IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】スピーカ装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20231208BHJP
   H04R 1/32 20060101ALI20231208BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20231208BHJP
   H04R 3/12 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R1/32 310A
H04R1/40 310
H04R3/12 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022568036
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2021016894
(87)【国際公開番号】W WO2022123806
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2020203136
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 信彦
(72)【発明者】
【氏名】川村 明久
(72)【発明者】
【氏名】坂口 敦
(72)【発明者】
【氏名】角張 勲
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-60330(JP,A)
【文献】特開平8-126089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 1/32
H04R 1/40
H04R 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声を出力する第1のスピーカと、
前記第1のスピーカと所定の方向に隣り合うように配置され、前記第1のスピーカが音声を出力する方向と交差する方向に、音声を出力する第2のスピーカと、
前記第1のスピーカ及び前記第2のスピーカの各々に同じ入力音声信号が入力される第1の切替状態と、前記第1のスピーカ及び前記第2のスピーカのうちの一方のスピーカに前記入力音声信号が入力され、且つ、前記第1のスピーカ及び前記第2のスピーカのうちの他方のスピーカに前記入力音声信号に対して位相を反転させた反転音声信号が入力される第2の切替状態とに切り替えることが可能な位相制御回路と、を備える
スピーカ装置。
【請求項2】
前記第1のスピーカが音声を出力する方向と、前記第2のスピーカが音声を出力する方向とのなす角度は、60°~120°の範囲である
請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記第1のスピーカ及び前記第2のスピーカは互いに、一方のスピーカが音声を出力する方向に他方のスピーカが位置するように配置される
請求項1又は2に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記スピーカ装置は、さらに、前記所定の方向と交差する側方に前記第1のスピーカ及び前記第2のスピーカと隣り合うように配置され、前記入力音声信号及び前記反転音声信号とは異なる音声信号に基づく音声を出力する第3のスピーカを備える
請求項1~3のいずれか1項に記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記第1のスピーカが音声を出力する方向と、前記第2のスピーカが音声を出力する方向とのなす角度は、可変である
請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項6】
前記スピーカ装置は、さらに、前記角度に応じて、前記第1のスピーカ及び前記第2のスピーカの各々に入力される前記入力音声信号又は前記反転音声信号のゲインを調節する制御部を備える
請求項5に記載のスピーカ装置。
【請求項7】
前記第1のスピーカ及び前記第2のスピーカは複数組設けられ、
前記複数組の第1のスピーカ及び第2のスピーカは、前記所定の方向と交差する側方にラインアレイ状に配置されている
請求項1~6のいずれか1項に記載のスピーカ装置。
【請求項8】
前記スピーカ装置は、さらに、前記入力音声信号が入力される入力端子を備え、
前記位相制御回路は、前記入力端子から入力された前記入力音声信号をそのまま出力するか、当該入力音声信号に対して位相を反転させた前記反転音声信号を出力するかを切り替えることが可能であり、
前記第1の切替状態では、前記位相制御回路から出力された前記入力音声信号が前記第1のスピーカに入力され、且つ、前記入力端子からの前記入力音声信号が前記第2のスピーカに入力され、
前記第2の切替状態では、前記位相制御回路から出力された前記反転音声信号が前記第1のスピーカに入力され、且つ、前記入力端子からの前記入力音声信号が前記第2のスピーカに入力される
請求項1~7のいずれか1項に記載のスピーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音場の指向性を制御可能なスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、一対のスピーカがそれらの背面を互いに対向させるように同一直線上に配置され、位相制御を行うことで指向性を制御するスピーカ装置を開示する。
【0003】
特許文献2は、双指向性の開放型スピーカと、無指向性の密閉型スピーカとが同一方向に向けて同一直線上に配置され、背面への音の伝達制御を行うスピーカ装置を開示する。
【0004】
特許文献3は、対向する一対のスピーカが2組、同一平面上に配置され、反転位相を切り替えることで音場制御を行うスピーカ装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-19089号公報
【文献】特開2011-009990号公報
【文献】特開2013-012991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パーテーション等で簡易的に区切られた会議スペースでのテレビ会議又はWeb会議等において、スピーカ装置から出力された先方の音声を会議スペースの外部に存在する部外者には聞かせたくない場合、スピーカ装置の指向性を絞ることにより音の広がりを抑制することができる。
【0007】
しかしながら、上述した従来のスピーカ装置をテレビ会議又はWeb会議等に適用した場合には、立体的な音場の指向性を制御するためには、多数のスピーカを柱状に構成する必要があり、スピーカ装置の構成が大型化及び複雑化するという課題がある。
【0008】
本開示は、簡単な構成で音場の指向性を制御することができるスピーカ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示におけるスピーカ装置は、音声を出力する第1のスピーカと、第1のスピーカと所定の方向に隣り合うように配置され、第1のスピーカが音声を出力する方向と交差する方向に、音声を出力する第2のスピーカと、第1のスピーカ及び第2のスピーカの各々に同じ入力音声信号が入力される第1の切替状態と、第1のスピーカ及び第2のスピーカのうちの一方のスピーカに入力音声信号が入力され、且つ、第1のスピーカ及び第2のスピーカのうちの他方のスピーカに入力音声信号に対して位相を反転させた反転音声信号が入力される第2の切替状態とに切り替えることが可能な位相制御回路と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示におけるスピーカ装置によれば、簡単な構成で音場の指向性を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aは、実施の形態1に係るスピーカ装置における各スピーカの配置を示す平面図である。
図1B図1Bは、実施の形態1に係るスピーカ装置における各スピーカの配置を示す側面図である。
図2A図2Aは、実施の形態1に係るスピーカ装置の上向きの配置を示す斜視図である。
図2B図2Bは、実施の形態1に係るスピーカ装置の下向きの配置を示す斜視図である。
図3A図3Aは、実施の形態1に係るスピーカ装置の電気的構成を示す図である。
図3B図3Bは、実施の形態1に係るスピーカ装置における位相の関係の説明図である。
図4図4は、実施の形態1に係るスピーカ装置における逆位相時の音場特性を示す平面図である。
図5図5は、実施の形態1に係るスピーカ装置における逆位相時の音場特性を示す側面図である。
図6図6は、実施の形態1に係るスピーカ装置における同位相時の音場特性を示す平面図である。
図7図7は、実施の形態1に係るスピーカ装置における同位相時の音場特性を示す側面図である。
図8A図8Aは、実施の形態2に係るスピーカ装置の構成を示す斜視図である。
図8B図8Bは、実施の形態2に係るスピーカ装置の構成を示す平面図である。
図9図9は、実施の形態2に係るスピーカ装置の電気的構成を示す図である。
図10A図10Aは、実施の形態2に係るスピーカ装置を配置する空間の一例を示す平面図である。
図10B図10Bは、実施の形態2に係るスピーカ装置を配置する空間の一例を示す側面図である。
図11A図11Aは、実施の形態2に係るスピーカ装置を天吊りした場合の同位相時の音場特性を示す平面図である。
図11B図11Bは、実施の形態2に係るスピーカ装置を天吊りした場合の同位相時の音場特性を示す側面図である。
図12A図12Aは、実施の形態2に係るスピーカ装置を机上に置いた場合の同位相時の音場特性を示す平面図である。
図12B図12Bは、実施の形態2に係るスピーカ装置を机上に置いた場合の同位相時の音場特性を示す側面図である。
図13A図13Aは、実施の形態2に係るスピーカ装置を天吊りした場合の逆位相時の音場特性を示す平面図である。
図13B図13Bは、実施の形態2に係るスピーカ装置を天吊りした場合の逆位相時の音場特性を示す側面図である。
図14A図14Aは、実施の形態2に係るスピーカ装置を机上に置いた場合の逆位相時の音場特性を示す平面図である。
図14B図14Bは、実施の形態2に係るスピーカ装置を机上に置いた場合の逆位相時の音場特性を示す側面図である。
図15A図15Aは、実施の形態3に係るスピーカ装置の構成を示す斜視図である。
図15B図15Bは、実施の形態3に係るスピーカ装置の構成を示す平面図である。
図16図16は、実施の形態3に係るスピーカ装置の電気的構成を示す図である。
図17A図17Aは、実施の形態3に係るスピーカ装置の上向きの配置を示す斜視図である。
図17B図17Bは、実施の形態3に係るスピーカ装置の下向きの配置を示す斜視図である。
図18A図18Aは、実施の形態3に係るスピーカ装置を天吊りした場合の音場特性を示す平面図である。
図18B図18Bは、実施の形態3に係るスピーカ装置を天吊りした場合の音場特性を示す側面図である。
図19A図19Aは、実施の形態3に係るスピーカ装置を机上に置いた場合の音場特性を示す平面図である。
図19B図19Bは、実施の形態3に係るスピーカ装置を机上に置いた場合の音場特性を示す側面図である。
図20図20は、複数組のスピーカ装置をラインアレイ化することにより得られる効果を説明するための図である。
図21図21は、複数組のスピーカ装置をラインアレイ化することにより得られる効果を説明するための図である。
図22図22は、複数組のスピーカ装置をラインアレイ化することにより得られる効果を説明するための図である。
図23図23は、実施の形態4に係るスピーカ装置の構成を示すブロック図である。
図24図24は、実施の形態4に係るスピーカ装置から出力される音声の指向性特性を示す図である。
図25図25は、実施の形態4に係るスピーカ装置から出力される音声の指向性特性を示す図である。
図26図26は、変形例に係るスピーカ装置の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の基礎となった知見等)
音場の指向性を制御するための技術として、例えば超音波を用いたパラメトリックスピーカ、及び、ラインアレイスピーカ等が知られている。しかしながら、前者では、多数のスピーカ及び超音波制御回路等が必要であり、後者では、各スピーカの位相制御を行うための専用回路が必要である。
【0013】
さらに、一対のスピーカを対向して配置させるダイポール方式のスピーカ装置により位相制御を行う技術も知られている。しかしながら、この種のスピーカ装置の構成では、立体的な音場の指向性を制御するためには、複数のスピーカを立体的に配置する必要があり、多数のスピーカを使用しなければならないという課題が生じる。また、この種のスピーカ装置の構成では、複数のスピーカの間に人が存在すると音場の乱れが発生するために十分な効果が得られず、小空間での使用には適さないという課題が生じる。発明者らは、上述した課題を発見し、当該課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0014】
そこで、本開示は、簡単な構成で音場の指向性を制御することができるスピーカ装置を提供する。
【0015】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0016】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0017】
(実施の形態1)
以下、図1A図7を用いて、実施の形態1について説明する。
【0018】
[1-1.スピーカ装置の構成]
まず、図1A及び図1Bを参照しながら、実施の形態1に係るスピーカ装置100(後述する図2A及び図2B参照)におけるスピーカ1及びスピーカ2の配置について説明する。図1Aは、実施の形態1に係るスピーカ装置100におけるスピーカ1及びスピーカ2の配置を示す平面図である。図1Bは、実施の形態1に係るスピーカ装置100におけるスピーカ1及びスピーカ2の配置を示す側面図である。
【0019】
スピーカ装置100は、スピーカ1と、スピーカ2とを備えている。スピーカ1は、第1のスピーカの一例であり、スピーカ2は、第2のスピーカの一例である。スピーカ1及びスピーカ2は、同じ特性及び同じ性能を有している。図1A及び図1Bに示すように、スピーカ1及びスピーカ2は、各々の振動板の端部の片側が近接又は接触するように、仮想的な平面である基準面3に対して対称に配置されている。
【0020】
本明細書では、以下、スピーカ1からの音声の出力方向である方向X1と、スピーカ2からの音声の出力方向である方向X2とを合成した方向Xを、「上方」と呼ぶ。また、方向X1及び方向X2のいずれとも垂直な方向を、「側方」と呼ぶ。また、上方及び側方のいずれとも垂直な方向を、「前後方向」と呼ぶ。前後方向は、所定の方向の一例である。基準面3は、方向X(上方)及び側方を含む平面である。
【0021】
スピーカ1及びスピーカ2は、前後方向に隣り合うように配置されている。スピーカ1及びスピーカ2は、図1Bに示すように側方から見たとき、音声を出力(放射)する方向が互いに交差するように、基準面3に対して線対称に配置されている。スピーカ1が音声を出力する方向X1とスピーカ2が音声を出力する方向X2とのなす角度θは、60°~120°の範囲である。この角度θは、所望の指向性特性に応じて適宜設定され得る。
【0022】
また、スピーカ1及びスピーカ2は互いに、一方のスピーカが音声を出力する方向に他方のスピーカが位置するように配置されている。ここで、「一方のスピーカが音声を出力する方向に他方のスピーカが位置する」とは、より具体的には、例えばスピーカ1を方向X1に垂直な方向から見たときに、方向X1に平行な方向においてスピーカ1よりも前方(音声を出力する向き)にスピーカ2が位置することを意味する。言い換えると、スピーカ1及びスピーカ2は互いに、斜めに向かい合わせになるように配置される。本明細書では、以下、この配置を「鋭角対向」と呼ぶ。
【0023】
なお、スピーカ1及びスピーカ2は、上述した角度θが可変であるように構成してもよい。角度θを調節することにより、目的とする周波数帯における指向性特性、及び、指向性が及ぶ範囲を調節することができる。
【0024】
次に、図2A及び図2Bを参照しながら、スピーカ装置100の構成について説明する。図2Aは、実施の形態1に係るスピーカ装置100の上向きの配置を示す斜視図である。図2Bは、実施の形態1に係るスピーカ装置100の下向きの配置を示す斜視図である。
【0025】
図2A及び図2Bに示すように、スピーカ装置100は、スピーカ1と、スピーカ2と、筐体4と、筐体5とを備えている。スピーカ1は、筐体4の内部に収納され、筐体4の外部へ音声を出力することが可能である。スピーカ2は、筐体5の内部に収納され、筐体5の外部へ音声を出力することが可能である。筐体4及び筐体5は、密閉型のスピーカボックスを構成し、例えば三角柱状に形成されている。
【0026】
筐体4及び筐体5は、スピーカ1及びスピーカ2が互いに図1A及び図1Bに示す位置関係となるように配置される。そのため、スピーカ装置100は、側方から見たときに中央に谷の形状を有し、谷の両側の斜面にそれぞれスピーカ1及びスピーカ2が斜めに向かい合って配置された構成を有するようになる。筐体4及び筐体5は、互いの相対位置が固定されるように連結されるが、一体に形成されていてもよい。また、後述する電気的構成を満足する限り、筐体4及び筐体5は、分離されていてもよい。
【0027】
なお、本実施の形態では、筐体4及び筐体5の各形状を三角柱状としたが、これに限定されず、例えば直方体状又は円筒状等、スピーカ1及びスピーカ2の相対的な配置が図1A及び図1Bに示す通りであれば、どのような形状でもよい。
【0028】
図2Aに示すように、スピーカ1及びスピーカ2がともに鉛直方向に対して斜め上方を向くようなスピーカ装置100の配置を、「上向き」と呼ぶ。一方、図2Bに示すように、スピーカ1及びスピーカ2がともに鉛直方向に対して斜め下方を向くようなスピーカ装置100の配置を、「下向き」と呼ぶ。スピーカ装置100を下向きに配置する場合、スピーカ装置100から見た上方(方向X)は、下向き(鉛直下方)となる。
【0029】
次に、図3A及び図3Bを参照しながら、実施の形態1に係るスピーカ装置100の電気的構成について説明する。図3Aは、実施の形態1に係るスピーカ装置100の電気的構成を示す図である。図3Bは、実施の形態1に係るスピーカ装置100における位相の関係の説明図である。
【0030】
図3Aに示すように、スピーカ装置100は、電気的構成として、上述したスピーカ1及びスピーカ2に加えて、入力端子7と、位相切替回路6と、切替スイッチ8とを備えている。位相切替回路6は、位相制御回路の一例である。
【0031】
入力端子7は、外部からの入力音声信号(以下、「スピーカ入力信号」ともいう)が入力される端子である。スピーカ1は、入力端子10を備えている。スピーカ2は、入力端子11を備えている。スピーカ1の入力端子10と入力端子7との間には、位相切替回路6が電気的に接続されている。
【0032】
スピーカ1の入力端子10には、位相切替回路6からの入力音声信号又は反転音声信号が入力される。反転音声信号は、入力音声信号に対して位相を反転させた音声信号である。スピーカ1は、入力端子10に入力された入力音声信号又は反転音声信号に基づく音声を出力する。
【0033】
また、スピーカ2の入力端子11には、入力端子7に入力された入力音声信号が直接入力される。具体的には、入力端子7のプラス端子がスピーカ2の入力端子11のプラス端子に電気的に接続され、入力端子7のマイナス端子がスピーカ2の入力端子11のマイナス端子に電気的に接続される。スピーカ2は、入力端子11に入力された入力音声信号に基づく音声を出力する。
【0034】
位相切替回路6は、入力端子7とスピーカ1の入力端子10とを、同じ極性同士で接続するか、逆の極性同士で接続するかを切り替える。「入力端子7とスピーカ1の入力端子10とを同じ極性同士で接続する」とは、入力端子7のプラス端子をスピーカ1の入力端子10のプラス端子に電気的に接続し、入力端子7のマイナス端子をスピーカ1の入力端子10のマイナス端子に電気的に接続することである。この時、位相切替回路6は、入力端子7から入力された入力音声信号をそのまま(位相を反転させることなく)スピーカ1の入力端子10に出力する。また、「入力端子7とスピーカ1の入力端子10とを逆の極性同士で接続する」とは、入力端子7のプラス端子をスピーカ1の入力端子10のマイナス端子に電気的に接続し、入力端子7のマイナス端子をスピーカ1の入力端子10のプラス端子に電気的に接続することである。この時、位相切替回路6は、入力端子7から入力された入力音声信号に対して位相を反転させた反転音声信号を、スピーカ1の入力端子10に出力する。
【0035】
これにより、位相切替回路6は、第1の切替状態(以下、「同位相」ともいう)及び第2の切替状態(以下、「逆位相」ともいう)の一方から他方に切り替えることが可能である。第1の切替状態では、位相切替回路6は、入力端子7から入力された入力音声信号をそのままスピーカ1の入力端子10に出力する。そのため、第1の切替状態では、スピーカ1の入力端子10には、位相切替回路6から出力された入力音声信号が入力され、且つ、スピーカ2の入力端子11には、入力端子7からの入力音声信号が入力される。一方、第2の切替状態では、位相切替回路6は、入力端子7から入力された入力音声信号に対して位相を反転させた反転音声信号を、スピーカ1の入力端子10に出力する。そのため、第2の切替状態では、スピーカ1の入力端子10には、位相切替回路6から出力された反転音声信号が入力され、且つ、スピーカ2の入力端子11には、入力端子7からの入力音声信号が入力される。
【0036】
したがって、図3Bに示すように、位相切替回路6は、スピーカ1の入力端子10に入力される音声信号を、スピーカ2の入力端子11に入力される音声信号と同位相又は逆位相となるように切り替えることができる。これにより、位相切替回路6は、スピーカ1及びスピーカ2が出力する音声を、互いに同位相又は逆位相となるように切り替えることができる。つまり、スピーカ1とスピーカ2とは、互いに同位相又は逆位相の音声を出力可能なように電気的に接続される。
【0037】
切替スイッチ8は、ユーザによる操作を受け付け、受け付けた操作に応じた信号を位相切替回路6に出力する。位相切替回路6は、切替スイッチ8からの信号に基づいて、同位相及び逆位相の一方から他方に切り替えることが可能である。なお、位相切替回路6を機械的な切替回路として構成し、且つ、切替スイッチ8を機械的な切替スイッチとして構成し、切替スイッチの動作に機械的に連動して、位相切替回路6が同位相及び逆位相の一方から他方に切り替わる構成としてもよい。
【0038】
[1-2.スピーカ装置の動作]
次に、実施の形態1に係るスピーカ装置100の動作について説明する。
【0039】
まず、図4及び図5を参照しながら、位相切替回路6が逆位相に切り替えられた場合における、スピーカ装置100の動作について説明する。図4は、実施の形態1に係るスピーカ装置100における逆位相時の音場特性を示す平面図である。なお、図4は、スピーカ装置100において、位相切替回路6が逆位相に切り替えられ、且つ、スピーカ1及びスピーカ2から音声が出力された場合の音場特性を上方から見たときの様子を示している。図5は、実施の形態1に係るスピーカ装置100における逆位相時の音場特性を示す側面図である。なお、図5は、スピーカ装置100において、位相切替回路6が逆位相に切り替えられ、且つ、スピーカ1及びスピーカ2から音声が出力された場合の音場特性を側方から見たときの様子を示している。
【0040】
図4及び図5にそれぞれ示す音場曲線12及び音場曲線13は、同一の音圧を結ぶ等高線である。なお、図4及び図5において、便宜上、スピーカ装置100の構成要素のうちスピーカ1及びスピーカ2のみを図示している。
【0041】
スピーカ1及びスピーカ2からは、互いに逆位相の音声が出力される。したがって、基準面3上において、互いに逆位相の音声が重なり合う。図4及び図5に示すように、この場合の音場特性では、基準面3上においてスピーカ1及びスピーカ2から出力される音声が互いに打ち消し合うため、基準面3に近付くほど音が弱まる。このため、スピーカ装置100の側方及び上方においては、スピーカ装置100から出力される音声の音圧が小さくなる一方で、前後方向及び斜め上方(図1Bにおける方向X1及び方向X2)においては、スピーカ1及びスピーカ2から出力される音声がほとんど互いに打ち消し合うことなく伝搬する。
【0042】
したがって、本実施の形態のスピーカ装置100では、位相切替回路6を逆位相に切り替えることにより、前後方向には一定の音圧で音声を出力する一方で、側方及び上方へ出力する音声の音圧を前後方向に比べて低下させることができる。
【0043】
次に、図6及び図7を参照しながら、位相切替回路6が同位相に切り替えられた場合における、スピーカ装置100の動作について説明する。図6は、実施の形態1に係るスピーカ装置100における同位相時の音場特性を示す平面図である。なお、図6は、スピーカ装置100において、位相切替回路6が同位相に切り替えられ、且つ、スピーカ1及びスピーカ2から音声が出力された場合の音場特性を上方から見たときの様子を示している。図7は、実施の形態1に係るスピーカ装置100における同位相時の音場特性を示す側面図である。なお、図7は、スピーカ装置100において、位相切替回路6が同位相に切り替えられ、且つ、スピーカ1及びスピーカ2から音声が出力された場合の音場特性を側方から見たときの様子を示している。
【0044】
図6及び図7にそれぞれ示す音場曲線14及び音場曲線15は、同一の音圧を結ぶ等高線である。図6及び図7において、便宜上、スピーカ装置100の構成要素のうちスピーカ1及びスピーカ2のみを図示している。
【0045】
スピーカ1及びスピーカ2からは、互いに同位相の音声が出力される。したがって、基準面3上において、互いに同位相の音声が重なり合う。図6及び図7に示すように、この場合の音場特性では、スピーカ1及びスピーカ2から出力される音声は、同位相であるために、基準面3に近付いても互いに打ち消し合うことはない。
【0046】
したがって、本実施の形態のスピーカ装置100では、位相切替回路6を同位相に切り替えることにより、スピーカ装置100の周囲の全方向に音声を出力することができる。
【0047】
このように、本実施の形態のスピーカ装置100では、スピーカ1及びスピーカ2から出力される音声の指向性をユーザの操作により制御することができるため、ユーザは、状況により適した指向性で音声を出力させてスピーカ装置100を使用することができる。
【0048】
[1-3.効果]
以上のように、本実施の形態では、スピーカ装置100は、音声を出力するスピーカ1と、スピーカ1と前後方向に隣り合うように配置され、スピーカ1が音声を出力する方向と交差する方向に、音声を出力するスピーカ2と、スピーカ1及びスピーカ2の各々に同じ入力音声信号が入力される第1の切替状態と、スピーカ1及びスピーカ2のうちの一方のスピーカに入力音声信号が入力され、且つ、スピーカ1及びスピーカ2のうちの他方のスピーカに入力音声信号に対して位相を反転させた反転音声信号が入力される第2の切替状態とに切り替えることが可能な位相切替回路6とを備える。
【0049】
これによれば、位相切替回路6により、スピーカ1及びスピーカ2から出力される音声を、互いに同位相又は逆位相に切り替えることができる。スピーカ1及びスピーカ2から出力される音声を同位相に切り替えた場合には、スピーカ装置100の周囲の全方向に音声を出力することができる。一方、スピーカ1及びスピーカ2から出力される音声を逆位相に切り替えた場合には、スピーカ1及びスピーカ2によりそれぞれ作り出される音場が、基準面3の付近で互いに打ち消し合うため、聴取する位置により音圧を変化させることができる。より具体的には、スピーカ1及びスピーカ2から出力される音声の指向性が制御され、スピーカ装置100の前後方向、側方及び上方の間で音圧差を作ることができる。したがって、スピーカ装置100の前後方向においては、スピーカ1及びスピーカ2から出力される音声を比較的容易に聴取できるが、スピーカ装置100の側方においては、スピーカ1及びスピーカ2の各々から出力される音声の聴取が前後方向と比較して困難になる。その結果、簡単な構成で音場の指向性を制御することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、スピーカ1が音声を出力する方向と、スピーカ2が音声を出力する方向とのなす角度θは、60°~120°の範囲である。
【0051】
これによれば、スピーカ1及びスピーカ2の各々から出力される音声を逆位相に切り替えた場合に、スピーカ1及びスピーカ2によりそれぞれ作り出される音場が、基準面3の付近で効果的に互いに打ち消し合うことができる。
【0052】
また、本実施の形態では、スピーカ1及びスピーカ2は互いに、一方のスピーカが音声を出力する方向に他方のスピーカが位置するように配置される。
【0053】
これによれば、スピーカ装置100全体を小型化することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、スピーカ装置100は、さらに、入力音声信号が入力される入力端子7を備える。位相切替回路6は、入力端子7から入力された入力音声信号をそのまま出力するか、当該入力音声信号に対して位相を反転させた反転音声信号を出力するかを切り替えることが可能である。第1の切替状態では、位相切替回路6から出力された入力音声信号がスピーカ1に入力され、且つ、入力端子7からの入力音声信号がスピーカ2に入力される。第2の切替状態では、位相切替回路6から出力された反転音声信号がスピーカ1に入力され、且つ、入力端子7からの入力音声信号がスピーカ2に入力される。
【0055】
これによれば、位相切替回路6は、第1の切替状態と第2の切替状態とに容易に切り替えることができる。
【0056】
(実施の形態2)
以下、図8A図14Bを用いて、実施の形態2について説明する。
【0057】
[2-1.スピーカ装置の構成]
図8A及び図8Bを参照しながら、実施の形態2に係るスピーカ装置200の構成について説明する。図8Aは、実施の形態2に係るスピーカ装置200の構成を示す斜視図である。図8Bは、実施の形態2に係るスピーカ装置200の構成を示す平面図である。なお、以下に示す各実施の形態において、上記実施の形態1の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0058】
実施の形態2に係るスピーカ装置200において、実施の形態1に係るスピーカ装置100と異なる点は、実施の形態1に係るスピーカ装置100を2組、側方にラインアレイ状に並べて配置した点である。より具体的には、図8A及び図8Bに示すように、スピーカ装置200は、スピーカ装置100aと、スピーカ装置100bとを備えている。
【0059】
スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bの各々の構成は、実施の形態1に係るスピーカ装置100と同様である。すなわち、スピーカ装置100aは、スピーカ1aと、スピーカ2aと、筐体4aと、筐体5aとを備えている。スピーカ装置100bは、スピーカ1bと、スピーカ2bと、筐体4bと、筐体5bとを備えている。
【0060】
スピーカ装置200では、鋭角対向するスピーカ1a及びスピーカ2aの組と、鋭角対向するスピーカ1b及びスピーカ2bの組とが、側方にラインアレイ状に並んで配置されている。なお、以下では、スピーカ1a及びスピーカ1b等を総称して「スピーカ1」と呼び、スピーカ2a及びスピーカ2b等を総称して「スピーカ2」と呼ぶ場合がある。
【0061】
次に、図9を参照しながら、実施の形態2に係るスピーカ装置200の電気的構成について説明する。図9は、実施の形態2に係るスピーカ装置200の電気的構成を示す図である。
【0062】
図9に示すように、スピーカ装置200は、電気的構成についても、実施の形態1に係るスピーカ装置100を2組備える構成である。すなわち、スピーカ装置100aは、電気的構成として、上述したスピーカ1a及びスピーカ2aに加えて、入力端子7aと、位相切替回路6aと、切替スイッチ8aとを備えている。スピーカ装置100bは、電気的構成として、上述したスピーカ1b及びスピーカ2bに加えて、入力端子7bと、位相切替回路6bと、切替スイッチ8bとを備えている。
【0063】
スピーカ1aは、入力端子10aを備えている。スピーカ2aは、入力端子11aを備えている。スピーカ1bは、入力端子10bを備えている。スピーカ2bは、入力端子11bを備えている。スピーカ1aとスピーカ2aとは、互いに同位相又は逆位相の音声を出力可能なように電気的に接続されている。また、スピーカ1bとスピーカ2bとは、互いに同位相又は逆位相の音声を出力可能なように電気的に接続されている。
【0064】
スピーカ装置100aの入力端子7aには音源Lの信号(以下、「信号L」という)が入力され、スピーカ装置100bの入力端子7bには音源Rの信号(以下、「信号R」という)が入力される。この信号L及び信号Rにはそれぞれ、例えばステレオ音源のLチャンネルの信号及びRチャンネルの信号が割り当てられる。
【0065】
なお、本実施の形態では、信号L及び信号Rにはそれぞれ、ステレオ音源のLチャンネルの信号及びRチャンネルの信号を割り当てたが、必ずしもステレオ音源の信号でなくともよく、例えばモノラル音源の信号、すなわち信号L及び信号Rとして同一の信号を割り当てるようにしてもよい。
【0066】
[2-2.スピーカ装置の動作]
次に、実施の形態2に係るスピーカ装置200の動作について説明する。
【0067】
スピーカ装置200は、基本的には実施の形態1に係るスピーカ装置100を2組、側方にラインアレイ状に並べて配置した構成であるので、実施の形態1に係るスピーカ装置100と同様の音場特性を有する。以下、スピーカ装置200を配置する具体的な空間の一例として、会議スペースを挙げて説明する。
【0068】
図10A及び図10Bを参照しながら、スピーカ装置200が配置される空間について説明する。図10Aは、実施の形態2に係るスピーカ装置200を配置する空間の一例を示す平面図である。図10Bは、実施の形態2に係るスピーカ装置200を配置する空間の一例を示す側面図である。
【0069】
スピーカ装置200が配置される空間は、例えばオープンスペースに設けられた会議スペースである。図10Aに示すように、この会議スペースは、吸音性能を持つパーテーション30により三方を囲まれ、残りの一方は出入り口として開放されている。したがって、パーテーション30により囲まれる三方と比較して、パーテーション30の無い開放側の出入り口においては、より音声が会議スペースの外部へ伝搬しやすくなっている。
【0070】
また、パーテーション30で囲まれた会議スペースの上方には覆いがなく、パーテーション30の上端部は、間隔を置いて並んだ複数本の梁39により支持されている。なお、説明の都合上、図10Aでは、1本の梁39のみを図示してある。図10Bに示すように、パーテーション30と天井29との間には間隔が空いており、音声はそれらの間を通って会議スペースの外部へ伝搬しやすい。
【0071】
この会議スペースでは、会議参加者23,24,25,26(23~26)の4名が、テーブル27の前に座っており、テレビ会議又はWeb会議等に参加している。部外者28は、会議スペースにおけるテレビ会議又はWeb会議等に参加しておらず、会議スペースの外部における、パーテーション30の出入り口横の通路を通行することができる。
【0072】
次に、図11A及び図11Bを参照しながら、上述した会議スペースにおいてスピーカ装置200を梁39から天吊りし、且つ、位相切替回路6a,6b(図9参照)をともに同位相に切り替えた場合について説明する。図11Aは、実施の形態2に係るスピーカ装置200を天吊りした場合の同位相時の音場特性を示す平面図である。図11Bは、実施の形態2に係るスピーカ装置200を天吊りにした場合の同位相時の音場特性を示す側面図である。なお、説明の都合上、図11Aでは、梁39の図示を省略してある。
【0073】
図11A及び図11Bに示すように、スピーカ装置200は、テーブル27の中央の上方にある梁39に対して下向き(図8Aに示すスピーカ装置200の向きとは上下逆の向き)に取り付けられている。また、スピーカ装置200は、その前後方向(図11A及び図11Bにおいて左右方向)に会議参加者23~26が位置するような向きで取り付けられている。このとき、スピーカ装置200の側方は、パーテーション30の出入り口の方向を向いている。図11A及び図11Bにそれぞれ示す音場曲線31及び音場曲線32は、同一の音圧を結ぶ等高線である。
【0074】
スピーカ装置200は、テレビ会議又はWeb会議等において遠隔地側の音声を出力する会議用スピーカとして使用される。スピーカ装置200では、スピーカ1a及びスピーカ2aから同位相の音声を出力し、且つ、スピーカ1b及びスピーカ2bからも同位相の音声を出力するように、位相切替回路6a,6bがともに同位相に切り替えられている。
【0075】
図11Aの音場曲線31に示されるように、スピーカ装置200から出力された会議の音声は、パーテーション30の無い開放側の出入り口から、会議参加者23~26以外の部外者28にも届いており、部外者28は会議の音声を容易に聴取することができる。また、図11Bの音場曲線32に示されるように、スピーカ装置200から出力された会議の音声は、天井29とパーテーション30との間からも会議スペースの外部へ伝搬し、会議スペースの外部において会議の音声が聴取される可能性がある。
【0076】
次に、図12A及び図12Bを参照しながら、上述した会議スペースにおいてスピーカ装置200を机上(テーブル27上)に置き、且つ、位相切替回路6a,6bをともに同位相に切り替えた場合について説明する。図12Aは、実施の形態2に係るスピーカ装置200を机上に置いた場合の同位相時の音場特性を示す平面図である。図12Bは、実施の形態2に係るスピーカ装置200を机上に置いた場合の同位相時の音場特性を示す側面図である。なお、説明の都合上、図12Aでは、梁39の図示を省略してある。
【0077】
図12A及び図12Bに示すように、スピーカ装置200は、テーブル27の中央に上向き(図8Aに示すスピーカ装置200の向き)に配置される。また、スピーカ装置200は、その前後方向(図12A及び図12Bにおいて左右方向)に会議参加者23~26が位置するような向きで取り付けられている。このとき、スピーカ装置200の側方は、パーテーション30の出入り口の方向を向いている。図12A及び図12Bにそれぞれ示す音場曲線33及び音場曲線34は、同一の音圧を結ぶ等高線である。
【0078】
スピーカ装置200は、図11A及び図11Bに示す天吊りの場合と同様、テレビ会議又はWeb会議等において遠隔地側の音声を出力する会議用スピーカとして使用される。スピーカ装置200では、スピーカ1a及びスピーカ2aから同位相の音声を出力し、且つ、スピーカ1b及びスピーカ2bからも同位相の音声を出力するように、位相切替回路6a,6bがともに同位相に切り替えられている。
【0079】
図12Aの音場曲線33に示されるように、スピーカ装置200から出力された会議の音声は、パーテーション30の無い開放側の出入り口から、会議参加者23~26以外の部外者28にも届いており、部外者28は会議の音声を容易に聴取することができる。また、図12Bの音場曲線34に示されるように、スピーカ装置200から出力された会議の音声は、天井29とパーテーション30との間からも会議スペースの外部へ伝搬し、会議スペースの外部において会議の音声が聴取される可能性がある。
【0080】
次に、図13A及び図13Bを参照しながら、上述した会議スペースにおいてスピーカ装置200を梁39から天吊りし、且つ、位相切替回路6a,6bをともに逆位相に切り替えた場合について説明する。図13Aは、実施の形態2に係るスピーカ装置200を天吊りした場合の逆位相時の音場特性を示す平面図である。図13Bは、実施の形態2に係るスピーカ装置200を天吊りした場合の逆位相時の音場特性を示す側面図である。なお、説明の都合上、図13Aでは、梁39の図示を省略してある。
【0081】
図13A及び図13Bに示すように、スピーカ装置200は、テーブル27の中央の上方にある梁39に対して下向きに取り付けられている。また、スピーカ装置200は、その前後方向(図13A及び図13Bにおいて左右方向)に会議参加者23~26が位置するような向きで取り付けられている。このとき、スピーカ装置200の側方は、パーテーション30の出入り口の方向を向いている。図13A及び図13Bにそれぞれ示す音場曲線35及び音場曲線36は、同一の音圧を結ぶ等高線である。
【0082】
スピーカ装置200は、テレビ会議又はWeb会議等の遠隔地側の音声を出力する会議用スピーカとして使用される。スピーカ装置200では、スピーカ1a及びスピーカ2aから互いに逆位相の音声を出力し、且つ、スピーカ1b及びスピーカ2bからも互いに逆位相の音声を出力するように、位相切替回路6a,6bがともに逆位相に切り替えられている。
【0083】
図13Aに示すように、スピーカ装置200が逆位相で動作する(すなわち、位相切替回路6a,6bをともに逆位相に切り替える)ことにより、スピーカ装置200から出力された音声は、図4で示すように指向性制御され、音場曲線35で示す音場特性になる。このため、スピーカ装置200の前後方向に位置する会議参加者23~26は、スピーカ装置200から出力された会議の音声を容易に聴取することができるが、スピーカ装置200の側方に位置する部外者28は、スピーカ装置200から出力された会議の音声を聴取することが困難となる。
【0084】
また、図13Bに示すように、スピーカ装置200から出力された音声は、図5で示すように指向性制御され、音場曲線36で示す音場特性になる。スピーカ装置200から見た上方(図13Bでの配置における、スピーカ装置200の真下)に伝搬する音声は抑制されており、この音声がテーブル27に反射して天井29とパーテーション30との間から会議スペースの外部へ伝搬することも抑制される。このため、会議参加者23~26は、スピーカ装置200から出力された会議の音声を容易に聴取することができるが、天井29とパーテーション30との間から会議スペースの外部へ伝搬する音声については抑制することができる。
【0085】
次に、図14A及び図14Bを参照しながら、上述した会議スペースにおいてスピーカ装置200を机上(テーブル27上)に置き、且つ、位相切替回路6a,6bをともに逆位相に切り替えた場合について説明する。図14Aは、実施の形態2に係るスピーカ装置200を机上に置いた場合の逆位相時の音場特性を示す平面図である。図14Bは、実施の形態2に係るスピーカ装置200を机上に置いた場合の逆位相時の音場特性を示す側面図である。なお、説明の都合上、図14Aでは、梁39の図示を省略してある。
【0086】
図14A及び図14Bに示すように、スピーカ装置200は、テーブル27の中央に上向きに配置される。また、スピーカ装置200は、その前後方向(図14A及び図14Bにおいて左右方向)に会議参加者23~26が位置するような向きで取り付けられている。このとき、スピーカ装置200の側方は、パーテーション30の出入り口の方向を向いている。図14A及び図14Bにそれぞれ示す音場曲線37及び音場曲線38は、同一の音圧を結ぶ等高線である。
【0087】
スピーカ装置200は、テレビ会議又はWeb会議等の遠隔地側の音声を出力する会議用スピーカとして使用される。スピーカ装置200は、スピーカ1a及びスピーカ2aから互いに逆位相の音声を出力し、且つ、スピーカ1b及びスピーカ2bからも互いに逆位相の音声を出力するように、位相切替回路6a,6bがともに逆位相に切り替えられている。
【0088】
図14Aに示すように、スピーカ装置200が逆位相で動作する(すなわち、位相切替回路6a,6bをともに逆位相に切り替える)ことにより、スピーカ装置200からの音声は、図4で示すように指向性制御され、音場曲線37で示す音場特性になる。このため、スピーカ装置200の前後方向に位置する会議参加者23~26は、スピーカ装置200から出力された会議の音声を容易に聴取することができるが、スピーカ装置200の側方に位置する部外者28は、スピーカ装置200から出力された会議の音声を聴取することが困難となる。
【0089】
また、図14Bに示すように、スピーカ装置200から出力された音声は、図5で示すように指向性制御され、音場曲線36で示す音場特性になる。このため、会議参加者23~26は、スピーカ装置200から出力された会議の音声を容易に聴取することができるが、天井29とパーテーション30との間から会議スペースの外部へ伝搬する音声については抑制することができる。
【0090】
以上のように、会議スペースにおいてテレビ会議又はWeb会議等を行う場合には、スピーカ装置200から出力された会議の音声が会議スペースの外部に伝播するのを抑制するために、ユーザは、切替スイッチ8a及び切替スイッチ8b(図9参照)を操作することにより、位相切替回路6a,6bをともに逆位相に切り替えればよい。
【0091】
一方、会議スペースにおいて音楽等を鑑賞する場合には、スピーカ装置200から出力された音楽を示す音声が会議スペースの外部に伝播しても差し支えないため、ユーザは、切替スイッチ8a及び切替スイッチ8bを操作することにより、位相切替回路6a,6bをともに同位相に切り替えればよい。
【0092】
[2-3.効果]
以上のように、本実施の形態では、スピーカ1及びスピーカ2は、複数組設けられている。複数組のスピーカ1及びスピーカ2は、前後方向と交差する側方にラインアレイ状に配置されている。
【0093】
これによれば、実施の形態1に係るスピーカ装置100を複数組、側方にラインアレイ状に並べて配置することにより、指向性特性の先鋭度、指向性範囲及び指向性距離等を増大させることができる。本実施の形態のスピーカ装置200では、実施の形態1に係るスピーカ装置100を2組、側方にラインアレイ状に並べて配置したが、スピーカ装置100を並べる個数を変更することで、指向性特性の先鋭度、指向性範囲及び指向性距離等を調節することができる。
【0094】
また、スピーカ装置200から出力される音声の指向性を制御することにより、前後方向、側方及び上方の間で音圧差を作ることができる。特に、人の音声帯域である500Hz~2kHzの周波数帯域においてこのような指向性特性を持たせることにより、会議参加者23~26の聴取位置と部外者28の聴取位置との間において15~20dBの音圧差を作ることができる。
【0095】
これにより、パーテーション30の出入り口側の部外者28への音声の伝搬や、天井29とパーテーション30との間から漏れる音の伝搬を抑えることができる。
【0096】
そのため、テレビ会議又はWeb会議等において、ヘッドホン等を用いることなく、スピーカ装置200から出力された会議の音声が会議スペースの外部へ漏洩するのを低減することができ、スピーカ装置200の音量を抑えることなく会議を行うことができる。
【0097】
また、一般に、スピーカ装置を梁39等に対して下向きに配置する場合には、スピーカ装置から出力された音声がテーブル27の天面で反射して拡散したり、スピーカ装置から出力された音声がテーブル27上に配置された会議用マイク等に収音される正帰還によりハウリングが発生したりする。しかしながら、本実施の形態のスピーカ装置200では、指向性の制御によりスピーカ装置200から真下(スピーカ装置200から見た上方)に伝搬する音声の音圧が相対的に低くなっている。このため、スピーカ装置200から出力された音声はテーブル27には伝わりにくく、テーブル27の天面での反射による音の拡散や、会議用マイクによるハウリングを抑制することができる。
【0098】
(実施の形態3)
以下、図15A図19Bを用いて、実施の形態3について説明する。
【0099】
[3-1.スピーカ装置の構成]
図15A及び図15Bを参照しながら、実施の形態3に係るスピーカ装置300の構成について説明する。図15Aは、実施の形態3に係るスピーカ装置300の構成を示す斜視図である。図15Bは、実施の形態3に係るスピーカ装置300の構成を示す平面図である。
【0100】
実施の形態3に係るスピーカ装置300において、実施の形態2に係るスピーカ装置200と異なる点は、実施の形態2に係るスピーカ装置200の側方における両側にそれぞれ、実施の形態1に係るスピーカ装置100をさらに1つずつ並べた点である。すなわち、実施の形態3に係るスピーカ装置300では、実施の形態1に係るスピーカ装置100を4組、側方にラインアレイ状に並べて配置した構成となっている。
【0101】
図15A及び図15Bに示すように、スピーカ装置300は、スピーカ装置100aと、スピーカ装置100bと、スピーカ装置100cと、スピーカ装置100dとを備えている。スピーカ装置100aは、スピーカ1aと、スピーカ2aと、筐体4aと、筐体5aとを備えている。スピーカ装置100bは、スピーカ1bと、スピーカ2bと、筐体4bと、筐体5bとを備えている。スピーカ装置100cは、スピーカ1cと、スピーカ2cと、筐体4cと、筐体5cとを備えている。スピーカ装置100dは、スピーカ1dと、スピーカ2dと、筐体4dと、筐体5dとを備えている。
【0102】
スピーカ装置300では、鋭角対向するスピーカ1a及びスピーカ2aの組と、鋭角対向するスピーカ1b及びスピーカ2b組と、鋭角対向するスピーカ1c及びスピーカ2cの組と、鋭角対向するスピーカ1d及びスピーカ2dの組とが、側方にラインアレイ状に並んで配置されている。スピーカ装置300の側方における両端に配置される2組の一対のスピーカ、すなわちスピーカ1c及びスピーカ2cの組と、スピーカ1d及びスピーカ2dの組とは、マスキング音声を出力するために使用される。スピーカ1a及びスピーカ1bの各々は、第1のスピーカの一例である。スピーカ2a及びスピーカ2bの各々は、第2のスピーカの一例である。スピーカ1c、スピーカ2c、スピーカ1d及びスピーカ2dの各々は、第3のスピーカの一例である。
【0103】
次に、図16を参照しながら、実施の形態3に係るスピーカ装置300の電気的構成について説明する。図16は、実施の形態3に係るスピーカ装置300の電気的構成を示す図である。
【0104】
図16に示すように、4組のスピーカ装置100a~100dの各電気的構成は、実施の形態1に係るスピーカ装置100の電気的構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。スピーカ装置100aには音源Lの信号(以下、「信号L」という)、スピーカ装置100bには音源Rの信号(以下、「信号R」という)、スピーカ装置100cにはマスキング用の音源MLの信号(以下、「信号ML」という)、スピーカ装置100dにはマスキング用の音源MRの信号(以下、「信号MR」という)が、それぞれ入力される。
【0105】
スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dはそれぞれ、信号ML及び信号MR(以下、これらを総称して「マスキング信号」という)に基づくマスキング音声を出力する。信号L及び信号Rにはそれぞれ、ステレオ音源のLチャンネルの信号及びRチャンネルの信号が割り当てられてもよい。信号ML及び信号MRは、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bが出力する音声を聞き取りにくくするためのマスキング音声を出力するための音声信号である。マスキング音声は、例えばホワイトノイズでもよいし、せせらぎや鳥のさえずり等の自然音でもよい。あるいは、マスキング音声は、人が発する音声の周波数帯域を含む音声であってもよい。信号ML及び信号MRには、同じ音源が割り当てられてもよい。
【0106】
スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dは、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bが出力する音声を前後方向から聴取したときの音圧よりも所定の値だけ低い音圧でマスキング音声を出力するのが望ましい。ここで、所定の値とは、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bが音声を逆位相で出力したときの、前後方向と側方との間の音圧差よりも小さい値である。言い換えると、スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dが出力する音声の音圧は、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bが出力する音声をスピーカ装置100a及びスピーカ装置100bに対して前後方向の位置で聴取したときの音圧よりも低く、且つ、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bが出力する音声をスピーカ装置100a及びスピーカ装置100bの各々に対して側方の位置で聴取したときの音圧よりも高く設定するのが望ましい。つまり、スピーカ装置300の外部に配置された音声再生装置が、上記のような音圧の条件を満たすように、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bに対して入力音声信号を入力するとともに、スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dに対してマスキング信号を入力するのが望ましい。
【0107】
次に、図17A及び図17Bを参照しながら、スピーカ装置300の配置について説明する。図17Aは、実施の形態3に係るスピーカ装置300の上向きの配置を示す図である。図17Bは、実施の形態3に係るスピーカ装置300の下向きの配置を示す図である。
【0108】
例えばテーブル等の机上にスピーカ装置300を配置する場合には、図17Aに示すように、スピーカ装置300を上向きで配置する。一方、例えば梁等にスピーカ装置300を取り付ける場合には、図17Bに示すように、スピーカ装置300を下向きで配置する。
【0109】
[3-2.スピーカ装置の動作]
次に、実施の形態3に係るスピーカ装置300の動作について説明する。
【0110】
まず、図18A及び図18Bを参照しながら、上述した会議スペース(図10A及び図10B参照)においてスピーカ装置300を梁39から天吊りした場合について説明する。図18Aは、実施の形態3に係るスピーカ装置300を天吊りした場合の音場特性を示す平面図である。図18Bは、実施の形態3に係るスピーカ装置300を天吊りした場合の音場特性を示す側面図である。なお、説明の都合上、図18Aでは、梁39の図示を省略してある。
【0111】
図18A及び図18Bに示すように、スピーカ装置300は、テーブル27の中央の上方にある梁39に対して下向き(図17Bに示す向き)に取り付けられている。また、スピーカ装置300は、その前後方向(図18A及び図18Bにおける左右方向)に会議参加者23~26が位置するような向きで取り付けられている。このとき、スピーカ装置300の側方は、パーテーション30の出入り口の方向を向いている。図18A及び図18Bにそれぞれ破線で示す音場曲線46及び音場曲線47は、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bから出力される音声において同一の音圧を結ぶ等高線である。図18A及び図18Bにそれぞれ一点鎖線で示す音場曲線51及び音場曲線52はそれぞれ、スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dから出力されるマスキング音声において同一の音圧を結ぶ等高線である。
【0112】
スピーカ装置300の中央の2組のスピーカ装置100a及びスピーカ装置100bは、テレビ会議又はWeb会議等において遠隔地側の音声(会議の音声)を出力する会議用スピーカとして使用される。スピーカ装置100aのスピーカ1a及びスピーカ2aは、互いに逆位相の音声を出力する。スピーカ装置100bのスピーカ1b及びスピーカ2bも、互いに逆位相の音声を出力する。
【0113】
一方、スピーカ装置300の両端の2組のスピーカ装置100c及びスピーカ装置100dは、同位相でマスキング音声を出力する。これにより、スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dは、スピーカ装置300の周囲に広範囲のマスキング音声による音場を形成する。
【0114】
図18Aに示すように、スピーカ装置300のうち会議用スピーカとして使用されるスピーカ装置100a及びスピーカ装置100bは逆位相で動作し、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bから出力される音声は、図4で示すように指向性制御され、音場曲線46で示す音場特性になる。このため、スピーカ装置300(スピーカ装置100a及びスピーカ装置100b)の前後方向に位置する会議参加者23~26は、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bから出力される会議の音声を容易に聴取することができるが、スピーカ装置300の側方に位置する部外者28は、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bから出力される会議の音声を聴取することが困難となる。
【0115】
また、図18Bに示すように、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bから出力される音声は、図5に示すように指向性制御され、音場曲線47で示す音場特性になる。このため、会議参加者23~26は、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bから出力される会議の音声を容易に聴取することができるが、天井29とパーテーション30との間から会議スペースの外部へ伝搬する会議の音声については抑制することができる。
【0116】
スピーカ装置300のうちマスキング音声を出力するスピーカ装置100c及びスピーカ装置100dは、同位相で動作し、スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dから出力される音声は、図6及び図7で示すように指向性制御され、音場曲線51及び音場曲線52で示す音場特性になる。マスキング音声は、同位相で広指向性のため、パーテーション30の外部にも伝搬する。したがって、マスキング音声は、会議参加者23~26だけでなく、部外者28も聴取することができる。
【0117】
次に、図19A及び図19Bを参照しながら、上述した会議スペースにおいてスピーカ装置300を机上(テーブル27上)に置いた場合について説明する。図19Aは、実施の形態3に係るスピーカ装置300を机上に置いた場合の音場特性を示す平面図である。図19Bは、実施の形態3に係るスピーカ装置300を机上に置いた場合の音場特性を示す側面図である。
【0118】
図19A及び図19Bにそれぞれ破線で示す音場曲線48及び音場曲線49は、スピーカ装置100a及び100bから出力される音声において同一の音圧を結ぶ等高線である。図19A及び図19Bにそれぞれ一点鎖線で示す音場曲線53及び音場曲線54は、スピーカ装置100c及び100dから出力されるマスキング音声において同一の音圧を結ぶ等高線である。
【0119】
スピーカ装置300の中央の2組のスピーカ装置100a及び100bは、テレビ会議又はWeb会議等において遠隔地側の音声(会議の音声)を出力する会議用スピーカとして使用される。スピーカ装置100aのスピーカ1a及びスピーカ2aは、互いに逆位相の音声を出力する。スピーカ装置100bのスピーカ1b及びスピーカ2bも、互いに逆位相の音声を出力する。一方、スピーカ装置300の両端の2組のスピーカ装置100c及びスピーカ装置100dは、同位相でマスキング音声を出力する。これにより、スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dは、スピーカ装置300の周囲に広範囲のマスキング音声による音場を形成する。
【0120】
図19Aに示すように、スピーカ装置300のうち会議用スピーカとして使用されるスピーカ装置100a及びスピーカ装置100bは、逆位相で動作し、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bから出力される音声は、図4で示すように指向性制御され、音場曲線48で示す音場特性になる。このため、スピーカ装置300(スピーカ装置100a及びスピーカ装置100b)の前後方向に位置する会議参加者23~26は、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bから出力される会議の音声を容易に聴取することができるが、スピーカ装置300の側方に位置する部外者28は、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bから出力される会議の音声を聴取することが困難となる。
【0121】
また、図19Bに示すように、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bから出力される音声は、図5に示すように指向性制御され、音場曲線49で示す音場特性になる。このため、会議参加者23~26は、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bから出力される会議の音声を容易に聴取することができるが、天井29とパーテーション30との間から会議スペースの外部へ伝搬する会議の音声については抑制することができる。
【0122】
スピーカ装置300のうちマスキング音声を出力するスピーカ装置100c及びスピーカ装置100dは、同位相で動作し、スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dからの音声は、図6及び図7で示すように指向性制御され、音場曲線53及び音場曲線54で示す音場特性になる。マスキング音声は、同位相で広指向性のため、パーテーション30の外部にも伝搬する。したがって、マスキング音声は、会議参加者23~26だけでなく、部外者28も聴取することができる。
【0123】
したがって、スピーカ装置300の前後方向へは、スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dから出力されるマスキング音声とともに、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bから出力される会議の音声が伝搬するため、会議参加者23~26は、マスキング音声とともに会議の音声を聴取することができる。スピーカ装置300の前後方向においては、側方よりも会議の音声の音圧が高いため、側方と比較して会議の音声がマスキング音声でマスキングされる度合いは低い。
【0124】
一方、スピーカ装置300の側方へは、会議の音声が前後方向よりも低い音圧で伝搬するため、部外者28は、会議の音声を聴取するのが困難となる。さらに、スピーカ装置300の側方においては、前後方向と同様の音圧でマスキング音声が伝搬する一方で、前後方向よりも会議の音声の音圧が低いため、前後方向と比較して会議の音声がマスキング音声でマスキングされる度合いは高い。したがって、マスキング音声を出力するスピーカ装置300は、聴取位置による会議の音声の聞き取りやすさの差をより大きくすることができる。
【0125】
さらに、スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dが出力するマスキング音声の音圧は、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bが出力する会議の音声をスピーカ装置100a及びスピーカ装置100bに対して前後方向の位置で聴取したときの音圧より低く、且つ、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bが出力する会議の音声をスピーカ装置100a、100bに対して側方の位置で聴取したときの音圧より高く設定されているのが望ましい。この場合、スピーカ装置300に対して前後方向に位置する会議参加者23~26は、スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dが出力するマスキング音声よりも、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bが出力する会議の音声をより高い音圧で聴取するため、比較的明瞭に会議の音声を聴取することができる。一方、スピーカ装置300に対して側方に位置する部外者28は、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bが出力する会議の音声の音圧が前後方向よりも低いのに加え、スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dが出力するマスキング音声を会議の音声よりも高い音圧で聴取するため、会議の音声を聴取することはより困難となる。
【0126】
以上説明したように、本実施の形態のスピーカ装置300は、テーブル27の中央の上方にある梁39に下向きに配置、又は、テーブル27の中央に上向きに配置され、会議用スピーカとして使用される。スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bは、指向性が制御された会議の音声を会議スペース内に出力する。スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dは、会議スペースの周囲の全方向にマスキング音声を出力する。
【0127】
会議参加者23~26の4名が、テーブル27の前に座り、スピーカ装置300の前後方向に位置する。部外者28は、パーテーション30の開放側の出入り口付近、すなわちスピーカ装置300の側方を通ることができる。このような状況において、指向性特性の制御によって、人の音声帯域である500Hz~2kHzの音声について、会議参加者23~26の聴取位置と部外者28の聴取位置との間において15~20dBの音圧差を作ることができる。
【0128】
また、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bの前後方向における両側にそれぞれスピーカ装置100c及びスピーカ装置100dを配置して、スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dからマスキング音声を出力する。スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dは、同位相の自然音等の環境音をマスキング音声として、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bが備えるスピーカ1及びスピーカ2から出力される音声よりも10~15dB低い音圧で出力する。これにより、会議スペースの外部においては、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bから出力される会議の音声の音圧は、スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dから出力されるマスキング音声の音圧よりも低くなる。
【0129】
これにより、会議の音声が、パーテーション30の出入り口側から会議参加者23~26以外の部外者28へ伝搬することや、天井29とパーテーション30との間から会議スペースの外部へ漏れることを抑制することができる。
【0130】
そのため、本実施の形態のスピーカ装置300を使用することで、会議参加者23~26は、会議スペースの外部への会議の音声の漏洩を回避するために、ヘッドホン等を用いたりスピーカの音量を抑えたりすることなく、会議を行うことができる。
【0131】
[3-3.効果]
以上のように、本実施の形態では、スピーカ装置300は、さらに、前後方向と交差する側方にスピーカ1a、スピーカ1b、スピーカ2a及びスピーカ2bと隣り合うように配置され、スピーカ入力信号(入力音声信号及び反転音声信号)とは異なるマスキング信号に基づく音声を出力するスピーカ1c、スピーカ1d、スピーカ2c及びスピーカ2dを備える。
【0132】
これによれば、スピーカ装置300の前後方向及び側方にマスキング音声が出力されるため、スピーカ装置300の前後方向においては、スピーカ1a、スピーカ1b、スピーカ2a及びスピーカ2bから出力される音声を聴取することができるが、スピーカ装置300の側方においては、これらの音声を聴取することがより困難となる。
【0133】
[3-4.ラインアレイ化による効果]
ここで、図20図22を参照しながら、複数組のスピーカ装置を側方にラインアレイ状に並べて配置する(以下、「ラインアレイ化する」という)ことにより得られる効果について説明する。図20図22は、複数組のスピーカ装置をラインアレイ化することにより得られる効果を説明するための図である。
【0134】
図20の(a)に示すように、1組のスピーカ装置(スピーカの配置が1×2である)を用いて、当該1組のスピーカ装置から出力される音声の指向性特性を測定する実験を行った。1組のスピーカ装置から出力される音声の周波数は、500Hzであった。音声の指向性特性の測定結果は、図20の(b)に示す通りであった。
【0135】
また、図21の(a)に示すように、ラインアレイ状に配置された8組のスピーカ装置(スピーカの配置が8×2である)を用いて、当該8組のスピーカ装置から出力される音声の指向性特性を測定する実験を行った。8組のスピーカ装置から出力される音声の周波数は、500Hzであった。音声の指向性特性の測定結果は、図21の(b)に示す通りであった。
【0136】
また、図22の(a)に示すように、ラインアレイ状に配置された16組のスピーカ装置(スピーカの配置が16×2である)を用いて、当該16組のスピーカ装置から出力される音声の指向性特性を測定する実験を行った。16組のスピーカ装置から出力される音声の周波数は、500Hzであった。音声の指向性特性の測定結果は、図22の(b)に示す通りであった。
【0137】
なお、図20の(b)、図21の(b)及び図22の(b)における2本の実線は、音声の指向性特性の先鋭度を説明するためのものである。2本の実線が互いに平行となる方向に近付くほど、音声の指向性特性の先鋭度が増大する(すなわち、指向性が狭くなる)ことを表している。
【0138】
図20の(b)、図21の(b)及び図22の(b)から明らかなように、ラインアレイ化された複数組のスピーカ装置では、ラインアレイ化されない1組のスピーカ装置と比べて、音圧の大きい範囲の広がりが狭くなり、音声の指向性特性の先鋭度が増大することが確認された。
【0139】
また、図21の(b)及び図22の(b)から明らかなように、ラインアレイ化するスピーカ装置の数を増大するのに従って、音圧の大きい範囲の広がりがより一層狭くなり、音声の指向性特性の先鋭度がより一層増大することが確認された。
【0140】
(実施の形態4)
[4-1.スピーカ装置の構成]
図23図25を参照しながら、実施の形態4に係るスピーカ装置400の構成について説明する。図23は、実施の形態4に係るスピーカ装置400の構成を示すブロック図である。図24及び図25は、実施の形態4に係るスピーカ装置400から出力される音声の指向性特性を示す図である。
【0141】
図23に示すように、実施の形態4に係るスピーカ装置400は、スピーカ1と、スピーカ2と、角度センサ56と、制御部58とを備えている。
【0142】
スピーカ1及びスピーカ2はそれぞれ、上記実施の形態1で説明したスピーカ1及びスピーカ2と同様に構成されている。スピーカ1及びスピーカ2は、スピーカ1が音声を出力する方向X1(図1B参照)とスピーカ2が音声を出力する方向X2(図1B参照)とのなす角度θ(図1B参照)が可変であるように構成されている。すなわち、スピーカ1及びスピーカ2は、互いに回動可能に構成されている。
【0143】
角度センサ56は、上述した角度θを検出するためのセンサである。角度センサ56は、検出した角度θを制御部58に出力する。
【0144】
制御部58は、角度センサ56により検出された角度θに応じて、入力端子7(図3A参照)に入力される入力音声信号のゲイン、すなわち、スピーカ1及びスピーカ2の各々に入力される入力音声信号又は反転音声信号のゲインを周波数帯域毎に調節する。制御部58は、例えば、記憶部(図示せず)に記憶された周波数帯域毎の角度θとゲインとの対応関係を示す対応テーブルを参照することにより、角度センサ56により検出された角度θに対応するゲインを周波数帯域毎に決定する。
【0145】
ここで、図24及び図25に示すように、スピーカ装置400から出力される音声の指向性特性は、各周波数において、角度θに応じて変化する。
【0146】
例えば、図24に示すように、スピーカ装置400から出力される音声の周波数が500Hzである場合、角度θが50°、80°である場合の指向性特性は、角度θが40°、60°、70°、90°である場合の指向性特性と比べて、全体的に音圧が低下している。
【0147】
また例えば、図25に示すように、スピーカ装置400から出力される音声の周波数が2kHzである場合、角度θが80°である場合の指向性特性は、角度θが40°、50°、60°、70°、90°である場合の指向性特性と比べて、全体的に音圧が低下している。
【0148】
そのため、制御部58は、例えば角度センサ56により検出された角度θが50°である場合には、周波数500Hzに対応する入力音声信号又は反転音声信号のゲインを増大させる。また、制御部58は、例えば角度センサ56により検出された角度θが80°である場合には、周波数500Hz及び2kHzに対応する入力音声信号又は反転音声信号のゲインを増大させる。
【0149】
これにより、ユーザがスピーカ1及びスピーカ2を互いに回動させることにより、角度θを任意の角度に変更した場合であっても、複数の周波数の間で指向性特性がばらつくのを抑制することができる。
【0150】
なお、上述した構成に代えて、制御部58は、スピーカ装置400の床からの高さと角度θとの対応関係が予め決まっている場合には、スピーカ装置400の床からの高さに関する情報を取得し、取得したスピーカ装置400の床からの高さに関する情報に応じて、スピーカ1及びスピーカ2の各々に入力される入力音声信号又は反転音声信号のゲインを調節してもよい。
【0151】
[4-2.効果]
本実施の形態では、スピーカ1が音声を出力する方向と、スピーカ2が音声を出力する方向とのなす角度θは、可変である。
【0152】
これによれば、角度θを調節することにより、目的とする周波数帯における指向性特性や、指向性が及ぶ範囲を調節することができる。
【0153】
また、本実施の形態では、スピーカ装置400は、さらに、角度θに応じて、スピーカ1及びスピーカ2の各々に入力される入力音声信号又は反転音声信号のゲインを調節する制御部58を備える。
【0154】
これによれば、ユーザがスピーカ1及びスピーカ2を互いに回動させることにより、角度θを任意の角度に変更した場合であっても、複数の周波数の間で指向性特性がばらつくのを抑制することができる。
【0155】
(他の変形例等)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1~4を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1~4で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0156】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0157】
上記各実施の形態では、スピーカ装置100(200,300,400)全体の配置の向きについては、上向き及び下向きのいずれかを例に示したが、配置の向きは任意であり、例えば横向き又は斜め向き等であってもよい。
【0158】
また、上記実施の形態2及び3では、スピーカ装置200(300)に含まれる複数のスピーカ装置100a,100b(100a,100b,100c,100d)の配置は、側方における1列のインライン構成としたが、これに限定されない。例えば、スピーカ装置200(300)に含まれる複数のスピーカ装置100a,100b(100a,100b,100c,100d)を平面上に自由に配置することも可能である。
【0159】
また、図26に示すように、上下方向への立体的な配置としてもよい。図26は、変形例に係るスピーカ装置500の構成を示す斜視図である。図26に示すように、変形例に係るスピーカ装置500は、上向きのスピーカ装置100aと、下向きのスピーカ装置100cとを備えている。上向きのスピーカ装置100a及び下向きのスピーカ装置100cは、上下に隣り合うように配置されている。このような配置により、より立体的な音場の形成が可能となる。また、図26に示す構成において、上側のスピーカ装置100aを通常の音声出力に使用し、下側のスピーカ装置100cをマスキング音声の出力に使用してもよい。これとは反対に、上側のスピーカ装置100aをマスキング音声の出力に使用し、下側のスピーカ装置100cを通常の音声出力に使用してもよい。あるいは、ラインアレイ化した2組のスピーカ装置を上下に隣り合うように配置してもよい。この場合、ラインアレイ化した2組のスピーカ装置は、平面視で十字状に配置されてもよいし、互いに重なるように(すなわち、互いに平行になるように)配置されてもよい。さらに、上下方向へのスピーカ装置の個数を増加することにより、実施の形態2及び実施の形態3と同様の効果を立体的に得ることが可能である。
【0160】
上記各実施の形態では、スピーカ装置100(200,300,400)は、位相切替回路6を備え、スピーカ1及びスピーカ2から出力される音声を互いに同位相とするか、逆位相とするかを切り替え可能な構成としたが、これに限定されない。スピーカ装置100は、位相切替回路6を備えず、入力端子7から入力される音声信号を、互いに同位相及び逆位相のいずれかとして、スピーカ1及びスピーカ2から出力するようにしてもよい。例えば、上記実施の形態3の構成において、スピーカ入力信号が入力されるスピーカ装置100a及びスピーカ装置100bでは、スピーカ1及びスピーカ2から逆位相の音声が出力されるように、入力端子7と入力端子10及び入力端子11とが電気的に接続され、マスキング信号が入力されるスピーカ装置100c及びスピーカ装置100dでは、スピーカ1及びスピーカ2から同位相の音声が出力されるように、入力端子7と入力端子10及び入力端子11とが電気的に接続されるようにしてもよい。
【0161】
上記実施の形態3では、スピーカ装置300において入力端子から入力音声信号(スピーカ入力信号)及びマスキング信号が入力される構成を説明したが、外部からの音声信号の入力の仕方はこれに限定されない。例えば、スピーカ装置300には、通信装置からの入力音声信号及びマスキング信号が入力されるようにしてもよい。具体的には、通信装置は、通信機能を有する外部の音声再生装置と無線又は有線で通信することにより、スピーカ装置300に入力音声信号及びマスキング信号を入力する構成としてもよい。通信装置は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、通信インタフェースとを有する。通信装置の通信インタフェースは、音声再生装置からの入力音声信号を受信し、受信した入力音声信号をスピーカ装置100a及びスピーカ装置100bに出力する。これにより、スピーカ装置100a及びスピーカ装置100bは、入力音声信号に基づく会議の音声を出力する。また、スピーカ装置100c及びスピーカ装置100dは、通信装置のメモリに予め記憶されたマスキング信号に基づくマスキング音声を出力する。この時、通信装置のCPUが音声信号毎にアンプでの増幅率を制御することにより、スピーカ装置300において上記実施の形態3で説明した音声信号の制御が行われる。なお、マスキング信号については、スピーカ装置300がメモリ等の記憶媒体を備え、記憶媒体にマスキング信号を記憶しておき、記憶媒体からマスキング信号を読み出してスピーカ装置100c及びスピーカ装置100dからマスキング音声を出力するようにしてもよい。上記実施の形態1、2及び4についても上記と同様に、スピーカ装置100、スピーカ装置200及びスピーカ装置400には、通信装置からの入力音声信号が入力されるようにしてもよい。
【0162】
上記各実施の形態では、スピーカ1及びスピーカ2は、音声を出力する方向が互いに交差するように基準面3に対して線対称になるように配置され、且つ、一方のスピーカが音声を出力する方向に他方のスピーカが配置されるようにしたが、これに限定されない。スピーカ1及びスピーカ2の配置は、音声を出力する方向が互いに交差するように基準面3に対して線対称になるように配置され、且つ、一方のスピーカが音声を出力する方向とは反対側に他方のスピーカが配置されるようにしてもよい。すなわち、スピーカ1及びスピーカ2が互いに斜めに背中合わせになるように配置してもよい。ここで、「一方のスピーカが音声を出力する方向とは反対側に他方のスピーカが配置される」とは、より具体的には、例えばスピーカ1を方向X1に垂直な方向から見たときに、方向X1に平行な方向においてスピーカ1よりも後方(音声を出力する向きとは反対の向き)にスピーカ2が配置されることを意味する。この場合、スピーカ装置100(200,300,400)全体の形状は、山型の筐体の斜面の両側にそれぞれスピーカ1及び2が配置された形状となる。但し、スピーカ装置100を側方から見たときの音場特性(指向性特性)は、実施の形態1~4で示した配置の方が鋭くなるため、実施の形態1~4で示した配置がより望ましい。
【0163】
上記各実施の形態では、位相切替回路6は、スピーカ1に入力される入力音声信号の位相をそのまま、又は、逆位相にして出力する回路として説明したが、これに限定されず、本開示におけるスピーカ装置100(200,300,400)において位相を制御できるものであれば、任意の回路であってもよい。例えば、位相切替回路6は、入力される音声信号を制御することにより、スピーカ1及びスピーカ2に入力される音声信号を互いに同位相又は逆位相に切り替え可能であればよい。
【0164】
位相切替回路6は、様々な態様で実現可能である。例えば、電気的な切替スイッチやリレーで構成してもよいし、プロセッサを用いてもよい。制御回路としてプロセッサを用いれば、プログラムを格納している記憶媒体からプログラムをプロセッサに読み込ませ、プロセッサによりプログラムを実行することで、各種処理を実行することが可能となる。このため、記憶媒体に格納されたプログラムを変更することで処理内容を変更できるので、制御内容の変更の自由度を高めることができる。プロセッサとしては、例えば、CPU、及び、MPU(Micro-Processing Unit)などがある。記憶媒体としては、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、及び、光ディスクなどがある。また、制御回路としてプログラムの書き換えが不可能なワイヤードロジックを用いてもよい。制御回路としてワイヤードロジックを用いれば、処理速度の向上に有効である。ワイヤードロジックとしては、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などがある。また、制御回路として、プロセッサとワイヤードロジックとを組み合わせて実現してもよい。制御回路を、プロセッサとワイヤードロジックとを組み合わせて実現すれば、ソフトウェア設計の自由度を高めつつ、処理速度を向上することができる。また、制御回路と別の機能を有する回路とを、1つの半導体素子で構成してもよい。別の機能を有する回路としては、例えば、A/D・D/A変換回路などがある。また、制御は、1つの半導体素子で構成してもよいし、複数の半導体素子で構成してもよい。複数の半導体素子で構成する場合、請求の範囲に記載の各制御を、互いに異なる半導体素子で実現してもよい。さらに、半導体素子と抵抗またはコンデンサなどの受動部品とを含む構成によって制御回路を構成してもよい。
【0165】
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0166】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面及び詳細な説明を提供した。
【0167】
したがって、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0168】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本開示は、音場の指向性を制御可能なスピーカ装置に適用可能である。具体的には、会議システム向けのスピーカ装置又は空間音響装置等に、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0170】
1,1a,1b,1c,1d,2,2a,2b,2c,2d スピーカ
3 基準面
4,4a,4b,4c,4d,5,5a,5b,5c,5d 筐体
6,6a,6b 位相切替回路
7,7a,7b,10,10a,10b,11,11a,11b 入力端子
8,8a,8b 切替スイッチ
12,13,14,15 音場曲線
23,24,25,26 会議参加者
27 テーブル
28 部外者
29 天井
30 パーテーション
31,32,33,34,35,36,37,38,46,47,48,49,50,51,52,53,54 音場曲線
39 梁
56 角度センサ
58 制御部
100,100a,100b,100c,100d,200,300,400,500 スピーカ装置
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26