Aから逆圧として作用する吐出圧力の影響を受け難くなる。この結果、逆止弁24A及び24Bでは、逆圧によるチャタリングの発生を抑制することが可能になる。
【0040】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)~(5)を奏する。
(1)逆止弁24Aは、圧縮機18Aの空調能力当りの弁口径dがΦ0.42mm/kW以下に設定されたので、他の圧縮機18Bからの吐出圧力が逆圧として作用する影響を低減できる。また、逆止弁24Bは、圧縮機18Bの空調能力当りの弁口径dがΦ0.42mm/kW以下に設定されたので、他の圧縮機18Aからの吐出圧力が逆圧として作用する影響を低減できる。これらのことから、逆止弁24A及び24Bにおいて、上記逆圧に起因するチャタリングの発生を抑制することができる。
【0041】
(2)逆止弁24A及び24Bにおける圧縮機18A及び18Bの空調能力当りの弁口径dがΦ0.21mm/kW以上に設定されたので、逆止弁24A及び24Bの圧力損失が低減されて、圧縮機18A及び18Bの吐出圧力の上昇を招くことがない。この結果、空気調和装置10の性能を良好に確保することができる。
【0042】
(3)複数台の圧縮機18A及び18Bは、運転周波数が異なって設定されて、運転周波数に差が設けられている。このため、例えば運転周波数の低い圧縮機18Bから逆止弁24Aに作用する逆圧としての吐出圧力が低減されるので、逆止弁24Aにチャタリングの発生を一層抑制することができる。また、逆止弁24Bは、運転周波数の高い圧縮機18Aから吐出圧力が逆圧として作用して閉弁しても、所定時間経過後に運転周波数の低い圧縮機18Bからの吐出圧力により開弁し、開弁と閉弁が短時間に繰り返されるチャタリングが発生することがない。
【0043】
(4)複数台の圧縮機18A、18Bのそれぞれに接続される吐出配管16A、16Bの合流角度θが90度以下に設定されている。このため、複数の逆止弁24A、24Bは互いに、他の圧縮機から(逆止弁24Aは圧縮機18Bから、逆止弁24Bは圧縮機18Aから)逆圧として作用する吐出圧力の影響を低減できるので、逆圧に起因するチャタリングの発生をより一層抑制することができる。
【0044】
(5)空気調和装置10を流れる冷媒は、冷媒種としてのR32が30%未満含有される混合冷媒である。このため、冷媒としてのR32はGWP(地球温暖化係数)が675であり、GWPが低い。このため、空気調和装置10は、R32が30%未満の含有量の混合冷媒を使用することで、低GWP冷媒を採用することができる。
【0045】
[B]第2実施形態(
図4)
図4は、第2実施形態に係る空気調和装置の構成を示す系統図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0046】
本第2実施形態の空気調和装置40の室外ユニット41が第1実施形態と異なる点は、吐出配管16Aに逆止弁42Aが、吐出配管16Bに逆止弁42Bがそれぞれ配設され、逆止弁42Aが圧縮機18Aからの吐出ガス冷媒を、逆止弁42Bが圧縮機18Bからの吐出ガス冷媒を、それぞれオイルセパレータ25及び四方弁19の方向へのみ流し、逆流を防止している。更に、逆止弁42A及び42Bは、圧縮機18A及び18Bの空調能力当りの流量係数Cvが(0.105~0.21/kWの範囲に設定されている。
【0047】
例えば、同容量の圧縮機18A、18Bが2台設置された室外ユニット41の空調能力が67.2kWに設定されている場合、圧縮機18A、18Bの1台当りの空調能力は33.6kWになる。従って、逆止弁42A、42Bのそれぞれの流量係数Cvは、0.105/kW×33.6kW≒3.5以上で、且つ0.21/kW×33.6kW≒7.0以下の範囲になる。ここで、kWは、カタログ等に記載された冷房定格条件時の空調(冷房)能力を指し、2.8kW=1HPとしてHPに読み替えてもよい。
【0048】
事前の試験結果によれば、逆止弁42A、42Bの流量係数Cvが7.0を超えた場合(例えばCv=9.0)、特に圧縮機18A及び18Bの運転周波数が低いときには、逆止弁42Aでは他方の圧縮機18Bからの吐出圧力が逆圧として作用し、逆止弁42Bでは他方の圧縮機18Aからの吐出圧力が逆圧として作用して、逆止弁42A及び42Bが開弁と閉弁を短時間に繰り返すチャタリングを発生してしまう。また、逆止弁42A、42Bの流量係数Cvが6.0、7.0と小さな場合には、逆止弁42A及び42Bには上述の逆圧によるチャタリングが発生しない試験結果が得られた。
【0049】
また、逆止弁42A及び42Bの流量係数Cvが3.5未満の場合には、逆止弁42A及び42Bの圧力損失が増大して、圧縮機18A及び18Bの吐出圧力の上昇を招くので、空気調和装置40の性能が大幅に低下してしまう。
【0050】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態によれば、第1実施形態の効果(3)~(5)と同様な効果を奏するほか、次の効果(6)及び(7)を奏する。
【0051】
(6)逆止弁42Aは、圧縮機18Aの空調能力当りの流量係数Cvが0.21/kW以下に設定されたので、他の圧縮機18Bからの吐出圧力が逆圧として作用する影響を低減できる。また、逆止弁42Bは、圧縮機18Bの空調能力当りの流量係数Cvが0.21/kW以下に設定されたので、他の圧縮機18Aからの吐出圧力が逆圧として作用する影響を低減することができる。これらのことから、逆止弁42A及び42Bにおいて、上記逆圧に起因するチャタリングの発生を抑制することができる。
【0052】
(7)逆止弁42A及び42Bにおける圧縮機18A及び18Bの空調能力当りの流量係数Cvが0.105/kW以上に設定されたので、逆止弁42A及び42Bの圧力損失が低減されて、圧縮機18A及び18Bの吐出圧力の上昇を招くことがない。この結果、空気調和装置40の性能を良好に確保することができる。
【0053】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができ、また、それらの置き換えや変更、組み合わせは、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
10…空気調和装置、11…室外ユニット、12…室内ユニット、13…液冷媒連絡配管、14…ガス冷媒連絡配管、15…室外冷媒配管、16A、16B…吐出配管、18A、18B…圧縮機、20…室外熱交換器、21…室外膨張弁、24A、24B…逆止弁、29…室内冷媒配管、30…室内熱交換器、40…空気調和装置、41…室外ユニット、42A、42B…逆止弁、d…弁口径、θ…合流角度、Cv…流量係数
【要約】
【課題】複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に設けられた逆止弁のチャタリングを抑制できること。
【解決手段】圧縮機18A、18B、室外熱交換器20及び室外膨張弁21を備えた室外ユニット11と、室内熱交換器30を備えた室内ユニット12とが液冷媒連絡配管13及びガス冷媒連絡配管14により接続され、冷媒としてR32が循環し、冷房及び暖房を含む空調運転を実施する空気調和装置10において、圧縮機が複数台設置され、これら複数台の圧縮機18A、18Bのそれぞれに接続される吐出配管16A、16Bに逆止弁24A、24Bがそれぞれ設けられ、これら複数の逆止弁のそれぞれは、圧縮機の空調能力当りの弁口径dが(Φ0.21~Φ0.42)mm/kWに設定されて構成されたものである。
【選択図】
図1