(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】車椅子用クッション
(51)【国際特許分類】
A61G 5/12 20060101AFI20231208BHJP
A47C 27/12 20060101ALI20231208BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
A61G5/12 701
A47C27/12 L
A47C27/14 D
(21)【出願番号】P 2019106459
(22)【出願日】2019-06-06
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】505290531
【氏名又は名称】株式会社エアウィーヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】519205981
【氏名又は名称】一般社団法人日本身体機能研究会
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】高岡 本州
(72)【発明者】
【氏名】窪田 千恵
(72)【発明者】
【氏名】金岡 恒治
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-158909(JP,A)
【文献】特開2015-173791(JP,A)
【文献】登録実用新案第3217340(JP,U)
【文献】特開2004-033337(JP,A)
【文献】米国特許第5282286(US,A)
【文献】登録実用新案第3184239(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00-14
A47C 27/12-14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座ったまま
左右方向への体重移動を行う使用者を支持するクッション部を備え、
前記クッション部は、
左右方向の中央位置を含む領域が、第1クッション素材により形成され、
第1クッション素材の左右それぞれの領域が、第1クッション素材よりも反発力の低い第2クッション素材により形成され、
左右の第2クッション素材は、使用者の左右の坐骨部位を支持することを特徴とする車椅子用クッション。
【請求項2】
座ったまま
左右方向への体重移動を行う使用者を支持するクッション部を備え、
前記クッション部は、
左右方向の中央位置を含む領域が、第1クッション素材により形成され、
第1クッション素材の左右それぞれの領域が、第1クッション素材よりも反発力の低い第2クッション素材により形成され、
第1クッション素材よりも反発力の低い第3クッション素材が、第1クッション素材および第2クッション素材の下側に設けられたことを特徴とする車椅子用クッション。
【請求項3】
第3クッション素材の下側に、第1クッション素材よりも硬い第1板状素材を設けたことを特徴とする請求項2に記載の車椅子用クッション。
【請求項4】
第1クッション素材と第3クッション素材の間に、第1クッション素材よりも硬い第2板状素材を介在させたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の車椅子用クッション。
【請求項5】
第1クッション素材として、フィラメント3次元結合体が用いられたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の車椅子用クッション。
【請求項6】
第2クッション素材として、形状記憶型のウレタンフォームが用いられたことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の車椅子用クッション。
【請求項7】
車椅子スポーツ用であることを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の車椅子用クッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子に設けられる車椅子用クッションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車椅子に設けられる車椅子用クッションに関して、各種の改良案が提案されている。例えば特許文献1には、湿式合成皮革2の下面側に、連泡性のポリウレタン材3が積層一体化され、該ポリウレタン材3の下面側に、互いに離間して配置された第一編物4と第二編物5とをモノフィラメント糸からなる連結糸6でつないだ三次元立体編物7が積層一体化されてなる積層体9を備え、積層体9の外周が縁部カバー材8にて覆われている構成の車椅子用クッションが開示されている。
【0003】
当該構成によれば、通気性に優れ、防水性を有すると共に、長時間座っても疲れにくく、座り心地の良い車椅子用クッション材が得られる。また特許文献2には、所定の構成とした椅子用クッションにより、着座姿勢や臀部形状の個人差にかかわらず、高い圧力や極端な圧力集中の発生を抑制可能とし、座り心地が良く、かつ長時間使用しても褥瘡発生が抑制可能である旨が開示されている。
【0004】
またスポーツの分野においては、例えばテニスやバスケット等、車椅子を使用してプレイできる種目が多くなっている。車椅子を使用してプレイするスポーツ選手は、一般的に下半身は車椅子に固定されるが、座ったまま上半身を自由に動かすことができ、健常者と同等以上のパフォーマンスを発揮することも珍しくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3217340号公報
【文献】特開2006-000200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した車椅子を使用するスポーツ選手等(使用者)は、プレイ中に座ったまま上半身を動かすことが多く、これに伴う体重移動が頻繁に行われることになる。そのため例えばプレイの質を高めるためには、使用者が体重移動し易くなっているとともに、体重移動が行われても使用者の体幹を安定させ得ることが重要である。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み、使用者の体重移動を行い易くするととともに、体重移動が行われても使用者の体幹をより安定させることが可能となる車椅子用クッションの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車椅子用クッションは、座ったまま所定方向への体重移動を行う使用者を支持するクッション部を備え、前記クッション部は、前記所定方向寄りの一部領域での反発力が低くなるようにした構成とする。本構成によれば、使用者の体重移動を行い易くするととともに、体重移動が行われても使用者の体幹をより安定させることが可能となる。なお本願での使用者を「支持する」とは、使用者を直接的に支持する形態に限られず、何らかの部材等を介在させて支持する形態も含む概念である。
【0009】
上記構成としてより具体的には、前記所定方向は左右方向であり、前記クッション部は、左右方向の中央位置を含む領域が、第1クッション素材により形成され、第1クッション素材の左右それぞれの領域が、第1クッション素材よりも反発力の低い第2クッション素材により形成された構成としてもよい。本構成によれば、使用者の左右への体重移動を行い易くするととともに、左右への体重移動が行われても使用者の体幹をより安定させることが可能となる。
【0010】
また上記構成としてより具体的には、左右の第2クッション素材は、使用者の左右の坐骨部位を支持する構成としてもよい。本構成によれば、骨ばった坐骨部位が比較的反発力の低い第2クッション素材に支持されることで、使用者の座り心地を良くすることが可能となる。
【0011】
また上記構成としてより具体的には、第1クッション素材よりも反発力の低い第3クッション素材が、第1クッション素材および第2クッション素材の下側に設けられた構成としてもよい。本構成によれば、第1クッション素材および第2クッション素材を第3クッション素材13に沈み込ませることができ、車椅子用クッションのクッション性を全体的に向上させることが可能となる。
【0012】
また上記構成としてより具体的には、第3クッション素材の下側に、第1クッション素材よりも硬い第1板状素材を設けた構成としてもよい。本構成によれば、第1クッション素材を車椅子の座面よりも軟らかい適度な硬さを有するように形成しておき、底突き感をソフトなものとすることが可能となる。
【0013】
また上記構成としてより具体的には、第1クッション素材と第3クッション素材の間に、第1クッション素材よりも硬い第2板状素材を介在させた構成としてもよい。本構成によれば、第1クッション素材をより均一に第3クッション素材へ沈み込ませることが可能となる。
【0014】
また上記構成としてより具体的には、第1クッション素材としてフィラメント3次元結合体が用いられた構成としてもよく、第2クッション素材として形状記憶型のウレタンフォームが用いられた構成としてもよい。また上記構成の車椅子用クッションは、車椅子スポーツ用である構成としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る車椅子用クッションによれば、使用者の体重移動を行い易くするととともに、体重移動が行われても使用者の体幹をより安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る車椅子用クッションの概略的な外観図である。
【
図2】当該車椅子用クッションの配置形態に関する説明図である。
【
図3】第1実施形態に係る車椅子用クッションの概略的な断面図である。
【
図4】第2実施形態に係る車椅子用クッションの概略的な断面図である。
【
図5】第3実施形態に係る車椅子用クッションの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、車椅子テニス(車椅子スポーツの一種)の用途に適する車椅子用クッション(車椅子テニス用のもの)を例に挙げて説明する。車椅子テニスでは特に左右への体重移動が頻繁に生じるが、後述の説明で明らかとなるように、本実施形態の車椅子用クッション1はこのような体重移動が生じても使用者の体幹を十分に安定させ得るよう配慮されている。
【0018】
1.第1実施形態
まず本発明の第1実施形態について説明する。なお以下の説明における上下、左右、および前後の各方向(互いに直交する方向)は、各図に示すとおりである。
図1は、第1実施形態に係る車椅子用クッション1の概略的な外観を示しており、
図2は、車椅子用クッション1の配置形態を概略的に示している。
【0019】
図1に示すように車椅子用クッション1は、上下方向を厚み方向とする略直方体に形成されており、後述する各クッション素材等をカバー10の内部に収容した形態となっている。カバー10には不図示のファスナーが設けられており、当該ファスナーを開いてカバー10の内部を開口させ、各クッション素材等を適宜出し入れすることが可能である。本実施形態の例では、車椅子用クッション1の前後方向および左右方向のサイズは、各々30cm程度となっている。
【0020】
図2に示すように車椅子用クッション1は、車椅子テニス用の車椅子Xの座面2に設けられる。なお座面2は金属等により形成されており、車椅子用クッション1に比べて非常に硬くなっている。車椅子Xは、左右一対の後輪3と左右一対の前輪4を有しており、概ね、左右の後輪3の間に座面2が配置されている。車椅子Xを使用する使用者(以下、単に「使用者」とする。)は、車椅子用クッション1の上に前方を向いて座り、左右の後輪3の外側に付いているハンドリム5を手で回転させて自在に移動することが可能である。
【0021】
図3は、車椅子用クッション1の概略的な断面図(前後方向と直交する平面で切断した場合の断面図)である。なお
図3(後述する
図4および
図5も同様)に示す破線αは、座る直前の使用者の臀部付近の大まかな位置を、参考までに示している。本図に示すように車椅子用クッション1は、カバー10の内部にクッション部CSが設けられている。
【0022】
クッション部CSは、第1クッション素材11、左側第2クッション素材12L、および右側第2クッション素材12Rにより構成され、使用者の臀部付近を弾性的に支持する役割を果たす。なお以下の説明では、左側第2クッション素材12Lと右側第2クッション素材12Rを、「第2クッション素材12」と総称することがある。カバー10の内部の構成は基本的に前後方向では均一であり、前後方向のどの位置における断面図も
図3に示すとおりである。
【0023】
図3に示すように、第1クッション素材11は、クッション部CSにおける左右方向の中央位置を含む領域に配置され、左右それぞれの第2クッション素材12は、第1クッション素材11の左右それぞれに配置されている。本実施形態の例では、第1クッション素材11の左右方向サイズは10cm程度、第2クッション素材12の左右方向サイズは9~10cm程度となっており、クッション部CSの厚み(上下方向サイズ)は2.5cm程度となっている。これにより、使用者の左右の坐骨部位は第2クッション素材12により支持され、会陰部近傍は第1クッション素材11により支持される。骨ばった坐骨部位が比較的反発力の低い第2クッション素材12に支持されることで、使用者の座り心地を良くすることが可能である。
【0024】
第1クッション素材11は、熱可塑性樹脂のフィラメント同士が立体的に融着結合したフィラメント三次元結合体により形成されている。なおフィラメント三次元結合体の製造方法等については、例えば特開2017-160553号公報にも開示されているとおり公知であり、ここではその詳細な説明を省略する。フィラメント三次元結合体で形成された第1クッション素材11は、高反発であるとともに通気性に優れている。但し、本発明に係る第1クッション素材の具体的な材質は、フィラメント三次元結合体には限定されず、クッション性を有する他の材質とすることも可能である。
【0025】
第2クッション素材12は、形状記憶型のウレタンフォームにより形成されており、第1クッション素材11よりも反発力が低くなっている。形状記憶型のウレタンフォームの一例としては、株式会社ケー・シー・シー・商会製のメモリーフォーム(登録商標)が挙げられる。但し本発明に係る第2クッション素材の具体的な材質は、形状記憶型のウレタンフォームには限定されない。第2クッション素材の具体的な材質としては、第1クッション素材よりも反発力の低いクッション性を有する他の材質を採用することが可能であり、特に、沈み込んだ使用者の体にフィットする材質を採用することが好ましい。
【0026】
上述したように、第2クッション素材12は、第1クッション素材11よりも反発力が低くなっている。すなわち各クッション素材11,12をクッション部CSの各部分として見ると、クッション部CSは、左方向寄りと右方向寄り(つまり、使用者の体重移動の方向寄り)の一部領域での反発力が低くなるように構成されている。
【0027】
使用者が車椅子用クッション1に着座しているとき、使用者が基本姿勢(普通に真直ぐ座っており、左右への体重の偏りが無い姿勢)をとった際には、使用者の重心の左右方向位置は概ね第1クッション素材11の左右方向中央に一致する。この状態では、使用者の臀部の中央近傍が反発力の高い第1クッション素材11に支持されるため、クッション部CS全体が第2クッション素材12で形成されたと仮定した場合に比べて、左右への体重移動が行い易くなっている。
【0028】
一方、使用者が上半身を左側に傾ける等、基本姿勢から左方へ体重移動を行った際には、その分だけ使用者の重心は左方へ移動し、クッション部CSのうち主として左側第2クッション素材12Lが使用者を支持するようになる。この状態になると、使用者の左側臀部付近は反発力の低い左側第2クッション素材12Lに沈み込む格好となる。このとき、左側第2クッション素材12Lは反発力が低いため、使用者は十分な底突き感(臀部付近が底突きし、安定した土台に支持される感覚)を得ることができ、体幹を安定させることが出来る。体幹が安定すると、使用者は上半身をより力強く動かすこと等が可能となり、プレイのパフォーマンスを向上させることができる。
【0029】
なお、使用者が上半身を右側に傾ける等、基本姿勢から右方へ体重移動を行った際には、その分だけ使用者の重心は右方へ移動し、クッション部CSのうち主として右側第2クッション素材12Rが使用者を支持するようになる。この場合にも同様に、使用者はしっかりとした底突き感を得ることができ、体幹を安定させることが出来る。
【0030】
ここで、クッション部CSの全体が第1クッション素材11のように高反発であると仮定すると、左右への体重移動のし易さについては殆んど問題とならないが、左または右へ体重移動をした際に使用者は十分な底突き感を得ることができず、体幹を安定させることが比較的難しくなる。
【0031】
逆に、クッション部CSの全体が第2クッション素材12のように低反発であると仮定すると、底突き感を得ることは可能であるが、左右への体重移動のし易さ等において問題が生じ易い。例えば、使用者が左方へ体重移動を行った状態では、その体勢にフィットするようにクッション部CSが変形するが、この状態から使用者が右方へ体重移動を行う場合、反発力が低いほどクッション部CSの変形の戻りに時間が掛かり、クッション部CSが素早い体重移動の足かせとなり易い。
【0032】
この点、本実施形態のクッション部CSは、高反発である第1クッション素材11を有しながらも、体重移動の方向寄りに低反発の第2クッション素材12が配置されることで、使用者の体重移動を行い易くするととともに、体重移動が行われても使用者の体幹をより安定させることができるよう工夫されている。
【0033】
なお、例えば車椅子テニスではボールを打つ際に上半身を左右へ体重移動するように、車椅子スポーツでは、特に体重移動をした際の体幹の安定が重要であることが多い。本発明に係る車椅子用クッションは、このような観点から特に車椅子スポーツに好適である。車椅子スポーツの種目としてはテニスの他に、例えば、陸上競技、フェンシング、ラグビー、バスケットボール、およびカーリング等が挙げられる。また一般的に、各種目の車椅子スポーツ用の車椅子は、その種目に適した仕様とされている。本発明に係る車椅子クッションをある種目用とする場合、当該車椅子クッションの形状やサイズ等は、その種目用の車椅子の座面に適合するように設定されることが好ましい。但し本発明に係る車椅子用クッションは、車椅子スポーツに用途が限定されるものではなく、使用者の体重移動が行われる様々な用途に利用可能である。
【0034】
2.第2実施形態
次に本発明の第2実施形態について説明する。なお第2実施形態は、車椅子用クッションの構成を除き、基本的に第1実施形態と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。
【0035】
図4は、第2実施形態に係る車椅子用クッション1aの概略的な断面図(
図3と同視点による断面図)である。本図に示すように車椅子用クッション1aは、第1クッション素材11よりも反発力の低い第3クッション素材13が、クッション部CS(第1クッション素材11および第2クッション素材12)の下側に設けられている。本実施形態の例では、第3クッション素材13は、第2クッション素材12と同様に形状記憶型のウレタンフォームにより形成されている。
【0036】
第3クッション素材13は、クッション部CS全体を下から支えるよう配置されており、クッション部CS全体を第3クッション素材13に沈み込ませることができる。これにより、車椅子用クッション1のクッション性を全体的に向上させることが可能となる。なお本実施形態の例では、第3クッション素材13の厚み(上下方向サイズ)は2.5cm程度となっている。第3クッション素材13の厚みは、車椅子の仕様や使用者の好み等に応じて適宜調整することも可能である。
【0037】
3.第3実施形態
次に本発明の第3実施形態について説明する。なお第3実施形態は、車椅子用クッションの構成を除き、基本的に第1実施形態と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。
【0038】
図5は、第3実施形態に係る車椅子用クッション1bの概略的な断面図(
図3と同視点による断面図)である。本図に示すように車椅子用クッション1bは、第2実施形態の場合と同様に構成された第3クッション素材13に加え、第1板状硬質素材14、第2板状硬質素材15、および軟質素材16を有している。
【0039】
第1板状硬質素材14は、第1クッション素材11よりも硬い板状の素材であり、第3クッション素材13の下側に設けられている。本実施形態の例では、第1板状硬質素材14は硬質ポリウレタンにより形成されており、第1クッション素材13よりは硬いが車椅子Xの座面2よりは軟らかくなっている。このように適度な硬さを有する第1板状硬質素材14は、第3クッション素材13と硬過ぎる座面2との間に介在し、底突き感をソフトなものとすることが可能である。
【0040】
第2板状硬質素材15は、第1クッション素材11よりも硬い板状の素材であり、第1クッション素材11と第3クッション素材13の間に介在するように設けられている。本実施形態の例では、第2板状硬質素材15は、第1板状硬質素材14と同様に硬質ポリウレタンにより形成されている。第2板状硬質素材15は、第1クッション素材11の全体をより均一に第3クッション素材13へ沈み込ませる役割を果たす。
【0041】
軟質素材16は、第1クッション素材11や第2クッション素材12に比べて軟らかい素材であり、クッション部CSの上側全体を覆うように設けられている。軟質素材16は、例えばスポンジ等により形成され、使用者の座り心地をよりソフトにする役割を果たす。
【0042】
これまでに説明したとおり、各実施形態の車椅子クッションは、座ったまま所定方向への体重移動を行う使用者を支持するクッション部CSを備える。そしてクッション部CSは、当該所定方向寄りの一部領域での反発力が低くなるようにしている。そのため、使用者の体重移動を行い易くするととともに、体重移動が行われても使用者の体幹をより安定させることが可能である。
【0043】
各実施形態では車椅子テニスの用途を想定しているため、当該所定方向を左右方向としているが、左および右の何れか一方の方向、或いは前後方向など、当該所定方向は用途等に応じて適切に設定すれば良い。なお車椅子テニスの選手を使用者として、第3実施形態に係る車椅子クッション1bのサンプルを用いた性能試験を行ったところ、従来のクッションや板の座面に比べて重心動揺を抑制し得ることが推認された。また、各実施形態の第1クッション部材11(反発力の強い部分)は座位において使用者の会陰部に反発力を伝え、この刺激が骨盤底筋とそれに連続する体幹深部筋を賦活化することによって、使用者の体幹を安定させる副次的効果が期待される。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、車椅子用クッションに利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1、1a、1b 車椅子用クッション
2 座面
3 後輪
4 前輪
5 ハンドリム
10 カバー
11 第1クッション素材
12 第2クッション素材
12L 左側第2クッション素材
12R 右側第2クッション素材
13 第3クッション素材
14 第1板状硬質素材
15 第2板状硬質素材
16 軟質素材
CS クッション部