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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】温水装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/457 20220101AFI20231208BHJP
【FI】
F24H15/457
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019081100
(22)【出願日】2019-04-22
(65)【公開番号】P2020176801
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 由典
(72)【発明者】
【氏名】山根 将太
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-238226(JP,A)
【文献】特開2007-315685(JP,A)
【文献】特開2013-009033(JP,A)
【文献】特開2013-181725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
F24H 15/457
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信網を利用して所定の通信端末との間でデータ通信が可能な通信機能を有し、かつ前記通信端末からアクセスがあり、動作指令を受けたときには、この動作指令を実行する制御を行なうことが可能な制御手段と、
給湯経路における通水を検知可能な通水検知手段と、
を備えている、温水装置であって、
前記制御手段は、前記通信端末からアクセスがあった際に、前記通水検知手段により所定の流量以上の通水が検知されている場合には、前記通信端末からの動作指令に関するデータを記憶するとともに、前記動作指令の実行を一時的に保留し、かつその後に前記所定の流量以上の通水の検知がなされなくなった状態時において、前記動作指令を実行する制御を行なうように構成されており、
前記制御手段は、前記通信端末からアクセスがあった際に、前記通水検知手段により所定の流量以上の通水が検知されていない場合であっても、それ以前の所定の第2の時間内に前記所定の流量以上の通水が検知されている場合には、前記動作指令の実行を一時的に保留し、かつ前記所定の流量以上の通水の検知がなされない期間が、所定の第3の時間以上継続した時点で前記動作指令を実行する制御を行なうように構成され、
前記第3の時間の起算点は、前記制御手段が前記通信端末から前記動作指令を受けた時期であることを特徴とする、温水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温水装置であって、
前記制御手段に前記通信端末からアクセスがあった際に前記通水検知手段により前記所定の流量以上の通水が検知されて前記動作指令の実行一時的に保留された後において、前記動作指令が実行される時期は、前記所定の流量以上の通水の検知がなされない状態が所定の第1の時間以上継続した時点とされている、温水装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の温水装置であって、
前記制御手段は、前記動作指令を受けてからこの動作指令が実行される前に、この動作指令の内容を変更する次の新たな動作指令をさらに受けた場合には、その後、先の動作指令に代えて、前記新たな動作指令を実行する制御を行なうように構成されている、温水装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の温水装置であって、
前記制御手段は、前記動作指令が給湯温度の変更を伴う内容である場合には、前記動作指令を実行する際の給湯温度を、予め設定されている元の給湯温度から前記動作指令の給湯温度まで段階的に変化させる制御を行なうように構成されている、温水装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の温水装置であって、
前記制御手段は、所定の条件下において、前記通信端末から動作指令を受けたときには、前記通水検知手段によって前記所定の流量以上の通水が検知されているか否かには関係なく、前記通信端末からの動作指令に対応した動作を実行させる制御を行なうように構成されている、温水装置。
【請求項6】
請求項に記載の温水装置であって、
前記制御手段は、前記通信網として、広域通信網および構内通信網のそれぞれを利用して前記通信端末との間でデータ通信が可能とされており、
前記所定の条件下とは、前記制御手段と前記通信端末とのデータ通信が、前記広域通信網を利用せず、前記構内通信網を利用して行なわれている場合である、温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作可能な温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置などの温水装置の一例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載の温水装置は、携帯電話やスマートホンなどの通信端末を利用し、自宅に設置された温水装置を宅外から遠隔操作可能としている。ただし、この遠隔操作を無条件に許容した場合には不具合を生じる場合がある。たとえば、温水装置の運転スイッチをオフとし、自宅の混合栓(給湯端末)から水を出している場合、このことを知らない家族などのユーザが宅外において通信端末を操作し、温水装置の運転スイッチをオンにすることがあり得る。この場合、宅内のユーザが意図していないにも拘わらず、混合栓から出ている水は、温水装置よって加熱された湯水に切り替わってしまう。その湯水温度が高い場合には火傷を負う虞もある。
そこで、特許文献1においては、温水装置に湯水が流通し、その旨が所定の検知手段を利用して検知されている際には、通信端末を利用した遠隔操作による動作指令を無効としている。このような構成によれば、前記した虞を解消することが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、解決すべき課題あった。
【0004】
すなわち、前記従来技術においては、宅外から通信端末による遠隔操作を行なった場合に、温水装置に通水がなされていると、前記遠隔操作による動作指令が無効とされるため、温水装置を実際に遠隔操作するには、その後適当な時間が経過してから、通信端末を利用した遠隔操作を再度行なう必要がある。この場合、温水装置における通水状態がなおも継続していると、遠隔操作による動作指令は再度無効とされるため、その後に遠隔操作をさらに繰り返して行なう必要がある。したがって、このような繰り返し操作は面倒であり、ユーザにとって不便である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-115787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、通信端末を利用した遠隔操作がなされることによって温水装置の状態が不当に変更されることを適切に防止しながらも、利便性などにも優れたものとすることが可能な温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される温水装置は、通信網を利用して所定の通信端末との間でデータ通信が可能な通信機能を有し、かつ前記通信端末からアクセスがあり、動作指令を受けたときには、この動作指令を実行する制御を行なうことが可能な制御手段と、給湯経路における通水を検知可能な通水検知手段と、を備えている、温水装置であって、前記制御手段は、前記通信端末からアクセスがあった際に、前記通水検知手段により所定の流量以上の通水が検知されている場合には、前記通信端末からの動作指令に関するデータを記憶するとともに、前記動作指令の実行を一時的に保留し、かつその後に前記所定の流量以上の通水の検知がなされなくなった状態時において、前記動作指令を実行する制御を行なうように構成されており、前記制御手段は、前記通信端末からアクセスがあった際に、前記通水検知手段により所定の流量以上の通水が検知されていない場合であっても、それ以前の所定の第2の時間内に前記所定の流量以上の通水が検知されている場合には、前記動作指令の実行を一時的に保留し、かつ前記所定の流量以上の通水の検知がなされない期間が、所定の第3の時間以上継続した時点で前記動作指令を実行する制御を行なうように構成され、前記第3の時間の起算点は、前記制御手段が前記通信端末から前記動作指令を受けた時期であることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、温水装置に所定の流量以上の通水がなされているときには、所定の通信端末を用いた宅外からの遠隔操作により動作指令がなされたとしても、この動作指令は一時的に保留され、その時点では実行されない。このため、宅内のユーザが意図しないにも拘わらず、前記通水の温度が急変し、たとえば高温の湯水となって火傷するといった虞を生じないようにすることが可能である。
第2に、宅外から通信端末による遠隔操作を行なった場合に、温水装置に所定の流量以上の通水がなされている場合には、遠隔操作による動作指令は直ちには実行されないものの、その後に所定の流量以上の通水がなくなった状態時において、前記動作指令は実行される。したがって、前記従来技術とは異なり、所定の流量以上の通水が継続している期間中に、通信端末を複数回にわたって繰り返し操作して、その操作が無効とされることはなく、遠隔操作を1回行なうだけで、温水装置を所望の動作状態に設定することができ、前記従来技術よりも便利である。
第3に、通信端末からアクセスがあった際に、前記通水検知手段により所定の流量以上の通水が検知されていない場合であっても、それ以前の短時間のうちに所定の流量以上の通水がなされ、その後に温水装置に再度の通水がなされる可能性が高い場合には、遠隔操作による動作指令の実行は一時的に保留される。したがって、宅内のユーザが水を使用している際に、その温度が急変するといったことを徹底して防止する上で、より好ましいものとなる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記制御手段に前記通信端末からアクセスがあった際に前記通水検知手段により前記所定の流量以上の通水が検知されて前記動作指令の実行一時的に保留された後において、前記動作指令が実行される時期は、前記所定の流量以上の通水の検知がなされない状態が所定の第1の時間以上継続した時点とされている。
【0011】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、一般的に、温水装置に所定の流量以上の通水がなされている場合において、この通水が停止した場合、その後に再度、所定の流量以上の通水がなされる可能性は高い。これに対し、前記構成によれば、温水装置に所定の流量以上の通水がなされている場合において、この通水が停止した時点で直ちに遠隔操作による動作指令が実行されないようにしているため、動作指令が実行された直後に温水装置に所定の流量以上の通水がなされて、たとえば宅内のユーザが意図しない高温の湯水が供給されるといった不具合を生じないようにすることが可能である。前記構成によれば、温水装置における所定の流量以上の通水が、所定の第1の時間以上継続し、温水装置が運転されていない状態が安定したタイミングで遠隔操作による動作指令を適切に実行させることが可能である。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記制御手段は、前記動作指令を受けてからこの動作指令が実行される前に、この動作指令の内容を変更する次の新たな動作指令をさらに受けた場合には、その後、先の動作指令に代えて、前記新たな動作指令を実行する制御を行なう
ように構成されている。
【0015】
このような構成によれば、遠隔操作による動作指令の変更を適切に行なうことが可能であり、より便利である。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記制御手段は、前記動作指令が給湯温度の変更を伴う内容である場合には、前記動作指令を実行する際の給湯温度を、予め設定されている元の給湯温度から前記動作指令の給湯温度まで段階的に変化させる制御を行なうように構成されている。
【0017】
このような構成によれば、遠隔操作による動作指令が実行される際に、給湯温度が宅内のユーザが予期しない給湯温度に急変しないようにすることができる。たとえば、給湯温度が高温に急変した場合には、宅内のユーザが火傷を負う虞があるが、そのような虞をより適切に防止することが可能である。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記制御手段は、所定の条件下において、前記通信端末から動作指令を受けたときには、前記通水検知手段によって前記所定の流量以上の通水が検知されているか否かには関係なく、前記通信端末からの動作指令に対応した動作を実行させる制御を行なうように構成されている。
【0019】
このような構成によれば、所定の条件下においては、前記通信端末を温水装置の一般的なリモコン(所定の流量以上の通水があるか否かには関係なく温水装置を操作可能)として、またはこれに近いものとして用いることが可能となる。したがって、より便利なものとすることができる。
【0020】
本発明において、好ましくは、前記制御手段は、前記通信網として、広域通信網および構内通信網のそれぞれを利用して前記通信端末との間でデータ通信が可能とされており、前記所定の条件下とは、前記制御手段と前記通信端末とのデータ通信が、前記広域通信網を利用せず、前記構内通信網を利用して行なわれている場合である。
【0021】
このような構成によれば、宅外において広域通信網を利用することにより、本発明が意図する温水装置の遠隔操作を行なうことができる一方、宅内において構内通信網を利用した場合には、通信端末を一般的なリモコンと同様なものとして、またはこれに近いものとして用いることができる。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(a)は、本発明に係る温水装置およびこれに関連するシステムの概略構成の一例を模式的に示す説明図であり、(b)は、(a)に示す温水装置本体部の構成の一例を模式的に示す説明図である。
図2図1(a)に示す温水装置における動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3図1(a)に示す温水装置における動作処理手順の他の例を示すフローチャートである。
図4図1(a)に示す温水装置における動作処理手順の他の例を示すフローチャートである。
図5図1(a)に示す温水装置における動作処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1(a)に示す温水装WHは、給湯装置として構成されており、たとえば家屋の外壁などに設置される温水装置本体部Aと、これに通信接続された台所用および浴室用のリモコン2(2A,2B)とを備えている。温水装置本体部Aは、概略的には、通信部11、制御部10、および給湯動作部Bを備えている。
【0026】
温水装置WHには、広域通信網Naに回線終端装置(モデム)30を介して接続されたルータ31が付属して設置され、宅内には、構内通信網Nb(無線LANシステム)が構築されている。無線LANシステムは、たとえばWi-Fiネットワークシステムである。台所用および浴室用のリモコン2は、不図示の通信部を有し、無線LAN子機に相当しており、宅内においては、通信端末4との間でワイヤレスのデータ通信が可能とされ、また宅外においては、広域通信網Naを介して通信端末4との相互間でデータ通信が可能とされている。台所用および浴室用のリモコン2は、配線Laを介して温水装置本体部Aの通信部11と接続されており、温水装置WH(制御部10)は、台所用および浴室用のリモコン2の双方または一方を介して通信端末4との相互間でデータ通信が可能である。
広域通信網Na上には、温水装置WHの後述する動作制御のデータ通信を適宜中継し、また温水装置WHに後述する動作制御を実行可能させるためのプログラムデータを提供するサーバ90が設けられている。サーバ90は、たとえば温水装置WHのメーカ、あるいはサービス会社などが管理している。
【0027】
給湯動作部Bは、たとえば図1(b)に示すような構成であり、一般給湯機能、浴槽5への湯張り機能、風呂追い焚き機能などを備えている。一般給湯は、たとえば水道管から入水用内部配管部50の入水口50aに供給された非加熱の水が熱交換器51Aに送り込まれてバーナ6Aにより加熱され、かつこの加熱された湯水が出湯用内部配管部52の出湯口52aから出湯し、混合栓などの給湯端末56に供給される態様で行なわれる。浴槽5への湯張りは、出湯用内部配管部52に分岐接続された分岐接続配管部53の開閉弁V1が開状態とされることにより、出湯用内部配管部52を通過する湯水が、分岐接続配管部53を介して浴槽5に供給される態様で行なわれる。風呂追い焚きは、循環ポンプP1が駆動し、浴槽5の湯水が配管部54を介して熱交換器51Bに送り込まれてバーナ6Bにより加熱され、かつこの加熱された湯水が配管部55を介して浴槽5に戻される態様で行なわれる。
【0028】
入水用内部配管部50には、流量センサSa(本発明でいう通水検知手段の一例)が設けられている。給湯端末56が開状態とされて、この給湯端末56から水が流出し、入水用内部配管部50、熱交換器51A、および出湯用内部配管部52などに通水が生じている場合において、温水装置WHの後述する運転スイッチ20aがオンであり、かつ流量センサSaを利用して検出される通水量Qaが所定の流量以上であると、制御部10の制御によりバーナ6Aが駆動燃焼し、湯水加熱が行なわれる。一方、湯水加熱状態において、運転スイッチ20aがオフとされ、または前記通水量が所定の流量未満になると、バーナ6Aの駆動燃焼は停止し、湯水加熱は中断する。
【0029】
リモコン2は、たとえば給湯温度の設定変更、浴槽5への湯張り動作の開始・中止、あるいは風呂追い焚き動作の開始・中止など各種の条件設定や動作指令を、ユーザがスイッチ操作によって行なうためのものである。このリモコン2は、運転スイッチ20aを含む各種の操作スイッチ20に加え、液晶表示器などを用いた表示部21を備えている。運転スイッチ20aは、温水装置WHの給湯動作が可能な状態と不可能な状態とを切り替え設定するための操作スイッチである。
【0030】
制御部10は、マイクロコンピュータなどを用いて構成されており、温水装置WHの各部の動作制御やデータ処理制御を実行する。また、この制御部10は、既述したように、通信部11および無線LAN子機としての機能を有するリモコン2を介して、通信端末4との相互間において広域通信網Naおよび構内通信網Nbを利用したデータ通信が可能である。通信端末4から温水装置WH(制御部10)に対して所定の動作指令があったときには、この動作指令に従った動作が温水装置WHにおいて実行されるように制御する。その詳細については、後述する。
【0031】
通信端末4は、既述したように、たとえばスマートホンであるが、これに代えて、携帯電話機、あるいはタブレット型の通信機器を用いることも可能である。この通信端末4のハード構成は、既存のスマートホンなどと同様であって、通信部、制御部、表示部、操作部、およびスピーカなどを備えている。この通信端末4の制御部は、サーバ90から提供される特定のプログラムデータをダウンロードすることにより、温水装置WHとの相互間における後述するデータ通信を行なうことが可能である。
【0032】
次に、前記した温水装置WHにおける作用を説明する。併せて、温水装置WHにおける動作処理手順の具体例について、図2図5に示したフローチャートを参照しつつ説明する。
【0033】
まず、宅外のユーザが通信端末4を操作し、この通信端末4から温水装置WH(制御部10)にアクセスがなされて動作指令があり、これを制御部10が受信すると、制御部10は、流量センサSaからの検知信号に基づき、温水装置WHに所定の流量以上の通水があるか否かを判断する(S1:YES,S2)。給湯端末56が開状態にはなく、また浴槽5への湯張りが行なわれていない場合には、前記した通水はない。このような場合には、通信端末4からの動作指令が温水装置WHにおいて実行され、その旨が制御部10から通信端末4に返信される(S2:NO,S8,S9)。前記動作指令の具体例としては、たとえば運転スイッチ20aをオンとし、かつ浴槽5への湯張り動作が挙げられる。なお、通信端末4からの動作指令が温水装置WHにおいて実行された旨が通信端末4に返信されれば、通信端末4を操作したユーザに安心感を与えることが可能である。
【0034】
一方、前記とは異なり、通信端末4からの動作指令があった時点で、温水装置WHに所定の流量以上の通水がある場合には、前記動作指令に関するデータが制御部10に記憶されて、前記動作指令の実行が一時的に保留されるとともに、その旨が通信端末4に返信される(S2:YES,S3)。このため、たとえば運転スイッチ20aをオフとした上で、給湯端末56を開状態として非加熱の湯水を使用している際に、通信端末4を利用した宅外からの遠隔操作によって、運転スイッチ20aがオンとされることにより給湯端末56に高温の湯水が供給されるといった不具合は生じないこととなる。
【0035】
その後、所定の流量以上の通水がなくなり、しかもそのような状態が所定の第1の時間以上継続すると、その時点で前記動作指令が実行される(S4:YES,S5:YES,S6)。また、これに伴い、前記動作指令が実行された旨が通信端末4に返信される(S7)。このような動作処理手順によれば、宅外のユーザが通信端末4を繰り返し操作することなく、先の遠隔操作による動作指令が適切に実行されることとなり便利となる。
【0036】
通信端末4からの動作指令が一時的に保留されている最中において、通信端末4から動作指令の内容を変更する新たな動作指令があると、制御部10は、先の動作指令に代えて、新たな動作指令のデータを記憶し、その動作指令の実行を一時的に保留するとともに、その旨が通信端末4に返信される(S4:NO,S10:YES,S11)。一時的に保留された新たな動作指令は、温水装置WHにおいて所定の流量以上の通水が終了し、かつ
その状態が第1の時間以上継続した段階で実行される(S11,S4~S6)。このように、動作指令の変更も適切に行なわれる。
【0037】
本実施形態の温水装置WHにおいては、前記した動作処理手順に代えて、または加えて、次に述べるような動作処理手順が行なわれる構成とすることもできる。
【0038】
すなわち、図3に示す動作処理手順は、図2に示した動作処理手順と比較して、ステップS2a,S5aが相違しており、他のステップは、図2に示す内容と同一である。
先の図2に示した動作処理手順においては、ステップS2において、温水装置WHに所定の流量以上の通水がないと判断された場合に、通信端末4からの動作指令が直ちに実行されているが、図3に示す動作処理手順では、温水装置WHに所定の流量以上の通水がないと判断された場合には、ステップS2aにおいて、直近の所定の第2の時間内に所定の流量以上の通水があるか否かが判断される。この判断において、第2の時間内に前記通水がなければ、動作指令が直ちに実行されるが(S2a:NO,S8)、そうでない場合には動作指令に関するデータが記憶され、動作指令が一時的に保留されるなどの処理がなされる(S2a:YES,S3)。
【0039】
ステップS2において、温水装置WHに前記通水がない場合であっても、直近に通水がなされている場合には、そうでない場合と比較すると、その後の短時間内に再度の通水がなされる可能性が高いと考えられる。このような場合、図3に示す実施形態によれば、遠隔操作による動作指令が一時的に保留され、通水がない状態が所定の第3の時間以上継続した時点で動作指令が実行される(S3,S4:YES,S5a:YES,S6)。したがって、たとえば宅内のユーザが非加熱の湯水を使用している際に、その湯水が加熱された高温の湯水に急変するといったことをより確実に防止することが可能となる。
なお、第3の時間は、前記第1の時間と同一長さでよいが、これとは異なる長さとすることもできる。また、第3の時間の起算点は、直近に生じていた通水が終了した時期、または遠隔操作による動作指令を受けた時期のいずれであってもよい。
【0040】
図4に示す動作処理手順においては、通信端末4からの動作指令を実行する際に、温水装置WHに既に設定されている給湯温度(目標給湯温度)とは異なる給湯温度への温度変更を伴う場合には、元の給湯温度から動作指令の給湯温度まで適当な温度ずつ段階的に給湯温度が変更される(S20:YES,S21:YES,S22)。
このような構成によれば、温水装置WHにおいて供給される湯水の温度が急変することを抑制し、たとえば宅内のユーザが火傷を負う虞を適切に回避することが可能である。
なお、ステップS22において、給湯温度を段階的に変更することに代えて、給湯温度を無段階で変更することもできる。
【0041】
図5に示す動作処理手順においては、温水装置WHが通信端末4からアクセスされて動作指令を受けた場合に、そのアクセスが広域通信網Naを利用したアクセスか否かが制御部10によって判断される(S30:YES,S31)。宅外からのアクセスは、広域通信網Naを利用したものとなり、その旨はデータ通信方式などによって容易に判別することが可能である。前記判断において、広域通信網Naを利用したアクセスであると判断された場合には、前述した通信端末4による遠隔操作の場合と同様な動作処理がなされる。すなわち、温水装置WHに所定の流量以上の通水があれば、前記動作指令に関するデータが制御部10に記憶されて、動作指令の実行は一時的に保留され、またそうでない場合には動作指令が直ちに実行される(S31:YES,S32)。
【0042】
一方、前記とは異なり、通信端末4が宅内で使用され、構内通信網Nbのみを利用して温水装置WHにアクセスされた場合には、その時点で温水装置WHに所定の流量以上の通水があるか否かには関係なく、通信端末4からの動作指令が実行される(S31:NO,
S33)。
【0043】
前記したような動作処理手順によれば、通信端末4を宅外で使用して温水装置WHを遠隔操作する際には、給湯温度が急変するといった不具合を適切に解消し得る一方、通信端末4を宅内で用いる場合には、この通信端末4をリモコン2と同様に扱うことが可能となり、便利である。
なお、図5に示す実施形態においては、通信端末4から温水装置WHへのアクセスが広域通信網Naを利用したか否かに応じて、通信端末4をリモコン2と同様に扱えるようにするか否かが切り替えられているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ユーザが通信端末4を操作して特定の状態に設定した場合には、通信端末4と温水装置WHとのデータ通信がどのような通信網を利用しているか否かには関係なく、リモコン2と同様に扱えるように構成することもできる。
【0044】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0045】
上述の実施形態においては、通信端末からアクセスがあった際に、通水検知手段により所定の流量以上の通水が検知され、動作指令の実行が保留されている場合に、その後所定の流量以上の通水の検知がなされない状態が所定の第1の時間以上継続した時点で動作指令が実行されるように構成されているが、本発明はこれに限定されない。本発明においては、動作指令の実行が保留されている場合に、その後所定の流量以上の通水の検知がなされなくなった時点で動作指令が直ちに実行される構成とすることもできる。
本発明でいう第1ないし第3の時間のそれぞれの具体的な値は限定されない。また、これら第1ないし第3の時間は、たとえばリモコン2を操作することにより、ユーザが任意に変更できるように構成することもできる。
また、本発明でいう「所定の流量」の具体的な値も限定されない。
【0046】
本発明でいう制御手段は、温水装置本体部Aの制御部10に代えて、または加えて、リモコン2に具備された制御部とすることも可能である。
通信端末からの遠隔操作による動作指令の具体例としては、運転スイッチのオン・オフ切り替え、浴槽への湯張り、および風呂追い焚きなどが挙げられるが、これらに限定されず、またこれら以外の内容とすることも可能である。
本発明に係る温水装置は、温水を生成する機能を備えたものを意味しており、いわゆる瞬間式の給湯装置に限定されず、たとえば貯湯式の給湯装置なども含む。
本発明でいう通信端末の具体的な種類なども限定されない。
【符号の説明】
【0047】
WH 温水装置
Na 広域通信網
Nb 構内通信網
Sa 流量センサ(通水検知手段)
10 制御部(制御手段)
2(2A,2B) リモコン
4 通信端末
図1
図2
図3
図4
図5