(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/509 20060101AFI20231208BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20231208BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
C23C16/509
H05H1/46 L
H01L21/31 C
(21)【出願番号】P 2019231167
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】東 大介
(72)【発明者】
【氏名】安東 靖典
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-207142(JP,A)
【文献】特開2019-046658(JP,A)
【文献】国際公開第2010/013746(WO,A1)
【文献】特開2013-125761(JP,A)
【文献】特開2012-038682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/509
H05H 1/46
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内に配置されたアンテナに高周波電流を流すことによって前記真空容器内に誘導結合型プラズマを生成し、当該誘導結合型プラズマを用いて基板を処理するプラズマ処理装置であって、
第1ガスが流れる第1ガス流路を有し、前記第1ガスを前記誘導結合型プラズマに導入する第1ガス導入部材と、
前記第1ガス導入部材に負の電圧を印加する電源とを備え、
前記第1ガス導入部材が、
前記第1ガスが導入される導入口と、
前記導入口よりも大きく、前記第1ガスを導出する導出口とを有し、
前記第1ガス流路が、
前記導入口に接続された上流側流路と、
前記上流側流路よりも流路断面が大きく、前記導出口に接続された下流側流路とを有し、
前記下流側流路が、前記負の電圧により、電子を前記第1ガス流路内に閉じ込めるホローカソードとして機能することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記下流側流路は、円筒形状をなし、直径が3mm以上40mm以下、軸方向長さが前記直径の1倍以上1.5倍以下である、請求項
1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記第1ガスとは別の第2ガスが流れる第2ガス流路を有し、前記第2ガスを前記誘導結合型プラズマに導入する第2ガス導入部材とをさらに備え、
前記第1ガスが、前記第2ガスよりも結合の強いガスである、請求項1
又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第1ガス導入部材が、複数の前記第1ガス流路を有する長尺状のものであり、
前記第2ガス導入部材が、複数の前記第2ガス流路を有する長尺状のものであり、
複数の前記第1ガス導入部材及び複数の前記第2ガス導入部材が、前記アンテナの長手方向に沿って、又は、前記アンテナの長手方向と直交する方向に沿って交互に設けられている、請求項
3記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第1ガスが、N
2、O
2、HF
X、SiF
X、SF
X、又はCF
Xの少なくとも1つである、請求項1乃至
4のうち何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置としては、特許文献1に示すように、誘導結合型のプラズマ(略称ICP)を発生させて、この誘導結合型のプラズマを用いて基板に処理を施すものがある。
【0003】
具体的にこのプラズマ処理装置は、基板が収容される真空容器と、真空容器内において基板に対向するように設けられたアンテナとを備え、真空容器内に成膜用ガスを供給するとともに、アンテナに高周波電流を流して誘導結合型のプラズマを発生させることで、基板に成膜等の処理を施すように構成されている。
【0004】
ところが、成膜用ガスとして例えばN2ガスなどの結合が強いものを用いる場合、ガスを十分に分解することができないことがあり、結合の弱いガスとを併用する場合には、例えば結合が弱いガスの分解が進みやすいことなどに起因して、所望の膜質を得られないといった問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、成膜用ガスが結合の強いガスであっても十分に分解できるようにすることを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係るプラズマ処理装置は、真空容器内に配置されたアンテナに高周波電流を流すことによって前記真空容器内に誘導結合型プラズマを生成し、当該誘導結合型プラズマを用いて基板を処理するプラズマ処理装置であって、第1ガスが流れる第1ガス流路を有し、前記第1ガスを前記誘導結合型プラズマに導入する第1ガス導入部材と、前記第1ガス導入部材に負の電圧を印加する電源とを備え、前記第1ガス導入部材が、前記負の電圧により、電子を前記第1ガス流路内に閉じ込めるホローカソードとして機能することを特徴とするものである。
【0008】
このように構成されたプラズマ処理装置によれば、第1ガス導入部材がホローカソードとして機能するので、第1ガスが結合の強いガスであっても、第1ガス流路に閉じ込められた電子によって第1ガスを十分に分解させることができる。
【0009】
ホローカソードとしての機能を発揮させるための具体的な構成としては、前記第1ガス導入部材が、前記第1ガスが導入される導入口と、前記導入口よりも大きく、前記第1ガスを導出する導出口とを有し、前記第1ガス流路が、前記導入口に接続された上流側流路と、前記上流側流路よりも流路断面が大きく、前記導出口に接続された下流側流路とを有する構成を挙げることができる。
このような構成であれば、上流側流路よりも下流側流路の流路断面を大きくしているので、この下流側流路に電子を閉じ込めることができ、この下流側流路を通過する際に第1ガスを十分に分解させることができる。
【0010】
より具体的な実施態様としては、前記下流側流路は、円筒形状をなし、直径が3mm以上40mm以下、軸方向長さが前記直径の1倍以上1.5倍以下である態様を挙げることができる。
【0011】
前記第1ガスとは別の第2ガスが流れる第2ガス流路を有し、前記第2ガスを前記誘導結合型プラズマに導入する第2ガス導入部材をさらに備え、前記第1ガスが、前記第2ガスよりも結合の強いガスであることが好ましい。
このような構成であれば、複数種類の成膜用ガスを用いて成膜する構成において、結合の強いガス(第1ガス)を十分に分解させたうえで成膜処理をすることができる。
【0012】
複数種類の成膜用ガスを用いて均質な膜を成膜できるようにするためには、前記第1ガス導入部材が、複数の前記第1ガス流路を有する長尺状のものであり、前記第2ガス導入部材が、複数の前記第2ガス流路を有する長尺状のものであり、複数の前記第1ガス導入部材及び複数の前記第2ガス導入部材が、前記アンテナの長手方向に沿って、又は、前記アンテナの長手方向と直交する方向に沿って交互に設けられていることが好ましい。
【0013】
本発明の作用効果がより顕著に発揮される態様としては、前記第1ガスが、N2、O2、HFX、SiFX、SFX、又はCFXの少なくとも1つである場合を挙げることができる。
【発明の効果】
【0014】
このように構成した本発明によれば、成膜用ガスが結合の強いガスであっても十分に分解させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態のプラズマ処理装置を上方から視た構成を示す模式図。
【
図2】同実施形態のプラズマ処理装置の内部構成を示すA-A’線断面図。
【
図3】同実施形態のプラズマ処理装置の内部構成を示すB-B’線断面図。
【
図4】変形実施形態のプラズマ処理装置の内部構成を示すB-B’線断面図。
【
図5】変形実施形態のプラズマ処理装置の内部構成を示すB-B’線断面図。
【
図6】変形実施形態のプラズマ処理装置を上方から視た構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るプラズマ処理装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
<装置構成>
本実施形態のプラズマ処理装置100は、
図1及び
図2に示すように、誘導結合型プラズマPを用いて基板Wに処理を施すものである。ここで、基板Wは、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等である。また、基板Wに施す処理は、例えば、プラズマCVD法による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等である。
【0018】
なお、このプラズマ処理装置100は、プラズマCVD法によって膜形成を行う場合はプラズマCVD装置、エッチングを行う場合はプラズマエッチング装置、アッシングを行う場合はプラズマアッシング装置、スパッタリングを行う場合はプラズマスパッタリング装置とも呼ばれる。
【0019】
具体的にプラズマ処理装置100は、
図1及び
図2に示すように、真空排気される真空容器2と、真空容器2内に配置された直線状のアンテナ3と、真空容器2内に誘導結合型のプラズマPを生成するための高周波をアンテナ3に印加する高周波電源4とを備えている。なお、アンテナ3に高周波電源4から高周波を印加することによりアンテナ3には高周波電流IRが流れて、真空容器2内に誘導電界が発生して誘導結合型プラズマP(以下では、単にプラズマPともいう)が生成される。
【0020】
真空容器2は、
図2に示すように、例えば金属製の容器であり、その内部は真空排気装置6によって真空排気される。真空容器2はこの例では電気的に接地されている。
【0021】
真空容器2内には、基板Wを保持する基板ホルダ8が設けられている。この例のように、基板ホルダ8にバイアス電源9からバイアス電圧を印加するようにしても良い。バイアス電圧は、例えば負の直流電圧、負のバイアス電圧等であるが、これに限られるものではない。このようなバイアス電圧によって、例えば、プラズマP中の正イオンが基板Wに入射する時のエネルギーを制御して、基板Wの表面に形成される膜の結晶化度の制御等を行うことができる。基板ホルダ8内に、基板Wを加熱するヒータ(不図示)を設けておいても良い。
【0022】
アンテナ3は、真空容器2内における基板Wの上方に、基板Wの表面に沿うように(例えば、基板Wの表面と実質的に平行に)配置されている。なお、アンテナ3の数は、特に限定されず、1本でも良いし、複数本のアンテナ3を互いに平行に配設しても良い。
【0023】
アンテナ3の両端部付近は、
図2に示すように、真空容器2の相対向する一対の側壁2a、2bをそれぞれ貫通している。アンテナ3の両端部を真空容器2外へ貫通させる部分には、絶縁部材11がそれぞれ設けられている。この各絶縁部材11を、アンテナ3の両端部が貫通しており、その貫通部は例えばパッキンによって真空シールされている。この絶縁部材11を介してアンテナ3は、真空容器2の相対向する側壁2a、2bに対して電気的に絶縁された状態で支持される。なお、絶縁部材11の材質は、例えば、アルミナ等のセラミックス、石英、又はポリフェニンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のエンジニアリングプラスチック等である。
【0024】
また、各アンテナ3の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス等であるが、これに限られるものではない。なお、アンテナ3を中空にして、その中に冷却水等の冷媒を流し、アンテナ3を冷却するようにしても良い。
【0025】
さらに、アンテナ3において、真空容器2内に位置する部分は、直管状の絶縁カバー10により覆われている。この絶縁カバー10の両端部は絶縁部材11によって支持されている。なお、絶縁カバー10の材質は、例えば、石英、アルミナ、フッ素樹脂、窒化シリコン、炭化シリコン、シリコン等である。
【0026】
絶縁カバー10を設けることによって、プラズマP中の荷電粒子がアンテナ3に入射するのを抑制することができるので、アンテナ3に荷電粒子(主として電子)が入射することによるプラズマ電位の上昇を抑制することができると共に、アンテナ3が荷電粒子(主としてイオン)によってスパッタされてプラズマPおよび基板Wに対して金属汚染(メタルコンタミネーション)が生じるのを抑制することができる。
【0027】
各アンテナ3は、
図1に示すように、アンテナ方向(長手方向X)において高周波が給電される給電端部3aと、接地された接地端部3bとを有している。具体的には、各アンテナ3の長手方向Xの両端部において一方の側壁2a又は2bから外部に延出した部分が給電端部3aとなり、他方の側壁2a又は2bから外部に延出した部分が接地端部3bとなる。
【0028】
ここで、各アンテナ3の給電端部3aには、高周波電源4から整合器41を介して高周波が印加される。高周波の周波数は、例えば、一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではない。
【0029】
更にこのプラズマ処理装置100は、
図1及び
図2に示すように、真空容器2内において、アンテナ3に対して基板Wとは反対側の対向壁2c(以下、上壁2cともいう)に、真空容器2内に成膜用ガスを供給するためのガス供給ポート2xが設けられている。
【0030】
本実施形態のプラズマ処理装置100は、複数種類の成膜用ガスを用いて基板Wに成膜する場合に特に資するものであり、複数種類の成膜用ガスを別個に(独立して)真空容器2内に供給できるようにするべく、
図1に示すように、複数のガス供給ポート2x(1)、2x(2)を設けてある。
【0031】
以下では、結合の強さが互いに異なる2種類の成膜用ガスを用いる場合について説明する。
より具体的には、一方の成膜用ガス(以下、第1ガスともいう)は、他方の成膜用ガス(以下、第2ガスともいう)よりも結合が強いガスであり、第1ガスとしては、例えばN2、O2、HFX、SiFX、SFX、又はCFXなどを挙げることができ、第2ガスとしては、例えばSiH4、H2、NH3、N2O、NF3、又はArなどを挙げることができる。なお、xは1以上の自然数である。
【0032】
ここで、本実施形態のプラズマ処理装置100は、第1ガスの導入に特徴があるので、まずは第2ガスを導入するための構成について説明し、その後に第1ガスを導入するための構成について説明する。
【0033】
プラズマ処理装置100は、
図2に示すように、第2ガス用のガス供給ポート2x(2)から供給された第2ガスを誘導結合型プラズマPに導入する第2ガス導入部材5を備えている。
【0034】
より具体的に説明すると、本実施形態の真空容器2内には、第2ガス用のガス供給ポート2x(2)に連通して第2ガスが充満する第2ガス空間5Sが設けられており、この第2ガス空間5Sに充満した第2ガスが第2ガス導入部材5を介して誘導結合型プラズマPに導入される。
【0035】
第2ガス導入部材5は、真空容器2内に配置されて、誘導結合型プラズマPが生成されるプラズマ生成空間PSと、上述した第2ガス空間5Sとを隔てるものである。かかる第2ガス導入部材5としては、例えば真空容器2と一体的に構成された金属製のものを挙げることができる。ただし、第2ガス導入部材5は、真空容器2とは別体であっても良いし、材質は金属に限定されるものではない。
【0036】
具体的に第2ガス導入部材5は、第2ガス空間5Sに向かって開口し第2ガスが導入される第2ガス導入口5aと、プラズマ生成空間PSに向かって開口し第2ガスを導出する第2ガス導出口5bと、第2ガス導入口5a及び第2ガス導出口5bを連通する第2ガス流路5cとを有する。
【0037】
本実施形態の第2ガス導入部材5は、長尺状の例えば平板部材であり、ここではアンテナ3に沿って、すなわちアンテナ3の長手方向と略平行に配置されている。
【0038】
この第2ガス導入部材5は、その上面に複数の第2ガス導入口5aが形成されるとともに、その下面に各第2ガス導入口5aに対応させて複数の第2ガス導出口5bが形成されている。すなわち、本実施形態の第2ガス導入部材5は、複数の第2ガス流路5cを有するものであり、これらの第2ガス流路5cは、この実施形態では互いに同じ形状に形成されている。
【0039】
具体的に第2ガス流路5cは、流路断面が第2ガス導入口5aから第2ガス導出口5bに亘って等断面な形状をなすものであり、例えば直径が0.1mm以上1.5mm以下の円柱状をなす。なお、本明細書における流路断面とは、流路の流れ方向と直交する断面、すなわち流路の横断面である。
【0040】
然して、本実施形態のプラズマ処理装置100は、
図3に示すように、第1ガス用のガス供給ポート2x(1)から供給された第1ガスを誘導結合型プラズマPに導入する第1ガス導入部材7と、第1ガス導入部材7に負の電圧を印加する電源Vとをさらに備えてなり、第1ガス導入部材7が、上述した電源Vから負の電圧を印加されることにより、電子を閉じ込めるホローカソードとして機能するように構成されている。
【0041】
より具体的に説明すると、本実施形態の真空容器2内には、第1ガス用のガス供給ポート2x(1)に連通して第1ガスが充満する第1ガス空間7Sが設けられており、この第1ガス空間7Sに充満した第1ガスが第1ガス導入部材7を介して誘導結合型プラズマPに導入される。なお、ここでは第1ガス用のガス供給ポート2x(1)は、第2ガス用のガス供給ポート2x(2)よりも大きい。
【0042】
第1ガス導入部材7は、真空容器2内に配置されて、誘導結合型プラズマPが生成されるプラズマ生成空間PSと、上述した第1ガス空間7Sとを隔てるものである。
【0043】
この第1ガス導入部材7は、真空容器2とは絶縁部材Zを介して絶縁された金属製のものである。
【0044】
具体的に第1ガス導入部材7は、第1ガス空間7Sに向かって開口し第1ガスが導入される第1ガス導入口7aと、プラズマ生成空間PSに向かって開口し第1ガスを導出する第1ガス導出口7bと、第1ガス導入口7a及び第1ガス導出口7bを連通する第1ガス流路7cとを有する。
【0045】
本実施形態の第1ガス導入部材7は、長尺状の例えば平板部材であり、ここではアンテナ3に沿って、すなわちアンテナ3の長手方向と略平行に配置されている。この実施形態では、第1ガス導入部材7及び第2ガス導入部材5が、アンテナ3の長手方向と直交する方向に沿って交互に設けられている(
図1参照)。
【0046】
この第1ガス導入部材7は、その上面に複数の第1ガス導入口7aが形成されるとともに、その下面に各第1ガス導入口7aに対応させて複数の第1ガス導出口7bが形成されている。すなわち、本実施形態の第1ガス導入部材7は、複数の第1ガス流路7cを有するものであり、これらの第1ガス流路7cは、この実施形態では互いに同じ形状に形成されている。
【0047】
ここで、第1ガス導出口7bは、第1ガス導入口7aよりも大きく形成されており、第1ガス流路7cは、第1ガス導入口7aに接続された上流側流路7c1と、第1ガス導出口7bに接続されるとともに、上流側流路7c1よりも流路断面が大きい下流側流路7c2とを有する。すなわち、第1ガス流路7cは、アンテナ3に向かって開口する窪み部(凹部)が形成されたものであり、この窪み部が下流側流路7c2となる。
【0048】
上流側流路7c1は、流路断面が一端部から他端部に亘って等断面な形状をなすものであり、例えば直径が0.1mm以上1.5mm以下の円柱状をなす。なお、ここでの上流側流路7c1の径寸法は、上述した第2ガス流路5cの径寸法と等しくしてある。
【0049】
下流側流路7c2は、流路断面が一端部から他端部に亘って等断面な形状をなすものであり、流路断面のサイズ及び流路長さの一方又は両方は、電子の平均自由行程よりも長いことが好ましい。なお、電子の平均自由行程は、第1ガスの分子の平均自由行程や、第1ガスの分子の直径などに基づき算出されるものである。
【0050】
本実施形態の下流側流路7c2は、例えば直径が3mm以上40mm以下の円柱状をなすものであり、軸方向長さは、例えば直径の1倍以上1.5倍以下である。そして、第1ガス導入部材7に上述した電源Vから負の電圧が印加されることで、この下流側流路7c2が、誘導結合型プラズマPから放出された電子を閉じ込めるホローカソードとしての機能を発揮することになる。
【0051】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態のプラズマ処理装置100によれば、第1ガス導入部材7が、ホローカソードとして機能して電子を閉じ込めるので、結合の強い例えばN2等の第1ガスを十分に分解させたうえで成膜処理をすることができる。
【0052】
具体的には、上流側流路7c1よりも下流側流路7c2の流路断面を大きくしているので、この下流側流路7c2に電子を閉じ込めることができ、この下流側流路7c2を通過する際に第1ガスを十分に分解させることができる。
【0053】
さらに、第1ガス導入部材7及び第2ガス導入部材5を交互に配置しているので、均質な膜を成膜することができる。
【0054】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0055】
例えば、前記実施形態では、下流側流路7c2の流路断面が一端部から他端部に亘って等断面な形状をなすものであったが、
図4に示すように、一端部(上流側)から他端部(下流側)に向かうにつれて流路断面が大きくなる形状であっても良いし、図示していないが第1ガス導出口7bがオリフィス等によって絞られていても良い。
【0056】
また、前記実施形態では、複数の第1ガス流路7cが互いに同じ形状であったが、
図5に示すように、例えば長手方向両端部の第1ガス流路7cの流路断面を、中央部の第1ガス流路7cの流路断面よりも大きくするなど、複数の第1ガス流路7cの流路断面や流路長等を異なるサイズにしても良い。
【0057】
さらに、前記実施形態では、第1ガス導入部材7及び第2ガス導入部材5が、アンテナ3の長手方向に沿って設けられていたが、
図6に示すように、第1ガス導入部材7及び第2ガス導入部材5が、アンテナ3の長手方向と直交する方向に沿って設けられていても良い。
【0058】
前記実施形態では、成膜用ガスを上壁2cから導入していたが、側壁2a、bから導入しても良い。
【0059】
前記実施形態では、第1ガス導入部材7の全体を金属製のものとして説明したが、少なくとも下流側流路7c2を形成する部分が金属製であれば、その部分に負の電圧を印加することができるので、必ずしも全体を金属製にする必要はない。
【0060】
また、前記実施形態では複数種類(例えば2種類)の成膜用ガスを独立して真空容器2に導入する場合について説明したが、例えば結合の強いガスと結合の弱いガスとの混合ガスを真空容器2に導入しても良い。この場合のプラズマ処理装置100としては、第2ガス導入部材5を備えていないものとしても良い。
【0061】
さらに、第1ガス流路7cとしては、第1ガス導入口7aから第1ガス導出口7bまでの流路断面を等断面として、その流路断面を前記実施形態の下流側流路7c2と同様のサイズにしても良い。すなわち、第1ガス流路7cとしては、ホローカソードとして機能するサイズの流路断面を有するものであれば、必ずしも窪み部が設けられていなくても良い。
【0062】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
100・・・プラズマ処理装置
W ・・・基板
P ・・・誘導結合プラズマ
2 ・・・真空容器
3 ・・・アンテナ
2x ・・・ガス供給ポート
5 ・・・第2ガス導入部材
5a ・・・第2ガス導入口
5b ・・・第2ガス導出口
5c ・・・第2ガス流路
5S ・・・第2ガス空間
PS ・・・プラズマ生成空間
7 ・・・第1ガス導入部材
7a ・・・第1ガス導入口
7b ・・・第1ガス導出口
7c ・・・第1ガス流路
7c1・・・上流側流路
7c2・・・下流側流路
7S ・・・第1ガス空間
Z ・・・絶縁部材
V ・・・電源