(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】空圧シリンダを利用した駆動装置
(51)【国際特許分類】
F15B 9/09 20060101AFI20231208BHJP
F15B 11/06 20060101ALI20231208BHJP
A61H 3/00 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
F15B9/09 C
F15B11/06 C
A61H3/00 B
(21)【出願番号】P 2020071563
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岩 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】大西 晃貴
(72)【発明者】
【氏名】山田 暢昭
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-235855(JP,A)
【文献】特開2008-057773(JP,A)
【文献】特開平03-089006(JP,A)
【文献】特開2001-336504(JP,A)
【文献】特開2004-144196(JP,A)
【文献】実開昭55-132503(JP,U)
【文献】実開昭50-156688(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0056641(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 9/09
F15B 11/06
F15B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空圧シリンダを利用した駆動装置であって、
空圧源と、
空圧源からの圧縮エアの供給及び排出を制御する制御バルブと、
上記制御バルブからの圧縮エアを導入及び排出可能な密閉状のチューブと、
上記チューブの内部を両方向に移動可能なピストンと、
上記ピストンの両側に連結された可撓性線状ロッドと、
上記チューブの両端にそれぞれ設けられ、上記可撓性線状ロッドを移動可能に且つ密閉状に覆うシール部と、
上記可撓性線状ロッドが掛けられる複数のプーリと、
上記複数のプーリの間に設けられ、上記可撓性線状ロッドの移動に伴って回転又は揺動する被駆動部と、
上記制御バルブを制御する制御装置とを備え
、
上記制御装置は、外力によって上記被駆動部に加わるトルクを推定し、推定結果を基に制御バルブを制御して上記被駆動部に加わるトルクを調整する際に、外乱オブザーバを用いてノミナルモデルを設定し、予め導出しておいた角速度と発生トルクとの関係から求めた摺動抵抗によるトルク分を除去して上記トルクを推定するように構成されている
ことを特徴とする空圧シリンダを利用した駆動装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の空圧シリンダを利用した駆動装置において、
上記制御装置は、上記外力によって上記被駆動部に加わるトルクを該被駆動部の回転角度及び上記チューブの内部の圧力から推定するように構成されている
ことを特徴とする空圧シリンダを利用した駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性線状ロッドを有する空圧シリンダを利用した駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転物を回転させる一般的な方法としては、サーボモータを用いた駆動装置が知られている。サーボモータシステムを構成するためには、サーボモータ、制御部等が必要となる。サーボモータは、位置制御、速度制御、トルク制御等がそれぞれ可能である。
【0003】
一方、可撓性のあるロッドを有する空圧シリンダを利用した駆動装置は知られている(例えば、特許文献1~3参照)。また、特許文献4のように、近年の高齢化に伴う要求に沿ったリハビリテーション装置として、圧縮空気を用いたアクチュエータを利用した歩行支援装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-98303号公報
【文献】特開2002-227805号公報
【文献】特開2002-235855号公報
【文献】特開2019-141520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記サーボモータシステムでは、各構成部品の重量が大きく、用途によっては出力が大きくなりすぎるため、軽量及び小型化という点で問題があり、また、コスト面でも問題がある。また、サーボモータは、コンピュータにより制御する必要があるため、多くの知識を有し、出力の微調整が困難である。人体に使用する機器としては、個人の感覚に合わせた制御が必要不可欠であるため、出力の微調整が困難であることは欠点となる。
【0006】
特許文献4のものでは、2本の平行シリンダを用いてワイヤの拮抗駆動とし、ワイヤと反対側のシリンダ室を負圧に調整していたため、発生できるトルクに限界がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、可撓性線状ロッドを有する空圧シリンダにおいて、軽量及び簡易な構成により、容易により大きなトルクが得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、第1の発明では、
空圧シリンダを利用した駆動装置を対象とし、この駆動装置は、
空圧源と、
空圧源からの圧縮エアの供給及び排出を制御する制御バルブと、
上記制御バルブからの圧縮エアを導入及び排出可能な密閉状のチューブと、
上記チューブの内部を両方向に移動可能なピストンと、
上記ピストンの両側に連結された可撓性線状ロッドと、
上記チューブの両端にそれぞれ設けられ、上記可撓性線状ロッドを移動可能に且つ密閉状に覆うシール部と、
上記可撓性線状ロッドが掛けられる複数のプーリと、
上記複数のプーリの間に設けられ、上記可撓性線状ロッドの移動に伴って回転又は揺動する被駆動部と、
上記制御バルブを制御する制御装置とを備えている。
【0009】
上記の構成によると、制御装置によって制御バルブを制御することで、空圧源からの圧縮エアがチューブに送られ、それにより移動したピストンにより、可撓性線状ロッドが移動し、プーリを介して被駆動部の駆動力として伝えられ、被駆動部が回転し、又は揺動する。可撓性線状ロッドが移動しても、シール部によってチューブ内から圧縮エアが漏れるのが防止される。可撓性線状ロッドは、棒状ロッドに比べて取り回しが自由で、機器サイズを小さくできる。ここで、可撓性線状ロッドは、ワイヤ、ケーブルなど特に限定されないが、シール部との間で空気が漏れないような構成が望ましい。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、
上記制御装置は、外力によって上記被駆動部に加わるトルクを推定し、推定結果を基に制御バルブを制御して上記被駆動部に加わるトルクを調整するように構成されている。
【0011】
上記の構成によると、例えば、装着者の足首に設けた被駆動部に加わる装着者からのトルクを推定し、それを適切に補助するために圧縮エアを用いて被駆動部に加わるトルクを増やし、装着者の動きをアシストすることができる。
【0012】
第3の発明では、第2の発明において、
上記制御装置は、上記外力によって上記被駆動部に加わるトルクを該被駆動部の回転角度及び上記チューブの内部の圧力から推定するように構成されている。
【0013】
上記の構成によると、被駆動部の回転角度及びシリンダの圧力を検出し、外力によって加わるトルクを推定できるので、高価で場所をとりやすいトルクセンサを設けて直接トルクを検出する必要がなくなる。
【0014】
第4の発明では、第2又は第3の発明において、
上記制御装置は、外乱オブザーバを用いてノミナルモデルを設定し、摺動抵抗によるトルク分を除去して上記トルクを推定するように構成されている。
【0015】
上記の構成によると、摺動抵抗による誤差を除いてより精度のよいトルクの推定を行えるので、リハビリテーション装置などに適用すれば、最適なアシストを行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、可撓性線状ロッドを有する空圧シリンダにおいて、軽量及び簡易な構成により、容易により大きなトルクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る空圧シリンダを利用した駆動装置の概要を示す図である。
【
図3】角速度と印加トルクの関係を示すグラフである。
【
図4】正弦波状のトルクに対してノミナルモデルPn(s)をかけて得られた角度の推定値とポテンショメータによる角度の計測値との比較を表すグラフであり、(a)が0.5Hzのときを示し、(b)が0.2Hzのときを示す。
【
図5】外乱オブザーバで推定したトルクの推定値と、ピストンの変位をポテンショメータから求め、そこからバネ反力をトルク換算した計測値との比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態の空圧シリンダを利用した駆動装置20を示し、この駆動装置20は、圧縮エアを駆動力として用いるので、空圧源1を必要とする。空圧源1は、例えば、コンプレッサ、コンプレッサに接続した配管類等よりなる。
【0020】
そして、駆動装置20は、空圧源1からの圧縮エアの供給及び排出を制御する制御バルブ2を備えている。制御バルブ2は、例えば、3位置切換電磁弁、エアオペレートバルブ等よりなる。
【0021】
駆動装置20は、空圧シリンダ10を備え、この空圧シリンダ10は、制御バルブ2からの圧縮エアを導入及び排出可能な密閉状のシリンダチューブ3を備えている。シリンダチューブ3は、例えば、樹脂成形品、ガラス、金属等よりなり、内部に両方向に移動可能なピストン4が設けられている。ピストン4は、シリンダチューブ3内周面との間でピストンシール4aによりエアがシールされている。このピストン4により、シリンダチューブ3内が2つのシリンダ室S1,S2に区画されている。上記制御バルブ2は、供給された圧縮エアをいずれかのシリンダ室S1,S2に流入させ、又はシリンダ室S1,S2からのエアを排出させる役割を果たす。このため、これら2つのシリンダ室S1,S2には、制御バルブ2からの圧縮エアが適宜供給され、供給された圧縮エアから受けた圧力によりピストン4がシリンダチューブ3内を直線運動する力を発生するようになっている。
【0022】
このピストン4の両側には、可撓性線状ロッド5が連結されている。可撓性線状ロッド5は、ワイヤ、ケーブルなど特に限定されない。
【0023】
シリンダチューブ3の両端3aには、可撓性線状ロッド5を移動可能に且つ密閉状に覆うシール部6が設けられている。シール部6は、特に材料は限定されないが、ウレタン樹脂などの弾性材料よりなり、シリンダチューブ3内の圧縮エアが外部に漏れ出すのを防止する役割を果たす。このシール部6でのシール性及び摺動性を確保するには、可撓性線状ロッド5の外周が、滑らかであるなど、シール部6との間で空気が漏れないような可撓性線状ロッド5とシール部6との相性のよい組み合わせが望ましい。
【0024】
可撓性線状ロッド5は、複数のプーリ7に掛けられている。本実施形態では、例えば4つのプーリ7が設けられているが、この個数は制限されない。プーリ7は、可撓性線状ロッド5の方向転換の役割を果たす。空圧シリンダ10の両側の一対のプーリ7間の可撓性線状ロッド5は、シール部6の密着性、耐久性等との関係で直線状であるのが望ましい。
【0025】
そして、本実施形態では、空圧シリンダ10から離れた位置にある一対のプーリ7間には、可撓性線状ロッド5の移動に伴って回転する回転板8が設けられている。回転板8は、中心に回転軸8aを有し、この回転軸8aを中心に回転可能となっている。回転板8は、例えば、可撓性線状ロッド5の移動を回転力に変換するための、ワイヤホルダ8bが設けられている。ワイヤホルダ8bに可撓性線状ロッド5が固定されていてもよいし、滑り止めされた状態で掛けられていてもよい。この可撓性線状ロッド5の固定方法は特に限定されず、ワイヤホルダ8bの切欠に可撓性線状ロッド5を引っ掛けてもよいし、ワイヤホルダ8bで可撓性線状ロッド5の先端を挟み込んで締結してもよい。
【0026】
この回転板8は、例えば、上記特許文献4のように、装着者の足首の関節の動きをサポートするためのものとして利用することもできる。
【0027】
駆動装置20は、制御バルブ2を制御する、例えば、CPUを有するパソコン、マイコン等よりなる制御装置9を備えている。制御装置9の構成は特に限定されないが、本実施形態では、この制御装置9は、後述するように、例えば、2つのシリンダ室S1,S2のそれぞれの圧力P1,P2を測定する圧力センサ11,12や、回転板8の回転角度θを測定するポテンショメータ15からの信号を利用して制御バルブ2を制御できるようになっている。圧力センサ11,12やポテンショメータ15からの信号は、A/D変換器13を通して制御装置9に入力されるようになっている。
【0028】
また、制御装置9は、例えば、装着者の足首などからの外力によって回転板8に加わるトルクを推定し、推定結果を基に制御バルブ2を制御して回転板8に加わるトルクを調整するように構成されている。制御装置9からの電圧uは、D/A変換器14を通して制御バルブ2に出力されるようになっている。
【0029】
制御装置9は、外力によって回転板8に加わるトルクを回転板8の回転角度θ及びシリンダチューブ3の内部の圧力P1,P2から推定するように構成されている。さらに、後述するように、制御装置9は、外乱オブザーバを用いてノミナルモデルを設定し、摺動抵抗によるトルク分を除去してトルクを推定するように構成されている。
【0030】
このように、本実施形態では、曲げられないまっすぐな棒状のロッドではなく、可撓性線状ロッド5を用いたことにより、機器配置が自由になり、小型化及び軽量化を実現することができる。
【0031】
-駆動装置の作動-
次に、本実施形態に係る空圧シリンダ10を利用した駆動装置20の作動について説明する。
【0032】
制御装置9は、制御バルブ2を制御して空圧源1からの圧縮エアをシリンダチューブ3内のいずれかのシリンダ室S1,S2に送り込む。
【0033】
すると、シリンダ室S1とシリンダ室S2との圧力差により、ピストン4が移動し、可撓性線状ロッド5が移動する。可撓性線状ロッド5の直線運動は、プーリ7によって方向を変えられる。また、シール部6により、可撓性線状ロッド5が移動してもシリンダチューブ3内から圧縮エアが漏れるのが防止される。
【0034】
そして、回転板8に設けたワイヤホルダ8bにより、可撓性線状ロッド5の引張力Fが、回転板8を回転させる回転力Rに変換される。
【0035】
これにより、回転板8が回転軸8aを中心に所定の角速度及びトルクで回転する。
【0036】
一方、本実施形態の駆動装置20をリハビリテーション装置として多機能化するためには、ユーザである装着者から被駆動部である回転板8への印加トルクを求める必要がある。
【0037】
しかし、別途トルクセンサを導入して上記印加トルクを求めるようにすると、コスト増や大型化を招き、現実的ではない。
【0038】
そこで、以下のように、外乱オブザーバの推定外乱から可撓性線状ロッド5の摺動抵抗やノミナルモデルからの変動の影響を除くことで、例えば、装着者の装着具が回転板8に与えたトルクを、トルクセンサを設けることなく推定することができる。
【0039】
図2に、外乱オブザーバを用いた制御系を示す。本実施形態では、例えば、実時間制御が可能な汎用ソフトを用いて構築しており、サンプリング周期は例えば5msである。ここで、P(s)、Pn(s)、Q(s)は、それぞれプラント、プラントのノミナルモデル、ローパスフィルタの伝達関数である。θr(s)、θ(s)、τr(s)、τ(s)、τd(s)、τ
^(s)は、それぞれ足関節角度目標値、足関節角度、シリンダ発生トルクの目標値、シリンダ発生トルク、外乱トルク、推定外乱トルクである。また、J、Dを慣性、粘性とすると、プラントP(s)は、
【0040】
【数1】
と表すことができる。また、プラントのノミナルモデルPn(s)は、式(2)と表すことができる。ここで、Jn、DnはそれぞれJ、Dのノミナル値である。
【0041】
【0042】
【数3】
と表され、外乱トルクだけでなく、プラントとノミナルモデルによる変動によって発生する影響もまとめて外乱として推定されるので、ノミナルモデルPn(s)が、P(s)に一致すると、外乱トルクτd(s)が、τ
^(s)として推定される。
【0043】
ここで、装着者が回転板8に与えたトルク、シリンダチューブの両端3aにおける可撓性線状ロッド5の摺動抵抗によるトルクをそれぞれτh(s)、τf(s)とすると、外乱トルクはこれらの和となる。よって、装着者が回転板8に与えたトルクτh(s)は、推定外乱τ^(s)から摺動抵抗によるトルクτf(s)を引くことで求められる。
【0044】
ノミナルモデルPn(s)をプラントP(s)に一致させるには、プラントの慣性J及び粘性Dを正確に同定しておく必要がある。空圧シリンダ10の発生トルクτ(s)を一定とし、角速度一定で駆動装置20を駆動すると、発生トルクτ(s)、外乱τd(s)、回転板8の角速度θ’(s)の関係は、
【0045】
【数4】
となる。
図3に角速度θ’と、発生トルクτとの関係を示す。両者の関係は、非線形的な関係となっている。粘性Dは、
【0046】
【数5】
と表されるので、
図3から予め導出しておいた式(5)の関係式f(θ’)に代入して粘性Dを求める。ここで、角速度θ’は、ポテンショメータ15により得た角度情報を元に後退差分で導出した。ピストン4、装具、足の慣性Jは、質点として算出した。
【0047】
図4は、それぞれ異なる角周波数を有する正弦波状の発生トルクに対して、ノミナルモデルを通した角度θの推定値と、ポテンショメータ15による角度θの計測値との比較を示す。角速度に応じてノミナルモデルの粘性Dnを調整することで、発生トルクを正弦波的に変化させているが、発生トルクの周波数が変わってもポテンショメータで計測したデータとほぼ同じ波形が得られていることがわかる。このことから、ノミナルモデルと実モデルとの間の誤差は小さく、外乱トルクを高い精度で推定できることがわかった。
【0048】
外乱トルクの推定実験として、シリンダ室S1,S2内に圧縮コイルバネ(図示せず)を入れ、ピストン4に変位を与えて圧縮コイルバネを押し込み、そのときのバネ反力を等価的にトルクτh(s)に換算して推定した。
【0049】
ノミナルモデルを通して推定したトルクτh(s)の推定値と、ピストン4の変位をポテンショメータ15から求め、そこからバネ反力をトルク換算した計測値との比較を
図5に示す。角速度θ’をポテンショメータで計測した角度θから計算して粘性Dを調整しているが、圧縮コイルバネによって生じるトルクに対して定常的に追従できていることがわかる。
【0050】
このように、外乱オブザーバの導入により、ノミナルモデルを適切に設定し、摺動抵抗によるトルク分を除去することで、トルクを推定できることがわかった。
【0051】
これにより、例えば、装着者の足首に設けた回転板8に加わる装着者からのトルクを推定し、それを適切に補助するために圧縮エアを用いて回転板8に加わるトルクを増やしたり、速度を調整したりして、装着者の動きをアシストすることができる。
【0052】
また、摺動抵抗による誤差を除いてより精度のよいトルクの推定が行えるので、リハビリテーション装置などに適用すれば、速度やトルクを調整して最適なアシストを行うことができる。
【0053】
したがって、本実施形態に係る空圧シリンダを利用した駆動装置20によると、可撓性線状ロッド5を有する空圧シリンダ10において、軽量及び簡易な構成により、容易により大きなトルクを得ることができる。
【0054】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0055】
すなわち、詳しい説明は省略するが、制御装置9が、回転板8の回転角度及び空圧シリンダ10の圧力P1,P2を検出し、外力によって加わるトルクを推定することもできる。この場合も、高価で場所をとりやすいトルクセンサを設けて直接トルクを検出する必要がなくなる。
【0056】
また、上記実施形態では、可撓性線状ロッド5の直線運動が、回転板8の回転運動に変換されるようにしているが、例えば、回転板8ではなく、1つの揺動軸を中心に揺動する被駆動部としてのバーを設け、このバーの揺動運動に変換するようにしてもよい。この場合は、バーの揺動軸を中心とする回転角度θや圧力P1,P2等を元にバーに加わるトルクを推定するようにすればよい。
【0057】
さらに、上記駆動装置20は、人体関節のサポート機器として関節の回転又は揺動運動をサポートするために使用することができる。また、人間用としてだけではなく、多関節の協働ロボット用のアクチュエータとしての使用も可能である。
【0058】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0059】
1 空圧源
2 制御バルブ
3 シリンダチューブ
3a 両端
4 ピストン
4a ピストンシール
5 可撓性線状ロッド
6 シール部
7 プーリ
8 回転板(被駆動部)
8a 回転軸
8b ワイヤホルダ
9 制御装置
10 空圧シリンダ
11,12 圧力センサ
13 A/D変換器
14 D/A変換器
15 ポテンショメータ
20 駆動装置
P1,P2 圧力
S1,S2 シリンダ室