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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】搬送制御システム及び搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/14 20060101AFI20231208BHJP
【FI】
B65G47/14 101C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020166957
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059301
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】599069507
【氏名又は名称】株式会社ダイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】591009705
【氏名又は名称】株式会社 東京ウエルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】神戸 祐二
(72)【発明者】
【氏名】米倉 毅
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-000854(JP,A)
【文献】特開2017-121995(JP,A)
【文献】特開平06-040545(JP,A)
【文献】特開平11-020937(JP,A)
【文献】特開平07-025444(JP,A)
【文献】米国特許第05924546(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/00-47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段(CM)の撮影により搬送物(CA)が搬送される搬送路(121)上の計測エリア(ME)の画像を繰り返し取得する画像取得手段(MPU,DTU,RAM)と、
前記計測エリア(ME)内における前記搬送路(121)上の前記搬送物(CA)の占有領域が一体に連続する範囲、或いは、当該占有領域が所定値未満の間隔で連続する範囲である連続占有範囲(121CT)を検出し、一つの前記搬送物(CA)に相当する単位占有範囲(121U)を基準として、前記連続占有範囲(121CT)の大きさを判定する搬送物占有範囲判別手段(MPU,RAM)と、
前記連続占有範囲(121CT)が前記単位占有範囲(121U)を基準とする不正判定の条件を満たした場合に、前記連続占有範囲(121CT)内に配置される少なくとも一つの前記搬送物(CA)の搬送状態を制御する搬送物制御手段(OP)と、
を具備し、
前記搬送物制御手段(MPU,RAM)は、前記連続占有範囲(121CT)内の搬送方向前方にある部分に前記単位占有範囲(121U)を想定したときの当該単位占有範囲(121U)よりも搬送方向後方にある部分に排除力を与える、
搬送制御システム。
【請求項2】
撮像手段(CM)の撮影により搬送物(CA)が搬送される搬送路(121)上の計測エリア(ME)の画像を繰り返し取得する画像取得手段(MPU,DTU,RAM)と、
前記計測エリア(ME)内における前記搬送路(121)上の前記搬送物(CA)の占有領域が一体に連続する範囲、或いは、当該占有領域が所定値未満の間隔で連続する範囲である連続占有範囲(121CT)を検出し、一つの前記搬送物(CA)に相当する単位占有範囲(121U)を基準として、前記連続占有範囲(121CT)の大きさを判定する搬送物占有範囲判別手段(MPU,RAM)と、
前記連続占有範囲(121CT)が前記単位占有範囲(121U)を基準とする不正判定の条件を満たした場合に、前記連続占有範囲(121CT)内に配置される少なくとも一つの前記搬送物(CA)の搬送状態を制御する搬送物制御手段(OP)と、
を具備し、
前記計測エリア(ME)は、前記搬送路(121)の末端部(121e)に設定される、
搬送制御システム。
【請求項3】
前記画像取得手段(MPU,DTU,RAM)は、前記撮像手段(130CM)により、前記計測エリア(ME)とともに、前記末端部(121e)から前記搬送物(CA)が供給される供給先(20)の受入部(21a)を含む範囲を撮影した画像を取得し、前記画像を処理することにより前記受入部(21a)における前記搬送物(CA)の受入れの可否を検出する搬送物受入可否検出手段(MPU,RAM)をさらに具備する、
請求項2に記載の搬送制御システム。
【請求項4】
前記搬送物占有範囲判別手段(MPU,RAM)は、2以上の前記搬送物(CA)が前記搬送路(121)上で他の方位よりも重なり易い特定の方向に見たときの占有範囲を判定する、
請求項1-3のいずれか一項に記載の搬送制御システム。
【請求項5】
前記画像取得手段(MPU,DTU,RAM)の撮影方向が前記特定の方向である、
請求項4に記載の搬送制御システム。
【請求項6】
前記搬送物占有範囲判別手段(MPU,RAM)は、不正判定の条件を満たす前記連続占有範囲(121CT)が必ず占有するように設定された、搬送方向(F)に固定された検出領域(Ls)を前記計測エリア(ME)内に備える、
請求項1-5のいずれか一項に記載の搬送制御システム。
【請求項7】
前記画像取得手段(MPU,DTU,RAM)は、前記撮像手段(130CM)により既定の撮影間隔(Ts)で連続して撮影するとともに、
前記計測エリア(ME)は、前記搬送物(CA)の搬送速度(Vs)と撮影間隔(Ts)との関係により前記搬送路(121)を通過する全ての前記搬送物(CA)が常に含まれるように予め設定された範囲を有する、
請求項1-6のいずれか一項に記載の搬送制御システム。
【請求項8】
不正判定の条件を満たす前記連続占有範囲(121CT)が必ず占有する、前記搬送方向(F)に固定された検出領域(Ls)が、前記計測エリア(ME)内に設けられ、
全ての前記不正判定の条件を満たす前記連続占有範囲(121CT)が前記検出領域(Ls)を占有する際に必ず撮像されるように、前記搬送速度(Vs)に応じた前記撮影間隔(Ts)が設定される、
請求項7に記載の搬送制御システム。
【請求項9】
撮像手段(CM)の撮影により搬送物(CA)が搬送される搬送路(121)上の計測エリア(ME)の画像を繰り返し取得する画像取得手段(MPU,DTU,RAM)と、
前記計測エリア(ME)内における前記搬送路(121)上の前記搬送物(CA)の占有領域が一体に連続する範囲、或いは、当該占有領域が所定値未満の間隔で連続する範囲である連続占有範囲(121CT)を検出し、一つの前記搬送物(CA)に相当する単位占有範囲(121U)を基準として、前記連続占有範囲(121CT)の大きさを判定する搬送物占有範囲判別手段(MPU,RAM)と、
前記連続占有範囲(121CT)が前記単位占有範囲(121U)を基準とする不正判定の条件を満たした場合に、前記連続占有範囲(121CT)内に配置される少なくとも一つの前記搬送物(CA)の搬送状態を制御する搬送物制御手段(OP)と、
を具備し、
前記計測エリア(ME)内において前記搬送路(121)の搬送面(121a、121b)に形成された透光領域(121c)と、
前記透光領域(121c)を通して前記搬送面(121a,121b)の背面側より前記撮像手段(130CM)の側に向けた光を照射する背面側照明手段(140BL)と、
をさらに具備し、
前記搬送物占有範囲判別手段(MPU,RAM)は、前記計測エリア(ME)内の画像データに対して、前記透光領域(121c)の前記搬送物(CA)による遮光部分若しくは非遮光部分の範囲を示す情報を用いることによって、前記計測エリア(ME)内における前記連続占有範囲(121CT)の大きさを検出し
前記透光領域(121c)は、前記搬送物(CA)の長さよりも搬送方向(F)に延長された形状のスリット状に構成される、
搬送制御システム。
【請求項10】
前記透光領域(121c)は、前記計測エリア(ME)内に配列された複数の透光領域部(121g-121i)の群からなる、
請求項9に記載の搬送制御システム。
【請求項11】
撮像手段(CM)の撮影により搬送物(CA)が搬送される搬送路(121)上の計測エリア(ME)の画像を繰り返し取得する画像取得手段(MPU,DTU,RAM)と、
前記計測エリア(ME)内における前記搬送路(121)上の前記搬送物(CA)の占有領域が一体に連続する範囲、或いは、当該占有領域が所定値未満の間隔で連続する範囲である連続占有範囲(121CT)を検出し、一つの前記搬送物(CA)に相当する単位占有範囲(121U)を基準として、前記連続占有範囲(121CT)の大きさを判定する搬送物占有範囲判別手段(MPU,RAM)と、
前記連続占有範囲(121CT)が前記単位占有範囲(121U)を基準とする不正判定の条件を満たした場合に、前記連続占有範囲(121CT)内に配置される少なくとも一つの前記搬送物(CA)の搬送状態を制御する搬送物制御手段(OP)と、
を具備し、
前記計測エリア(ME)内において前記搬送路(121)の搬送面(121a、121b)に形成された透光領域(121c)と、
前記透光領域(121c)を通して前記搬送面(121a,121b)の背面側より前記撮像手段(130CM)の側に向けた光を照射する背面側照明手段(140BL)と、
をさらに具備し、
前記搬送物占有範囲判別手段(MPU,RAM)は、前記計測エリア(ME)内の画像データに対して、前記透光領域(121c)の前記搬送物(CA)による遮光部分若しくは非遮光部分の範囲を示す情報を用いることによって、前記計測エリア(ME)内における前記連続占有範囲(121CT)の大きさを検出し
前記透光領域(121c)は、前記計測エリア(ME)内に配列された複数の透光領域部(121g-121i)の群からなる、
搬送制御システム。
【請求項12】
前記透光領域(121c)の複数の前記透光領域部(121g-121i)は、前記単位占有範囲の搬送方向の長さ範囲内に包含されるように形成された第1の透光領域部(121h)及び第2の透光領域部(121i)と、前記単位占有範囲(121U)が前記第1の透光領域部(121h)及び前記第2の透光領域部(121i)を遮光したときに遮光されない部分を備える第3の透光領域部(121g)と、を備える、
請求項10又は11に記載の搬送制御システム。
【請求項13】
前記搬送路(121)は前記搬送物(CA)の搬送方向(F)に沿った方向に往復する態様で振動することによって前記搬送物(CA)を搬送するものであり、
前記撮像手段(130CM)は静止し、
撮影時における前記搬送路(121)の振動による前記撮像手段(CM)による撮影画像(GPX)内の前記搬送路(121)に対する位置変動をなくすように前記撮影画像(GPX)内の前記計測エリア(ME)の位置を補正する、
請求項1-12のいずれか一項に記載の搬送制御システム。
【請求項14】
前記搬送物占有範囲判別手段(MPU,RAM)は、前記撮影画像(GPX)内に撮像された前記搬送路(121)上の特定箇所(121y)の位置を画像計測処理により検出し、当該位置に応じて、前記計測エリア(ME)の位置を補正する、
請求項13に記載の搬送制御システム。
【請求項15】
前記搬送路(121)を備えた搬送機構(12,CL12)と、請求項1-14のいずれか一項に記載の搬送制御システム(CM1,CM2,DTU,DP1、DP2,SP1,SP2)と、
を具備する搬送装置。
【請求項16】
前記搬送機構(12,CL12)は、前記搬送路(121)を振動させる加振手段(125)と、前記加振手段(125)の駆動態様を制御する加振制御手段(CL12)と、を有する、
請求項15に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送制御システム及び搬送装置に係り、特に、振動式搬送装置において用いられる場合にとりわけ好適であり、搬送路上を移動する搬送物を種々の供給先に供給する場合に特に効果的な搬送制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、表面実装型電子部品などの微細な搬送物を搬送する搬送装置では、ボウル型パーツフィーダと呼ばれる螺旋状の搬送路を備える回転振動搬送機によって微細な搬送物をトラックに沿って上昇させ、やがてリニア型パーツフィーダと呼ばれる直線状の搬送路を備える直線振動搬送機によって搬送物の姿勢を揃えながら、供給先である部品検査装置、部品実装装置、移載ロボットなどに供給するように構成される。
【0003】
上記のような搬送装置では、近年、搬送物が微細化され、砂粒ほどの電子部品を大量に供給することが要求されるようになってきている。また、このような微細な電子部品の中には、数十ミクロン程度の極めて薄いものがあり、このような薄い搬送物を大量に搬送しようとすると、搬送物同士が重なり易いため、整列されにくいことから、効率的に搬送することが難しいという問題がある。従前の比較的大きな薄形の搬送物に対応した搬送システムとしては、以下の特許文献1及び2に示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-113350号公報
【文献】特開2001-158524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の特許文献1や2に記載された装置では、搬送物が比較的大きく、薄さも近年の搬送物よりも厚いため、機械的な重なり防止手段を用いたり、噴気口の位置や形状を搬送物の厚みに整合させることで対応していた。しかし、近年の上記搬送物のように微細化されたものでは、機械的な処理では対応が困難であるために搬送物に詰まりが発生したり、搬送物の重なり状態をセンサによって検知することが困難になったりするという問題がある。
【0006】
また、従来においては、供給先に向けて搬送物を送り出す末端部において搬送路上にカバーを設けることにより、搬送物の形状に合わせた通過断面を備えた暗渠構造を形成し、搬送物が重なり合ったり、異姿勢の搬送物が供給されないようにする場合がある。しかし、このような場合においても、搬送物が微細化するとともに薄型化することによって暗渠構造に搬送物が詰まりやすくなり、安定した搬送状態の維持が難しいという問題がある。
【0007】
前述の問題は、特に、振動式搬送装置の場合には、搬送物が振動によって搬送路上を上下動しながら移動していくことから、搬送路上での搬送物の詰まりの防止や重なりの検出が極めて難しいという実情がある。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、搬送物の詰まりなどの搬送不良や前後の搬送物の重なり状態の検出不良を回避することのできる搬送制御システム及びこれを用いた搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
斯かる実情に鑑み、本発明に係る搬送制御システムは、撮像手段(130CM)の撮影により搬送物(CA)が搬送される搬送路(121)上の計測エリア(ME)の画像を繰り返し取得する画像取得手段(MPU,DTU,RAM)と、前記計測エリア(ME)内における前記搬送路(121)上の前記搬送物(CA)の占有領域が一体に連続する範囲、或いは、当該占有領域が所定値未満の間隔で連続する範囲である連続占有範囲(121CT)を検出し、一つの前記搬送物(CA)に相当する単位占有範囲(121U)を基準として、前記連続占有範囲(121CT)の大きさを判定する搬送物占有範囲判別手段(MPU,RAM)と、前記連続占有範囲(121CT)が前記単位占有範囲(121U)を基準とする不正判定の条件を満たした場合に、前記連続占有範囲(121CT)内に配置される少なくとも一つの前記搬送物(CA)の搬送状態を制御する搬送物制御手段(OP)と、を具備する。
【0010】
本発明によれば、搬送路上の搬送物による連続占有範囲の大きさを単位占有範囲を基準として判定し、例えば、連続占有範囲の大きさが単位占有範囲を越える場合には、搬送路上において2以上の搬送物が相互に重なり合っている可能性が高く、また、連続占有範囲内に、相互の間隔が所定値未満である複数の占有領域が含まれ、その全体の大きさが単位占有範囲を越える場合には、その後に前後の搬送物が重なり合う蓋然性が高いこととなる。このため、上記の搬送物の重なり状態の可能性が高い場合や重なり合う蓋然性が高い場合には、その連続占有範囲内に配置される少なくとも一つの搬送物を制御することによって、重なり合った搬送物或いは重なり合う蓋然性の高い搬送物を搬送路上から除去することが可能になる。また、搬送物占有範囲判別手段は、搬送路上の搬送物の連続占有範囲の大きさを単位占有範囲を基準として判定すればよいので、従来技術のように搬送物同士の重なり合いそのものを検出する必要がないことから、微細な搬送物であっても薄い搬送物であっても容易かつ確実に搬送物の重なり合いの可能性や蓋然性を判別できる。特に、振動式搬送装置であれば搬送路上で搬送物が上下動しながら搬送されていくが、搬送路上の搬送物による占有範囲そのものは上記上下動には影響されにくいため、搬送物の振動による検出精度の低下を回避できる。
【0011】
本発明において、前記搬送物占有範囲判別手段(MPU,RAM)は、2以上の前記搬送物(CA)が前記搬送路(121)上で他の方位よりも重なり易い特定の方向に見たときの占有範囲を判定することが好ましい。これによれば、搬送物の搬送路上での重なりをより容易かつ確実に検出できる。この場合に、前記画像取得手段(MPU,DTU,RAM)の撮影方向が前記特定の方向であることが望ましい。これによれば、占有範囲の判定のための画像処理が容易になるとともに、判別精度を向上することができる。上記特定の方位とは、例えば、搬送路の搬送面上において搬送物の縦、横、高さのうちの高さ寸法が最も小さな値を備える場合の高さ方向を言う場合がある。
【0012】
本発明において、前記搬送物制御手段(MPU,RAM)は、前記連続占有範囲(121CT)内の搬送方向前方にある部分に前記単位占有範囲(121U)を想定したときの当該単位占有範囲(121U)よりも搬送方向後方にある部分に排除力を与えることが好ましい。これによれば、重なった搬送物若しくは相互に近接した搬送物のうちの前方部分にある搬送物をそのままとし、後方部分にある搬送物に排除力を与えることによって、搬送の向きを利用して相互に重なった搬送物同士を離反させやすくなるため、重なり状態の解消を容易かつ確実に実行できる。
【0013】
本発明において、前記計測エリア(ME)は、前記搬送路(121)の末端部(121e)に設定されることが好ましい。これによれば、搬送物の重なり状態や近接状態が搬送路の最下流にある末端部で検出され、解消されることから、搬送物の供給先への整列状態を確保できるとともに、供給先への移載箇所における詰まりを防止できる。この場合において、前記画像取得手段(MPU,DTU,RAM)は、前記撮像手段(130CM)により、前記計測エリア(ME)とともに、前記末端部(121e)から前記搬送物(CA)が供給される供給先(20)の受入部(21a)を含む範囲を撮影した画像を取得し、前記画像を処理することにより前記受入部(21a)における前記搬送物(CA)の受入れの可否を検出する搬送物受入可否検出手段(MPU,RAM)をさらに具備することが好ましい。これによれば、末端部を含む画像から供給先の受入部における搬送物の受入れの可否を検出することができるので、別途の撮像手段を用いることなしに、供給先の制御や供給先に対する供給停止等の対応を行うことができる。
【0014】
本発明において、前記搬送物占有範囲判別手段(MPU,RAM)は、不正判定の条件を満たす前記連続占有範囲(121CT)が必ず占有するように設定された、搬送方向(F)に固定された検出領域(Ls)を前記計測エリア(ME)内に備えることが好ましい。これによれば、搬送物占有範囲判別手段が、計測エリア内において搬送方向に固定された検出領域を連続占有範囲が占有(すべて包含)するときに不正判定を行うことにより、不正判定を行う際の計測エリア内の検出位置が搬送方向に固定されるため、搬送物が常に略一定の位置に到達している時点を判定タイミングとすることができるから、搬送物の制御タイミング等の管理が容易化される。
【0015】
本発明において、前記画像取得手段(MPU,DTU,RAM)は、前記撮像手段(130CM)により既定の撮影間隔(Ts)で連続して撮影するとともに、前記計測エリア(ME)は、前記搬送物(CA)の搬送速度(Vs)と撮影間隔(Ts)との関係により前記搬送路(121)を通過する全ての前記搬送物(CA)が常に含まれるように予め設定された範囲を有することが好ましい。これによれば、搬送物の到来タイミングが撮影タイミングとは一致していない場合であっても、全ての搬送物がいずれかの画像の計測エリア内に必ず配置されるため、設定エリア内の各画像を処理して搬送物を検出すれば、全ての搬送物の検出が可能である。このようにすると、従来技術のように個々の搬送物の位置を検知するためのトリガ信号を生成する必要がなくなるため、搬送物を検知するセンサが不要になり、検出ユニットを簡易に構成できる。したがって、搬送物が繋がって搬送されてくる場合などにおいて個々の搬送物の検知漏れを考慮する必要がないために事前に搬送物間に間隙を形成する必要がなくなるなどの理由により、搬送物の高速搬送や高密度搬送が容易になるとともに検出システムの全体構成を簡易に構成することができる。また、連続して撮影される複数の撮影画像のうちの予め設定された計測エリア内の画像データのみを処理すれば足りるので、前記搬送物を判定するための画像計測処理を高速かつ高精度に行うことができる。なお、この構成は、上記条件を満たす限り、一般的な動画撮影によって行われても構わない。
【0016】
上記の場合において、前記計測エリア(ME)の前記搬送路(121)に沿った搬送方向(F)の長さLDは、前記搬送物の1個分の前記搬送方向(F)の長さをL、前記撮影周期をTs、前記搬送速度をVsとすれば、n=1-10の自然数としたとき、β=Ts・Vsのとき、
LD≧L+n・β=L+n・Ts・Vs
が成立する値を有することが好ましい。これによれば、全ての搬送物がいずれかの画像データにおいて常に搬送方向の領域内に配置された状態で連続占有範囲が検出され、単位占有範囲を越えるか否かが判定されるため、どのような搬送物であっても確実に判定することができる。ここで、nは3-7の範囲内であることがさらに望ましい。
【0017】
この場合においてはさらに、不正判定の条件を満たす前記連続占有範囲(121CT)が必ず占有する、前記搬送方向(F)に固定された検出領域(Ls)が、前記計測エリア(ME)内に設けられている場合には、全ての前記不正判定の条件を満たす前記連続占有範囲(121CT)が前記検出領域(Ls)を占有する際に必ず撮像されるように、前記搬送速度(Vs)に応じた前記撮影間隔(Ts)が設定されることが好ましい。具体的には、上記検出領域において搬送方向(F)の長さ(Lct)の前記連続占有範囲(121CT)が同長さ(L)の前記単位占有範囲を基準として不正判定とされる場合には、検出領域の同長さ(Ls)を用いて、当該連続占有範囲(121CT)の搬送方向(F)の長さがLct=Ls+ΔLt(ΔLt>0)であるとすると、ΔLt≧β=Ts・Vsが成立すれば、必ず、上記連続占有範囲が上記領域内に配置される画像が取得できるので、全ての搬送物による連続占有範囲がいずれかの撮影画像により検出できる。
【0018】
本発明において、前記計測エリア(ME)内において前記搬送路(121)の搬送面(121a、121b)に形成された透光領域(121c)と、前記透光領域(121c)を通して前記搬送面(121a,121b)の背面側より前記撮像手段(130CM)の側に向けた光を照射する背面側照明手段(140BL)と、をさらに具備し、前記搬送物占有範囲判別手段(MPU,RAM)は、前記計測エリア(ME)内の画像データに対して、前記透光領域(121c)の前記搬送物(CA)による遮光部分若しくは非遮光部分(透光部分)の範囲を示す情報を用いることによって、前記計測エリア(ME)内における前記連続占有範囲(121CT)の大きさを検出することが好ましい。これによれば、画像取得手段により取得した計測エリアの画像データにおいて、背面側照明手段によって撮像手段の側に光を照射する透光領域を通して、透光領域の搬送物による遮光部分若しくは非遮光部分の範囲を示す情報を抽出し、この情報を用いて、前記計測エリア内における前記連続占有範囲の大きさを検出することにより、上記画像の処理を容易化及び確実化できるため、搬送物の占有範囲の判別処理の迅速化及び高精度化を図ることができる。すなわち、単位占有範囲以下の大きさを備える連続占有範囲は検出領域の全体を占有せず、不正判定の条件を満たす連続占有範囲は検出領域の全体を占有するので、連続占有範囲が検出領域全体を占有する大きさか否かによって判定が行われる。
【0019】
この場合において、前記透光領域(121c)は、前記搬送路(121)上における前記搬送物(CA)の幅よりも幅狭に構成されることが好ましい。この発明によれば、画像取得手段により取得した計測エリアの画像データにおいて、背面側照明手段によって撮像手段の側に光を透過させる透光領域が、搬送物の幅よりも幅狭に限定されることにより、背面側照明の光量が抑制されるため、撮像手段によって撮像される画像情報から搬送物の表面態様をより良好に抽出可能に構成し得るようになる。なお、搬送路上の搬送物の姿勢により上記の搬送物の幅が変動する場合には、上記の透光領域は、最も大きな幅よりも幅狭に形成されていればよい。ただし、上記の透光領域は、搬送路上で搬送物がとり得る姿勢に対応する全ての幅よりも幅狭に構成されていることがより望ましい。
【0020】
本発明において、前記透光領域(121c)は、前記搬送物(CA)の長さよりも搬送方向に延長された形状のスリット状に構成される場合がある。この場合には、搬送方向に延長されたスリット形状の透光領域の一部を搬送物が遮ることによって、透光領域の搬送物による遮光部分若しくは非遮光部分の範囲に基づいて、搬送物の位置範囲をさらに容易かつ確実に特定することが可能になる。この場合において、前記透光領域(121c)は、前記計測エリア(ME)の前記搬送方向の全範囲にわたって形成されることが好ましい。これによれば、計測エリアの搬送方向のいずれの箇所においても遮光部分若しくは非遮光部分を把握することができるため、搬送物の有無や位置範囲をさらに特定しやすくなる。
【0021】
さらに、前記透光領域(121c)は、前記計測エリア(ME)内に配列された複数の透光領域部(121g-121i)の群からなる場合もある。この場合には、複数の透光領域部のうちのいずれが搬送物によって遮光されるかをみることで、前記搬送物(CA)の位置範囲を容易かつ確実に特定することが可能になる。特に、上記透光領域部は、前記搬送方向に配列されていることが好ましく、また、幅方向に配列されていてもよく、双方向に配列されていてもよい。この場合において、前記透光領域部は、前記計測エリア(ME)の前記搬送方向の全範囲にわたって配列されていることが好ましい。これによれば、計測エリアの搬送方向のいずれの箇所においても遮光部分若しくは非遮光部分を把握することができるため、搬送物の有無や位置範囲をさらに特定しやすくなる。これらの場合において、前記透光領域部(121f-121i)は、前記搬送物(CA)の長さよりも搬送方向に短いことが望ましい。搬送物よりも小さな複数の透光領域部が搬送方向に配列されていることにより、透光領域がさらに限定されるので、撮像手段によって撮像される表面の画像情報をさらに容易に抽出可能に構成し得る。
【0022】
この場合において、前記透光領域(121c)の複数の前記透光領域部(21f、121g-121i)は、前記単位占有範囲の搬送方向の長さ範囲内に包含されるように形成された第1の前記透光領域部(121h)及び第2の前記透光領域部(121i)と、前記単位占有範囲(121U)が前記第1の透光領域部(121h)及び前記第2の透光領域部(121i)を遮光したときに遮光されない部分を備える第3の前記透光領域部(121g)と、を備えることが好ましい。これにより、第1の透光領域部と第2の透光領域部が共に遮光されたときに第3の透光領域部の上記遮光されない部分(或いはそのうちの少なくとも一部)が遮光されているか否かによって、連続占有範囲が単位占有範囲を越えるか否かを判定することができる。このとき、第3の透光領域部の非遮光部分(或いはそのうちの少なくとも一部)の大きさや当該非遮光部分の検出精度により、連続占有範囲の単位占有範囲を越えたか否かの判別精度を定めることができる。
【0023】
本発明において、前記搬送路(121)は前記搬送物(CA)の搬送方向(F)に沿った方向に往復する態様で振動することによって前記搬送物(CA)を搬送するものであり、前記撮像手段(130CM)が静止している場合には、撮影時における前記搬送路(121)の振動による前記撮影画像(GPX)内の前記搬送路(121)に対する位置変動をなくすように前記撮影画像(GPX)内の前記計測エリア(ME)の位置を補正することが好ましい。これによれば、搬送体の振動による撮影画像の画像処理領域における搬送路に対する位置ずれを解消することができるため、当該位置ずれによる画像処理位置のずれが防止され、搬送路上の一定位置で搬送物占有範囲判別処理を実施することができる。したがって、上記位置ずれによる搬送物の制御不正などを回避でき、搬送物の制御を確実で正確な態様で実施できる。
【0024】
この場合において、前記搬送物占有範囲判別手段(MPU,RAM)は、前記撮影画像(GPX,GPY)内に撮像された前記搬送路(121)上の特定箇所(121y)の位置を前記画像計測処理により検出し、当該位置に応じて、前記計測エリア(ME)の位置を補正することが望ましい。搬送路の振動による各エリアの搬送路に対する位置ずれ量を、予め設定された搬送路の振動幅及び振動周期の値を用いて撮影時ごとに算出し、当該位置ずれ量に応じて撮影画像内の計測エリアの位置を補正してもよいが、撮影画像内の搬送路上の特定箇所の位置を画像処理により検出することで、撮影画像内に表れた実際の搬送体の振動態様に対応した補正を行うことができるため、各エリアの位置を確実かつ高精度に設定することができる。搬送路上の特定箇所としては、画像内に撮影される種々の部分(搬送路上に表示された位置表示マーク)を用いることができる。
【0025】
次に、本発明に係る搬送装置は、前記搬送路(121)を備えた搬送機構(12,CL12)と、上記搬送制御システム(CM1,CM2,DTU,DP1、DP2,SP1,SP2)とを具備することを特徴とする。
【0026】
本発明において、前記搬送機構(12,CL12)は、前記搬送路(121)を振動させる加振手段(125)と、前記加振手段(125)の駆動態様を制御する加振制御手段(CL12)と、を有することが好ましい。加振制御手段の制御の対象となる駆動態様としては、加振手段の駆動の停止、加振手段の駆動周波数や駆動電圧の変更などが挙げられる。これにより、搬送物の搬送態様(搬送速度、搬送姿勢の安定性など)を調整することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、搬送物の撮影画像を処理することにより搬送物による連続占有範囲の大きさを単位占有範囲を基準として判別することにより、搬送物の詰まりなどの搬送不良や前後の搬送物の重なり状態の検出不良を回避することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る搬送制御システムを備えた搬送装置(振動式搬送装置)の実施形態の平面図である。
図2】同実施形態の正面図である。
図3】同実施形態の斜視図である。
図4】同実施形態の搬送路の末端部及びその周囲近傍を示す拡大斜視図(a)及び搬送路の末端部をさらに拡大して示す拡大斜視図(b)である。
図5】同実施形態の搬送路の末端部の側面図(a)及び当該側面図(a)内の領域Bを拡大して示す拡大側面図(b)である。
図6】同実施形態の搬送路の末端部、及び、供給先の検査装置のインデックステーブルの受入部の構造を示す平面図(a)、並びに、搬送路の末端部、及び、供給先の検査装置のインデックステーブルの受入部の構造を示す縦断面図(b)である。
図7】同実施形態の搬送路の末端部、及び、供給先の検査装置のインデックステーブルの受入部における個別の搬送物に対応する際の第1実施例の様子を示す説明図(a)及び重なり状態の搬送物に対応する際の第1実施例の様子を示す説明図(b)である。
図8】同実施形態の搬送路の末端部、及び、供給先の検査装置のインデックステーブルの受入部における個別の搬送物に対応する際の第2実施例の様子を示す説明図(a)及び重なり状態の搬送物に対応する際の第2実施例の様子を示す説明図(b)である。
図9】同実施形態の搬送路の末端部、及び、供給先の検査装置のインデックステーブルの受入部における重なった搬送物の搬送状態と処理態様を示す説明図(a)-(e)である。
図10】同実施形態の全体構成を示す概略構成ブロック図である。
図11】同実施形態の動作プログラムの全体の概略の制御手順を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、添付図面を参照して本発明に係る搬送制御システム及び搬送装置の実施形態について詳細に説明する。最初に、図10を参照して、本発明に係る搬送装置の実施形態の基本構成について説明する。図10は、搬送装置10の駆動制御系と、搬送装置10の搬送制御システムの構成とを模式的に示す概略構成図である。
【0030】
搬送装置10は、搬送機構として、螺旋状の搬送路111を有するボウル型の搬送体110を備えたパーツフィーダ11と、このパーツフィーダ11の上記搬送路111の出口から搬送物を受け取るように構成された入口を備えた直線状の搬送路121を有する搬送体120を備えたリニアフィーダ12とを具備する振動式搬送装置である。本実施形態の搬送制御システムでは、リニアフィーダ12の搬送体120の搬送路121上の搬送物CAを撮影画像GPXに基づいて検出し、その検出された画像部分を対象として、検査、判定する。ここで、本実施形態の搬送制御システムは、本発明に係る構成を備える搬送制御システムの対応部分だけでなく、当該対応部分以外に、搬送物の姿勢を判別して整列させるためなどの種々の検査部、判別部、選別部、反転部などを含み得る。なお、本発明において、振動式搬送装置に限られない構成については、搬送物CAが搬送路に沿って搬送される各種の搬送装置に用いることができる。また、振動式搬送装置であっても、上記パーツフィーダ11とリニアフィーダ12の組み合せに限定されるものではなく、循環式パーツフィーダなどの他の形式の搬送装置に用いることが可能である。さらに、上記の組み合せにあっても、リニアフィーダ12の搬送路121上の搬送物CAを検査、判別、選別、反転等するものに限らず、パーツフィーダ11の搬送路111上の搬送物CAを検査等するものであっても構わない。
【0031】
パーツフィーダ11はコントローラCL11によって駆動、制御される。また、リニアフィーダ12はコントローラCL12によって駆動、制御される。これらのコントローラCL11、CL12はパーツフィーダ11やリニアフィーダ12の加振手段(電磁駆動体や圧電駆動体などを含む。)を交流駆動し、搬送体110,120を搬送路111,121上の搬送物CAが所定の搬送方向Fに移動する態様となるように振動させる。また、コントローラCL11、CL12は、搬送制御システムの主体となる画像処理機能を有する検査処理ユニットDTUに入出力回路(I/O)を介して接続されている。
【0032】
また、コントローラCL11,CL12は、下記の動作プログラムを実行する後述する演算処理装置MPUに対して、マウスなどの後述する操作入力装置SP1,SP2などを介して所定の操作入力(デバッグ操作)が行われると、上記の動作プログラムに従って搬送装置10の駆動を停止する。このとき、上記の動作プログラムに従って、例えば、検査処理ユニットDTUにおける画像計測処理も停止される。このデバッグ操作及び当該操作に応じた各所の動作については後に詳述する。
【0033】
検査処理ユニットDTUは、パーソナルコンピュータ等の演算処理装置MPU(マイクロプロセシングユニット)を中核構成とし、図示例では、上記演算処理装置MPUは、中央処理ユニットCPU1,CPU2、キャッシュメモリCCM、メモリコントローラMCL、チップセットCHSなどから構成される。また、この検査処理ユニットDTUには、撮像手段CMであるカメラCM1,CM2にそれぞれ接続された画像処理を行うための画像処理回路GP1,GP2が設けられている。これらの画像処理回路GP1,GP2はそれぞれ画像処理メモリGM1,GM2に接続されている。画像処理回路GP1,GP2の出力は上記演算処理装置MPUにも接続され、カメラCM1,CM2から取り込んだ撮影画像GPXの画像データを処理し、適宜の処理画像(例えば後述する画像エリアGPY内の画像データ)を演算処理装置MPUに転送する。主記憶装置MMには予め搬送制御システムの動作プログラムが格納されている。検査処理ユニットDTUが起動されると、演算処理装置MPUにより上記動作プログラムが読み出されて実行される。また、この主記憶装置MMには、演算処理装置MPUにより、後述する画像計測処理を実行した対象となる撮影画像GPX若しくは画像エリアGPYの画像データが保存される。
【0034】
また、検査処理ユニットDTUは、入出力回路(I/O)を介して液晶モニタ等の表示装置DP1,DP2や操作入力装置SP1,SP2に接続される。表示装置DP1,DP2は、上記演算処理装置MPUによって処理された撮影画像GPX若しくは画像エリアGPYの画像データ、画像計測処理の結果、すなわち、後述する搬送物占有範囲判別処理の他に、各場所における搬送物検出処理や搬送物判別処理の結果などが、所定の表示態様で表示される。なお、この表示機能は、実際に搬送物が搬送されている場合に限らず、後述するように、過去のデータを読みだして再生している場合にも機能する。また、表示装置DP1,DP2の画面を見ながら操作入力装置SP1,SP2を操作することにより、各種の操作指令、設定値などの処理条件を上記演算処理装置MPUに入力することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、図10に模式的に示すように、二つのカメラCM1,CM2、二つの画像処理回路GP1,GP2、二つの画像処理メモリGM1,GM2、二つの表示装置DP1,DP2,二つの操作入力装置SP1,SP2などを備えるが、これは一例であり、単一の各構成を備えていてもよく、三つ以上の各構成を備えていてもよい。本実施形態においては、上記のカメラCM1,CM2の他に別途追加設置されたものとして、特定のカメラ装置130CMを設けている。以下では、当該カメラ装置130CMによる撮影画像の画像処理による搬送物占有範囲判別処理についてのみ説明する。
【0036】
図1図5は、図10に示す本実施形態の搬送機構の一例を詳細に示す図である。本実施形態では、リニアフィーダ12の搬送路121の末端部121eが、搬送物CAの供給先である検査装置20の支持部20aに支持された状態で、ステップ回転可能に構成されたインデックステーブル21の一部によって構成される受入部21aに搬送物CAを供給するように構成される。インデックステーブル21は、図4に示すように、その外周に沿って配列された複数の収容部21dを備えている。複数の収容部21dは、それぞれが単一の搬送物CAを収容可能となるように凹状に構成される。各収容部21dは、上記搬送路121の末端部121eの端部に対応する位置に配置されたとき、検査装置20における搬送物CAの受入部21aを構成する。なお、図示を省略するが、各収容部21dには、搬送物CAを吸引して収納保持する真空吸引経路が設けられる。また、検査装置20では、上記受入部21aに対して末端部121eから搬送物CAが供給されると、インデックステーブル21が回動して次の収容部21dが受入部21aとなるべき位置に移動し、次の搬送物CAを待つように動作するといったステップ動作を繰り返す。なお、供給先の一例である検査装置20は、受入部21aに関係する部分を除いて図示を省略している。供給先としては、検査装置20の他に、基板実装装置、他の箇所へ移載するためのピックアンドプレースユニットなどの種々の装置を想定することができる。
【0037】
本実施形態の搬送機構では、防振台等よりなる基台上に固定された支持台131と、この支持台131に固定された支持アーム132と、この支持アーム132によって支持されるカメラ取付部133とを有し、このカメラ取付部133にカメラ装置130CMが撮影の向きを下方へ向けた姿勢で取り付けられている。このカメラ装置130CMは、その下方に配置された、上記搬送路121の末端部121eと、検査装置20の受入部21aとを同時に撮影可能な撮影範囲を備える。カメラ装置130CMは、搬送機構の振動の影響を直接的に受けることがないように防振台等を介して固定される。一方、末端部121e及び受入部21aの下方位置には、図2に示すように、防振台等よりなる基台上に固定された支持台141と、この支持台141に固定された支持アーム142と、この支持アーム142によって支持される照明取付部143とを有しこの照明取付部143に背面側照明装置140BLが取り付けられている。この背面側照明装置140BLは、上記搬送路121の末端部121eと、検査装置20の受入部21aとを同時に照明可能な照明範囲を備える。背面側照明装置140BLも、搬送機構の振動の影響を直接的に受けることがないように防振台等を介して固定される。なお、カメラ装置130CMと背面側照明装置140BLの配置は特に限定されるものではなく、例えば、これらを上下逆に設置しても構わない。
【0038】
図4は、上記搬送路121の末端部121eと、検査装置20の受入部21aとからなる搬送物CAの受け渡し領域を示す拡大斜視図(a)及びそのさらに拡大した部分を示す斜視図(b)である。また、図5は、供給先の側からリニアフィーダ12の末端部121eを見た様子を示す側面図(a)及びその中心領域Bを拡大した拡大側面図(b)である。搬送路121の末端部121eは、搬送面121bを構成する下面ブロック121Xと、搬送面121aを構成する側面ブロック121Yとによって構成される。この場合、搬送路121の末端部121eに多くの場合に取付られるカバーブロックは存在せず、このため、末端部121eに暗渠構造が構成されていない。これは、搬送路121を暗渠構造にすると、微細な搬送物や薄形の搬送物の場合には、末端部に搬送物CAの詰まりが発生しやすく、特に、本実施形態のような振動式搬送機構の場合には、常時詰まりが発生するからである。このカバーブロック並びに暗渠構造が存在しない点は、末端部121eの撮像を行ったり背面照明を行ったりする場合には好都合である。
【0039】
搬送路121は、急峻な傾斜角度を有する搬送面121aと、この搬送面121aとほぼ直交し、緩やかな傾斜角度を有する搬送面121bとを備える。搬送物CAは、図4(b)及び図5(b)に示すように、微細で薄形に構成される。このような搬送物CA(CA0,CA1,CA2)の例としては、例えば、表面実装型の電子部品が挙げられる。寸法としては、厚みtが60μm程度、長さLが1.0mm程度、幅Wが0.5mm程度のものが例示される。このような薄形の搬送物CAは、厚み方向を図示上下方向に沿うようにし、搬送面121b上に底面を向けた姿勢で搬送される。図示例では、搬送面121bの幅は、搬送物CAの幅Wより僅かに小さく、また、搬送面121bの搬送面121aとは反対側の縁部は、隙間Gに臨むように構成される。搬送面121bの縁部は、隙間Gを介して、搬送方向とは逆に搬送物CAを搬送し、搬送路111や121の上流部に戻す回収路122を構成する回収ブロック122Xの縁部(受面部122a)と対向配置される。搬送路121を構成する下面ブロック121X及び側面ブロック121Yと、回収路122を構成する回収ブロック122Xとは、振動の向きや位相が異なることから、相互に離間していなければならないため、上記隙間Gが設けられる。ただし、本実施形態では、この隙間Gが上記背面側照明装置140BLの照明光BLaを上記カメラ装置130CMに透過させる透光領域121cを構成する複数の透光領域部のうちの一つの透光領域部121gを構成している。また、搬送路121の搬送面121bは、図5(b)に示すように、水平面に対して僅かな角度αで、搬送面121aの側に傾斜し、これによって、搬送物CAが搬送路121内に保持されるようにしている。なお、上記回収路122には、図4に示すように、上記隙間Gに隣接し、搬送面121bとほぼ同じ高さの受面部122aと、この受面部122aに対して段差部を介して隣接し、回収路122の回収方向に傾斜した周縁部122bと、この周縁部122bのさらに回収方向に隣接し、搬送路121の上流側に並列する部分にまで延在する合流部122cとを備える。合流部122cに集められた搬送物CAは、回収路122によってリニアフィーダ12の搬送路121の上流部分やパーツフィーダ11に戻される。
【0040】
搬送面121aには、末端部121eにおいて、搬送物CAを上記隙間Gを介して回収路122の受面部122aに向けて排除するための重なり解除用の噴気口OPが形成される。この噴気口OPは、上記側面ブロック121Yを貫通する気流通路と図示しない電磁バルブなどの開閉弁を介して、コンプレッサや圧縮ボンベなどの気流源に接続されている。また、上記噴気口OPよりも供給先に近い末端側には、搬送物CAが供給先に供給されないようにするための供給停止用の噴気口SPが形成される。この噴気口SPも、上記噴気口OPとは別に、気流通路と開閉弁を介して気流源に接続されている。噴気口OP,SPの末端側の開口縁には、搬送物CAの引っ掛かりを防止するための面取や丸め加工が施された変形角部OPa,SPaが設けられる。なお、側面ブロック121Yの末端側の側縁には、切り欠き状の標識部121yが形成される。この標識部121yは、後述するように、カメラ装置130CMによって撮影された画像において、搬送路121の振動による搬送方向Fの位置を検出するための目印である。
【0041】
図6は、末端部121e及び受入部21aを拡大して示す平面図(a)及び縦断面図(b)である。支持部20aは、その内部において回転可能に構成されるインデックステーブル21の上方を覆う上板20a1と、インデックステーブル21の下方に配置される下板20a3とを備える。上板20a1には受入部21aに対応する部分に窓部20a2が形成され、受入部21aが上記カメラ装置130CMの側から撮影可能に構成される。また、下板20a3には透光領域部21fが形成され、上記背面側照明装置140BLの照明光BLaが透光領域部21fを通して上記カメラ装置130CMによって撮影可能となるように構成される。ここで、前述の撮影画像GPX若しくは画像エリアGPYが図6(a)に示す平面図で示される画像となる。
【0042】
リニアフィーダ12の搬送路121の末端部121eでは、搬送面121aと搬送面121bによって搬送路121が構成され、搬送面121bは上記隙間Gを介して回収路122の受面部122aに隣接している。隙間Gは透光領域部121gを構成し、上記透光領域部21fと同様に、背面側照明装置140BLの照明光BLaを透過し、これが上記カメラ装置130CMによって撮影可能となるように構成される。搬送面121bには、末端から上流側へ複数の透光領域部121h、121iが形成される。これらの透光領域部121h、121iも、上記と同様に、背面側照明装置140BLの照明光BLaを透過し、これが上記カメラ装置130CMによって撮影可能となるように構成される。
【0043】
次に、本実施形態における上述の搬送制御システムを用いた搬送装置10における搬送物CAの基本的な搬送物占有範囲判別処理の実施例について説明する。図6(a)の平面図に示される上記画像では、搬送路121(末端部121e)を含む計測エリアMEが設定され、この計測エリアME内において、上記透光領域部21f、121g、121h、121iを含む透光領域121cが設けられる。この計測エリアMEでは、透光領域部21f、121g、121h、121iに対応する画像部分21fy、121gy、121gz、121gv、121hy、121iyを画像処理することにより、末端部121e及び受入部21fにおける搬送物CAの有無(或いは、その占有範囲)を検出することができるようになっている。
【0044】
実施例を構成するための前提として、検査処理ユニットDTUの処理内容、並びに、図6(a)に示す計測エリアMEの設定について説明する。本実施形態では、前述のように取得された画像GPXやGPYに対して、設定エリアME内の画像処理によって搬送物占有範囲判別処理を行う必要があるため、計測エリアME内の画像データにより、搬送路上における搬送物CAの占有状態が検出されなければならない。したがって、搬送路121上を通過する全ての搬送物CAが、上記画像GPX、GPYのいずれかの上記計測エリアME内に撮影されている必要がある。これにより、設定エリアMEは、搬送物CAの搬送速度Vsと撮影間隔Tsに関係する制約として、少なくとも以下の条件を満たしていなければならない。
【0045】
本実施形態では、カメラ装置130CMは、予め設定された既定の撮影周期で連続して撮影を実行し、カメラCM1,CM2の画像と同様に、当該撮影周期ごとに撮影画像GPX若しくは上記画像エリアGPY内の画像データが画像処理装置GP1,GP2を介して上記演算処理装置MPUに転送される。演算処理装置MPUでは、転送された上記画像データのうち、演算処理用メモリRAMを用いて、計測エリアME内の画像データを上述のように処理し、搬送物占有範囲判別処理を行う。ただし、本実施形態では、別途トリガセンサを設けたり、搬送物CAの画像データ中から搬送物CAの所定の形状パターンを所定の領域内でサーチし、当該形状パターンが検出されたときに内部トリガを発生させたりするのではなく、既定の撮影周期を示す外部トリガを導入したり、演算処理装置MPUから一定周期のトリガ信号をカメラ装置130CMに出力したりするなどの方法で、既定の撮影周期で連続して撮影を実行している。このため、搬送路121上を搬送されてくる全ての搬送物CAを漏れなく判定しようとすれば、全ての搬送物CAが、いずれかの撮影画像GPX又は画像エリアGPYにおいて、計測エリアME内に含まれるようにする必要がある。
【0046】
そこで、撮影周期をTs[sec]、搬送物CAの搬送方向Fの長さをL[mm]、搬送物CAの搬送速度をVs[mm/sec]とした場合、全ての搬送物CAの画像が必ずいずれかの画像データの上記計測エリアME内に含まれるようにするためには、計測エリアMEの搬送方向Fの範囲LDを以下の式(1)のように設定する。
LD≧L+β=L+Ts・Vs…(1)
例えば、搬送物CAの搬送方向Fの長さLが0.6[mm]、搬送速度Vsが50[mm/sec]、撮影周期Tsが1[msec]であるとすれば、L=0.6[mm]、β=0.05[mm]であり、L≧0.65[mm]となる。また、撮影周期Tsを0.5[msec]とすれば、L=0.6[mm]、β=0.025とすることで、L≧0.625[mm]となる。
【0047】
実際には、搬送物CAの搬送速度には、個体ごとに、場所により、或いは、経時的に、ばらつきが存在するため、搬送物CAの全体若しくは一部が2回以上、好ましくは3回以上の画像データに撮影されるように設定することが望ましい。一般的には、n(nは自然数)回以上の画像データに撮影されるようにするには、
LD≧L+n・β=L+n・Ts・Vs…(2)
が成立するようにLDを設定する。本実施形態の場合には、nを3-7の範囲になるように設定している。これは、nが小さくなると搬送速度のばらつきによる搬送物CAの撮影漏れが生ずる虞が高くなり、逆にnが大きくなると画像処理の負荷が増大するからである。一般的には、自然数nは1-10の範囲内であることが好ましい。なお、本実施形態では画像処理時間は一般的に150-300μsec程度である。また、撮影間隔Tsは500-840[μsec]程度である。
【0048】
また、本実施形態の場合には、上述のように搬送物CAが計測エリアMEに到達することを検知するトリガ信号を用いないので、或る撮影画像GPX又は画像エリアGPYの計測エリアME内に搬送物CAがそもそも全く配置されていない場合も生じ得る。そこで、計測エリアME内の画像計測処理に際しては、搬送物CAの画像が計測エリアME内に含まれているか否かを検出する。そして、この搬送物検出処理で所定の条件で搬送物が検出されたとき、すなわち、搬送物CAの全体が計測エリアME内に含まれているときに、上記搬送物占有範囲判別処理を実施し、そうでなければ、搬送物占有範囲判別処理は実施しないようにしてもよい。ただし、本実施形態では搬送路121の末端部121eで画像計測処理を実施しているため、搬送物CAは高密度で搬送されてくる場合が多いことから、上記のようにしなくても構わない。なお、計測エリアME内において複数回同じ搬送物CAが検出される場合には、1回(例えば、初回)のみ搬送物占有範囲判別処理を実施し、他の回は搬送物占有範囲判別処理を省略してもよい。ただし、後述の各実施例では、連続占有範囲121CTの検出が計測エリアME内のさらに限定された領域、すなわち、透光領域121cが配置されている検出領域でのみ行われるため、複数の画像の計測エリアMEにおいて連続占有範囲121CTが撮影されている場合でも、搬送物占有範囲判別処理の回数は制限される。
【0049】
本実施形態では、上記搬送物占有範囲判別処理において実行される具体的な内容として、2つの実施例を以下に説明する。第1実施例では、計測エリアME内の上記画像部分21fy、121gy、121gz、121hy、121iyを画像処理の対象とし、その判別態様を図7(a)及び(b)に示してある。この場合には、4つの透光領域部に対応する画像部分121gy、121gz、121hy、121iyが搬送物CAにより同時に全て遮光されると、複数の搬送物CAが相互に重なっていたり、或いは、相互に密接した状態で搬送されていたりしていると判定するようにしている。これは、搬送物CAの搬送方向Fの長さLと幅方向の幅Wとに対応して、三つの透光領域部121gyと121hと121iが、単一の搬送物CAによって同時に遮光される単位占有範囲121U内に形成されているとともに、もう一つの透光領域部121gzが上記の単位占有範囲121Uから後方へはみ出すように形成されているため、図7(a)に示すように、単独の搬送物CAが通過するとき、上記の四つの透光領域部121gy、121gz、121h、121iは同時に全て遮光されることがないからである。すなわち、図示例の場合、上記四つの透光領域部が搬送方向Fの長さLsの検出領域にわたって配列されており、この長さLsは、搬送物CAの搬送方向Fの長さ、すなわち、単位占有範囲121Uの長さLより長いからである。一方、二つ以上の搬送物CAが重なり合ったり密接したりした状態で搬送されていると、図7(b)に示すように、四つの透光領域部121gy、121gz、121hy、121iyが同時に全て遮光される。これは、相互に重なり合った搬送物CA1とCA2が構成する連続占有範囲121CTの搬送方向Fの長さLctが、上記検出領域の長さLsより長いからである。このように、この例では、四つの透光領域部121gy、121gz、121hy、121iyが同時に全て遮光されるか否かにより、搬送物CAによる連続占有範囲121CTの大きさが上記の単位占有範囲121Uを超えているか否かを検出することができるように構成される。連続占有範囲121CTの大きさが単位占有範囲121Uを越えていると、不正判定がなされる。
【0050】
なお、この第1実施例では、画像処理により、上記四つの透光領域部に対応する画像部分121gy、121gz、121h、121iが全て遮光されていることが確認されたときのみ、少なくとも二つの搬送物CAが重なっているか、或いは、少なくとも二つの搬送物CAが密着して搬送されていることが検出されたとし、不正判定を行うようにしている。このため、画像取得手段に相当する検査処理ユニットDTUによって取得された画像のいずれかに、上記四つの透光領域部が全て遮光されている様子が撮影されていなければならない。換言すれば、不正判定されるべき連続占有範囲121CTが上記四つの透光領域部からなる長さLsの検出領域を占有し、遮光している間に画像が撮影されなければならない。したがって、上記四つの透光領域部に対応する画像部分の全体の搬送方向Fの範囲をLs=L+ΔL(ΔL>0)とすると、不正判定される連続占有範囲121CTの搬送方向Fの長さLct=Ls+ΔLt(ΔLt>0)において、ΔLt≧β=Ts・Vsが成立する必要がある。
【0051】
次に、第2実施例では、単一の透光領域部121g内に設定された画像部分121gvのみを上記計測エリアMEとして検査し、この画像部分121gvの全体が同時に搬送物CAにより遮光されるか否かにより、搬送物CAによる連続占有範囲121CTが上記の単位占有範囲121Uを超えているか否かを検出する。上記画像部分121gvは、上記隙間Gによって構成される透光領域部121gのうち、搬送方向Fに沿った長さLs=L+ΔLの範囲となるように設定される。このとき、連続占有範囲121CTの搬送方向Fの長さLctは、上述と同様に、Lct=Ls+ΔLtにおいて、ΔLt≧β=Ts・Vsが成立する必要がある。
【0052】
上記第1実施例と第2実施例のいずれにおいても、透光領域部が配列された検出領域の搬送方向Fの長さLsの一部が透光していることによって正常判定を得るためには、単位占有範囲121Uの搬送方向Fの長さLに対して検出領域の長さLsは、Ls>Lが成立している必要がある。一方、不正判定されるべき或る連続占有範囲121CTが与えられたとき、当該連続占有範囲121CTが不正判定すべきであることを確実に検出するには、そのΔLt=Lct-Lsの値に対して、ΔLt≧β=Ts・Vsが成立するような撮影間隔Tsが所定の搬送速度Vsに応じて与えられる必要がある。逆に言えば、所定の搬送速度Vsに対して撮影間隔Tsが設定されていた場合には、ΔLt≧β=Ts・Vsが成立するような連続占有範囲121CTであれば、確実に不正判定を行うことができることになる。したがって、以下のように整理される。
A.確実に正常判定がなされる範囲:Lct<Ls
B.確実に不正判定がなされる範囲:Lct≧Ls+β
C.正常判定と不正判定のいずれかになる範囲:Ls≦Lct<Ls+β
以上の結果、判定精度(分解能)は、β=Ts・Vsとなる。なお、上記Cの領域では、後述するように、正面側照明(環境照明も含む)によって得られる反射光に基づく画像成分(搬送物CAの表面態様)を画像処理することによって、判定を行うようにしてもよい。
【0053】
上記のいずれの実施例でも、一体の連続占有範囲121CTの大きさ(図示例では搬送方向Fの長さ)が単位占有範囲121Uを越えるか否かを判定の基準としているので、不正判定は、複数の搬送物CAが相互に重なり合っている場合のみならず、複数の搬送物CAが密着して搬送されてくる場合においても行われる。これは、複数の搬送物CAが互いに重なり合っていなくても、互いに密着した状態で搬送されていると、早晩、これらの搬送物CAが相互に重なり合う可能性が高くなるためである。この意味では、単に複数の搬送物CAが密着している場合だけでなく、複数の搬送物CAの間の搬送方向Fの隙間が所定値以下である場合にも、上記不正判定を行うようにしても構わない。これは、上記連続占有範囲121CTを、搬送物の占有範囲が連続する範囲だけでなく、当該占有範囲が所定値未満の間隔で配列される場合でも、これらの配列された複数の搬送物CAによる占有領域を含む一体の占有範囲として判別処理を行うようにすればよい。なお、これとは逆に、一体の連続占有範囲121CTのうち、単位占有範囲121Uの自然数倍に該当する範囲である場合を不正判定から外すことにより、搬送物CAが重なっている場合のみを不正判定とし、搬送物CAが密着して搬送されているだけの場合を不正としないように設定してもよい。
【0054】
本実施形態における搬送物CAは、略立方体形状(例えば、立方体の8つの角部を丸めた形状)を有する電子部品(例えば、チップ抵抗、チップインダクタ、チップコンデンサなど)であることが多いが、特に限定されるものではない。ただし、本実施形態は、前述のようにカバーブロックや暗渠構造を用いないことから、微細で薄い搬送物CAに対して特に効果的である。本実施形態では、搬送路121上における搬送物CAの占有範囲を画像処理によって求め、一体の占有範囲である連続占有範囲121CTの大きさを一つの搬送物CAの占有範囲である単位占有範囲121Uを基準として比較し、連続占有範囲121CTの大きさが単位占有範囲121Uを越えたときには、何等かの処置を施す必要のある不正判定を出す。
【0055】
なお、計測エリアMEの搬送方向Fの範囲については、上記各実施例における連続占有範囲121CTの検出方法により、上記長さLsの検出領域を必ず包含している必要がある。ここで、当該検出領域を実質的な計測エリアMEと考えることもできる。また、検出領域内の画像処理の必要な透光領域部のみを計測エリアMEと考えることもできる。したがって、計測エリアMEの搬送方向Fの長さLDは、上記検出領域の搬送方向Fの長さLsよりも大きくなる。一方、計測エリアMEの搬送方向Fの範囲は、検出領域に配置される際の正常判定されるべき連続占有範囲121CT(単位占有範囲121Uと同じ大きさ)を包含するが、図6に示すように、不正判定されるべき連続占有範囲121CT(単位占有範囲121Uを越える大きさ)の全てを包含している必要はない。単位占有範囲121Uを基準として連続占有範囲121CTの大きさが判別できればよい。また、上記実施例では、計測エリアMEの全体を画像処理しているのではなく、上記検出領域内の上記透光領域部に対応する画像部分のみを処理すれば足りるので、画像処理の負担が軽減され、処理の高速化を図ることができる。さらに、上記検出領域は固定されているので、搬送物占有範囲判別処理がなされるときの搬送物CAの検出位置もほぼ一定となることから、判別結果に応じて各種の制御を行う場合でも、それらのタイミングを揃えることが容易になる。
【0056】
次に、上記いずれかの実施例により搬送制御を行った場合の判定の様子と搬送物CAに対する制御態様について説明する。図9は、カメラ装置130CMで撮影された撮影画像GPX又はこれから得られる画像エリアGPY内の画像データに基づいて、所定の態様で搬送されてくる相互に重なり合った二つの搬送物CA1、CA2に対する制御及び処理の態様を説明するための手順説明図(a)-(e)である。なお、前後の搬送物CAが相互に密着して搬送されてくる場合も図示の場合と同様に処理される。また、所定値未満の間隔で連なって搬送されてくる場合も基本的には図示の場合と同様に処理することができる。図9(a)に示すように、この図示例では、搬送物CA1の後部に搬送物CA2の前部が乗り上げた重なり状態で搬送路121上を搬送されてくる。図示例では、搬送物CA1が計測エリアME内にあり、その先端部が検出領域の一部に達し、搬送方向Fに沿って延在する透光領域部121gの一部が遮光されている。このとき、受入部21aでは、以前に供給された搬送物CA0が配置されており、透光領域部21fが遮光されている。その後、図9(b)に示すように搬送物CA1及びCA2が搬送路121上をさらに進み、透光領域部121iが遮光されるとともに、透光領域部121gの遮光された一部領域も搬送方向Fの前方に移動し、その遮光範囲も増大していく。この時点では搬送物CA0は受入部21a内に存在し続けているが、既定の周期でインデックステーブル21がステップ回転することにより、移動を開始する。このため、図9(c)に示すように、搬送物CA1及びCA2が末端に近づく前に、受入部21aは空になり、透光領域部21fは非遮光状態となる。これにより、受入部21aが搬送物を受入れ可能な状態であることが検出される。なお、この時点で搬送物CA0が受入部21aに配置されたままである場合には、噴気口SPから気流を吹き付けることにより、搬送物CA1、CA2を搬送路121上から回収路122の受面部122a上へ排除する。この噴気口SPによる排除状態は、受入部21aが受け入れ可能な状態(透光領域部21fが非遮光状態になった状態)に移行するまで継続する。
【0057】
その後、図9(d)に示す位置では、搬送物CA1及びCA2は、上記各実施例に示す方法で判定される。図示例では、連続占有範囲121CTの大きさは、単位占有範囲121Uを越えているため、不正判定がなされる。これにより、図9(e)に示すように、連続占有範囲121CT内の後方部分にある搬送物CA2が噴気口OPから吹き付けられる気流により、搬送路121から回収路122へ排除される。このとき、噴気口OPは、搬送物CA1の直後位置に開口するとともに、直ちに気流を吹き付けるため、搬送物CA2の前部若しくは中央部に排除力を与えるように吹付タイミングを設定することが好ましい。このようにすると、図示のように、搬送物CA2は、前部が後部よりも先に搬送路121上から離れる態様、若しくは、その当初の搬送姿勢を保ったままで搬送方向Fと直交する幅方向に移動する。したがって、図示の点線のような姿勢で排除されることはない。このとき、搬送物CA1は搬送路121上を搬送方向Fに移動し続けており、気流を受けた搬送物CA2は幅方向に移動するので、図9(e)に示す時点で、搬送物CA1は、搬送物CA2から離れていくこととなるため、搬送物CA2の移動に巻き込まれる虞が少なくなる。一方、搬送物CA2が図示点線のような姿勢で排除されると、搬送物CA1に抵触する虞が高まるので、搬送物CA1の受入部21aへの供給に支障が生ずる可能性がある。
【0058】
本発明の搬送物占有範囲判別処理では、前述のように、計測エリアME内の画像データにより、透過領域121cが搬送物CAの占有によって遮光されているか否かを検出することにより搬送物の占有範囲を判定する場合に限らず、例えば、搬送路121上の反射光のみに基づいて撮像された画像の処理によって、搬送物CAによる占有範囲を判定するようにしてもよい。例えば、画像中の搬送物CAの位置範囲をパターニング処理等によって検出し、これに基づいて上記占有範囲の判定を行うようにしても構わない。
【0059】
本実施形態では、振動式の搬送装置10により、振動する搬送路121上を搬送されていく搬送物CAを検査対象とする一方で、カメラ装置130CM(CM1,CM2)は振動しない場所(基台100上)に設置されているため、撮影画像GPX又は画像エリアGPYの画像データにおいて、搬送方向Fの前後に往復する態様で所定の振幅で振動する搬送路121は、当該画像データの撮影時の振動位相の変化に応じて、変位した位置に配置される。したがって、搬送物CAの外観を搬送路121を基準とする固定された位置で検出、判定しようとすると、画像内の計測エリアMEの位置を、撮影タイミングに合わせて搬送体120の振動と同期して同振幅で移動させる必要がある。例えば、搬送体120には、振幅が0.1mm、振動周波数が300Hzといった振動が与えられている。
【0060】
このため、本実施形態では、計測エリアMEの位置を、撮影画像GPX又は画像エリアGPYの撮影時点における搬送体120の振動位置に合わせるために、搬送体120に設定された位置補正用マークを基準として補正することができる。この位置補正用マークは位置検出が容易かつ確実なものであれば特に限定されないが、画像中で確実にブロブとして認識でき、かつ、その重心位置を安定して検出できる単色(同一グレースケール)のマークとすることで、その位置の検出精度を高めることができる。なお、位置補正用マークは、意図的に設けたものではなく、搬送装置に本来的に存在し、画像処理によって検出可能な部分、例えば、搬送体120に形成された稜線や角部、ボルトヘッド、噴気口などであってもよい。ただし、搬送物CAによって隠れない場所にあるものが好ましい。図示例では、上記位置補正用マークは、上記標識部121yとされる。この標識部121yは、搬送体120の末端側の端縁に形成された凹部で構成されるが、端縁に限らず、また、孔部、穴部、突起などの任意の識別可能な構造であればよい。本実施形態では、背面側照明装置140BLの照明光BLaによって標記部121yの輪郭形状が明確に画像上に反映されるため、標識部121yの位置によって位置補正を容易かつ確実に行うことができる。
【0061】
本実施形態においては、上記の位置補正のため、搬送路121に対する計測エリアMEの位置は、撮影時の振動の位相タイミングとは無関係に、常に搬送路121に対して同じ位置となる。したがって、不正判定の搬送物CA1、CA2のうちの搬送物CA2を排除するための排除エアを排除用の噴気口OPから吹き付ける位置、並びに、供給先の不正状態において搬送物CAの供給を停止するためのエアを排除用の噴気口SPから吹き付ける位置に対して、計測エリアMEが常に一定の位置関係となるように設定されるため、搬送物占有範囲判別処理による判定結果や受入部21aの受入可能か否かの結果に応じて搬送物CAに排除力を作用させる場合に、常に近似したタイミングで作用を生じさせることができる。
【0062】
なお、上記噴気口OPからの気流の吹付タイミングは、特定の画像において不正判定がなされた場合、当該画像の撮影時を基準として所定時間経過後に開始されるように、タイマー設定可能に構成されることが好ましい。この場合、一般的には、タイマー設定は、判定タイミングや判定される画像の取得タイミングを基準として吹付タイミングを設定すればよい。ただし、当該画像における計測エリアME内の搬送物CA1の搬送方向Fの位置(上記位置補正後の位置)に応じて、上記吹付タイミングが自動的に修正されるように構成することが望ましい。このようにすると、噴気口OPからの気流が搬送物CA1には作用せず、搬送物CA2にのみ作用するように設定することが容易かつ確実にできる。また、上記と同様に、上記噴気口SPからの気流の吹付開始のタイミングも、搬送物CA1の搬送方向Fの位置(上記位置補正後の位置)に応じて、自動的に修正されるように構成することが望ましい。
【0063】
本実施形態では、カメラ装置130CMによって搬送面121b上の搬送物CAの画像を取得し、この画像の計測エリアME内の処理によって、搬送物CAの連続占有範囲121CTの大きさを単位占有範囲121Uを基準として判定している。このとき、搬送物CAは、搬送面121b上において搬送面121bと直交する方向に相互に重なり易い姿勢で搬送されていくので、搬送物CAの相互の重なり状態を画像上の占有範囲によって判定しやすくなっている。特に、カメラ装置130CMの撮像方向を上記の重なり易い方向に合わせることによって、画像処理もさらに容易になり、判別精度も向上できる。
【0064】
また、本実施形態では、上記受入部21aの透光領域部21fの画像部分21fyを画像処理することにより、供給先の受入の可否を検出できるので、搬送物CAの供給停止などを的確に判断できる。特に、上記搬送物占有範囲判別処理に用いるものと同じ画像により検出できるため、撮像手段も簡易に構成でき、画像処理も並行して迅速に行うことができる。さらに、この受入部21aの受入れ可否の判定に際しては、背面側照明による効果も計測エリアME内の透光領域部と同様に得ることができる。
【0065】
本実施形態では、背面側照明装置140BLの照明光BLaによって透光領域部21f、121g、121h、121iの遮光状態を明瞭に検出することができるので、計測エリアMEのコントラストの低下などの影響を受けにくくすることができ、画像処理負担の抑制や検出精度の向上を図ることができる。ただし、カメラ装置130CMによる撮影画像は、背面側照明(透過光)に限らず、正面側照明(反射光)によるものであってもよく、背面側照明(透過光)と正面側照明(反射光)の両者を合わせて利用するものであってもよい。この場合、透光領域121c(透光領域部)の範囲が限定されていることが好ましく、これによって、撮像範囲のシルエット(輪郭情報)だけでなく、表面態様をも画像処理によって抽出し易くなる。例えば、本実施形態では、搬送物CAの幅方向の外形を認識する必要がないため、透光領域121cを搬送物CAの幅よりも狭幅にすることで、効果を低下させずに透光領域121cの面積を限定できる。特に、上記透光領域部121gのように搬送方向Fに延在するスリット状に構成することが搬送物CAの搬送方向Fの位置を特定する上で好ましく、この場合に、計測エリアME内で連続して延在することがさらに望ましい。このとき、画像中に撮影されているものの表面態様の抽出により、不正判定時において搬送物CAの重なり状態をさらに詳細に判別して排除力の与え方を変更したり、或いは、表面態様に基づいて重なり状態ではないことを確認したら、不正判定を回避したりすることも可能である。透光領域の限定に関しては、例えば、透光領域121cを、上記透光領域部121g,121h,121iのように、複数の分散した透光領域部が配列されている態様とすることも好ましい。
【0066】
本実施形態では、搬送物CAの種類、寸法、不正判定条件、搬送物CAの基準画像データ、連続占有範囲の認定条件、単位占有範囲の数値など、画像処理の二値化時における明度の閾値などの各種の設定値などといった、搬送物CAの判別処理に用いられる各種のデータが主記憶装置MMなどに記憶され、各処理にあたっては適宜に読み出されて使用される。また、カメラ装置130CM(CM1,CM2)の撮影タイミングを定めるための設定値、撮影画像GPX又は画像エリアGPYを取り込む際の画像取込条件の設定値、搬送路121の振動による各設定エリアの位置補正の態様を定める設定値、各種の設定画面や表示画面の態様を定める設定値、選別用や供給停止用の気流等の制御の態様、例えば、気流の吹き付けタイミングや圧力値などの設定値、などについても同様に取り扱われる。
【0067】
本実施形態では、上記主記憶装置MM内に保存されている過去の撮影画像GPX又は画像エリアGPYを時系列にて連続して格納した画像ファイルを選択して読み出し、表示させることができる。そして、選択された画像ファイルに対する各種の操作処理を実行するための手段も用意される。
【0068】
主記憶装置MM内に保存される画像ファイルは、運転モードにおいて取り込まれる複数の撮影画像GPX又は画像エリアGPYの画像データを、演算処理装置MPUにより自動的に記録したものである。この画像ファイルの保存は、主記憶装置MMに空き容量が存在する場合には全ての画像データについて実施することができるが、主記憶装置MMに空き容量が存在しない場合でも、最新の既定期間分(例えば1時間分など)、或いは、最新の既定枚数分(例えば1000枚分など)の画像ファイルについては常に保存されるようにしておくことが好ましい。
【0069】
上記のように過去に記録した撮影画像GPX又は画像エリアGPYを表示した状態で、この画像データに対して、適宜の操作により、上記搬送物検出処理及び上記搬送物判別処理(一般的には上記搬送処理)からなる画像計測処理を再度実行することができる。表示態様の制御機能の一つとして、同一ファイル内に格納された複数の撮影画像GPX又は画像エリアGPYについては、適宜の操作により、前後に撮影された他の画像データに一つずつ切り替えることができる。また、同一画像ファイル内の複数の撮影画像GPX又は画像エリアGPYを連続して表示しつつ、並行して、表示された画像データに対する画像計測処理を実行させることもできる。
【0070】
次に、図11を参照して、本実施形態の全体の動作プログラムの流れについて説明する。図11は、上記検査処理ユニットDTUの演算処理装置MPUにより、動作プログラムに従って実行される処理の概略フローチャートである。この動作プログラムを起動すると、まず、上記の画像撮影及び画像計測処理が開始されるとともに、コントローラCL11、CL12により搬送装置10(パーツフィーダ11及びリニアフィーダ12)の駆動が開始される。そして、前述のデバッグ操作に応じたデバッグ設定がOFFであれば、撮影画像GPX又は画像エリアGPYに対して画像計測処理が実行され、最終の判定結果がOK判定であれば、デバッグ操作が行われない限り、そのまま次の撮影画像GPX又は画像エリアGPYの画像計測処理が実施される。例えば、搬送物CAの不正品と良品の判定による選別位置や不正姿勢と正規姿勢の判定による選別位置若しくは反転位置では、カメラCM1,CM2等により撮像された画像に基づいて、不正品と判定された搬送物CAや不正姿勢と判定された搬送物CAを噴気口の気流により制御し、搬送路121上から排除したり、姿勢を反転させたりする。また、上述の末端部121eにおける搬送物CAの占有範囲の判定による選別位置(計測エリアME)でも、カメラ装置130CMにより取得された画像に基づいて、前述のように不正判定の連続占有範囲121CTに対して排除力を作用させる。
【0071】
このようにして、搬送路121上で搬送物CAが制御されることにより、下流側へは良品のみ、良姿勢のもののみが整列した状態で供給されていく。そして、末端部121eにおいては、搬送物CAの重なり状態やその蓋然性を判定し、最終的に供給不正が発生しないように、一つ一つの搬送物CAを受入部21aに供給することができる。この場合にも、その後、デバッグ操作が行われない限り、そのまま次の撮影画像GPX又は画像エリアGPYの判定が実施される。
【0072】
上記の途中でデバッグ操作が行われ、デバッグ設定がONになると、上記ルーティンから抜け出して、搬送装置10の駆動が停止され、画像計測処理も停止される。そして、この状態において適宜の操作を行うと、前述のように画像ファイルを選択可能な状態となる。このとき、選択表示される画像ファイルは、直前の運転モードにおいて記録していた複数の撮影画像GPX又は画像エリアGPYを含む画像ファイルである。これをそのまま選択して適宜の操作をすると、再実行モードに移行する。このモードでは、上述のようにすでに実行された制御動作を記録した画像ファイルに基づいて、画像の表示や検出及び判定を再実行させることができる。すなわち、搬送装置10の搬送物CAの制御に不具合が生じた場合には、この不具合を解消するために、まず、過去の画像データに基づいて画像計測処理を再実行することによって、画像計測処理の問題箇所を探る。当該問題箇所が判明すれば、それに応じて検出や判定の設定内容(設定値)を変更、調整し、再び過去の画像データに対して画像計測処理を再実行することで調整、改善作業の結果を確認することができる。その後、適宜の復帰操作を行うと、デバッグ設定がOFFに戻され、画像計測処理が再開されるとともに、搬送装置10の駆動が再開される。また、表示装置の画面は運転モードの表示画面に戻る。
【0073】
以上説明した本実施形態では、上述の種々の効果に加えて、カメラ装置130CMが既定の撮影間隔で連続して撮影するとともに、搬送物の搬送速度Vsと撮影間隔Tsとの関係により搬送路121を通過する全ての搬送物CAが常に含まれるように予め設定された搬送方向Fの範囲LDを有する計測エリアME内の画像データに対して画像計測処理を施すことにより、いずれかの撮影画像において計測エリアME内に配置された搬送物CAを検出し、判定することができるため、従来技術のように個々の搬送物の位置を検知するためのトリガ信号を生成する必要がなくなる。また、この画像に含まれる搬送物CAの上記占有範囲、すなわち、連続占有範囲121CTを単位占有範囲121Uを基準として判定することにより、搬送物CAの重なり状態若しくはその蓋然性に関する情報を確実に抽出することができる。したがって、搬送物の高速搬送や高密度搬送が行われていても、搬送物CAの供給先への供給不正を防止し、効率的に供給することが可能になる。また、搬送物CAの搬送路121上における連続占有範囲を検出し、これを単位占有範囲と比較するだけで足りるので、前記搬送物CAの重なり状態やその蓋然性を判定するための画像計測処理を高速かつ高精度に行うことができる。
【0074】
本実施形態では、搬送路121を構成する搬送面121bに、図6に示す透光領域121cを設けている。この透光領域121cは、搬送面121bを貫通し、背面側に開口する透孔や隙間Gによって構成される。この透孔や隙間Gの背面側には、背面側照明装置140BLが向けられる。透孔や隙間及び背面側照明装置140BLは、上述の背面側照明手段を構成する。なお、背面側照明手段としては、透光領域121cを通して撮像手段に向かう透過光が存在すればよく、図示例のような専用の照明装置ではなくとも、実内照明等により、直接若しくは間接的に照明される環境照明が確保されていればよい。
【0075】
背面側照明手段において、図視例では、上記透孔やすき間Gによって構成されるが、搬送面121bに沿って透光性を有する素材、例えば、ガラス、クォーツ、サファイア、アクリル樹脂などを配置し、これにより、搬送面121bと面一に形成されるものであってもよい。このようにすると、搬送面121aに透孔121dによる段差部分が形成されることがないため、搬送物CAの搬送を妨げることがない。また、上述の噴気口OP,SPは、図6(a)及び(b)に示すように、開口部の搬送方向Fの前方側の縁部に面取状や丸め状の変形角部OPa,SPaが設けられているので、搬送物CAが噴気口OP,SPの開口縁に引っ掛かり、滞留したり、姿勢が乱されたりすることが防止される。
【0076】
透光領域121cから上記背面側照明装置140BLの透過光がカメラ装置130CM(CM1,CM2)に向けて出射するものの、透光領域121cの範囲は限定されているので、カメラ装置130CMによって搬送路121上の搬送物CAを撮影すると、カメラ装置130CMの背後の環境照明(太陽光、工場の室内照明光など)によって、搬送面121a,121bと搬送物CAの表面の態様が、撮影された画像中に表れる。この場合、カメラ装置130CMの背後から搬送路121及び搬送物CAを照明する正面側照明装置を設置してもよい。正面側照明装置は、前述のように環境照明によって十分な照明効果が得られる場合には、特段、設置することがなくてもよい。この照明側照明装置は種々の方向から照明を行うように構成してもよい。
【0077】
なお、本発明の搬送制御システム及び搬送装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、背面側照明(透過光)により取得された透光領域121cの画像部分の処理によって搬送物CAの占有範囲を検出しているが、通常の正面側照明(反射光)によって取得された画像の処理によって搬送物の占有範囲を検出するようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、連続占有範囲121CTの搬送方向Fの長さを、単位占有範囲121Uの搬送方向Fの長さと比較して、不正判定を行っているが、本発明では、連続占有範囲121CTの幅を、単位占有範囲121Uの幅と比較してもよく、或いは、連続占有範囲121CTの面積を、単位占有範囲121Uの面積と比較しても構わない。
【0079】
さらに、上記実施形態では、検査処理ユニットDTUの基本構成として、搬送物CAの到来タイミングとは無関係に既定の時間間隔Tsで撮影を行うようにしているが、搬送物CAの到来を検出する信号に基づくトリガ信号によりカメラ装置130CM(CM1、CM2)を作動させて画像を撮影するようにしても構わない。
【0080】
その上、上記実施形態では、連続占有範囲121CTの大きさを単位占有範囲121Uを基準として判定する際に、搬送方向Fの長さLctを同じく搬送方向Fの長さLやLsと比較している。しかし、搬送物CAの重なり状態や密着状態は、単に占有範囲の搬送方向Fの長さだけでなく、幅方向にも生ずる可能性があるため、各範囲の幅を比較対象としてもよく、長さと幅の双方、或いは、各範囲の面積そのものを比較対象としてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10…搬送装置、11…パーツフィーダ、110…搬送体、111…搬送路、12…リニアフィーダ、120…搬送体、121…搬送路、121a,121b…搬送面、121c…透光領域、121e…(搬送路の)末端部、121g-121j…透光領域部、122…回収路、122a…受面部、122b…周縁部、122c…合流部、121CT…連続占有範囲、121U…単位占有範囲、L…搬送物(単位占有範囲)の長さ、Ls…検出領域の搬送方向の長さ、Lct…連続占有範囲の搬送方向の長さ、W…搬送物の幅、130CM(CM1,CM2)…カメラ装置、140BL…背面側照明装置、OP…噴気口(重なり解除用)、SP…噴気口(供給停止用)、CA、CA1-CA3…搬送物、CL11,CL12…コントローラ、DTU…検査処理ユニット、DP1,DP2…表示装置、GP1,GP2…画像処理装置、GM1,GM2…画像処理メモリ、GPX…撮影画像、GPY…画像エリア、MPU…演算処理装置、MM…主記憶装置、ME…計測エリア、SP1,SP2…操作入力装置、RAM…演算処理用メモリ、20…(供給先の)検査装置、20a…支持部、20a1…上板、20a2…窓部、20a3…下板、21…インデックステーブル、21a…受入部、21d…収容部、21f…透光領域部
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