(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】レーザ加工装置およびレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/064 20140101AFI20231208BHJP
【FI】
B23K26/064 K
(21)【出願番号】P 2019236219
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 重之
(72)【発明者】
【氏名】森 正裕
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆幸
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-297464(JP,A)
【文献】特開平09-168882(JP,A)
【文献】特開2019-150842(JP,A)
【文献】特開平11-309594(JP,A)
【文献】特開平8-75947(JP,A)
【文献】国際公開第03/034554(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長を有する第1レーザ光を出射する第1光源と、
前記第1波長と異なる第2波長を有する第2レーザ光を出射する第2光源と、
前記第1レーザ光と前記第2レーザ光とを重畳する波長合成部と、
重畳された前記第1レーザ光および前記第2レーザ光を集光する集光光学系と、
前記集光光学系から出射された前記第1レーザ光および前記第2レーザ光を伝送するダブルコアファイバと、を有し、
前記第1光源において前記第1レーザ光が出射される第1出射面の面積は、前記第2光源において前記第2レーザ光が出射される第2出射面の面積と異な
り、
前記第1レーザ光および前記第2レーザ光のうち、
前記ダブルコアファイバの始端部における集光スポットの面積が第1の面積を有するレーザ光は、前記ダブルコアファイバの中心部に設けられた第1コアに導光され、
前記集光スポットの面積が前記第1の面積よりも大きい第2の面積を有するレーザ光は、前記第1コアおよび前記第1コアの周辺に設けられた第2コアに導光される、
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記第1出射面の面積は、前記第2出射面の面積よりも小さい、
請求項
1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記第1波長は、前記第2波長よりも小さい、
請求項1
または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
第1光源から第1波長を有する第1レーザ光を出射し、かつ、第2光源から前記第1波長と異なる第2波長を有する第2レーザ光を出射する工程と、
前記第1レーザ光と前記第2レーザ光とを重畳する工程と、
重畳された前記第1レーザ光および前記第2レーザ光を集光する工程と、
集光された前記第1レーザ光および前記第2レーザ光をダブルコアファイバにより伝送する工程と、を有し、
前記第1光源において前記第1レーザ光が出射される第1出射面の面積は、前記第2光源において前記第2レーザ光が出射される第2出射面の面積と異な
り、
前記第1レーザ光および前記第2レーザ光のうち、
前記ダブルコアファイバの始端部における集光スポットの面積が第1の面積を有するレーザ光は、前記ダブルコアファイバの中心部に設けられた第1コアに導光され、
前記集光スポットの面積が前記第1の面積よりも大きい第2の面積を有するレーザ光は、前記第1コアおよび前記第1コアの周辺に設けられた第2コアに導光される、
レーザ加工方法。
【請求項5】
前記第1出射面の面積は、前記第2出射面の面積よりも小さい、
請求項
4に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記第1波長は、前記第2波長よりも小さい、
請求項
4または5に記載のレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工装置およびレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザダイオード(以下、LDという)光を直接加工に用いるダイレクトダイオードレーザ(以下、DDLという)が知られている。このDDLでは、従来の加工用レーザ(例えば、CO2レーザ、固体レーザなど)と比較して、電気光変換効率が非常に高く、ランニングコストの大幅な削減を見込むことができる。そのため、DDLは、レーザ加工装置の高消費電力問題を解決する次世代レーザとして注目されている。
【0003】
しかしながら、LD光は集光性が悪いため、細径の光ファイバを用いて高出力で伝送することが難しい。そのため、LD光を用いて、高いエネルギ密度を必要とする加工(例えば、金属切断など)を行うことは、困難であった。
【0004】
これに対し、例えば特許文献1には、波長の異なる固体レーザ光と重畳用LD光とを重畳させることにより、高いエネルギ密度を得ることができるレーザ加工装置が開示されている。
【0005】
特許文献1のレーザ加工装置では、固体レーザ光と重畳用LD光とは、ダイクロイックミラーにより重畳された後、伝送用光ファイバに伝送され、出射集光光学系へ向かう。このとき、加工対象および加工内容によっては、それぞれのレーザ光を異なるスポット径で集光させることにより、加工品質を向上させることが可能である。
【0006】
一般的に、金属は、光の波長が短いほど吸収率が高いため、短波長側の光を小さく集光させることにより、局所的に高エネルギを吸収させることができ、深い溶込みを得ることができる。また、金属は、その温度が上がるほど吸収率が上昇するので、長波長側の光を大きく集光させることにより、短波長光の集光箇所を起点に広く浅く溶融させることができ、スパッタ発生を抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のレーザ加工装置では、加工対象に照射される固体レーザ光および重畳用LD光は、ほぼ同一の集光スポットサイズにしかならないという課題がある。よって、互いに波長が異なる複数のLD光を、異なる集光スポットサイズで集光させることができる技術が望まれている。
【0009】
本開示の一態様の目的は、互いに波長が異なる複数のLD光を、異なる集光スポットサイズで集光させることができるレーザ加工装置およびレーザ加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に係るレーザ加工装置は、第1波長を有する第1レーザ光を出射する第1光源と、前記第1波長と異なる第2波長を有する第2レーザ光を出射する第2光源と、前記第1レーザ光と前記第2レーザ光とを重畳する波長合成部と、重畳された前記第1レーザ光および前記第2レーザ光を集光する集光光学系と、前記集光光学系から出射された前記第1レーザ光および前記第2レーザ光を伝送するダブルコアファイバと、を有し、前記第1光源において前記第1レーザ光が出射される第1出射面の面積は、前記第2光源において前記第2レーザ光が出射される第2出射面の面積と異なり、前記第1レーザ光および前記第2レーザ光のうち、前記ダブルコアファイバの始端部における集光スポットの面積が第1の面積を有するレーザ光は、前記ダブルコアファイバの中心部に設けられた第1コアに導光され、前記集光スポットの面積が前記第1の面積よりも大きい第2の面積を有するレーザ光は、前記第1コアおよび前記第1コアの周辺に設けられた第2コアに導光される。
【0011】
本開示の一態様に係るレーザ加工方法は、第1光源から第1波長を有する第1レーザ光を出射し、かつ、第2光源から前記第1波長と異なる第2波長を有する第2レーザ光を出射する工程と、前記第1レーザ光と前記第2レーザ光とを重畳する工程と、重畳された前記第1レーザ光および前記第2レーザ光を集光する工程と、集光された前記第1レーザ光および前記第2レーザ光をダブルコアファイバにより伝送する工程と、を有し、前記第1光源において前記第1レーザ光が出射される第1出射面の面積は、前記第2光源において前記第2レーザ光が出射される第2出射面の面積と異なり、前記第1レーザ光および前記第2レーザ光のうち、前記ダブルコアファイバの始端部における集光スポットの面積が第1の面積を有するレーザ光は、前記ダブルコアファイバの中心部に設けられた第1コアに導光され、前記集光スポットの面積が前記第1の面積よりも大きい第2の面積を有するレーザ光は、前記第1コアおよび前記第1コアの周辺に設けられた第2コアに導光される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、互いに波長が異なる複数のLD光を、異なる集光スポットサイズで集光させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施の形態1に係るレーザ加工装置の概略図
【
図2】本開示の実施の形態2に係るレーザ加工装置の概略図
【
図3】本開示の実施の形態2に係るレーザ加工装置におけるダブルコアファイバの始終端部周辺の概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0015】
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1に係るレーザ加工装置100について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施の形態のレーザ加工装置100の概略図である。
【0016】
図1に示すレーザ加工装置100は、レーザ光の照射により被加工物35を加工する装置である。
図1に示すように、レーザ加工装置100は、第1LD光源24、第2LD光源25、第1コリメート光学系28、第2コリメート光学系29、波長合成部32、および集光光学系34を備える。なお、第1コリメート光学系28および第2コリメート光学系29は、必須の構成要素ではない。
【0017】
第1LD光源24(第1光源の一例)は、波長λ1(第1波長の一例)のレーザ光26を出射する。第1レーザ光26は、第1LD光源24から拡散されて出射される。
【0018】
第2LD光源25(第2光源の一例)は、波長λ1とは異なる波長λ2(第2波長の一例)のレーザ光27を出射する。第2レーザ光27は、第2LD光源25から拡散されて出射される。
【0019】
第1LD光源24および第2LD光源25としては、例えば、単一の照射面を備えたCANタイプLD、CANタイプLDを複数並べたもの、複数の照射面を備えたマルチダイパッケージタイプLD、マルチダイパッケージLDを複数並べたもの、複数の照射面をアレイ状に並べたバータイプLD、または、バータイプLDを複数並べたもの等を用いることができる。
【0020】
第1LD光源24において第1レーザ光26が出射される第1出射面の面積S1(図示略)は、第2LD光源25において第2レーザ光27が出射される第2出射面の面積S2(図示略)と異なる。そのため、後述するように、波長合成部32によって重畳された第1レーザ光26および第2レーザ光27(重畳レーザ光33)は、集光光学系34によって異なる集光スポットサイズで集光される。
【0021】
例えば、第1レーザ光26および第2レーザ光27のうち、短波長のレーザ光を小さく集光させ、長波長のレーザ光を大きく集光させることが可能である。この場合、短波長のレーザ光に対して高い吸収率を有する材料を加工する際に、吸収率の高い短波長のレーザ光を小さく集光させることができる。よって、局所的に高エネルギを被加工物に吸収させることができ、被加工物において深い溶込みを得ることができる。
【0022】
また、長波長のレーザ光を大きく集光させることで、短波長のレーザ光の集光箇所を起点に広く浅く被加工物を溶融させることができ、加工時のスパッタ発生を抑制することが可能となる。
【0023】
もちろん、被加工物の特性に応じて、長波長のレーザ光を小さく集光させ、短波長のレーザ光を長波長よりも大きく集光させてもよい。
【0024】
すなわち、本実施の形態では、レーザ光の出射面の面積が互いに異なる複数のLD光源を用いることにより、複数の波長のレーザ光を、異なる集光スポットサイズで集光させることができる。このため、被加工物の材料特性に応じて集光スポットサイズを調整することが可能になり、加工の精度を向上させることができる。その結果、信頼性の高い加工を行うことができる。
【0025】
本実施の形態では、第1出射面の面積S1は、第2出射面の面積S2よりも小さい。
【0026】
本実施の形態では、第1レーザ光26の波長λ1と第2レーザ光27の波長λ2は、λ1<λ2の関係を満たす。すなわち、第1レーザ光26の波長λ1は、第2レーザ光27の波長λ2より小さい(短い)。よって、本実施の形態のレーザ加工装置100は、短波長の第1レーザ光26を小さく集光させ、長波長の第2レーザ光27を第1レーザ光26よりも大きく集光させることができる。したがって、本実施の形態のレーザ加工装置100は、特に、長波長と比較して短波長のレーザ光に対して高い吸収率を有する材料の加工に有用である。
【0027】
図1に示すように、レーザ加工装置100は、第1コリメート光学系28および第2コリメート光学系29を有する。第1コリメート光学系28は、第1レーザ光26を平行光(例えば、
図1に示す第1コリメート光30)にする。第2コリメート光学系29は、第2レーザ光27を平行光(例えば、
図1に示す第2コリメート光31)にする。
【0028】
第1コリメート光学系28および第2コリメート光学系29としては、例えば、コリメートレンズ、複数のコリメートレンズを並べたもの、LD光の速軸方向をコリメートするファストアクシスコリメータ(以下、FACという)と遅軸方向をコリメートするスロウアクシスコリメータ(以下、SACという)との組合せ、または、複数のFACとSACとを並べたもの等を用いることができる。
【0029】
本実施の形態では、第1コリメート光学系28は焦点距離fi1(図示略)を有し、第2コリメート光学系29はおよび焦点距離fi2(図示略)を有する。
【0030】
第1コリメート光30は、第1コリメート光学系28を通過後の第1レーザ光26である。第2コリメート光31は、第2コリメート光学系29を通過後の第2レーザ光27である。
【0031】
第1コリメート光31および第2コリメート光32は、必ずしも厳密な平行光である必要はなく、速軸方向および遅軸方向それぞれにおいて、やや収束していてもよく、または、やや拡散していてもよい。
【0032】
なお、上述したとおり、レーザ加工装置100は、第1コリメート光学系28および第2コリメート光学系29を備えなくてもよい。
【0033】
図1に示す波長合成部32は、波長の異なる第1コリメート光30と第2コリメート光31とを空間的に重畳(合成と言い換えてもよい)させる。
【0034】
波長合成部32で行われる重畳方法としては、例えば、波長λ1、λ2のそれぞれに対応したダイクロイックミラーを用いて一方のレーザ光を反射させ、他方のレーザ光を透過させて重畳させる方法、または、波長λ1、λ2のそれぞれを異なる入射角でプリズムに入射させて、その反射光や透過光を重畳させる方法等を用いることができる。
【0035】
図1に示す重畳レーザ光33は、波長合成部32によって第1コリメート光30と第2コリメート光31とが空間的に重畳された光である。
【0036】
なお、第1LD光源24および第2LD光源25のそれぞれが複数のLDを含む場合、複数のLDからの光をそれぞれコリメートした後に、空間合成部(図示略)によって空間的に集積させてから、波長合成部32において第1レーザ光26と第2レーザ光27とを重畳させてもよい。
【0037】
図1に示した集光光学系34は、重畳レーザ光33を被加工物35に向けて集光させる。これにより、第1レーザ光26および第2レーザ光27は、被加工物35上に集光される。集光光学系34は、焦点距離fo(図示略)を有する。
【0038】
集光光学系34としては、例えば、単一の集光レンズ、複数のレンズを組合せた組レンズ、または、曲面を持った集光ミラー等を用いることができる。
【0039】
本実施の形態では、波長λ1成分の被加工物35上での集光スポットの面積をP1とし、波長λ2成分の被加工物35上での集光スポットの面積をP2とした場合、以下の式(1)、(2)を満たす。
P1=S1×fi1÷fo・・・(1)
P2=S2×fi2÷fo・・・(2)
【0040】
ここで、第1コリメート光学系28の焦点距離fi1および第2コリメート光学系29の焦点距離fi2は、第1LD光源24、第2LD光源25、第1コリメート光学系28、第2コリメート光学系29それぞれの配置に関する物理的制約および光学的制約によって、ほぼ同一の数値とならざるを得ない。そのため、近似的に以下の式(3)が成立する。
P1:P2=S1:S2・・・(3)
【0041】
すなわち、重畳させた第1レーザ光26および第2レーザ光27の集光スポットの面積P1およびP2を異なるようにするためには、第1LD光源24および第2LD光源25の出射面の面積S1およびS2を異ならせればよい。
【0042】
(実施の形態2)
本開示の実施の形態2に係るレーザ加工装置200について、
図2、
図3を用いて説明する。
図2は、本実施の形態のレーザ加工装置200の概略図である。
図3は、
図2に示すダブルコアファイバ36の始終端部周辺の概略図である。なお、
図2、
図3において、実施の形態1と同じ構成要素については同一符号を付しており、それらの説明については適宜省略する。
【0043】
図2に示すように、レーザ加工装置200は、
図1に示した各種構成要素に加えて、重畳レーザ光33を伝送するダブルコアファイバ36をさらに有する。
【0044】
図3に示すように、ダブルコアファイバ36は、その厚み方向の中心から順に、第1コア40、第2コア41、クラッド42が積層された光ファイバである。
【0045】
図2に示すように、ダブルコアファイバ36の始端部は、集光光学系34によって集光された重畳レーザ光33の集光位置に配置されている。重畳レーザ光33は、ダブルコアファイバ36の始端部から入射し、ダブルコアファイバ36の内部を通って、ダブルコアファイバ36の終端部から出射する。
【0046】
ダブルコアファイバ36において、重畳レーザ光33に含まれる第1レーザ光26および第2レーザ光27のうち、一方は第1コア40に導光され、他方は第1コア40および第2コア41に導光される。
【0047】
図3に示す第1入射レーザ光38は、集光光学系34によって集光された重畳レーザ光33のうちの波長λ1成分である。すなわち、第1入射レーザ光38は、第1レーザ光26に由来する成分である。
【0048】
レーザ加工装置200がコリメート光学系(例えば、
図2に示す第1コリメート光学系28および第2コリメート光学系29)を有する場合、第1入射レーザ光38は、第1コリメート光30に由来する成分である。
【0049】
図3に示すように、第1入射レーザ光38は、ダブルコアファイバ36の始端部から第1コア40に入射した後、第1コア40内を伝搬し、ダブルコアファイバ36の終端部から第1出射レーザ光43として出射する。
【0050】
図3に示すように、第2入射レーザ光39は、集光光学系34によって集光された重畳レーザ光33のうちの波長λ2成分である。すなわち、第2入射レーザ光39は、第2レーザ光27に由来する成分である。
【0051】
レーザ加工装置200がコリメート光学系(例えば、
図2に示す第1コリメート光学系28および第2コリメート光学系29)を有する場合、第2入射レーザ光39は、第2コリメート光31に由来する成分である。
【0052】
図3に示すように、第2入射レーザ光39は、ダブルコアファイバ36の始端部から第1コア40および第2コア41に入射し、第1コア40および第2コア41内を伝搬し、ダブルコアファイバ36の終端部から第2出射レーザ光44として出射する。
【0053】
図2に示すように、レーザ加工装置200は、結像光学系37をさらに有してもよい。
【0054】
結像光学系37は、ダブルコアファイバ36から出射された重畳レーザ光33を被加工物35に向けて結像倍率Aで結像させる光学系である。
【0055】
結像光学系37としては、例えば、単一の集光レンズ、複数のレンズを組合せた組レンズ、または、曲面を持った集光ミラー等を用いることができる。
【0056】
ここで、第1コア40および第2コア41それぞれの断面積をSc1およびSc2とする。また、ダブルコアファイバ36の始端部における第1入射レーザ光38および第2入射レーザ光39それぞれの集光スポットの面積をSi1およびSi2とする。この場合、レーザ加工装置200は、以下の式(4)、(5)を満たす。
Si1≦Sc1・・・(4)
Si2≦Sc1+Sc2・・・(5)
【0057】
式(4)を満たすことにより、第1入射レーザ光38は、ダブルコアファイバ36の第1コア40内を伝搬し、ダブルコアファイバ36の終端部から第1出射レーザ光43として出射される。
【0058】
式(5)を満たすことにより、第2入射レーザ光39は、ダブルコアファイバ36の第1コア40内および第2コア41内を伝搬し、ダブルコアファイバ36の終端部から第2出射レーザ光44として出射される。
【0059】
また、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、Si1およびSi2は、以下の関係式(6)、(7)を満たす。
Si1=S1×fi1÷fo・・・(6)
Si2=S2×fi2÷fo・・・(7)
【0060】
式(6)および式(7)で示す通り、式(4)および式(5)を満たすためには、第1LD光源24および第2LD光源25の出射面の面積S1およびS2の関係が非常に重要である。
【0061】
式(6)および式(7)を満たすことにより、波長λ1成分の被加工物35上における集光スポットの面積P1(以下、単に「面積P1」という)と、波長λ2成分の被加工物35上における集光スポットの面積P2(以下、単に「面積P2」という)とが、以下の式(8)を満たす。
P1:P2=Sc1:Sc1+Sc2・・・(8)
【0062】
実施の形態2では、重畳レーザ光33がダブルコアファイバ36に入ることにより、コアの面積比が集光スポットの面積比となる。なお、これに対し、実施の形態1では、式(3)に示したように、出射面の面積比が集光スポットの面積比となる。
【0063】
すなわち、面積P1と面積P2との関係は、第1コア40の断面積Sc1と第2コア41の断面積Sc2との関係に影響を受ける。
【0064】
よって、式(4)および式(5)を満たす範囲で第1コア40および第2コア41それぞれの断面積が異なるダブルコアファイバ36を選択することにより、面積P1および面積P2を被加工物35および加工内容に適した大きさに変更することができる。
【0065】
また、重畳レーザ光33を、ダブルコアファイバ36内を伝送させることにより、レーザ加工装置200としてフレキシブルなシステムアップが可能となるという利点もある。
【0066】
以上説明したように、実施の形態1のレーザ加工装置100および実施の形態2のレーザ加工装置200は、波長λ1を有する第1レーザ光26を出射する第1LD光源24と、波長λ1と異なる波長λ2を有する第2レーザ光27を出射する第2LD光源25と、第1レーザ光26と第2レーザ光27とを重畳する波長合成部32と、重畳された第1レーザ光26および第2レーザ光27を集光する集光光学系34と、を有し、第1LD光源24において第1レーザ光26が出射される第1出射面の面積S1は、第2LD光源25において第2レーザ光27が出射される第2出射面の面積S2と異なることを特徴とする。この特徴により、互いに波長が異なる複数のLD光を、異なる集光スポットサイズで集光させることができる。その結果、加工品質の向上に寄与することができる。
【0067】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本開示のレーザ加工装置およびレーザ加工方法は、DDLレーザ発振器を用いた加工において加工品質の向上に寄与する効果を有し、金属、樹脂、またはそれらを組み合わせた異種材料における、溶接、切断、穴あけ等の幅広い加工用途に適用できる。
【符号の説明】
【0069】
24 第1LD光源
25 第2LD光源
26 第1レーザ光
27 第2レーザ光
28 第1コリメート光学系
29 第2コリメート光学系
30 第1コリメート光
31 第2コリメート光
32 波長合成部
33 重畳レーザ光
34 集光光学系
35 被加工物
36 ダブルコアファイバ
37 結合光学系
38 第1入射レーザ光
39 第2入射レーザ光
40 第1コア
41 第2コア
42 クラッド
43 第1出射レーザ光
44 第2出射レーザ光