(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】レーザー加工装置、及びレーザー加工装置の出力制御装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20231208BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/00 N
(21)【出願番号】P 2020012030
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 正裕
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-058140(JP,A)
【文献】米国特許第05272309(US,A)
【文献】特開2006-005148(JP,A)
【文献】国際公開第2018/144524(WO,A1)
【文献】米国特許第05874708(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に照射する青色レーザー光及び赤外レーザー光を形成するレーザー光形成部と、
前記被加工物の表面溶融を検出する溶融検出部と、
前記レーザー光形成部により出力される前記青色レーザー光及び前記赤外レーザー光のパワーを制御する出力制御部と、
を備え、
前記出力制御部は、
前記被加工物に表面溶融が検出される前には、前記被加工物に少なくとも青色レーザー光が照射され、かつ、
前記被加工物に表面溶融が検出された後には、前記被加工物に照射される赤外レーザー光のパワーが表面溶融検出前よりも増加するように、前記レーザー光形成部の出力を制御
し、
さらに、前記出力制御部は、
前記被加工物に表面溶融が検出される前には、前記被加工物に青色レーザー光に加えて、所定閾値よりも低いパワーの赤外レーザー光が照射され、かつ、
前記被加工物に表面溶融が検出された後には、前記所定閾値以上のパワーの赤外レーザー光に加えて、青色レーザー光が照射され、かつ、
前記被加工物に表面溶融が検出された後に照射される青色レーザー光のパワーは、前記溶融検出部で検出される表面溶融状態に応じて増減するように、前記レーザー光形成部の出力を制御する、
レーザー加工装置。
【請求項2】
前記出力制御部は、
前記被加工物に表面溶融が検出される前には、前記被加工物に青色レーザー光に加えて、所定閾値よりも低いパワーの赤外レーザー光が照射され、かつ、
前記被加工物に表面溶融が検出された後には、前記所定閾値以上のパワーの赤外レーザー光が照射されるように、前記レーザー光形成部の出力を制御する、
請求項
1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
前記溶融検出部は、前記被加工物から反射する反射光の光量を検出する光ディテクターを有し、前記被加工物の表面溶融前に前記被加工物に照射された所定閾値よりも低いパワーの前記赤外レーザー光の前記被加工物からの反射光のパワーに基づいて、前記被加工物の表面溶融を検出する、
請求項
1又は
2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
前記溶融検出部は、前記被加工物の表面を撮像する撮像部を有し、当該撮像部の撮像画像に基づいて、前記被加工物の表面溶融を検出する、
請求項
1に記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
被加工物に照射されるレーザー光のパワーを制御する出力制御部と、
前記被加工物の表面溶融を検出する溶融検出部と、
を備え、
前記出力制御部は、
前記被加工物に表面溶融が検出される前には、前記被加工物に少なくとも青色レーザー光が照射され、
前記被加工物に表面溶融が検出された後には、前記被加工物に照射される赤外レーザー光のパワーが表面溶融検出前よりも増加するように、前記レーザー光のパワーを制御
し、
さらに、前記出力制御部は、
前記被加工物に表面溶融が検出される前には、前記被加工物に青色レーザー光に加えて、所定閾値よりも低いパワーの赤外レーザー光が照射され、かつ、
前記被加工物に表面溶融が検出された後には、前記所定閾値以上のパワーの赤外レーザー光に加えて、青色レーザー光が照射され、かつ、
前記被加工物に表面溶融が検出された後に照射される青色レーザー光のパワーは、前記溶融検出部で検出される表面溶融状態に応じて増減するように、前記レーザー光のパワーを制御する、
レーザー加工装置の出力制御装置。
【請求項6】
前記出力制御部は、
前記被加工物に表面溶融が検出される前には、前記被加工物に青色レーザー光に加えて、所定閾値よりも低いパワーの赤外レーザー光が照射され、
前記被加工物に表面溶融が検出された後には、前記所定閾値以上のパワーの赤外レーザー光が照射されるように、前記レーザー光のパワーを制御する、
請求項
5に記載のレーザー加工装置の出力制御装置。
【請求項7】
前記溶融検出部は、前記被加工物から反射する反射光の光量を検出する光ディテクターを有し、前記被加工物の表面溶融前に前記被加工物に照射された所定閾値よりも低いパワーの前記赤外レーザー光の前記被加工物からの反射光のパワーに基づいて、前記被加工物の表面溶融を検出する、
請求項
5に記載のレーザー加工装置の出力制御装置。
【請求項8】
前記溶融検出部は、前記被加工物の表面を撮像する撮像部を有し、当該撮像部の撮像画像に基づいて、前記被加工物の表面溶融を検出する、
請求項
5に記載のレーザー加工装置の出力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザー加工方法、レーザー加工装置、及びレーザー加工装置の出力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー加工装置は、微細加工、溶接、マーキングや切断といった様々な加工に広く用いられている。レーザー加工装置は、レーザービームのエネルギーを局所的に集光して、高エネルギー密度のレーザー光を被加工物に照射するので、高精細な加工を高速で実現できる。
【0003】
ところで、レーザー光は、被加工物である銅、アルミニウムやアルミニウム合金等への吸収率が悪い(換言すれば反射率が高いので)といった欠点がある。この結果、高パワーのレーザー光を照射する必要があった。
【0004】
一方で、銅、アルミニウムやアルミニウム合金等の被加工物は、一度、溶融すると、レーザー光に対する反射率が下がり、吸収率が高まるといった特性がある。この点に着目して従来、被加工物の表面を速やかに溶融状態に移行させる技術が開発されている。
【0005】
例えば特許文献1では、被加工物の初期加工段階において、被加工物に、低パワーの半導体レーザー光に加えて、高パワーのパルスレーザー光を照射することで、被加工物の表面溶融を促進させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のレーザー加工方法を用いれば、被加工物の溶融が促進され、被加工物の表面を速やかに溶融状態に移行させることができるが、被加工物のレーザー照射部分に高パワーのパルスレーザー光によりキーホールが形成され、スパッタやボイド等が発生するおそれがあった。
【0008】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであり、高品質かつ高速のレーザー加工を行うことができるレーザー加工方法、レーザー加工装置、及びレーザー加工装置の出力制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のレーザー加工方法の一つの態様は、
被加工物の表面溶融前の初期加工段階に、前記被加工物に少なくとも青色レーザー光を照射する第1照射ステップと、
前記被加工物の表面溶融を検出する溶融検出ステップと、
前記表面溶融が検出された後に、表面溶融が検出される前のパワーよりも大きなパワーの赤外レーザー光を前記被加工物に照射する第2照射ステップと、
を含む。
【0010】
本開示のレーザー加工装置の一つの態様は、
被加工物に照射する青色レーザー光及び赤外レーザー光を形成するレーザー光形成部と、
前記被加工物の表面溶融を検出する溶融検出部と、
前記レーザー光形成部により出力される前記青色レーザー光及び前記赤外レーザー光のパワーを制御する出力制御部と、
を備え、
前記出力制御部は、
前記被加工物に表面溶融が検出される前には、前記被加工物に少なくとも青色レーザー光が照射され、かつ、
前記被加工物に表面溶融が検出された後には、前記被加工物に照射される赤外レーザー光のパワーが表面溶融検出前よりも増加するように、前記レーザー光形成部の出力を制御する。
【0011】
本開示のレーザー加工装置の出力制御装置の一つの態様は、
被加工物に照射されるレーザー光のパワーを制御する出力制御部と、
前記被加工物の表面溶融を検出する溶融検出部と、
を備え、
前記出力制御部は、
前記被加工物に表面溶融が検出される前には、前記被加工物に少なくとも青色レーザー光が照射され、
前記被加工物に表面溶融が検出された後には、前記被加工物に照射される赤外レーザー光のパワーが表面溶融検出前よりも増加するように、前記レーザー光の出力を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、高品質かつ高速のレーザー加工を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係るレーザー加工装置の要部構成を示す概略図
【
図2】実施の形態のレーザー加工装置の動作の説明に供する図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<1>本発明に至った経緯
先ず、本発明の実施の形態を説明する前に、本発明に至った経緯について説明する。
【0015】
本発明の発明者は、波長の異なるレーザー光、より具体的には青色レーザー光と赤外レーザー光の両方をレーザー加工に用いることを考えた。ここで、青色レーザー光の波長は380~500[nm]であり、赤外レーザー光の波長は700~1100[nm]である。青色レーザー光は被加工物への吸収率が高い特徴があり、赤外レーザー光はビーム品質が良い(BPP(Beam Parameter Products)やM2(Mスクエア)が小さい)特徴がある。
【0016】
ここで、銅、アルミニウムやアルミニウム合金等の被加工物に対して、赤外レーザー光は、被加工物の表面溶融前の初期加工段階において、吸収率が低い欠点がある。これを補うために表面溶融前に高パワーの赤外レーザー光を照射して溶融を促進することが考えられるが、このようにすると、被加工物の固液相変化時に急激な温度上昇が生じるので、溶融が不安定となりスパッタや陥没穴の発生を招く。
【0017】
これに対して、銅、アルミニウムやアルミニウム合金等の被加工物に対して、青色レーザー光は、被加工物の表面溶融前の初期加工段階において、赤外レーザー光よりも吸収率が高いという長所がある。よって、青色レーザー光を用いれば、赤色レーザー光よりも低パワーで溶融状態を形成できるので、溶融状態が安定化し、スパッタや陥没穴の発生を抑制できる。
【0018】
しかし、高パワーの青色レーザー光を発生させるためのレーザー装置を実現するのは困難である。その結果、青色レーザーを用いた場合には、被加工物の溶融後においても低パワーの青色レーザー光を照射せざると得ず、被加工物に十分な溶融体積を確保することは困難である。
【0019】
そこで、発明者は、青色レーザー光と赤外レーザー光との両方を用い、それらの照射タイミングを適切に選択すれば、高品質かつ高速のレーザー加工を実現できると考え、本発明に至った。
【0020】
本発明のレーザー加工方法及び装置の一つの特徴は、被加工物の表面溶融前の初期加工段階には、被加工物に少なくとも青色レーザー光を照射し、被加工物の表面溶融が検出された後には、表面溶融が検出される前よりも大きなパワーの赤外レーザー光を被加工物に照射することである。
【0021】
<2>実施の形態
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本開示の実施の形態に係るレーザー加工装置100の要部構成を示す概略図である。
【0023】
レーザー加工装置100は、青色レーザー発振器101と、赤外レーザー発振器102と、レーザーヘッド110と、駆動部120と、パワーメーター130と、出力演算部140と、出力制御部150と、を有する。
【0024】
青色レーザー発振器101により得られた青色レーザー光、及び、赤外レーザー発振器102により得られた赤外レーザー光は、レーザーヘッド110に入射される。
【0025】
レーザーヘッド110は、集光レンズ111を有する。レーザーヘッド110に入射された青色レーザー光L1及び赤外レーザー光L2は、集光レンズ111によって被加工物1の表面に照射される。
【0026】
なお、
図1では、便宜上、青色レーザー光L1と赤色レーザー光L2をずらして記載しているが、実際には、青色レーザー光L1と赤色レーザー光L2は被加工物1上の同じ点に照射される。例えば、レーザーヘッド110に導光された青色レーザーL1及び赤外レーザー光L2は、レーザーヘッド110内でダイクロイックミラーやプリズムなどの波長合成手段(図示せず)によって重畳され、被加工物1上の同じ点に照射される。なお、レーザー照射を走査と共に行う場合には、青色レーザーL1を先行させ、赤外レーザーL2は青色レーザー光L1から走査後方にずれた位置に照射してもよい。
【0027】
駆動部120は、被加工物1をレーザー光L1の光軸に直交する面方向で移動させる。
【0028】
パワーメーター130は、被加工物1からの反射光のパワーを測定する。本実施の形態の場合には、被加工物1からの赤外レーザー光L2の反射光L3のパワーを測定する。
【0029】
出力演算部140は、パワーメーター130の測定結果に基づいて、青色レーザー発振器101及び赤外レーザー発振器102が出力すべきパワーを演算により求める。
【0030】
出力制御部150は、出力演算部140の演算結果に基づいて、青色レーザー発振器101及び赤外レーザー発振器102に出力制御信号を送る。
【0031】
図2は、本実施の形態のレーザー加工装置100の動作の説明に供する図である。
【0032】
先ず、
図2の(A)に示したように、被加工物1の表面溶融前の初期加工段階に、レーザー加工装置100は、被加工物1に、青色レーザー光L1と、赤外レーザー光L2とを照射する。このときの青色レーザー光L1は高パワーに制御され、赤外レーザー光L2は低パワーに制御される。ただし、上述したように青色レーザー光L1は高パワーであるとはいっても赤外レーザー光L2の高パワー(
図2の(C)を参照)と比較すると非常に低いパワーである。
【0033】
図2の(A)の状態においては、銅、アルミニウム合金等の被加工物1に対する吸収率の高い青色レーザー光L1によって表面溶融が促進される。また、
図2の(A)においては、被加工物1の表面が溶融前なので、パワーメーター130によって、高パワーの反射光L3が測定される。
【0034】
やがて、
図2の(B)に示したように、被加工物1の表面が溶融すると、被加工物1の表面での赤外レーザー光L2の吸収率が上がり反射率が下がるので、反射光L3のパワーが低下する。このような反射光L3のパワーの低下が検出されると、レーザー加工装置100は、
図2の(C)に示した状態へと遷移する。
【0035】
図2の(C)に示したように、レーザー加工装置100は、反射光L3のパワーの低下を検出した時点t1の後には(つまり表面溶融を検出した後には)、赤外レーザー光L2のパワーを上げる。これにより、被加工物1の表面溶融後は、高パワーの赤外レーザー光L2によって十分な溶融体積を確保したレーザー加工を行うことができるようになる。因みに、表面溶融が検出された後の青色レーザー光L1は、
図2の例のように高パワーのままに制御してもよく、あるいは、低パワーに制御してもよい。
【0036】
やがて、レーザー加工装置100は、時点t2で被加工物1に対して所望の溶融が完了すると、
図2の(D)に示したように、青色レーザー発振器101及び赤外レーザー発振器102からの青色レーザー光L1及び赤外レーザー光L2の出力を停止する。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態のレーザー加工装置100によれば、被加工物1の表面溶融前の初期加工段階には、被加工物1に少なくとも青色レーザー光L1を照射し、被加工物1の表面溶融が検出された後には、表面溶融が検出される前よりも大きなパワーの赤外レーザー光L2を被加工物1に照射する。
【0038】
これにより、被加工物1への吸収率の高い青色レーザー光L1によって被加工物1の表面溶融を促進し、表面溶融が検出された後には、高パワーの赤外レーザー光L1により溶融体積を確保するので、高品質かつ高速のレーザー加工を行うことができるようになる。
【0039】
<3>他の実施の形態
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0040】
上述の実施の形態では、被加工物1の表面溶融前の初期加工段階において、青色レーザー光L1に加えて赤外レーザー光L2を照射する場合について述べたが、初期加工段階においては、必ずしも赤外レーザー光L2を照射する必要はない。赤外レーザー光L2に代えて、表面溶融を検出可能な他の参照光を照射してもよい。また、被加工物1の表面を撮像する撮像部を設け、当該撮像部の撮像画像に基づいて、被加工物1の表面溶融を検出するようにしてもよい。要は、被加工物1の表面溶融を検出できればよい。
【0041】
ただし、上述の実施の形態のように溶融検出に低パワーの赤外レーザー光L2を用いると、表面溶融が検出された後に高パワーの赤外レーザー光L2を照射するにあたって、赤外レーザー光L2の立ち上がりが早くなり、加工精度が向上するといったメリットがある。
【0042】
また、表面溶融が検出された後の青色レーザー光L1は、溶融検出で検出される表面溶融状態に応じて増減制御されることがより好ましい。例えば、赤外レーザー光L2の反射光L3のレベルの変化量(=初期溶融の成長の早さ)に基づいて、表面溶融後の青色レーザー光L1のパワーを調整すれば、表面溶融後の溶融をより安定させることができる。例えば、反射光L3の変化量が大きい場合、つまり急激に初期溶融が進んだ場合には、青色レーザー光L1によってスパッタやボイドが発生する可能性がある。よって、このような場合には、青色レーザー光L1のパワーを下げることで、良好な変化量を維持し、品質を安定化させることが好ましい。逆に、反射光L3の変化量が小さい場合には、初期溶融が不十分な可能性があるので、青色レーザー光L1のパワーを上げることが好ましい。
【0043】
<4>まとめ
本開示のレーザー加工方法の一つの態様は、被加工物の表面溶融前の初期加工段階に、前記被加工物に少なくとも青色レーザー光を照射する第1照射ステップと、前記被加工物の表面溶融を検出する溶融検出ステップと、前記表面溶融が検出された後に、表面溶融が検出される前のパワー(0を含む)よりも大きなパワーの赤外レーザー光を前記被加工物に照射する第2照射ステップと、を含む。
【0044】
本開示のレーザー加工方法の一つの態様は、前記第1照射ステップでは、前記被加工物に青色レーザー光に加えて、所定閾値よりも低いパワーの赤外レーザー光を照射し、前記溶融検出ステップでは、前記所定閾値よりも低いパワーの赤外レーザー光の前記被加工物からの反射光に基づいて前記表面溶融を検出し、前記第2照射ステップでは、前記所定閾値以上のパワーの赤外レーザー光を照射する。
【0045】
本開示のレーザー加工方法の一つの態様は、前記第1照射ステップでは、青色レーザー光に加えて赤外レーザー光を照射するとともに、前記第2照射ステップでは、前記第1照射ステップよりも大きなパワーの赤外レーザー光に加えて青色レーザー光を照射し、前記第2照射ステップで照射する青色レーザー光のパワーは、前記溶融検出ステップで検出される表面溶融状態に応じて増減制御される。
【0046】
本開示のレーザー加工装置の一つの態様は、被加工物1に照射する青色レーザー光L1及び赤外レーザー光L2を形成するレーザー光形成部(青色レーザー発振器101、赤外レーザー発振器102)と、被加工物1の表面溶融を検出する溶融検出部(パワーメーター130)と、レーザー光形成部(青色レーザー発振器101、赤外レーザー発振器102)により出力される青色レーザー光L1及び赤外レーザー光L2のパワーを制御する出力制御部(出力演算部140、出力制御部150)と、を備え、出力制御部(出力演算部140、出力制御部150)は、被加工物1に表面溶融が検出される前には、被加工物1に少なくとも青色レーザー光L1が照射され、かつ、被加工物1に表面溶融が検出された後には、被加工物1に照射される赤外レーザー光L2のパワーが表面溶融検出前よりも増加するように、レーザー光形成部(青色レーザー発振器101、赤外レーザー発振器102)の出力を制御する。
【0047】
本開示のレーザー加工装置の一つの態様は、出力制御部(出力演算部140、出力制御部150)は、被加工物1に表面溶融が検出される前には、被加工物1に青色レーザー光L1に加えて、所定閾値よりも低いパワーの赤外レーザー光L2が照射され、かつ、被加工物1に表面溶融が検出された後には、所定閾値以上のパワーの赤外レーザー光L2が照射されるように、レーザー光形成部(青色レーザー発振器101、赤外レーザー発振器102)の出力を制御する。
【0048】
本開示のレーザー加工装置の一つの態様は、出力制御部(出力演算部140、出力制御部150)は、被加工物1に表面溶融が検出される前には、被加工物1に青色レーザー光L1に加えて、所定閾値よりも低いパワーの赤外レーザー光L2が照射され、かつ、被加工物1に表面溶融が検出された後には、所定閾値以上のパワーの赤外レーザー光L2に加えて、青色レーザー光L1が照射され、かつ、被加工物1に表面溶融が検出された後に照射される青色レーザー光L1のパワーは、溶融検出部(パワーメーター130)で検出される表面溶融状態に応じて増減するように、レーザー光形成部(青色レーザー発振器101、赤外レーザー発振器102)の出力を制御する。
【0049】
本開示のレーザー加工装置の一つの態様は、溶融検出部は、被加工物から反射する反射光の光量を検出する光ディテクター(パワーメーター130)を有し、被加工物1の表面溶融前に被加工物1に照射された所定閾値よりも低いパワーの赤外レーザー光L2の被加工物1からの反射光L3のパワーに基づいて、被加工物1の表面溶融を検出する。
【0050】
本開示のレーザー加工装置の一つの態様は、溶融検出部は、被加工物1の表面を撮像する撮像部を有し、当該撮像部の撮像画像に基づいて、被加工物1の表面溶融を検出する。
【0051】
本開示のレーザー加工装置の出力制御装置の一つの態様は、被加工物1に照射されるレーザー光のパワーを制御する出力制御部(出力演算部140、出力制御部150)と、被加工物1の表面溶融を検出する溶融検出部(パワーメーター130)と、を備え、出力制御部(出力演算部140、出力制御部150)は、被加工物1に表面溶融が検出される前には、被加工物1に少なくとも青色レーザー光L1が照射され、被加工物1に表面溶融が検出された後には、被加工物1に照射される赤外レーザー光L2のパワーが表面溶融検出前よりも増加するように、レーザー光L1、L2のパワーを制御する。
【0052】
本開示のレーザー加工装置の出力制御装置の一つの態様は、出力制御部(出力演算部140、出力制御部150)は、被加工物1に表面溶融が検出される前には、被加工物1に青色レーザー光L2に加えて、所定閾値よりも低いパワーの赤外レーザー光L2が照射され、かつ、被加工物1に表面溶融が検出された後には、所定閾値以上のパワーの赤外レーザー光L2が照射されるように、レーザー光形成部(青色レーザー発振器101、赤外レーザー発振器102)の出力を制御する。
【0053】
本開示のレーザー加工装置の出力制御装置の一つの態様は、出力制御部(出力演算部140、出力制御部150)は、被加工物1に表面溶融が検出される前には、被加工物1に青色レーザー光L1に加えて、所定閾値よりも低いパワーの赤外レーザー光L2が照射され、かつ、被加工物1に表面溶融が検出された後には、所定閾値以上のパワーの赤外レーザー光L2に加えて、青色レーザー光L1が照射され、かつ、被加工物1に表面溶融が検出された後に照射される青色レーザー光L1のパワーは、溶融検出部(パワーメーター130)で検出される表面溶融状態に応じて増減するように、レーザー光形成部(青色レーザー発振器101、赤外レーザー発振器102)の出力を制御する。
【0054】
本開示のレーザー加工装置の出力制御装置の一つの態様は、溶融検出部は、被加工物1から反射する反射光の光量を検出する光ディテクター(パワーメーター130)を有し、被加工物1の表面溶融前に被加工物1に照射された所定閾値よりも低いパワーの赤外レーザー光L2の被加工物1からの反射光L3のパワーに基づいて、被加工物1の表面溶融を検出する。
【0055】
本開示のレーザー加工装置の出力制御装置の一つの態様は、溶融検出部は、被加工物1の表面を撮像する撮像部を有し、当該撮像部の撮像画像に基づいて、被加工物1の表面溶融を検出する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、高品質かつ高速のレーザー加工を行うことができるといった効果を有し、溶接や切断などを行うレーザー加工方法、レーザー加工装置、及びレーザー加工装置の出力制御装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 被加工物
100 レーザー加工装置
101 青色レーザー発振器
102 赤外レーザー発振器
110 レーザーヘッド
111 集光レンズ
120 駆動部
130 パワーメーター
140 出力演算部
150 出力制御部
L1 青色レーザー光
L2 赤外レーザー光
L3 反射光