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7398733複合窒化アルミニウム粒子の製造方法、及び複合窒化アルミニウム粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】複合窒化アルミニウム粒子の製造方法、及び複合窒化アルミニウム粒子
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/072 20060101AFI20231208BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20231208BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
C01B21/072 R
C08K3/28
C08L101/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020031988
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021134120
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和元年5月14日に発行された第68回高分子学会年次大会の予稿集 (2)令和元年5月29日に開催された第68回高分子学会年次大会のポスター (3)令和元年9月11日に発行された第68回高分子討論会の予稿集 (4)令和元年10月18日に発行された第40回日本熱物性シンポジウムの予稿集
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(73)【特許権者】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】上利 泰幸
(72)【発明者】
【氏名】岡田 哲周
(72)【発明者】
【氏名】門多 丈治
(72)【発明者】
【氏名】平野 寛
(72)【発明者】
【氏名】稲川 寿盛
(72)【発明者】
【氏名】稲木 喜孝
(72)【発明者】
【氏名】金近 幸博
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-110179(JP,A)
【文献】特開2017-088696(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235234(WO,A1)
【文献】特開2001-342074(JP,A)
【文献】特開2014-031484(JP,A)
【文献】特開2018-177546(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031782(WO,A1)
【文献】特開2016-135841(JP,A)
【文献】国際公開第2010/109960(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/221504(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 15/00-23/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系溶媒中で窒化アルミニウム粒子の表面に水酸化亜鉛を析出させる析出工程と、前記析出工程で得られた窒化アルミニウム粒子Aを600~900℃で焼成する焼成工程を含むことを特徴とする複合窒化アルミニウム粒子の製造方法。
【請求項2】
前記析出工程を、亜鉛塩と窒化アルミニウム粒子を含む水系溶媒中に塩基性物質を添加することにより行う請求項1に記載の複合窒化アルミニウム粒子の製造方法。
【請求項3】
窒化アルミニウム粒子の少なくとも一部の表面に、アルミニウムと亜鉛の複合酸化物層を介して酸化亜鉛が固着していることを特徴とする複合窒化アルミニウム粒子。
【請求項4】
請求項3に記載した複合窒化アルミニウム粒子を含むことを特徴とする熱伝導性フィラー。
【請求項5】
請求項4記載の熱伝導性フィラーを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合窒化アルミニウム粒子の製造方法、及び複合窒化アルミニウム粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱伝導性を向上させた樹脂材として熱伝導性フィラーを含む樹脂組成物やその成形体が知られている。該樹脂組成物又はその成形体は、電子機器や機械装置内において発熱体の支持や封止のほか、ヒートシンク、あるいは発熱体と金属製のヒートシンクとの間に配置される熱伝導性絶縁材料として用いられている。例えば特許文献1には、放熱部材の材料として電気絶縁性を有する樹脂に熱伝導性フィラーを添加した熱伝導性樹脂が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1に記載された熱伝導性樹脂においては、充填するフィラーとして高熱伝導率のフィラーを用いても、充填率を高くしないと十分な熱伝導率を得ることができないことが記載されている。特に窒化アルミニウムやダイアモンドなどの硬質フィラーの場合には、それらより熱伝導率が低いアルミナなどと比べて顕著な熱伝導率の上昇が見られないことが知られている。
その原因は、硬質フィラー間の接触は点接触になりやすく、熱伝導経路を形成させようとしても接触熱抵抗を生じやすいためである。そのため硬質フィラーで高い熱伝導率を得るには高充填させる必要がある。
【0003】
硬質フィラー充填の際の接触熱抵抗を減少させる方法として、硬質フィラーと軟質フィラーを組合せる試みがなされている。しかしそのほとんどは、特許文献2のように、両者を混合するだけのものであり、仮に均一に混合して、硬質フィラーの周囲に軟質フィラーを配置できたとしても、樹脂との混練によってその配置が崩れ、十分な熱伝導率向上効果が発揮されない。
一方特許文献3では、熱伝導率が高くかつ硬質な炭化ケイ素粒子の表面に複数の酸化マグネシウム粒子を固着させることで高い熱伝導性を示す複合フィラーが報告されている。しかし同じく硬質フィラーである窒化アルミニウムにおいては、軟質フィラーとの結合や吸着力が得られにくく、窒化アルミニウムの周りに軟質フィラーを保持することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-281467号公報
【文献】特開2017-88696号公報
【文献】特開2017-154937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、硬質なフィラーである窒化アルミニウム粒子について、樹脂に充填した場合に、従来よりも接触熱抵抗を低減させることができ、これにより熱伝導性に優れる複合窒化アルミニウムの製造方法、及び複合窒化アルミニウムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、水系溶媒中で窒化アルミニウム粒子の表面に水酸化亜鉛を析出させる析出工程と、前記析出工程で得られた窒化アルミニウム粒子Aを600℃以上で焼成する焼成工程を含む複合窒化アルミニウム粒子の製造方法により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の要旨は、以下の[1]~[5]である。
[1]水系溶媒中で窒化アルミニウム粒子の表面に水酸化亜鉛を析出させる析出工程と、前記析出工程で得られた窒化アルミニウム粒子Aを600℃以上で焼成する焼成工程を含むことを特徴とする複合窒化アルミニウム粒子の製造方法。
[2]前記析出工程を、亜鉛塩と窒化アルミニウム粒子を含む水系溶媒中に塩基性物質を添加することにより行う上記[1]に記載の複合窒化アルミニウム粒子の製造方法。
[3]窒化アルミニウム粒子の少なくとも一部の表面に、アルミニウムと亜鉛の複合酸化物層を介して酸化亜鉛が固着していることを特徴とする複合窒化アルミニウム粒子。
[4]上記[3]に記載した複合窒化アルミニウム粒子を含むことを特徴とする熱伝導性フィラー。
[5]上記[4]記載の熱伝導性フィラーを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹脂に充填した際に、熱伝導性に優れる複合窒化アルミニウム粒子の製造方法、及び複合窒化アルミニウム粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】製造例1で製造した熱伝導性フィラーの走査型電子顕微鏡写真である。
図2】製造例2で製造した熱伝導性フィラーの走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[複合窒化アルミニウム粒子の製造方法]
本発明の複合窒化アルミニウム粒子の製造方法は、水系溶媒中で窒化アルミニウム粒子の表面に水酸化亜鉛を析出させる析出工程と、前記析出工程で得られた窒化アルミニウム粒子Aを600℃以上で焼成する焼成工程を含む。
【0011】
<析出工程>
析出工程は、水系溶媒中で窒化アルミニウム粒子の表面に水酸化亜鉛を析出させる工程である。該析出工程により、表面に水酸化亜鉛が付着した窒化アルミニウム粒子Aが生成する。
析出工程で使用する水系溶媒は、水が含まれている溶媒であり、水のみからなる溶媒であっても、水とアルコール等の親水性有機溶媒との混合溶媒であってもよいが、水のみからなる溶媒であることが好ましい。ここで、水としてはイオン交換水、蒸留水などを用いることが好ましい。
【0012】
析出工程では、後述する窒化アルミニウム粉末を水系溶媒と混合させ、水系溶媒中で窒化アルミニウム粒子の表面に水酸化亜鉛を析出させる工程である。
水系溶媒中で窒化アルミニウム粒子の表面に水酸化亜鉛を析出させる手段は特に限定されるものではないが、水酸化亜鉛を析出させやすくする観点、熱伝導性の高い複合窒化アルミニウム粒子を得やすくする観点などから、窒化アルミニウム粒子と亜鉛塩とを含む水系溶媒に、塩基性物質を添加することにより水酸化亜鉛を析出させる方法が好ましい。
窒化アルミニウム粒子と亜鉛塩とを含む水系溶媒は、後述する公知の方法で製造した窒化アルミニウム粉末と亜鉛塩とを水系溶媒中で混合することにより得られる。
具体的には、水系溶媒に亜鉛塩と窒化アルミニウム粉末とを加え、混合して懸濁液を作製する。そして、該懸濁液に、塩基性物質を添加することにより、水溶液を塩基性にして、水酸化亜鉛を生成させる。水酸化亜鉛は、塩基性の懸濁液中で溶解せず、浮遊して存在していてもよい。水酸化亜鉛は、窒化アルミニウム粒子の表面の少なくとも一部に付着し、後述する焼成工程で、窒化アルミニウム粒子表面に固着した酸化亜鉛となる。以下、析出工程において用いる各原料と、析出条件について説明する。
【0013】
<窒化アルミニウム粉末>
《製法》
窒化アルミニウム粉末は、窒化アルミニウム粒子から構成されるものであり、その製造方法としては、直接窒化法、還元窒化法、気相合成法、焼結法など公知の方法が挙げられる。
【0014】
《粒子径、粒度分布》
窒化アルミニウム粉末の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは0.7~120μmであり、より好ましくは0.7~100μmである。なお平均粒径は、レーザー回折散乱型粒度分布計で測定される粒度分布において、累積体積50%における粒径(D50)を意味することとする。
また、窒化アルミニウム粉末は、レーザー回折散乱型粒度分布計で測定される体積頻度の極大値が1つまたは2つである方が、樹脂への充填性が良くなり好ましい。上記極大値が2つの場合は、いずれか一方の体積頻度がもう一方の体積頻度の3倍以上が望ましい。
このような粒度分布を持つ窒化アルミニウム粉末は、各種製法で得ることができるが、必要に応じてボールミル、ジェットミル等で解砕するか、または振動篩や気流分級装置などの分級操作を施すことで、後述する樹脂への充填性を改善できる。
【0015】
《粒子形状》
窒化アルミニウム粉末は、一次粒子である複数の窒化アルミニウム粒子を含む。一次粒子の形状は特に限定されるものではなく、例えば不定形状、球状、多面体状、柱状、ウィスカー状、平板状など任意の形状であることができる。中でも、樹脂への充填性が良好で、熱伝導率の再現性の高い球状が望ましい。また、粒子のアスペクト比が小さい方が、樹脂への充填性および絶縁性の観点から望ましい。好適なアスペクト比は1~3である。
また、窒化アルミニウム粉末は、一次粒子の凝集粒子を含んでもよい。凝集粒子は、樹脂への充填性を低減する原因となることがあり、樹脂との混練や溶媒への分散によって凝集が解かれる性状、または内部空隙の少ない凝集粒子が望ましい。なお、凝集粒子は分級操作等で除去しても良い。
【0016】
《不純物》
窒化アルミニウム粉末には、原料由来あるいは合成法上で意図的に添加されたアルカリ土類元素、希土類元素などの不純物を、5質量%程度を上限として含んでもよい。また、凝集防止剤やセッター由来の不純物として窒化ホウ素を、5質量%程度を上限として含んでもよい。ただし、熱伝導率の低下を抑制する観点から、窒化アルミニウム粉末における窒化アルミニウム含有率は90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
【0017】
《酸化被膜》
本発明において使用する窒化アルミニウム粉末は、加水分解性を抑える観点、あるいは水酸化亜鉛から形成される酸化亜鉛との結合性を高める観点から、その表面に酸化アルミニウム層を有しても良い。この酸化アルミニウム層は、窒化アルミニウム粉末を保管する際の自然酸化によって形成された酸化膜層であってもよく、意識的に行う酸化処理工程によって形成された酸化膜層であってもよい。この酸化処理工程は、窒化アルミニウム粉末の製造過程において行ってもよく、あるいは窒化アルミニウム粉末を製造した後に、別個の工程として行ってもよい。例えば、還元窒化法によって得られる窒化アルミニウム粉末は、反応時に使用する炭素を除去する目的で、製造過程に酸化処理工程を経るため、表面には酸化アルミニウム層が存在する。そうして得られた還元窒化法で製造された窒化アルミニウム粉末に対し、さらに追加で酸化処理工程を行ってもよい。直接窒化法や焼結法では、酸化処理工程が無いため、必要に応じて追加で酸化処理工程を行ってもよい。
【0018】
酸化処理工程を別個の工程として行う場合、その条件は以下のとおりである。
酸化処理工程は、各種方法で得られた窒化アルミニウム粉末を酸素含有雰囲気下で加熱して行う。これにより、窒化アルミニウム粒子表面に酸化アルミニウム層を形成することができる。この際、加熱温度は、好ましくは400~1,000℃、より好ましくは600~900℃である。加熱時間は、好ましくは10~600分、より好ましくは30~300分である。上記酸素含有雰囲気としては、例えば酸素、空気、水蒸気、二酸化炭素などを使用することができるが、空気中、特に大気圧下における処理で行っても、酸化アルミニウム層を形成することができる。
【0019】
一方、酸化処理は900℃以下で行うことが好ましく、この場合、窒化アルミニウム粒子表面に、厚い酸化アルミニウム層が形成されるのを抑制し、これにより窒化アルミニウムと酸化アルミニウム層との熱膨張係数の違いに起因する酸化膜層の割れを防止でき、その結果コアの窒化アルミニウム粒子の表面が露出しなくなる。表面が露出していない窒化アルミニウム粒子は、酸化亜鉛との結合性、及び耐加水分解性が良好となる。
また、窒化アルミニウム粒子の酸化アルミニウム層の厚みは、好ましくは粒子の直径の0.005%~0.2%である。酸化アルミニウム層の厚みがこのような範囲であると、窒化アルミニウム粉末の熱伝導率を高く維持しつつ、酸化亜鉛との結合性、及び耐加水分解性が良好となる。
【0020】
窒化アルミニウム粉末は、予め表面処理されていても良い。予め表面処理することにより、窒化アルミニウム粒子同士の凝集がほぐれ、個々の窒化アルミニウム粒子表面へ水酸化亜鉛を析出させやすくなり、所望の複合窒化アルミニウム粒子を得やすくなる。さらに樹脂への充填性が向上し、その結果、熱伝導率の高い複合窒化アルミニウム粒子が得やすくなる。樹脂への充填性に影響する凝集体は、粒子の表面水酸基同士の水素結合などが原因となり粒子同士が強く結び付いて、粗大な塊状物を形成した状態であるが、表面処理によりそうした結びつきが弱くなり凝集しにくくなると考えられる。
【0021】
<亜鉛塩>
析出工程において使用する亜鉛塩としては、水系溶媒中で窒化アルミニウム粒子表面に水酸化亜鉛を析出させることが可能な化合物であれば特に制限されない。亜鉛塩としては、水溶性を有する塩であり、かつアルカリ水溶液中で水酸化亜鉛となりうる化合物であることが好ましく、例えば、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、などが使用できるが、中でも酢酸亜鉛が安全性や廃液処理の容易さの理由で好ましい。また、酢酸亜鉛としては、より水への溶解性の高さの理由で2水和物を使用することが好ましい。
【0022】
析出工程において使用する亜鉛塩の量は、後述する焼成工程を経て、酸化亜鉛が形成された際の、窒化アルミニウム粒子と酸化亜鉛のモル比が所定の範囲となるように調整することが好ましい。具体的には、窒化アルミニウム粒子と酸化亜鉛のモル比(窒化アルミニウム/酸化亜鉛)が、好ましくは60/40~97/3、より好ましくは70/30~95/5となるように、亜鉛塩を配合することが好ましい。なお該モル比(窒化アルミニウム/酸化亜鉛)は、原料とし使用する窒化アルミニウム粉末におけるアルミ原子と、亜鉛塩(例えば酢酸亜鉛)の亜鉛原子のモル比(アルミニウム原子/亜鉛原子)と同じである。
モル比(窒化アルミニウム/酸化亜鉛)がこれら下限値以上であると、熱伝導率の低い酸化亜鉛が多量に形成されることを抑制でき、熱伝導率が向上する。アルミ原子/亜鉛原子がこれら上限値以下であると、一定量以上の酸化亜鉛が形成され、複合窒化アルミニウム粒子を樹脂に充填した際に、粒子同士が面接触しやすくなり、その結果熱伝導率が向上する。
【0023】
(塩基性物質)
析出工程で使用する塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などが挙げられる。塩基性物質の添加は、水酸化亜鉛が形成される量に調整すればよいが、水系溶媒のpHが好ましくは10~14になるように添加すればよい。
【0024】
(析出条件)
水系溶媒中での窒化アルミニウム粒子の加水分解を抑制する観点から、析出工程における窒化アルミニウム粒子の水系溶媒への浸漬時間は、好ましくは90分以下であり、より好ましくは60分以下である。また、水系溶媒の温度は好ましくは50℃以下、より好ましくは15℃以下である。
【0025】
上記説明した析出工程により表面に水酸化亜鉛が付着した窒化アルミニウム粒子Aが生成する。析出工程終了後、窒化アルミニウム粒子Aを含む溶液を、速やかに固液分離操作をして、得られた固形物を水又はアルコールで洗浄することにより塩基性物質を除去し、乾燥することが好ましい。固液分離操作としては、フィルターを利用したヌッチェろ過、遠心ろ過、フィルタープレスなどが、その後の水洗操作がしやすく好ましい。乾燥時の雰囲気は、空気中、不活性ガス中、真空中のいずれでも良い。乾燥の温度は50~180℃が望ましい。
【0026】
なお、本析出工程では、表面に水酸化亜鉛が付着した窒化アルミニウム粒子A以外にも、通常は、相互に付着していない窒化アルミニウム粒子及び水酸化亜鉛など窒化アルミニウム粒子A以外の他の成分も同時に得られる。したがって、本析出工程では、窒化アルミニウム粒子Aを含むフィラーの組成物(後述する熱伝導性フィラーの前駆体)が得られる。
【0027】
<焼成工程>
焼成工程は、上記析出工程で得られた窒化アルミニウム粒子Aを600℃以上で焼成する工程である。焼成することにより、窒化アルミニウム粒子に付着していた水酸化亜鉛が酸化亜鉛となり、本発明の複合窒化アルミニウム粒子が得られる。該複合窒化アルミニウム粒子は、後述するように窒化アルミニウムの少なくとも一部の表面に酸化亜鉛が固着し、これにより粒子表面の少なくとも一部に酸化亜鉛層が形成されている。前記固着は、アルミニウムと亜鉛の複合酸化物層を介してなされている。ここで、アルミニウムと亜鉛の複合酸化物とは、例えば、アルミン酸亜鉛(ZnAl)が挙げられる。
焼成温度は600~900℃が好ましく、600~800℃がより好ましい。焼成温度が600℃未満であると、形成される酸化亜鉛の結晶性が低くなり、酸化亜鉛層の熱伝導率が高くならず、その結果、得られる複合窒化アルミニウム粒子の熱伝導率が低下する。一方、焼成温度を900℃以下とすることにより、熱伝導率が低いアルミニウムと亜鉛の複合酸化物層の生成を抑制し、その結果、得られる複合窒化アルミニウム粒子の熱伝導率が高くなる。
焼成雰囲気については、特に限定されないが、酸化亜鉛が生成しやすいため、酸素を含む雰囲気であることが好ましい。
上記した析出工程、及び焼成工程を含む方法により、複合窒化アルミニウム粒子が製造される。
【0028】
[複合窒化アルミニウム粒子]
本発明の複合窒化アルミニウム粒子は、窒化アルミニウム粒子の少なくとも一部の表面に、アルミニウムと亜鉛の複合酸化物層を介して酸化亜鉛が固着していることを特徴とする複合窒化アルミニウム粒子である。
【0029】
本発明の複合窒化アルミニウム粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察写真を図1に示す。図1は、後述する製造例1により得た熱伝導性フィラーのSEM観察写真である。窒化アルミニウム粒子11の少なくとも一部の表面に、酸化亜鉛12が固着した複合窒化アルミニウム粒子13が観察されている。図1における符号「11」及び「12」で示すものがそれぞれ窒化アルミニウム粒子及び酸化亜鉛であることは、走査型電子顕微鏡(SEM)に備えられるエネルギー分散型X線分光器(EDX)による元素分析の結果から明らかである。
また、窒化アルミニウム粒子表面の酸化亜鉛の固着は、アルミニウムと亜鉛の複合酸化物層を介してなされている。ここで、アルミニウムと亜鉛の複合酸化物とは、例えばアルミン酸亜鉛(ZnAl)などを意味する。アルミン酸亜鉛の生成は、X線回折のパターンから確認されている。アルミン酸亜鉛は、窒化アルミニウム表面の酸化アルミニウムと、水酸化亜鉛又は酸化亜鉛が反応することにより生成したものと推定される。
【0030】
本発明の複合窒化アルミニウム粒子13は、窒化アルミニウム粒子11表面に酸化亜鉛12が固着している。さらに、図1に示すように、少なくとも一部の酸化亜鉛12は、複合窒化アルミニウム粒子11同士をつなぐように存在している。
そのため、複合窒化アルミニウム粒子13を樹脂に高充填して加圧プレスした場合であっても、窒化アルミニウム粒子13の表面から酸化亜鉛12が脱離し難い。酸化亜鉛はモース硬度が4~5と低く、軟質なフィラーであるため、樹脂中で複合窒化アルミニウム粒子間に介在して粒子同士をつなぐ役割を果たし、その結果、樹脂中で複合窒化アルミニウム粒子同士が面接触しやすくなり、熱伝導率が向上すると考えられる。
【0031】
これに対して、従来のように窒化アルミニウム粒子と酸化亜鉛とを単に混合して複合化する場合は、窒化アルミニウム粒子の表面上に酸化亜鉛が付着するのみであり、本発明の複合窒化アルミニウム粒子と比較すると、窒化アルミニウム粒子と酸化亜鉛との密着力が弱い。そのため、表面に酸化亜鉛が付着した従来の窒化アルミニウム粒子を樹脂に充填してプレスした場合は、酸化亜鉛が脱離しやすく、その結果、窒化アルミニウム同士の接触が点接触になり、熱伝導率が低くなると考えられる。
【0032】
[熱伝導性フィラー]
本発明の熱伝導性フィラーは、上記した複合窒化アルミニウム粒子を含むものである。該熱伝導性フィラーは、上記した析出工程で得られた熱伝導性フィラーの前駆体を焼成することで得られるものである。析出工程では、上記した通り、水酸化亜鉛が表面に付着した窒化アルミニウム粒子A以外にも、その他の成分が生成しうる。そのため、焼成工程により、複合窒化アルミニウム粒子の他に、窒化アルミニウム粒子の凝集物、酸化亜鉛の微粉、酸化亜鉛の微粉の凝集物などが生成しうる。
本発明の熱伝導性フィラーは、上記複合窒化アルミニウム粒子の他に、窒化アルミニウム粒子の凝集物、酸化亜鉛の微粉、酸化亜鉛の微粉の凝集物などを含んでもよい。
熱伝導性フィラーにおける、窒化アルミニウム粒子と酸化亜鉛の合計100モル%に対する酸化亜鉛の量は、好ましくは3~40モル%、より好ましくは5~30モル%である。
【0033】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、上記した熱伝導性フィラーを含む樹脂組成物である。該樹脂組成物は、樹脂中に熱伝導性フィラーが分散しており、高い熱伝導性を有する。樹脂の種類は、特に限定されず、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれでもよい。
上記熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、フッ素樹脂(例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなど)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン-アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル(例えばポリメタクリル酸メチルなど)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル(例えばポリアクリル酸メチルなど)、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、アイオノマーなどが挙げられる。
上記熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、熱硬化型変性PPE、熱硬化型PPEなどを挙げることができる。
【0034】
樹脂と熱伝導性フィラーとを混合するための混合装置としては、例えば、ロール、ニーダ、バンバリーミキサー、自転・公転ミキサー等の通常の混練機が好ましく使用される。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、公知の方法により成形して成形体としてもよい。成形方法としては、例えば、射出成形、トランスファ成形、押出成形、バルクモールディングコンパウンド成形、圧縮成形、溶剤等を用いたキャスティングによる成形などを挙げることができるが、本発明の効果を発揮させやすい観点から、圧縮成形により成形体を形成させることが好ましい。本発明の樹脂組成物は、上記した複合窒化アルミニウム粒子を含むため、圧縮成形時に酸化亜鉛が窒化アルミニウム粒子から脱離し難いため、窒化アルミニウム粒子同士が面接触しやすくなり成形体の熱伝導性が良好となる。
また、表面に酸化亜鉛が固着していない通常の窒化アルミニウム粒子は硬度が高く、成形装置の接触部材などの成形時に使用する部材や、成形体の使用対象物などを摩耗させてしまう場合があるが、本発明の複合窒化アルミニウム粒子は、表面に軟質の酸化亜鉛が固着しているため、上記した摩耗が抑制される。
成形体の形状は、特に限定されず、シート状、フィルム状、円盤状、矩形状等が挙げられる。
【0036】
上記成形体は、各種放熱部材として使用することが好ましい。例えば家電製品、自動車、ノート型パーソナルコンピュータなどに搭載される半導体部品からの発熱を効率よく放熱するための放熱部材として使用することが好ましい。放熱部材の具体例としては、例えば放熱グリース、放熱ゲル、放熱シート、フェイズチェンジシート、接着剤などを挙げることができる。これら以外にも、例えばメタルベース基板、プリント基板、フレキシブル基板などに用いられる絶縁層、半導体封止剤、アンダーフィル、筐体、放熱フィンなどとしても使用することができる。
【実施例
【0037】
以下、本発明をさらに具体的に説明するため実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、各種物性の測定は以下の方法によって行ったものである。
【0038】
[平均粒径]
窒化アルミニウム粉末をエタノール中に1質量%濃度になるように加え、200W程度の超音波照射を3分行った後、レーザー回折散乱型粒度分布計を用いて粒度分布を測定した。粒子径の体積頻度分布において、体積頻度の累積値が50%となるところの粒径の値をD50とし、これを平均粒径とした。
【0039】
[熱伝導率]
各成形体の室温(25℃)での熱伝導率を、熱拡散率、比熱、及び密度の積により算出した。熱拡散率は、熱定数測定装置(アルバック理工(株)製TC7000)を用いてレーザーフラッシュ法により測定した。比熱は示差走査熱量計(DSC,セイコ-インスツルメント(株)製、DSC6200)により測定した。密度は浮沈法により測定した。
【0040】
[走査型電子顕微鏡]
各製造例で得た熱伝導性フィラーを走査型電子顕微鏡(SEM-EDX)にて観察した。装置は日本電子製JSM-6610LAを使用した。
【0041】
[粉末X線回折]
各製造例で得た熱伝導性フィラーについて、結晶構造を広角X線回折装置にて分析した。装置はリガク製SmartLabを使用した。
【0042】
[粉体の圧縮性]
深さ3mm、直径φ30mmの金型に粉末を入れ、毎分1mmの速度で圧縮していった際の、圧力Pに対する厚みの変位を調べた。変位と粉末成分の比重から圧密粉末中の空間量εを計算した。下記式(1)に従って、lnPを横軸、εを縦軸にしてプロットし、最小二乗法を用いて得た近似直線の傾き、-(1/F)と切片cを得た。この傾きから求めたF値は粉末の圧縮性を表し、F値が小さいほど粉末が圧密しやすくなる、即ち粉末の柔らかさの指標となる。cは粉末固有の圧縮定数であり、かさ密度などに依存する。
ε=-(1/F)・lnP+c (1)
【0043】
[使用材料]
実施例及び比較例で用いた窒化アルミニウム粉末、亜鉛塩、溶媒は以下のとおりである。
<窒化アルミニウム粉末>
還元窒化法により得た、またはそれを焼結した、以下の窒化アルミニウム粉末を用いた。
AlN1・・古河電子(株)製「FAN-15-Al」、平均粒径(D50)=8μm
AlN2・・(株)トクヤマ製「HF-01D」、平均粒径(D50)=0.7μm
AlN3・・古河電子(株)製「FAN-30-Al」、平均粒径(D50)=31.3μm
AlN4・・古河電子(株)製「FAN-50-Al」、平均粒径(D50)=59.3μm
<亜鉛塩>
酢酸亜鉛2水和物 (Zn(Ac)・2HO)
<酸化亜鉛>
製造例9に示す方法で作製した酸化亜鉛粉末
<溶媒>
蒸留水
【0044】
(製造例1)
蒸留水に、酢酸亜鉛2水和物及び窒化アルミニウム粉末(AlN1)を表1に記載したモル比で加えて混合し、懸濁液を作製した。なお、表1に記載のモル比は、配合した窒化アルミニウムのアルミ原子と、酢酸亜鉛の亜鉛原子のモル比に相当する。
続いて懸濁液に、濃度3.33mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を15分かけて滴下し塩基性の懸濁液とした後、23℃で1時間撹拌し水酸化亜鉛を生成させた。塩基性の懸濁液のpHは13であった。懸濁液を減圧ろ過して、固形物を得て、該固形物をメタノール100mlで洗浄した後、120℃の恒温槽中、空気雰囲気で17時間乾燥し、表面に水酸化亜鉛が付着した窒化アルミニウム粒子Aを含む熱伝導性フィラーの前駆体を得た。
上記熱伝導性フィラーの前駆体を電気炉内に導入し、700℃で2時間焼成し、本発明の複合窒化アルミニウム粒子を含む熱伝導性フィラーを得た。
得られた熱伝導性フィラーを走査型電子顕微鏡により観察した結果を図1に示した。図1の説明については前述したとおりであり、窒化アルミニウム粒子11の少なくとも一部の表面に、酸化亜鉛12が固着した複合窒化アルミニウム粒子13が観察された。また、得られた熱伝導性フィラーについてX線回折測定を行った結果、ごく僅かなアルミン酸亜鉛(ZnAl)の生成が確認された。
以上の結果より、製造例1により本発明の複合窒化アルミニウム粒子が製造されたことを確認した。
【0045】
(製造例2~8)
使用した窒化アルミニウム粉末の種類、酢酸亜鉛2水和物の配合量(AlNとZnOのモル比)を表1のとおり変更した以外は、製造例1と同様にして熱伝導性フィラーを得た。
製造例2で得られた熱伝導性フィラーについて、走査型電子顕微鏡観察を行った。その結果、図2に示すように窒化アルミニウム粒子11の少なくとも一部の表面に、酸化亜鉛12が固着した複合窒化アルミニウム粒子13が観察された。また、得られた熱伝導性フィラーについてX線回折測定を行った結果、ごく僅かなアルミン酸亜鉛(ZnAl)の生成が確認された。
(製造例9)
窒化アルミニウム粉末を加えないこと以外は製造例1と同様の方法で、酸化亜鉛のみからなる粉末を得た。
【0046】
(実施例1)
製造例2で得られた熱伝導性フィラー6.15g、エポキシ樹脂(ビスフェノールFタイプ;三菱ケミカル製jER807)0.94g、アミン系硬化剤(ジシアノジシクロヘキサシルエタン;三菱ケミカル製jERキュア113)0.4gをメノウ乳鉢で混練し、表2に示すフィラー充填率60vol.%の樹脂組成物とした。次いで、該樹脂組成物を圧縮成形機(神籐金属工業所製F-37)により圧縮成形した。成形にはSUS製の円筒状の治具を用いた。圧縮成形は、プレス圧力は2.2GPa、温度423K、硬化時間20分の条件で実施し、φ10mm、厚み1mmの円盤状の成形体を得た。得られた成形体の評価結果を表2に示した。
【0047】
(実施例2~25)
熱伝導性フィラーの種類、熱伝導性フィラーとエポキシ樹脂とアミン系硬化剤の量、フィラー充填率、及びプレス圧力を表2~3に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体の評価結果を表2~3に示した。また、実施例16~19に関しては、製造例5~8で得た熱伝導性フィラー粉末それぞれの圧縮性の評価結果を表3に示した。
【0048】
(比較例1)
窒化アルミニウム粉末としてAlN1を用いて、これを実施例1と同様にエポキシ樹脂及びアミン系硬化剤と混合して、フィラー充填率60vol.%の樹脂組成物を得て、実施例1と同様にして圧縮成形を行い、成形体を得た。得られた成形体の評価結果を表2に示した。
【0049】
(比較例2~3)
熱伝導性フィラーとエポキシ樹脂とアミン系硬化剤の量、及びフィラー充填率を表2のとおり変更した以外は、比較例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体の評価結果を表2に示した。
【0050】
(比較例4)
窒化アルミニウム粉末であるAlN1と製造例9で得た酸化亜鉛粉末とを表2に記載のモル比で混合し混合フィラーを得た。該混合フィラーを熱伝導性フィラーとして用いて、これを実施例1と同様にエポキシ樹脂及びアミン系硬化剤と混合して、フィラー充填率60体積%の樹脂組成物を得て、実施例1と同様にして圧縮成形を行い、成形体を得た。得られた成形体の評価結果を表2に示した。
【0051】
(比較例5~6)
フィラー充填率を表2のとおり変更した以外は、比較例4と同様にして、成形体を得た。得られた成形体の評価結果を表2に示した。
(比較例7)
窒化アルミニウム粉末にAlN4を用い、フィラー充填率を表3のとおりに変更した以外は、比較例1と同様にして成形体を得た。また、AlN4粉末の圧縮性評価の結果を表3に示した。
(比較例8~10)
窒化アルミニウム粉末にAlN4を用い、フィラー充填率を表3のとおりに変更した以外は、比較例4と同様にして成形体を得た。また、AlN4粉末の圧縮性評価の結果を表3に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
フィラー充填量が同じ実施例と比較例の成形体を比較すると、実施例の成形体の方が、熱伝導率が高い結果となった。よって、本発明の製造方法により、樹脂に充填した際に熱伝導率が向上する複合窒化アルミニウム粒子が得られることが分かった。また、該複合窒化アルミニウム粒子は、窒化アルミニウム粒子の少なくとも一部の表面に、アルミニウムと亜鉛の複合酸化物層を介して酸化亜鉛が固着していることが分かった。
表3に示した粉体の圧縮性の結果では、酸化亜鉛を被覆させた窒化アルミニウム粒子の方が、酸化亜鉛なし、および酸化亜鉛粉末混合のみの場合と比較して、圧縮性Fの値が小さくなった。該複合窒化アルミニウム粒子を含む粉末は、窒化アルミニウム粒子に軟質な酸化亜鉛が固着しているため、圧縮の際に窒化アルミニウム粒子間で酸化亜鉛が変形することで、圧縮性の値が小さくなる、即ち粉末が柔らかくなると推測される。
【符号の説明】
【0056】
11 窒化アルミニウム粒子
12 酸化亜鉛
13 複合窒化アルミニウム粒子

図1
図2