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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】車輪駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B64C 25/36 20060101AFI20231208BHJP
   B64C 25/40 20060101ALI20231208BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20231208BHJP
   F16D 27/118 20060101ALI20231208BHJP
   F16D 11/10 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
B64C25/36
B64C25/40
F16H1/28
F16D27/118
F16D11/10 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020036874
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021138258
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】小澤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 克之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 卓
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-126023(JP,A)
【文献】特開昭60-220242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 25/36
B64C 25/40
F16H 1/28
F16D 27/118
F16D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機のタキシングに用いられるインホイールモータ型車輪駆動装置であって、
ステータ(21)及びロータ(22)を有する電動モータ(2)と、
前記ロータ(22)と一体に回転する駆動軸(24)と、
前記駆動軸(24)と一体に回転すると共に減速機構としての遊星歯車機構(3)の一部をなす太陽歯車(30)と、
第1歯車部(34)及び第2歯車部(35)をそれぞれ有し、前記第1歯車部(34)が前記太陽歯車(30)に噛み合う複数の遊星歯車(31)と、
前記複数の遊星歯車(31)の前記第1歯車部(34)に噛み合うと共に、側面に第1歯型形状部(32a)を有する第1内歯車(32)と、
前記第1内歯車(32)の前記第1歯型形状部(32a)に対して接離自在な第2歯型形状部(40a)を有するクラッチディスク(40)を有し、前記第1内歯車(32)を固定する状態と前記第1内歯車(32)の回転を許容する状態とに切り替え可能な電磁クラッチ機構(4)と、
前記クラッチディスク(40)の回り止め部(40b)に対し、回り止め部(10b)を有するアウターケース(10)と、
前記複数の遊星歯車(31)の前記第2歯車部(35)に噛み合う第2内歯車(33)と、
前記第2内歯車(33)と一体に回転する出力軸(38)と、
を備え、前記遊星歯車機構(3)は、不思議遊星歯車の3K型よりなることを特徴とするインホイールモータ型車輪駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インホイールモータ型車輪駆動装置に関し、特に、電磁クラッチ機構で減速機構を切り離すことにより、外部力によって回転する電動モータのロータに加わる遠心力及びロータで発生する回生電力を少なくするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、電気自動車などには、インホイールモータ型車輪駆動装置が用いられている。この種の車輪駆動装置においては、インホイールモータと呼ばれるモータを駆動源として車輪を回転させる。その際、モータの駆動力をホイールに伝達するための動力伝達機構として、遊星歯車機構を用いたものが知られている(たとえば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9511853号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、モータの駆動力を利用して自動車などの車両を走行させる場合は、モータに要求されるトルクを低減するために、遊星歯車機構の減速比を大きく確保することが好ましい。ただし、遊星歯車機構の減速比を大きくすると、例えば、航空機用の車輪駆動装置として用いる場合に次のような不具合が生じていた。
【0005】
前記、インホイールモータ型車輪駆動装置を航空機に用いる場合は、飛行場の誘導路を航空機が移動する、いわゆるタキシングのときに、航空機の車輪を車輪駆動装置によって回転させることになる。その際、自動車に比べて重量が重い航空機を移動させるには、遊星歯車機構の減速比を大きく確保する必要がある。ただし、航空機用の車輪駆動装置では、インホイールモータを駆動していない場合にも、タキシング以外の着陸時及び離陸時に外部力によって車輪が高速で回転することがある。すなわち、航空機の着陸時あるいは離陸時においては、タキシング時にくらべて航空機の車輪が非常に高速で回転する。また、車輪駆動装置における動力の伝達経路は、モータの駆動をともなうタキシング時とは逆になる。このため、車輪の回転が内蔵の遊星歯車機構により増速されてモータ側に伝達され、モータのロータに大きい遠心力が加わってしまう。また、モータには大きい回生電力(逆起電力)が発生するため、これを吸収するには大型の抵抗器を内蔵する周辺機器の大型化が必要になる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、外的要因によって車輪が高速で回転する場合に、モータのロータに加わる遠心力及び発生する回生電力を低減することができる車輪駆動装置を提供することにある。
なお、本発明によるインホイールモータ型車輪駆動装置のホイールは車軸に直接取付けられるため、着陸時等の発生時に加わる脚の垂直荷重はホイールから車軸に直接負荷される構造であり、インホイールモータには入らないように構成されているため、外部力は回転のみを考慮すればよいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインホイールモータ型車輪駆動装置は、ステータ及びロータを有する電動モータと、前記ロータと一体に回転する駆動軸と、前記駆動軸と一体に回転すると共に減速機構としての遊星歯車機構の一部をなす太陽歯車と、第1歯車部及び第2歯車部をそれぞれ有し、前記第1歯車部が前記太陽歯車に噛み合う複数の遊星歯車と、前記複数の遊星歯車の第1歯車部に噛み合うと共に、側面に第1歯型形状部を有する第1内歯車と、前記第1内歯車の前記第1歯型形状部に対して接離自在な第2歯型形状部を有するクラッチディスクを有し、前記第1内歯車を固定する状態と第1内歯車を回転する状態とに切り替え可能な電磁クラッチ機構と、前記クラッチディスクの回り止め部を有するアウターケースと、前記複数の遊星歯車の第2歯車部に噛み合う第2内歯車と、前記第2内歯車と一体に回転する出力軸と、を備え、前記遊星歯車機構は、不思議遊星歯車の3K型よりなる車輪駆動装置。
【0008】
本発明による車輪駆動装置は、航空機用の車輪駆動装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明による車輪駆動装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。すなわち、外部力によって車輪が高速で回転する場合に、モータのロータに加わる遠心力及び発生する回生電力を、電磁クラッチ機構により、ロータの回転速度を下げることによって低減することができる。
そのため、強力な遠心力によるロータの損傷及び強力な回生電力を捨てるための大型装置の導入を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る車輪駆動装置の全体構成を示す縦断面図である。
図2図1の要部を示す拡大断面図である。
図3図1の要部を示す拡大断面図である。
図4】本発明の車輪駆動装置にホイールが適用された状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明によるインホイールモータ型車輪駆動装置の好適な実施の形態について説明する。なお、本願明細書において、「インホイールモータ型車輪駆動装置」を単に「車輪駆動装置」と言う。
図1は、本発明の実施形態に係る車輪駆動装置の全体構成を示す縦断面図である。
図示した車輪駆動装置1は、航空機用の車輪駆動装置であって、電動モータ2と、遊星歯車機構3と、電磁クラッチ機構4と、から主として構成されている。なお、図1は航空機の前後方向すなわち、車輪駆動装置1の中心軸Kの軸方向に沿って見た車輪駆動装置1の断面構造を示しており、図中上側が鉛直上方、図中下側が鉛直下方に相当する。また、図1の軸線Kは、車輪駆動装置1の中心軸を示している。
【0012】
前記電動モータ2は回転を制御するために用いられるレゾルバ20を備えている。レゾルバ20は、電動モータ2の回転数及び回転角を検出するセンサである。
【0013】
前記電動モータ2は、ステータ21及びロータ22を有し、ロータ22にはキー23を用いて駆動軸24が連結されている。前記電動モータ2は、車輪駆動装置1の径方向において、アウターケース10とインナーケース13との間に配置されている。前記ステータ21は、アウターケース10に固定され、アウターケース10及びインナーケース13は、第1リアカバー14、第2リアカバー15及びフロントカバー16と共に、車輪駆動装置1のハウジングを構成している。
【0014】
前記アウターケース10の一端部にはフランジ部11が形成され、このアウターケース10の中間部には仕切り部12が形成されている。また、フランジ部11とは反対側となるアウターケース10の他端部10aは、仕切り部12から遊星歯車機構3側に長く延在している。フランジ部11には固定用孔11aが設けられ、固定用孔11aは、フランジ部11の円周方向に所定の間隔で複数設けられている。前記仕切り部12は、車輪駆動装置1の中心軸K方向において、電磁クラッチ機構4と電動モータ2との間に配置されている。前記アウターケース10は、フランジ部11の固定用孔11aを用いて航空機の車輪支持部(図示せず)にボルト締結によって固定されるように構成されている。
【0015】
前記駆動軸24は、インナーケース13の内部に配置され、ロータ22と一体に回転するものであり、中心軸Kを中心に円筒状に形成されている。前記駆動軸24は、2つの軸受50、52によって回転自在に支持され、その一端部には太陽歯車30が設けられ、太陽歯車30は、駆動軸24に一体に形成されている。すなわち、駆動軸24と太陽歯車30とは、一体に構成されている。
【0016】
前記遊星歯車機構3は、主として、太陽歯車30と、複数の遊星歯車31と、第1内歯車32と、第2内歯車33と、から構成されていると共に、電動モータ2の駆動力を最終的に出力軸38へと伝達するためのものであり、前記各遊星歯車31は、一対のキャリア36,37に保持され、それぞれ、中心軸Kを中心にリング形状に形成されていると共に一対の軸受54によって回転自在に支持されている。
【0017】
前記各一対のキャリア36,37のうち、一方のキャリア36は軸受52によって回転自在に軸支され、他方のキャリア37は軸受53によって回転自在に軸支されている。
【0018】
前記第1内歯車32は、互いに離間した一対の軸受54によって回転自在に支持され、前記各軸受54の外輪は、アウターケース10の内周面に固定されている。前記第2内歯車33は、軸受51によって回転自在に支持され、軸受51の外輪は、アウターケース10の内周面に固定されている。
【0019】
また、各遊星歯車31は、第1歯車部34及び第2歯車部35を一体に有する二段構造の歯車で構成され、第1歯車部34は、太陽歯車30と第1内歯車32の両方に噛み合っている。第2歯車部35は、第2内歯車33に噛み合っている。第1内歯車32と第2内歯車33とは互いに歯数が異なり、これら2つの内歯車32,33に各々の遊星歯車31が噛み合っている。
【0020】
前記第2内歯車33には出力軸38が機械的に接続され、この出力軸38は、第2内歯車33と一体に回転するもので、図示しないキーとキー溝との嵌合により、タイヤ(図示せず)を装着するためのホイール5に連結固定されている。これにより、第2内歯車33、出力軸38及びホイール5は、互いに一体に回転する構成である。
【0021】
前記電磁クラッチ機構4は、第1内歯車32を固定する状態と第1内歯車32を回転する状態とに切り替え可能な切り替え機構を構成するものであり、アウターケース10の仕切り部12に機械的に取り付けられていると共に、クラッチディスク40とスプリング41とヨーク42とマグネットワイヤ43とを備えている。このクラッチディスク40は、第1内歯車32に対して接近または離間すなわち、接離自在となるように、中心軸Kと平行な方向に移動可能に設けられ、その外周部には図3のように回り止め部40bが設けられており、この回り止め部40bは、アウターケース10に対してクラッチディスク40が過大なトルクに対しても回転しないようにロックする機構となる。すなわち、クラッチディスク40の回り止め部40bに対し、アウターケース10の回り止め10bが係合して、回り止めとなるように構成されている。
【0022】
ここで、クラッチディスク40と第1内歯車32との関係について、図1を用いて説明する。
まず、前記第1内歯車32の側面には第1歯型形状部32aが形成され、この第1歯型形状部32aは、図2のように第1内歯車32の円周方向に所定の間隔で凹凸状に形成されている。一方、前記クラッチディスク40の側面には第2歯型形状部40aが形成されている。この第2歯型形状部40aは、中心軸Kと平行な方向において、第1内歯車32の第1歯型形状部32aと対向する状態に形成されている。第2歯型形状部40aは、第1内歯車32の第1歯型形状部32aに対して接離自在な歯型形状部であって、クラッチディスク40の円周方向に所定の間隔で凹凸状に形成されている。前記クラッチディスク40は、図1の中心軸Kの下方に断面にて示すように、スプリング41によって第1内歯車32から離間する方向に付勢されている。この第1内歯車32を移動させるための電磁クラッチ機構4は、電磁式の駆動部であって、溝付きのリング形状に形成されるヨーク42と、このヨークの溝内に巻装されるマグネットワイヤ43とによって構成される。前記電磁クラッチ機構4は、周知のように、図示しない車輪制御装置によって通電のオン・オフが制御されることにより動作する。具体的には、電磁クラッチ機構4の通電時には、スプリング41の付勢力に抗してクラッチディスク40を磁気吸引力により図1の左方向に引き寄せるように作動し、非通電時はその磁気吸引力を解放するように作動する。
【0023】
さらに詳しく述べると、前記電磁クラッチ機構4への通電によってクラッチディスク40を引き寄せると、クラッチディスク40は、第1内歯車32に接近する方向に移動し、この移動によってクラッチディスク40の第2歯型形状部40aが第1内歯車32の第1歯型形状部32aに歯合する。これにより、第1内歯車32が固定されることにより、減速機の動力を伝達する状態になる。これに対して、電磁クラッチ機構4への通電を断つと、クラッチディスク40は、スプリング41の付勢力によって第1内歯車32から離間する方向に移動し、この移動によってクラッチディスク40の第2歯型形状部40aが第1内歯車32の第1歯型形状部32aから離脱すると共に、第1内歯車32の回転が許容されることにより、減速機の動力を伝達しない状態になる。
【0024】
次に、本発明の実施形態に係る車輪駆動装置のタキシング時の動作について説明する。 まず、図示しない制御部によって電動モータ2に駆動電流が供給されると、ステータ巻線8aを有するステータ21が発生する回転磁界により、ロータ22が回転すると共に、ロータ22と一体に駆動軸24及び太陽歯車30が回転する。このとき、前記制御部による電磁クラッチ機構4への通電によってクラッチディスク40の第2歯型形状部40aを第1内歯車32の第1歯型形状部32aに歯合させておくと、第1内歯車32の回転がクラッチディスク40によって固定される。このため、第1内歯車32は実質的に固定内歯車として機能し、減速機の動力を伝達する状態になる。
【0025】
一方、第2内歯車33は、軸受51によって回転自在に支持されているため、可動内歯車として機能する。このように、第1内歯車32が固定内歯車として機能し、第2内歯車33が可動内歯車として機能することにより、減速機構としての遊星歯車機構3は、いわゆる周知の不思議遊星歯車(3K型)機構として機能する。すなわち、上述のように太陽歯車30が回転すると、各々の遊星歯車31は、それぞれ自転しながら、太陽歯車30の周りを公転する。また、第2内歯車33は、出力軸38と共に、遊星歯車機構3の減速比にしたがって回転する。このため、遊星歯車機構3の減速比が1/n(ただし、nは1よりも大きい数)であるとすると、電動モータ2の駆動にともなう駆動軸24の回転は、1/nに減速されて出力軸38に伝達される。
なお、本発明の車輪駆動装置の減速機構成である不思議遊星歯車の3K型の一例として各歯車の歯数Zと減速比1/nを次に示す。ただし、本発明の歯数、減速比をこれに限定するものではない。
太陽歯車Z=56、第一遊星歯車Z=16、第二遊星歯車Z=15、
第一内歯車Z=88、第二内歯車Z=87の時、
減速比1/n=1/50となる。
また、遊星歯車はキャリアに支持される形で6個配置されている。ただし、本発明の遊星歯車の数量を限定するものではない。
【0026】
以上は、航空機をタキシングさせる場合の車輪駆動装置1の動作である。これに対し、航空機が着陸する場合あるいは離陸する場合は、ホイール5に装着されたタイヤが、外部力によってタキシング時にくらべて非常に高速で回転する。このとき、仮に、前記制御部により、電磁クラッチ機構4が通電状態になっていると、出力軸38の回転が、遊星歯車機構3の減速比の逆数倍、すなわちn倍に増速されて駆動軸24に伝達される。このため、電動モータ2のロータ22は、出力軸38の回転数のn倍だけ高速に回転する。したがって、航空機の着陸時等の外部力によって車輪が高速で回転する場合は、電動モータ2のロータ22に大きな遠心力が加わってしまう。また、ロータ22が非常に高速で回転することにより、電動モータ2に大きな回生電力が発生してしまう。
【0027】
そこで、航空機が着陸する場合、あるいは離陸する場合は、前記制御部により、電磁クラッチ機構4を非通電状態とすることにより、図2のように、第1内歯車32の第1歯型形状部32aからクラッチディスク40の第2歯型形状部40aが離れており、航空機の着陸時または離陸時に出力軸38が高速で回転しても、出力軸38の回転がn倍に増速されて駆動軸24に伝達されることがなくなる。その理由は、次のとおりである。まず、航空機の着陸時または離陸時に出力軸38が回転すると、出力軸38と一体に第2内歯車33が回転する。このとき、電磁クラッチ機構4が非通電状態になっていると、第1内歯車32は、第2内歯車33と同様に可動内歯車として機能する。このため、第2内歯車33が回転した場合に、各遊星歯車31は自転することなく公転し、第1内歯車32は第2内歯車33と共に回転する。また、各々の遊星歯車31が公転すると、これにしたがって太陽歯車30が回転する。その結果、第2内歯車33、第1内歯車32、遊星歯車31及び太陽歯車30は、互いに一体となって回転する。したがって、出力軸38と駆動軸24とは、同じ回転数で回転する。よって、出力軸38の回転がn倍に増速されて駆動軸24に伝達されることはなく、航空機の着陸時等において、電動モータ2のロータ22に加わる遠心力と、電動モータ2に発生する回生電力とを、共に低減することができる。
【0028】
上記実施形態においては、車輪駆動装置1を航空機用としたが、本発明はこれに限らず、航空機以外の移動体用の車輪駆動装置として広く適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 車輪駆動装置、2 電動モータ、3 遊星歯車機構、4 電磁クラッチ機構、
10 アウターケース、10b 回り止め部、21 ステータ、22 ロータ、
24 駆動軸、30 太陽歯車、31 遊星歯車、32 第1内歯車、
32a 第1歯型形状部、33 第2内歯車、34 第1歯車部、35 第2歯車部、 38 出力軸、40 クラッチディスク、40a 第2歯型形状部、
40b 回り止め部。
図1
図2
図3
図4