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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】吸込具の移動を補助するローラの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/02 20060101AFI20231208BHJP
   B60B 33/00 20060101ALI20231208BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
A47L9/02 B
B60B33/00 503Z
F16C13/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020104761
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021194381
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000228822
【氏名又は名称】日本シール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100157808
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】水野 陽章
(72)【発明者】
【氏名】村上 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】小野 裕司
(72)【発明者】
【氏名】清水 進
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-343903(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108973527(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/00~ 9/32
B60B 33/00
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引式の清掃機に取り付けられる吸込具の移動を補助するローラの製造方法であって、
ゴム製のローラ本体と前記ローラ本体の外周面から点在するように突出した樹脂繊維とを有するローラ状の部材の外表面を加熱し、
前記ローラ本体の前記外周面から突出した前記樹脂繊維を溶融させた樹脂部を前記ローラ本体の前記外周面に形成し、
前記溶融した前記樹脂部を固化させる、
ローラの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂部を前記ローラの外周面の面粗さに関する最大高さSzが150μm未満になるように前記ローラ本体の前記外周面に形成する、
請求項1に記載のローラの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂部を前記ローラ本体内に位置する繊維状の内側樹脂部に繋がるように形成する、
請求項1又は2に記載のローラの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂繊維は、ポリエステルによって形成され、
前記ローラ状の部材の前記外表面を、250℃を超える温度で加熱する、
請求項1~3の何れか1項に記載のローラの製造方法。
【請求項5】
前記ローラ本体は、NBRによって形成される、
請求項4に記載のローラの製造方法。
【請求項6】
前記ローラ状の部材は、前記ローラ本体の側面から点在するように突出した樹脂繊維を有し、
前記ローラ状の部材の外表面を加熱し、
前記樹脂繊維を溶融させた樹脂部を前記ローラ本体の前記側面に形成し、
前記溶融した前記樹脂部を固化させる、
請求項1~5の何れか1項に記載のローラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引式の清掃機に取り付けられる吸込具の移動を補助するローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸込具は、吸引式の清掃機に取り付けられ、清掃機は、吸込具を床面上で移動させながら使用される。吸込具の移動を補助するために、吸込具の下面には、ローラが取り付けられている。
【0003】
ローラの外周面が硬すぎると、床面がローラによって傷つけられるので、ゴム製のローラが用いられることが一般的である。ローラの外周面をゴムのみで構成した場合には、ローラの外周面の摩擦係数が大きくなりすぎることがある。摩擦係数が大きすぎる場合には、ローラは横滑りせず(すなわち、ローラの回転軸の延設方向におけるローラの摺動は許容されず)、吸込具を側方に移動させることが困難になる。
【0004】
ローラの摩擦係数を低減するために、特許文献1は、不織布にゴムを含浸することにより、ローラを形成することを提案している。この場合、ローラの外周面上には、不織布の樹脂繊維が露出し、露出した樹脂繊維によって摩擦係数が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-343903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のローラの外周面は、微視的には、樹脂繊維が毛羽立った状態になっている。この場合、床面上の塵埃が樹脂繊維に絡まりやすい。ローラに塵埃が絡みつくと、ローラの転動が塵埃によって阻害され、吸込具の移動を補助する機能が失われる。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題に基づいてなされたものであり、その目的は、ローラへの塵埃の絡みつきを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るローラの製造方法は、吸引式の清掃機に取り付けられる吸込具の移動を補助するローラの製造方法である。前記ローラの製造方法は、ゴム製のローラ本体と前記ローラ本体の外周面から点在するように突出した樹脂繊維とを有するローラ状の部材の外表面を加熱し、前記ローラ本体の外周面から突出した前記樹脂繊維を溶融させた樹脂部を前記ローラ本体の前記外周面に形成し、前記溶融した前記樹脂部を固化させる。
【0009】
本発明によれば、ゴム製のローラ本体と前記ローラ本体の外周面から点在するように突出した樹脂繊維とを有するローラ状の部材の外表面を加熱し、前記樹脂繊維を溶融させるので、ローラ本体の外周面に樹脂部が点在するように形成され、この樹脂部のローラ本体の外周面からの突出量が低減され、塵埃のローラ本体への絡みつきが抑制される。すなわち、樹脂繊維がローラ本体の外面から点在するように突出して毛羽立った状態では塵埃が捕捉されてしまうが、樹脂繊維は溶融することによってローラ本体の外周面上に付着した状態になるため、樹脂繊維の毛羽立ちが抑制され、塵埃が捕捉されにくい。したがって、塵埃がローラに巻き付くことに起因するローラの転動不良が抑制される。
【0010】
上記構成において、前記樹脂部を前記ローラの外周面の面粗さに関する最大高さSzが150μm未満になるように前記ローラ本体の前記外周面に形成してもよい。
【0011】
この構成によれば、樹脂部をローラの外周面の面粗さに関する最大高さSzが150μm未満になるようにローラ本体の外周面に形成するので、最大高さSzは、毛髪の平均的な太さ(150μm)よりも小さくなる。このため、ローラの外周面への毛髪の付着が抑制される。最大高さSzは、ローラの外周面における最も高い点と最も低い点の高低差を表すパラメータであり、例えば、樹脂部の最も高い点とローラ本体の外周面の最も低い点の高低差を示す。
【0012】
上記構成において、前記樹脂部を前記ローラ本体内に位置する繊維状の内側樹脂部に繋がるように形成してもよい。
【0013】
この構成によれば、ローラ本体の外周面上の樹脂部をローラ本体内に位置する繊維状の内側樹脂部に繋がるように形成するので、樹脂部がローラ本体の外周面から剥がれにくい。
【0014】
上記構成において、前記樹脂繊維は、ポリエステルによって形成されてもよい。前記ローラ状の部材の前記外表面を、250℃を超える温度で加熱してもよい。
【0015】
この構成によれば、ローラ状の部材の外表面を、250℃を超える温度で加熱するので、樹脂繊維を形成するポリエステルの融点よりも高い温度で樹脂繊維が溶融される。このため、樹脂繊維を溶融させた樹脂部をローラ本体の外周面に強固に付着させつつ、ローラの摩擦係数をより低減させることができる。
【0016】
上記構成において、前記ローラ本体は、NBRによって形成されてもよい。
【0017】
この構成によれば、ローラ本体を形成するNBRの融点よりも高い温度でローラ状の部材の外表面を加熱するので、樹脂繊維とともにローラ本体も溶融させることができる。このため、ローラ本体の表面に現れるゴムの表面の粗さを低減することができる。
【0018】
上記構成において、前記ローラ状の部材は、前記ローラ本体の側面から点在するように突出した樹脂繊維を有してもよい。前記ローラ状の部材の外表面を加熱し、前記樹脂繊維を溶融させた樹脂部を前記ローラ本体の前記側面に形成してもよい。前記溶融した前記樹脂部を固化させてもよい。
【0019】
この構成によれば、ローラ本体の側面から点在するように突出した樹脂繊維を溶融させた樹脂部をローラ本体の側面にも形成するので、ローラ本体の外周面にのみ樹脂部を形成する場合に比べて、塵埃のローラへの絡みつきを抑制しやすい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ローラへの塵埃の絡みつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係るローラの製造方法によって製造されたローラを備える吸込具が取り付けられた吸引式の清掃機の側面図である。
図2図1の吸込具の平面図である。
図3図2のIII-III線で切断した断面図である。
図4図2に示す吸込具の底面図である。
図5】本実施形態に係るローラの製造方法によって製造されたローラの斜視図である。
図6】本実施形態に係るローラの製造方法によって製造されたローラにおいてローラ本体の外周面に形成された樹脂部がローラ本体内の内側樹脂部に繋がっている状態を示す図である。
図7】本実施形態に係るローラの製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係るローラの製造方法によって製造されたローラ及びローラを備える吸込具について図面を参照しながら説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態に係るローラの製造方法によって製造されたローラ及びローラを備えた吸込具を説明するために必要となる主要な構成要素を簡略化して示したものである。したがって、本発明の実施形態に係るローラの製造方法によって製造されたローラ及びローラを備える吸込具は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成要素を備え得る。
【0023】
図1は、吸込具100が取り付けられた吸引式の清掃機101を示している。清掃機101は、吸引ファン(図示せず)や吸引ファンを駆動するモータ(図示せず)を内蔵する本体部102と、本体部102から延設されたホース103とを備えている。清掃機101は、ホース103の中間位置に設けられた操作部104を更に備えている。吸込具100は、ホース103の先端に接続されている。操作部104は、ホース103に沿って設けられた配線を通じて本体部102と吸込具100とに電気的に接続されている。操作部104は、使用者の操作を受けて、本体部102及び吸込具100の駆動部位を作動させたり停止させたりするための指令信号を生成するように構成されている。
【0024】
吸込具100は、図2~4に示すように、左右方向に長い中空の箱構造からなるハウジング120と、ハウジング120をホース103の先端に接続するように構成された接続口130と、塵埃を掻き取るように構成された2つの掻取ローラ141、142と、ハウジング120の下面に位置する複数のローラ151~153と、を備える。
【0025】
ハウジング120は、前壁121、後壁122、側壁123、124、上壁125、下壁126、前カバー129、仕切壁127を含んでいる。
【0026】
前壁121は、ハウジング120の前側で立設された部位である。後壁122は、前壁121の後方で立設された左右方向に長い部位である。後壁122は、左右方向における中央位置が前方に向かって凹む凹部122aを有するように形成されている(図2参照)。
【0027】
側壁123、124は、ハウジング120の右側および左側で立設された部位であり、前壁121と後壁122とを繋いでいる。上壁125は、後壁122の上部と側壁123、124の上部とに繋がっている。
【0028】
下壁126は、ハウジング120の下面を形成している。具体的には、下壁126は、図4に示すように、後壁122及び側壁123、124の下端から内側に向かって延び、全体で底面視略コ字状に形成されている。具体的には、下壁126は、側壁123、124から内側に延びる左右下壁126a、126aと、後壁122から内側に延びる後下壁126bと、を有する。左右下壁126a、126aは、側壁123、124の前後幅の全長に亘って形成されている。後下壁126bは、左側の下壁126aから右側の下壁126aに繋がっている。後下壁126bの下面には、布面に毛羽が立てられた起毛布によって形成された集塵部128が設けられている。
【0029】
前カバー129は、前壁121の上部と上壁125の上部と側壁123、124とに繋がり、前壁121の上部および上壁125の上部に着脱可能に構成されている。
【0030】
仕切壁127は、前後方向に延びる前後方向仕切壁部127aと、左右方向に延びる左右方向仕切壁部127bと、を含む。前後方向仕切壁部127aは、左右下壁126a、126aの内側の端から上壁125に繋がるように形成されている。左右方向仕切壁部127bは、後下壁126bの内側の端から上壁125に繋がるように形成されている。左右方向仕切壁部127bは、後下壁126bの左右方向の全長に亘って連続している。前後方向仕切壁部127aは、左右方向仕切壁部127bの左右の端から左右下壁126a、126aの前端まで至っている。
【0031】
仕切壁127は、塵埃が吸い込まれる吸込空間111を区画する。吸込空間111は、前カバー129によって上から覆われる。吸込空間111の開口は、略矩形状に形成され、ハウジング120の下面に開口している。吸込空間111は、ハウジング120の下面の開口から空気及び塵埃が流れることを許容するとともに、掻取ローラ141、142などを収容するための空間として用いられる。
【0032】
仕切壁127と後壁122と側壁123と側壁124と上壁125と下壁126とにより、掻取ローラ141、142を駆動するモータ165、167などを収容する収容空間112が形成される(図2~4参照)。
【0033】
ハウジング120には、仕切壁127及び後壁122の凹部122aを貫通する流路116が形成されている(図2~4参照)。流路116の前側の開口115は、仕切壁127の左右方向の中央位置における吸込空間111側に現れ、吸込空間111に開口している(図4参照)。流路116は、後壁122の凹部122aから後方に延び接続口130に連通している。流路116は、空気及び塵埃が吸込空間111から清掃機101へ流れる流動経路として用いられる。
【0034】
後下壁126bの左右方向の中央位置には、図2、4に示すように、後方に突出する後方ブラケット158が設けられている。後方ブラケット158は後下壁126bと一体に形成されている。後方ブラケット158は、後下壁126bから略U字状に後方に突出し、後下壁126bと隣接する基端部158aと、基端部158aの後方端における左右の両端部から後方に突出する左右突出部158b、158bと、を有する。左右突出部158b、158bには、それぞれ、下面から上方に凹み、後述の後方ローラ153、153が収容される後方ローラ収容穴159、159が形成されている。
【0035】
尚、後方ローラ収容穴159、159は、左右突出部158b、158bを上下に貫通してもよい。また、後方ブラケット158は、ハウジング120の下面から後方に突出していれば、後下壁126bと一体に形成されていなくてもよく、その形状も限定されることはない。また、後方ローラ153の数も2つに限定されることはない。また、後方ブラケット158は、省略されてもよい。
【0036】
掻取ローラ141は、吸込空間111に配置されている(図4参照)。掻取ローラ141は、側壁123の近傍の収容空間112内から仕切壁127の前後方向仕切壁部127aを貫通して側方(図4では右側)に延設されたテーパ筒部161と、テーパ筒部161の外周面に設けられた複数の掻取部162と、を有している。
【0037】
テーパ筒部161は、左右方向における吸込空間111の長さの半分よりも若干短い。テーパ筒部161の基端側の部位は、側壁123の近傍の収容空間112に配置された軸受(図示せず)によって回転自在に支持されている。
【0038】
テーパ筒部161は、基端から先端に向けて細くなる細長い円錐台形状を有している。テーパ筒部161は、先端が基端よりも前方に位置するように傾斜している。加えて、テーパ筒部161は、先端が基端よりも下方に位置するように傾斜している。
【0039】
テーパ筒部161の基端には、テーパ筒部161と一体に回転するプーリ(図示せず)が取り付けられている。プーリには、収容空間112内に配置されたモータ165のモータ軸165bに掛け渡されたベルト166(図3参照)が掛け渡されている。これにより、モータ165の駆動によって掻取ローラ141が回転する。
【0040】
複数の掻取部162は、床面上の塵埃を掻き取るためのものである。複数の掻取部162それぞれは、テーパ筒部161の基端から先端までの区間に亘って延設された帯状の部位である。掻取部162は、弾性変形可能な材料から形成されている。たとえば、掻取部162は、多数のブラシ毛を用いて形成されていてもよいし、帯状のエラストマや帯状の弾性樹脂を用いて形成されていてもよいし、帯状の布材を用いて形成されていてもよい。
【0041】
掻取部162は、テーパ筒部161の基端から先端までの区間に亘って略一様な突出量でテーパ筒部161の外周面から突出している。掻取部162の突出量は、掻取部162が吸込空間111を通じてハウジング120の下面よりも下方に突出し、床面に接触する値に設定されている。
【0042】
掻取部162は、テーパ筒部161の中心軸に対して非平行である。詳細には、掻取部162は、テーパ筒部161の中心軸に対してねじれる方向に延設されている。すなわち、掻取部162の基端及び先端のテーパ筒部161の周方向における位置は、互いに相違している。
【0043】
掻取ローラ142は、掻取ローラ141と左右対称である。すなわち、掻取ローラ142の先端は、掻取ローラ141の先端に対向している。掻取ローラ142は、掻取ローラ142の先端から側壁124に向けて側方に延設されている。掻取ローラ142のテーパ筒部161の基端側の部位は、側壁124の近傍の収容空間112に配置された軸受(図示せず)によって回転自在に支持されている。掻取ローラ142のテーパ筒部161の基端には、テーパ筒部161と一体に回転するプーリ(図示せず)が取り付けられている。プーリには、モータ167のモータ軸167bに掛け渡されたベルト168が掛け渡されている。これにより、モータ167の駆動によって掻取ローラ142が回転する。
【0044】
掻取ローラ141、142は、左右方向における吸込空間111の長さの半分よりも若干短いので、掻取ローラ141、142の先端の間には、空隙118が形成されている(図4参照)。すなわち、空隙118は、掻取ローラ141、142の延設方向において掻取ローラ141、142の先端に隣接して形成されている。掻取ローラ141、142は、空隙118について左右対称な形状を有している。空隙118は、掻取ローラ141、142に巻き付いた長い塵埃(たとえば、毛髪)を除去するために利用される。
【0045】
空隙118は、流路116の開口115の前方に位置している(図2、4参照)。詳細には、空隙118は、開口115の開口方向において開口115と並んでいる。空隙118は、左右方向において吸込空間111の略中央に形成されている。
【0046】
モータ165は、モータ軸165bが掻取ローラ141のテーパ筒部161の中心軸と平行になるように、下壁126の上面に設けられたモータ支持部176に支持されている(図3参照)。モータ167は、モータ軸167bが掻取ローラ142のテーパ筒部161の回転軸と平行になるように、下壁126の上面に設けられたモータ支持部176に支持されている(図3参照)。
【0047】
複数のローラ151~153は、図4に示すように、左右下壁126a、126aに配置された一対の左右ローラ151、151と、後下壁126bに配置された摩擦低減ローラ152と、後方ブラケット158に配置された一対の後方ローラ153、153と、を有する。尚、後方ブラケット158が省略される場合は、一対の後方ローラ153、153は省略される。
【0048】
一対の左右ローラ151、151は、内部に樹脂繊維がちりばめられて一部が外面に毛羽立っており、不織布にゴムを含浸することによって形成されている。尚、一対の左右ローラ151、151の材質は限定されることはない。例えば、一対の左右ローラ151、151は、樹脂によって形成されてもよい。
【0049】
一対の左右ローラ151、151は、左右下壁126a、126aに形成された左右ローラ配置孔156、156に位置した状態で左右下壁126a、126aに回転自在に取り付けられている。この状態で、一対の左右ローラ151、151は、左右下壁126a、126aの下面から下方に突出している。一対の左右ローラ151、151は、他のローラの1例である。
【0050】
一対の後方ローラ153、153は、内部に樹脂繊維がちりばめられて一部が外面に毛羽立っており、不織布にゴムを含浸することによって形成されている。尚、一対の後方ローラ153、153の材質は限定されない。例えば、一対の後方ローラ153、153は、樹脂によって形成されてもよい。
【0051】
一対の後方ローラ153、153は、左右突出部158b、158bの後方ローラ収容穴159、159に位置した状態で左右突出部158b、158bに回転自在に取り付けられている。この状態で、一対の後方ローラ153、153は、左右突出部158b、158bの下面から下方に突出している。
【0052】
摩擦低減ローラ152は、図5、6に示すように、ゴム製のローラ本体152aと、ローラ本体152aの外面上に溶融させて固化させた状態で点在する樹脂部152bと、樹脂部152bに繋がり、ローラ本体152a内に位置する繊維状の内側樹脂部152cと、を備える。摩擦低減ローラ152は、ローラ本体152aに樹脂繊維がちりばめられて一部が外面に毛羽立ったローラ状の部材を用いて作製したものである。このローラ状の部材は、不織布にゴムを含浸することによって形成される。そして、ローラ本体152aの外面から突出した樹脂繊維は溶融して固化した状態になっている。このため、樹脂部152bは、ローラ本体152aの表面に一様に点在している。
【0053】
ローラ本体152aを形成するゴムは、ニトリルブタジエンゴム(NBR)によって形成されている。尚、ローラ本体152aを形成するゴムは、ニトリルブタジエンゴム(NBR)に限定されることはない。
【0054】
樹脂部152bは、ポリエステルによって形成されている。尚、樹脂部152bの材質は、加熱によって溶融させることができ、かつ、ローラ本体152aを形成するゴムよりも摩擦係数の低いものであれば、ポリエステルに限定されることはない。例えば、樹脂部152bの材質は、ポリプロピレンやポリエチレンであってもよい。
【0055】
樹脂部152bは、摩擦低減ローラ152の外周面の面粗さに関する最大高さSzが150μm未満になるように、ローラ本体152aの外周面上において溶融させて固化させた状態に形成されている。摩擦低減ローラ152の外周面は、ローラ本体152aの外周面およびローラ本体152aの外周面上で溶融させて固化させた状態の樹脂部152bを含む面をいう。最大高さSzは、摩擦低減ローラ152の外周面における最も高い点と最も低い点の高低差を表すパラメータである。例えば、最大高さSzは、樹脂部152bの最も高い点とローラ本体152aの外周面の最も低い点の高低差を示す。尚、ローラ本体152aの外周面上の樹脂部152bは、摩擦低減ローラ152の外周面の面粗さに関する最大高さSzが150μm以上になるように形成されてもよい。
【0056】
樹脂部152bは、ローラ本体152aの側面上においても溶融させて固化させた状態に形成されている。尚、ローラ本体152aの側面上の樹脂部152bは、摩擦低減ローラ152の側面の面粗さに関する最大高さSzが150μm未満になるように形成されてもよく、また、省略されてもよい。
【0057】
摩擦低減ローラ152は、後下壁126bに形成された摩擦低減ローラ配置孔157に配置された状態で後下壁126bに回転自在に取り付けられている。この状態で、摩擦低減ローラ152は、後下壁126bの下面から下方に突出している。摩擦低減ローラ配置孔157は、左右ローラ配置孔156、156よりも流路116の開口115に近い位置に配置されている(図3、4参照)。
【0058】
次に、上記のように構成された吸込具100の摩擦低減ローラ152の製造方法について図7を参照しながら説明する。尚、図7では、樹脂部152bの図示は省略している。
【0059】
まず、ゴム製のローラ本体152aとローラ本体152aの外周面および側面から突出した樹脂繊維とを有するローラ状の部材10を作製する。このとき、樹脂繊維がローラ本体152aの外周面から突出する突出量は、樹脂繊維を溶融させて固化させた樹脂部152bの最大高さSzが150μm未満になり得るように設定される。
【0060】
ローラ状の部材10は、例えば、環状に形成されたポリエステル等の樹脂製の不織布に、ニトリルブタジエンゴム(NBR)等の樹脂を含浸させることによって作製することができ、不織布の樹脂繊維がローラ本体152aの外周面および側面に毛羽立ったものである。この状態で、ローラ本体152aの外周面および側面に毛羽立った樹脂繊維は、内側樹脂部152cに繋がっている。
【0061】
尚、ローラ本体152aの側面に溶融させて固化させた状態の樹脂部152bを形成しない場合は、ローラ状の部材10において、ローラ本体152aの側面からは樹脂繊維が突出していなくてもよい。
【0062】
次いで、図7に示すように、ローラ状の部材10の外表面をバーナー170で250℃を超える燃焼ガスによって加熱する。これにより、ローラ本体152aの外周面および側面から点在するように突出した樹脂繊維が溶融するとともに、250℃よりも融点の低いローラ本体152aの表面も溶融する。この結果、溶融した樹脂部152bがローラ本体152aの外周面および側面に点在するように形成される。
【0063】
このとき、溶融した樹脂部152aにおけるローラ本体152aの外周面および側面からの突出量が過度に大きくなったり、過度に小さくなったりしないように、バーナー170から発生する燃焼ガスの吐出圧力を調節する。具体的には、バーナー170からの燃焼ガスの吐出圧力を大きくするほど、溶融した樹脂部152bが燃焼ガスによってローラ本体152aの外周面および側面に向けて押圧される力が大きくなるため、溶融した樹脂部152bにおけるローラ本体152aの外周面および側面からの突出量が小さくなる一方、溶融した樹脂部152bにおけるローラ本体152aの外周面および側面に占める面積は大きくなる。このため、摩擦低減ローラ152の外面における摩擦係数は小さくなる。
【0064】
一方、バーナー170からの燃焼ガスの吐出圧力を小さくするほど、溶融した樹脂部152bが燃焼ガスによってローラ本体152aの外周面および側面に向けて押圧される力が小さくなるため、樹脂部152bのローラ本体152aの外周面および側面からの突出量が大きくなる一方、樹脂部152bのローラ本体152aの外周面および側面に占める面積が小さくなる。このため、摩擦低減ローラ152の外周面および側面における摩擦係数は大きくなる。
【0065】
本実施形態では、溶融した樹脂部152bを固化させたときに、摩擦低減ローラ152の外周面および側面の面粗さに関する最大高さSzが150μm未満になるように、バーナー170からの燃焼ガスの吐出圧力を調節する。
【0066】
最後に、溶融した樹脂部152bを固化させる。この結果、ローラ本体152aの外周面および側面に固化した樹脂部152bが点在するように形成される。
【0067】
尚、ローラ状の部材10の外表面を加熱する手段は、ローラ状の部材10のローラ本体152aの外面から突出する樹脂繊維を溶融させることができれば、バーナー170に限定されることはない。また、ローラ状の部材10の外表面を加熱する温度は、少なくとも樹脂繊維を溶融させることができれば、250℃を超える温度に限定されることはない。また、ローラ本体152aは、少なくとも樹脂繊維を溶融させれば、溶融させなくてもよい。
【0068】
上記摩擦低減ローラ152の製造方法では、ゴム製のローラ本体152aとローラ本体152aの外面から点在するように突出した樹脂繊維とを有するローラ状の部材10の外表面を加熱し、前記樹脂繊維を溶融させるので、ローラ本体152aの外周面に樹脂部152bが点在するように形成され、この樹脂部152bのローラ本体152aの外周面からの突出量が低減され、塵埃のローラ本体152aへの絡みつきが抑制される。すなわち、樹脂繊維がローラ本体152aの外面から点在するように突出して毛羽立った状態では塵埃が捕捉されてしまうが、樹脂繊維は溶融することによってローラ本体152aの外周面上に付着した状態になるため、樹脂繊維の毛羽立ちが抑制され、塵埃が捕捉されにくい。したがって、塵埃がローラに巻き付くことに起因するローラの転動不良が抑制される。
【0069】
上記摩擦低減ローラ152の製造方法では、樹脂部152bを、摩擦低減ローラ152の外周面の面粗さに関する最大高さSzが150μm未満になるようにローラ本体152aの外周面に形成するので、最大高さSzは、毛髪の平均的な太さ(150μm)よりも小さい。このため、摩擦低減ローラ152の外周面への毛髪の付着が抑制される。
【0070】
上記摩擦低減ローラ152の製造方法では、ローラ本体152aの外周面上の樹脂部152bをローラ本体152a内に位置する繊維状の内側樹脂部152cに繋がるように形成するので、樹脂部152bがローラ本体152aの外周面から剥がれにくい。
【0071】
上記摩擦低減ローラ152の製造方法では、ローラ状の部材10の外表面を、250℃を超える温度で加熱するので、樹脂繊維を形成するポリエステルの融点よりも高い温度で樹脂繊維が溶融される。このため、樹脂繊維を溶融させた樹脂部152bをローラ本体152aの外周面および側面に強固に付着させつつ、摩擦低減ローラ152の摩擦係数をより低減させることができる。
【0072】
上記摩擦低減ローラ152の製造方法では、ローラ本体152aを形成するNBRの融点よりも高い温度でローラ状の部材10の外表面を加熱するので、樹脂繊維とともにローラ本体152aも溶融する。このため、ローラ本体152aの表面に現れるゴムの表面の粗さを低減することができる。
【0073】
上記摩擦低減ローラ152の製造方法では、ローラ本体152aの外周面および側面から突出した樹脂繊維を溶融させた樹脂部152bを、ローラ本体152aの外周面および側面に形成するので、ローラ本体152aの外周面にのみ樹脂部152bを形成する場合に比べて、塵埃の摩擦低減ローラ152への絡みつきを抑制しやすい。
【符号の説明】
【0074】
100 吸込具
101 清掃機
152 ローラ
152a ローラ本体
152b 樹脂部
152c 内側樹脂部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7