(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】疲労推定システム、疲労推定方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20231208BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
A61B5/16 200
A61B5/107 300
(21)【出願番号】P 2022526925
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2021018944
(87)【国際公開番号】W WO2021241347
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2020092136
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一輝
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-150150(JP,A)
【文献】特開2015-156877(JP,A)
【文献】特開2019-115651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の身体部位の位置に関する情報を出力する情報出力装置と、
前記対象者の特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者に蓄積される単位疲労度とが対応付けられた姿勢疲労情報が格納された記憶装置と、
所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度を推定する推定装置と、を備え、
前記推定装置は、
前記所定期間内に出力された前記情報に基づいて、前記所定期間内の前記対象者の姿勢を推定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当するか否かを判定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、前記単位疲労度を積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度として推定
し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した場合に、
推定した前記対象者の姿勢の特徴量を取得し、
前記特徴量を用いて、前記単位疲労度を補正し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、補正後の前記単位疲労度を加算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度として推定し、
前記特徴量は、前記特定姿勢に該当する範囲内に含まれる、基準姿勢と、推定された前記対象者の姿勢との差分であり、前記差分が大きいほど大きい補正量で前記単位疲労度を補正する
疲労推定システム。
【請求項2】
前記姿勢疲労情報では、
前記対象者の前記特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者の身体部位のうちの第1部位に蓄積される前記単位疲労度の一部である第1単位疲労度とが対応付けられ、
前記対象者の前記特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者の身体部位のうちの第2部位に蓄積される前記単位疲労度の一部である第2単位疲労度とが対応付けられ、
前記推定装置は、推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、
前記第1単位疲労度を積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者の前記第1部位に蓄積された疲労度として推定し、
前記第2単位疲労度を積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者の前記第2部位に蓄積された疲労度として推定する
請求項1に記載の疲労推定システム。
【請求項3】
対象者の身体部位の位置に関する情報を出力する情報出力装置と、
前記対象者の特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者に蓄積される単位疲労度とが対応付けられた姿勢疲労情報が格納された記憶装置と、
所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度を推定する推定装置と、を備え、
前記推定装置は、
前記所定期間内に出力された前記情報に基づいて、前記所定期間内の前記対象者の姿勢を推定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当するか否かを判定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、前記単位疲労度を積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度として推定し、
前記姿勢疲労情報では、
前記対象者の前記特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者の身体部位のうちの第1部位に蓄積される前記単位疲労度の一部である第1単位疲労度とが対応付けられ、
前記対象者の前記特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者の身体部位のうちの第2部位に蓄積される前記単位疲労度の一部である第2単位疲労度とが対応付けられ、
前記推定装置は、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、
前記第1単位疲労度を積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者の前記第1部位に蓄積された疲労度として推定し、
前記第2単位疲労度を積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者の前記第2部位に蓄積された疲労度として推定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した場合に、
推定した前記対象者の姿勢の特徴量を取得し、
前記特徴量を用いて、前記単位疲労度を補正し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、補正後の前記単位疲労度を加算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度として推定し、
前記特徴量は、前記対象者の前記第1部位に対応する身体部位が接触する圧力センサから取得された圧力値であり、
前記推定装置は、前記圧力値が大きいほど、大きい補正量で前記第1単位疲労度を補正する
疲労推定システム。
【請求項4】
前記特徴量は、前記特定姿勢に該当する範囲内に含まれる、基準姿勢と、推定された前記対象者の姿勢との差分であり、前記差分が大きいほど大きい補正量で前記単位疲労度を補正する
請求項
3に記載の疲労推定システム。
【請求項5】
対象者の身体部位の位置に関する情報を出力する情報出力装置と、
前記対象者の特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者に蓄積される単位疲労度とが対応付けられた姿勢疲労情報が格納された記憶装置と、
所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度を推定する推定装置と、を備え、
前記推定装置は、
前記所定期間内に出力された前記情報に基づいて、前記所定期間内の前記対象者の姿勢を推定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当するか否かを判定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、前記単位疲労度を積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度として推定し、
前記姿勢疲労情報において、前記対象者の前記特定姿勢は、物体が介在することにより維持される姿勢として定義され、
前記推定装置は、
前記物体の有無を示す物体検知情報を取得し、
前記物体検知情報によって前記物体が存在することが示される場合に、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当するか否かを判定する
疲労推定システム。
【請求項6】
対象者の身体部位の位置に関する情報を出力する情報出力装置と、
前記対象者の特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者に蓄積される単位疲労度とが対応付けられた姿勢疲労情報が格納された記憶装置と、
所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度を推定する推定装置と、を備え、
前記推定装置は、
前記所定期間内に出力された前記情報に基づいて、前記所定期間内の前記対象者の姿勢を推定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当するか否かを判定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、前記単位疲労度を積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度として推定し、
前記姿勢疲労情報において、前記対象者の前記特定姿勢は、物体が介在しないことにより維持される姿勢として定義され、
前記推定装置は、
前記物体の有無を示す物体検知情報を取得し、
前記物体検知情報によって前記物体が存在しないことが示される場合に、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当するか否かを判定する
疲労推定システム。
【請求項7】
対象者の身体部位の位置に関する情報を出力する情報出力装置と、
前記対象者の特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者に蓄積される単位疲労度とが対応付けられた姿勢疲労情報が格納された記憶装置と、
所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度を推定する推定装置と、を備え、
前記推定装置は、
前記所定期間内に出力された前記情報に基づいて、前記所定期間内の前記対象者の姿勢を推定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当するか否かを判定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、前記単位疲労度を積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度として推定し、
前記推定装置は、前記情報出力装置が前記情報を出力できない前記所定期間内の期間である空白期間において、あらかじめ設定された補填疲労度を前記空白期間の長さに応じて積算する
疲労推定システム。
【請求項8】
前記対象者の前記特定姿勢は、前記対象者の関節ごとの相対位置によって定義される関節位置モデルで定義され、
前記推定装置は、前記所定期間内の前記対象者の姿勢の推定結果として前記関節位置モデルを出力する
請求項
1~7のいずれか一項に記載の疲労推定システム。
【請求項9】
対象者の身体部位の位置に関する情報を取得する取得ステップと、
記憶装置から、前記対象者の特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者に蓄積される単位疲労度とが対応付けられた姿勢疲労情報を読出す読出しステップと、
所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度を推定する推定ステップと、を含み、
前記推定ステップでは、
前記所定期間内に出力された前記情報に基づいて、前記所定期間内の前記対象者の姿勢を推定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当するか否かを判定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、前記単位疲労度を
積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度として推定
し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した場合に、
推定した前記対象者の姿勢の特徴量を取得し、
前記特徴量を用いて、前記単位疲労度を補正し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、補正後の前記単位疲労度を加算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度として推定し、
前記特徴量は、前記特定姿勢に該当する範囲内に含まれる、基準姿勢と、推定された前記対象者の姿勢との差分であり、前記差分が大きいほど大きい補正量で前記単位疲労度を補正する
疲労推定方法。
【請求項10】
対象者の身体部位の位置に関する情報を取得する取得ステップと、
記憶装置から、前記対象者の特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者に蓄積される単位疲労度とが対応付けられた姿勢疲労情報を読出す読出しステップと、
所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度を推定する推定ステップと、を含み、
前記推定ステップでは、
前記所定期間内に出力された前記情報に基づいて、前記所定期間内の前記対象者の姿勢を推定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当するか否かを判定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、前記単位疲労度を積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度として推定し、
前記姿勢疲労情報では、
前記対象者の前記特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者の身体部位のうちの第1部位に蓄積される前記単位疲労度の一部である第1単位疲労度とが対応付けられ、
前記対象者の前記特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者の身体部位のうちの第2部位に蓄積される前記単位疲労度の一部である第2単位疲労度とが対応付けられ、
前記推定ステップでは、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、
前記第1単位疲労度を積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者の前記第1部位に蓄積された疲労度として推定し、
前記第2単位疲労度を積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者の前記第2部位に蓄積された疲労度として推定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した場合に、
推定した前記対象者の姿勢の特徴量を取得し、
前記特徴量を用いて、前記単位疲労度を補正し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、補正後の前記単位疲労度を加算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度として推定し、
前記特徴量は、前記対象者の前記第1部位に対応する身体部位が接触する圧力センサから取得された圧力値であり、
前記推定ステップでは、前記圧力値が大きいほど、大きい補正量で前記第1単位疲労度を補正する
疲労推定方法。
【請求項11】
対象者の身体部位の位置に関する情報を取得する取得ステップと、
記憶装置から、前記対象者の特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者に蓄積される単位疲労度とが対応付けられた姿勢疲労情報を読出す読出しステップと、
所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度を推定する推定ステップと、を含み、
前記推定ステップでは、
前記所定期間内に出力された前記情報に基づいて、前記所定期間内の前記対象者の姿勢を推定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当するか否かを判定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、前記単位疲労度を積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度として推定し、
前記姿勢疲労情報において、前記対象者の前記特定姿勢は、物体が介在することにより維持される姿勢として定義され、
前記推定ステップでは、
前記物体の有無を示す物体検知情報を取得し、
前記物体検知情報によって前記物体が存在することが示される場合に、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当するか否かを判定する
疲労推定方法。
【請求項12】
対象者の身体部位の位置に関する情報を取得する取得ステップと、
記憶装置から、前記対象者の特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者に蓄積される単位疲労度とが対応付けられた姿勢疲労情報を読出す読出しステップと、
所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度を推定する推定ステップと、を含み、
前記推定ステップでは、
前記所定期間内に出力された前記情報に基づいて、前記所定期間内の前記対象者の姿勢を推定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当するか否かを判定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、前記単位疲労度を積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度として推定し、
前記姿勢疲労情報において、前記対象者の前記特定姿勢は、物体が介在しないことにより維持される姿勢として定義され、
前記推定ステップでは、
前記物体の有無を示す物体検知情報を取得し、
前記物体検知情報によって前記物体が存在しないことが示される場合に、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当するか否かを判定する
疲労推定方法。
【請求項13】
対象者の身体部位の位置に関する情報を取得する取得ステップと、
記憶装置から、前記対象者の特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者に蓄積される単位疲労度とが対応付けられた姿勢疲労情報を読出す読出しステップと、
所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度を推定する推定ステップと、を含み、
前記推定ステップでは、
前記所定期間内に出力された前記情報に基づいて、前記所定期間内の前記対象者の姿勢を推定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当するか否かを判定し、
推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、前記単位疲労度を積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度として推定し、
前記推定ステップでは、前記取得ステップにおける前記情報の取得ができない前記所定期間内の期間である空白期間において、あらかじめ設定された補填疲労度を前記空白期間の長さに応じて積算する
疲労推定方法。
【請求項14】
請求項
9~13のいずれか一項に記載の疲労推定方法をコンピュータに実行させるための
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象者の疲労度を推定するための疲労推定システム、疲労推定方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、疲労の蓄積から体調不良をはじめ、怪我及び事故等につながるといった事例が散見される。これに対して、疲労の程度を推定することにより、体調不良、怪我及び事故等を未然に防ぐ技術が注目されるようになった。例えば、上記の疲労の程度にあたる疲労度を推定するための疲労推定システムとして、力計測、及び生体電気インピーダンス計測に基づいて疲労の有無及び疲労の種類を判定する、疲労判定装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、疲労度の推定のための計算処理は、適切に行われていない場合がある。そこで、本開示では、より適切な計算処理によって対象者の疲労度を推定する疲労推定システム等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る疲労推定システムは、対象者の身体部位の位置に関する情報を出力する情報出力装置と、前記対象者の特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者に蓄積される単位疲労度とが対応付けられた姿勢疲労情報が格納された記憶装置と、所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度を推定する推定装置と、を備え、前記推定装置は、前記所定期間内に出力された前記情報に基づいて、前記所定期間内の前記対象者の姿勢を推定し、推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当するか否かを判定し、推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、前記単位疲労度を積算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度として推定する。
【0006】
また、本開示の一態様に係る疲労推定方法は、対象者の身体部位の位置に関する情報を取得する取得ステップと、記憶装置から、前記対象者の特定姿勢と、前記特定姿勢を単位時間維持することで前記対象者に蓄積される単位疲労度とが対応付けられた姿勢疲労情報を読出す読出しステップと、所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度を推定する推定ステップと、を含み、前記推定ステップでは、前記所定期間内に出力された前記情報に基づいて、前記所定期間内の前記対象者の姿勢を推定し、推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当するか否かを判定し、推定した前記対象者の姿勢が、前記特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、前記単位疲労度を加算して得られる計算値を、前記所定期間内に前記対象者に蓄積された疲労度として推定する。
【0007】
また、本開示の一態様は、上記に記載の疲労推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係る疲労推定システム等は、より適切な計算処理により対象者の疲労度を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態における疲労推定システムの概要を説明する概略図である。
【
図2】
図2は、実施の形態における疲労推定システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態における姿勢疲労情報を説明するための図である。
【
図4A】
図4Aは、実施の形態における特定姿勢について説明するための第1図である。
【
図4B】
図4Bは、実施の形態における特定姿勢について説明するための第2図である。
【
図4C】
図4Cは、実施の形態における特定姿勢について説明するための第3図である。
【
図5】
図5は、実施の形態における姿勢疲労情報の構築に用いられる筋骨格モデルを示す図である。
【
図6A】
図6Aは、実施の形態における特徴量を説明する第1図である。
【
図6B】
図6Bは、実施の形態における特徴量を説明する第2図である。
【
図7】
図7は、実施の形態における特徴量を説明する第3図である。
【
図8】
図8は、実施の形態における空白期間について説明する図である。
【
図9】
図9は、実施の形態における疲労推定システムから出力される情報を例示する図である。
【
図10】
図10は、実施の形態における疲労推定システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0012】
(実施の形態)
[システム構成]
はじめに、実施の形態における疲労推定システムの全体構成について
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態における疲労推定システムの概要を説明する概略図である。
図1では、疲労推定システム200を用いて、対象者11の疲労度の推定が実施されている様子が示されている。
図1に示された場面では、対象者11は、椅子12に着座し、テーブル13の上に置かれたコンピュータ100aを操作している。
【0013】
本実施の形態では、疲労推定システム200は、撮像装置101において撮像された対象者11の画像に基づいて対象者11の疲労度の推定を実施する。撮像装置101が撮像した画像は、インターネット等のネットワークを介して、推定装置100へと送信される。推定装置100は、例えば、クラウドサーバ等のサーバ装置に実装された計算処理装置であり、画像に基づいて、当該画像に含まれる対象者11の疲労度の推定を行う。推定結果は、例えば、ネットワークを介して対象者11が操作するコンピュータ100aへと送信され、コンピュータ100aの画面上に表示される。
【0014】
このように対象者11は、コンピュータ100aを用いた作業中に、同じコンピュータ100a上に表示される推定結果を確認することができる。なお、本実施の形態では上記に説明したようにサーバ装置によって推定装置100が実現される例を説明するが、疲労推定システムの構成はこれに限られない。例えば、推定装置100はコンピュータ100aに内蔵することもできる。つまり、コンピュータ100aは、別の実施の形態での推定装置である。
【0015】
本開示では、推定装置100において、対象者11の姿勢から対象者11の疲労度の推定を行う際、あらかじめ構築された姿勢疲労情報を用いることで、大幅に計算処理を削減することができる。姿勢疲労情報等についての詳細は後述する。上記により、例えば処理性能が低いコンピュータ100aを用いて計算処理を行っても、疲労推定システム200を実現できる。
【0016】
推定装置としてコンピュータ100aを用いる場合、ネットワーク及びサーバ装置を備える必要がないので、簡易な構成で疲労推定システム200を実現できる。また、コンピュータ100aには、対象者11を撮像できる位置にカメラが設けられる場合があり、当該カメラを上記の撮像装置101として利用することで、コンピュータ100aのみで疲労推定システムを実現することも可能である。
【0017】
また、処理性能が比較的高いサーバ装置を用いて疲労推定システム200を実現すれば、略同時的に推定結果を得ることができるため、対象者11は、常に自身の疲労度を把握しながら作業を行うことができる。
【0018】
図2は、実施の形態における疲労推定システムの機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施の形態における疲労推定システム200は、推定装置100、撮像装置101、圧力センサ102、及び、表示装置103を備える。
【0019】
推定装置100は、上記したように、対象者に蓄積された疲労度を推定する処理装置であり、サーバ装置に実装されて実現される。推定装置100は、第1取得部21、差分算出部22、第2取得部23、記憶部24、姿勢推定部25、判定部26、疲労推定部27、及び、出力部28を備える。
【0020】
第1取得部21は、対象者11が撮像された画像を取得する通信モジュールである。第1取得部21は、例えば、撮像装置101において撮像された画像を、ネットワークを介して撮像装置101と通信することで取得する。
【0021】
撮像装置101は、対象者11を含む画像を撮像することにより出力する装置であり、例えば、監視カメラ等の施設に設置されたカメラ、コンピュータ100a又は携帯端末等に内蔵されたカメラ、及び、疲労推定システム200の専用のカメラによって実現される。なお、撮像装置101が出力し、第1取得部21によって取得される画像は、時系列に沿って連続的に撮像されたいわゆる動画像である。第1取得部21は、このような動画像を撮像装置101による撮像に並行して取得する。第1取得部21は、取得した画像を姿勢推定部25へと出力する。
【0022】
姿勢推定部25は、第1取得部21から出力された画像に基づいて、対象者11の姿勢を推定する処理部である。姿勢推定部25は、プロセッサ及びメモリ等により所定のプログラムが実行されることで実現される。上記したように、画像は、時系列上で連続した画像から成る動画像であるため、姿勢推定部25は、動画像を構成する画像の各々について対象者11の姿勢を推定する。これにより、姿勢推定部25からは、疲労度の推定が行われる期間の全期間にわたって、推定された対象者11の姿勢が出力される。ただし、対象者11が撮像装置101の画角から離れた際には、姿勢推定部25は、対象者11の姿勢の推定を停止してもよい。
【0023】
姿勢推定部25は、所定のプログラムによって画像処理を行うことで、画像に含まれる対象者11の画像内での関節位置を特定する。姿勢推定部25は、姿勢推定の結果として、関節同士の相対位置によって2つの関節間を所定の長さの骨格が接続することで表現される関節位置モデルを出力する。なお、関節位置モデルは、関節間を接続する骨格同士の相対位置と1対1に対応するため、骨格位置モデルと読み替えてもよい。推定装置100では、ここで対象者11の姿勢として出力される関節位置モデルが記憶部24に格納された姿勢疲労情報と照合されることで、対象者11の疲労度の推定が行われる。
【0024】
記憶部24は、半導体メモリ、磁気記憶媒体、及び、光学記憶媒体等によって実現される記憶装置である。記憶部24には、姿勢疲労情報を含む推定装置100において使用される各種情報が格納されている。推定装置100の各処理部等は、記憶部24から必要な情報を読出すことで当該情報を使用し、必要に応じて、生成等した情報を新たに記憶部24に書込む。
【0025】
ここで、姿勢疲労情報について、
図3、及び
図4A~
図4Cを参照して説明する。
図3は、実施の形態における姿勢疲労情報を説明するための図である。
図3には、記憶部24と、記憶部24に格納された姿勢疲労情報とが図示されている。姿勢疲労情報は、特定姿勢と、当該特性姿勢を単位時間維持することにより対象者11に蓄積される疲労度である単位疲労度とを対応付ける情報である。
【0026】
本実施の形態においては、姿勢疲労情報は、複数(ここでは3つ)の特定姿勢の情報を含んでおり、便宜上、それぞれの特定姿勢を姿勢A、姿勢B、及び、姿勢Cと呼ぶ。
図4Aは、実施の形態における特定姿勢について説明するための第1図であり、上記の姿勢Aに対応する対象者11を破線で示している。また、
図4Bは、実施の形態における特定姿勢について説明するための第2図であり、上記の姿勢Bに対応する対象者11を破線で示している。また、
図4Cは、実施の形態における特定姿勢について説明するための第3図であり、上記の姿勢Cに対応する対象者11を破線で示している。なお、姿勢疲労情報は、さらに多くの特定姿勢を含んでいてもよい。
【0027】
例えば、姿勢疲労情報に含まれる姿勢Aの情報24aは、
図4Aに示した対象者11の姿勢に対応する特定姿勢である。
図3及び
図4A~
図4Cに示すように、姿勢疲労情報における特定姿勢は、黒点で示す対象者の関節が、直線で示す対象者の骨格によって接続され、関節同士(又は骨格同士)の相対位置によって定義されている。つまり、姿勢疲労情報における特定姿勢は、上記の姿勢推定部25の出力と同等の情報を有する関節位置モデル11aである。また、
図3に示すように、姿勢疲労情報には、単位時間(ここでは1秒)あたりに対象者11に蓄積される単位疲労度が示されている。
【0028】
本実施の形態では、姿勢Aの単位疲労度は、対象者11の部位ごとに異なる疲労度に設定されている。具体的には、姿勢Aは、単位時間維持することにより対象者11の第1部位である肩に蓄積される第1単位疲労度の0.24と、第2部位である背に蓄積される第2単位疲労度の0.19と、第3部位である腰に蓄積される第3疲労度の0.32とが、個別に設定されている。つまり、対象者11が姿勢Aを維持すると、1秒あたり対象者の肩、背、及び、腰にそれぞれ異なる疲労度が蓄積される。
【0029】
また、本実施の形態の姿勢Aは、椅子12への着座を前提とした姿勢であるため、対象者11の姿勢との照合の際に、対象者11の周囲に椅子が存在するか否かの判定を行う。この検知に用いるために、姿勢Aの情報24aは、対象者11の周囲に椅子12が存在することを示す情報を含んでいる。なお、対象者11の周囲とは、対象者11が接触可能な範囲であり、椅子12等の物体の存在によって対象者11の姿勢の維持に物理的に寄与する範囲を意味する。対象者11の周囲とは、例えば、対象者11が手足を伸ばした際に手足に接触する位置を含む範囲を示している。
【0030】
このように、特定姿勢は、例えば、椅子12及びテーブル13等の物体が介在することにより維持される姿勢として定義される場合がある。また、これとは逆に、物体が介在しないことにより維持される姿勢として、特定姿勢が定義される場合がある。例えば、対象者11が立位である場合に、対象者11が荷物等を保持しているか否かを関節位置モデルによって推定することは困難であるが、保持する荷物の有無によって、疲労度が大きく異なるため、荷物等を持つ場合と、持たない場合とを区別する必要がある。
【0031】
したがって、上記の構成とすることで、姿勢推定部25は、物体として荷物等が対象者11の周囲に存在しない場合に、当該対象者11が単に立位の姿勢を維持していると推定できる。本実施の形態では、このように対象者11の周囲の物体の有無によって、対象者11の特定姿勢が定義されているため、物体に依存した疲労度の区別が成されるので、より正確な疲労度の推定を行うことができる。
【0032】
なお、対象者11の周囲の物体は、撮像装置101から取得した画像に基づいて行われる。つまり、第1取得部によって取得される画像は、姿勢推定部25が対象者11の姿勢推定のために用いられる情報と、対象者11の周囲の物体の有無を示す物体検知情報とを含む情報といえる。物体検知情報を用いた対象者11の疲労度の計算処理については、判定部26及び疲労推定部27の説明とともに後述する。
【0033】
次に、上記の姿勢疲労情報を構築する際の方法を、
図5を参照して説明する。
図5は、実施の形態における姿勢疲労情報の構築に用いられる筋骨格モデルを示す図である。
図5に示すような筋骨格モデル11bを用いて順動力学解析又は逆動力学解析等の解析処理によって、関節位置モデルとして出力された対象者11の姿勢(推定された姿勢)を、筋骨格モデル11bとして再現する。筋骨格モデル11bは、ある姿勢を再現させることで、当該姿勢をとるためにかかる関節及び筋肉への負荷を数値化できる。また、筋骨格モデル11bにおいて姿勢を一定時間維持させた際に、モデル上の血流の悪化を数値化できる。
【0034】
したがって、推定された姿勢を筋骨格モデル11bによって再現することで、筋肉負荷、関節負荷、及び、一定時間後の血流の悪化度を計算によって得ることができる。筋肉負荷、関節負荷、及び、血流の悪化度は、疲労に密接な関係があるため、これら数値を用いることで、推定された姿勢での一定時間(つまり上記の単位時間)あたりに蓄積される疲労度を定量化できる。ただし、この定量化のための計算は、多大な計算処理を要するために推定される姿勢の全てにこれらの計算処理を適用していくには時間と処理性能とを要するため、現実的とは言えない。
【0035】
本実施の形態では、特定姿勢のそれぞれについて、これらの計算処理をあらかじめ行い、特定姿勢と疲労度とを直接的に紐づけた姿勢疲労情報を用いることで、上記の計算処理を省略することができる。したがって、推定された姿勢が、特定姿勢に該当するか否かによって、即座に対象者11の疲労度を推定できる。このため、本実施の形態では、疲労度の推定を、処理性能の低い推定装置100で実現すること、及び、疲労度の推定の即時性を向上することができるため、より適切な計算処理によって対象者の疲労度を推定することが可能となる。
【0036】
ここでの特定姿勢は、基準となる基準姿勢と、当該基準姿勢に対して各関節の位置が所定の範囲内でずれた姿勢とを含む、許容範囲を有する姿勢として定義される。これにより、一つの特定姿勢によって複数の推定された姿勢を包括できるため、より計算が容易となる。ただし、特定姿勢の許容範囲を広げることは、推定される疲労度の正確度を低下させ、一方で、特定姿勢の許容範囲を狭めることは、推定できない姿勢の「穴」を形成してしまう。また、このような「穴」を埋めるために多数の特定姿勢を含むようにして姿勢疲労情報を構築すると、情報量が膨大になり、推定された姿勢と特定姿勢とを照合する際の処理コストが拡大される。
【0037】
よって、疲労推定システム200を設置する管理者等が要求する、推定される疲労度の正確度に応じて、このような特定姿勢の許容範囲が設定されればよい。なお、推定装置100は、例えば、単に、姿勢疲労情報に含まれる特定姿勢の中から推定された姿勢に最も近いものを選択し、選択された特定姿勢に紐づけられた単位疲労度を積算してもよい。あるいは、推定装置100は、例えば、推定された姿勢が、姿勢疲労情報に含まれる特定姿勢に該当しない場合には、単位疲労度として平均的な疲労度を割り当て、特定姿勢に該当しない姿勢についての疲労度の推定を行ってもよい。
【0038】
また、本実施の形態では、単位疲労度を、推定された姿勢の特徴量を用いて補正することでより正確な疲労度の推定を行う。一例として、推定された姿勢が該当する特定姿勢における基準姿勢からの推定された姿勢の差分(つまり、ずれ量)を、特徴量として用いて特定姿勢に設定された単位疲労度の補正を行う。この補正は、主に差分算出部22、及び、第2取得部23において行われる。
【0039】
再び
図2を参照して、差分算出部22は、基準姿勢と推定された姿勢との差分を算出する処理部である。差分算出部22は、プロセッサ及びメモリ等により所定のプログラムが実行されることで実現される。具体的には、差分算出部22は、後述する判定部26及び疲労推定部27において推定された姿勢との照合が行われて見つけ出された特定姿勢を使用する。特定姿勢には、上記したように基準姿勢が含まれており、差分算出部22は、推定された姿勢の基準姿勢からの差分を算出する。
【0040】
第2取得部23は、算出された特徴量であるずれ量を取得し、単位疲労度を補正する処理部である。第2取得部23は、プロセッサ及びメモリ等により所定のプログラムが実行されることで実現される。
【0041】
以下、
図6A及び
図6Bを参照してより詳しく説明する。
図6Aは、実施の形態における特徴量を説明する第1図である。
図6Aでは、上記の姿勢Aにおいて、推定された姿勢が破線及び白抜き点の関節位置モデル11cで示され、基準姿勢が実線及び黒点の関節位置モデル11aで示されている。また、
図6Bは、実施の形態における特徴量を説明する第2図である。
図6Bでは、基準姿勢と推定された姿勢との差分(ここでは、腰関節を軸とした上半身の角度差)、及び、補正によって決定される単位疲労度の相関関係が示されている。
【0042】
ここで、例えば、差分算出部22は、推定された姿勢が該当する特定姿勢の単位疲労度を身体部位ごとの単位疲労度に分離した際の、支配的な単位疲労度を有する身体部位についての差分を算出してもよい。つまり、上記の姿勢Aでは、腰の単位疲労度が最も大きい値であり、支配的な単位疲労度といえる。そこで、本実施の形態では、
図6Aに示すように、腰関節に着目して、基準姿勢と推定された姿勢との差分を算出する。ここでは、差分算出部22は、腰関節を回転軸とした場合に、当該腰関節より上半身側で、基準姿勢から推定された姿勢への回転量を差分として算出している。
【0043】
例えば、図中の例では、基準姿勢に対して推定された姿勢は、差分として‐5°の角度差を有する。なお、ここでの正負の符号は、ずれの方向を示す符号として便宜的に付されたものであり、正負が入れ替えられてもよい。図中では、負の符号は、基準姿勢に対する前傾方向へのずれを示し、正の符号は、基準姿勢に対する後傾方向へのずれを示している。
【0044】
第2取得部23は、この角度差を用いて、
図6Bの相関関係から補正後の単位疲労度を算出する。例えば、
図6Bでは、負の符号を有する差分では、基準姿勢よりも単位疲労度が増加し(図中の上向き矢印)、正の符号を有する差分では、基準姿勢よりも単位疲労度が減少する(図中の下向き矢印)。また、絶対値が同じ差分であっても、正負の符号によって補正量が異なる場合がある。つまり、差分と単位疲労度との関係は、線形であるとは限らない。
【0045】
さらに、本実施の形態では、対象者11の姿勢の特徴量として圧力センサ102から取得した圧力値を用いる。
【0046】
圧力センサ102は、感圧面を有し、当該感圧面に対する圧力の付与、及び、付与された圧力の大きさ(つまり、圧力値)を検知する検知器である。圧力センサ102の感圧面は、例えば、対象者11が着座する椅子12の座面及び背もたれ、対象者11の足が接触する床面、ならびに、対象者11が手を置くテーブル13の天板等に配置される。
【0047】
本実施の形態では、第2取得部23が圧力センサ102と通信することで、圧力センサ102から感圧面に対して付与される圧力値を取得する。第2取得部23は、圧力センサ102から取得した圧力値を特徴量として用いて単位疲労度を補正する。
図7は、実施の形態における特徴量を説明する第3図である。
図7では、取得された圧力値と補正後の単位疲労度との相関関係の一例が示されている。
【0048】
ここで、感圧面との接触箇所に対応する身体部位に応じて、圧力値と単位疲労度との相関関係が、正の相関となる場合と、負の相関となる場合とがある。例えば、テーブル13の天板の圧力値が大きいと、対象者11の手がテーブル13に置かれていることが想定され、圧力値の増加に応じて対象者11の肩の疲労度が減少する負の相関を示す。また、例えば、椅子12の座面前方の圧力値が大きいと、対象者11の姿勢が前傾していることが想定され、圧力値の増加に応じて対象者11の腰の疲労度が増加する正の相関を示す。
【0049】
この他、第2取得部23は、椅子12の背もたれに配置された感圧面を有する圧力センサ102によって検知された圧力値を用いて背及び腰の単位疲労度を補正してもよいし、床面に配置された感圧面を有する圧力センサ102によって検知された圧力値を用いて足等の下半身の単位疲労度を補正してもよい。また、第2取得部23は、複数個所に配置された感圧面をそれぞれ有する複数の圧力センサ102によって検知された複数の圧力値を取得し、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0050】
再び
図2を参照して、判定部26は、推定された姿勢が、特定姿勢に該当するか否かを判定する処理部である。判定部26は、プロセッサ及びメモリ等により所定のプログラムが実行されることで実現される。このように、判定部26は、姿勢疲労情報に含まれる特定姿勢と推定された姿勢との照合を行う。判定部26は、推定された姿勢が特定姿勢に該当すると判定した場合には、当該特定姿勢に紐づけられた単位疲労度を積算するように、疲労推定部27に積算指令を出力する。
【0051】
疲労推定部27は、対象者の疲労度として単位疲労度を積算した結果を生成する処理部である。疲労推定部27は、プロセッサ及びメモリ等により所定のプログラムが実行されることで実現される。例えば、疲労推定部27は、積算指令を取得している間の期間だけ単位疲労度の積算を行う。これにより、推定された姿勢が、特定姿勢に該当すると判定された期間に応じた分だけ、単位疲労度が積算され、対象者11が特定姿勢を継続している期間分の蓄積された疲労度を推定することができる。
【0052】
疲労推定部27は、所定期間の対象者11の疲労度を推定した後、推定結果を、出力部28を介して外部へと出力する。ここでの所定期間は、1日等のあらかじめ定められた期間であってもよいし、システム構成上の対象者11の疲労度が更新される最小期間の単位時間であってもよい。また、疲労推定部27は、単位時間が経過するごとに積算されている最新の疲労度を出力させ、1日が経過した時点で積算値を初期化してもよい。これにより、対象者11は、1日のはじめから現在までに蓄積されている疲労度を容易に把握することができる。
【0053】
なお、対象者11が、例えば1日の間、常に撮像装置101によって撮像可能な領域にいるとは限らない。
図8は、実施の形態における空白期間について説明する図である。例えば、
図8に示すように、対象者11が退席し、撮像装置101の画角の外に出た場合、対象者11を含む画像を撮像できない(出力できない)空白期間が形成される。例えば、このような場合、対象者11の移動先に別の撮像装置が存在すれば、疲労推定システム200は、当該別の撮像装置から画像を取得してもよい。
【0054】
また、疲労推定システム200は、対象者11の行動予定を管理するスケジュールシステムと連携することにより、予想される退席の理由に基づいて、あらかじめ設定された補填疲労度を空白期間の長さに応じて積算し、積算値を、疲労推定部27において推定された疲労度に加算してもよい。例えば、退席の理由が休憩等の場合、負の補填疲労度を空白期間の長さに応じて積算し、推定された疲労度に加算してもよい。また、例えば、退席の理由が作業等の場合、正の補填疲労度を空白期間の長さに応じて積算し、推定された疲労度に加算してもよい。これにより、空白期間についても対象者11の行動に基づいて疲労度を補填することができ、空白期間が形成されてもより正確に対象者11の疲労度を推定できる。
【0055】
出力部28は、推定された疲労度を含む推定結果を出力する処理部である。出力部28は、疲労推定部27において推定された対象者の疲労度を取得し、その他の情報と併せて画像データを生成し、ネットワークを介して表示装置103へと送信する。
【0056】
表示装置103は、受信した画像データを表示する。
図9は、実施の形態における疲労推定システムから出力される情報を例示する図である。表示装置103は、液晶パネル等の表示モジュール103aを有するディスプレイであり、表示モジュール103aを駆動することにより、受信した画像データを表示する。
【0057】
例えば、図中では、対象者11の現在の疲労度を示す画像データが表示されている。図中に示すように、画像データには、対象者11の現在の疲労度が、身体部位ごとに分けて示されている。具体的には、画像データには、対象者11の肩の疲労度を示す「肩こり度」、背の疲労度を示す「背部痛度」、及び、腰の疲労度を示す「腰痛度」が、それぞれ個別に示されている。また、これに加えて、付加的な情報として、画像データには、疲労度が示されている各身体部位の人形での位置、総合的な疲労度の評価、及び、疲労度の推定結果に対する状況及び助言等が示されている。
【0058】
この、表示装置103は、上記したように対象者11のコンピュータ100aに備えられるディスプレイが用いられるが、その他のディスプレイであってもよい。例えば、疲労推定システム200のための専用ディスプレイであってもよい。
【0059】
[動作]
次に、以上に説明した疲労推定システム200の動作について、
図10を参照して説明する。
図10は、実施の形態における疲労推定システムの動作を示すフローチャートである。
【0060】
本実施の形態における疲労推定システム200では、はじめに、姿勢推定部25が、記憶部24に格納された姿勢疲労情報を読出す(読出しステップS101)。ここで読出された姿勢疲労情報は、特定姿勢と単位疲労度とが対応付けられた情報である。
【0061】
撮像装置101は、あらかじめ稼働を開始しており、動画像を構成する複数の画像が撮像装置101から連続的に出力されている。第1取得部21は、出力される画像の取得を開始し(取得ステップS102)、以降、疲労推定システム200が停止されるまで連続的に複数の画像の取得を継続する。
【0062】
ここで、推定装置100は、起点の画像が取得されたタイミングからの期間の計測を開始する(ステップS103)。姿勢推定部25は、取得された画像に基づいて、対象者11の姿勢を推定する(ステップS104)。判定部26は、姿勢推定部25によって推定された対象者11の姿勢が、姿勢疲労情報に含まれる特定姿勢に該当するか否かを判定する(ステップS105)。なお、特定姿勢が複数含まれる場合には、複数の特定姿勢のそれぞれについて、推定された姿勢が該当するか否かの判定を順次行う。
【0063】
推定された姿勢が、特定姿勢に該当しない場合、又は、複数の特定姿勢の中に該当する特定姿勢が含まれない場合(ステップS105でNo)、ステップS103に戻り、推定装置100は、別のタイミングから期間の計測を開始する。また、姿勢推定部25は、当該別のタイミングにおける対象者の姿勢を推定する(ステップS104)。このようにして、推定された対象者11の姿勢が特定姿勢に該当するまで、期間の測定と姿勢の推定とを繰り返し行う。
【0064】
推定された姿勢が、特定姿勢に該当する場合、又は、複数の特定姿勢の中に該当する特定姿勢が含まれる場合(ステップS105でYes)、差分算出部22が算出した基準姿勢と推定された対象者11の姿勢との差分を算出し、圧力センサ102が検知した圧力値を出力する。第2取得部23は、算出された差分、及び、検知された圧力値を特徴量として取得する(ステップS106)。
【0065】
第2取得部23は、取得した特徴量によって、推定された姿勢が該当する特定姿勢の単位疲労度の補正を行う(ステップS107)。疲労推定部27は、計測された期間(つまり、特定姿勢に該当する姿勢が維持されている期間)に応じて、補正された単位疲労度を積算することで、対象者11の疲労度を推定する(ステップS108)。なお、ステップS105~ステップS108を併せて、対象者に蓄積された疲労度を推定する推定ステップともいう。
【0066】
引き続き、姿勢推定部25は、対象者11の姿勢を推定する(ステップS109)。判定部26は、再度、推定された対象者11の姿勢が、ステップS105における特定姿勢と同一の特定姿勢に該当しているかを判定する(ステップS110)。これにより、特定姿勢に該当する姿勢が維持されているかの判定が行われている。
【0067】
推定された対象者11の姿勢が、特定姿勢に該当している場合(ステップS110でYes)、ステップS106に戻り、特徴量の取得を再度実施する。例えば、同じ特定姿勢に該当していてもわずかな姿勢の変化によって特徴量に変化が生じている場合があるため、再度特徴量の取得を行うことで、姿勢の変動による疲労度の変化をより正確に捉えることが可能となる。このようにして、推定装置100は、対象者11の姿勢が特定姿勢に該当しなくなるまで、ステップS106~ステップS110を繰り返し、期間の延長(つまり時間の経過)に従って対象者11に蓄積される疲労度を推定し続ける。
【0068】
一方で、推定された対象者11の姿勢が、特定姿勢に該当していない場合、ステップS103に戻り、推定装置100は、別のタイミングから期間の計測を開始する。また、姿勢推定部25は、当該別のタイミングにおける対象者の姿勢を推定する(ステップS104)。以降同様の処理が繰り返される。推定装置100は、あらかじめ設定された所定期間が経過した後に、動作を終了する。
【0069】
なお、一度、ステップS110で、特定姿勢に該当しないと判定された後に、再びステップS105でYesとなり、ステップS108に至った際には、先のステップS110の前のステップS108で推定された疲労度に加算するようにして、通算して疲労度を推定することで、対象者11が姿勢を変えながら所定期間にわたって蓄積された疲労度が推定可能となる。
【0070】
このようにして、推定された姿勢ごとに筋骨格モデル等を用いる複雑な計算処理を行う必要なく、適切な計算処理によって、対象者11に蓄積される疲労度が推定可能となる。
【0071】
[効果等]
以上説明したように、本実施の形態における疲労推定システム200は、対象者11の身体部位の位置に関する情報を出力する情報出力装置(撮像装置101等)と、対象者11の特定姿勢と、特定姿勢を単位時間維持することで対象者11に蓄積される単位疲労度とが対応付けられた姿勢疲労情報が格納された記憶部24と、所定期間内に対象者に蓄積された疲労度を推定する推定装置100と、を備え、推定装置100は、所定期間内に前記情報出力装置から出力された情報に基づいて、所定期間内の対象者11の姿勢を推定し、推定した対象者11の姿勢が、記憶装置に格納された姿勢疲労情報が示す特定姿勢に該当するか否かを判定し、推定した対象者の姿勢が、特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、単位疲労度を積算して得られる計算値を、所定期間内に対象者11に蓄積された疲労度として推定して出力する。
【0072】
このような疲労推定システム200では、推定された対象者11の姿勢から、当該姿勢の維持において蓄積される疲労度を、あらかじめ特定姿勢と紐付けた姿勢疲労情報として格納している。姿勢から疲労度を推定するには、一般に、膨大な計算処理を伴うものの、このようにあらかじめ算出済みの疲労度と姿勢との紐づけに従って、単に姿勢疲労情報を参照していくのみで、姿勢から疲労度を推定することが可能となる。例えば、このような計算処理は、処理性能が低いシステムを用いても実現できるため、簡易な構成で疲労推定システム200を実現できる。また、一方で、処理性能が高いシステムを用いれば、姿勢からのひろうどの推定を即時的に行うことができるため、リアルタイムに対象者11等へフィードバック可能な疲労推定システム200を実現できる。よって、計算処理の見直しにより、システムに合わせて適切な計算処理で対象者の疲労度を推定することが可能となる。
【0073】
また、例えば、姿勢疲労情報では、対象者11の特定姿勢と、特定姿勢を単位時間維持することで対象者の身体部位のうちの第1部位に蓄積される単位疲労度の一部である第1単位疲労度とが対応付けられ、対象者11の特定姿勢と、特定姿勢を単位時間維持することで対象者11の身体部位のうちの第2部位に蓄積される単位疲労度の一部である第2単位疲労度とが対応付けられ、推定装置は、推定した対象者11の姿勢が、特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、第1単位疲労度を積算して得られる計算値を、所定期間内に対象者11の第1部位に蓄積された疲労度として推定し、第2単位疲労度を積算して得られる計算値を、所定期間内に対象者11の第2部位に蓄積された疲労度として推定してもよい。
【0074】
これによれば、身体部位のそれぞれについて個別に蓄積される疲労度を推定することができる。また、この推定においても、一般的な膨大な計算処理を伴うもことがなく、簡易な計算処理によって、対象者11の疲労度を身体部位の各々について個別に推定することができる。よって、適切な計算処理で対象者の疲労度を推定することが可能となる。
【0075】
また、例えば、推定装置100は、推定した対象者11の姿勢が、特定姿勢に該当すると判定した場合に、推定した対象者11の姿勢の特徴量を取得し、特徴量を用いて、単位疲労度を補正し、推定した対象者11の姿勢が、特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、補正後の単位疲労度を加算して得られる計算値を、所定期間内に対象者11に蓄積された疲労度として推定してもよい。
【0076】
これによれば、特徴量を用いて、推定される対象者11の疲労度の正確度を向上することができる。この推定においても、一般的な膨大な計算処理を伴うもことがなく、簡易な計算処理によって、対象者11の疲労度をより正確に推定することができる。よって、適切な計算処理で対象者の疲労度を推定することが可能となる。
【0077】
また、例えば、特徴量は、対象者の第1部位に対応する身体部位が接触する圧力センサ102から取得された圧力値であり、推定装置100は、圧力値が大きいほど、大きい補正量で第1単位疲労度を補正してもよい。
【0078】
これによれば、特徴量として圧力値を用いて、推定される対象者11の疲労度の正確度を向上することができる。この推定においても、一般的な膨大な計算処理を伴うもことがなく、簡易な計算処理によって、対象者11の疲労度をより正確に推定することができる。よって、適切な計算処理で対象者の疲労度を推定することが可能となる。
【0079】
また、例えば、特徴量は、特定姿勢に該当する範囲内に含まれる、基準姿勢と、推定された対象者11の姿勢との差分であり、差分が大きいほど大きい補正量で単位疲労度を補正してもよい。
【0080】
これによれば、特徴量として基準姿勢と、推定された対象者11の姿勢との差分を用いて、推定される対象者11の疲労度の正確度を向上することができる。この推定においても、一般的な膨大な計算処理を伴うもことがなく、簡易な計算処理によって、対象者11の疲労度をより正確に推定することができる。よって、適切な計算処理で対象者の疲労度を推定することが可能となる。
【0081】
また、例えば、姿勢疲労情報において、対象者11の特定姿勢は、物体(椅子12等)が介在することにより維持される姿勢として定義され、推定装置100は、物体の有無を示す物体検知情報を取得し、物体検知情報によって物体が存在することが示される場合に、推定した対象者11の姿勢が、特定姿勢に該当するか否かを判定してもよい。
【0082】
これによれば、物体の介在によって維持される姿勢と、物体が介在しないことによって維持される姿勢とを区別して、特定姿勢に該当するか否かを判定することができる。よって、適切な計算処理で対象者の疲労度を推定することが可能となる。
【0083】
また、例えば、姿勢疲労情報において、対象者11の特定姿勢は、物体(椅子12等)が介在しないことにより維持される姿勢として定義され、推定装置100は、物体の有無を示す物体検知情報を取得し、物体検知情報によって物体が存在しないことが示される場合に、推定した対象者11の姿勢が、特定姿勢に該当するか否かを判定してもよい。
【0084】
これによれば、物体の介在によって維持される姿勢と、物体が介在しないことによって維持される姿勢とを区別して、特定姿勢に該当するか否かを判定することができる。よって、適切な計算処理で対象者の疲労度を推定することが可能となる。
【0085】
また、例えば、推定装置100は、情報出力装置(撮像装置101等)が情報を出力できない所定期間内の期間である空白期間において、あらかじめ設定された補填疲労度を空白期間の長さに応じて積算してもよい。
【0086】
これによれば、画像に対象者11が含まれず、疲労度の推定ができない場合においても、あらかじめ定められた補填疲労度によって、補完を行うことができ、より正確に所定期間内に蓄積された疲労度を推定することが可能となる。よって、適切な計算処理で対象者の疲労度を推定することが可能となる。
【0087】
また、例えば、対象者11の特定姿勢は、対象者11の関節ごとの相対位置によって定義される関節位置モデルで定義され、推定装置100は、所定期間内の対象者11の姿勢の推定結果として関節位置モデルを出力してもよい。
【0088】
これによれば、簡易な情報で構築された関節位置モデル同士を照合することで、推定された姿勢が特定姿勢に該当するか否かを判定することができる。よって、適切な計算処理で対象者の疲労度を推定することが可能となる。
【0089】
また、本実施の形態における疲労推定方法は、対象者11の身体部位の位置に関する情報を取得する取得ステップS102と、記憶装置(記憶部24)から、対象者11の特定姿勢と、特定姿勢を単位時間維持することで対象者11に蓄積される単位疲労度とが対応付けられた姿勢疲労情報を読出す読出しステップS101と、所定期間内に対象者11に蓄積された疲労度を推定する推定ステップ(ステップS105~ステップS108等)と、を含み、推定ステップでは、所定期間内に出力された情報に基づいて、所定期間内の対象者11の姿勢を推定し、推定した対象者11の姿勢が、特定姿勢に該当するか否かを判定し、推定した対象者11の姿勢が、特定姿勢に該当すると判定した期間に応じて、単位疲労度を加算して得られる計算値を、所定期間内に対象者11に蓄積された疲労度として推定する。
【0090】
これによれば、上記疲労推定システム200と同様の効果を奏することができる。
【0091】
また、本実施の形態は、上記に記載の疲労推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現することもできる。
【0092】
これによれば、コンピュータを用いて、上記疲労推定方法と同様の効果を奏することができる。
【0093】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0094】
例えば、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0095】
また、本開示における疲労推定システム又は推定装置は、複数の構成要素の一部ずつを有する複数の装置で実現されてもよく、複数の構成要素のすべてを有する単一の装置で実現されてもよい。また、構成要素の機能の一部が別の構成要素の機能として実現されてもよく、各機能が各構成要素にどのように分配されてもよい。実質的に本開示の疲労推定システム又は推定装置を実現し得る機能がすべて備えられる構成を有する形態であれば本開示に含まれる。
【0096】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0097】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、各構成要素は、回路(又は集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0098】
また、本開示の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0099】
また、対象者の姿勢の推定方法として、撮像装置を用いる構成の他、位置センサを用いる構成により本開示を実現することも可能である。具体的には、位置センサ及び電位センサを含むセンサモジュールを用いて対象者の姿勢が推定される。ここでは、センサモジュールは、対象者に複数装着されるものとして説明するが、対象者に装着されるセンサモジュールの数に特に限定はない。センサモジュールが対象者に1つだけ装着されていてもよい。
【0100】
また、センサモジュールの装着様式にも特に限定はなく、対象者の所定の身体部位の位置を計測できればどのような様式であってもよい。一例として、センサモジュールが複数取り付けられた衣装を着用することで、これら複数のセンサモジュールが対象者に装着されている。
【0101】
センサモジュールは、対象者の所定の身体部位に装着され、当該所定の身体部位に連動するようにして検知又は計測の結果を示す情報を出力する装置である。具体的には、センサモジュールは、対象者の所定の身体部位の空間位置に関する位置情報を出力する位置センサ、及び、対象者の所定の身体部位における電位を示す電位情報を出力する電位センサを有する。図中では、位置センサ及び電位センサのいずれも有するセンサモジュールが示されているが、センサモジュールは、位置センサを有していれば、電位センサは必須ではない。このようなセンサモジュールにおける位置センサは、位置情報を対象者の身体部位の位置に関する情報として出力する情報出力装置の一例である。したがって、出力される情報は、位置情報であり、対象者の所定の身体部位の相対的又は絶対的な位置を含む情報である。また、出力される情報には、例えば、電位情報が含まれてもよい。電位情報は、対象者の所定の身体部位において計測される電位の値を含む情報である。位置情報及び電位情報について、以下、位置センサ及び電位センサとともに詳しく説明する。
【0102】
位置センサは、センサモジュールが装着される対象者の所定の身体部位の空間的な相対位置又は絶対位置を検知し、検知結果である所定の身体部位の空間位置に関する情報を出力する検知器である。空間位置に関する情報は、上記のように空間内における身体部位の位置が特定可能な情報と、体動に伴う身体部位の位置の変化を特定可能な情報とを含む。具体的には、空間位置に関する情報は、関節及び骨格の空間内における位置と当該位置の変化を示す情報とを含む。
【0103】
位置センサは、加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサ、及び測距センサ等の各種のセンサを組み合わせて構成される。位置センサによって出力される位置情報は、対象者の所定の身体部位の空間位置に近似することができるため、所定の身体部位の空間位置から対象者の姿勢を推定することができる。
【0104】
電位センサは、センサモジュールが装着される対象者の所定の身体部位における電位を計測し、計測結果である所定の身体部位の電位を示す情報を出力する検知器である。電位センサは、複数の電極を有し、当該複数の電極間において生じる電位を電位計によって計測する計測器である。電位センサによって出力される電位情報は、対象者の所定の身体部位において生じた電位を示し、当該電位が、所定の身体部位における筋肉の活動電位等に相当するため、所定の身体部位の活動電位等から推定される対象者の姿勢の推定精度を向上することができる。
【0105】
ここで説明した疲労推定システム一態様では、上記のようにして推定された対象者の姿勢を用いて、対象者の疲労度を推定する。なお、対象者の姿勢の推定以降の処理は、上記実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0106】
また、本開示は、疲労推定システム又は推定装置が実行する疲労推定方法として実現されてもよい。本開示は、このような疲労推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよいし、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0107】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、又は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
11 対象者
11a、11c 関節位置モデル
24 記憶部(記憶装置)
100 推定装置
101 撮像装置(情報出力装置)
200 疲労推定システム