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特許7398714医療・美容に応用可能なアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物およびこれを含む医薬、飲食品、飼料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】医療・美容に応用可能なアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物およびこれを含む医薬、飲食品、飼料
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/07 20060101AFI20231208BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20231208BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20231208BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20231208BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231208BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231208BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231208BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231208BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20231208BHJP
【FI】
A61K36/07
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52
A61P3/04
A61P3/10
A61P29/00
A61P35/00
A61P1/00
A23K10/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021107016
(22)【出願日】2021-06-28
(65)【公開番号】P2023005235
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-02-03
【微生物の受託番号】IPOD  FERM P-17695
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500091117
【氏名又は名称】東栄新薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】山中 大輔
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-240603(JP,A)
【文献】特開2006-028307(JP,A)
【文献】特表2020-512294(JP,A)
【文献】特開2009-161502(JP,A)
【文献】特表2016-503418(JP,A)
【文献】Evid Based Complement Alternat Med,2008年,Vol.5, No.2,pp.205-219,doi: 10.1093/ecam/nem016.
【文献】Nutrients,2020年,Vol.12, No.1339,pp.1-19,doi:10.3390/nu12051339
【文献】日本薬学会年会要旨集,2003年,Vol.123rd, No.3,p.153
【文献】Mol. Nutr. Food Res.,2019年,Vol.63, No.1801231,pp.1-10
【文献】Research in veterinary science,2010年,Vol.89, No.1,pp.78-84,http://dx.doi.org/10.1016/j.rvsc.2010.02.003
【文献】HARRISON, T., et al.,Dynamics of structural and functional changes in gut microbiota during treatment with a microalgal β-glucan, paramylon and the impact on gut inflammation,Nutrients,2020年08月,Vol.12, No.8, Article No.2193,pp.1-17,DOI 10.3390/nu12082193
【文献】キングアガリクス100 6日間お試しセット カタログ, ケーエーナチュラルフーズ, [retrieved on 2023.07.14], retrieved from the internet:,https://www.kaagaricus.com/ad2/new2/?gclid=EAIaIQobChMIgpPM9aqLgAMVz6eWCh04sA9QEAMYAiAAEgLTa_D_BwE
【文献】キングアガリクス100の口コミ一覧, アットコスメ, [retrieved on 2023.07.14], retrieved from the internet:,https://www.cosme.net/products/10005050/review/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A23L 33/00-33/29
A23L 2/00- 2/84
A23K 10/00-10/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アガリクス子実体の乾燥処理物または凍結乾燥処理物を含有し、
前記アガリクスが、King・Agaricus 21株(受託番号:FERM P-17695)である
ことを特徴とするアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物。
【請求項2】
請求項1のアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物を含有することを特徴とするアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用医薬。
【請求項3】
肥満・メタボリックシンドローム善、糖尿病治療、腸内抗炎症、がん免疫療法の増強を目的としたがん治療に使用されることを特徴とする請求項2のアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用医薬。
【請求項4】
請求項1のアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物を含有することを特徴とするアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用飲食品。
【請求項5】
肥満・メタボリックシンドローム善、糖尿病治療、腸内抗炎症、容、痩身、ダイエットに使用されることを特徴とする請求項アッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用飲食品。
【請求項6】
請求項1のアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物を含有することを特徴とするアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用飼料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物およびこれを含む医薬・飲食品、飼料に関する。具体的には、医薬は、例えば、肥満・メタボリックシンドローム改善用、糖尿病治療用、腸内抗炎症用、がん免疫療法の増強を目的としたがん治療用として有用であり、飲食品は、例えば、肥満・メタボリックシンドローム改善用、糖尿病治療用、腸内抗炎症用、美容用、痩身・ダイエット用として有用である。
【背景技術】
【0002】
アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)は、0.6~1.0μm程度の大きさを有し、芽胞を作らず、運動性を有さない偏性嫌気性のグラム陰性細菌であり、ヒトをはじめとする多くの哺乳動物の腸内に通常存在する真性細菌であることが知られている。
【0003】
そして、近年、アッカーマンシア・ムシニフィラは肥満や糖尿病の人の腸内においてはその量が減少していること、また、アッカーマンシア・ムシニフィラの投与によりマウスにおける脂肪増加の改善やインスリン抵抗性の改善が確認され(例えば、非特許文献1、2)、アッカーマンシア・ムシニフィラと肥満等の障害との関連性が指摘されている。さらに、アッカーマンシア・ムシニフィラは、虫垂炎の重症度と反比例していること、また、潰瘍性大腸炎やクローン病等の炎症を伴う疾患の患者腸内においては、その量が減少していることが報告されており(非特許文献3、4)、アッカーマンシア・ムシニフィラは腸内の抗炎症作用に関与していると考えられている。
【0004】
このため、これらの疾患や障害を予防又は改善するための有望な手段として、アッカーマンシア・ムシニフィラに対する関心が高まっている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ケルセチン配糖体、イソラムネチン、シアニジングルコシド、ヘスペレチン、ヘスペリジン、アピゲニン、クリシン、タンゲレチン、ノビレチン、及びタンニン酸からなる群から選択される一以上のポリフェノールを含む、アッカーマンシア・ムシニフィラの増殖材が記載されている。また、特許文献2には、植物由来の5量体以上のプロアントシアニジン類、又はその薬学的に許容できる塩を有効成分として含有するアッカーマンシア属細菌増殖促進剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2019/092896公報
【文献】特開2018-8911号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Nature Medicine 23,107-113,2017
【文献】Proc Natl Acad Sci USA 110,9066-9071(2013)
【文献】Gut.2011 Jan;60(1):34-40
【文献】Am J Gastroenterol.2010 Nov;105(11):2420-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、当該分野においては、依然として、アッカーマンシア・ムシニフィラを増殖させるための新たな手段が切望されている。
【0009】
本発明は、アッカーマンシア・ムシニフィラを増殖させることが可能な新しいアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物およびこれを含む医薬および飲食品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物は、アガリクス子実体の処理物を含有することを特徴としている。
【0011】
本発明の医薬、飲食品および飼料は、前記のアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物を含有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物およびこれを含む医薬および飲食品によれば、これを投与または摂取することで、哺乳動物の腸内におけるアッカーマンシア・ムシニフィラを増殖させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】アガリクス子実体10%含有食摂取後の腸内細菌叢の比較結果を示す。
図2】アガリクス子実体10%含有食7、28日間摂取後のアッカーマンシア・ムシニフィラ量の比較結果を示す。
図3】アガリクス子実体5%含有食7、21日間摂取後のアッカーマンシア・ムシニフィラ量の比較結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者は、アガリクス(好ましくはAgaricus brasiliensis)子実体にアッカーマンシア・ムシニフィラの増殖促進作用があるという新規な知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
以下、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物の一実施形態について説明する。
【0016】
本発明において「増殖促進用組成物」とは、哺乳動物の生体内におけるアッカーマンシア・ムシニフィラの増殖を支援し、アッカーマンシア・ムシニフィラの数を増加させることを可能とする増殖作用を有する組成物を意味する。
【0017】
本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物は、アガリクス子実体の処理物を含有する。
【0018】
アガリクス(Agaricus blazei Murill、Agaricus brasiliensis、Agaricus subrufescensなど)子実体は、例えば、野生の子実体、栽培により得られる子実体を例示することができる。なかでも、アガリクスが、独立行政法人製品評価技術基盤機構に寄託された寄託番号FERM P-17695(寄託日:平成12年1月13日、再寄託日:2016年7月1日)の株King Agaricus 21であることが好ましい。
【0019】
また、アガリクス子実体の処理物は、子実体をそのままあるいは物理・化学的または生物的に処理して得られる各種処理物であってよい。
【0020】
具体的には、物理・化学的処理物としては、例えば、天日乾燥、風乾、凍結乾燥等による乾燥処理物や凍結乾燥処理物、ブレンダー、ホモジュナイザー、ボールミル等による粉砕処理物などを例示することができる。また、生物的処理方法としては、発酵方法等を例示することができる。なかでも、子実体は、乾燥処理物、凍結乾燥処理物の形態であることが好ましい。
【0021】
また、アガリクス子実体の処理物には、その有効成分を含有する限りにおいて、子実体より種々の抽出方法により得られる抽出物が含まれる。抽出方法としては、例えば、各種溶媒抽出、超臨界流体抽出等があげられる。抽出物は、沈降分離、ケーキ濾過、清澄濾過、遠心濾過、遠心沈降、圧搾分離、フィルタープレスなどの各種固液分離方法、各種濃縮方法、各種乾燥方法、造粒もしくは粉末化等の製剤化方法、各種精製方法等で処理してもよい。
【0022】
本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物は、医薬や飲食品、あるいは飼料又は飼料添加物の形態とすることができ、哺乳動物に投与又は摂取させることができる。すなわち、本発明の医薬や飲食品は、上述したアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物を含有する。
【0023】
本発明の医薬の用途は、アッカーマンシア・ムシニフィラの増殖による効能として、肥満・メタボリックシンドローム改善、糖尿病治療、腸内抗炎症作用、がん免疫療法の増強作用(抗悪性腫瘍剤のPD-1阻害剤の作用を増強させる作用)などを例示することができる。また、本発明の飲食品の用途は、肥満・メタボリックシンドローム改善(体脂肪低下、ダイエット)、糖尿病治療、腸内抗炎症作用、美容、痩身・ダイエットなどを例示することができる。
【0024】
医薬や飲食品の形態の場合、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等の添加剤を含めることができ、企図される投与経路や摂取方法に適した剤型又は形態を有する医薬や飲食品として製造することができる。
【0025】
賦形剤としては、乳糖、白糖、D-マンニトール、D-ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、ブドウ糖、コーンスターチ、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を例示することができる。
【0026】
滑沢剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステル等のシュガーエステル類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、粉末植物油脂等の硬化油、サラシミツロウ等のロウ類、タルク、ケイ酸、ケイ素等を例示することができる。
【0027】
結合剤としては、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、トレハロース、デキストリン、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を例示することができる。
【0028】
崩壊剤としては、乳糖、白糖、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、軽質無水ケイ酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等を例示することができる。
【0029】
また、医薬や飲食品の製造において通常用いられている添加剤の例としては、各種油脂(例えば、大豆油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油等の植物油、牛脂、イワシ油等の動物油脂)、生薬(例えばロイヤルゼリー、人参等)、アミノ酸(例えばグルタミン、システイン、ロイシン、アルギニン等)、多価アルコール(例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコール、例としてソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール等)、天然高分子(例えばアラビアガム、寒天、水溶性コーンファイバー、ゼラチン、キサンタンガム、カゼイン、グルテン又はグルテン加水分解物、レシチン、澱粉、デキストリン等)、ビタミン(例えばビタミンC、ビタミンB群等)、ミネラル(例えばカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄等)、食物繊維(例えばマンナン、ペクチン、ヘミセルロース等)、界面活性剤(例えばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等)、精製水、希釈剤、安定化剤、等張化剤、pH調製剤、緩衝剤、湿潤剤、溶解補助剤、懸濁化剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、香料、酸化防止剤、甘味料、呈味成分、酸味料等を例示することができる。
【0030】
さらに、医薬や飲食品の剤型又は形態は、特に制限されない。
【0031】
医薬としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤、吸入剤、坐剤等の剤型を例示することができるが、好ましくは、経口剤である。
【0032】
飲食品としては、例えば、錠菓、錠剤、チュアブル錠、錠剤、粉剤、散剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤等の形態を有する健康飲食品(サプリメント、栄養補助食品、健康補助食品、栄養調整食品等)、清涼飲料、茶飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、コーヒー飲料、炭酸飲料、野菜飲料、果汁飲料、醗酵野菜飲料、醗酵果汁飲料、発酵乳飲料(ヨーグルト等)、乳酸菌飲料、乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、菓子(例えば、ビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、チューインガム、タブレット)、ゼリー等の形態を例示することができる。特に、飲食品は、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)や、健康食品、美容食品等の形態であることが好ましい。
【0033】
また、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物は、ヒト用の飲食品だけでなく、家畜、競走馬、ペット等の飼料又は飼料添加物の形態とすることもできる。
【0034】
本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物は、医薬、飲食品または飼料もしくは飼料添加物として、哺乳動物(例えばヒト、サル、チンパンジー、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット等)、好ましくはヒトに投与又は摂取させることができ、投与又は摂取された哺乳動物の生体内におけるアッカーマンシア・ムシニフィラの増殖を促進し、アッカーマンシア・ムシニフィラの絶対数を増加させることができる。
【0035】
本発明の医薬および飲食品の投与量または摂取量は、対象の年齢及び体重、投与経路、投与・摂取回数などを考慮して、適宜、投与量または摂取量を調整することができる。例えば、経口的に投与又は摂取する場合には、1日当たり、0.1mg/kg~100g/kgより選択される量を1回又は複数回(例えば、2~5回、好ましくは2~3回)に分けて投与又は摂取することができる。
【0036】
また、本発明の医薬および飲食品の投与または摂取期間も限定されないが、例えば、本発明の医薬および飲食品を、上記用法用量に従って、1週間以上、2週間以上、1か月以上、2か月以上、6ヶ月以上、1年以上、又はそれ以上の期間にわたって継続して投与又は摂取することができる。
【0037】
なお、本発明の医薬および飲食品は、アガリクス子実体の処理物を含有するため、従来知られている薬効として、肝臓や心臓、胃腸などの強化改善、血圧や血糖値の安定、腰痛や肩こりの回復、抜け毛・白髪の改善、老化防止、免疫性の向上、抗腫瘍作用、抗がん剤の副作用軽減効果、創傷の治癒効果なども実現され得る。
【0038】
本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物、医薬および飲食品は、以上の実施形態に限定されるものではない。
【実施例
【0039】
以下、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物などについて、実施例とともに詳しく説明するが、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラ増殖促進用組成物は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
<1>アガリクス子実体
アガリクス乾燥子実体として、ブラジルにて露地栽培されたAgaricus brasiliensis KA21株を使用した。このアガリクスは、独立行政法人製品評価技術基盤機構に寄託されている(寄託番号FERM P-17695 King・Agaricus 21)。
【0041】
<2>マウスへの飼料投与および糞DNAの回収 C57BL6Jマウスを日本SLCより購入(6週齢6匹、3匹ずつ分けて2群に、SPFグレード)し、飼料をβグルカン非含有飼料(AIN93G)に変更し、1週間飼育した。
【0042】
その後、コントロール群(AIN93G群)とアガリクス投与群(KAOD10%群)に分け、0日目、7日目、28日目に糞を回収し、-80℃で保存した(3匹×2群×3ポイント=18サンプル)。また、低用量のアガリクス投与群としてアガリクス乾燥子実体を5%含む飼料、およびβグルカン非含有飼料(AIN93G)をC57BL6Jマウスに7日、または21日間投与して糞を回収し、-80℃で保存した。糞中DNAはMO BIO Laboratories社製PowerFecal(登録商標)DNA Isolation Kit 及びMaxwell(登録商標)16 Cell LEV DNA Purification Kit(Promega社)を用いて抽出した。
【0043】
<3>アンプリコンシーケンス
(方法)
AIN93G群及びKAOD10%群の糞より抽出したDNAについて、16SrRNA遺伝子をシーケンスし、細菌の組成の解析を行った。具体的には、抽出したDNAを鋳型に16SrRNA遺伝子のV3-V4領域をPCRによって増幅し、16S Metagenomic Sequencing Library Preparation Protocol(イルミナ社)によりライブラリを調整し、次世代シーケンサMiSeq Systemを使用してシーケシングを行った。
(結果)
アガリクス乾燥子実体を投与した群では、摂取28日目にはVerrucomicrobia が上昇し、Bacteroidetes は減少した。菌種別では、アガリクス乾燥子実体摂取28日後には、アッカーマンシア・ムシニフィラの割合が顕著に増加していることが確認された(図1)。
【0044】
<4>RT-PCR
(方法)
回収した糞より抽出したDNAを鋳型に、16SrRNA遺伝子ユニバーサルプライマーセット及びアッカーマンシア・ムシニフィラ特異的プライマーセットを用いてRT-PCRを行い、細菌由来総DNA量とアッカーマンシア・ムシニフィラに由来するDNA量を定量した。
(結果)
図2に示したように、アガリクス乾燥子実体(AB)10%添加した飼料を7日間または28日間摂取するとアッカーマンシア・ムシニフィラが増加することが確認された。また、図3に示したように、アガリクス乾燥子実体(AB)5%添加した飼料を7日間摂取しても、アッカーマンシア・ムシニフィラの増加は認められなかった。一方、21日間摂取するとアッカーマンシア・ムシニフィラが増加することが確認された。
図1
図2
図3