(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】レーザ加工ヘッド及びこれを備えたレーザ加工システム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/064 20140101AFI20231208BHJP
B23K 26/066 20140101ALI20231208BHJP
【FI】
B23K26/064 A
B23K26/066
(21)【出願番号】P 2023510928
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2022012128
(87)【国際公開番号】W WO2022209930
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2021063722
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】大口 恒之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 渉
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/097018(WO,A1)
【文献】特開2001-18086(JP,A)
【文献】特開平10-296468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体の内部に配置された複数の光学部品とを有するレーザ加工ヘッドであって、
前記筐体には、
第1レーザ光が入射される第1光入射口と、
前記第1レーザ光と波長が異なる第2レーザ光が入射される第2光入射口と、
前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光を外部に出射する光照射口と、がそれぞれ設けられ、
前記複数の光学部品は、
前記第2レーザ光の光路中に設けられ、前記第2レーザ光を反射して光路を変更させるベンドミラーと、
前記第1レーザ光の光路中であってかつ前記ベンドミラーで反射された前記第2レーザ光の光路中に設けられたダイクロイックミラーと、
前記ダイクロイックミラーを透過した前記第2レーザ光の光路中であってかつ前記ダイクロイックミラーで反射された前記第1レーザ光の光路中に設けられたアパーチャーと、
前記アパーチャーを通過した前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の光路中に設けられた検出側集光レンズと、を少なくとも含み、
前記筐体の内部であって、前記検出側集光レンズを透過した前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光をそれぞれ受光可能な位置に光検出器が配置され、
前記ダイクロイックミラーは、
前記第1レーザ光の大部分を透過して前記光照射口に向かわせるとともに、前記第1レーザ光の残部を反射して前記アパーチャーに向かわせ、かつ
前記第2レーザ光の大部分を反射して前記光照射口に向かわせるとともに、前記第2レーザ光の残部を透過して前記アパーチャーに向かわせ、
前記アパーチャーは、前記検出側集光レンズに入射される前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の直径を縮小可能に構成されていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記筐体の内部には、
前記第1光入射口と前記ダイクロイックミラーとの間に第1コリメートレンズが、
前記第2光入射口と前記ベンドミラーとの間に第2コリメートレンズが、
前記ダイクロイックミラーと前記光照射口との間にワーク側集光レンズが、それぞれ設けられており、
前記第1コリメートレンズは、前記第1レーザ光を平行化して前記ダイクロイックミラーに入射させ、
前記第2コリメートレンズは、前記第2レーザ光を平行化して前記ベンドミラーに入射させ、
前記ワーク側集光レンズは、入射された前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光をそれぞれ所定の集光位置に集光させることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記光検出器は、
前記第1レーザ光の波長を含む第1波長帯の光を受光する複数の第1受光部と、
前記第2レーザ光の波長を含む第2波長帯の光を受光する複数の第2受光部と、を少なくとも有しており、
前記複数の第1受光部及び前記複数の第2受光部は、前記光検出器の受光面上にそれぞれ周期的に配列されていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記光検出器は、近赤外光または赤外光、赤色光、緑色光及び青色光をそれぞれ受光する4つの画素が、受光面上に周期的に配列されたイメージセンサであることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記ダイクロイックミラーと前記アパーチャーとの間か、または前記アパーチャーと前記検出側集光レンズの間に配置された減光フィルターをさらに備え、
前記減光フィルターは、少なくとも前記第1レーザ光と同じ波長の光を減光させることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のレーザ加工ヘッドと、
前記第1レーザ光を出射する第1レーザ発振器と、
前記第2レーザ光を出射する第2レーザ発振器と、
前記第1光入射口に接続され、前記第1レーザ発振器から出射された前記第1レーザ光を前記レーザ加工ヘッドに伝送する第1光ファイバと、
前記第2光入射口に接続され、前記第2レーザ発振器から出射された前記第2レーザ光を前記レーザ加工ヘッドに伝送する第2光ファイバと、を少なくとも備え、
前記レーザ加工ヘッドは、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の少なくとも一方をワークに向けて照射することを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項7】
請求項6に記載のレーザ加工システムにおいて、
前記レーザ加工ヘッドを移動可能に保持するマニピュレータをさらに備えたことを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項8】
請求項6または7に記載のレーザ加工システムにおいて、
前記光検出器で取得された前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の画像に基づいて、前記ワークの表面での前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の集光位置を調整可能に構成されたことを特徴とするレーザ加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工ヘッド、特に互いに波長の異なる2本のレーザ光を出射するレーザ加工ヘッド及びこれを備えたレーザ加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工システムは、ワークの切断、溶接、穴開け等のレーザ加工を行う。レーザ加工システムにおいて、レーザ加工ヘッドは、レーザ発振器から出射され、光ファイバを介して導かれたレーザ光を、ワークに照射する。レーザ加工ヘッドには、レーザ光を集光してワークに照射するための集光光学系が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1,2には、レーザ発振器から出射されたレーザ光を光ファイバで伝送し、複数の光学系を経由してワークに向けて照射するレーザ加工システムが開示されている。光ファイバから出射されたレーザ光は、コリメートレンズで平行光に変換された後、集光レンズで集光されて、ワークの表面に照射される。また、コリメートレンズ及び集光レンズは、レーザ光の光軸方向に移動可能に設けられている。コリメートレンズと集光レンズとを光軸方向へ移動させることによって、ワークの表面におけるレーザ光の直径を変換させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-226473号公報
【文献】特開2014-079802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、例えば近赤外と青色のような互いに波長の異なる2種類のレーザ光を用いたハイブリットレーザ加工システムが知られている。ハイブリットレーザ加工システムは、互いに波長の異なる2種類のレーザ光をレーザ加工ヘッドで同一光軸上に組み合わせて、当該組み合わされた2種類のレーザ光をそれぞれ集光してワークに照射する。ハイブリットレーザ加工システムは、各レーザ光の長所を活かしたり、短所を補完したりすることができるので、1種類のレーザ光のみを用いた従来のレーザ加工システムに比較して、多くの利点を有する。
【0006】
しかしながら、ハイブリットレーザ加工システムでは、互いに波長の異なる2種類のレーザ光について、集光位置やワークの表面におけるスポット径等の集光状態を調整する必要があるため、1種類のレーザ光のみを用いた従来のレーザ加工システムに比較して、レーザ光の集光状態の調整が難しかった。
【0007】
また、ハイブリットレーザ加工システムでは、2種類のレーザ光を扱うため、システムを構成する各部品の数が増加することが多い。特に、内部に複数の光学部品を有するレーザ加工ヘッドは、大型化するおそれがあった。
【0008】
本開示はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、互いに波長の異なる2種類のレーザ光についての集光状態を調整可能にしつつ、小型化が図れるレーザ加工ヘッド及びこれを備えたレーザ加工システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るレーザ加工ヘッドは、筐体と、前記筐体の内部に配置された複数の光学部品とを有するレーザ加工ヘッドであって、前記筐体には、第1レーザ光が入射される第1光入射口と、前記第1レーザ光と波長が異なる第2レーザ光が入射される第2光入射口と、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光を外部に出射する光照射口と、がそれぞれ設けられ、前記複数の光学部品は、前記第2レーザ光の光路中に設けられ、前記第2レーザ光を反射して光路を変更させるベンドミラーと、前記第1レーザ光の光路中であってかつ前記ベンドミラーで反射された前記第2レーザ光の光路中に設けられたダイクロイックミラーと、前記ダイクロイックミラーを透過した前記第2レーザ光の光路中であってかつ前記ダイクロイックミラーで反射された前記第1レーザ光の光路中に設けられたアパーチャーと、前記アパーチャーを通過した前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の光路中に設けられた検出側集光レンズと、を少なくとも含み、前記筐体の内部であって、前記検出側集光レンズを透過した前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光をそれぞれ受光可能な位置に光検出器が配置され、前記ダイクロイックミラーは、前記第1レーザ光の大部分を透過して前記光照射口に向かわせるとともに、前記第1レーザ光の残部を反射して前記アパーチャーに向かわせ、かつ前記第2レーザ光の大部分を反射して前記光照射口に向かわせるとともに、前記第2レーザ光の残部を透過して前記アパーチャーに向かわせ、前記アパーチャーは、前記検出側集光レンズに入射される前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の直径を縮小可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
本開示に係るレーザ加工システムは、前記レーザ加工ヘッドと、前記第1レーザ光を出射する第1レーザ発振器と、前記第2レーザ光を出射する第2レーザ発振器と、前記第1光入射口に接続され、前記第1レーザ発振器から出射された前記第1レーザ光を前記レーザ加工ヘッドに伝送する第1光ファイバと、前記第2光入射口に接続され、前記第2レーザ発振器から出射された前記第2レーザ光を前記レーザ加工ヘッドに伝送する第2光ファイバと、を少なくとも備え、前記レーザ加工ヘッドは、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の少なくとも一方をワークに向けて照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ハイブリットレーザ加工システムにおいて、互いに波長の異なる2種類のレーザ光についての集光状態を調整可能にすることができる。また、レーザ加工ヘッドの小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係るレーザ加工システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、レーザ加工ヘッドの内部構造を示す概略構成図である。
【
図3A】
図3Aは、アパーチャーによる第1レーザ光のビーム径の変化を示す模式図である。
【
図3B】
図3Bは、アパーチャーによる第2レーザ光のビーム径の変化を示す模式図である。
【
図4】
図4は、イメージセンサの画素構造を示す模式図である。
【
図5】
図5は、RGB画素の受光効率と波長との関係の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、別のイメージセンサの画素構造を示す模式図である。
【
図7A】
図7Aは、イメージセンサの受光面に集光された第1レーザ光及び第2レーザ光のスポットを示す画像の一例である。
【
図7B】
図7Bは、ワークの表面に集光された第1レーザ光及び第2レーザ光のスポットを示す画像の一例である。
【
図9】
図9は、変形例に係るレーザ加工ヘッドの内部構造の要部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0014】
(実施形態)
[レーザ加工システムの構成]
図1は、本実施形態に係るレーザ加工システム(レーザ加工装置)1を示す。レーザ加工システム1は、互いに波長の異なる2種類のレーザ光を用いたハイブリットレーザ加工システムであり、ワークWの切断、溶接、穴開け等のレーザ加工を行う。
【0015】
レーザ加工システム1は、レーザ加工ヘッド(レーザ照射ヘッド)10と、第1レーザ発振器2及び第2レーザ発振器3と、第1光ファイバ4及び第2光ファイバ5と、マニピュレータ6と、制御装置7と、を備える。
【0016】
第1レーザ発振器2は、第1レーザ光Aを出射する。第2レーザ発振器3は、第2レーザ光Bを出射する。第1レーザ光Aと第2レーザ光Bとは、互いに波長が異なる。第1レーザ光Aは、近赤外光であり、その波長が900nm~1200nm程度である。第2レーザ光Bは、青色光であり、その波長が400nm~450nm程度である。一般に、レーザ加工には近赤外光が適用されるが、銅への吸収率が良い等との理由から、近年、青色光もレーザ加工に適用されつつある。なお、第2レーザ光Bを緑色光(波長:450nm~550nm程度)としてもよい。
【0017】
第1光ファイバ4は、第1レーザ光Aを、第1レーザ発振器2からレーザ加工ヘッド10へ伝送する。第2光ファイバ5は、第2レーザ光Bを、第2レーザ発振器3からレーザ加工ヘッド10へ伝送する。
【0018】
レーザ加工ヘッド10は、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの少なくとも一方をワークWの表面W1に照射する。その場合、レーザ加工ヘッド10からワークWに向かう第1レーザ光Aの光軸と第2レーザ光Bの光軸とが同じになるようにする。例えば、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの両方が同時にワークWの表面W1に照射される場合、第1レーザ光Aの光軸と第2レーザ光Bの光軸とが重ね合わされた状態でワークWに照射される。レーザ加工ヘッド10の詳細については、後述する。
【0019】
マニピュレータ6は、先端にレーザ加工ヘッド10が取り付けられ、レーザ加工ヘッド10を移動させる。制御装置7は、マニピュレータ6の動作及び各レーザ発振器2,3によるレーザ光A,Bの発振を制御する。制御装置7は、レーザ加工ヘッド10の内部における後述するアクチュエータの動作を制御してもよい。
【0020】
[レーザ加工ヘッドの構成]
図2は、レーザ加工ヘッド10の内部構造を示す。なお、
図2におけるX,Y,Zは直交座標系における各方向を示し、X,Yが前後左右の水平方向、Zが上下方向(鉛直方向)である。また、各レーザ光A,Bの光軸(各レーザ光A,Bにおける光束の代表となる仮想的な光線)の延びる方向を、「光軸方向」という。光軸方向は、直交座標系X,Y,Zにおいて常に一定ではなく、各レーザ光A,Bの進行に応じて変化し得る。
【0021】
レーザ加工ヘッド10は、筐体11の内部に設けられた集光光学系によって、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bをそれぞれ集光してワークWに照射する。レーザ加工ヘッド10は、集光光学系として、第1コリメートレンズ20と、第2コリメートレンズ21と、ベンドミラー30と、ダイクロイックミラー40と、ワーク側集光レンズ50と、光検出器としてのイメージセンサ60と、検出側集光レンズ70と、アパーチャー71と、調整手段の一部としてのミラー側アクチュエータ80と、調整手段の一部としての第1レンズ側アクチュエータ81と、調整手段の一部としての第2レンズ側アクチュエータ82と、を備える。
【0022】
筐体11には、Z方向で上側に第1光入射口12aと第2光入射口12bとが設けられている。第1光入射口12aと第2光入射口12bとは所定の間隔をあけて設けられている。第1光ファイバ4は第1光入射口12aに接続され、第1レーザ光Aは第1光入射口12aを通して筐体11の内部に入射される。第2光ファイバ5は第2光入射口12bに接続され、第2レーザ光Bは第2光入射口12bを通して筐体11の内部に入射される。なお、第1光入射口12aと第2光入射口12bとを総称して、入射部12と呼ぶことがある。
【0023】
また、筐体11には、Z方向で下側に光照射口(照射部)13が設けられている。第1レーザ光A及び第2レーザ光Bは光照射口13に設けられた保護ガラス(図示せず)を通してワークWの表面W1に照射される。
【0024】
第1コリメートレンズ20は、第1レーザ光Aを平行光線に変換する。第2コリメートレンズ21は、第2レーザ光Bを平行光線に変換するなお、第1コリメートレンズ20及び第2コリメートレンズ21にそれぞれ入射するまで、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bは、互いに並行に、Z方向に直進する。
【0025】
ベンドミラー30は、第1レーザ光Aの光軸に並行な第2レーザ光Bの光軸を、第1レーザ光Aの光軸に交差する方向に、具体的には直交する方向(Y方向)に変更させる。
【0026】
ダイクロイックミラー40は、特定の波長領域の光の大部分を透過し、それ以外の波長領域の光の大部分を反射するミラーである。本実施形態では、ダイクロイックミラー40は、裏面41側から入射した第1レーザ光Aの大部分を表面42側に略真直ぐに透過するとともに、表面42側から入射した第2レーザ光Bの大部分を表面42側に略直角に反射する。一方、ダイクロイックミラー40は、裏面41側から入射した第1レーザ光Aの残部を裏面41側に略直角に反射するとともに、表面42側から入射した第2レーザ光Bの残部を裏面41側に略真直ぐに透過する。
【0027】
ダイクロイックミラー40を透過した第1レーザ光Aの大部分及びダイクロイックミラー40により反射した第2レーザ光Bの大部分の光軸方向進行側には、光照射口13が配置されている。すなわち、ダイクロイックミラー40は、第1レーザ光Aの大部分をワークW側に透過するとともに、第2レーザ光Bの大部分をワークW側に反射する。
【0028】
なお、各レーザ光A,Bの大部分とは、例えば、エネルギー換算で、ダイクロイックミラー40に入射する前の各レーザ光A,Bの95%~99.9%程度である。各レーザ光A,Bの残部とは、例えば、エネルギー換算で、ダイクロイックミラー40に入射する前の各レーザ光A,Bの0.1%~5%程度である。
【0029】
ワーク側集光レンズ50は、光軸方向において、ダイクロイックミラー40とワークWとの間に、配置されている。ワーク側集光レンズ50は、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bをそれぞれ集光する。集光した第1レーザ光A及び第2レーザ光Bは、光照射口13を介して、ワークWの表面W1にそれぞれ照射される。ワーク側集光レンズ50は、色収差補正機能を有してもよい。この場合、ワーク側集光レンズ50を透過した第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの集光位置は、Z方向において略一致する。
【0030】
イメージセンサ(光検出器)60は、その受光面61に結像させた光の明暗を電荷の量に光電変換し、それを読み出して電気信号に変換する撮像素子である。イメージセンサ60は、ダイクロイックミラー40の裏面41側に、配置されている。具体的には、イメージセンサ60は、ダイクロイックミラー40により反射した第1レーザ光Aの残部及びダイクロイックミラー40を透過した第2レーザ光Bの残部の光軸方向進行側に配置されている。すなわち、イメージセンサ60は、ダイクロイックミラー40により反射した第1レーザ光Aの残部及びダイクロイックミラー40を透過した第2レーザ光Bの残部のそれぞれを受光面61で受光する。
【0031】
アパーチャー71は、光軸方向において、ダイクロイックミラー40と検出側集光レンズ70との間に配置されている。後で詳しく述べるように、アパーチャー71は、検出側集光レンズ70に入射する第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの直径(以下、第1レーザ光Aのビーム径及び第2レーザ光Bのビーム径とそれぞれ呼ぶことがある。)を縮小可能に構成されている。
【0032】
検出側集光レンズ70は、光軸方向において、アパーチャー71とイメージセンサ60との間に配置されている。検出側集光レンズ70は、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bをそれぞれ集光する。そして、検出側集光レンズ70は、集光した第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれを、イメージセンサ60の受光面61に照射する。検出側集光レンズ70は、色収差補正機能を有してもよい。この場合、検出側集光レンズ70を透過した第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの集光位置は、Y方向において略一致する。
【0033】
ワークWの表面W1に照射される第1レーザ光Aの集光状態に対応するように、検出側集光レンズ70のサイズや曲率、また、検出側集光レンズ70とイメージセンサ60との距離が設定されている。つまり、イメージセンサ60の受光面61に照射される第1レーザ光Aの集光状態は、ワークWの表面W1に照射される第1レーザ光Aの集光状態に対応している。
【0034】
同様に、ワークWの表面W1に照射される第2レーザ光Bの集光状態に対応するように、検出側集光レンズ70のサイズや曲率、また、検出側集光レンズ70とイメージセンサ60との距離が設定されている。つまり、イメージセンサ60の受光面61に照射される第2レーザ光Bの集光状態は、ワークWの表面W1に照射される第2レーザ光Bの集光状態に対応している。
【0035】
例えば、イメージセンサ60の受光面61で第1レーザ光Aのスポット径(検出側第1スポット径Daj)が拡がれば、ワークWの表面W1に照射される第1レーザ光Aのスポット径(ワーク側第1スポット径Dai)も拡がる。イメージセンサ60の受光面61で第2レーザ光Bの集光位置がシフトすれば、ワークWの表面W1に照射される第2レーザ光Bの集光位置も同様にシフトする。なお、本実施形態において、「スポット径」とは、任意の像面(例えば、ワークWの表面W1やイメージセンサ60の受光面61)におけるレーザ光の直径を意味し、必ずしも、レーザ光の集光点における直径に限定されない。
【0036】
ミラー側アクチュエータ80は、ベンドミラー30の傾きを、変化させる。ミラー側アクチュエータ80は、例えば、チルト軸及び当該チルト軸を回転させるモータで構成されている。ミラー側アクチュエータ80によるベンドミラー30の傾き変化によって、ベンドミラー30により曲げられる第2レーザ光Bの光軸の向きが変化する。これにより、第2レーザ光Bの集光位置が変化する。
【0037】
第1レンズ側アクチュエータ81は、第1コリメートレンズ20を、光軸方向(Z方向)に移動させる。第1レンズ側アクチュエータ81は、例えば、リニアモータで構成されている。第2レンズ側アクチュエータ82は、第2コリメートレンズ21を、光軸方向(Z方向)に移動させる。第2レンズ側アクチュエータ82は、例えば、リニアモータで構成されている。各レンズ側アクチュエータ81,82による各コリメートレンズ20,21の光軸方向(Z方向)における移動によって、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの後述するスポット径がそれぞれ変化する。
【0038】
なお、各レンズ側アクチュエータ81,82によって各コリメートレンズ20,21を光軸方向(Z方向)に移動させる際、各コリメートレンズ20,21は、必ずしも光軸方向(Z方向)に真直ぐに移動するのではなく、光軸方向に直交する水平方向(X方向及びY方向)に多少動いたり、多少傾いたりすることがある。
【0039】
[アパーチャーによるビーム径の変更]
図3Aは、アパーチャーによる第1レーザ光のビーム径の変化を模式的に示し、
図3Bは、アパーチャーによる第2レーザ光のビーム径の変化を模式的に示す。
【0040】
アパーチャー71の最大開口径が第1レーザ光Aのビーム径φ1及び第2レーザ光Bのビーム径φ3のそれぞれよりも大きい場合、
図3Aの左側及び
図3Bの左側に示すように、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bは、それぞれもとのビーム径を維持した状態で検出側集光レンズ70に入射される。
【0041】
しかし、レーザ加工に使用される第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの出力は、通常、数百W~数kWと大きい。よって、それらの1%程度がイメージセンサ60に入射されるとしても、受光面61に照射されるレーザ光のパワーは、数W~数十Wに達する。この場合、出力が大きすぎて、イメージセンサ60で取得される画像がハレーション等の乱れを起こしたり、長期使用時にイメージセンサ60のカラーフィルター等が焼き付いたりすることがある。また、ビーム径φ1またはビーム径φ3が検出側集光レンズ70の有効集光径に収まるように、検出側集光レンズ70のサイズを設定する必要がある。ビーム径φ1またはビーム径φ3が所定以上に大きければ、検出側集光レンズ70が大型化してしまう。
【0042】
そこで、アパーチャー71の開口径を適切に絞ることにより、
図3Aの左側及び
図3Bの左側に示すように、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのビーム径をφ2(φ2<φ1、φ3)に縮小する。このようにすることで、検出側集光レンズ70に入射される第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの直径をそれぞれ縮小して、検出側集光レンズ70の有効集光径に収まるように調整できる。つまり、検出側集光レンズ70、ひいては、レーザ加工ヘッド10が大型化するのを抑制できる。
【0043】
また、アパーチャー71の開口径を絞ることで、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bにおいて、それぞれ余分な光束を遮断して、イメージセンサ60の受光面61に入射させることができる。このことにより、受光面61に入射される第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのパワーを低減して、前述した画像の乱れやカラーフィルター等の焼き付き等の不具合が発生するのを抑制できる。
【0044】
[イメージセンサの構成]
図4は、イメージセンサの画素構造を模式的に示す。
図5は、RGB画素の受光効率と波長との関係を示す。
図6は、別のイメージセンサの画素構造を模式的に示す。
【0045】
図4に示すように、イメージセンサ60は、近赤外光または赤外光を受光する画素(以下、N画素と呼ぶ。)、赤色光を受光する画素(以下、R画素と呼ぶ。)、緑色光を受光する画素(以下、G画素と呼ぶ。)、及び青色光を受光する画素(以下、B画素と呼ぶ。)の計4つの画素を一単位として配列されている。具体的には、公知のべイヤー配列に対して、一方のG画素がN画素に置換されたカラーフィルター配列となっている。
【0046】
図5に示すように、R画素は、波長帯が600nm~850nm程度の光を光電変換する量子効率が高くなっており、通常の赤色光(600nm~700nm程度)の光を効率良く電気信号に変換する。G画素は、波長帯が500nm~550nm程度の光を光電変換する量子効率が高くなっており、通常の緑色光(500nm~550nm程度)の光を効率良く電気信号に変換する。B画素は、波長帯が400nm~500nm程度の光を光電変換する量子効率が高くなっており、通常の青色光(420nm~480nm程度)の光を効率良く電気信号に変換する。なお、図示しないが、N画素は、波長帯が900nm~1200nm程度の光を光電変換する量子効率が高くなっており、近赤外光または赤外光(900nm~1200nm程度)の光を効率良く電気信号に変換する。
【0047】
前述したように、第1レーザ光Aの波長は900nm~1200nm程度であり、第2レーザ光Bの波長は400nm~450nm程度である。したがって、
図4に示すイメージセンサ60を用いることにより、検出側集光レンズ70を透過した第1レーザ光A及び第2レーザ光Bを確実に電気信号に変換できる。また、各画素のサイズを適切に設定することにより、受光面61での第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの2次元分布を把握できる。後で述べるように、当該2次元分布や受光面61での第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれのスポット径に基づいて、ワークWの表面W1での第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの集光位置やスポット径を修正することができる。
【0048】
なお、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bをそれぞれ確実に電気信号に変換するという観点で言えば、
図6に示すように、B画素とN画素の2種類のみを周期的に配列するようにしてもよい。また、第2レーザ光Bが緑色光である場合は、
図6において、B画素をG画素に置き換えてもよい。つまり、イメージセンサ60は、第1レーザ光Aの波長を含む第1波長帯、例えば、900nm~1200nmの光を受光する複数の第1受光部(N画素)を有している。また、イメージセンサ60は、第2レーザ光Bの波長を含む第2波長帯、例えば、400nm~600nmの光を受光する複数の第2受光部(B画素及び/またはG画素)を有している。複数の第1受光部と複数の第2受光部とが受光面61上にそれぞれ周期的に配列された画素構造を有していればよい。
【0049】
[集光状態のモニター及び調整]
実際にワークWをレーザ加工する場合、表面W1での第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの集光状態をモニターすることはできない。一方、本実施形態によれば、前述したように、イメージセンサ60の受光面61に照射される第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの集光状態は、ワークWの表面W1に照射される第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの集光状態に対応している。つまり、イメージセンサ60の受光面61に照射された第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのスポット画像(例えば、
図7A参照)に基づいて、ワークWの表面W1での集光状態をモニターすることができる。
【0050】
また、第1レーザ光Aの集光位置と第2レーザ光Bの集光位置とが2つのレーザ光の光軸ずれに起因してずれている場合、例えば、ミラー側アクチュエータ80を傾動させて、2つのレーザ光の集光位置を一致させることができる。また、例えば、イメージセンサ60の受光面61に照射された第1レーザ光Aのスポット画像がデフォーカスしている場合、第1レンズ側アクチュエータ81を駆動してデフォーカス状態を解消させる。このようにすることで、ワークWの表面W1で第1レーザ光Aが焦点を結ぶようにすることができる。同様に、イメージセンサ60の受光面61に照射された第2レーザ光Bのスポット画像がデフォーカスしている場合、第2レンズ側アクチュエータ82を駆動してデフォーカス状態を解消させる。このようにすることで、ワークWの表面W1で第2レーザ光Bが焦点を結ぶようにすることができる。
【0051】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係るレーザ加工ヘッド10は、筐体11と、筐体11の内部に配置された複数の光学部品とを有している。
【0052】
筐体11には、第1レーザ光Aが入射される第1光入射口12aと、第2レーザ光Bが入射される第2光入射口12bと、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bを外部に出射する光照射口13と、がそれぞれ設けられている。第2レーザ光Bは、第1レーザ光Aよりも波長が短い。
【0053】
複数の光学部品は、第2レーザ光Bの光路中に設けられ、第2レーザ光Bを反射して光路を変更させるベンドミラー30と、第1レーザ光Aの光路中であってかつベンドミラー30で反射された第2レーザ光Bの光路中に設けられたダイクロイックミラー40と、を少なくとも含んでいる。
【0054】
また、複数の光学部品は、ダイクロイックミラー40を透過した第2レーザ光Bの光路中であってかつダイクロイックミラー40で反射された第1レーザ光Aの光路中に設けられたアパーチャー71と、アパーチャー71を通過した第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの光路中に設けられた検出側集光レンズ70と、を含んでいる。
【0055】
筐体11の内部であって、検出側集光レンズ70を透過した第1レーザ光A及び第2レーザ光Bをそれぞれ受光可能な位置にイメージセンサ(光検出器)60が配置されている。
【0056】
ダイクロイックミラー40は、第1レーザ光Aの大部分を透過して光照射口13に向かわせるとともに、第1レーザ光Aの残部を反射してアパーチャー71に向かわせる。また、アパーチャー71は、第2レーザ光Bの大部分を反射して光照射口13に向かわせるとともに、第2レーザ光Bの残部を透過してアパーチャー71に向かわせる。
【0057】
アパーチャー71は、検出側集光レンズ70に入射される第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの直径をそれぞれ縮小可能に構成されている。
【0058】
アパーチャー71は、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの絞り治具であり、通常、光軸方向の厚さは薄くてよく、また、レーザ光の直径方向(
図2中のZ方向)のサイズも、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bがそれぞれ通過できる程度であればよい。一方、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bが有効径内に収まるように検出側集光レンズ70の直径を増加させた場合、曲率等も変化させる必要がある。
図2に示す例で言えば、Y方向の厚さが大幅に増加してしまうおそれがある。
【0059】
本実施形態によれば、アパーチャー71を設けることで、検出側集光レンズ70に入射される第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの直径をそれぞれ縮小して、検出側集光レンズ70、ひいては、レーザ加工ヘッド10が大型化するのを抑制できる。
【0060】
また、アパーチャー71の開口径を絞ることで、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bにおいて、それぞれ余分な光束を遮断して、イメージセンサ60の受光面61に入射させることができる。このことにより、受光面61に入射される第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのパワーを低減して、前述した画像の乱れやカラーフィルター等の焼き付き等の不具合が発生するのを抑制できる。このことについてさらに説明する。
【0061】
図7Aは、イメージセンサの受光面に集光された第1レーザ光及び第2レーザ光のスポット画像の一例を示し、
図7Bは、ワークの表面に集光された第1レーザ光及び第2レーザ光のスポット画像の一例を示す。また、
図8Aは、比較例に係る
図7A相当図を示し、
図8Bは、比較例に係る
図7B相当図を示す。なお、
図8A,8Bは、レーザ加工ヘッド10にアパーチャー71を設けていないか、またはアパーチャー71を動作させていない場合に対応している。
【0062】
レーザ加工ヘッド10の内部の各光学部品の配置関係を適切に設定することで、
図7B,8Bに示すように、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bが、ワークWの表面W1で一致または近接して集光される。また、第1レーザ光Aのワーク側第1スポットSaiと第2レーザ光Bのワーク側第2スポットSbiは、ともに加工に適したサイズになるように調整される。第1レーザ光Aのワーク側第1スポット径Dai及び第2レーザ光Bのワーク側第2スポット径Dbiは、ともに加工に適したサイズになるように調整される。
【0063】
しかし、レーザ加工ヘッド10にアパーチャー71を設けていない場合は、前述したように、イメージセンサ60の受光面61に入射される第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれのパワーが大きくなりすぎることがある。この場合、例えば、
図8Aに示すように、撮影画面上でハレーションが発生するとともに、第1レーザ光Aの検出側第1スポットSajと第2レーザ光Aの検出側第2スポットSbjとを明確に分離して識別することが困難となる。
【0064】
一方、本実施形態によれば、レーザ加工ヘッド10にアパーチャー71を設けることで、検出側集光レンズ70に入射される第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれのパワーと直径を適切に絞ることができる。この場合、例えば、
図7Aに示すように、ハレーション等の発生を無くし、画像の乱れを抑制できる。また、第1レーザ光Aの検出側第1スポットSajと第2レーザ光Aの検出側第2スポットSbjとを明確に分離して識別することができる。第1レーザ光Aの検出側第1スポット径Daj及び第2レーザ光Aの検出側第2スポット径Dbjをそれぞれ測定することができる。さらに、前述したようなカラーフィルター等の焼き付き等の不具合が発生するのを抑制できる。これらのことにより、イメージセンサ60で取得された第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの画像に基づいて、ワークWの表面W1での第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの集光位置を調整することができる。
【0065】
筐体11の内部には、Z方向において、第1光入射口12aとダイクロイックミラー40との間に第1コリメートレンズ20が設けられている。第2光入射口12bとベンドミラー30との間に第2コリメートレンズ21が設けられている。ダイクロイックミラー40と光照射口13との間にワーク側集光レンズ50が設けられている。
【0066】
第1コリメートレンズ20は、第1レーザ光Aを平行化してダイクロイックミラー40に入射させる。第2コリメートレンズ21は、第2レーザ光Bを平行化してベンドミラー30に入射させる。ワーク側集光レンズ50は、入射された第1レーザ光A及び第2レーザ光Bをそれぞれ所定の集光位置に集光させる。
【0067】
本実施形態によれば、以上の構成を備えることにより、光照射口13からワークWに向かう第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの光軸を略一致させることができる。また、ワークWの表面W1で第1レーザ光A及び第2レーザ光Bがそれぞれ焦点を結ぶようにすることができる。これらのことにより、ワークWの表面W1における第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの集光位置を略一致させることができる。
【0068】
イメージセンサ(光検出器)60は、第1レーザ光Aの波長を含む第1波長帯の光を受光する複数の第1受光部と、第2レーザ光Bの波長を含む第2波長帯の光を受光する複数の第2受光部と、を少なくとも有している。複数の第1受光部及び複数の第2受光部は、イメージセンサ60の受光面61上にそれぞれ周期的に配列されている。
【0069】
イメージセンサ60をこのように構成することで、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれのスポット画像を高い解像度で取得することができる。このことにより、ワークWの表面W1における第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの集光位置を精密に調整できる。
【0070】
イメージセンサ60は、近赤外光または赤外光、赤色光、緑色光及び青色光をそれぞれ受光する4つの画素が、受光面61上に周期的に配列された構造であることが好ましい。
【0071】
この画素構造は公知の構成であり、特殊な構造の光検出器を使用しないため、レーザ加工ヘッド10のコスト増加を抑制できる。また、イメージセンサ60の出力信号を公知の信号処理装置を用いて処理できるため、信号処理の負荷が増加するのを抑制できる。
【0072】
本実施形態に係るレーザ加工システム(レーザ加工装置)1は、レーザ加工ヘッド10と、第1レーザ光Aを出射する第1レーザ発振器2と、第2レーザ光Bを出射する第2レーザ発振器3と、を少なくとも備えている。
【0073】
また、レーザ加工システム1は、第1光入射口12aに接続され、第1レーザ発振器2から出射された第1レーザ光Aをレーザ加工ヘッド10に伝送する第1光ファイバ4と、第2光入射口12bに接続され、第2レーザ発振器3から出射された第2レーザ光Bをレーザ加工ヘッド10に伝送する第2光ファイバ5と、を備えている。
【0074】
レーザ加工ヘッド10は、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの少なくとも一方をワークWに向けて照射する。
【0075】
本実施形態によれば、ワークWの表面W1における第1レーザ光A及び第2レーザ光Bのそれぞれの集光位置を略一致させることができる。このことにより、第1レーザ光Aと第2レーザ光Bとを重ね合わせた状態でワークWをレーザ加工する場合、加工精度及び加工品質を向上させることができる。
【0076】
レーザ加工システム1は、レーザ加工ヘッド10を移動可能に保持するマニピュレータ6をさらに備えていてもよい。このようにすることで、複雑な構造のワークWに対してもレーザ加工を行うことが容易となる。
【0077】
レーザ加工システム1は、イメージセンサ60で取得された第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの画像に基づいて、ワークWの表面W1での第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの集光位置を調整可能に構成されている。このようにすることで、ワークWの表面W1での第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの集光位置を所望の位置にすることが容易となる。このことにより、レーザ加工時の加工精度及び加工品質を向上させることができる。
【0078】
<変形例>
図9は、本変形例に係るレーザ加工ヘッドの内部構造の要部を模式的に示す。
【0079】
図9に示す本変形例のレーザ加工ヘッド10は、アパーチャー71と検出側集光レンズ70との間に減光フィルター72が配置されている点で、
図2に示すレーザ加工ヘッドと異なる。
【0080】
前述したように、第1レーザ光Aや第2レーザ光Bの出力は数kWに達することがある。ダイクロイックミラー40における第1レーザ光Aや第2レーザ光Bの反射率(透過率)によっては、アパーチャー71で余分な光束を遮断したとしてもなお、イメージセンサ60の受光面61上で第1レーザ光Aや第2レーザ光Bのパワーが大きくなりすぎることがある。
【0081】
このような場合は、
図9に示すように減光フィルター72を設けることで、イメージセンサ60の受光面61に入射される第1レーザ光Aや第2レーザ光Bのパワーを低減できる。このことにより、イメージセンサ60の焼き付き等の不具合が発生するのを低減できる。また、長期使用時にも、第1レーザ光Aの検出側第1スポットSajや第2レーザ光Bの検出側第2スポットSbjの明瞭な画像を取得することができる。
【0082】
なお、減光フィルター72の特性は、第1レーザ光A及び第2レーザ光Bと同じ波長の光をそれぞれ、所定比率で減光させるように設定されている。一方、レーザ加工システム1において、第1レーザ光Aが、第2レーザ光Bに比べて大出力となるように設定されていることが多い。このため、減光フィルター72は、第1レーザ光Aと同じ波長の光のみを減光させてもよい。つまり、減光フィルター72は、少なくとも第1レーザ光Aと同じ波長の光を減光させるように構成されている。
【0083】
なお、
図9に破線で示すように、減光フィルター72は、ダイクロイックミラー40とアパーチャー71との間に配置されていてもよい。
【0084】
また、本変形例においても、ダイクロイックミラー40とイメージセンサ60との間にアパーチャー71を設けることで、検出側集光レンズ70に入射される第1レーザ光A及び第2レーザ光Bの直径をそれぞれ縮小できる。このことにより、検出側集光レンズ70、ひいては、レーザ加工ヘッド10が大型化するのを抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本開示は、互いに波長の異なるレーザ光を出射するレーザ加工ヘッド及びレーザ加工システムに適用できるので、有用である。
【符号の説明】
【0086】
F レーザ加工方向
W ワーク
W1 表面(像面)
A 第1レーザ光
Sai ワーク側第1スポット
Dai ワーク側第1スポット径
Saj 検出側第1スポット
Daj 検出側第1スポット径
B 第2レーザ光
Sbi ワーク側第2スポット
Dbi ワーク側第2スポット径
Sbj 検出側第2スポット
Dbj 検出側第2スポット径
1 レーザ加工システム
2 第1レーザ発振器
3 第2レーザ発振器
4 第1光ファイバ
5 第2光ファイバ
10 レーザ加工ヘッド
20 第1コリメートレンズ
21 第2コリメートレンズ
30 ベンドミラー
40 ダイクロイックミラー
50 ワーク側集光レンズ
60 イメージセンサ(光検出器)
61 受光面
70 検出側集光レンズ
71 アパーチャー
72 減光フィルター
80 ミラー側アクチュエータ(調整手段)
81 第1レンズ側アクチュエータ(調整手段)
82 第2レンズ側アクチュエータ(調整手段)