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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20231208BHJP
【FI】
A47J27/00 109H
A47J27/00 103G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021025447
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022127352
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】椿 恵
(72)【発明者】
【氏名】森 大輝
(72)【発明者】
【氏名】山地 宏和
(72)【発明者】
【氏名】武中 和彦
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-043086(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111398374(CN,A)
【文献】特表2019-506247(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111839172(CN,A)
【文献】特開2015-188644(JP,A)
【文献】特開平11-192161(JP,A)
【文献】特開2009-291267(JP,A)
【文献】特開2015-080491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-27/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と米とを含む被炊飯物を収容する鍋と、
前記鍋を加熱する鍋加熱部と、
前記鍋の上部開口部を開閉自在に覆う蓋体と、
前記鍋の上方に配置され、前記鍋加熱部が前記鍋を加熱することによって前記鍋内から発生するおねばを含む流体を取り込む筒体と、
前記流体の静電容量を検知する静電容量検知部と、
前記鍋加熱部の加熱量を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記静電容量検知部が第1閾値以上の前記静電容量を予め決められた時間検知したとき、前記鍋加熱部の加熱量を予め決められた加熱量より小さくする、炊飯器。
【請求項2】
前記静電容量検知部が第1閾値以上の前記静電容量を予め決められた時間検知した回数を記憶する記憶部を更に備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された回数が予め決められた回数以上になったとき、前記鍋加熱部の加熱量を前記予め決められた加熱量よりも小さくする、請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記静電容量検知部は、前記筒体の周方向に配置された複数の静電容量センサを備える、請求項1又は2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記静電容量検知部は、前記筒体の延在方向に配置された複数の静電容量センサを備える、請求項1~3のいずれか1つに記載の炊飯器。
【請求項5】
前記静電容量検知部は、前記複数の静電容量センサのうち第2閾値以上の前記静電容量を予め決められた時間検知した静電容量センサの位置及び個数の少なくとも一方に基づいて、前記第1閾値以上の前記静電容量を検知したか否かを判断する、請求項3又は4に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記鍋内の圧力を調整する圧力調整部を備え、
前記制御部は、前記静電容量検知部が前記第1閾値以上の前記静電容量を検知したとき、前記静電容量検知部が前記第1閾値未満の前記静電容量を検知したときよりも、前記鍋内の圧力の変化が緩やかになるように前記圧力調整部を制御する、請求項1~5のいずれか1つに記載の炊飯器。
【請求項7】
前記鍋内の圧力を調整する圧力調整部を備え、
前記制御部は、前記静電容量検知部が前記第1閾値以上の前記静電容量を検知したとき、前記鍋内の圧力が一定又は略一定になるように前記圧力調整部を制御する、請求項1~5のいずれか1つに記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おねば(粘性を有する煮汁)の吹きこぼれを抑えることができる炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯器として、例えば、特許文献1(特許第3116861号公報)に記載された炊飯器が知られている。特許文献1に記載された炊飯器は、鍋内で発生した蒸気を排出するために蓋体に設けられた蒸気筒と、当該蒸気筒内のおねばの上昇を検出するおねば検出部とを備えている。おねば検出部は、蒸気筒の底面の傾斜部を転がり自在に設けられた円筒状又は球状の磁石であるフロートと、当該フロートの移動を検知するリードスイッチなどのフロート検知部とを備えている。特許文献1に記載された炊飯器は、蒸気筒に侵入したおねばに押されてフロートが傾斜部を上方に転がり、フロートがフロート検知部から離れたときに、鍋加熱部の加熱量を低下させることで、おねばの吹きこぼれを抑えるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3116861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の炊飯器においては、蒸気筒の中にフロートが組み込まれることで、蒸気筒の構造が複雑になり、清掃性が悪いという課題がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、清掃性を向上させることができる炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明によれば、水と米とを含む被炊飯物を収容する鍋と、
前記鍋を加熱する鍋加熱部と、
前記鍋の上部開口部を開閉自在に覆う蓋体と、
前記鍋の上方に配置され、前記鍋加熱部が前記鍋を加熱することによって前記鍋内から発生するおねばを含む流体を取り込む筒体と、
前記流体の静電容量を検知する静電容量検知部と、
前記鍋加熱部の加熱量を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記静電容量検知部が第1閾値以上の前記静電容量を予め決められた時間検知したとき、前記鍋加熱部の加熱量を予め決められた加熱量より小さくする、炊飯器を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る炊飯器によれば、清掃性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る炊飯器の模式断面図である。
図2図1の炊飯器の斜視図である。
図3】鍋内に水及び米を入れて沸騰させたとき及び鍋内に水のみを入れて沸騰させたときに、当該鍋内から発生した流体の静電容量の変化を示すグラフである。
図4】鍋内に水及び米を入れて沸騰させたときに当該鍋内から発生した流体の静電容量の変化と、鍋加熱部の加熱量の制御の一例とを示すグラフである。
図5図1の炊飯器が備える静電容量検知部の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1態様によれば、水と米とを含む被炊飯物を収容する鍋と、
前記鍋を加熱する鍋加熱部と、
前記鍋の上部開口部を開閉自在に覆う蓋体と、
前記鍋の上方に配置され、前記鍋加熱部が前記鍋を加熱することによって前記鍋内から発生するおねばを含む流体を取り込む筒体と、
前記流体の静電容量を検知する静電容量検知部と、
前記鍋加熱部の加熱量を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記静電容量検知部が第1閾値以上の前記静電容量を予め決められた時間検知したとき、前記鍋加熱部の加熱量を予め決められた加熱量より小さくする、炊飯器を提供する。
【0010】
本発明の第2態様によれば、前記静電容量検知部が第1閾値以上の前記静電容量を予め決められた時間検知した回数を記憶する記憶部を更に備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された回数が予め決められた回数以上になったとき、前記鍋加熱部の加熱量を前記予め決められた加熱量よりも小さくする、第1態様に記載の炊飯器を提供する。
【0011】
本発明の第3態様によれば、前記静電容量検知部は、前記筒体の周方向に配置された複数の静電容量センサを備える、第1又は2態様に記載の炊飯器を提供する。
【0012】
本発明の第4態様によれば、前記静電容量検知部は、前記筒体の延在方向に配置された複数の静電容量センサを備える、第1~3態様のいずれか1つに記載の炊飯器を提供する。
【0013】
本発明の第5態様によれば、前記静電容量検知部は、前記複数の静電容量センサのうち第2閾値以上の前記静電容量を予め決められた時間検知した静電容量センサの位置及び個数の少なくとも一方に基づいて、前記第1閾値以上の前記静電容量を検知したか否かを判断する、第3又は4態様に記載の炊飯器を提供する。
【0014】
本発明の第6態様によれば、前記鍋内の圧力を調整する圧力調整部を備え、
前記制御部は、前記静電容量検知部が前記第1閾値未満の前記静電容量を検知したとき、前記静電容量検知部が前記第1閾値未満の前記静電容量を検知したときよりも、前記鍋内の圧力の変化が緩やかになるように前記圧力調整部を制御する、第1~5態様のいずれか1つに記載の炊飯器を提供する。
【0015】
本発明の第7態様によれば、前記鍋内の圧力を調整する圧力調整部を備え、
前記制御部は、前記静電容量検知部が前記第1閾値以上の前記静電容量を検知したとき、前記鍋内の圧力が一定又は略一定になるように前記圧力調整部を制御する、第1~5態様のいずれか1つに記載の炊飯器を提供する。
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態によって本発明が限定されるものではない。また、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0017】
また、以下では、説明の便宜上、通常使用時の状態を想定して「上」、「下」等の方向を示す用語を用いるが、本発明に係る炊飯器の使用状態等を限定することを意味するものではない。
【0018】
《実施形態》
本発明の実施形態に係る炊飯器について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る炊飯器の模式断面図である。図2は、図1の炊飯器の斜視図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る炊飯器は、内部に鍋収納部1aが形成された略有底筒状の炊飯器本体1と、鍋収納部1aに収納され、水と米とを含む被調理物を収容する鍋2とを備えている。炊飯器本体1の上部には、炊飯器本体1の上部開口部を開閉可能な中空構造の外蓋3が取り付けられている。外蓋3の内側(鍋2の上部開口部を覆う側)には、鍋2の上部開口部を密閉可能な略円盤状の内蓋4が着脱可能に取り付けられている。本実施形態においては、外蓋3と内蓋4とで、鍋2の上部開口部を開閉可能に覆う蓋体が構成されている。
【0020】
炊飯器本体1の鍋収納部1aは、上枠1bとコイルベース1cとで構成されている。上枠1bは、収納された鍋2の側壁に対して隙間が空くように配置される筒状部1baと、筒状部1baの上部から外方に突出し炊飯器本体1の上部開口部の内周部に嵌合するフランジ部1bbとを備えている。筒状部1baの上端は、鍋2の上部開口部の周囲に設けられたフランジ部2aを支持している。
【0021】
コイルベース1cは、鍋2の下部の形状に対応して有底筒状に形成され、その上部が上枠1bの筒状部1baの下端部に取り付けられている。コイルベース1cの外周面には、鍋2を加熱(誘導加熱)する鍋加熱部5が取り付けられている。鍋加熱部5は、底内加熱コイル5aと底外加熱コイル5bとで構成されている。底内加熱コイル5aは、コイルベース1cを介して鍋2の底部の中央部周囲に対向するように配置されている。底外加熱コイル5bは、コイルベース1cを介して鍋2の底部のコーナー部に対向するように配置されている。
【0022】
コイルベース1cの底部の中央部分には開口部が設けられている。当該開口部には、鍋2の温度を測定するための鍋温度検知部の一例である鍋温度センサ6が、鍋収納部1aに収納された鍋2の底部に当接可能に配置されている。鍋2の温度は鍋2内の被調理物の温度と略同じであるので、鍋温度センサ6が鍋2の温度を検知することで、鍋2内の被調理物の温度を検知することができる。
【0023】
外蓋3は、外蓋3の外郭を構成する上外郭部材3aと下外郭部材3bとを備えている。また、外蓋3は、ヒンジ軸3Aを備えている。ヒンジ軸3Aは、外蓋3の開閉軸であり、炊飯器本体1の上枠1bに両端部を回動自在に固定されている。ヒンジ軸3Aの周囲には、ねじりコイルばね7が取り付けられている。ねじりコイルばね7は、ヒンジ軸3Aを中心として外蓋3を鍋2の上部開口部から離れる方向(開方向)に弾性的に付勢する。
【0024】
外蓋3の内部には、蓋開放装置8が設けられている。蓋開放装置8は、炊飯器本体1の一部に係合することにより、外蓋3が鍋2の上部開口部を塞いだ状態を保持する。一方、蓋開放装置8は、外蓋3が鍋2の上部開口部を塞いだ状態で炊飯器本体1又は外蓋3に設けられた開蓋ボタン81(図2参照)が押圧されたとき、フック軸8Aを中心に矢印A1方向に回転する。これにより、蓋開放装置8と炊飯器本体1の一部との係合が外れ、外蓋3が、ねじりコイルばね7の付勢力によりヒンジ軸3Aを中心として鍋2の上部開口部から離れる方向に回転する。これにより、外蓋3が、鍋2の上部開口部を塞いでいない開状態になる。なお、外蓋3は、例えば、鍋2の上部開口部を塞いだ位置からヒンジ軸3Aを中心として90度回転すると、当該回転を停止するように構成されている。
【0025】
また、外蓋3の内部には、鍋2の上方に配置され、鍋加熱部5が鍋2を加熱することによって鍋2内から発生するおねばを含む流体を取り込む筒体9が設けられている。本実施形態において、筒体9の形状は、円筒形である。筒体9の上部開口部は、上外郭部材3aで覆われている。上外郭部材3aには、筒体9の内部と炊飯器の外部とを連通する連通穴3aaが設けられている。筒体9内に取り込まれた流体は、連通穴3aaを通じて炊飯器の外部に排出される。また、内蓋4には、鍋2内から発生するおねばを含む流体を筒体9の内部に取り入れるための連通穴(図示せず)が設けられている。
【0026】
筒体9には、筒体9の内部を流れる流体の静電容量を検知する静電容量検知部10が設けられている。静電容量検知部10は、例えば、筒体9の外周面に沿って取り付けられた静電タッチフィルムである。
【0027】
また、内蓋4には、鍋2内の圧力を調整する圧力調整部11が設けられている。圧力調整部11は、例えば、鍋2の内部と連通するように内蓋4に設けられた連通穴(図示せず)を開閉することで、鍋2内の圧力を調整するように構成されている。より具体的には、圧力調整部11は、内蓋4の連通穴を閉塞することで、大気圧より大きな圧力(例えば1.2気圧)まで鍋2内の圧力を昇圧可能に構成されている。また、圧力調整部11は、内蓋4の連通穴を開放することで、大気圧近傍(例えば1.0気圧)まで鍋2内の圧力を降圧可能に構成されている。
【0028】
また、外蓋3には、炊飯コース、炊飯時間などの各種情報を表示するとともに、白米コースや玄米コース、白米(柔らかめ)コースなどの複数の炊飯コースの中から特定の炊飯コースを選択可能な表示操作部12が設けられている。表示操作部12は、炊飯コース、炊飯時間などの各種情報を表示する液晶ディスプレイ12Aと、炊飯コースの選択の他、炊飯の開始、取り消し、予約などの実行を指示する複数のボタン12Bとを備えている。ユーザは、液晶ディスプレイ12Aに表示された各種情報を参照しつつ、複数のボタン12Bにより特定の炊飯コースを選択して炊飯開始を指示することができる。
【0029】
また、炊飯器本体1の内部には、制御部13が搭載されている。制御部13は、米を炊飯するための炊飯シーケンスを複数記憶する記憶部を備えている。ここで、「炊飯シーケンス」とは、予熱、昇温、沸騰維持、蒸らしの主として4つの工程を順に行うにあたって、各工程において通電時間、加熱温度、加熱時間、加熱出力等が予め決められている炊飯の手順をいう。各炊飯シーケンスは、複数の炊飯コースのいずれかにそれぞれ対応している。制御部13は、表示操作部12にて選択された炊飯コース及び鍋温度センサ6の検知温度に基づいて、鍋加熱部5と圧力調整部11とを制御し、炊飯工程を実行する。
【0030】
次に、本実施形態に係る炊飯器において、おねばの吹きこぼれを抑える原理について説明する。図3は、鍋2内に水及び米を入れて沸騰させたとき及び鍋2内に水のみを入れて沸騰させたときに、当該鍋2内から発生した流体の静電容量の変化を示すグラフである。
【0031】
図3において、点線は、鍋2内に水のみを入れて沸騰させたときに、静電容量検知部10が検知した静電容量(すなわち、筒体9内を流れる流体の静電容量)を示している。また、図3において、太い実線は、鍋2内に水及び米を入れて沸騰させたときに、静電容量検知部10が検知した静電容量を示している。
【0032】
鍋2内に水のみを入れて沸騰させたとき、筒体9内を流れる流体には、主に蒸気が含まれ、おねばは含まれない。一方、鍋2内に水及び米を入れて沸騰させた場合、筒体9内を流れる流体には、蒸気及びおねばが含まれる。すなわち、図3において、太い実線と点線との静電容量(pF)の差は、筒体9内を流れる流体におねばが含まれるか否かに基づいて生じている。筒体9内を流れる流体におねばが含まれる場合は、当該流体におねばが含まれない場合に比べて、静電容量検知部10が検知する静電容量が大きくなる。本実施形態に係る炊飯器は、この静電容量の違いに基づき、筒体9内を流れる流体におねばが含まれるか否かを判定し、おねばの吹きこぼれを抑えるように構成されている。
【0033】
より具体的には、本実施形態において、制御部13は、静電容量検知部10が第1閾値以上の静電容量を予め決められた時間検知したとき、鍋加熱部5の加熱量を予め決められた加熱量より小さくするように構成されている。図4は、鍋2内に水及び米を入れて沸騰させたときに当該鍋2内から発生した流体の静電容量の変化と、鍋加熱部5の加熱量の制御の一例とを示すグラフである。図4においては、第1閾値を2000pFとし、予め決められた時間をT1(例えば、5秒)としている。
【0034】
まず、鍋加熱部5により水及び米を入れた鍋2が加熱されると、鍋2の温度上昇に従って、鍋2内から発生する流体には、蒸気が含まれるようになる。この蒸気により、静電容量検知部10が検知する静電容量は徐々に増加する。その後、鍋加熱部5により更に鍋2が加熱されると、鍋2内から発生する流体には、おねばが含まれるようになる。このおねばにより、静電容量検知部10が検知する静電容量は急激に上昇する。
【0035】
本実施形態において、制御部13は、静電容量検知部10が2000pF以上の静電容量を予め決められた時間T1検知したとき、鍋加熱部5の加熱量を予め決められた加熱量より小さくするように構成されている。ここで、『予め決められた加熱量』とは、例えば、表示操作部12にて選択された炊飯コースに応じた炊飯シーケンスで予め決められた加熱量である。
【0036】
本実施形態において、制御部13は、鍋加熱部5の加熱量を一定時間T2、予め決められた加熱量より小さくする。例えば、制御部は、鍋加熱部5の加熱量を一定時間T2、鍋加熱部5による加熱を停止する(加熱量をゼロにする)。これにより、筒体9内から鍋2内へおねばが戻り、おねばが吹きこぼれることを抑えることができる。また、このとき、静電容量検知部10が検知した静電容量が2000pF未満に低下する。
【0037】
その後、制御部13が鍋加熱部5の加熱量を再び大きくする(例えば、予め決められた加熱量にする)と、鍋2内に戻ったおねばが再び筒体9内に侵入する。このおねばにより、静電容量検知部10が検知する静電容量は急激に上昇する。制御部13は、静電容量検知部10が2000pF以上の静電容量を予め決められた時間T1検知したとき、鍋加熱部5の加熱量を予め決められた加熱量より小さくする。以下、同様にして、静電容量検知部10が検知する静電容量に応じて鍋加熱部5の加熱量を変える。これにより、おねばの吹きこぼれを抑えつつ、鍋2内の水と米とにできる限り多くの熱を加えて、ご飯の食味を向上させることができる。
【0038】
本実施形態に係る炊飯器によれば、制御部13は、静電容量検知部10が第1閾値以上の静電容量を予め決められた時間検知したとき、鍋加熱部5の加熱量を予め決められた加熱量より小さくするように構成されている。すなわち、本実施形態に係る炊飯器は、静電容量検知部10が検知した静電容量に基づいて、筒体9内におねばが侵入した否かを判断し、おねばの吹きこぼれを抑えるように構成されている。この構成によれば、おねばが付着する領域を筒体9の内面に制限することができる。これにより、ユーザは、例えば、外蓋3から内蓋4を取り外して筒体9の内面を清掃するだけで、おねばの吹きこぼれを抑えるための部品の清掃を完了することができる。また、従来の炊飯器のように、円筒状又は球状の磁石であるフロートが転がるスペースを確保する必要がないので、筒体9を小型化して、清掃が必要な領域を小さくすることができる。従って、本実施形態に係る炊飯器によれば、清掃性を向上させることができる。また、従来の蓋体に設けた蒸気筒よりも筒体9を小型化することができるので、蓋体の小型化を図ることができる。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、筒体9を外蓋3の内部に設けたが、本発明はこれに限定されない。筒体9は、鍋2内から発生したおねばを含む流体を取り込める位置に設けられればよい。例えば、筒体9は、内蓋4に取り付けられてもよい。また、筒体9は、別部品として設けられる必要はなく、例えば、外蓋3又は内蓋4に一体に設けられてもよい。筒体9は、内部に、鍋2内から発生したおねばを含む流体を取り込む流路を形成するものであればよい。
【0040】
また、前記では、静電容量検知部10が筒体9に取り付けられるものとしたが、本発明はこれに限定されない。静電容量検知部10は、筒体9の内部を流れる流体の静電容量を検知可能な位置に設けられればよい。
【0041】
また、前記では、制御部13は、静電容量検知部10が第1閾値以上の静電容量を予め決められた時間検知したとき、直ちに、鍋加熱部5の加熱量を予め決められた加熱量より小さくするように構成されるものとしたが、本発明はこれに限定されない。おねばは、上面が波打つように変化しながら、全体として筒体9の内部を徐々に上昇していくものである。このため、静電容量検知部10がおねばの頂部に対して静電容量が第1閾値以上になったことを検知したとしても、おねばが直ぐに吹きこぼれるわけではない。一方、鍋加熱部5の加熱量を小さくすると、その分、鍋2内の水と米とに加える熱が少なくなり、ご飯の食味の低下につながり得る。このため、例えば、静電容量検知部10が第1閾値以上の静電容量を予め決められた時間検知した回数を記憶する記憶部(図示せず)を設けてもよい。また、制御部13は、当該記憶部に記憶された回数が予め決められた回数以上になったとき、鍋加熱部5の加熱量を予め決められた加熱量よりも小さくするように構成されてもよい。この構成によれば、おねばの吹きこぼれを抑えるとともに、鍋2内の水と米とに加える熱の減少をできるだけ抑えて、ご飯の食味の低下を抑えることができる。
【0042】
静電容量検知部10は、図5に示すように、複数の静電容量センサ10a~10hを備えてもよい。図5は、静電容量検知部10の一例を示す平面図である。図5に示す静電容量検知部10は、短手方向が筒体9の延在方向(図1では上下方向)に沿うとともに、長手方向が筒体9の周方向(図1では横方向)に沿うように取り付けられる。各静電容量センサ10a~10hは、直接的又は間接的(例えば、筒体9の周壁を介して間接的)に接触する流体の静電容量を検知するように構成されている。静電容量検知部10が複数の静電容量センサ10a~10hを備えることで、より正確におねばの状態を検知することができる。
【0043】
また、静電容量検知部10は、例えば、静電容量センサ10a~10dのように、筒体9の周方向に配置された複数の静電容量センサを備えることが好ましい。前述したように、おねばは、上面が波打つように変化しながら、全体として筒体9の内部を徐々に上昇していくものである。このため、1つの静電容量センサがおねばの頂部に対して静電容量が第1閾値以上になったことを検知したとしても、おねばが直ぐに吹きこぼれるわけではない。複数の静電容量センサを筒体9の周方向に配置することで、より正確におねばの状態を検知することができる。
【0044】
また、静電容量検知部10は、例えば、静電容量センサ10aと静電容量センサ10eのように、筒体9の延在方向に配置された複数の静電容量センサを備えることが好ましい。例えば、筒体9の内部を流れる蒸気が外蓋3の上外郭部材3aに接触して冷却され、水滴となって筒体9の内面を上方から下方に流れることが起こり得る。例えば、おねばの吹きこぼれをより確実に抑えるために第1閾値を低く設定すると、水滴をおねばとして誤検知してしまう可能性がある。この場合、鍋加熱部5の加熱量を小さくするタイミングが早くなって、鍋2内の水と米とに加える熱が少なくなり、ご飯の食味の低下につながり得る。複数の静電容量センサを筒体9の延在方向に配置することで、水滴をおねばと誤検知することを抑え、より正確におねばの状態を検知することができる。
【0045】
また、静電容量検知部10は、複数の静電容量センサ10a~10hのうち第2閾値以上の静電容量を予め決められた時間検知した静電容量センサの位置及び個数の少なくとも一方に基づいて、第1閾値以上の静電容量を検知したか否かを判断してもよい。例えば、第2閾値以上の静電容量を5秒以上検知した静電容量センサが3つ以上になったとき、静電容量検知部10は、第1閾値以上の静電容量を検知したと判断してもよい。また、第2閾値以上の静電容量を5秒以上検知した静電容量センサが3つ以上になり且つそのうちの1つ以上が鍋2側にあるとき、静電容量検知部10は、第1閾値以上の静電容量を検知したと判断してもよい。また、第2閾値以上の静電容量を5秒以上検知した静電容量センサが3つ以上になり且つ初めに第2閾値以上の静電容量を5秒以上検知した静電容量センサが鍋2側にあるとき、静電容量検知部10は、第1閾値以上の静電容量を検知したと判断してもよい。これらの構成によれば、おねばの吹きこぼれを抑えるとともに、鍋2内の水と米とに加える熱の減少をより一層抑えて、ご飯の食味の低下を抑えることができる。なお、「第2閾値」は、「第1閾値」と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
また、前記では、制御部13は、静電容量検知部10が第1閾値以上の静電容量を予め決められた時間検知したとき、鍋加熱部5の加熱量を予め決められた加熱量より小さくするように構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、おねばが発生しているときにおいて、鍋2内の圧力が急激に変動すると、鍋2内で突沸現象などが発生して、おねばが大量に増加することが起こり得る。このため、特に、静電容量検知部10が第1閾値以上の静電容量を予め決められた時間検知した後は、鍋2内の圧力を急激に変動させないことが好ましい。具体的には、圧力調整部11を備える炊飯器である場合、制御部13は、静電容量検知部10が第1閾値以上の静電容量を予め決められた時間検知したとき、静電容量検知部10が第1閾値未満の静電容量を検知したときよりも、鍋2内の圧力の変化が緩やかになるように圧力調整部11を制御してもよい。また、制御部13は、静電容量検知部10が第1閾値以上の静電容量を予め決められた時間検知したとき、鍋2内の圧力を一定又は略一定になるように圧力調整部11を制御してもよい。このような構成によれば、おねばの吹きこぼれを一層抑えて、清掃性を一層向上させることができる。
【0047】
また、前記では、筒体9の形状は、円筒形であるとしたが、本発明はこれに限定されない。筒体9の形状は、例えば、多角形や楕円形であってもよい。この場合、筒体9の形状が円筒形であるよりも、静電容量検知部10を取り付ける面積を広くすることができる。また、筒体9を鍋2の上方中央部になるべく近づけることができる。
【0048】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0049】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る炊飯器は、清掃性を向上させることができるので、例えば、家庭用及び業務用の炊飯器に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 炊飯器本体
1A ヒンジ部
1a 鍋収納部
1b 上枠
1ba 筒状部
1bb フランジ部
1c コイルベース
2 鍋
2a フランジ部
3 外蓋
3A ヒンジ軸
3a 上外郭部材
3aa 連通穴
3b 下外郭部材
4 内蓋
5 鍋加熱部
5a 底内加熱コイル
5b 底外加熱コイル
6 鍋温度センサ(鍋温度検知部)
7 ねじりコイルばね
8 蓋開放装置
8A フック軸
9 筒体
10 静電容量検知部
10a~10h 静電容量センサ
11 圧力調整部
12 表示操作部
12A 液晶ディスプレイ
12B ボタン
13 制御部
81 開蓋ボタン
図1
図2
図3
図4
図5