(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】色変換デバイス、マイクロLEDディスプレイパネル、色変換デバイスの製造方法及びマイクロLEDディスプレイパネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20231208BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20231208BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231208BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20231208BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20231208BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20231208BHJP
【FI】
G02B5/20
H05B33/14 Z
H05B33/14 A
H05B33/12 E
H05B33/10
H01L33/50
(21)【出願番号】P 2019239412
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2019112038
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 修平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英博
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/207417(WO,A1)
【文献】特表2016-523450(JP,A)
【文献】特開2011-054513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
H05B 33/14
H10K 50/10
H05B 33/12
H05B 33/10
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に位置し、発光材料を含む発光層と、
前記発光層に接触し、前記発光層が発光する発光領域を規定する第一の隔壁と、
前記発光層に接触し、前記発光層が形成される形成領域を規定する第二の隔壁と、を有し、
前記第一の隔壁は前記第二の隔壁の内壁面に接触するように形成されており、前記第一の隔壁の高さは、前記第二の隔壁の高さよりも低い、
色変換デバイス。
【請求項2】
前記第二の隔壁で囲まれる領域には、前記第一の隔壁で囲まれる領域が2つ以上含まれる、
請求項1に記載の色変換デバイス。
【請求項3】
前記第一の隔壁及び前記第二の隔壁は、前記基板の一方の面に設けられ、
前記基板から前記第一の隔壁の頂部までの第一の距離は、前記基板から前記第二の隔壁の頂部までの第二の距離よりも短い、
請求項1又は2に記載の色変換デバイス。
【請求項4】
前記発光層を形成するインクに対する、前記第一の隔壁の頂部の静止接触角は、前記第二の隔壁の頂部の静止接触角よりも小さい、
請求項1から3
のいずれか1項に記載の色変換デバイス。
【請求項5】
前記発光層を形成するインクに対する、前記第一の隔壁の頂部と前記第二の隔壁の頂部の静止接触角は、40°以上70°以下であり、前記第一の隔壁の側部と前記第二の隔壁の側部の静止接触角は、5°以上40°以下である、
請求項4に記載の色変換デバイス。
【請求項6】
前記発光層を形成するインクに対する、前記第二の隔壁の頂部の後退接触角は、15°以上である、
請求項1から5
のいずれか1項に記載の色変換デバイス。
【請求項7】
前記基板から前記第一の隔壁の頂部までの第一の距離は、3μm以上7μm以下であり、
前記基板から前記第二の隔壁の頂部までの第二の距離は、6μm以上8μm以下である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の色変換デバイス。
【請求項8】
前記発光層は、前記発光材料を含むインクを硬化することで形成されており、
前記第一の隔壁の頂部の前記インクに対する静止接触角は、前記第一の隔壁の側面の前記インクに対する静止接触角よりも大きい、
請求項1
から7のいずれか1項に記載の色変換デバイス。
【請求項9】
前記第二の隔壁で囲まれる1つの領域内に、前記第一の隔壁が2つ対向して配置されている、
請求項1
から8のいずれか1項に記載の色変換デバイス。
【請求項10】
2つの前記第一の隔壁で挟まれる形状は、円柱状である
、
請求項9に記載の色変換デバイス。
【請求項11】
前記第一の隔壁は、柱状体である
、
請求項1から9のいずれか1項に記載の色変換デバイス。
【請求項12】
前記第二の隔壁で囲まれる領域は、平面視で扁平形状である、
請求項1から11のいずれか1項に記載の色変換デバイス。
【請求項13】
前記扁平形状の領域は、平面視で、前記基板
の端辺に対して、傾斜している
、
請求項12に記載の色変換デバイス。
【請求項14】
前記第二の隔壁には、フッ素材料が含まれる
、
請求項1から13のいずれか1項に記載の色変換デバイス。
【請求項15】
前記フッ素材料は、
前記第二の隔壁
の表面に多く含まれる
、
請求項14に記載の色変換デバイス。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の色変換デバイスと、
前記色変換デバイスに入射する光を発する発光デバイスと、を有する、
マイクロLEDディスプレイパネル。
【請求項17】
基板上に、発光層が発光する発光領域を規定する第一の隔壁を形成する第1ステップと、
前記基板上に、前記発光層が形成される形成領域を規定
し、内面が前記第一の隔壁に接触し、高さが前記第一の隔壁よりも高い第二の隔壁を形成する第2ステップと、
前記第二の隔壁で囲まれた領域に、発光材料を含むインクを塗布して前記発光層を形成する第3ステップと、を含
む、
色変換デバイスの製造方法。
【請求項18】
前記第3ステップでは、インクジェット法を用いて前記インクを塗布し、
前記第二の隔壁で囲まれる領域は、平面視で扁平形状であり、
前記インクの塗布方向は、前記第二の隔壁で囲まれる領域の長軸方向に対して垂直な方向である
、
請求項17に記載の色変換デバイスの製造方法。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の色変換デバイスの製造方法により製造された色変換デバイスを用いたマイクロLEDディスプレイパネルの製造方法であって、
前記色変換デバイスと前記色変換デバイスに入射する光を発する発光デバイスとを貼り合わせるステップを含む
、
マイクロLEDディスプレイパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、色変換デバイス、マイクロLEDディスプレイパネル、色変換デバイスの製造方法及びマイクロLEDディスプレイパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代のディスプレイパネルとして、量子ドット材料によって構成された発光層を有する量子ドットディスプレイパネルの開発が進められている。量子ドットは、直径が2から10ナノメートル(原子10個から50個)と、非常に小さいサイズの特殊な半導体である。このような微小なサイズの物質は、通常の物質とは異なる性質を有する。例えば、量子ドットは、粒径を変えるだけでバンドギャップをコントロールすることができる。また、量子ドットの発光ピーク波長はバンドギャップに依存するので、量子ドットの発光ピーク波長を非常に精密に調節することができる。つまり、量子ドットの発光ピーク波長は、粒径を変えるだけで変更することができる。具体的には、量子ドットの発光ピーク波長は、粒径が小さくなるほど短波長側にシフトし、粒径が大きくなるほど長波長側にシフトする。さらに、量子ドットの発光スペクトルは、急峻なピークを有しており、量子ドットの発光ピーク波長の半値幅は、非常に小さく、数十ナノメートル以下である。
【0003】
したがって、赤色発光層、緑色光発光層及び青色発光層の材料として量子ドット材料を用いることで、赤色光、緑色光及び青色光のそれぞれの発光ピーク波長の半値幅を小さくすることができる。これにより、高色域特性を有するディスプレイパネルを実現することができる。つまり、ディスプレイパネルの性能を飛躍的に向上させることができる。
【0004】
しかも、量子ドットディスプレイパネルは、輝度が非常に高くて屋外での視認性に優れているため、携帯電話や車載用途のディスプレイ又はヘッドマウントディスプレイ等に適している。特に、これらのディスプレイでは、350ppi(pixel per inch)以上の画素解像度が必要になると予想され、今後、量子ドットディスプレイパネルの活用が期待されている。
【0005】
また、最近ではインクジェット法を用いたディスプレイパネルの製造方法が注目されている。例えば、有機ELディスプレイパネルでは、赤色発光層、青色発光層及び緑色発光層の各発光層又はホール注入層を形成する場合、有機EL材料を含むインクをバンクと呼ばれる隔壁で囲まれた領域(開口部)の中に塗布してインクの溶媒を乾燥させる。このように、インクジェット法によって発光層等を形成することで、従来は真空蒸着法によって発光層等を形成していたが、大気中で発光層等を形成することが可能となる。
【0006】
しかも、発光層を構成する有機EL材料は非常に高価である。このため、真空蒸着法を用いると、蒸着装置のチャンバーの壁面に有機EL材料が付着するので、廃棄材料が多く発生して材料の使用効率が低くなり、高コストのディスプレイパネルになってしまう。これに対して、インクジェット法を用いると、大気中で発光層を形成することができるので省エネルギーであり、また、所定の場所にだけ有機EL材料を含むインクを塗り分けて塗布することができるので、低コストのディスプレイパネルを実現することができる。
【0007】
近年、量子ドット材料を含むインクについても、有機EL材料を含むインクと同様に、インクジェット法を用いて塗り分けることの検討が盛んに行われている。量子ドット材料の代表的なものとしては、コアとしてカドミウム-セレン又はインジウム-リン等の無機材料が用いられ、コアの周りのシェルとして硫化亜鉛等の材料が用いられたものが挙げられる。さらに、インクとしての安定性を実現するために、その周りにリガンドが形成されることもある。
【0008】
例えば、特許文献1には、インクジェット法を用いて有機ELディスプレイパネル又は量子ドットディスプレイパネルに用いられるデバイスを製造する方法が開示されている。
図13に、特許文献1に開示されたデバイスの断面図を示す。
図13に示すように、特許文献1に開示されたデバイスでは、基板22X上に形成された隔壁24Xで囲まれた領域(開口部)にインクジェット法でインクを塗布することで、塗布するインクの機能に応じた機能膜21Xを形成している。特許文献1に開示されたデバイスをディスプレイパネルとして用いる場合、隔壁で囲まれた領域がピクセル(画素)となり、機能膜21Xは発光層となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示されたデバイスをディスプレイパネルに用いると、ピクセルとなる隔壁で囲まれた領域を基板の面内で配置する間隔が狭くなる。このため、ピクセルの解像度を高くした場合、隔壁で囲まれた領域にインクを吐出したときにインクの着弾がずれて、意図しないピクセルにインクが混入してしまって混色が発生することがある。
【0011】
例えば、対象とするディスプレイパネルのピクセルの解像度が400ppiである場合、このディスプレイパネルに用いられる発光層及び隔壁を有するデバイスおいて、ピクセル間の距離及び隔壁の幅は、おおよそ次のようになる。
図1Aは、ピクセルの解像度が400ppiであるディスプレイパネルに用いられるデバイスの構成の一例を示す平面図であり、
図1Bは、
図1AのIB-IB線における断面図であり、
図1Aに示されるデバイスのピクセルにインクを吐出するときの様子を示している。なお、
図1Bでは、発光層21Yを形成する前の状態を示している。
【0012】
図1A及び
図1Bに示されるディスプレイパネルでは、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の各々のピクセルに対応する位置に設けられた発光層21Yと、各発光層21Yを囲む隔壁24Yとを有しており、同色のピクセル間の距離が約63μmで、異なる色で隣接する2つのピクセル間の距離は21μmである。また、各ピクセルの大きさは直径が15μmで、隣接する2つのピクセル間を区切る隔壁の幅は6μmである。各ピクセルの大きさ等はディスプレイパネルの発光特性等から設計されるものであるので、必ずしも上記のようにはならないが、代表的な数値としては上記のようになる。
【0013】
また、
図1Bには、発光層21Yをインクジェット法により形成する際に、隔壁24Yで囲まれた領域(ピクセル)にインク40Yの液滴を吐出するときの様子を示している。例えば、液滴の体積が1ピコリットル(pL)のインク40Yの吐出が可能なインクジェットヘッドによって、隔壁24Yで囲まれた領域にインク40Yを塗布する場合を考える。体積が1pLのインク40の液滴の直径は、12.6μmである。一方、インク40Yを塗布すべき領域の幅は、上記のように15μmである。したがって、インク40Yを塗布する領域の幅に対してインク40Yの液滴の大きさがほぼ同等であり、塗布するインク40Yの着弾位置精度としては極めて高いものが要求される。このため、混色なく安定して塗布膜を形成することは現実的には困難であり、デバイスの製造時の歩留まりが低下して高コスト化したり混色によって発光特性が低下したりするおそれがある。
【0014】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、隔壁で囲まれた領域同士の間隔が狭くても、インクジェット法を用いて発光層等の機能膜を形成することができ、発光特性の低下抑制と低コスト化との両立を図ることができる色変換デバイス及びマイクロLEDディスプレイパネル等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本開示に係る色変換デバイスの一態様は、基板と、前記基板の上に位置し、発光材料を含む発光層と、前記発光層に接触し、前記発光層が発光する発光領域を規定する第一の隔壁と、前記発光層に接触し、前記発光層が形成される形成領域を規定する第二の隔壁と、を有し、前記第一の隔壁は前記第二の隔壁の内壁面に接触するように形成されており、前記第一の隔壁の高さは、前記第二の隔壁の高さよりも低い。
【0016】
また、本開示に係るマイクロLEDディスプレイパネルの一態様は、上記色変換デバイスと、上記色変換デバイスに入射する光を発する発光デバイスと、を有するマイクロLEDディスプレイパネルである。
【0017】
また、本開示に係る色変換デバイスの製造方法の一態様は、基板上に、発光層が発光する発光領域を規定する第一の隔壁を形成する第1ステップと、
上記基板上に、上記発光層が形成される形成領域を規定する第二の隔壁を形成する第2ステップと、
上記第二の隔壁で囲まれた領域に、発光材料を含むインクを塗布して上記発光層を形成する第3ステップと、を含み、
上記第1ステップ及び上記第2ステップでは、上記基板から上記第一の隔壁の頂部までの第一の距離が、上記基板から上記第二の隔壁の頂部までの第二の距離より短くなるように上記第一の隔壁及び上記第二の隔壁を形成する色変換デバイスの製造方法。
【0018】
また、本開示に係るマイクロLEDディスプレイパネルの製造方法の一態様は、上記の色変換デバイスの製造方法により製造された色変換デバイスを用いたマイクロLEDディスプレイパネルの製造方法であって、上記色変換デバイスと上記色変換デバイスに入射する光を発する発光デバイスとを貼り合わせるステップを含むマイクロLEDディスプレイパネルの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、隔壁で囲まれた領域同士の間隔が狭くても、インクジェット法を用いて発光層等の機能膜を形成することができるので、発光特性の低下抑制と低コスト化との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】ピクセルの解像度が400ppiであるディスプレイパネルに用いられるデバイスの構成の一例を示す平面図
【
図1B】
図1Aに示されるデバイスのピクセルにインクを吐出するときの様子を示す断面図
【
図2】実施の形態に係るマイクロLEDディスプレイパネルの断面図
【
図3B】
図3AのIIIB-IIIB線における実施の形態に係る色変換デバイスの断面図
【
図4】実施の形態に係る色変換デバイスの他の構成を示す断面図
【
図5A】実施の形態に係る色変換デバイスの製造方法における基板準備ステップを説明するための図
【
図5B】実施の形態に係る色変換デバイスの製造方法における第一の隔壁形成ステップを説明するための図
【
図5C】実施の形態に係る色変換デバイスの製造方法における第二の隔壁形成ステップを説明するための図
【
図5D】実施の形態に係る色変換デバイスの製造方法における発光層形成ステップを説明するための図
【
図6A】実施の形態に係る色変換デバイスにおいて、第一の隔壁及び第二の隔壁の他の製造方法おける隔壁材料塗布ステップを説明するための図
【
図6B】実施の形態に係る色変換デバイスにおいて、第一の隔壁及び第二の隔壁の他の製造方法おける露光ステップを説明するための図
【
図6C】実施の形態に係る色変換デバイスにおいて、第一の隔壁及び第二の隔壁の他の製造方法おけるエッチングステップを説明するための図
【
図7A】実施の形態に係る色変換デバイスの他の構成を示す平面図
【
図7B】
図7AのVIIB-VIIB線における色変換デバイスの断面図
【
図8B】
図8AのVIII-VIII線における比較例の色変換デバイスの断面図
【
図10A】変形例2に係る色変換デバイスの製造方法のインク塗布ステップにおけるインク塗布直前の様子を示す図
【
図10B】変形例2に係る色変換デバイスの製造方法のインク塗布ステップにおけるインク塗布直後の様子を示す図
【
図10C】変形例2に係る色変換デバイスの製造方法のインク塗布ステップにおける最終状態の様子を示す図
【
図11B】
図11AのXIB-XIB線における変形例3に係る色変換デバイスの断面図
【
図11C】
図11AのXIC-XIC線における変形例3に係る色変換デバイスの断面図
【
図12】変形例3に係る色変換デバイスの他の構成を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ及びステップの順序等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0022】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0023】
(実施の形態)
<マイクロLEDディスプレイパネル>
まず、実施の形態に係るマイクロLEDディスプレイパネル1の構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、実施の形態に係るマイクロLEDディスプレイパネル1の断面図である。
【0024】
マイクロLEDディスプレイパネル1は、マイクロオーダサイズのマイクロLEDをピクセル(画素)とするディスプレイである。本実施の形態におけるマイクロLEDディスプレイパネル1は、
図2に示すように、発光デバイス10と、発光デバイス10に対向して配置された色変換デバイス20とを有する。
【0025】
具体的な製造方法は後述するが、マイクロLEDディスプレイパネル1は、発光デバイス10と色変換デバイス20とを別々の工程で作製し、それぞれを貼り合わせることで作製することができる。
【0026】
なお、発光デバイス10と色変換デバイス20との貼り合わせ部分を封止材料で覆うことで、外部からの水分及び酸素の侵入を抑制することができる。これにより、マイクロLEDディスプレイパネル1の劣化を抑制することもでき、信頼性の高いマイクロLEDディスプレイパネル1を実現することができる。
【0027】
発光デバイス10は、色変換デバイス20に入射する光を発する。本実施の形態において、発光デバイス10は、青色の光を発する青色発光デバイスである。発光デバイス10は、例えば、LEDによって構成されたLEDデバイスであるが、有機ELによって構成された有機ELデバイス等であってもよい。無機材料が発光する無機ELでもよい。
【0028】
図2に示すように、発光デバイス10は、発光体11を有する。本実施の形態において、発光デバイス10は、基板12を有しており、発光体11は、この基板12の上に配置されている。
<発光体11>
具体的には、発光体11は、基板12の上に複数配置されている。発光体11は、マイクロLEDディスプレイパネル1のピクセルごとに設けられている。つまり、1つの発光体11は、マイクロLEDディスプレイパネル1における1つのピクセルに対応して設けられている。
【0029】
発光体11は、光を発する光源である。本実施の形態において、発光体11は、青色光を発する青色発光体である。この場合、コスト面等の観点では、発光体11として青色LEDを用いることが望ましいが、これに限らない。例えば、発光デバイス10として有機ELデバイスを用いる場合、発光体11は、有機EL膜によって構成された有機EL発光体である。
<基板12>
基板12は、絶縁性を有するものであれば、任意のものを用いることができる。基板12としては、例えば、絶縁樹脂材料を基材とする樹脂基板、表面が絶縁被膜されたアルミニウム合金基板等のメタルベース基板、セラミック材料からなるセラミック基板、又は、ガラス材料からなるガラス基板等を用いることができる。基板12は、光取り出し方向に応じて、透光性を有する透光性基板を用いてもよいし、光を透過しない不透光性基板を用いてもよい。基板12として透光性基板を用いる場合、基板12は、透明樹脂基板又はガラス基板等の透明基板である。また、基板12は、リジッド基板であってもよいし、フレキシブル基板であってもよい。なお、基板12の表面には、絶縁耐圧及び光取り出し効率を向上させるために、白色レジスト等の白色の絶縁膜が形成されていてもよい。
<発光デバイス10>
本実施の形態において、発光デバイス10は、隔壁13を有する。隔壁13は、各発光体11を囲むように設けられている。隔壁13を設けることで、発光体11から出射した光が、隣りのピクセルに漏れないようにすることができる。隔壁13は、例えば、黒色又は白色の樹脂材料によって構成される。
【0030】
なお、発光デバイス10は、発光体11の発光を制御するための駆動トランジスタを有していてもよい。また、発光体11として用いる青色LEDについては、別の工程で製造した青色LEDが基板12に実装されていてもよいし、基板12に青色LEDが直接形成されていてもよい。例えば、発光デバイス10として有機ELデバイスを用いる場合、真空蒸着法又はインクジェット法を用いて基板12上に発光体11として有機EL膜を直接形成すればよい。
<色変換デバイス20>
次に、色変換デバイス20について、
図2を参照しつつ、
図3A及び
図3Bを用いて説明する。
図3Aは、実施の形態に係る色変換デバイス20の平面図であり、
図3Bは、
図3AのIIIB-IIIB線における同色変換デバイス20の断面図である。
【0031】
色変換デバイス20は、色変換デバイス20に入射する光を所定の色の波長に変換する機能を有する。具体的には、色変換デバイス20は、発光デバイス10から出射した光の波長を発光デバイス10が出射する光の色とは異なる色の波長に変換する波長変換層として、複数の発光層21を有する。
【0032】
本実施の形態において、色変換デバイス20は、複数の発光層21として、発光デバイス10から出射した青色光の波長を赤色の波長に変換する機能を有する赤色発光層21rと、発光デバイス10から出射した青色光の波長を緑色の波長に変換する機能を有する緑色発光層21gと、発光デバイス10から出射した青色光をそのまま透過する機能を有する青色発光層21bとを有する。
<発光層21>
複数の発光層21は、発光デバイス10の複数の発光体11に対応して設けられている。具体的には、複数の発光層21の各々は、複数の発光体11の各々に対向して配置されている。より具体的には、赤色発光層21r、緑色発光層21g及び青色発光層21bの各々と複数の発光体11とは、互いに対向するようにして一対一の関係で設けられている。したがって、複数の発光層21の各々は、マイクロLEDディスプレイパネル1における1つのピクセルに対応して設けられている。
【0033】
ここで、赤色のピクセルに対応する赤色発光層21r及び緑色のピクセルに対応する緑色発光層21gは、量子ドット材料(発光材料)を含んでいる。量子ドット材料としては、例えば、カドミウム-セレン系又はインジウム-リン系、銅-インジウム-硫黄系、銀-インジウム-硫黄系、ペロブスカイト構造の材料を用いることができる。本実施の形態において、赤色発光層21r及び緑色発光層21gは、例えば、量子ドット材料が分散された樹脂膜によって構成されている。赤色発光層21r及び緑色発光層21gにおいて、量子ドット材料の濃度は、5重量パーセント以上50重量パーセント以下であるとよい。
【0034】
赤色発光層21rは、赤色光を発する量子ドット材料を含んでいる。本実施の形態において、赤色発光層21rに含まれる量子ドット材料は、発光デバイス10から出射する青色の波長の光により励起されて赤色光を発する。したがって、赤色発光層21rに青色の波長の光が照射されると、青色の波長の光が赤色の波長に変換されて赤色発光層21rから赤色光が放出する。
【0035】
緑色発光層21gは、緑色光を発する量子ドット材料を含んでいる。本実施の形態において、緑色発光層21gに含まれる量子ドット材料は、発光デバイス10から出射する青色の波長の光により励起されて緑色光を発する。したがって、緑色発光層21gに青色の波長の光が照射されると、青色の波長の光が緑色の波長に変換されて緑色発光層21gから緑色光が放出する。
【0036】
一方、本実施の形態における青色発光層21bには、量子ドット材料が含まれていない樹脂膜によって構成されている。したがって、青色発光層21bに青色の波長の光が照射されると、青色発光層21bからは青色光がそのまま放出する。
【0037】
赤色発光層21r、緑色発光層21g及び青色発光層21bを構成する樹脂材料は、例えばアクリル系又はエポキシ系の樹脂である。また、赤色発光層21r、緑色発光層21g及び青色発光層21bを構成する樹脂材料としては、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化樹脂を用いることが望ましい。
【0038】
発光層21は、さらに、光を散乱させる特性を有する拡散粒子(散乱粒子)が樹脂膜中に存在していてもよい。つまり、赤色発光層21r、緑色発光層21g及び青色発光層21bを構成する樹脂材料には、拡散粒子が分散されていてもよい。この場合、本実施の形態における青色発光層21bには、量子ドット材料及び拡散粒子のうち拡散粒子のみが含まれることになる。
【0039】
拡散粒子としては、例えば、酸化チタン粒子、ジルコニア粒子、又は、粒子の内部が空洞になっている中空シリカ粒子等を用いることができる。拡散粒子の粒径は、例えば50nm以上1000nm以下である。各発光層21において、拡散粒子は、例えば数重量パーセントの濃度で含まれている。発光層21に拡散粒子が含まれていることで、発光層21中を進む青色の光が散乱して光路長が長くなる。このように、発光層21中を進む青色の光の光路長が長くなることで、波長変換機能を有する量子ドット材料に青色の光が当たる回数が多くなり、波長変換効率が上昇する。
【0040】
なお、発光層21には、さらに、水分を吸湿する粒子が含まれていてもよい。これにより、発光層21が水分によって劣化することを抑制することができる。
【0041】
色変換デバイス20は、さらに、基板22を有しており、発光層21は、この基板22の上に位置している。具体的には、発光層21は、基板22の一方の面であるオモテ面に設けられている。
<基板22>
基板22は、絶縁性を有するものであれば、任意のものを用いることができる。基板22としては、例えば、樹脂基板、メタルベース基板、セラミック基板、又は、ガラス基板等を用いることができる。基板22は、光取り出し方向に応じて、透光性を有する透光性基板を用いてもよいし、光を透過しない不透光性基板を用いてもよい。基板22として透光性基板を用いる場合、基板22は、透明樹脂基板又はガラス基板等の透明基板である。また、基板22は、リジッド基板であってもよいし、フレキシブル基板であってもよい。
【0042】
本実施の形態では、基板22としてガラス基板を用いている。この場合、発光層21から出射した光が基板22を透過しないように基板22に遮光性を有する遮光膜が形成されていてもよい。例えば、遮光膜として、光反射性を有する光反射膜が基板22のオモテ面(発光層21が設けられた面)に形成されていてもよい。光反射膜は、例えば、白色の絶縁性樹脂材料等によって構成された白レジスト等の白色膜である。あるいは、光反射膜として、光反射性を有する金属膜が基板22のウラ面に形成されていてもよい。具体的には、銀-パラジウム-銅合金等からなる金属膜が基板22のウラ面に形成されていてもよい。
【0043】
また、色変換デバイス20は、第一の隔壁23と第二の隔壁24とを有する。第一の隔壁23及び第二の隔壁24は、発光層21と同様に、基板22の一方の面であるオモテ面に設けられている。
<隔壁>
第一の隔壁23及び第二の隔壁24は、発光層21を囲っている。第一の隔壁23は、発光層21が発光する発光領域を規定している。一方、第二の隔壁24は、発光層21が形成される形成領域を規定している。本実施の形態おいて、発光層21はインクを塗布することによって形成されるので、第二の隔壁24は、インクが塗布される塗布領域(インク塗布領域)となる。
【0044】
本実施の形態において、第二の隔壁24は、複数の発光層21に共通して一体に構成されている。第二の隔壁24には、当該第二の隔壁24で囲まれる領域として、複数の発光層21の各々に対応する複数の開口部が形成されている。つまり、第二の隔壁24によって構成される複数の開口部には、発光層21が形成されている。第一の隔壁23は、第二の隔壁24の複数の開口部の各々に設けられている。つまり、第一の隔壁23は、複数の発光層21の各々に対応して、複数設けられている。第二の隔壁24によって構成(囲まれる)される開口部の形状は、楕円形状、または、円形状に対抗する2つの三日月形状を加えた形状である。このような形状とすることで、高密度で、開口部が形成でき、かつ、開口部間の距離を保て、混色などが発生しない。また、第一の隔壁23で構成される領域は、円形状である。発光が均質とするためである。
【0045】
なお、第一の隔壁23は、第二の隔壁24で形成された開口部の側面の対向する2方向に三日月柱(柱状体)の形状で形成される。開口部の体積を確保でき、発光層21がメインで形成される空間を円柱形状とでき、発光量を確保できる。
【0046】
各ピクセルにおいて、第二の隔壁24で囲まれる領域(開口部)は、平面視で扁平形状である。本実施の形態において、第二の隔壁24で囲まれる領域(開口部)は、平面視でレーストラック状の長円形状である。また、第二の隔壁24の内側に位置する第一の隔壁23で囲まれる領域は、平面視で円形状である。
【0047】
また、各ピクセルにおいて、第一の隔壁23は、第二の隔壁24の内壁面に接触するように形成されている。本実施の形態において、第二の隔壁24で囲まれる領域には、第一の隔壁23で囲まれる領域が1つ含まれている。つまり、第二の隔壁24で囲まれる領域には、1つの発光層21が設けられている。
【0048】
第一の隔壁23の膜厚は、第二の隔壁24の膜厚より薄い。つまり、第一の隔壁23の高さは、第二の隔壁24の高さより低い。具体的には、基板22から第一の隔壁23の頂部までの第一の距離は、基板22から第二の隔壁24の頂部までの第二の距離よりも短くなっている。一例として、第一の隔壁23の第一の距離(膜厚)は、おおよそ2μm以上9μm以下であり、望ましくは3μm以上7μm以下である。一方、第二の隔壁24の第二の距離(膜厚)は、おおよそ5μm以上10μm以下であり、望ましくは6μm以上8μm以下である。
【0049】
各発光層21は、第一の隔壁23及び第二の隔壁24の各々に接触している。具体的には、赤色発光層21r、緑色発光層21g及び青色発光層21bの各々において、発光層21は、第一の隔壁23及び第二の隔壁24の各々に接触している。これにより、発光層21が第一の隔壁23及び第二の隔壁24の一方のみに接触している場合と比べて、発光層21と発光層21を囲む隔壁(第一の隔壁23及び第二の隔壁24)との接触面積を大きくすることができるので、発光層21の密着性が向上する。したがって、特に基板22がフレキシブル基板である場合に、色変換デバイス20の信頼性が向上する。
【0050】
第一の隔壁23は、第二の隔壁24の各開口部において、赤色発光層21r、緑色発光層21g及び青色発光層21bを囲むように形成されている。第二の隔壁24で囲まれた領域(開口部)において、発光層21は、第一の隔壁23の内壁面の全面に接触しているとともに、第二の隔壁24の内壁面の上部に接触している。
【0051】
また、第一の隔壁23の膜厚が第二の隔壁24の膜厚より薄くなっているので、第一の隔壁23の頂部に位置する発光層21の膜厚は、他の部分に比べて薄くなっている。このため、第一の隔壁23の頂部に位置する発光層21は、波長変換機能をほとんど有しておらず発光しない。また、わずかに発光したとしてもその光は第一の隔壁23によって遮光されるので発光層21の外部には光が取り出されない。よって、第一の隔壁23の内側で規定された領域のみが発光に寄与する。このような構造により、発光層21が形成される形成領域(インク塗布領域)を広く確保しつつ、発光層21が発光する発光領域を所定のサイズで規定することができるので、インクジェット法によって機能膜となる発光層21を高品質かつ低コストで形成することができる。
【0052】
第一の隔壁23及び第二の隔壁24の各々は、絶縁性を有していれば、無機材料及び有機材料のいずれによって構成されていてもよい。一例として、第一の隔壁23及び第二の隔壁24は、紫外線で硬化する感光性の樹脂を用いて形成されるのが好ましい。同じ樹脂材料で形成されるのが好ましい。
【0053】
また、発光層21が発光する発光領域を規定する第一の隔壁23は、各発光層21で発光した光を効率的に取り出せるように白色であることが望ましい。例えば、第一の隔壁23として、白色レジスト等を用いることができる。一方、発光層21が形成される形成領域を規定する第二の隔壁24は、第一の隔壁23よりも濡れ性が低く、塗布するインクに対して撥液性を示すことが望ましい。このため、例えば、第二の隔壁24としては、撥液性を付与するためにフッ素原子を含む官能基が樹脂中に含まれるフッ素樹脂等を用いるとよい。フッ素樹脂は、その高分子繰り返し単位のうち、少なくとも一部の繰り返し単位にフッ素原子を有するものであればよく、特に限定されない。第二の隔壁24の材料として用いるフッ素樹脂としては、例えば、フッ素化ポリオレフィン系樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、フッ素化ポリアクリル樹脂等が挙げられる。
【0054】
また、上記のように、本実施の形態では、第二の隔壁24は、第一の隔壁23よりも濡れ性が低くなっている。つまり、第一の隔壁23は、第二の隔壁24よりも濡れ性が高い材料によって構成されている。このため、各発光層21において、発光層21と第一の隔壁23との接触面積は、発光層21と第二の隔壁24との接触面積よりも大きくするとよい。これにより、発光層21の密着性を向上させることができる。
<カラーフィルタ25>
なお、
図4に示すように、色変換デバイスには、カラーフィルタ25が設けられていてもよい。例えば、赤色発光層21rに赤色カラーフィルタ25rを設け、緑色発光層21gに緑色カラーフィルタ25gを設け、青色発光層21bに青色カラーフィルタ25bを設ける。このように、カラーフィルタ25を設けることで所望の波長のみを透過させることができるので、色再現性を高めることができる。具体的には、青色光を発する発光デバイス10で発光された青色光に対して、赤色発光層21r、緑色発光層21g及び青色発光層21bで発光する光の色度が高まるので色再現性が高まる。また、カラーフィルタ25を設けることで、発光層21の発光効率を向上させることができる。
【0055】
<マイクロLEDディスプレイパネルの製造方法>
次に、実施の形態に係るマイクロLEDディスプレイパネル1の製造方法について説明する。
【0056】
本実施の形態に係るマイクロLEDディスプレイパネル1の製造方法は、発光デバイス10を製造するステップと、色変換デバイス20を製造するステップと、色変換デバイス20と発光デバイス10とを貼り合わせるステップとを含む。
【0057】
[発光デバイスの製造方法]
まず、発光デバイス10の製造方法について説明する。例えば、発光デバイス10は、別の工程で作製された青色光を発する発光体11を基板12上に転写することで、基板12上に発光体11が配置された発光デバイス10を得ることができる。この場合、発光体11から出射する光が隣のピクセルに漏れないように基板12に隔壁13を設けるとよい。隔壁13は、発光体11を囲むように設けられる。
【0058】
[色変換デバイスの製造方法]
次に、色変換デバイス20の製造方法について、
図5A~
図5Dを用いて説明する。
図5A~
図5Dは、実施の形態に係る色変換デバイス20の製造方法における製造フローを説明するための図である。
図5A、
図5B、
図5C及び
図5Dは、それぞれ、基板準備ステップ、第一の隔壁形成ステップ、第二の隔壁形成ステップ及び発光層形成ステップを示している。
【0059】
色変換デバイス20の製造方法は、
図5Aに示すように、基板22を準備するステップ(基板準備ステップ)と、
図5Bに示すように、基板22上に、発光層21が発光する発光領域を規定する第一の隔壁23を形成するステップ(第一の隔壁形成ステップ)と、
図5Cに示すように、基板22上に、発光層21が形成される形成領域を規定する第二の隔壁24を形成するステップ(第二の隔壁形成ステップ)と、
図5Dに示すように、第二の隔壁24で囲まれた領域に、量子ドット材料を含むインクを塗布して発光層21を形成するステップ(発光層形成ステップ)と、を含む。
【0060】
そして、第一の隔壁形成ステップ及び第二の隔壁形成ステップでは、基板22から第一の隔壁23の頂部までの第一の距離が基板22から第二の隔壁24の頂部までの第二の距離より短くなるように第一の隔壁23及び第二の隔壁24を形成している。
【0061】
以下、第一の隔壁形成ステップ、第二の隔壁形成ステップ及び発光層形成ステップの各ステップの具体例について説明する。
【0062】
(基板準備ステップ)
基板準備ステップでは、
図5Aに示すように、基板22を準備する。本実施の形態では、基板22としてガラス基板を準備した。
【0063】
(第一の隔壁形成ステップ)
第一の隔壁形成ステップでは、基板22上に第一の隔壁23を形成する。第一の隔壁23は、例えば、感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィプロセスによって形成することができる。
【0064】
具体的には、紫外光の露光により硬化する感光性樹脂を基板22上にスピンコート又はスリットコート等の塗布方法を用いて塗布することで基板22上に塗布膜を形成する。このとき、感光性樹脂の塗布条件は、必要な膜厚に応じて、スピンコートの回転数又はスリットコートの走査速度等で調整するとよい。次に、ホットプレート等を用いて塗布膜のプリベークを行って溶剤成分を乾燥させた後、所望のパターンが形成されたフォトマスクを介して紫外光の露光を行う。なお、感光性樹脂には、紫外光が照射された露光部が硬化するネガ型材料と紫外光の未露光部が硬化するポジ型材料とがあるが、どちらの材料を用いてもよい。次に、感光性樹脂の材料の種類によって適切な現像液を用いて未硬化部の除去を行った後、残ったパターンを硬化炉等でポストベークを行う。これにより、
図5Bに示すように、所定形状の第一の隔壁23を基板22に形成することができる。
【0065】
本実施の形態では、第一の隔壁23の材料として反射率が高い白色樹脂を用いた。白色樹脂としては、アクリル樹脂又はやエポキシ樹脂の中に白色の酸化チタン粒子等の無機物が添加されたものを用いることができる。そして、スリットコートにより白色樹脂を基板22に塗布して、ホットプレートで80℃30分加熱してプリベークを行った。その後、波長365nmの紫外光を照射して白色樹脂を硬化させた。また、紫外線の露光量は、500mJ/cm2とした。その後、現像液で白色樹脂の現像を行った。具体的には、現像液として1wt%のNa2CO3を用いて、60秒のスプレー塗布により白色樹脂の現像を行った。その後、硬化炉を用いて150℃60分で白色樹脂のポストベークを行った。これにより、膜厚が5μmの白色樹脂からなる第一の隔壁23を形成した。
【0066】
本実施の形態では第一の隔壁23は白色樹脂を用いたが、耐候性を上げるために黄色の樹脂であっても良い。また発光色のコントラストを上げるために、第一の隔壁23の下方は黒色で上方は白色の2層構成での樹脂であっても良い。
【0067】
(第二の隔壁形成ステップ)
第二の隔壁形成ステップでは、第一の隔壁23の外側に第二の隔壁24を形成する。具体的には、第一の隔壁23と同様に、感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィプロセスによって、
図5Cに示すように、第一の隔壁23の外側に第二の隔壁24を形成することができる。このとき、第二の隔壁24の膜厚が第一の隔壁23の膜厚よりも厚くなるように第二の隔壁24を形成する。また、上記のように、第二の隔壁24で囲まれる領域は、平面視で扁平形状である。
【0068】
本実施の形態では、第二の隔壁24の材料として、フッ素が含まれるフッ素含有アクリル樹脂を用いた。具体的には、フッ素含有アクリル樹脂としては、露光により表面にフッ素が偏在する特徴を持つ材料を用いた。したがって、第二の隔壁24は、表面が撥液性を有する。
ここで接触角について説明する。液体を固体表面に滴下すると、液体は自らの持つ表面張力で丸くなり、Youngの式と呼ばれる式1のような関係が成り立つ。
【0069】
γs=γL×cosθ+γSL・・・(式1)
γs:固体の表面張力γL:液体の表面張力γSL:固体と液体の界面張力
このときの液滴の接線と固体表面とのなす角度θを接触角と呼ぶ。中でも液体が固体上で静止しており、平衡状態に達しているときの接触角を静止接触角と呼ぶ。一方、液体と固体の界面が動いている状態、すなわち液滴の界面が動く、動的な状況の接触角を前進接触角及び後退接触角と呼ぶ。
具体的には、第二の隔壁24のインクに対する静止接触角は50°程度であった。また、上記のように、第一の隔壁23の膜厚を5μmにしたので、第二の隔壁24は、第一の隔壁23よりも厚くするために、8μmの膜厚となるように形成した。
【0070】
なお、本実施の形態では、第一の隔壁形成ステップの後に第二の隔壁形成ステップを行ったが、第一の隔壁形成ステップと第二の隔壁形成ステップとを入れ替えて、第二の隔壁形成ステップを先に行ってもよい。つまり、第二の隔壁形成ステップの後に第一の隔壁形成ステップを行ってもよい。
【0071】
また、本実施の形態では、第一の隔壁23と第二の隔壁24とを別々のステップで作製したが、同一の材料を用いて場所によって透過率が異なるハーフトーン露光により、一つのステップで第一の隔壁23と第二の隔壁24とを同時に作製してもよい。その方法を
図6A~
図6Cに示す。
【0072】
具体的には、まず、
図6Aに示すように、基板22上に隔壁材料30をスピンコート法又はスリットコート法を用いて形成する。隔壁材料30としては、例えば、上記の第一の隔壁23又は第二の隔壁24と同じ材料を用いることができる。
【0073】
次に、
図6Bに示すように、フォトマスク100を介して紫外光を照射することで、隔壁材料30を感光させて硬化させる。ここで、紫外光の透過率を局所的に変えることで、隔壁材料30の硬化の程度を変えている。例えば、フォトマスク100は、紫外光を遮蔽する遮蔽部101と、透過率が異なる第一の開口部102及び第二の開口部103とを有する。第二の開口部103の透過率は、第一の開口部102の透過率より大きくなっている。
【0074】
次に、
図6Cに示すように、隔壁材料30の未硬化部を現像液によってエッチングする。このとき、紫外光の透過量が小さい部分は硬化の程度が小さくなるので、エッチング後の膜厚が低くなって形成される。
【0075】
このように、ハーフトーン露光によるエッチングによっても膜厚の異なる第一の隔壁23及び第二の隔壁24を同時に作製することができる。なお、上記の方法は、紫外光が照射された部分が硬化するネガ型材料を用いたものであるが、紫外光が照射された部分が溶解するポジ型材料を用いてもよい。この場合、フォトマスク100の透過率の関係が異なり、遮蔽部101を第一の開口部とし、第二の開口部103を遮蔽部とし、第一の開口部が第二の開口部よりも透過率を高くすればよい。
【0076】
(発光層形成ステップ)
発光層形成ステップでは、まず、第一の隔壁23及び第二の隔壁24が形成された基板22に、インクジェット法を用いてインクを塗布することで塗布膜を形成する。本実施の形態では、赤色発光層21r及び緑色発光層21gについては、量子ドット材料を所定濃度で分散させたインクをインクジェット法で第二の隔壁24によって囲まれた領域に吐出する。また、青色発光層21bについては、量子ドット材料を含まないインクをインクジェット法で第二の隔壁24によって囲まれた領域に吐出する。赤色発光層21r、緑色発光層21g及び青色発光層21bを構成する塗布膜を形成する際、吐出したインクを乾燥して硬化させた後の膜厚が所定の膜厚となるように吐出量を決定する。
【0077】
本実施の形態において、インクは、カドミウム-セレン系の量子ドット材料をアクリル樹脂に分散させたものを用いた。量子ドット材料としては、粒径が20nm以上30nm以下のものを用いた。また、インクには、青色光を散乱させて発光層21中での光路長を稼ぐために酸化チタン粒子を含有させた。酸化チタン粒子としては、粒径がおおよそ100nm以上1000nm以下のものを用いた。このインクをインクジェット法により第二の隔壁24で囲まれた領域に塗布した。
【0078】
また、本実施の形態において、インクの塗布方向は、第二の隔壁24で囲まれる領域の長軸方向に対して垂直な方向である。つまり、インクの印刷方向は、R、G、Bの各ピクセルの長軸方向に対して垂直な方向である。また、インクを塗布するインクジェットヘッドのノズルは、赤色発光層21r、青色発光層21b及び緑色発光層21gごとに設けられており、これらのノズルの配列方向は、第二の隔壁24で囲まれる領域の長軸方向と同じである。これにより、第二の隔壁24で囲まれる領域同士の間隔が狭くて高解像度のピクセル配列パターンであっても、混色することなくインクを容易に塗布することができる。この点について、以下説明する。
【0079】
インクの塗布方向(印刷方向)については、インクの吐出タイミングを調整することで比較的容易にインクを所定の位置に着弾させることができる。一方、ノズルの配列方向については、インクの着弾位置の補正をすることが難しく、ノズルの加工精度に依存する。そこで、本実施の形態では、ノズルの配列方向と第二の隔壁24で囲まれる領域の長軸方向とを同じにすることで、ノズルの配列方向については、インクが着弾可能な領域を広げることで、許容されるインクの着弾位置の振れ幅を大きくしている。具体的には、第一の隔壁23で囲まれる領域(つまり発光層21が発光する発光領域)に対してインクが塗布される塗布領域である第二の隔壁24によって囲まれる領域を広くしている。これにより、高解像のピクセル配列パターンであっても、混色させることなくインクを容易に塗布することができる。
【0080】
次に、インクの塗布により塗布膜が形成された基板22を乾燥させる。この場合、インクジェット法で吐出する際のインクは、ノズルでの溶媒乾燥を抑制するために、沸点が高い溶剤を用いることが多い。このため、インクの乾燥としては、減圧乾燥を用いるとよい。減圧乾燥を行う場合、例えば、インクが塗布された基板22を乾燥炉内にセットし、乾燥炉の内部を真空ポンプで減圧して圧力を下げることで溶剤の蒸発を促進させる。この場合、到達真空度は数Paで、保持時間は数十分間である。ただし、到達真空度及び保持時間の条件は、インクに含まれる溶媒の沸点に応じて異なるため、この条件に限定されるものではない。なお、吐出するインクに溶媒が含まれず紫外光硬化樹脂のみに量子ドット材料が分散されたインクを用いる場合は、減圧乾燥等の乾燥を行わないこともある。
【0081】
次に、ホットプレートで100℃5分程度の条件で塗布膜のプリベークを行う。次に、波長が365nmの紫外光を塗布膜に照射することで塗布膜を硬化させる。この場合、紫外光の照射量は、例えば200mJ/cm
2以上1000mJ/cm
2以下である。次に、硬化炉を用いて150℃20分程度の条件で塗布膜のポストベークを行う。これにより、
図5Dに示すように、第二の隔壁24に囲まれた領域(開口部)の各々に発光層21を形成することができる。
【0082】
本実施の形態では、プリベーク(100℃5分)と紫外光の照射(波長365nm、露光量300mJ/cm2)とポストベーク(150℃20分)とを行って基板22に塗布された塗布膜を硬化させた。
【0083】
以上のようにして、
図3A及び
図3Bに示すように、複数の発光層21が所定のピッチで配列された色変換デバイス20を作製ことができる。
【0084】
なお、本実施の形態では、
図3A及び
図3Bに示すように、同色の発光層21の並び方向が第二の隔壁24で囲まれる領域の長軸方向に対して垂直な方向と一致するように構成されていたが、これに限らない。例えば、
図7A及び
図7Bに示すように、同色の発光層21の並び方向が第二の隔壁24で囲まれる領域の長軸方向に対して垂直な方向と交差するように(傾斜させる)構成されていてもよい。傾斜角度は、基板12の端辺に対して、30度~60度、40度~50度が好ましい。
図7Aは、実施の形態に係る色変換デバイスの他の構成を示す平面図であり、
図7Bは、
図7AのVIIB-VIIB線における色変換デバイスの断面図である。
図7A及び
図7Bに示される構成にすることで、第二の隔壁24で囲まれる領域同士の間隔を狭くして発光層21の数を容易に増やすことができる。つまり、より高い解像度の色変換デバイスを容易に実現することができる。
【0085】
(作用効果等)
次に、本実施の形態に係る色変換デバイス20の作用効果について、比較例の色変換デバイス20Zと比較して説明する。
図8Aは、比較例の色変換デバイス20Zの平面図であり、
図8Bは、
図8AのVIII-VIII線における比較例の色変換デバイス20Zの断面図である。
【0086】
図8A及び
図8Bに示すように、比較例の色変換デバイス20Zでは、本実施の形態に係る色変換デバイス20に対して、発光領域を規定する第一の隔壁23及びインク塗布領域を規定する第二の隔壁24のうち第一の隔壁23が存在していない。つまり、比較例の色変換デバイス20Zでは、第一の隔壁23及び第二の隔壁24のうち第二の隔壁24のみが存在している。
【0087】
このように構成される比較例の色変換デバイス20Zでは、
図3A及び
図7Aに示される本実施の形態に係る色変換デバイス20と比べて、発光層21の発光領域が大きくなる。つまり、ピクセルサイズが大きくなる。あまりピクセル間の距離が短くなると発光色間の相互干渉も起こり得るため、ピクセル間の距離を離した設計にせざるを得なくなることが考えられる。こうした場合、比較例の色変換デバイス20Zを用いたディスプレイでは、解像度が低くなり高精細な画質を実現することが困難になる。
【0088】
これに対して、本実施の形態における色変換デバイス20では、インク塗布領域を規定する第二の隔壁24と発光領域を規定する第一の隔壁23とが形成されている。具体的には、第二の隔壁24で囲まれる領域の内側に第一の隔壁23が形成されている。
【0089】
この構成により、本実施の形態における色変換デバイス20は、比較例の色変換デバイス20Zとインク塗布領域が同じである場合であっても、発光層21が発光する発光領域を小さくすることができる。これにより、比較例の色変換デバイス20Zに対して実質的にピクセルサイズを小さくして解像度を高くすることができる。言い換えると、高解像度で配置されたピクセルを有する色変換デバイス20であっても、インクジェット法により発光層21を容易に形成することができる。
【0090】
したがって、本実施の形態における色変換デバイス20及びマイクロLEDディスプレイパネル1によれば、第二の隔壁24で囲まれた領域(開口部)同士の間隔が狭くても、インクジェット法を用いて発光層21を形成することができる。これにより、混色することなく安定してインクを塗布することができるので、発光特性の低下抑制と低コスト化との両立を図ることができる。
【0091】
(変形例1)
次に、変形例1に係る色変換デバイス20Aについて、
図9を用いて説明する。
図9は、変形例1に係る色変換デバイス20Aの断面図である。
【0092】
図9に示すように、本変形例に係る色変換デバイス20Aは、上記実施の形態に係る色変換デバイス20に対して、さらに基板22上に発光体26を有する。具体的には、発光体26は、青色LED等の青色光を発する青色発光体である。青色LEDである発光体26は、基板22上に実装することで形成することができる。なお、それ以外の構成は、上記実施の形態における色変換デバイス20と同じである。
【0093】
このように、本変形例に係る色変換デバイス20Aによれば、発光体26が組み込まれているので、色変換デバイス20Aに発光デバイスの機能を持たせることができる。これにより、発光デバイス10を色変換デバイス20Aに貼り合わせことなくマイクロLEDディスプレイパネルを実現することができる。つまり、色変換デバイス20AそのものをマイクロLEDディスプレイにすることができる。したがって、マイクロLEDディスプレイパネルの薄型化が図れる。
【0094】
(変形例2)
次に、変形例2に係る色変換デバイス20Bについて、
図10A~
図10Cを用いて説明する。
図10A~
図10Cは、変形例2に係る色変換デバイス20Bの製造方法を説明するための図である。
【0095】
本変形例に係る色変換デバイス20Bは、上記実施の形態に係る色変換デバイス20に対して、第一の隔壁23Bの頂部の濡れ性が低くなっている。具体的には、各発光層21において、第一の隔壁23Bの頂部のインク40に対する静止接触角は、第一の隔壁23の内壁面(側面)のインク40に対する静止接触角と同じかそれ以上になっている。また、第二の隔壁24Bについては、各発光層21において、第二の隔壁24Bの頂部のインク40に対する静止接触角は、第二の隔壁24Bの内壁面(側面)のインク40に対する静止接触角よりも大きくなっている。なお、
図10A及び
図10Bにおいて、インク40rは、赤色発光層21rを形成するためのインクを示しており、インク40gは、緑色発光層21gを形成するためのインクを示している。
【0096】
本変形例において、第一の隔壁23Bの頂部のインク40に対する静止接触角をC1とし、第一の隔壁23Bの内壁面の静止接触角をC2とし、第二の隔壁24Bの頂部の静止接触角をC3とし、第二の隔壁24Bの内壁面の静止接触角をC4とすると、C1~C4は、C3>C1≧C2=C4の関係式を満たす。一例として、静止接触角C1及びC3は、40°以上70°以下であり、静止接触角C2及びC4は、5°以上40°以下である。
【0097】
第一の隔壁23B及び第二の隔壁24Bとしては、紫外光を照射した部分が硬化し、樹脂中のフッ素成分が膜の表面に偏析するような樹脂材料を用いることができる。これにより、頂部の静止接触角が内壁面の静止接触角より大きい第一の隔壁23B及び第二の隔壁24Bを形成することができる。なお、第一の隔壁23B及び第二の隔壁24B以外の構成は、上記実施の形態における色変換デバイス20と同じである。
【0098】
最初、隔壁を形成するための材料は、液体状態でフッ素は均一に含まれる。隔壁形成のために、塗布、露光する。露光された部分で重合反応が開始する。その後、ベークで完全硬化する。その際に膜中のフッ素成分が上方へ偏析する。その結果、形成された隔壁では、表面にフッ素が多く含まれる。
【0099】
第一の隔壁23Bの頂部と第二の隔壁24Bの頂部の静止接触角は、隔壁の膜厚で静止接触角が変わるような上記材料を用いることで調整できる。用いるフッ素含有樹脂は膜厚の違いでフッ素の含有量が変わり、静止接触角が変わる。また、第一の隔壁と第二の隔壁、それぞれ異なる材料を用いることで静止接触角を変えることを行っても良い。
【0100】
このように、本変形例における色変換デバイス20Bでは、第一の隔壁23Bの頂部の濡れ性が低くなっているので、
図10Aに示すように、第二の隔壁24Bで囲まれた領域にインクジェット法によりインク40を塗布する場合、インク40を塗布した直後は、
図10Bに示すように、第一の隔壁23Bの頂部も覆うようにインク40が存在することになるが、第一の隔壁23Bの頂部のインク40に対する静止接触角が第一の隔壁23Bの内壁面のインク40に対する静止接触角よりも大きくなっているので、第一の隔壁23Bの頂部に乗っているインク40は、第一の隔壁23Bの内壁面に沿って滑り落ちていき、最終的には第一の隔壁23Bで囲まれた領域の中にインク40が収まることになる。
【0101】
また、第二の隔壁24Bの頂部の濡れ性は、前述の静止接触角に加えて、後退接触角で規定される。後退接触角とは液体と固体の界面が動いている状態、すなわちインクの界面が動く、動的な状況の接触角のことである。後退接触角が小さいと、隔壁上に乗り上げたインクが乾燥したり、硬化したりして収縮する際に、インクが濡れ残りやすく隔壁上に残ってしまう。第二の隔壁24Bのインクに対する後退接触角は15°以上であり、20°以上がより望ましい。
(後退接触角の違いによるインク濡れの比較)
表1には隔壁の種類を変えたときの、インクの静止接触角と後退接触角と、さらに隔壁上のインクの濡れについて示している。
【0102】
【表1】
後退接触角はインクの材料組成と隔壁の材料組成の表面エネルギーのバランスで決まる。インクAやインクBのように後退接触角が15°以上であると、インク収縮後に隔壁上にインクの濡れ残りがないが、インクCやインクDのように後退接触角が15°以下であると、隔壁上にインクの濡れ残りが発生してしまうことが分かる。
【0103】
上記のような材料の条件においては、
図10Cに示すように、第一の隔壁23Bの頂部に発光層21が形成されず、発光層21が第一の隔壁23Bの中に収まる形状になる。この構成により、発光層21の発光領域以外から意図しない光が出射することを完全になくすことができる。
【0104】
(実施例3)
次に、変形例3に係る色変換デバイス20Cについて、
図11A~
図11Cを用いて説明する。
図11Aは、変形例3に係る色変換デバイス20Cの平面図であり、
図11Bは、
図11AのXIB-XIB線における断面図であり、
図11Cは、
図11AのXIC-XIC線における断面図である。
【0105】
上記実施の形態における色変換デバイス20では、第二の隔壁24で囲まれる領域には、第一の隔壁23で囲まれる領域が1つ含まれていたが、本変形例における色変換デバイス20Cでは、
図11A~
図11Cに示すように、第二の隔壁24Cで囲まれる領域には、第一の隔壁23Cで囲まれる領域が2つ以上含まれる。具体的には、本変形例では、第二の隔壁24Cで囲まれる領域の1つには、第一の隔壁23Cで囲まれる領域が4つ含まれている。また、
図11Cに示すように、異なる色のピクセルは、第二の隔壁24Cで仕切られている。
【0106】
本変形例に係る色変換デバイス20Cによれば、複数のピクセルに対してライン上に一括してインクを塗布することができるので、ピクセル間の膜厚均一性が向上する。また、一般的にインクジェットヘッドのノズル間にはノズルの加工ばらつきに起因する吐出液滴体積のばらつきが存在するが、本変形例に係る色変換デバイス20Cによれば、複数のノズルで複数のピクセルの発光層21を形成することができるので、ノズル間のばらつきが平均化される。これにより、ピクセル間の膜厚の均一性が飛躍的に向上する。
【0107】
なお、本変形例において、第一の隔壁23Cで囲まれた領域の直径と第二の隔壁24Cの短軸方向の長さとは同一であったが、これに限らない。具体的には、
図12に示すように、第一の隔壁23Cで囲まれた領域と第二の隔壁24Cで囲まれた領域とは、平面視において二重円の形態であってもよい。具体的には、第二の隔壁24Cで囲まれた領域が、長軸及び短軸共に第一の隔壁23Cで囲まれた領域よりも大きくてもよい。
【0108】
(その他の変形例)
以上、本開示に係る色変換デバイス及びマイクロLEDディスプレイパネル等について、実施の形態及び変形例1~3に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態及び変形例1~3に限定されるものではない。
【0109】
例えば、上記の実施の形態及び変形例1~3において、発光層21が発光する発光領域を規定する第一の隔壁23、23B又は23Cによって囲まれた領域の平面視形状は、円形に限らず、四角形等の多角形又は長円形等のその他の形状であってもよい。同様に、発光層21が形成される形成領域(インク塗布領域)を規定する第二の隔壁24によって囲まれた領域の平面視形状も、長円に限らず、四角形等の多角形等のその他の形状であってもよい。
【0110】
また、上記の実施の形態及び変形例1~3において、青色発光層21bには量子ドット材料が含まれていなかったが、これに限らない。つまり、青色発光層21bに量子ドット材料が含まれていてもよい。この場合、青色発光層21bには、紫外光等の励起光の照射により青色光を発する量子ドット材料が含まれる。
【0111】
その他に、上記の実施の形態及び変形例1~3に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態及び変形例1~3における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【0112】
発光材料として、量子ドット材料でなくとも、他の発光材料でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本開示の技術は、色変換デバイス及びマイクロLEDディスプレイパネル等の発光層等の機能膜を有する種々のデバイスに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 マイクロLEDディスプレイパネル
10 発光デバイス
11、26 発光体
12、22、22X 基板
13 隔壁
20、20A、20B、20C、20Z 色変換デバイス
21 発光層
21r 赤色発光層
21g 緑色発光層
21b 青色発光層
21Y 発光層
23、23B、23C 第一の隔壁
24、24B、24C 第二の隔壁
24X、24Y 隔壁
25 カラーフィルタ
25r 赤色カラーフィルタ
25g 緑色カラーフィルタ
25b 青色カラーフィルタ
30 隔壁材料
40、40r、40g、40Y インク
100 フォトマスク
101 遮蔽部
102 第一の開口部
103 第二の開口部