(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】基板剥離装置および基板剥離システム
(51)【国際特許分類】
B09B 3/30 20220101AFI20231208BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20231208BHJP
B09B 101/17 20220101ALN20231208BHJP
【FI】
B09B3/30 ZAB
B09B3/40
B09B101:17
(21)【出願番号】P 2020156010
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000233734
【氏名又は名称】株式会社アステック入江
(73)【特許権者】
【識別番号】506088953
【氏名又は名称】株式会社浜村
(73)【特許権者】
【識別番号】716004512
【氏名又は名称】一般社団法人サステイナビリティ技術設計機構
(74)【代理人】
【識別番号】100147740
【氏名又は名称】保坂 俊
(72)【発明者】
【氏名】吉村 太一
(72)【発明者】
【氏名】井上 信宏
(72)【発明者】
【氏名】小森 裕司
(72)【発明者】
【氏名】古西 政和
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】原田 幸明
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第206981409(CN,U)
【文献】特開平08-279677(JP,A)
【文献】特開平10-247779(JP,A)
【文献】特開平08-139446(JP,A)
【文献】特開2000-005612(JP,A)
【文献】特開2008-043936(JP,A)
【文献】特開2001-113259(JP,A)
【文献】特開2001-308515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00-5/00
H05K 3/32-3/34
B65H 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に搭載された電子部品を剥離する基板剥離装置であって、
前記基板剥離装置は
回転軸に螺旋状に巻くように取り付けた螺旋状のブレードであるスクリューブレードを回転軸に取り付けたスクリューブレードローラーを有し、前記スクリューブレードローラーが回転しながら基板に搭載された電子部品に接触し、部品を剥離する機能を有することを特徴と
する基板剥離装置。
【請求項2】
前記スクリューブレードは複数枚配置したものであることを特徴とする、請求項1に記載の基板剥離装置。
【請求項3】
前記スクリューブレードローラーの片側領域におけるスクリューブレードの巻き方向は他の片側領域におけるスクリューブレードの巻き方向と逆であることを特徴とする、請求項1または2に記載の基板剥離装置。
【請求項4】
前記スクリューブレードローラーは部品が多数搭載される基板表面側に配置されており、基板裏面側には基板裏面を支持する送りローラーが配置されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれかの項に記載の基板剥離装置。
【請求項5】
前記スクリューブレードローラーは複数段配置されており、基板が前段のスクリューブレードローラーから入り、後段のスクリューブレードローラーに入る構造であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかの項に記載の基板剥離装置。
【請求項6】
前記スクリューブレードローラーは複数段配置されており、基板が前段のスクリューブレードローラーから入り、後段のスクリューブレードローラーに入る構造であり、前記スクリューブレードローラーと前記送りローラーの隙間において、後段の隙間は前段の隙間より小さくなっていることを特徴とする、請求項4に記載の基板剥離装置。
【請求項7】
奇数段のスクリューブレードローラーのスクリューブレードの巻き方向は、偶数段のスクリューブレードローラーのスクリューブレードの巻き方向と反対であることを特徴とする、
請求項5または6に記載の基板剥離装置。
【請求項8】
前記基板剥離装置は、さらに回転軸に対して傾斜したギアブレードを取り付けたインクラインブレードローラーを有することを特徴とする、請求項1~7のいずれかの項に記載の基板剥離装置。
【請求項9】
前記インクラインブレードローラーは前記スクリューブレードローラーよりも前に配置されていることを特徴とする、請求項8に記載の基板剥離装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかの項に記載の基板剥離装置の前に基板加熱装置を配置して、前記基板加熱装置で加熱した基板を前記基板剥離装置へ挿入する構造を有することを特徴とする、基板剥離システム。
【請求項11】
前記基板加熱装置は、基板を前記基板加熱装置の加熱炉に運ぶコンベアを有し、前記コンベアに基板の一部を載置する突起板を設けて、基板を傾斜させて運搬する機能を有することを特徴とする、請求項10に記載の基板剥離システム。
【請求項12】
基板がコンベアによって運ばれるとき、前記基板同士が重ならないようにしたことを特徴とする、請求項11に記載の基板剥離システム。
【請求項13】
前記基板加熱装置の加熱炉内において、前記コンベアの突起板に前記基板が載置された状態で前記基板が加熱されることを特徴とする、請求項11または12に記載の基板剥離システム。
【請求項14】
前記突起板は、コンベアのコンベアベルトに畳む構造であり、実装基板を載置するときに起立させ、実装基板を載置しないときに畳む機能を有することを特徴とする、請求項11~13のいずれかの項に記載の基板剥離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装基板に搭載する電子部品の剥離装置および剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、パーソナルコンピュータ、スマートホン等の電気・電子製品には実装基板が内蔵されている。その実装基板には、IC(集積回路)チップ、ICパッケージ、コンデンサ、抵抗等の電子部品が多数実装されている。それらの電子部品には、金、銀、銅、パラジウム等の貴金属やレアメタル(希少金属)が使用されているので、使用済みの実装基板に搭載される電子部品からそれらの貴金属やレアメタル等を回収している。貴金属やレアメタル等の回収には、電子部品の種類をそろえて、可能な限り特定の貴金属やレアメタル等(たとえば、金)の比率を高くすることが望ましい。すなわち、実装基板に搭載された各種の電子部品だけを剥離して、電子部品ごとに分別することが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実装基板に搭載された電子部品を個々に剥離する装置や治具が提案されている。たとえば、剥離爪を先端に持つリンクアームからなる剥離工具が記載されている。(特許文献1)この剥離工具は、剥離爪で実装基板に搭載された電子部品を個々に剥離するものであるから、所望の電子部品だけを選別して実装基板から分離できるので、特定の電子部品を分別することができる。しかし、多数の電子部品が搭載されて実装基板から特定の電子部品だけを剥離するのは、作業性や効率が悪く使用済みの電子部品の回収には採算性が良くない。電子部品は、実装基板にハンダ等で付着しているので、ハンダが溶融または軟化する温度で実装基板を熱処理して電子部品の実装基板との付着力を弱くして、実装基板を落下等させて電子部品を実装基板から剥離する方法なども実施されている。しかし、この方法では、実装基板から剥離されない電子部品も多く電子部品の回収効率が悪い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、実装基板の表面にスクリュ-ブレード(刃)を回転させてなぞりながら、実装基板に搭載した電子部品を剥離するものであり、具体的には以下の特徴を有する。
(1)本発明は、基板に搭載された電子部品を剥離する基板剥離装置であって、前記基板剥離装置はスクリューブレードを回転軸に取り付けたスクリューブレードローラーを有し、前記スクリューブレードローラーが回転しながら基板に搭載された電子部品に接触し、部品を剥離する機能(構造)を有することを特徴とした基板剥離装置であり、前記スクリューブレードは複数枚配置したものであり、前記スクリューブレードローラーの片側領域におけるスクリューブレードの巻き方向は他の片側領域におけるスクリューブレードの巻き方向と逆であり、前記スクリューブレードローラーは部品が多数搭載される基板表面側に配置されており、基板裏面側には基板裏面を支持する送りローラーが配置されていることを特徴とする。
【0006】
(2)本発明は、(1)に加えて、前記スクリューブレードローラーは複数段配置されており、基板が前段のスクリューブレードローラーから入り、後段のスクリューブレードローラーに入る構造であり、奇数段のスクリューブレードローラーのスクリューブレードの巻き方向は、偶数段のスクリューブレードローラーのスクリューブレードの巻き方向と反対であり、また、前記スクリューブレードローラーは複数段配置されているとき、前記スクリューブレードローラーと前記送りローラーの隙間において、前段の隙間は後段の隙間より小さくなっていることを特徴とする。
(3)本発明は、(1)および/または(2)に加えて、前記基板剥離装置は、さらに回転軸に対して傾斜したギアブレードを取り付けたインクラインブレードローラーを有し、前記インクラインブレードローラーは前記スクリューブレードローラーよりも前に配置されていることを特徴とする。
【0007】
(4)本発明は、(1)~(3)に加えて、請求項1~8のいずれかの項に記載の基板剥離装置の前に基板加熱装置を配置して、前記基板加熱装置で加熱した基板を前記基板剥離装置へ挿入する構造を有する基板剥離システムであり、前記基板加熱装置は、基板を前記基板加熱装置の加熱炉に運ぶコンベアを有し、前記コンベアに基板の一部を載置する突起板を設けて、基板を傾斜させて運搬する機能を有し、前記基板同士が重ならないようにしたことを特徴とする。本発明は、さらに、前記基板加熱装置の加熱炉内において、前記コンベアの突起板に前記基板が載置された状態で前記基板が加熱され、前記突起板は、コンベアのコンベアベルトに畳む構造であり、実装基板を載置するときに起立させ、実装基板を載置しないときに畳む機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の基板剥離装置は、スクリューブレードが実装基板に搭載された電子部品等に接触するようにして電子部品等を基板から剥離するので、電子部品を効率良く確実に実装基板から剥離することができる。スクリューブレードが回転しながら電子部品を巻き取るようにして剥離でき、電子部品へ及ぼす損傷を減らすことができる。スクリューブレードは回転軸に複数枚取り付けられており、また回転軸の両側で巻き方が逆方向になっているので、電子部品等の剥離時にスクリューブレードローラーへ与える力を相殺できるため、スクユーブレードローラーやモーターへ及ぼす負荷を小さくでき、スクユーブレードローラーやモーターの寿命を延ばすことができる。スクリューブレードローラーは複数段に配置することもでき、複数段に配置されたスクリューブレードローラーを順次実装基板を通して、電子部品の大きさに従い剥離するので、各段のスクリューブレードへ負荷を与えることが少なくでき、また確実に電子部品を剥離できる。本発明の剥離装置の前段に実装基板加熱装置を配置することも可能で、加熱装置で実装基板を加熱して実装基板に電子部品を固着したハンダ等を軟化溶融させて、その状態で剥離装置を用いて実装基板を連続処理するので、電子部品等を実装基板から容易に剥離できる。実装基板加熱装置では、ベルトコンベアに取り付けた突起板を用いて実装基板を傾斜し重ならない状態で運搬しながら加熱するので、多数の実装基板を効率良く確実に加熱することができる。実装基板加熱装置および基板剥離装置を組み合わせた本発明の基板剥離システムは加熱から剥離まで連続的にしかも自動化も可能であるから、大量にしかも安価に実装基板から電子部品等を剥離して、廃電子部品等を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の基板剥離装置に加熱装置を結合した基板剥離システムを示す図である。
【
図2】
図2は、基板が基板剥離装置に入る様子を示す図である。
【
図3】
図3は、基板剥離装置に使用するスクリューブレードローラーの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、基板剥離装置の内部における実装基板とスクリューブレードローラーの状態を示す図である。
【
図5】
図5は、スクリューブレードローラーのサスペンションシステムを示す図である。
【
図6】
図6は、基板剥離装置における複数段のスクリューブレードの機能を示す図である。
【
図7】
図7は、剥離用ブレードの第2の実施形態を示す図である。
【
図8】
図8は、インクラインブレードローラーの動作を示す図である。
【
図9】
図9は、基板剥離装置を実装基板が入る方向から見た上面図である。
【
図10】
図10は、加熱装置における実装基板の運搬方法を示す図である。
【
図11】
図11は、実装基板を突起板に載置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の基板(実装基板)剥離装置11に加熱装置12を結合した基板剥離システム10を示す図である。基板剥離とは基板に搭載された部品等を取り外す(剥離する)ことである。この基板剥離システムは加熱装置付き基板剥離装置または(電子)部品剥離装置と呼んでも良い。加熱装置12において、加熱炉17およびコンベアベルト(搬送キャタピラとも言う)13が架台15に載置されており、のぞき窓16から加熱炉17の内部を視認できる。加熱装置12の加熱炉17内にコンベアベルト13が通っており、コンベアベルト13に載せた多数の電子部品等が搭載された基板14が加熱炉17内で加熱された後、基板14は加熱装置12から出て基板剥離装置11に1枚ずつ取り込まれる。
【0011】
図2は、基板14が基板剥離装置11に入る様子を示す図である。基板14は、基板剥離装置11に配置されたブレードローラー21と送りローラー22の間に入って下方に降りていく。多数の部品が搭載される基板面(基板表(おもて)面と呼ぶ)をブレードローラー21に面するようにし、その基板表(おもて)面に対して逆の面(基板裏(うら)面と呼ぶ)を送りローラー22に面するようにする。ブレードローラーはスクリューブレードやギアブレード等の基板から部品を取り外す(剥離する)ための剥離用ブレードを取り付けた回転ローラーである。加熱炉17は、たとえば過熱水蒸気を用いた蒸気加熱炉、赤外線加熱炉や抵抗加熱炉であり、約200℃~約500℃の温度で基板14を加熱する。多数の電子部品等が基板14に搭載されているが、これらの電子部品等は基板にハンダや接着剤等で付着しているので、加熱装置12内での基板加熱により、ハンダや接着剤等が軟化したり溶けたりして電子部品等の接着性がかなり低下する。ハンダとして、近年はPb(鉛)フリー材料が使用されているが、たとえば、Sn-Cu-Ag系ハンダでは融点が約210℃~400℃であるから、融点付近前後の温度で基板を加熱する。その状態で基板14を本発明の基板剥離装置11に入れて、基板14に搭載された電子部品等を剥離する。
【0012】
図3は、基板剥離装置に使用するスクリューブレードローラーの一例を示す図である。スクリューブレードローラー30は、回転軸35にスクリューブレード(刃)31、32、33、34が取り付けられている。スクリューブレード(刃)は軸(回転軸)に螺旋状に巻くように取り付けた螺旋(らせん)状(またはscrew状)のブレード(刃)である。スクリューブレードは電子部品等の実装基板に搭載された部品等に回転しながら接触してそれらの部品を実装基板から剥離するので、部品等の材料より硬くて丈夫で摩耗の少ない材料で作製されている。たとえば、SS400等の鉄鋼材料、SUS304等のステンレス系材料が挙げられる。
【0013】
スクリューブレードローラー30において、スクリューブレードの取り付け領域(X+Y)は、剥離すべき部品の搭載する実装基板の全幅と同程度か、それ以上の長さとして、実装基板に搭載する部品をすべて剥離できるようにすることが望ましい。実装基板の大きさが(幅)30cmならば、(X+Y)は約29cm~30cm以上とするのが望ましい。
図3では2枚のスクリューブレードが等間隔で回転軸35に巻くように取り付けられている。また、
図3に示す回転軸35の幅の半分の領域Xと残り半分の領域Yでは、スクリューブレードの巻き方向を反対にすることが望ましい。
【0014】
すなわち、X領域では、2枚のスクリューブレード31、32が等間隔で回転軸35に巻かれて取り付けられ、Y領域では、2枚のスクリューブレード33、34が等間隔で回転軸35にX領域とは反対向きに巻かれて取り付けられている。スクリューブレード31(a、b、c、d)において、スクリューブレード31aは、スクリューブレード31b、31c、31dに連続してつながっており、スクリューブレード32(a、b、c、d)において、ブレード32aは、スクリューブレード32b、32c、32dに連続してつながっている。また、スクリューブレード33(a、b、c、d)において、スクリューブレード32aは、スクリューブレード32b、32c、32dに連続してつながっており、スクリューブレード34(a、b、c、d)において、スクリューブレード34aは、ブレード34b、34c、34dに連続してつながっている。X領域とY領域の境界では、巻き方向が逆のスクリューブレードがほぼ接触して隙間が生じないようにすることが望ましい。隙間があるとその間に入った部品の剥離が十分行われない場合があり、あるいはその隙間に剥離された部品が入り取り除けないなどの問題を生ずる場合もある。たとえば、スクリューブレード31dはスクリューブレード33dにほぼ接触しており、ブレード32dはブレード34dにほぼ接触することが望ましい。
【0015】
実装基板は加熱炉を通って出てきてすぐに基板剥離装置に入るので、基板剥離装置内に実装基板が存在する間は、実装基板に搭載される電子部品は、ハンダ等の付着剤が軟化または溶融しているので、スクリューブレードに接触すると容易に電子部品が実装基板から剥離していく。円形状のブレードを使用する場合は、同じ位置でブレードが回転するので、一方向(すなわち、回転軸に対して垂直方向)だけに力が働くだけであるから、剥離できない電子部品は何度回転させても剥離できない可能性が高い。しかし、スクリューブレードの場合は、斜め方向や3次元方向の力が作用するとともに、回転軸方向における領域のすべての領域で、実装基板に搭載される部品等に等距離で接触するので、殆どすべての部品が同等の力を受けて剥離され、剥離効率が非常に高くなる。さらに電子部品を巻き取るように剥離していくので、剥離した電子部品がスクリューブレードに滞留することもない。また、X領域とY領域でスクリューブレードの巻き方向を逆にすることによって、電子部品を剥離する際の剥離力がX領域とY領域で逆になるので、回転軸にかかる力が相殺されて、スクリューブレードに無理な力がかからなくなる。その結果、回転軸を回転するモーターへ過大な負荷がかからなくなるとともに、回転軸やスクリューブレードの破損も生じにくくなる。
【0016】
スクリューブレードを使用せずに、たとえば、円柱形状のローラー表面を部品に接触する方法は、円柱面が常に部品に接触するため部品を剥離するよりも部品を圧し潰したり、部品やローラーを損傷したりする危険性があるが、本発明のスクリューブレードを用いた方法は部品を巻き上げるようにして基板から剥離するので、これらの問題を引き起こさない。隣接するスクリューブレードのピッチ(間隔)mは、スクリューブレードの直径(外径)や電子部品の配置状態(実装基板における電子部品間距離など)や電子部品のサイズに応じて適宜選択することができる。剥離する部品が挟まらない程度の間隔以上にすることが望ましい。たとえば、20mm~120mmである。また、使用するスクリューブレードの枚数によっても変化させても良い。
図3では2枚のスクリューブレードを使用しているが、1枚でも良いし3枚以上でも良い。ブレードの先端部での幅(厚み)も部品の大きさや、部品間距離、部品の材料の種類、ブレード材料の強度等に合わせて適宜選択することができる。たとえば、5mm~15mmである。ブレードの高さhやブレード外径Dも電子部品の大きさや配置状態、部品の種類、基板の種類によって適宜選択することができる。たとえば、小さな基板や小さな部品に対してはhやDは小さくすることが望ましい。小さくすることで、モーターへの負荷も低減することができる。たとえば、hは5mm~20mm、Dは15mm~50mmである。基板サイズが大きくなれば、これより大きな値を設定できる。回転軸に対するスクリューブレードの傾斜角度βは、たとえば80度~50度であるが、ブレードのサイズ、部品の大きさや、部品間距離、上記m、h、Dなどに合わせて適宜選択することができる。ブレードローラーの回転速度は、部品の大きさや部品の配置状態、基板の種類、処理速度などにより適宜選択できる。
【0017】
図4は、基板剥離装置の内部における実装基板とスクリューブレードローラーの状態を示す図である。
図4に示す基板剥離装置におけるスクリューブレードローラーは4段に配置されている。
図1に示すように、加熱装置12から出た実装基板14は基板剥離装置11に入り、
図4に示すように矢印に示すように上から下へ進んでいく。
図4において、実装基板43は、最上部の第1段目に配置された送りローラー42(42-1)とスクリューブレードローラー41(41-1)の間の隙間(クリアランス)に入っていく。送りローラー42は、実装基板43の裏面に接触して裏面を支えて実装基板43の送りをガイドするものであり、実装基板43の送り速度に合わせて回転する。送りローラー42は、部品等の剥離を主目的とするものではないが、その材質は実装基板に繰り返し接触しても摩耗しない程度の材料で作製することができるが、スクリューブレードと同じ頑丈な材料でも良い。たとえば、ゴム製や硬質プラスチック製、または鉄系材料やステンレス系材料が挙げられる。加熱装置12から出た実装基板43は通常約150℃以上の高熱状態にあるので、ゴム製やプラスチック製等の場合は使用温度以上の耐熱性を有する材料が望ましい。送りローラーの形状は、たとえば円柱形状や円板状である。円柱形状の場合は基板裏面全体に接触(線接触的に)する。円板形状の場合は、たとえば、
図2や
図9に示されているように歯車のように円周状に凹凸部分を形成しておけば、凹凸部分が基板裏面にひっかかり、基板裏面で滑らずに基板をスムーズに下方へ送ることができる。尚、円柱形状の場合もその側面に凹凸を形成しておけば、その凹凸部分が基板裏面にひっかかり、基板裏面で滑らずに基板をスムーズに下方へ送ることができる。
【0018】
電子部品45の大部分は基板表面に搭載されるので、基板43の表面をスクリューブレードローラー41側に面するように入れる。
図4ではスクリューブレードローラー41および送りローラー42が4段(41-1~4、42-1~4)に配置されており、スクリューブレードローラー41と送りローラー42の隙間44(44-1~4)の間を基板43が通過する。スクリューブレードローラー41および送りローラー42との間の隙間(d1~d4)は最上部から最下部へいくに従い小さくする(すなわちd1>d2>d3>d4)のが望ましい。従って、各ローラー径が同じである場合は、送りローラー42の中心を結んだ破線とスクリューブレードローラー41の中心を結ぶ破線は下方へいくに従い近付く。実装基板43には多数の電子部品等45が搭載されており、電子部品の基板面からの高さや大きさは様々であるから、第1段目のスクリューブレードローラー41-1および送りローラー42-1との間の隙間d1を基板に搭載される電子部品の最大高さ(基板厚さ含む)と同程度か少し小さいくらいにするのが良い。最下段の第4断面のスクリューブレードローラー41-1および送りローラー42-1との間の隙間d4を基板に搭載される電子部品の最小高さと同程度くらいにするのが良い。最上段と最下段の間の第2段目のスクリューブレードローラー41-2および送りローラー42-2との間の隙間d2と第2段目のスクリューブレードローラー41-3および送りローラー42-3との間の隙間d3はそれぞれその中間程度とするのが良い。最終段の隙間は、最も小さい電子部品の高さ(基板厚さ含む)~基板厚さ程度に合わせると良い。このように隙間を徐々に小さくすることによって、第1段目で高さの大きい電子部品を基板から剥離でき、第2段目で次に高さの大きい電子部品を基板から剥離でき、第3段目で次に高さの大きい電子部品を基板から剥離でき、最後の第4段目で最も高さの小さい電子部品を剥離できるようにすることによって、殆どすべての電子部品を実装基板43から無理なく剥離することができる。また、複数段にブレードローラーを配置する場合、前段の方から順次大きな部品を剥離し、後段の方で細かい部品を剥離していくが、前段はブレードの半径やピッチを広くし、後段にいくに従いブレードの半径やピッチを狭くするということも選択できる。この結果、スクリューブレードローラー41やそのスクリューブレードに過度な負荷をかけることがなく、またスクリューブレードローラー41やそのスクリューブレードや送りローラーを破損することなく、電子部品を実装基板から容易に剥離することができる。
【0019】
図4では、4段のスクリューブレードローラーを配置しているが、もっと多段にしても良い。その場合も徐々に隙間を小さくするようにすることができるが、当然実装基板の厚み以上とする。また、スクリューブレードローラーを4段より少なくしても良い。たとえば2段や3段でも良い。その場合も徐々に隙間を小さくするようにすることが望ましい。スクリューブレードローラーの段数が多いと、種々の高さや大きさを有する電子部品が搭載された実装基板に対応できるので、適用範囲が広い。スクリューブレードローラーを多段に配置した場合に、スクリューブレードローラー間の距離(中心間距離)は、基板の大きさやクリューブレードの外径にもよるが、たとえば、外径+5mm~30mmである。たとえば、外径を80~100mmとしたときには、スクリューブレードローラー間の距離は85~130mmである。この距離が大きくすぎると、小さな基板では次段に進みにくくなり装置も大きくなる。スクリューブレードローラーが1段の場合は、隙間を最も小さい電子部品の高さ(基板厚さ含む)~基板厚さ程度に合わせると良い。この場合は、電子部品の高さが比較的そろっていることが望ましい。
【0020】
また、スクリューブレードローラーを基板に対してできるだけ多く回転させた方が電子部品を剥離する機会が増える。たとえば、スクリューブレード直径を90mmφとすると、横方向ベクトルを無視した場合、通常約280mm進む。従って、350mm角基板では1つのブレードが約1.2回転で送り終わる。そこで、基板送りにブレーキをかけて基板送り速度を小さくすれば良い。たとえば、奇数段目(
図4の例では、第1段目、第3段目)のスクリューブレードローラーを高速回転させて、偶数段目(
図4の例では、第2段目、第4段目)のスクリューブレードローラーを底速回転させるようにする。高速回転ブレードローラーと低速回転ブレードローラーを交互に並べて設置することによって、低速回転ブレードローラーがブレーキとなり高速回転ブレードローラーが複数回基板上で回転することが可能となり、基板に搭載された多数の電子部品を剥離することができる。この機構を回転速度差による基板ブレーキシステムと呼んでも良い。
【0021】
図5は、スクリューブレードローラーのサスペンションシステム59を示す図である。回転軸50にスクリューブレード51、52、53、54が取り付けられている。
図3に示したように、回転軸50の半分の領域は2枚のスクリューブレード51、52(まとめて55)が回転軸50に巻かれており、回転軸50の半分の領域は2枚のスクリューブレード53、54(まとめて56)が回転軸50に巻かれており、これらのスクリューブレード55および56の巻き方向は反対となっている。回転軸50はベルトやチェーン等の伝達機構58を介してモーター57に接続しモーター57により任意の回転を与えることができる。従って、回転軸50が回転すると、スクリューブレード55の進行方向はスクリューブレード56の進行方向と反対となるので、電子部品の巻き方が逆となり力が相殺されて過度な負荷が回転軸やモーターにかからなくなる。
【0022】
モーター57やスクリューブレード55、56およびその回転軸50等は架台62に取り付けられて一体となっており、また架台65はフレーム66にシリンダー60を介してフレーム66に取り付けられている。送りローラーとスクリューブレードの間の隙間は、フレーム66の位置を調整(移動)して、調節することができる。基板上の電子部品等により基板には凹凸が存在するので、凹凸のある基板に対してブレードを常に同じ力で押し当てるために、シリンダー60をサスペンションとして使用することもできる。この押し当てる力は、たとえばエアレギュレーターにより調節することができる。このサスペンション機構(システム)により、電子部品を過度に破損することなく容易に剥離することができ、またモーターや57やスクリューブレード55、56およびその回転軸50等に過度な負荷を与えないので、これらの機具の破損も生じることもない。
【0023】
図6は、基板剥離装置における複数段のスクリューブレードの機能を示す図である。第1段スクリューブレードローラー41-1は、2枚のスクリューブレード61-1、62-1が回転軸の半分の領域L1で巻かれて取り付けられ、2枚のスクリューブレード63-1、64-1が回転軸の半分の領域L2で巻かれて取り付けられている。これまでに示したように、領域L1とL2におけるスクリューブレードの巻き方向は反対となっている。第1段スクリューブレードローラー41-1が回転し基板を下へ送るように回転すると、
図6に示すように、領域L1およびL2ともスクリューブレードが内側方向E1およびE2方向に進行するように回転する。この結果、直線状矢印で示すように回転軸の左右から中心に向かう横方向へ電子部品をむしり取る力が発生する。
【0024】
第2段目のスクリューブレードローラー41-2は、2枚のスクリューブレード61-2、62-2が回転軸の半分の領域L1で巻かれて取り付けられ、2枚のスクリューブレード(番号は省略)が回転軸の半分の領域L2で巻かれて取り付けられている。第2段目のスクリューブレードローラー41-2においても、領域L1とL2におけるスクリューブレードの巻き方向は反対となっている。また、領域L1において、第1段目のスクリューブレードローラー41-1と第2段目のスクリューブレードローラー41-2のスクリューブレードの巻き方向は逆になっている。すなわち、第2段目のスクリューブレードローラー41-2のスクリューブレード61-2および62-2の巻き方向は、第1段目のスクリューブレードローラー41-1のスクリューブレード61-1および62-1の巻き方向と逆である。同様に、領域L2において、第1段目のスクリューブレードローラー41-1と第2段目のスクリューブレードローラー41-2のスクリューブレードの巻き方向は逆になっている。第1段スクリューブレードローラー41-1から送られて来る基板をさらに第2段スクリューブレードローラー41-2が下へ送るように回転すると、
図6に示すように、領域L1およびL2ともスクリューブレードが外側方向F1およびF2方向に進行するように回転する。この結果、直線状矢印で示すように回転軸の中心から左右(外側)に向かう横方向へ電子部品をむしり取る力が発生する。
【0025】
第3段目のスクリューブレードローラー41-3は、2枚のスクリューブレード61-3、62-3が回転軸の半分の領域L1で巻かれて取り付けられ、2枚のスクリューブレード(番号は省略)が回転軸の半分の領域L2で巻かれて取り付けられている。第2段目のスクリューブレードローラー41-3においても、領域L1とL2におけるスクリューブレードの巻き方向は反対となっている。また、領域L1において、第2段目のスクリューブレードローラー41-2と第3段目のスクリューブレードローラー41-3のスクリューブレードの巻き方向は逆になっている。第2段スクリューブレードローラー41-2から送られて来る基板をさらに第3段スクリューブレードローラー41-3が下へ送るように回転すると、
図6に示すように、領域L1およびL2ともスクリューブレードが内側方向E1およびE2方向に進行するように回転する。この結果、直線状矢印で示すように回転軸の左右(外側)から中心に向かう横方向へ電子部品をむしり取る力が発生する。
【0026】
第4段目のスクリューブレードローラー41-4は、2枚のスクリューブレード61-4、62-4が回転軸の半分の領域L1で巻かれて取り付けられ、2枚のスクリューブレード(番号は省略)が回転軸の半分の領域L2で巻かれて取り付けられている。第4段目のスクリューブレードローラー41-4においても、領域L1とL2におけるスクリューブレードの巻き方向は反対となっている。また、領域L1において、第3段目のスクリューブレードローラー41-3と第4段目のスクリューブレードローラー41-4のスクリューブレードの巻き方向は逆になっている。すなわち、第4段目のスクリューブレードローラー41-4のスクリューブレード61-4および62-4の巻き方向は、第3段目のスクリューブレードローラー41-3のスクリューブレード61-3および62-3の巻き方向と逆である。同様に、領域L2において、第3段目のスクリューブレードローラー41-3と第4段目のスクリューブレードローラー41-4のスクリューブレードの巻き方向は逆になっている。第3段スクリューブレードローラー41-3から送られて来る基板をさらに第4段スクリューブレードローラー41-4が下へ送るように回転すると、
図6に示すように、領域L1およびL2ともスクリューブレードが外側方向F1およびF2方向に進行するように回転する。この結果、直線状矢印で示すように回転軸の中心から左右(外側)に向かう横方向へ電子部品をむしり取る力が発生する。
【0027】
このように、2種類のスクリューブレードローラーを交互に配置することによって、基板に実装された部品に逆方向の力(ベクトル)の負荷をかけることができる(これを基板剥離装置における反ベクトル発生システムという)ので、基板が横または斜め方向へ移動することを防止して基板を下方へスムーズに移動させることができる。また剥離した電子部品も横方向へはじき飛ばさずに、下方へ落下させることも可能となる。尚、2種類のスクリューブレードローラーの順番を
図6に示す場合と逆にしても同じ効果を得ることができる。
【0028】
これまでは剥離用ブレードとしてスクリューブレードを説明してきたが、これに代えてまたはこれに加えて、回転軸に対して傾斜させたブレードを使用することもできる。
図7は、剥離用ブレードの第2の実施形態を示す図である。
図7に示す剥離用ブレードは回転軸81に対してブレードを一定角度傾斜させたものである。このブレードはたとえば歯車(ギア)ブレード82であり、ギアブレード82は角度αを有して回転軸81に取り付けられる。ギアブレード82の直径は、剥離対象の実装基板の大きさによって適宜選択すれば良いが、たとえば15mm~150mmである。ギアブレード82同士のピッチ(間隔)mは、ギアブレード82の直径や実装基板に搭載される電子部品同士の間隔、剥離される電子部品の大きさなどによって適宜選択すれば良いが、たとえば20mm~120mmである。この傾斜したギアブレードを取り付けたブレードローラーをインクラインブレードローラーと呼ぶ。このインクラインブレードローラーのギアブレードは回転軸に対して偏心(傾斜)させているので、回転しながら実装基板とギアブレードのクリアランス(隙間、間隔)が変化する。この結果実装基板に振動を与えられるので、電子部品を剥離しやすくなる。
【0029】
図8は、インクラインブレードローラーの動作を示す図である。インクラインブレードローラーにおけるギアブレード82が回転軸81に対して角度αで傾斜して取り付けられているので、同じ方向から見るとインクラインブレードローラーが回転すると、ギアブレード82の状態が変化する。たとえば、
図8(a)に示すような、角度αで傾斜した状態からインクラインブレードローラーが180度(回転矢印の向きに)回転すると、
図8(a)とは逆の傾斜角度αでギアブレード82が回転軸81に対して傾いた状態となる。(
図8(c))さらにインクラインブレードローラーが180度(回転矢印の向きに)回転すると
図8(a)の状態になる、その中間では、
図8(b)に示すような状態となる。すなわち、インクラインブレードローラーが1回転すると、ギアブレード82が角度αから-αへ、さらに-α~αへ連続的に変化する。その結果、実装基板上ではインクラインブレードローラーのギアブレード82が回転しながら左右に掻きむしる動作に変換し、基板上の電子部品を剥ぎ落とすことができる。角度αは、たとえば50度~80度であるが、ギアブレード82の間隔mやギアブレード82の直径、部品間距離、電子部品の大きさ、基板の種類、基板の大きさなどによって適宜選択することができる。
【0030】
ギアの数(円周上の歯車の数)は部品の間隔や配置状態や部品の大きさ、ギアの半径、基板の種類などにより適宜選択できる。たとえば、ギアの半径が30mm~60mmで、ギア数は10~100である。ギアの溝深さ(歯たけ)はギアの半径、部品の大きさ等により適宜選択できる。たとえば、ギア半径が50mmの場合は、5mm~20mmである。回転軸の半径もギアの半径、電子部品の大きさ等により適宜選択できる。たとえば、5mm~40mmである。ギアの(先端部の)厚みは、部品の間隔や部品の配置状態、部品の大きさ、部品の強度などにより適宜選択できる。たとえば、5mm~20mmである。ブレードローラーの回転速度は、部品の大きさや部品の配置状態、処理速度などにより適宜選択できる。
図8では、ギアブレードは一方向へ傾斜した場合であるが、反対方向へ傾斜したギアブレードと混在することもできる。たとえば、インクラインブレードローラーの左半分の領域が一方向(正方向)(傾斜角度α)に傾斜し右半分の領域が逆の方向に傾斜する場合(傾斜角度-α)や、傾斜角が正方向と反対方向のギアブレードが交互に配置されたものも採用できる。その場合、傾斜角度を変えることもできる。ギアブレードは電子部品等の実装基板に搭載された部品等に回転しながら接触してそれらの部品を実装基板から剥離するので、部品等の材料より硬くて丈夫で摩耗の少ない材料で作製されている。たとえば、SS400等の鉄鋼材料、SUS304等のステンレス系材料が挙げられる。
【0031】
図9は、基板剥離装置を実装基板が入る方向から見た上面図である。インクラインブレードローラー91がスクリューブレードローラー92の上に配置される。従って、加熱装置から出た実装基板は最初にインクラインブレードローラー91と送りローラー93の間の隙間に入り、インクラインブレードローラー91が実装基板の表面をなぞるようにして実装基板に搭載された電子部品を剥離する。その後、実装基板はスクリューブレードローラー92と送りローラー(送りローラー93の下に配置されている)の隙間に入り、剥離されなかった電子部品が剥離される。尚、最適化すれば、インクラインブレードローラー91を一段だけ配置して電子部品を剥離することも可能であるし、
図9に示すようなインクラインブレードローラー91とスクリューブレードローラー92の2段にしても良い。さらに、スクリューブレードローラー92の下にインクラインブレードローラーやスクリューブレードローラーを配置して、3段や4段等の多段にして無理なく完全に電子部品を剥離することも適宜選択できる。インクラインブレードローラーを複数段連続で配置することもできる。複数段の(剥離用)ブレードローラーを配置したときにも、下方段または次段にいくに従い、ブレードローラーと送りローラーの間の隙間を小さくしていき、高さや大きさの異なる部品を順番に剥離することもできる。尚、基板裏面にも部品が搭載されてこの部品を剥離する場合には、送りローラーとしてスクリューブレードローラーやインクラインブレードローラー等の剥離用ブレードを取り付けることもできる。本発明の剥離用ブレードは、回転時および剥離時に無理な力がかからないような構造を採用しているので、基板の両面に剥離用ブレードを用いてもブレード、ブレードローラー、モーター等の各構成部材に過大な負荷を及ぼすことも損傷することもない。
【0032】
これまでに説明した本発明の基板剥離装置は、ブレードローラーを縦方向(鉛直方向)に配置して基板を上方から下方へ移動させているので、フロア面積を増大させずに部品剥離が可能であるから、装置サイズもコンパクトに小さくすることもできる。しかし、フロア面積に制限がなければ、ブレードローラーを横方向に並べて、実装基板を横方向(水平方向)へ移動させることもでき、縦方向移動のものと同様の効果を実現することができる。
【0033】
図10は、
図1に示した加熱装置における実装基板の運搬方法を示す図である。
図10(a)はコンベアベルト13上に載置される実装基板14が加熱炉17内における搬送する様子を示す図であり、加熱炉17の外側蓋の一部を除去して内部の実装基板の状態が見えるようにした。
図10(b)は、その拡大図である。実装基板14上には、IC、抵抗、コンデンサ等の多数の電子部品等の各種部品19が搭載されている。実装基板14はコンベアベルト13に取り付けた突起板18にその一部が載置されて、コンベアベルト13で加熱炉17内に搬送される。実装基板14は、突起板18にその一部が載置されるため、傾斜して運ばれる(このような搬送を基板傾斜式コンベアと呼ぶ)。実装基板14を単純にコンベアベルト13に並べて載せるよりも多数の実装基板を重ねずに運搬できる。傾斜した状態で運ばれた実装基板14は、加熱炉17内で過熱蒸気、窒素や空気等の雰囲気で約200℃~500℃の温度で処理される。これらの加熱条件は、実装基板の材料や電子部品を実装基板に付着させるハンダや接着材の種類により適宜選択され、これらの付着材が軟化または溶融される。コンベアベルト13で加熱炉17の加熱部分へ運ばれて実装基板14が所定温度に一定時間(たとえば、1分~10分)加熱されるが、コンベアベルト13の移動しながら加熱しても良いし、加熱部分を短くして装置大きさを小さくするために、加熱部分でコンベアベルト13を止めて実装基板14を加熱しても良い。実装基板14の処理枚数は、加熱時間と加熱部分の長さ、加熱部分を通るときのコンベア(ベルト)の速度などにより決定される。
【0034】
このような基板傾斜式コンベアにより実装基板が重ならずに多数の実装基板を加熱処理できる。
図10に示すように隣の実装基板同士は重ならず隙間があるので、熱源が炉体下部(たとえば、コンベアベルト13の下部)にある場合でも、あるいは熱源が炉体上部にある場合でも、あるいは雰囲気全体が加熱されている場合でも各実装基板14に熱を伝達できる。本発明の基板傾斜式コンベアにおいて、実装基板14をコンベアベルト13に載せる前に、コンベアベルト13に畳んでいた突起板18を起こして実装基板14の所定位置が突起板18の部分に載置するようにする。この所定位置は実装基板14の長さや所定位置を支点にしたその前後の実装基板の重量(部品も含む)から決めることができる。また突起板18の高さや突起板同士の間隔は、実装基板の長さや実装基板に搭載される最大の高さを持つ部品の高さなどにより適宜設定できる。幅方向の突起板18の幅方向側は、実装基板14の幅方向全体に接触して実装基板14を支えても良いし、部分的に実装基板14の幅方向に接触して実装基板14を支えるようにしても良い。加熱を完了した実装基板14は、
図1に示すように、加熱炉17から出て剥離装置11に入るが、コンベアベルト13で立っている突起板18は前方側へ倒れてコンベアベルト13に畳まれていき、それに応じて傾斜した実装基板14は傾斜角が小さくなり、コンベアベルト13が下側に回りこむ所で剥離装置11へ降りていき、1段目のブレードローラーと送りローラーの間の隙間にスムーズに入り込む。
【0035】
図11は、実装基板を突起板に載置した状態を示す図で、
図10(b)に示す図を模式的に示したものである。実装基板14の一部(O点)で突起板18に載置されて、実装基板の一端はコンベアベルト13のP1またはP2点で支持されている。当然奥行(コンベアベルト13の幅方向)がありので、実装基板はP1またはP2で、またO点で線上に支持されている。実装基板14の長さをx0、からP1点までの実装基板の長さをx3、接触点O点から実装基板の他端までの長さをx4(=x0-x3)、実装基板x3の部分の実装基板の重量(搭載部品等も含む)をM1、実装基板x4の部分の実装基板の重量(搭載部品等も含む)をM2、実装基板x3の部分の実装基板の重心までのO点からの距離をx1、実装基板x4の部分の実装基板の重心までのO点からの距離をx2とすると、O点の周りのモーメントからM1x1>M2x2であれば、実装基板14は安定してコンベアベルト13に載置される。たとえば、重い部品が実装基板x3の部分に配置されていれば、実装基板14の中心点より手前に実装基板14と突起板18との接触点O点を持ってくることができる。すなわち、実装基板の重量配置を事前に把握することにより、P1点から突起板18までの距離y1を短くすることができるので、多数の実装基板を処理できる。
【0036】
突起板18の長さ(起立したときの高さ:起立高さ)をL、実装基板14の傾斜角をγ、P1点から突起板18までの距離をy1とすると、tanγ=L/y1、sinγ=L/x3となる。突起板18から隣の突起板18までの距離をy2、突起板同士の距離をHとすると、sinγ=H/(y1+y2)となる。これらから、H=L(y1+y2)/x3ともなる。実装基板14に搭載される部品の中の最大高さをH0とすれば、H>H0であるから、この関係を満たしながら、Hをできるだけ小さくするように、突起板間隔(y1+y2)と実装基板長さ(x3)、突起板長さLを選択すれば良い。突起板18は、
図11に示すように、起立した状態(破線で示す)から進行側(
図11の右方向)のコンベアベルト13へ畳んで(倒して)おけば、実装基板14も倒れてコンベアベルト13へ載置される。コンベアベルト13は右端で下側へ回っていくので、載置されたコンベアベルト14は剥離装置11へ降りていく。上記値は、実装基板の大きさ、重量等により適宜選択して設定することができる。突起板を多数配置しておき、実装基板の大きさ、重量によって起立させる突起板を選択すれば、種々のサイズの実装基板や重量に対応できるとともに、多数の実装基板の加熱処理が可能となる。
【0037】
以上詳細に説明した様に、本発明の基板剥離装置は、実装基板の表面に搭載された電子部品等にスクリューブレードやギアブレードを接触させて、その回転力で電子部品をむしり取るようにして剥離するので、電子部品等を損傷させずに剥離でき、またブレードローラーへ過大な負荷を与えることがない。また、基板剥離装置の前に配置する基板加熱装置はコンベアベルトに備えた突起板で実装基板を傾斜して運搬できるので、大量の実装基板の加熱処理を行なうことができる。尚、本明細書において、明細書のある部分に記載し説明した内容について記載しなかった他の部分においても矛盾なく適用できることに関しては、当該他の部分に当該内容を適用できることは言うまでもない。さらに、前記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施でき、本発明の権利範囲が前記実施形態に限定されないことも言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の基板剥離装置は、ブレードローラーを横方向に並べて基板を横方向に移動させて実装基板から電子部品等を剥離することもできる。
【符号の説明】
【0039】
11・・・基板剥離装置、12・・・加熱装置、
13・・・コンベアベルト、14・・・(実装)基板、
15・・・架台、16・・・のぞき窓、17・・・加熱炉、
18・・・突起板、19・・・部品、
21・・・ブレードローラー、22・・・送りローラー、
30・・・スクリューブレードローラー、31、32、33、34・・・スクリューブレード、
35・・・回転軸、41・・・スクリューブレードローラー、42・・・送りローラー、
43・・・実装基板、44・・・隙間、50・・・回転軸、51、52・・・スクリューブレード、
53、54・・・スクリューブレード、55、56・・・スクリューブレード、
57・・・モーター、58・・・伝達機構、59・・・サスペンションシステム、
60・・・シリンダー、61、62、63、64・・・スクリューブレード、65・・・架台、
66・・・フレーム、81・・・回転軸、82・・・ギアブレード、
91・・・インクラインブレードローラー、92・・・スクリューブレードローラー、
93・・・送りローラー、