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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】地盤改良方法と地盤改良システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/115 20060101AFI20231208BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
E02D3/115
E02D3/12 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020075002
(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2021172983
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000149206
【氏名又は名称】株式会社大阪防水建設社
(73)【特許権者】
【識別番号】591045965
【氏名又は名称】株式会社精研
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】原 信行
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 恭太
(72)【発明者】
【氏名】山内 一樹
(72)【発明者】
【氏名】谷室 裕久
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聡志
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-071183(JP,A)
【文献】特開2005-344460(JP,A)
【文献】特開2015-121091(JP,A)
【文献】特開平01-318616(JP,A)
【文献】特開2009-057826(JP,A)
【文献】特開2017-106210(JP,A)
【文献】特開平08-218759(JP,A)
【文献】特開2006-233585(JP,A)
【文献】特開平06-246264(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0053059(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02D 1/00-3/115
E21B 1/00-19/24
E02D 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に掘削孔を造成する、A工程と、
前記掘削孔の内部に、複数の注入口を備えている外管を配管する、B工程と、
前記外管の内部に、薬液が供給される第一内管を建て込み、前記注入口を介して地盤に薬液を注入する、C工程と、
前記外管から前記第一内管を引き抜いて第二内管を該外管の内部に建て込み、該第二内管の内部に冷却液を循環させることにより地盤を凍結する、D工程と、
前記C工程と前記D工程の間に、少なくとも前記外管の内壁を洗浄する、E工程とを有し、
前記E工程では、
前記外管の内部に、給水配管と、吸引配管と、圧縮エアを供給するエア配管を配管し、
前記給水配管から前記外管の内部へ給水して溜まり水のヘッドを一定に保ち、前記エア配管に圧縮エアを供給すると同時に前記吸引配管から吸引することにより、該エア配管の先端から送り出された圧縮エアによる押圧力と、該吸引配管における吸引力とによって、前記溜まり水が該吸引配管の先端から回り込んで吸引され、該外管の内部において該溜まり水の循環を行いながら該外管の内壁を洗浄することを特徴とする、地盤改良方法。
【請求項2】
前記C工程では、前記外管の下方から上方に向かって前記第一内管を上昇させた後に前記外管の内壁に固定し、薬液注入を行い、該外管に対する該第一内管の固定を解除する一連の工程を繰り返し、
最上層の薬液注入が完了した後、前記第一内管を地上に引き抜くことを特徴とする、請求項に記載の地盤改良方法。
【請求項3】
地盤に造成されている掘削孔の内部に建て込まれ、複数の注入口を備えている、外管と、
前記外管の内部に建て込まれ、供給される薬液を前記注入口を介して地盤に注入する、第一内管と、
前記第一内管に換わって前記外管の内部に建て込まれ、冷却液が循環されて地盤を凍結する、第二内管と、
給水配管と、吸引配管と、圧縮エアを供給するエア配管と、を備える洗浄手段とを有し、
前記外管の内部に前記給水配管と前記吸引配管と前記エア配管が建て込まれ、前記給水配管から該外管の内部に給水が実行されて溜まり水のヘッドが一定に保たれ、前記エア配管からの圧縮エアの供給と前記吸引配管からの吸引が同時に実行されて、該エア配管の先端から送り出された圧縮エアによる押圧力と、該吸引配管における吸引力とにより、前記溜まり水が該吸引配管の先端から回り込んで吸引され、少なくとも前記外管の内壁の洗浄が実行されるようになっていることを特徴とする、地盤改良システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良方法と地盤改良システムに関する。
【背景技術】
【0002】
透水性があって地下水の流速が比較的速い地盤において、凍結工法を利用して立坑をはじめとする地下構造物を施工する際には、先行して薬液注入工法による地盤改良を行い、地下水の流速を低減させた後に凍結工法による凍土壁の造成を行い、凍土壁内の地盤を掘削する施工方法が適用される場合がある。薬液注入工法には様々な工法があるが、その一例として二重管ダブルパッカー工法が挙げられる。
一般に、二重管ダブルパッカー工法では、例えば外径がφ96mm(及び、内径がφ69mm)程度のケーシングパイプにて地盤を削孔した後、例えば外径がφ48mm(及び、内径が40mm)程度の塩ビ管からなる外管(VP-40のスリーブパイプ)をケーシングパイプの内部に建て込み、ケーシングパイプを引き抜き撤去した後、外管の内部にダブルパッカーを備えたインジェクションパイプを挿入することにより、薬液注入工法が行われる。
これに対し、一般に、凍結工法では、例えば外径がφ165mm(及び、内径がφ137mm)程度のケーシングパイプにて地盤を削孔した後、例えば外径がφ114mm(及び、内径が105mm)程度の鋼管からなる凍結管(SGP-100)をケーシングパイプの内部に建て込み、ケーシングパイプを引き抜き撤去することにより、凍結工法が行われる。
上記する一般的な二重管ダブルパッカー工法と凍結工法を併用する場合には、同一の施工対象地盤に対して、同様のケーシング削孔を二度行うことから、削孔工程に要する時間が長くなり、地盤改良に要する工期が長期に及んでしまうといった課題がある。
また、二重管ダブルパッカー工法にて造成された薬液注入体を凍結工法のためのケーシング削孔にて攪乱することとなり、薬液注入による地盤改良効果が低減されるといった課題がある。
【0003】
ここで、薬液注入工法と凍結工法を併用し、地下水流の流速が速い地盤や地下水の少ない、あるいは存在しない地盤であっても凍結工法の適用を可能とし、しかも原状回復工程により建設工事の完了後に優れた環境修復性を発揮する地盤凍結工法が提案されている。より具体的には、地盤の掘削孔において注入管を介して高吸水性ポリマー含有液を注入管周囲の地盤に注入し、高吸水性ポリマー混合土部を造成する工程と、掘削孔に凍結管を配管し、この凍結管内に冷却液を送液し、高吸水ポリマー混合土部の凍土部を造成する工程と、上記各種の工程を複数の所定位置において同時または順次行い、凍土部を連結させて凍土壁を構築する工程とを含む地盤凍結工法である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-162632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の地盤凍結工法では、その図1(a)、(b)において示されるように、地盤に造成された掘削孔の孔壁に注入管を密着させる態様で配管し、注入管を介して高吸水性ポリマー含有液を注入管周囲の地盤に注入して高吸水性ポリマー混合土部を造成する。次いで、掘削孔から注入管を撤去し、次いで掘削孔の孔壁に凍結管を密着させる態様で配管し、凍結管内に冷却液を送液して、高吸水ポリマー混合土部の凍土部を造成する。図1(a)、(b)より、注入管は掘削孔に摺接させながら配管され、薬液注入後において注入管は掘削孔に摺接させながら撤去され、同様に凍結管も掘削孔に摺接させながら配管されることから、注入管や凍結管の配管や注入管の撤去に手間と時間を要することになる。すなわち、上記するように、同一の施工対象地盤に対して同様のケーシング削孔を二度行うことは不要にできるものの、掘削孔に摺接するようにして二種類の注入管及び凍結管を配管し、注入管はさらに掘削孔に摺接するようにして撤去することから、施工効率性の観点において改善の余地がある。
【0006】
本発明は、高い施工効率の下で、品質に優れた改良地盤を造成することのできる地盤改良方法と地盤改良システムを提供することを目的としている。
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による地盤改良方法の一態様は、
地盤に掘削孔を造成する、A工程と、
前記掘削孔の内部に、複数の注入口を備えている外管を配管する、B工程と、
前記外管の内部に、薬液が供給される第一内管を建て込み、前記注入口を介して地盤に薬液を注入する、C工程と、
前記外管から前記第一内管を引き抜いて第二内管を該外管の内部に建て込み、該第二内管の内部に冷却液を循環させることにより地盤を凍結する、D工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、掘削孔の内部に複数の注入口を備えている外管を建て込んだ後、この外管の内部に、薬液が供給される第一内管と冷却液を循環させる第二内管を順次建て込んで薬液注入工と凍結工を行うことにより、第一内管と第二内管の建て込みをスムーズに行うことができ、高い施工効率の下で複数種の地盤改良を行うことができる。すなわち、特許文献1に記載の施工方法では、注入管と凍結管をいずれも掘削孔の孔壁に摺接させながら配管することから、配管に際して手間を要し、また、注入管の撤去においても掘削孔の孔壁に注入管を摺接させながら撤去することから撤去に手間を要することになる。これに対して、本態様の施工方法では、造成された掘削孔の内部に外管を建て込むとともに、第一内管と第二内管を外管の内部に建て込むことから、外管と第一内管と第二内管の建て込みに際して掘削孔からの摩擦抵抗は一切なく、容易に建て込みを行うことができ、また、第一内管の引き抜きにおいても掘削孔からの摩擦抵抗が一切ないことから、第一内管を容易に引き抜くことができる。
また、薬液注入により造成された注入改良体に対して、再度のケーシング削孔が行われることがないため、注入改良体が乱されることなく凍結工法による凍土(柱)が施工でき、従って品質に優れた改良地盤を造成することができる。
【0009】
ここで、A工程においては、例えばケーシングパイプを適用して所定深度まで削孔(ケーシング削孔)することにより、掘削孔を造成する。
次に、造成された掘削孔の内部に例えばシールグラウト等を充填して掘削孔の孔壁を防護した後、B工程において、掘削孔の内部(ケーシングパイプの内部)に複数の注入口を備えている外管を建て込み、ケーシングパイプを引き抜く。この外管は、C工程における薬液注入においては、例えば、二重管ダブルパッカー工法等において適用される塩ビ管等からなるスリーブパイプに相当する。ケーシングパイプが引き抜かれることにより、複数の注入口を備えている外管が掘削孔の孔壁に対向することになる。
次に、C工程において、外管の内部に第一内管を建て込む。第一内管も複数の注入口を備えており、第一内管は、例えば、複数の注入口の上下に例えばパッカーを備えている(ダブルパッカー)インジェクションパイプに相当する。尚、C工程における薬液注入工は、二重管ダブルパッカー工法の他、単相型ストレーナー工法や複相型ストレーナー工法など、様々な工法により行うことができる。
C工程にて薬液注入を行った後、D工程において、第一内管(インジェクションパイプ)を引き抜き、冷却液(例えば、ブライン等の不凍液)が循環される凍結管である第二内管を外管の内部に建て込み、地盤の凍結を行う。
【0010】
地盤改良が終了した後、凍結管である第二内管は掘削孔(もしくは外管)の内部から引き抜かれる。また、塩ビ管等からなる外管は、掘削孔から引き抜き撤去されてもよいし、残置が許容されている場合は掘削孔内に残置されてもよい。
【0011】
また、本発明による地盤改良方法の他の態様は、前記C工程と前記D工程の間に、少なくとも前記外管の内壁を洗浄する、E工程をさらに有することを特徴とする。
本態様によれば、薬液注入工を行うC工程と凍結工を行うD工程の間に、少なくとも外管の内壁を洗浄するE工程を有することにより、外管の内壁に付着した薬液(薬液の層もしくは膜)を洗浄することができ、外管の内壁に薬液層が存在する場合に、当該薬液層が冷却液による周辺地盤の凍結を阻害することを防止できる。
【0012】
また、本発明による地盤改良方法の他の態様において、前記C工程では、前記外管の下方から上方に向かって前記第一内管を上昇させた後に前記外管の内壁に固定し、薬液注入を行い、該外管に対する該第一内管の固定を解除する一連の工程を繰り返し、
最上層の薬液注入が完了した後、前記第一内管を地上に引き抜くことを特徴とする。
本態様によれば、外管の下方から上方に向かって第一内管を上昇させながら順次薬液注入を行い、最上層の薬液注入が完了した際には、第一内管は例えば地上近傍に位置していることから、薬液注入から第一内管の地上への引き抜き(撤去)までの一連の施工を効率的に行うことができる。ここで、外管の内壁に対する第一内管の固定は、例えばダブルパッカーを備えた第一内管を外管の所定深度に位置決めし、それぞれのパッカーを加圧して拡径させ、ダブルパッカーを外管の内壁に押圧させること等により行うことができる。
【0013】
また、本発明による地盤改良システムの一態様は、
地盤に造成されている掘削孔の内部に建て込まれ、複数の注入口を備えている、外管と、
前記外管の内部に建て込まれ、供給される薬液を前記注入口を介して地盤に注入する、第一内管と、
前記第一内管に換わって前記外管の内部に建て込まれ、冷却液が循環されて地盤を凍結する、第二内管と、を有することを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、複数の注入口を備え、掘削孔の内部に建て込まれる外管と、この外管の内部に順次建て込まれる、薬液注入工の際に適用される第一内管と、凍結工の際に適用される第二内管と、を有することにより、第一内管と第二内管のスムーズな建て込みと引き抜きを実現することができ、高い施工効率の下で複数種の地盤改良を行うことを可能にする。尚、本態様の地盤改良システムには、上記構成以外にも、掘削孔を造成する掘削マシン、薬液注入工を行う際に適用されるボーリングマシン、凍結工を行う際に適用されるブライン設備(ブライン循環ポンプ、ブライン冷却器、コンプレッサ、凝縮器、冷却水循環ポンプ、クーリングタワー)等も含まれ得る。
【0015】
また、本発明による地盤改良システムの他の態様は、給水配管と、吸引配管と、圧縮エアを供給するエア配管と、を備える洗浄手段をさらに有し、
前記外管の内部に前記給水配管と前記吸引配管と前記エア配管が建て込まれ、前記給水配管から該外管の内部に給水が実行され、前記エア配管から前記圧縮エアが供給されるとともに前記吸引配管を介して水が吸引されることにより、少なくとも前記外管の洗浄が実行されるようになっていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、給水配管と、吸引配管と、圧縮エアを供給するエア配管とを備える洗浄手段をさらに有することにより、外管の内壁に付着した薬液層を洗浄することができ、外管の内壁に薬液層が存在する場合に、当該薬液層が冷却液による周辺地盤の凍結を阻害することを防止できる。尚、給水配管には給水ポンプ等が接続しており、吸引配管にはバキュームポンプ等が接続しており、エア配管にはエアコンプレッサ等が接続している。
【発明の効果】
【0017】
本発明の地盤改良方法と地盤改良システムによれば、高い施工効率の下で、品質に優れた改良地盤を造成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る地盤改良システムの一例を、実施形態に係る地盤改良方法の一例の各工程に適用される構成要素の集合体として説明した図である。
図2】ケーシングパイプと、外管と、第一内管の断面寸法の大小関係を説明する図である。
図3】外管に第一内管が固定され、二重管ダブルパッカー工法が適用されている状態を説明する縦断面図である。
図4】ケーシングパイプと、外管と、第二内管の断面寸法の大小関係を説明する図である。
図5】実施形態に係る地盤改良方法の一例を説明する工程図である。
図6図5に続いて、実施形態に係る地盤改良方法の一例を説明する工程図である。
図7図6に続いて、実施形態に係る地盤改良方法の一例を説明する工程図である。
図8図7に続いて、実施形態に係る地盤改良方法の一例を説明する工程図である。
図9図8に続いて、実施形態に係る地盤改良方法の一例を説明する工程図である。
図10図9に続いて、実施形態に係る地盤改良方法の一例を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態に係る地盤改良方法と地盤改良システムについて、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0020】
[実施形態に係る地盤改良システム]
はじめに、図1乃至図4を参照して、実施形態に係る地盤改良システムの一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る地盤改良システムの一例を、実施形態に係る地盤改良方法の一例の各工程に適用される構成要素の集合体として説明した図である。また、図2は、ケーシングパイプと、外管と、第一内管の断面寸法の大小関係を説明する図であり、図3は、外管に第一内管が固定され、二重管ダブルパッカー工法が適用されている状態を説明する縦断面図である。さらに、図4は、ケーシングパイプと、外管と、第二内管の断面寸法の大小関係を説明する図である。
【0021】
地盤改良システム100は、主として図1に示す地盤改良方法の四つの工程(A工程乃至D工程)において適用される各種資機材により構成される。尚、より厳密には、C工程とD工程の間に外管の内壁を洗浄するE工程があり、E工程における洗浄手段を構成する資機材も地盤改良システム100に含まれるが、図1においてはその図示を省略し、洗浄手段については以下の図9を参照した説明箇所において詳説する。尤も、E工程を実施しない場合は、図1に示すA工程乃至D工程にて適用される各種資機材により地盤改良システム100が構成される。
【0022】
図示する施工対象の地盤Gは、例えば透水性があって地下水の流速が比較的速い地盤である。この地盤Gに立坑等の地下構造物を施工するに当たり、実施形態に係る地盤改良方法では、薬液注入工法により注入改良体を造成して地下水の流速を低減させ、次いで、凍結工法により凍土体(凍土柱、凍土壁)の造成を行う。例えば、平面視無端状に凍土壁を造成した後、凍土壁の内部の地盤を掘削することにより、立坑等の地下構造物が施工される。
【0023】
地盤改良方法におけるA工程は、地盤Gに掘削孔Dを造成する工程である。ロータリーパーカッションドリル等の削孔重機M1により、所定長さのケーシングパイプ11を回転させながらX1方向に削孔し、複数のケーシングパイプ11を順次継ぎ足して所定深度までの長さを有するケーシング10を形成して地盤Gを削孔することにより、所定深度まで延設する掘削孔Dが施工される。図示例においては、掘削孔Dの造成に際して地表面に掘削用ピットG1を造成し、掘削用ピットG1にサンドポンプ15を設置している。A工程において適用される、削孔重機M1やケーシング10が地盤改良システム100の構成要素となる。
【0024】
地盤改良方法におけるB工程は、例えば削孔重機M1を適用して、ケーシング10の内部に外管20をX2方向に建て込む工程である。外管20は、ケーシング10の内径よりも小径の例えば塩ビ管等により形成される。B工程において適用される外管20が、地盤改良システム100の構成要素となる。
【0025】
地盤改良方法におけるC工程では、ケーシング10を引き抜いて撤去した後、ボーリングマシン等の注入重機M2により、外管20の内部においてX3方向に第一内管30を建て込む。次いで、第一内管30に薬液をY1方向に供給し、第一内管の備える注入口31と外管20の備える注入口21(いずれも図2参照)を介して、周辺地盤に例えば水ガラス系注入材(薬液)をY2方向に注入することにより、注入改良体を造成する。C工程において適用される第一内管30、図示を省略する薬液ミキサや圧送ポンプ等が、地盤改良システム100の構成要素となる。
【0026】
図2に示すように、例えば、外径がφ216mmで内径がφ178mmのケーシングパイプ11と、外径がφ157mmで内径がφ125mmの外管20と、外径が外管20の内径よりも小径の第一内管30とを適用することができる。ここで、外管20は、内径がφ125mmである塩ビ管(VP-125)である。
【0027】
そして、図3に示すように、外管20と第一内管30により、二重管ダブルパッカー工法における二重管が構成される。具体的には、第一内管30は、複数の注入口31を備え、注入口31の上下にパッカー32(ダブルパッカー)を備えている。それぞれのパッカー32は、加圧されることにより拡径するようになっており、注入口31の上下位置にダブルパッカー32を配設し、外管20の内壁に対してダブルパッカー32を押圧させることにより、外管20に対する第一内管30の固定とシールが図られる。
【0028】
図1に戻り、地盤改良方法におけるD工程では、外管20の内部から第一内管30を引き抜いた後、例えばブライン方式の凍結工法に適用される第二内管40(凍結管)を外管20の内部にX4方向に建て込む。次いで、第二内管40と、循環ポンプ51と冷却器52とを送り管53及び戻り管54にて接続することにより、ブライン設備50を構築する。ブライン設備50により、送り管53を介して第二内管40へY3方向に冷却液を送り、第二内管40を循環して地盤の熱を奪い、昇温した冷却液を、戻り管54を介して冷却器52へY4方向に戻し、周辺地盤を凍結させることにより凍土体(凍土柱等)が造成される。
【0029】
尚、ブライン設備50は、図示例の機器の他、コンプレッサ、凝縮器、冷却水循環ポンプ、クーリングタワー等をさらに含んでいる。D工程において適用される第二内管40、ブライン設備50が、地盤改良システム100の構成要素となる。
【0030】
図4に示すように、第二内管40は、その内径が、外管20の内径φ125mmよりも小径のφ101mmである、鋼管(SGP-90)等が適用できる。
【0031】
既述するように、従来の二重管ダブルパッカー工法では、例えば外径がφ96mm(及び、内径がφ69mm)程度のケーシングパイプにて地盤を削孔した後、例えば外径がφ48mm(及び、内径が40mm)程度の外管(VP-40のスリーブパイプ)をケーシングパイプの内部に建て込むことにより薬液注入工法が行われ、さらに、従来の凍結工法では、例えば外径がφ165mm(及び、内径がφ137mm)程度のケーシングパイプにて地盤を削孔した後、例えば外径がφ114mm(及び、内径が105mm)程度の鋼管からなる凍結管(SGP-100)をケーシングパイプの内部に建て込むことにより凍結工法が行われる。このような寸法のケーシングパイプとスリーブパイプと凍結管を適用して薬液注入工と凍結工を併用した地盤改良方法を行おうとした場合、二度のケーシング削孔を余儀なくされ、削孔工程に要する時間が長くなる。
【0032】
これに対して、図2及び図3に示す寸法のケーシングパイプ11と、外管20と、第一内管30と、第二内管40とを適用することにより、一度のケーシング削孔により造成される掘削孔Dに外管20が建て込まれ、この外管20を薬液注入工と凍結工の双方に供用しながら、外管20の内部に第一内管30と第二内管40を建て込むことが可能になる。
【0033】
[実施形態に係る地盤改良方法]
次に、図5乃至図10を参照して、実施形態に係る地盤改良方法の一例について説明する。ここで、図5乃至図10は順に、実施形態に係る地盤改良方法の一例を説明する工程図である。
【0034】
まず、図5に示すように、施工対象である地盤Gに掘削用ピットG1を造成し、掘削用ピットG1にサンドポンプ15を設置するとともに、切削プラントにあるサイクロンスクリーン(図示せず)に連通する排泥管16をサンドポンプ15に接続する。
【0035】
図1に示すロータリーパーカッションドリルM1を適用して、所定深度まで延設するケーシング10(外径がφ216mm)にてケーシング削孔を行い、掘削孔Dを造成する。このケーシング削孔においては、ケーシング10内に泥水MDをZ1方向に送泥し、ケーシング10の下端から掘削孔Dの孔壁側へZ2方向に回り込んで上昇する泥水MDをサンドポンプ15にてZ3方向に吸引し、排泥管16を介してサイクロンスクリーンへZ4方向に排泥する。
【0036】
次に、図6に示すように、ケーシング10の内部に注入ホース17(例えば、外径がφ50mm)を挿入し、注入ホース17からシールグラウト材SGをZ5方向に充填する。充填されたシールグラウト材SGはケーシング10の先端から掘削孔Dの孔壁側へZ6方向に回り込み、少なくとも掘削孔Dとケーシング10の間にシールグラウト材SGが充満することにより、掘削孔Dの孔壁防護を図る。シールグラウト材SGの充填により、掘削孔D内にある泥水MDが上方に持ち上げられるが、上昇した泥水MDはサンドポンプ15により排泥管16を介して排泥される(以上、A工程)。
【0037】
次に、図7に示すように、ケーシング10の内部に、塩ビ管からなる外管20(VP-125)をX3方向に建て込む。外管20は、高さ方向に間隔を置いて複数段の注入口21を備えており、各段において、外管20の周方向に間隔を置いて複数の注入口21がある(以上、B工程)。
このB工程では、ケーシング削孔にて造成されている掘削孔Dの内部に外管20を建て込むことから、外管20の建て込みをスムーズに行うことができる。
【0038】
次に、ケーシング10を引き抜き撤去し、図8に示すように、例えば水ガラス系の薬液が供給される第一内管30を外管20の内部に建て込む。第一内管30には、複数の注入口31が備えてあり、複数の注入口31の上下にパッカー32が備えてあり、上下のパッカー32によりダブルパッカーを形成している。
【0039】
この二重管ダブルパッカー工法では、外管20の下方から上方に向かって第一内管30をX5方向に所定量上昇させた後、第一内管30を外管20の内壁に固定し、第一内管30から供給された薬液を第一内管30の注入口31と外管20の注入口21を介して周辺地盤に注入することより、注入改良体層を造成する。この第一内管30の固定に際しては、それぞれのパッカー32の内部を加圧して拡径させ、外管20の内壁に対してパッカー32を押圧することにより行われる。
【0040】
図示例では、最下層の注入改良体層S1が既に造成されており、その上の注入改良体層S2を造成している状況を示している。
例えば、最下層の注入改良体層S1の造成が完了した後、外管20の内壁に固定されているパッカー32の固定解除を図り(パッカー32の内部の加圧を解除)、第一内管30をX5方向に上昇させ、注入改良体層S2の造成位置において第一内管30を再度固定した後、薬液注入を行う。
【0041】
以上の施工を上方に亘って順次繰り返すことにより、図示例においては、注入改良体層S1乃至S5により構成される注入改良体Sが造成される。この注入改良体Sにより、例えば地下水の流速を低減させ、次の凍結工法に移行することができる(以上、C工程)。
【0042】
このC工程では、掘削孔Dの内部に配設されている外管20の内部に第一内管30を建て込むことから、第一内管30の建て込みをスムーズに行うことができる。また、外管20の下方から上方に向かって第一内管30を上昇させながら順次薬液注入を行い、最上層の薬液注入が完了した際には、第一内管30は例えば地上近傍に位置していることから、薬液注入から第一内管30の地上への引き抜き撤去までの一連の施工を効率的に行うことができる。
【0043】
次に、第一内管30が引き抜かれた外管20の内壁の洗浄を行う。薬液注入工を行うC工程により、少なくとも外管20の内壁には、薬液が付着して薬液層が形成されている。この薬液層が外管20の内壁に存在することにより、後工程で行われる凍結工法の際に冷却液による周辺地盤の凍結が阻害される恐れがあることから、この洗浄は外管20の内壁に付着した薬液層を洗浄することを目的としている。
【0044】
この洗浄においては、図9に示すように、外管20の内部に、洗浄手段60を構成する、給水配管61と、吸引配管62と、圧縮エアを供給するエア配管63を配管する。ここで、図示を省略するが、給水配管61には給水ポンプが接続しており、吸引配管62にはバキュームポンプが接続しており、エア配管63にはエアコンプレッサが接続している。
【0045】
給水配管61から外管20の内部へY5方向に給水して溜まり水のヘッド(WL)を一定に保ち、エア配管63に圧縮エアをY6方向に供給する。同時に、吸引配管62ではY8方向に吸引を行うことにより、エア配管63の先端からY7方向に送り出された圧縮エアによる押圧力と、吸引配管62における吸引力により、溜まり水が吸引配管62の先端からY9方向に回り込んで吸引される。これらの作用により、外管20の内部では溜まり水の循環が行われ、外管20の内壁が効果的に洗浄される(以上、E工程)。
【0046】
次に、図10に示すように、内壁が洗浄された外管20の内部に、凍結管である第二内管40を建て込み、ブライン設備50を構成する送り管53と戻り管54を第二内管40に接続する。そして、ブライン設備50から供給された冷却液(ブライン)を第二内管40の内部において循環させることにより、周辺に造成されている注入改良体Sをさらに凍結してなる凍土体Fが造成される(以上、D工程)。
【0047】
このD工程においても、C工程と同様に、掘削孔Dの内部に配設されている外管20の内部に第二内管40を建て込むことから、第二内管40の建て込みをスムーズに行うことができる。尚、地盤改良が終了した後、凍結管である第二内管40は外管20の内部から引き抜かれる。また、塩ビ管からなる外管20は、掘削孔Dから引き抜き撤去されてもよいし、残置が許容されている場合は掘削孔D内に残置されてもよい。
【0048】
造成された凍土体Fは、一般には凍土柱である。そこで、例えば立坑等の地中構造物を構築するエリアを囲繞する凍土壁を造成する際には、この囲繞ライン(矩形枠状や円環状)に沿って、図5乃至図10による地盤改良方法を順次行い、凍土柱が相互にラップされてなる凍土壁を造成する。
【0049】
図示する地盤改良方法によれば、ケーシング削孔にて造成された掘削孔Dの内部に複数の注入口21を備えている外管20を建て込んだ後、この外管20の内部に、薬液が供給される第一内管30と冷却液を循環させる第二内管40を順次建て込んで薬液注入工と凍結工を行うことにより、外管20と第一内管30と第二内管40のそれぞれの建て込みをスムーズに行うことができ、高い施工効率の下で複数種の地盤改良を行うことができる。
【0050】
また、薬液注入により造成された注入改良体Sに対して、再度のケーシング削孔が行われることがないため、薬液注入による注入改良体Sが乱されることなく凍土体Fを造成することができ、従って品質に優れた改良地盤を造成することができる。
【0051】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0052】
10:ケーシング
11:ケーシングパイプ
15:サンドポンプ
20:外管
21:注入口
30:第一内管
31:注入口
32:パッカー(ダブルパッカー)
40:第二内管
50:ブライン設備
51:循環ポンプ
52:冷却器
53:送り管
54:戻り管
60:洗浄手段
61:給水配管
62:吸引配管
63:エア配管
100:地盤改良システム
G:地盤
M1:削孔重機(ロータリーパーカッションドリル)
M2:注入重機(ボーリングマシン)
MD:泥水
SG:シールグラウト材
S:注入改良体
S1~S5:注入改良体層
F:凍土体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10