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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/43 20200101AFI20231208BHJP
   D06F 39/08 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
D06F33/43
D06F39/08 321
D06F39/08 331
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020514019
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2019011315
(87)【国際公開番号】W WO2019202891
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-08-23
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2018078092
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】脇田 克也
(72)【発明者】
【氏名】池水 麦平
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】長馬 望
【審判官】五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0000574(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0095660(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0245392(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/43
D06F 39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内に回転可能に設けられた洗濯槽と、
前記洗濯槽を回転駆動するモータと、
前記水槽内に洗濯水を給水する給水部と、
前記水槽内の前記洗濯水を排水する排水部と、
前記水槽内に溜められた水を加熱する加熱部と、
前記水槽の上部に配設される温度検知部と、
洗濯運転および槽洗浄運転を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記槽洗浄運転において、前記加熱部によって前記水槽内に溜められた水を加熱し、発生した蒸気で前記水槽内を除菌する除菌ステップと、前記除菌ステップ後に前記水槽内を洗う洗いステップと、前記水槽内の前記水を排出する排水ステップを実行し、
前記制御部は、前記除菌ステップにおいて、前記水槽の温度を検知する前記温度検知部の出力に基づいて前記加熱部を制御し、前記水槽の上部を所定温度まで加熱する、
洗濯機。
【請求項2】
前記制御部は、前記所定温度を所定時間維持する、
請求項に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記制御部は、前記除菌ステップにおいて、前記水槽内に溜められた加熱水を、前記洗濯槽の回転駆動によって撹拌する、
請求項1または2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記洗濯機は、
前記水槽内の前記水を前記水槽の底部から前記洗濯槽内へ導くように設けられる循環水路と、
前記循環水路を通して前記水槽内の前記水を循環させるポンプと、を有し、
前記制御部は、前記槽洗浄運転において、前記ポンプを駆動して、前記循環水路に通して、前記水槽内の前記水を循環させる、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類などの洗濯を行う洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、洗濯機は、長期間の使用により、水槽の内面や洗濯槽の外面に、洗剤カスや汚れが堆積する。これにより、洗剤カスや汚れを、栄養源や生息場所として、菌やカビが繁殖する。そのため、洗濯後において、洗濯機内や衣類からの不快臭の発生や、汚れの一部が洗濯した衣類に付着する場合がある。
【0003】
近年、洗浄性能を向上させるために、洗濯する衣類に洗濯水を吐出させるシャワー機能を備える洗濯機がある。この構成の洗濯機は、水槽内の洗濯水を洗濯槽内へ循環させるための循環水路を備える。しかし、循環水路の内部の手入れが困難であるため、汚れ物質が循環水路内に堆積する。そのため、堆積物を生息場所として、菌やカビが繁殖し、不快臭を発生する場合がある。さらに、洗濯した衣類への、菌・カビの付着、菌・カビの代謝物やバイオフィルムの付着が発生する場合がある。その結果、洗濯を行ったにもかかわらず、衣類が汚れる虞がある。
【0004】
上記の課題を解決するために、以下に示す洗濯機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載の洗濯機は、まず、洗濯槽を洗浄するために、槽洗浄洗剤などを用いた槽洗浄ステップを行う。
【0006】
つぎに、槽洗浄ステップを行った後、除菌ステップを行う。具体的には、加熱部により、洗濯槽内の空気を加熱する。そして、加熱により熱せられた空気を、送風部によって洗濯槽内に送り込んで洗濯槽内を高温にする。
【0007】
つぎに、洗濯槽内を高温にした状態で、さらに、加熱部もしくは洗濯槽内に少量の水を給水して、洗濯槽内を高温多湿な環境にする。これにより、洗濯槽内の除菌を行うことを提案している。
【0008】
しかしながら、特許文献1の洗濯機の構成では、槽洗浄剤などを用いた槽洗浄ステップを行った後に、除菌ステップを行う。そのため、除菌ステップで死滅した菌やカビなどの汚れが、そのまま洗濯槽内の壁面などに留まる。そして、次回の洗濯時において、菌やカビの生息とともに形成されたバイオフィルムや、死滅した菌やカビが、洗濯槽の壁面から剥離する。これにより、再度、洗濯衣類に付着したバイオフィルム、菌やカビなどが、洗濯後の汚れや異臭の発生源になる場合がある。
【0009】
また、槽洗浄剤などを用いた槽洗浄ステップにおいては、洗濯用洗剤とは別に、専用の槽洗浄剤を準備する必要がある。さらに、一般的に、槽洗浄に要する時間は数時間と長いため、バイオフィルムを形成した生育状態での菌・カビ叢の除去は困難である。このとき、槽洗浄剤が、例えば漂白剤のような除菌成分を含んでいる場合でも、局所的な除菌しかできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2005-253584号公報
【発明の概要】
【0011】
本発明は、洗濯時における、衣類への菌やカビなどの付着による汚れや異臭を抑制できる洗濯機を提供する。
【0012】
本発明の洗濯機は、水槽内に回転可能に設けられる洗濯槽と、洗濯槽を回転駆動するモータと、水槽内に洗濯水を給水する給水部と、水槽内の洗濯水を排水する排水部と、水槽内に溜められる水を加熱する加熱部と、水槽の上部に配設される温度検知部と、洗濯運転および槽洗浄運転を制御する制御部を含む。制御部は、槽洗浄運転において、加熱部によって水槽内に溜められる水を加熱し、発生した蒸気で水槽内を除菌する除菌ステップと、除菌ステップ後に水槽内を洗う洗いステップと、水槽内の水を排出する排水ステップを実行し、制御部は、除菌ステップにおいて、水槽の温度を検知する温度検知部の出力に基づいて加熱部を制御し、水槽の上部を所定温度まで加熱するように構成される。
【0013】
この構成によれば、槽洗浄運転において、特に、水槽の上部を所定温度まで加熱し、水槽内で発生量を最適化して発生させた蒸気により、水槽内の温度と湿度を高めることができる。これにより、一定以上の熱と湿気とによって、水槽および洗濯槽の表面に生息する菌やカビを効率よく死滅させることができる。そして、死滅した菌やカビ、バイオフィルムなどを洗い流して機外へ排出する。これにより、次回の洗濯時において、水槽や洗濯槽から菌やカビ、バイオフィルムなどの剥離を抑制できる。その結果、菌やカビ、バイオフィルムなどの衣類への付着を抑制して、洗濯物を清浄な状態に仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施の形態1における洗濯機の概略構成図である。
図2図2は、同洗濯機のブロック構成図である。
図3図3は、同洗濯機の槽洗浄運転時の動作を示すタイムチャートである。
図4図4は、同洗濯機の温度と除菌効果との関係を示すグラフである。
図5図5は、同洗濯機の槽洗浄運転時の他の例の動作を示すタイムチャートである。
図6図6は、本発明の実施の形態2における洗濯機の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって、本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における洗濯機の概略構成図である。図2は、同洗濯機のブロック構成図である。図3は、同洗濯機の槽洗浄運転時の動作を示すタイムチャートである。図4は、同洗濯機の温度と除菌効果との関係を示すグラフである。
【0017】
なお、実施の形態1の洗濯機は、洗濯槽3であるドラム3の回転軸3aが水平方向(傾斜を含む)に配設される、いわゆるドラム式洗濯機である。
【0018】
図1に示すように、実施の形態1の洗濯機は、筐体1と、筐体1内に弾性支持される水槽2などを含む。水槽2は、内部に、回転可能に設けられる洗濯槽3である有底円筒状のドラム3を含む。ドラム3は、回転軸3aが、角度θ(例えば、10度)の前上がり(図面の左上方向)に傾斜して配設される。
【0019】
なお、以下では、図中に示す、扉25側を前方、モータ7側を後方、洗剤ケース10側を上方、排水経路12側を下方と規定して説明する。
【0020】
ドラム3は、内周側面に、ドラム3の回転中心に向かって内方へ突出する複数のバッフル4と、水槽2内と連通する多数の小孔5が設けられる。さらに、ドラム3は、前面側に設けられる開口部6を含む。使用者は、開口部6を介して、衣類などの洗濯物(以下、「被洗浄物」と記す場合がある)のドラム3への投入およびドラム3からの取り出しを行うことができる。
【0021】
水槽2は、後面に取り付けられ、ドラム3を回転駆動するモータ7を備える。モータ7は、インバータ制御される、例えばブラシレス直流モータで構成される。モータ7は、インバータ制御により、回転速度が可変自在に駆動される。
【0022】
水槽2内に洗濯水を給水する給水配管8は、例えば水道の蛇口(図示せず)に接続され、給水部である給水弁9を備える。給水配管8は、洗剤を投入する洗剤ケース10と連通接続される。洗剤ケース10は、給水路11を介して、水槽2と連通接続される。これにより、洗濯水は、給水配管8から洗剤ケース10および給水路11を流れて、水槽2内に給水される。なお、洗濯水は、洗剤が溶け込んだ水だけでなく、単なる水の意味も含む。
【0023】
水槽2内に給水された洗濯水は、排水経路12を通って、洗濯機外へ排出される。
【0024】
排水経路12は、排水部である排水弁13と、排水フィルター14を含む。つまり、洗濯水は、排水弁13が開かれると、水槽2の底部に設けられる排水口15から排水フィルター14および排水弁13を経由して、洗濯機外へ排出される。排水フィルター14は、洗濯中において、洗濯水が循環する位置に設けられ、例えば被洗浄物から外れたボタンなどを捕集する。排水フィルター14は、筐体1の前面側から脱着可能に構成される。
【0025】
循環水路16は、水槽2の排水口15から水槽2内の前部に位置するドラム3の開口部6側へ、水槽2内の洗濯水を導くように配設される。循環水路16は、洗濯水を循環させるポンプ17と、吐出口18を含む。ポンプ17は、筐体1内の底部に設置され、排水フィルター14の下流側に配設される。ポンプ17の駆動により、水槽2内の洗濯水が、ドラム3内に向けて、吐出口18から吐出される。
【0026】
ヒータ19は、水槽2に溜められる水を加熱する加熱部を構成し、水槽2内の底部に配設される。ヒータ19は、水槽2内に所定量の水が溜められると、水没する位置に配設される。
【0027】
水量検知部20は、水槽2内に給水される洗濯水の量を検知する。温度検知部21は、水槽2上部の前面近傍に配設され、水槽2の上部近傍の温度を検知する。なお、温度検知部21は、例えばサーミスタなどで構成される。
【0028】
布量検知部23は、ドラム3内に投入される被洗浄物の量を検知する。回転検知部24は、ドラム3の、例えば回転数などの駆動量を検知する。
【0029】
また、制御部22は、筐体1内に配設され、入力される情報に基づいて、各種構成要素を制御して、洗濯運転および槽洗浄運転などを実行する。
【0030】
具体的には、制御部22は、図2に示すように、布量検知部23で検知した被洗浄物の量、水量検知部20で検知した洗濯水の量、温度検知部21で検知した水槽2内の温度、回転検知部24で検知したドラム3の駆動量(例えば、回転数)などの情報が入力される。
【0031】
そして、制御部22は、それらの入力情報に基づいて、モータ7、給水弁9、排水弁13、ポンプ17、ヒータ19などを制御し、洗いステップ、すすぎステップ、脱水ステップなどを逐次制御して、洗濯運転を実行する。
【0032】
さらに、制御部22は、後述する槽洗浄運転を実行し、水槽2、ドラム3、および循環水路16などの洗浄を行う。
【0033】
なお、洗濯機の使用時において、使用者は、まず、筐体1の前面に開閉自在に設けられた扉25を開く。これにより、ドラム3の前面側に設けられたドラム3の開口部6から被洗浄物の出し入れが可能となる。
【0034】
また、操作表示部26は、筐体1の前面側の上部に設けられる。使用者は、操作表示部26を介して、洗濯機を運転するための設定を入力する。操作表示部26で入力された設定は、制御部22に出力される。これにより、制御部22は、入力された設定内容に基づいて、上記洗濯運転および槽洗浄運転などを実行する。さらに、操作表示部26は、制御部22から洗濯機の設定内容および運転状況などを取得して、表示する。これにより、使用者は、設定内容および運転状況などを把握できるとともに、必要に応じて、設定内容の訂正などを行うことができる。
【0035】
以上のように、実施の形態1の洗濯機は構成される。
【0036】
以下、上記洗濯機の洗濯運転および槽洗浄運転における動作および作用について、図1図4を参照しながら、説明する。
【0037】
最初に、被洗浄物である洗濯物を洗う洗濯運転における動作および作用について、説明する。
【0038】
洗濯運転において、使用者は、扉25を開いて、開口部6からドラム3内に被洗浄物を投入する。
【0039】
つぎに、使用者は、操作表示部26の電源スイッチ(図示せず)をオン(ON)し、スタートスイッチ(図示せず)を、例えば押下操作する。これにより、洗いステップ、すすぎステップおよび脱水ステップなどを含む洗濯運転が、順次、開始される。
【0040】
洗濯運転では、初めに、洗いステップを実行する。
【0041】
洗いステップを開始すると、制御部22は、まず、ドラム3内に投入された被洗浄物の量(例えば、重量)を、布量検知部23で検知する。具体的には、布量検知部23は、モータ7でドラム3を回転駆動する際に、モータ7にかかるトルク量や、モータ7の電流値などから被洗浄物の量を検知する。
【0042】
つぎに、制御部22は、布量検知部23で検知した被洗浄物の量に応じて、水槽2内に供給する水量を設定する。また、制御部22は、洗いステップ、すすぎステップおよび脱水ステップなどの各ステップを実行する時間を設定する。さらに、制御部22は、被洗浄物の量に応じて、予め設定された洗剤量から目安となる洗剤量を決定し、操作表示部26に表示する。使用者は、操作表示部26に表示された目安の洗剤量にしたがって、洗剤などを、洗剤ケース10に投入する。
【0043】
つぎに、制御部22は、給水弁9を開く。これにより、水道から供給される水が、給水配管8、洗剤ケース10および給水路11を経由して、水槽2内に給水される。このとき、排水弁13は、閉じられている。つまり、給水配管8を通って洗剤ケース10に入った水は、洗剤ケース10の中の洗剤を溶かして、洗濯水を生成する。生成された洗濯水は、給水路11を介して、水槽2内に供給され、水槽2内の底部に溜まる。底部に溜まった洗濯水は、ドラム3の外周側面の小孔5から、ドラム3内に流入する。
【0044】
つぎに、制御部22は、水槽2内に給水された水量を、水量検知部20で検知する。そして、制御部22は、被洗浄物の量に応じて、予め設定された水量と、給水された水量が同じになると、給水弁9を閉じる。このとき、制御部22は、給水中に、被洗浄物がドラム3の中で転動するように、モータ7により、例えば回転数20rpmで、ドラム3を一方向に回転駆動させる。これにより、被洗浄物への洗濯水の浸透が、加速される。このとき、洗濯水の被洗浄物への吸水により、一般的に、水槽2内の水量が設定水位から低下する。そこで、制御部22は、再度、給水弁9を開いて、水槽2内に水を補給し、設定水位に戻す。なお、設定水位から低下しない場合は、この限りではない。
【0045】
つぎに、水槽2への給水が終わると、制御部22は、ポンプ17を駆動する。これにより、水槽2内の底部に溜まった水が、排水口15から循環水路16へ導かれる。循環水路16へ導かれた水は、循環水路16内を流れる。そして、循環水路16の吐出口18から、ドラム3内へ吐出される。吐出された洗濯水は、ドラム3の小孔5から水槽2内に流出し、再び、排水口15から循環水路16を通る経路で循環する。これにより、洗浄水が、被洗浄物に充分浸透する。
【0046】
つぎに、制御部22は、いわゆる被洗浄物の叩き洗いを実行する。具体的には、叩き洗いは、モータ7により、ドラム3を所定の回転数(例えば、42rpm)で、所定時間(例えば、15秒)毎に、交互に、正逆回転駆動することにより実行される。叩き洗いにおいて、被洗浄物は、まず、バッフル4によって、ドラム3の回転方向へ持ち上げられる。その後、被洗浄物は、持ち上げられたドラム3内の上部から落下する。これにより、被洗浄物の洗浄が行われる。
【0047】
そして、制御部22は、上述の洗いステップを、設定された所定時間(例えば、10分)、実行する。その後、制御部22は、排水弁13を開いて、洗濯水を洗濯機から機外へ排出する。これにより、洗濯運転の洗いステップが終了する。
【0048】
つぎに、制御部22は、洗いステップの終了後、すすぎステップ、脱水ステップの順に実行する。そして、制御部22は、洗濯運転を終了する。
【0049】
なお、上記すすぎステップおよび脱水ステップについての詳細な説明は、従来の洗濯機と同様であるので、省略する。
【0050】
以下、洗濯機の槽洗浄運転について、図3を参照しながら、説明する。
【0051】
図3は、実施の形態1における洗濯機の槽洗浄運転時の動作を示すタイムチャートである。
【0052】
なお、槽洗浄運転は、上記洗濯運転とは別に実行される、水槽2、ドラム3および循環水路16などを洗浄する運転動作である。
【0053】
具体的には、槽洗浄運転は、図3に示すように、除菌ステップ、洗いステップおよび排水ステップなどの各ステップで構成され、順に実行される。
【0054】
使用者は、まず、操作表示部26の電源スイッチ(図示せず)を入れ、槽洗浄運転を設定する。設定した後、使用者は、スタートスイッチ(図示せず)を操作する。これにより、槽洗浄運転が開始する。
【0055】
槽洗浄運転では、初めに、除菌ステップが実行される。
【0056】
制御部22は、除菌ステップの運転が開始されると、給水弁9を開く。これにより、水道から供給される水が、給水配管8、洗剤ケース10および給水路11を経由して、水槽2内に給水される。このとき、槽洗浄運転においては、洗剤ケース10の中に、洗剤は投入されていない。そのため、洗剤を含まない水のみが、水槽2内に供給され、水槽2内の底部に溜まる。底部に溜まった水は、ドラム3の外周側面の小孔5から、ドラム3内に流入する。
【0057】
つぎに、制御部22は、水槽2内に給水された水量を、水量検知部20で検知する。このとき、実施の形態1の槽洗浄運転の各ステップにおいては、給水される水量は、例えば水位「低」、「高」の2段階に設定され、除菌ステップにおいては、水位「低」に設定される。水位「低」は、給水された水にヒータ19が水没する量に相当する。そして、給水された水位が、設定量である水位「低」になったことを、水量検知部20で検知すると、制御部22は、給水弁9を閉じる。
【0058】
給水後、制御部22は、ヒータ19に通電して、水槽2の底部に溜められた水を加熱する。具体的には、制御部22は、水槽2上部の前面近傍に設けられた温度検知部21の出力(検知温度)に基づいて、ヒータ19への通電を制御する。これにより、水が蒸発し、水槽2内に蒸気が発生する。そして、水槽2内で発生した蒸気により、水槽2内が加熱される。
【0059】
さらに、制御部22は、温度検知部21の出力に基づいて、水槽2の上部内面の温度(表面温度)が設定温度T1になるように、ヒータ19への通電を制御する。設定温度T1は、例えば、50℃以上が望ましく、より望ましくは50℃以上、90℃以下である。
【0060】
なお、カビや菌の除菌においては、設定温度T1を高温に設定するほど有利である。しかし、設定温度T1を高温に設定すると、洗濯機の構造体である樹脂材料の耐熱温度に対する考慮が必要となる。さらに、水槽2内に供給された水を、高温の設定温度T1まで加熱するために、時間がかかる。そのため、設定温度T1は、より短時間で、かつ低温でも高温時と同様の効果を発現できるとの理由から、上記温度範囲に設定される。
【0061】
ここで、カビに対する加熱温度および保持時間と、除菌効果との関係について、図4を参照しながら、説明する。
【0062】
図4は、カビに対する加熱温度および保持時間と、除菌効果との関係を示すグラフである。図4に示す各加熱温度は、温度a<温度b<温度cの、大小関係にある。具体的には、例えば、温度a=45℃、温度b=48℃、温度c=50℃である。
【0063】
図4に示すように、加熱温度が高くなるほど、短時間で、高い除菌効果が得られることが分る。また、加熱温度が低温になるほど、カビや菌の死滅に要する時間が長くなる。
【0064】
つまり、生息しているカビや菌の数を、より短い時間で、かつ2桁以上に減少させるためには、加熱温度が高いほど有利であることが確認される。そこで、実施の形態1では、設定温度T1として、上記50℃に設定している。
【0065】
そして、制御部22は、図3に示すように、水槽2の上部内面の温度が設定温度T1(50℃)に到達したことを温度検知部21で検知すると、設定温度T1を、所定時間、維持するように、ヒータ19への通電量や通電時間などを制御する。このとき、維持する所定時間は、設定温度T1が50℃の場合、例えば10分程度が望ましい。また、設定温度が55℃の場合、維持する所定時間は、例えば5分程度が望ましい。これにより、樹脂材料の耐熱温度を考慮しながら、より短い時間で、かつ低温でも高温時と同様の、カビや菌に対する高い除菌効果を発現させることができる。
【0066】
また、実施の形態1の洗濯機は、温度検知部21を水槽2の前面上部に設けている。つまり、水槽2の底部で水が加熱される場所から、最も離れた部位の温度が検知される。これにより、制御部22は、水槽2内全体が、少なくとも設定温度T1以上の温度まで、確実に加熱できる。
【0067】
このとき、制御部22は、水槽2の底部に溜められた水の加熱中に、例えば40rpmの低速で、ドラム3を一方向へ回転駆動する。これにより、加熱された水との接触により、ドラム3自体の温度が上昇する。そして、温度が高くなったドラム3が、水槽2内を回転する。これにより、ヒータ19で加熱される水から離れている水槽2上部にも、昇温されたドラム3からの放熱によって熱を加えることができる。つまり、水槽2の上部と下部との温度差が縮まる。その結果、加熱される水から発生する蒸気が、低温部分の水槽2と接触しても、凝縮(結露)することがない。そのため、水槽2内の温度を、より速く上昇させることができる。
【0068】
また、ドラム3の回転によって、ヒータ19で加熱された水が撹拌される。これにより、水槽2内の水の温度が均一化される。その結果、水の表面から蒸発する蒸気の放出が、さらに促進される。
【0069】
上記状態において、制御部22は、ポンプ17を駆動する。これにより、ヒータ19で加熱された水槽2内の水が、循環水路16に流れ、吐出口18から水槽2内に吐出される。つまり、加熱された水が、循環する。具体的には、ポンプ17の駆動により、ヒータ19で加熱された水槽2内の水は、水槽2の底部に設けられた排水口15から吸引される。吸引された水は、排水フィルター14を通過して、循環水路16へ導かれる。循環水路16へ導かれた水は、吐出口18から、ドラム3内へ吐出される。そして、ドラム3内へ吐出された水は、ドラム3の小孔5から水槽2内に流出し、再び、排水口15から循環水路16を通る経路で循環する。
【0070】
つまり、槽洗浄運転の除菌ステップにおいて、加熱された水(以下、「加熱水」と記す場合がある)は、排水口15から循環水路16を通る経路で循環する。これにより、加熱水は、循環水路16を通る経路内に生息する菌やカビを死滅させる。その結果、経路内に生息する菌やカビを、より確実に除菌できる。このとき、ポンプ17を低速で駆動し、菌やカビを加熱水と長時間、接触させることが好ましい。具体的には、加熱水が、循環水路16を通る経路内を、滞留することなく、流れる程度の速度となるように、ポンプ17を駆動することが好ましい。また、ポンプ17は、連続または間欠のいずれで駆動してもよい。
【0071】
そして、制御部22は、上記除菌ステップを、予め設定された所定時間(例えば、30分)、実行する。
【0072】
つぎに、制御部22は、除菌ステップに続いて、槽洗浄運転の洗いステップを実行する。
【0073】
洗いステップは、除菌ステップで死滅した菌やカビ、バイオフィルムなどの汚れを、水槽2やドラム3の壁面から剥ぎ取り、洗い流すステップである。
【0074】
具体的には、制御部22は、まず、ヒータ19への通電を停止する。そして、制御部22は、給水弁9を開いて、水槽2内に給水する。このとき、給水する水位は、図3に示すように、前述の除菌ステップ時の水位「低」よりも高い、水位「高」に設定される。これにより、後述するように、水槽2の上方側の内面まで洗い流すことができる。水位「高」は、ドラム3の後方の下部が、水に十分に浸る状態に相当する水位であり、例えば斜めのドラム3の外周壁の中央部が、水に十分に浸る水位である。
【0075】
そして、給水された水位が、設定量である水位「高」になったことを、水量検知部20で検知すると、制御部22は、給水弁9を閉じる。これにより、ドラム3の後方の下部が、水に十分に浸かった状態となる。
【0076】
つぎに、制御部22は、モータ7を駆動して、ドラム3を高速(例えば、100rpm)で回転させる。このとき、給水により、水位「高」まで増加した水槽2内の水は、ドラム3の高速回転によって上方へ巻き上げられ、水槽2の上方側の内面まで到達する。
【0077】
これにより、除菌ステップで死滅した、水槽2の上面の菌やカビ、バイオフィルムなどの汚れが、巻き上げられた水で、水槽2やドラム3の壁面から剥がされる。その結果、水槽2の上面に付着する、死滅した菌やカビ、バイオフィルムなどの汚れを、より確実に、洗い流すことができる。
【0078】
このように、槽洗浄運転の洗いステップにおいては、水槽2内への給水により、除菌ステップで蒸気を発生させた加熱水に、常温の水道水を混合して、加熱水の温度を低下させる。これにより、樹脂材料の耐熱温度を考慮して、ドラム3を高速回転させることが可能となる。
【0079】
さらに、給水される水位が、設定量である水位「高」になったことを、水量検知部20で検知すると、制御部22は、給水弁9を閉じて、ポンプ17を駆動する。これにより、水槽2内の水が循環水路16を流れて循環する。その結果、循環水路16内の壁面に付着する、除菌ステップで死滅した菌やカビ、バイオフィルムなどの汚れが、循環水路16内の壁面から剥がされる。
【0080】
そして、制御部22は、上記洗いステップを、予め設定された所定時間(例えば、30分)、実行する。
【0081】
ここで、実施の形態1における槽洗浄運転時の洗いステップの他の例の動作について、図5を用いて、説明する。
【0082】
図5は、実施の形態1における槽洗浄運転時の他の例の動作を示すタイムチャートである。他の例は、洗いステップの動作が、図3に示す実施に形態1の洗いステップと異なる。
【0083】
具体的には、他の例は、槽洗浄運転の洗いステップにおいて、水槽2内の水位とドラム3の回転数とを、複数回に設定する点で、図3に示す実施に形態1の1回の洗いステップの動作と異なる。
【0084】
つまり、図5に示すように、制御部22は、洗いステップにおいて、まず、ヒータ19への通電を停止する。そして、制御部22は、給水弁9を開いて、水槽2内に給水する。このとき、他の例にかかる槽洗浄運転の各ステップにおいては、図5に示すように、給水される水量は、例えば水位「低」、「中」、「高」の3段階に設定され、洗いステップにおいては、まず、水位「中」に設定される。つまり、洗いステップの給水の水位は、前述の除菌ステップ時の水位「低」よりも高く、水位「中」および「高」の二段構成で設定される。なお、他の例の洗いステップにおいては、水位に応じて、ドラム3の回転数が、「低速」、「中速」、「高速」に設定される。なお、以下では、洗いステップの水位を二段構成で変更する例で説明するが、三段構成以上で水位を変更してもよい。
【0085】
まず、水槽2内の一段目に対応する水位「中」になったことを、水量検知部20で検知すると、制御部22は、給水弁9を閉じる。そして、制御部22は、モータ7を制御して、ドラム3を中速(例えば、80rpm)で回転駆動する。これにより、水位「中」まで、給水により増加した水槽2内の水は、ドラム3の回転によって上方へ巻き上げられる。その結果、巻き上げられた水により、除菌ステップで死滅した菌やカビ、バイオフィルムなどの汚れが、水槽2やドラム3の壁面から剥がされる。
【0086】
つぎに、制御部22は、ポンプ17を駆動する。これにより、水槽2内の水が循環水路16を流れて循環する。このとき、循環水路16内の壁面に付着した、除菌ステップで死滅した菌やカビ、バイオフィルムなどの汚れが、循環水路16内の壁面から剥される。
【0087】
つぎに、制御部22は、水位「中」を水量検知部20で検知してから所定時間の経過後、再び、給水弁9を開いて、水槽2内に給水する。そして、制御部22は、水槽2内の二段目に対応する水位が「高」になったことを、水量検知部20で検知すると、給水弁9を閉じる。このとき、水槽2内に水位「高」まで水が溜められると、上述したように、ドラム3の下部が水に十分に浸かった状態となる。
【0088】
さらに、制御部22は、水位「高」を水量検知部20が検知すると、ポンプ17の駆動を停止する。
【0089】
そして、設定量の水位が「高」の状態において、制御部22は、モータ7を駆動して、ドラム3を高速(例えば、100rpm)で回転させる。これにより、水槽2内の水は、ドラム3の高速回転によって、さらに上方へ巻き上げられ、水槽2の最も上方側の内面まで到達する。その結果、巻き上げられた水で、水槽2やドラム3の壁面から菌やカビ、バイオフィルムなどの汚れが、効果的に剥ぎ取られ、洗い流される。このとき、制御部22は、ポンプ17の駆動を停止するため、水槽2内の水は、循環水路16へ流入できない。そのため、水槽2内の水位が「高」の状態で、維持される。これにより、ドラム3の高速回転によって上方へ巻き上げる水量が、十分に確保される。その結果、洗い流し効果を、さらに高めることができる。
【0090】
そして、制御部22は、他の例にかかる槽洗浄運転の洗いステップを、予め設定された所定時間(例えば、30分)、実行する。
【0091】
以上のように、実施に形態1および他の例にかかる槽洗浄運転の洗いステップの動作が完了する。
【0092】
つぎに、制御部22は、実施に形態1および他の例の洗いステップに続いて、排水ステップを実行する。なお、実施の形態1および他の例の槽洗浄運転の洗いステップの動作以外は、同様であるので、排水ステップは区別せず、図3および図5を参照しながら、説明する。
【0093】
排水ステップにおいて、制御部22は、まず、排水弁13を開く。これにより、除菌ステップで死滅した菌やカビ、バイオフィルムなどの汚れを含む、水槽2内および循環水路16内の水が、排水経路12を介して、排水される。
【0094】
排水後、制御部22は、モータ7を制御して、ドラム3を、洗いステップの高速回転よりも、さらに高速(例えば、300rpm)で、短時間(例えば、5分)回転させる。これにより、ドラム3に付着している水滴などが、遠心力により水槽2内に吹き飛ばされる。吹き飛ばされた水滴は、水槽2の排水口15に流れ落ち、排水経路12を介して、機外に排出される。
【0095】
そして、制御部22は、排水弁13を閉じて、槽洗浄運転を終了する。
【0096】
以上のように、実施の形態1の洗濯機は、水槽2内に回転可能に設けられるドラム3と、ドラム3を回転駆動するモータ7と、水槽2内に洗濯水を給水する給水弁9と、水槽2内の洗濯水を排水する排水弁13と、水槽2内に溜められる水を加熱するヒータ19と、洗濯運転および槽洗浄運転を制御する制御部22を含む。制御部22は、槽洗浄運転において、ヒータ19によって水槽2内に溜められた水を加熱し、発生した蒸気で水槽2内を除菌する除菌ステップと、除菌ステップ後に水槽2内を洗う洗いステップと、水槽2内の水を排出する排水ステップを実行するように構成される。
【0097】
この構成によれば、槽洗浄運転において、水槽2内で発生させた蒸気により、水槽2内の温度と湿度を高めることができる。これにより、一定以上の熱と湿気とによって、水槽2およびドラム3の表面に生息する菌やカビを死滅させることができる。そして、死滅した菌やカビ、バイオフィルムなどを洗い流して機外へ排出する。これにより、次回の洗濯時において、水槽2やドラム3から菌やカビ、バイオフィルムなどの剥離を抑制できる。その結果、菌やカビ、バイオフィルムなどの被洗浄物への付着を抑制して、洗濯物を清浄な状態に仕上げることができる。
【0098】
また、制御部22は、除菌ステップにおいて、水槽2の温度を検知する温度検知部21の出力に基づいてヒータ19を制御し、水槽2の上部を所定温度まで加熱する。これにより、水槽2内での蒸気の発生量を最適化して、生息する菌やカビを、効率よく死滅させることができる。
【0099】
また、制御部22は、所定温度を所定時間、維持する。これにより、発生する蒸気が、水槽2内全体に隈なく行き渡る。その結果、蒸気により、水槽2内全体に生息する菌やカビを、より確実に死滅させることができる。
【0100】
また、制御部22は、除菌ステップにおいて、水槽2内に溜められた加熱水を、ドラム3の回転駆動によって撹拌する。これにより、水槽2の底部に溜められた水が、均一に加熱される。さらに、撹拌により、加熱された水の熱量が、ドラム3全体に伝わる。これにより、伝熱により加熱されたドラム3全体からの熱量の放熱により、水槽2内の昇温を速めることができる。つまり、水槽2内の温度を効率よく高めて、水槽2内の温度を速やかに均一化できる。これにより、水槽2内の冷えた部分による蒸気の結露の発生を、より確実に防止できる。その結果、蒸気を、水槽2内全体へ隈なく、効率よく行き渡らせることができる。
【0101】
また、実施の形態1の洗濯機は、水槽2内の水を水槽2の底部からドラム3内へ導くように設けられた循環水路16と、循環水路16を通して水槽2内の水を循環させるポンプ17を有する。そして、制御部22は、槽洗浄運転において、ポンプ17を駆動して、循環水路16に通して、水槽2内の水を循環させる。
【0102】
これにより、循環水路16に加熱された水を流して、循環水路16に生息する菌やカビを死滅させる。さらに、死滅した菌やカビ、バイオフィルムなどの汚れを、循環水路16から剥離させて、機外へ排出できる。これにより、湿度が高く菌やカビの生息場所となり易い水周りの配管の内表面を清浄にできる。その結果、次回の洗濯時において、被洗浄物への汚れの、再付着を抑制できる。
【0103】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における洗濯機の概略構成図である。実施の形態2の洗濯機は、いわゆる縦型洗濯機で構成される点で、実施の形態1のドラム式洗濯機と異なる。
【0104】
つまり、実施の形態2の洗濯機は、洗濯槽3の回転軸が縦方向に設定される。なお、他の構成は、実施の形態1と同じであるため、同一の構成に同一の符号を付して詳細な説明は、実施の形態1を援用する。
【0105】
図6に示すように、実施の形態2の洗濯機は、水槽2内に、洗濯槽3が回転可能に設けられる。洗濯槽3は、底部に、撹拌翼27が回転可能に設けられる。撹拌翼27は、モータ7によって回転駆動され、水槽2内に溜められる洗濯水を撹拌する。
【0106】
ヒータ19は、水槽2内の底部に配設され、水槽2内に溜められる洗濯水を加熱する。温度検知部21は、水槽2の上部に配設され、水槽2内の温度を検知する。
【0107】
実施の形態2の縦型洗濯機においても、実施の形態1と同様に、制御部22は、洗濯運転および、水槽2および洗濯槽3などの洗浄を行う槽洗浄運転を制御する。
【0108】
なお、槽洗浄運転は、実施の形態1と同様に、除菌ステップ、洗いステップおよび排水ステップなどの各ステップで構成され、順に実行される。
【0109】
つまり、槽洗浄運転の除菌ステップにおいて、制御部22は、温度検知部21の出力に基づいて、ヒータ19に通電する。これにより、水槽2内に溜められた水が加熱され、蒸気を発生する。発生した蒸気により、水槽2内が加熱される。
【0110】
このとき、制御部22は、温度検知部21で検知する水槽2内の上部内面の温度が、蒸気により設定温度に到達すると、設定温度を、所定時間、維持するように、ヒータ19への通電を制御する。そして、設定温度以上の蒸気により、水槽2および洗濯槽3の壁面に生息する菌やカビなどを死滅させる。
【0111】
つぎに、制御部22は、除菌ステップに続いて実行される、洗いステップを実行する。
【0112】
洗いステップにおいて、制御部22は、まず、給水弁9を開いて、水槽2内に所定量の水を給水する。そして、給水された水位が、設定量である水位になったことを、水量検知部20で検知すると、制御部22は、給水弁9を閉じる。つぎに、制御部22は、撹拌翼27を高速で回転駆動する。これにより、水槽2内で発生する水流による遠心力で、水槽2内周面に水がへばりついて、水面の周囲がV字状に上昇する。このとき、V字状に上昇した水により、水槽2に付着する、除菌ステップで死滅した菌やカビ、バイオフィルムなどの汚れが、水槽2から洗い流される。
【0113】
つぎに、制御部22は、排水ステップを実行する。
【0114】
排水ステップにおいて、制御部22は、排水弁13を開いて、水槽2内の水を、排水経路12を通して、洗濯機外へ排出する。
【0115】
なお、実施の形態2では、撹拌翼27が、洗濯槽3と、別々に回転駆動される構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、撹拌翼27と洗濯槽3とを一体的に回転駆動する構成としてもよい。
【0116】
以上で説明したように、本発明の洗濯機は、水槽内に回転可能に設けられる洗濯槽と、洗濯槽を回転駆動するモータと、水槽内に洗濯水を給水する給水部と、水槽内の洗濯水を排水する排水部と、水槽内に溜められた水を加熱する加熱部と、洗濯運転および槽洗浄運転を制御する制御部を含む。制御部は、槽洗浄運転において、加熱部によって水槽内に溜められた水を加熱し、発生した蒸気で水槽内を除菌する除菌ステップと、除菌ステップ後に水槽内を洗う洗いステップと、水槽内の水を排出する排水ステップを実行するように構成される。
【0117】
この構成によれば、槽洗浄運転において、水槽内で発生させた蒸気により、水槽内の温度と湿度を高めることができる。これにより、一定以上の熱と湿気とによって、水槽および洗濯槽の表面に生息する菌やカビを死滅させることができる。そして、死滅した菌やカビ、バイオフィルムなどを洗い流して機外へ排出する。これにより、次回の洗濯時において、水槽や洗濯槽から菌やカビ、バイオフィルムなどの剥離を抑制できる。その結果、菌やカビ、バイオフィルムなどの衣類への付着を抑制して、洗濯物を清浄な状態に仕上げることができる。
【0118】
また、本発明の洗濯機の制御部は、除菌ステップにおいて、水槽の温度を検知する温度検知部の出力に基づいて加熱部を制御し、水槽の上部を所定温度まで加熱する構成が望ましい。
【0119】
これにより、水槽内での蒸気の発生を最適化して、生息する菌やカビを、効率よく死滅させることができる。
【0120】
また、本発明の洗濯機の制御部は、所定温度を所定時間、維持する構成が望ましい。
【0121】
これにより、水槽内に蒸気が、水槽2内全体に隈なく行き渡る。その結果、蒸気により、水槽2内全体に生息する菌やカビを、より確実に死滅させることができる。
【0122】
また、本発明の洗濯機は、制御部は、除菌ステップにおいて、水槽内に溜められた加熱水を、洗濯槽の回転駆動によって撹拌する構成が望ましい。
【0123】
これにより、水槽の底部に溜められた加熱水が、均一に加熱される。さらに、撹拌により、加熱された水に熱量が、洗濯槽全体に伝わる。これにより、伝熱により加熱された洗濯槽全体からの熱量の放熱により、水槽内の昇温を速めることができる。つまり、水槽内の温度を効率よく高めて、水槽内の温度を速やかに均一化できる。これにより、水槽内の冷えた部分による蒸気の結露の発生を、より確実に防止できる。その結果、蒸気を、水槽内全体へ隈なく、効率よく行き渡らせることができる。
【0124】
また、本発明の洗濯機は、水槽内の水を水槽の底部から洗濯槽内へ導くように設けられる循環水路と、循環水路を通して水槽内の水を循環させるポンプとを有する。そして、制御部は、槽洗浄運転において、ポンプを駆動して、循環水路に通して、水槽内の水を循環させる構成が望ましい。
【0125】
この構成によれば、循環水路に加熱された水を流して、循環水路内に生息する菌やカビを死滅させることができる。そして、死滅した菌やカビ、バイオフィルムなどの汚れを、循環水路から剥離させて、機外へ排出できる。これにより、湿度が高く菌やカビの生息場所となり易い水周りの配管の内表面を清浄にできる。その結果、次回の洗濯時において、衣類への汚れの、再付着を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、洗濯時において、菌やカビ、バイオフィルムなどの被洗浄物への付着を抑制し、洗濯物の清浄な仕上げが要望される洗濯機などに有用である。
【符号の説明】
【0127】
1 筐体
2 水槽
3 ドラム(洗濯槽)
3a 回転軸
4 バッフル
5 小孔
6 開口部
7 モータ
8 給水配管
9 給水弁(給水部)
10 洗剤ケース
11 給水路
12 排水経路
13 排水弁(排水部)
14 排水フィルター
15 排水口
16 循環水路
17 ポンプ
18 吐出口
19 ヒータ(加熱部)
20 水量検知部
21 温度検知部
22 制御部
23 布量検知部
24 回転検知部
25 扉
26 操作表示部
27 撹拌翼
図1
図2
図3
図4
図5
図6