(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20231208BHJP
F24F 11/84 20180101ALI20231208BHJP
F24F 13/30 20060101ALI20231208BHJP
F25B 13/00 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
F25B1/00 304Z
F25B1/00 101Z
F25B1/00 321C
F25B1/00 321K
F24F11/84
F24F13/30
F25B13/00 Z
(21)【出願番号】P 2020024043
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】倉田 理
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀行
(72)【発明者】
【氏名】舛谷 乙彦
(72)【発明者】
【氏名】大野 洋平
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/084432(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/065233(WO,A1)
【文献】特開2000-097511(JP,A)
【文献】特開2000-130889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F24F 11/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と四方弁と室外熱交換器と膨張弁と室内熱交換器とを配管で接続して冷凍サイクルを構成した空気調和機であって、前記四方弁と前記圧縮機の冷媒吸入側の配管との間をバイパスするバイパス回路を具備し、前記バイパス回路中には減圧部を有し、前記バイパス回路の前記四方弁側の端部側は流路切り替え装置を介して前記冷凍サイクルと接続され、前記空気調和機は室内温度を検出する室内温度検出手段と目標温度を設定する目標温度設定手段とを有し、冷房運転時に前記室内温度検出手段が
検出した温度が第1の目標温度を下回った状態を所定の時間継続すると、冷媒がバイパス回路に流れるように前記流路切り替え装置を動作させるように冷媒の流れを切り替える制御を行うことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記室内温度検出手段が検出した温度が第2の目標温度を上回った場合には、前記切り替え装置を動作させないことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記流路切り替え装置を動作する制御が行われた後、前記流路切り替え装置を所定の時間動作させないことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記バイパス回路中には補助熱交換器を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記補助熱交換器は、前記圧縮機を囲むように配置され、前記圧縮機で発生した熱を蓄熱する蓄熱材と熱交換するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四方弁と圧縮機の吸入口との間に冷媒の流路切り替え装置を備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートポンプ式空気調和機による冷房運転時、室内温度が目標温度を下回った状態を所定時間継続すると、圧縮機の運転を停止し(以下、サーモオフ運転と呼ぶ)室内温度が下がりすぎるのを防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、冷房運転時において室内温度が目標温度を下回った状態を所定時間継続すると、圧縮機を停止させずに冷房運転を継続させつつ、快適な温度を維持する運転を行うことができ、サーモオフ時間の短縮を可能とし、冷房運転時における快適性を向上させる空気調和機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における空気調和機は、圧縮機と四方弁と室外熱交換器と膨張弁と室内熱交換器とを配管で接続して冷凍サイクルを構成した空気調和機であって、前記四方弁と前記圧縮機の冷媒吸入側の配管との間をバイパスするバイパス回路を具備し、前記バイパス回路中には減圧部を有し、前記バイパス回路の前記四方弁側の端部側は流路切り替え装置を介して前記冷凍サイクルと接続され、前記空気調和機は室内温度を検出する室内温度検出手段と目標温度を設定する目標温度設定手段とを有し、冷房運転時に前記室内温度検出手段が検出した温度が第1の目標温度を下回った状態を所定の時間継続すると、冷媒がバイパス回路に流れるように前記流路切り替え装置を動作させるように冷媒の流れを切り替える制御を行う。
【発明の効果】
【0006】
本開示における空気調和機は、流路切り替え装置で冷媒の流れを切り替えるようにし、バイパス回路に冷媒を流すことで、室内熱交換器の熱交換量を減少させることができ、サーモオフ時間に短縮ができるので、快適性を損なうことなく効率の良い運転を継続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1における空気調和機の冷凍サイクル構成図
【
図2】実施の形態1における通常の冷房動作時の冷媒の流れを示す図
【
図3】実施の形態1における冷房運転時に流路切り替え装置を動作し、冷媒の流れを切り替えた際の冷媒の流れを示す図
【
図4】実施の形態1における冷房運転時に流路切り替え装置を動作した際の冷房能力の変化を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1の発明は、圧縮機と四方弁と室外熱交換器と膨張弁と室内熱交換器とを配管で接続して冷凍サイクルを構成した空気調和機であって、前記四方弁と前記圧縮機の冷媒吸入側の配管との間をバイパスするバイパス回路を具備し、前記バイパス回路中には減圧部を有し
、前記バイパス回路の前記四方弁側の端部側は流路切り替え装置を介して前記冷凍サイクルと接続され、前記空気調和機は室内温度を検出する室内温度検出手段と目標温度を設定する目標温度設定手段とを有し、冷房運転時に前記室内温度検出手段が検出した温度が第1の目標温度を下回った状態を所定の時間継続すると、冷媒がバイパス回路に流れるように前記流路切り替え装置を動作させるように冷媒の流れを切り替える制御を行うようにしている。
【0009】
このように構成された空気調和機は、流路切り替え装置で冷媒の流れを切り替えるようにしたので、バイパス回路に冷媒を流すことで、室内熱交換器での熱交換量を減少させることができ、冷房能力を低減させることでサーモオフを少なくし、快適性を損なうことなく効率の良い運転を継続させることができる。
【0010】
第2の発明は、冷房運転時に前記室内温度検出手段が検出した温度が第2の目標温度(例えば、目標温度+1.5℃)を上回った際に、前記流路切り替え装置を動作させないよう構成されている。
【0011】
第3の発明は、前記流路切り替え装置を動作する制御が行われた後、前記流路切り替え装置の切替え動作を所定の時間(例えば、10分間)行わないことで、過度に流路切り替え装置が動作することなく流路切り替え装置の耐久性を確保できる。
【0012】
第4の発明は、前記バイパス回路内に補助熱交換器を有することを特徴とする。
【0013】
第5の発明は、前記補助熱交換器の熱源は、前記圧縮機を囲むように配置され、前記圧縮機で発生した熱を蓄熱する蓄熱材であることを特徴とする。
【0014】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態にかかる冷凍サイクル装置を備えた空気調和機の構成を示しており、空気調和機は冷媒配管で互いに接続された室外機2と室内機4とで構成されている。
【0016】
図1に示されるように、室外機2の内部には、圧縮機6と四方弁8と膨張弁10と室外熱交換器12とを有し、室内機4の内部には、室内熱交換器14を有し、これらは冷媒配管を介して環状に接続されることで冷凍サイクルを構成している。
【0017】
さらに詳述すると、圧縮機6と室外熱交換器12は、四方弁8が設けられた第1配管16を介して接続され、室外熱交換器12と膨張弁10は、第2配管18を介して接続されている。また、膨張弁10と室内熱交換器14は第3配管20を介して接続され、室内熱交換器14と圧縮機6は第4配管22および第5配管24を介して接続される。室内熱交換器14と圧縮機6を接続する第4配管22および第5配管24の間には四方弁8が配置されている。また、四方弁8と圧縮機6の間には第5配管24を介して流路切り替え装置26(例えば、三方弁)が接続されており、圧縮機6と第5配管24の間には、液相冷媒と気相冷媒を分離するためのアキュームレータ28が設けられている。また、流路切り替え装置26とアキュームレータ28を接続するバイパス回路である第6配管30には減圧部32が配置されている。
【0018】
室内機4の内部には、室内熱交換器14に加えて、送風ファン(図示せず)と上下羽根(図示せず)と左右羽根(図示せず)とが設けられている。室内熱交換器14は、送風ファンにより室内機4の内部に吸込まれた室内空気と、室内熱交換器14の内部を流れる冷媒
との間で熱交換を行う。室内熱交換器14における室内空気と冷媒との熱交換により、冷房時には熱交換により冷却された空気が室内に吹き出される一方、暖房時には熱交換により暖められた空気が室内に吹き出される。
【0019】
なお、圧縮機6、送風ファン、上下羽根、左右羽根、四方弁8、膨張弁10、流路切り替え装置26等は制御装置(例えばマイコン)に電気的に接続され、制御装置により制御されて動作を行う。
【0020】
上記構成の本実施の形態にかかる冷凍サイクル装置において、各部品の相互の接続関係と機能を冷房運転時を例にとり、冷媒の流れとともに説明する。
【0021】
圧縮機6の吐出口から吐出された冷媒は、四方弁8から第1配管16を通って室外熱交換器12へと至る。室外熱交換器12で室外空気と熱交換して凝縮した冷媒は、室外熱交換器12を出て第2配管18を通り、膨張弁10に至る。膨張弁10で減圧した冷媒は、第3配管20を通って室内熱交換器14に至る。室内熱交換器14で室内空気と熱交換して蒸発した冷媒は、第4配管22、四方弁8、流路切り替え装置26を通った後、第5配管24からアキュームレータ28を通って、圧縮機6の吸入口を介して圧縮機6へと戻る。
【0022】
流路切り替え装置26は、一方が四方弁8の吸入配管と接続され、もう一方が第5配管24に接続され、さらにもう一方が第6配管30に接続されている。前述した制御装置を用いて流路切り替え装置26の開閉を制御することにより、四方弁8から第5配管24を通じて圧縮機6の吸入口へ流れる冷媒の経路と、四方 弁8から第6配管30を通じて減圧部32を経て圧縮機6の吸入口へ流れる冷媒の経路とを、相互に切り替えることができる。
【0023】
次に、空気調和機の通常冷房時の動作及び冷媒の流れを、
図2の模式図を参照しながら説明する。図中、実線矢印は暖房に供する冷媒の流れを示している。
【0024】
通常冷房運転時には、四方弁8および流路切り替え装置26は第4配管22と第5配管24を連通させるように開閉制御される。この制御によれば、第6配管30や、減圧部32には冷媒が流れない。
【0025】
圧縮機6の吐出口から吐出された冷媒は、上述したように四方弁8から第1配管16を通って室外熱交換器12に至る。室外熱交換器12で室外空気と熱交換して凝縮した冷媒は、室外熱交換器12を出て、第2配管18を通り膨張弁10に至る。膨張弁10で減圧した冷媒は、第3配管20を通って室内熱交換器14に至る。室内熱交換器14で室内空気と熱交換して蒸発した冷媒は、第4配管22を通って四方弁8に至った後、流路切り替え装置26を通り、第5配管24を介して圧縮機6の吸入口へと戻る。
【0026】
次に、空気調和機の冷房時に流路切り替え装置26を動作した場合の動作及び冷媒の流れを、
図3の模式図を参照しながら説明する。図中、実線矢印は冷房に供する冷媒の流れを示している。
【0027】
上述した通常冷房運転中には、室内温度検出手段によって検出された温度が目標設定温度近傍になると、圧縮機6の回転数を低下させ、室内熱交換器14での熱交換量を減少させることで室内温度を均一に保つように制御が行われる。しかしながら、従来の機種では、熱交換量の下限値が圧縮機6の容積や許容回転数、室内熱交換器14のサイズに依存しており、熱交換量の下限値が室内の負荷よりも高い場合 があった。このような場合、従来の機種では、冷房運転を継続できず、サーモオフ運転に移行し、室内温度が下がりすぎるのを防止していた。
【0028】
そこで、上述した通常冷房運転時において室内温度が第1の目標温度を下回った状態を所定の時間継続すると、圧縮機6を停止させずに、流路切り替え装置26を動作させ、冷媒の流路の切り替えを行う。
【0029】
流路切り替え運転時には、四方弁8および流路切り替え装置26は第4配管22と第6配管30を連通させるように開閉制御される。この制御時には第5配管24には冷媒が流れない。
【0030】
すなわち、圧縮機6の吐出口から吐出された冷媒は、四方弁8を通り第1配管16を通って室外熱交換器12に至る。
室外熱交換器12で室外空気と熱交換して凝縮した冷媒は、室外熱交換器12を出て、第2配管18を通り膨張弁10に至る。
膨張弁10で減圧した冷媒は、第3配管20を通って室内熱交換器14に至る。
室内熱交換器14で室内空気と熱交換して蒸発した冷媒は、第4配管22を通って四方弁8に至った後、流路切り替え装置26を通り、第6配管30および減圧部32を通り、圧縮機6の吸入口へと戻る。
【0031】
このように減圧部32を冷媒が通ることで、従来に対し、同一の圧縮機6の容積、回転数であっても室内熱交換器14の温度を上昇させることができ、室内熱交換器14での熱交換量を減少させることができる。
【0032】
熱交換量を減少させることができるので、従来ではサーモオフ運転をしていた負荷の領域であっても、サーモオフ運転に入ることなく、冷房運転を継続させることによって、快適な温度を維持する運転を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、室内機が1つのシングル型の空気調和機にとどまらず、室内機が複数設けられたマルチ型の空気調和機等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
2 室外機
4 室内機
6 圧縮機
8 四方弁
10 膨張弁
12 室外熱交換器
14 室内熱交換器
16 第1配管
18 第2配管
20 第3配管
22 第4配管
24 第5配管
26 流路切り替え装置
28 アキュームレータ
30 第6配管
32 減圧部