(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】冊子の紙面めくり装置及び紙面スキャンシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20231208BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B25J15/06 A
(21)【出願番号】P 2021041377
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2020060922
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(73)【特許権者】
【識別番号】599136142
【氏名又は名称】三菱HCキャピタル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504275786
【氏名又は名称】株式会社松浦電弘社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛史
(72)【発明者】
【氏名】小畠 聖平
(72)【発明者】
【氏名】小野 育心
(72)【発明者】
【氏名】芝崎 理人
(72)【発明者】
【氏名】北村 威
(72)【発明者】
【氏名】片桐 康裕
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 敏之
(72)【発明者】
【氏名】北野 和男
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-254274(JP,A)
【文献】特開平04-319494(JP,A)
【文献】特開平05-189602(JP,A)
【文献】特開2018-052100(JP,A)
【文献】国際公開第2017/085932(WO,A1)
【文献】特開2011-201281(JP,A)
【文献】中国実用新案第204870149(CN,U)
【文献】特開2009-32186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1辺側の少なくとも一部が綴じられている冊子の各頁をなす紙面を1枚ずつめくる動作を行うもので、
前記冊子が載置される作業台と、
前記冊子の手前側となる下辺に沿う方向をX方向、このX方向に直行し、前記冊子の綴じられている側の辺に沿う方向をY方向とすると
何れも手先に前記紙面を吸着する吸着部を備え、前記作業台上で前記冊子に対向して、X方向に沿って配置された第1及び第2アームと、
基端側が前記冊子の手前側でX方向に沿って直線的に移動し、先端側がY方向に延びるバーを備える補助機構と、
前記第1及び第2アーム並びに補助機構を制御する制御部とを有し、
前記冊子が閉じられた状態で、綴じられている側の辺を第1辺とし、この第1辺に対向する辺を第2辺とすると、
前記制御部は、前記補助機構のバーを前記第2辺側の初期位置に移動させておき、
前記第2アームの手先により前記冊子の第1辺側を押さえさせる第1ステップと、
前記第1アームの吸着部により前記冊子の紙面の第2辺側を吸着させて、前記紙面を所定の高さまで上方に持ち上げさせると、当該第1アームの動作を所定時間停止させる待機処理を行う第2ステップと、
前記補助機構のバーを前記紙面の下方に移動させる第3ステップと、
前記補助機構のバーを、前記第1辺を超えるまで移動させて前記紙面をめくる第4ステップと、
前記第2アームの吸着部により、前記紙面のめくられた第2辺側を吸着させて、前記紙面を外方に引っ張る第5ステップと、
前記第1及び第2アームの手先を紙面が開かれた状態の冊子の外方に移動させ、前記補助機構のバーを前記初期位置に移動させる第6ステップとを実行する冊子の紙面めくり装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2ステップにおいて、前記第1アームの吸着部により前記冊子の紙面の第2辺側を吸着させて、前記紙面を所定の高さまで上方に持ち上げさせる際に、
前記吸着部により、最初に前記紙面の第2辺側の中央部を抑え、前記吸着部を一旦Y方向の端部に移動させた後、再び中央部に戻してから前記紙面を持ち上げさせる請求項1記載の冊子の紙面めくり装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第3ステップにおいて、前記補助機構のバーを前記紙面の下方に移動させる際に、前記第1アームにより前記紙面を所定の高さまで上方に持ち上げさせている状態で、前記補助機構を前記第1アームの吸着部と前記紙面の第1辺との間まで移動させると、一旦逆方向に戻させる請求項1又は2記載の冊子の紙面めくり装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第3ステップにおいて、前記補助機構のバーを前記紙面の下方に移動させると、前記第1アームの吸着部による前記紙面の吸着を停止させて、前記紙面の下方にある次の紙面の第2辺側を押えさせる請求項1から3の何れか一項に記載の冊子の紙面めくり装置。
【請求項5】
前記作業台上で前記第1及び第2アームに対向する側に配置され、
前記冊子の閉じられている側の紙面の一部を上方より押さえるように動作する第1押さえ機構と、
前記冊子の開かれた側の紙面の一部を上方より押さえるように動作する第2押さえ機構とを備え、
前記制御部は、前記第1ステップを開始する以前に、前記第1押さえ機構により対応する紙面の一部を押さえさせ、
前記第2ステップを開始する前に、前記第1押さえ機構による押さえた状態を開放させ、前記第1アームの待機処理が終了すると、前記紙面の下方にある次の紙面の一部を前記第1押さえ機構により押さえさせ、
前記第5ステップを実行した後に、前記第2押さえ機構により対応する紙面の一部を押さえさせる請求項1から4の何れか一項に記載の冊子の紙面めくり装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第4ステップにおいて、前記補助機構のバーを移動させた後に、めくられた紙面の第1辺側を、前記第1アームの手先によりX方向に押圧させる請求項1から5の何れか一項に記載の冊子の紙面めくり装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第4ステップにおいて、前記第1アームの手先により前記紙面の第1辺側をX方向に押圧させる際に、吸着部を前記紙面と前記バーとの間に入り込ませ、前記手先をY方向に移動させてから上方に移動させる請求項6記載の冊子の紙面めくり装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第5ステップにおいて、前記紙面を外方に引っ張る際に、前記第2アームの手先を上方に移動させてからX方向に移動させて外方に引っ張り、前記手先を下方に移動させて前記紙面を前記作業台に押さえるように動作させる請求項1から7の何れか一項に記載の冊子の紙面めくり装置。
【請求項9】
前記第1アームの吸着部に、ベルヌーイチャックを用いる請求項1から8の何れか一項に記載の冊子の紙面めくり装置。
【請求項10】
前記第1アームに、前記作業台上の冊子を撮像するための撮像部を配置し、
前記制御部は、前記第4ステップにおいて、前記撮像部により撮像された画像に基づいて紙面がめくられたか否かを判断し、前記紙面がめくられていなければエラー処理を行う請求項1から9の何れか一項に記載の冊子の紙面めくり装置。
【請求項11】
前記第2アームの吸着部の形状は、Y方向に沿って延びる棒状である請求項1から10の何れか一項に記載の冊子の紙面めくり装置。
【請求項12】
前記補助機構のバーはY方向が長辺となる矩形状であり、前記バーの面が前記作業台の面に対して紙面をめくる方向に傾斜している請求項1から11の何れか一項に記載の冊子の紙面めくり装置。
【請求項13】
前記第1及び第2アームに、垂直6軸型のロボットアームを用いる請求項1から12の何れか一項に記載の冊子の紙面めくり装置。
【請求項14】
請求項1から13の何れか一項に記載の冊子の紙面めくり装置と、
前記紙面めくり装置の作業台に、前記第1アーム側から冊子を供給する供給装置と、
前記作業台にある冊子の紙面をスキャンするスキャン装置と、
前記作業台から、前記冊子を前記第2アーム側から排出する排出装置と、
前記供給装置,前記紙面めくり装置,前記スキャン装置及び前記排出装置の動作を制御する制御装置とを備える紙面スキャンシステム。
【請求項15】
前記供給装置は、積載された状態の複数の冊子を収容する供給側収容部と、
この供給側収容部において最上部に位置する冊子を、前記紙面めくり装置の作業台に移送する供給移送機構とを備え、
前記作業台における前記冊子の第2辺側の2か所に、凸状のストッパを備え、
前記供給移送機構は、前記供給側収容部の最上部に位置する冊子を吸着して移送する吸着移送部と、
前記2つのストッパの位置に合わせてスリットが形成された板状の搬送部をX方向に移動させて、前記冊子を前記作業台に移送する供給側X方向移送部とを備え、
前記制御装置は、前記吸着移送部により、吸着した冊子を前記搬送部の上方に移動させてから吸着を停止させて前記冊子を前記搬送部に載置させ、
前記供給側X方向移送部により、前記搬送部を、前記ストッパよりも上方に位置させた状態で+X方向に移動させて前記冊子を前記作業台の所定位置に移送すると、前記スリットが前記ストッパに掛かるように前記搬送部を位置させてから、-X方向に移動させる請求項14記載の紙面スキャンシステム。
【請求項16】
前記排出装置は、スキャン処理が完了した冊子を収容する排出側収容部と、
前記作業台にある冊子を、前記排出側収容部に移送する排出移送機構とを備え、
前記排出側収容部における前記冊子の第1辺側の2か所に、凸状のストッパを備え、
前記排出移送機構は、前記2つのストッパの位置に合わせてスリットが形成された板状の搬送部をX方向に移動させて、前記冊子を前記排出側収容部に移送する排出側X方向移送部とを備え、
前記制御装置は、前記冊子のスキャン処理が開始される前に、前記排出側X方向移送部により、前記搬送部を予め前記作業台においてスキャン処理が終了した冊子が載置される位置に移動させておき、
前記冊子のスキャン処理が終了すると、前記搬送部を、前記ストッパよりも上方に位置させた状態で+X方向に移動させて、前記スリットが前記ストッパに掛かる位置に到達すると、前記搬送部を降下させて前記スリットが前記ストッパに係合する状態にしてから、前記搬送部を更に+X方向に移動させて前記冊子を前記排出側収容部に移動させる請求項14又は15記載の紙面スキャンシステム。
【請求項17】
前記紙面めくり装置の第2アームの吸着部の形状は棒状であり、
前記第2アームに配置される撮像装置を備え、
前記制御装置は、前記撮像装置により撮像された画像に基づいて、前記供給装置により前記作業台に供給された冊子の位置を、前記第2アームの吸着部によって対応する各辺がそれぞれY方向及びX方向に沿うように修正する修正処理を行わせる請求項14から16の何れか一項に記載の紙面スキャンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1辺側の少なくとも一部が綴じられている冊子の紙面を1枚ずつめくる動作を行う装置,及びその装置を備える紙面スキャンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば省スペース化やアクセス性を向上させる目的で、一部が綴じられている冊子に記載されている内容をデータ化して保存したいという要請がある。そのため、一般には、冊子の閉じられている部分をばらした個別のページをスキャナによりスキャンして、データ化することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような作業は煩雑で手間がかかる上に、綴じられた冊子の各ページがバラバラになってしまう。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、綴じられている冊子の紙面を1枚ずつめくる動作を自動的に行うことができる冊子の紙面めくり装置,及びその装置を備える紙面スキャンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の冊子の紙面めくり装置によれば、作業台上に載置される冊子の手前側において、X方向の一端側と他端側とに、何れも手先に吸着部を備えた第1及び第2アームを配置する。補助機構は、基端側が冊子の手前側でX方向に沿って直線的に移動し、先端側がY方向に延びるバーを備える。制御部は、
第1ステップ:第2アームの手先により冊子の第1辺側を押さえさせると、
第2ステップ:第1アームの吸着部により冊子の紙面の第2辺側を吸着させて、紙面を所定の高さまで上方に持ち上げさせると、当該アームの動作を所定時間停止させる待機処理を行う。この待機処理において、例えば持ち上げる前に吸着した紙面に接していた紙面が静電気等の影響により共に持ち上げられたとしても、紙面の自重によって落下するのを待つ。
【0007】
第3ステップ:補助機構のバーを移動させて持ち上げた紙面の下方に入り込ませる。
第4ステップ:補助機構のバーを、第1辺を超えるまで移動させることで、紙面をめくる、すなわち閉じている冊子を開く動作となる。
第5ステップ:第2アームの吸着部により、紙面のめくられた第2辺側を吸着させて、紙面を外方に引っ張る。これにより、めくられた紙面の撓みをなくす。
【0008】
第6ステップ:第1及び第2アームの手先を紙面が開かれた状態の冊子の外方に移動させ、補助機構のバーを初期位置に移動させる。これにより、紙面が開かれた状態の冊子上方の空間には障害となる物がなくなり、開かれた状態の冊子の画像をスキャナ等によりスキャンできる状態になる。
【0009】
すなわち、制御部が第1~第6ステップを循環的に繰り返し実行することで、閉じた状態の冊子の紙面が自動的に1枚ずつめくられて、順次両ページが開いた状態となる。したがって、各ページが開いたタイミングでスキャナ等により画像をスキャンしてデータ化して行けば、作業者が介在せずとも、閉じられた状態の冊子に記載されている内容の全てを電子データ化することが可能になる。
【0010】
請求項2記載の冊子の紙面めくり装置によれば、制御部は、第2ステップにおいて、第1アームの吸着部により冊子の紙面の第2辺側を吸着させて紙面を所定の高さまで上方に持ち上げさせる際に、吸着部により、最初に紙面の第2辺側の中央部を抑え、吸着部を一旦Y方向の端部に移動させた後、再び中央部に戻してから紙面を持ち上げさせる。このように制御すれば、紙面の状態を適切に整えて、歪ませることなく持ち上げることができる。
【0011】
請求項3記載の冊子の紙面めくり装置によれば、制御部は、第3ステップにおいて、補助機構のバーを紙面の下方に移動させる際に、第1アームにより紙面を所定の高さまで上方に持ち上げさせている状態で、補助機構を第1アームの吸着部と紙面の第1辺との間まで移動させると、一旦逆方向に戻させる。このように制御すれば、補助機構によってめくられつつある紙面にたわみ等が生じている場合に、補助機構が逆方向に戻ることでそのたわみ等を解消することができ、紙面をより確実にめくることができるようになる。
【0012】
請求項4記載の冊子の紙面めくり装置によれば、制御部は、第3ステップにおいて、補助機構のバーを紙面の下方に移動させると、第1アームの吸着部による紙面の吸着を停止させて紙面の下方にある次の紙面の第2辺側を押えさせる。このように制御すれば、次の紙面の浮き上がりを確実に防止できる。
【0013】
請求項5記載の冊子の紙面めくり装置によれば、第1,第2押さえ機構は、作業台上で冊子の一辺側に配置され、それぞれ冊子の閉じられている側,開かれた側の紙面の一部を上方より押さえるように動作する。そして、制御部は、第1ステップを開始する以前に、第1押さえ機構により対応する紙面の一部を押さえさせる。これにより、第1ステップにて第2アームの手先で冊子の第1辺側を押さえさせる際に紙面に撓みが生じることを防止し、第2ステップを開始する前にその押さえた状態を開放させて、第1アームによる紙面の持ち上げ動作に備える。
【0014】
また、第1アームの待機処理が終了して、上述したように、付随して持ち上げられた紙面が自重によって落下してから当該紙面の一部を第1押さえ機構により押さえさせる。更に、第5ステップを実行した後に、第2押さえ機構により対応する紙面の一部を押さえさせることで、第6ステップにて第1及び第2アームの手先を冊子の外方に移動させても、めくられた紙面及び閉じている側の紙面が、それぞれ外方に引っ張られて延ばされた状態を保持できる。
【0015】
請求項6記載の冊子の紙面めくり装置によれば、制御部は、第4ステップにて補助機構のバーを移動させた後に、めくられた紙面の第1辺側を、第1アームの手先によりX方向に押圧させる。これにより、補助機構のバーを第1辺を超えるまで移動させた結果、たとえ紙面をめくる動作が不完全であったとしても、第1アームの手先が紙面の第1辺側をX方向に押圧することで、紙面をめくる動作を補助できる。
【0016】
請求項7記載の冊子の紙面めくり装置によれば、制御部は、第4ステップにおいて、第1アームの手先により紙面の第1辺側をX方向に押圧させる際に、吸着部を紙面とバーとの間に入り込ませるようにする。そして、手先をY方向に移動させてから上方に移動させる。この動作により、紙面をめくる動作を完全な状態に至らせることができる。
【0017】
請求項8記載の冊子の紙面めくり装置によれば、制御部は、第5ステップにて紙面を外方に引っ張る際に、第2アームの手先を上方に移動させてからX方向に移動させて外方に引っ張り、更に手先を下方に移動させて紙面を作業台に押さえるように動作させる。これにより、めくられた紙面の撓みをより確実になくすことができる。
【0018】
請求項9記載の冊子の紙面めくり装置によれば、第1アームの吸着部にベルヌーイチャックを用いる。ベルヌーイチャックを用いれば、紙面の一部を過剰に吸引することがなく、紙面の吸着した部分やその周辺に皺が寄るといった傷みが生じることを回避でき、吸着した紙面の離脱もスムーズに行うことができる。
【0019】
請求項10記載の冊子の紙面めくり装置によれば、第1アームに作業台上の冊子を撮像するための撮像部を配置し、制御部は、第4ステップで撮像部により撮像された画像に基づき紙面がめくられたか否かを判断する。そして、紙面がめくられていなければエラー処理を行う。このように構成すれば、制御部は、第4ステップで紙面がめくられたか否か画像に基づいて確実に判断することができ、必要に応じて報知動作を行なったり、第4ステップを再試行するといったエラー処理を行うことが可能になる。
【0020】
請求項11記載の冊子の紙面めくり装置によれば、第2アームの吸着部の形状をY方向に沿って延びる棒状にする。これにより、第2アームが第1ステップで冊子の第1辺側をその辺に沿って押さえたり、第5ステップでめくられた紙面を外方に引っ張る動作等をより効率的に行うことができる。
【0021】
請求項12記載の冊子の紙面めくり装置によれば、補助機構のバーをY方向が長辺となる矩形状とし、そのバーの面を作業台の面に対して紙面をめくる方向に傾斜させる。このように矩形状のバーの面を傾斜させることで、第3ステップでバーを移動させる際に、持ち上げた紙面の下方に入り込ませることがより容易になる。
【0022】
請求項13記載の冊子の紙面めくり装置によれば、第1及び第2アームに垂直6軸型のロボットアームを用いる。すなわち、自由度が比較的高い垂直6軸型のロボットアームを用いることで、第1,第2アームとして必要な動作を容易に実行させることができる。
【0023】
請求項14記載の紙面スキャンシステムによれば、請求項1から13の何れか一項に記載の冊子の紙面めくり装置と、作業台に第1アーム側から冊子を供給する供給装置と、作業台にある冊子の紙面をスキャンするスキャン装置と、作業台から冊子を第2アーム側から排出する排出装置と、これら各装置の動作を制御する制御装置とを備える。このように構成すれば、供給装置より供給される冊子の紙面を、紙面めくり装置によってめくりながらスキャン装置により順次スキャンさせて、スキャン処理が完了した冊子を排出装置によって排出させる動作を自動的に行わせることができる。したがって、冊子の紙面をスキャンして電子データ化する作業を迅速に行うことが可能になる。
【0024】
請求項15記載の紙面スキャンシステムによれば、制御装置は、吸着移送部により、吸着した供給側収容部の最上部に位置する冊子を、搬送部の上方に移動させてから吸着を停止させて搬送部に載置させる。次に、供給側X方向移送部により、搬送部を、作業台にあるストッパよりも上方に位置させた状態で+X方向に移動させて、冊子を作業台の所定位置に移送すると、スリットがストッパに掛かるように搬送部を位置させてから、-X方向に移動させる。尚、「+X方向」は、第1アーム側から第2アーム側に向かう方向であり、「-X方向」はその逆方向である。このように制御すれば、搬送部によって冊子を作業台の所定位置に移送した後、搬送部を-X方向に退避させる際に冊子の第2辺側がストッパに当接するので、冊子が搬送部に残ることがなく、冊子を作業台の所定位置に確実に配置することができる。
【0025】
請求項16記載の紙面スキャンシステムによれば、制御装置は、冊子のスキャン処理が開始される前に、排出側X方向移送部により、搬送部を予め作業台においてスキャン処理が終了した冊子が載置される位置に移動させておく。そして、冊子のスキャン処理が終了すると、搬送部を、排出側収容部付近に設けられたストッパよりも上方に位置させた状態で+X方向に移動させて、スリットがストッパに掛かる位置に到達すると、搬送部を降下させてスリットが前記ストッパに係合する状態にしてから、搬送部を更に+X方向に移動させて冊子を排出側収容部に移動させる。このように制御すれば、搬送部によって冊子を排出側収容部側に移送させる際に冊子の第1辺側がストッパに当接するので、冊子が搬送部に残ることがなく、冊子を排出側収容部に確実に配置することができる。
【0026】
請求項17記載の紙面スキャンシステムによれば、制御装置は、第2アームに配置される撮像装置により撮像された画像に基づいて、供給装置により作業台に供給された冊子の位置を、第2アームの吸着部によって対応する各辺がそれぞれY方向及びX方向に沿うように修正する修正処理を行わせる。このように制御すれば、供給装置によって供給された冊子の位置にずれが生じたとしても、各辺がそれぞれY方向及びX方向に沿うように修正できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態であり、紙面めくり装置の外観を示す斜視図
【
図7】吸着パッド10が冊子Bを押えた状態を模式的に示す図
【
図10】動作3において上下に重なる紙面Pu,Pdの状態を模式的に示す図
【
図12】動作4(その1)を異なる角度から示す斜視図
【
図14】動作4(その2)を異なる角度から示す斜視図
【
図17】吸着パッドによる紙面Pが押えられた状態を模式的に示す図
【
図29】第2実施形態であり、動作2を示す斜視図(その1)
【
図37】第3実施形態であり、紙面スキャンシステムを示すと共に、動作E2を示す斜視図(その1)
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について
図1から
図28を参照して説明する。
図1から
図3は、本実施形態の紙面めくり装置の外観を示す斜視図,平面図及び側面図である。紙面めくり装置1は、矩形状の作業台2の奥行後方側に台座3L,3Rを設け、台座3L,3Rの上に、比較的小型に構成された2台の垂直6軸型のロボット4L,4Rを配置している。ロボット4L,4Rは、それぞれ第1,第2アームに相当する。ロボット4には、例えば(株)デンソーウェーブのCOBOTTA(登録商標)等を用いる。
【0029】
尚、以下では、
図1中で作業台2の左右方向をX方向とし、作業台2の奥行方向をY方向とする。また、左右は基本的に、ロボット4L,4Rが作業台2に対向した状態で示すが、図によっては、その図中における左右を示す場合もある。
【0030】
作業台2には、一辺が綴じられている冊子Bが、当初は完全に閉じられた状態で、作業台2の左半面側に載置される。紙面めくり装置1は、この状態から、ロボット4等を用いて冊子Bの各頁をなす紙面Pを1枚ずつ右側にめくり返すように動作する。
【0031】
作業台2と台座3との間には、補助治具5の駆動部6が配置されている。駆動部6はリニアアクチュエータであり、Y方向に延びるバー7の基端部が取りつけられた可動部8をX方向に直線的に移動させる。駆動部6の駆動源は例えばエアーである。バー7は矩形状であり、その面には、短辺の左側に対して右側が若干低くなるように傾斜が付与されている。補助治具5は補助機構に相当する。
【0032】
ロボット4Lの手先には、吸着部としての非接触吸着パッド9が取り付けられている。非接触吸着パッド9には、例えばベルヌーイチャック等を用いる。吸着パッド9は、外形が短い円筒状であり、図示しないコンプレッサより送出されているエアーを作業台2と対向する面側にあるノズルから噴き出すことでパッドの内部に旋回流を生成する。そして、吸着の対象である紙面Pとの隙間よりエアーを大気に放出することでパッド9と紙面Pとの間に負圧を発生させ、紙面Pを非接触状態で吸着する。一方、ロボット4Rの手先には、吸着部としての吸着パッド10が取り付けられている。吸着パッド10は、Y方向に延びるバー形状であり、作業台2と対向する面側にあるノズルよりコンプレッサでエアーを吸引することで紙面Pを接触状態で吸着する。これらのパッド9,10は何れも、エアーの流通を制御することで紙面Pの吸着,開放を行うもので、吸着部に相当する。
【0033】
また、ロボット4Lの手首部分には、撮像部に相当するカメラ11が取り付けられている。カメラ11は、作業台2に載置された冊子Bの画像を撮像し、その画像に基づいて後述するIPC15が、紙面Pをめくる動作が確実に実行されたか否かを判断するために使用される。
【0034】
作業台2の奥側には、紙面Pの記載内容を光学的にスキャンして読み取るスキャン装置12と、紙面Pの上端側を押さえるためのクランパ13L,13Rとが配置されている。スキャン装置12は、図示しないヘッドを回動させることで当該装置12の手前側から奥行方向に向かって、同じく図示しないライン型のCCDセンサによって読み取りを行う。クランパ13L,13Rは、スキャン装置12の両側に配置されており、例えばステッピングモータをアクチュエータとしてクランプ部材14を上下に回動させて、紙面Pの上端側を押さえたり開放したりするように動作する。クランパ13L,13Rは第1,第2押え機構に相当する。
【0035】
図4は、制御系の構成を示す機能ブロック図である。紙面めくり装置1の各構成は、産業用プログラマブルコントローラであるIPC15によって制御される。制御部に相当するIPC15は、IOポートを介して補助治具5,吸着パッド9及び10,クランパ13L及び13Rを制御する。スキャン装置12は、USB(Universal Serial Bus)インターフェイスを介してIPC15に接続されている。また、IPC15は、スイッチングハブ16を経由して、Ethernet(登録商標)によりロボット4L,4R及びカメラ11と接続されている。スイッチングハブ16は、カメラ11に対して電力を供給する機能も備えている。
【0036】
次に、本実施形態の作用について説明する。以下では、冊子Bの綴じられている辺側を「背側」と称し、その背側に対向してめくられる辺側を「開き側」と称する。背側は第1辺側に相当し、開き側は第2辺側に相当する。また、各部の符号については、動作のキーポイントとなる構成のみに付与し、パッド9,10とコンプレッサとを接続してエアーを流通させるホースについては図示を省略する。
【0037】
<初期状態;初期スキャン>
図5に示すように、初期状態では、補助治具5は作業台2の左端側に位置しており、ロボット4L,4Rの手先はそれぞれ作業台2の左端側,右端側に位置している。また、クランパ13L,13Rは、何れもクランプ部材14を上方に移動させている。そして、作業台2の上の左半面には、閉じた状態の冊子Bが載置される。この状態で、先ずスキャン装置12がスキャンを行い、冊子Bが載置されていれば読取りを開始する。冊子Bが載置されていない場合は作業対象が存在しないと判断し、IPC15及び図示しないユーザインターフェイスを介してエラー警告や作業終了報告を行う。
【0038】
<動作1;冊子Bの背側押さえ>
次に、
図6に示すように、ロボット4Rが手先の吸着パッド10を、冊子Bの背側に移動させて上方より押さえる(第1ステップ)。また、クランパ13Lのクランプ部材14Lを下方に移動させて、冊子Bの上端側を押さえる。
図7は、吸着パッド10が冊子Bを押さえた状態を模式的に示している。冊子Bの最上層にある紙面Pのずれや滑りを防止するため、冊子Bの同図中左端よりも、やや右方向となる位置で押さえるのが望ましい。
【0039】
<動作2;冊子Bの開き側を吸着>
次に、
図8に示すように、ロボット4Lが手先の吸着パッド9を、冊子Bの開き側に移動させて上方より軽く押さえ、吸着パッド9により最上層の紙面Pを非接触状態で吸着する。
【0040】
<動作3;最上層の紙面Pの持ち上げ>
次に、
図9に示すように、クランパ13Lのクランプ部材14Lを上方に移動させてから、ロボット4Lが最上層の紙面Pを上方に持ち上げ、その状態で一定時間待機する待機処理を行う(第2ステップ)。この時、
図10に示すように、紙面Pを上方に持ち上げてロボット4Lが動作を停止させた際になす角度θは、例えば30度から45度程度とする。吸着パッド9が最上層の紙面Puを持ち上げると、紙面Puに接している紙面Pdが吸着パッド9の吸引力や静電気力が僅かに作用することで、紙面Puにくっついた状態で共に持ち上げられることが想定される。
【0041】
紙面Pdは、その自重に重力が作用した力G1で鉛直方向に引っ張られている。吸着パッド9が最上層の紙面Puを吸引する力をF1,その角度θに応じた鉛直方向成分をF1-1とすると、(F1-1)<G1が成立するような角度θであれば良い。ここで行う待機処理は、紙面Pdが力G1に引かれて作業台2の方に落下するのを待つためである。待機処理を終了すると、クランパ13Lのクランプ部材14Lを下方に移動させて、冊子B,つまり紙面Pdの上端側を押さえる。
【0042】
<動作4;補助治具5のバー7の移動>
次に、
図11から
図14に示すように、補助治具5のバー7を、初期位置からX方向に移動させて、ロボット4Lが持ち上げている紙面Pの下方に位置させる。
【0043】
<動作5;吸着パッド9による紙面Puの開放→紙面Pdの開き側押さえ>
次に、
図15及び
図16に示すように、吸着パッド9による紙面Puの吸着を解除すると、ロボット4Lの手先を紙面Pdの開き側に移動させて上方より押さえる(第3ステップ)。この時、吸着パッド9による吸着は不要であり、
図17に示すように、冊子Bの同図中右端より若干はみ出した位置で押さえても問題はない。また、ロボット4Rの手先を上方に移動させて、吸着パッド10による紙面Puの背側の押圧を解除する。
【0044】
<動作6;ロボット4Rの右方への移動及びバー7による紙面Puのターンオーバー>
次に、
図18に示すように、吸着パッド10を右方向;+X方向に移動させる。尚、駆動部6についてはセンサを用いた制御は行っておらず、初期位置からONで右方向;+X方向に移動し、OFFで左方向;-X方向に移動するだけである。そのため、可動部8の移動経路の途中にはストッパ17が配置されており、可動部8がストッパ17に当接した時点で、概ねバー7が冊子Bの背側付近の位置で+X方向への移動が停止する。この時点で、バー7により紙面Puをめくり切る(第4ステップ)。
【0045】
尚、
図19に示すように、バー7を、冊子Bの背側を若干超す位の位置まで移動させれば、紙面Puを完全にめくり切ることができるが、作業時間を短縮するには、可動部8がストッパ17に当接した位置で駆動部6をOFFして初期位置まで戻すのが望ましい。
【0046】
<動作7;カメラ11による紙面Puのターンオーバー確認>
次に、
図20に示すように、ロボット4Lの手首を作業台2の中央部に近付けて、カメラ11より冊子Bの画像を撮像する。IPC15は、その画像を解析して紙面Puがターンオーバーされているか、つまり「めくり切れている」かを確認する。紙面Puがめくり切れていない場合は、例えばエラー処理として、次の動作8を行う。
【0047】
<動作8;エラー処理,ロボット4Lによるアシスト動作>
上記のエラー処理として、例えば
図21に模式的に示すように、ロボット4Lの手先をバー7の動きを後追いさせる様にして+X方向に移動させ、吸着パッド9を紙面Puとバー7との間に入り込ませる。そして、手先を+Y方向に移動させてから、+Z方向に移動させる。吸着パッド9このように動作させて、紙面Puをめくり切れるようにアシストさせる。尚、動作6におけるエラーの発生を回避する案として、バー7を、冊子Bの背側を若干超す位の位置まで移動させた時点で駆動部6をOFFすることなく、作業台2の右端側に行きつくまで移動させることも考えられる。この場合、動作7での確認作業を省略しても良い。
【0048】
<動作9;めくられた紙面Puの撓み解消>
動作6において紙面Puをめくり切ったとしても、冊子Bの背側の近傍では、紙面Puが膨れ上がったような状態で撓んでいることも想定される。次の動作10では、ロボット4Rの吸着パッド10によりめくられた紙面Puの右端側を吸着することを予定している。しかしながら、冊子Bの背側付近で紙面Puが大きく撓んでいると、ロボット4Rの手先が届かず、吸着パッド10による吸着ができなくなるおそれがある。そこで、
図22から
図24に示すように、ロボット4Lの手先を冊子Bの背側に移動させて、吸着パッド9により紙面Puの撓んでいる部分を+X方向に押し出すようにする。これにより、紙面Puの撓みを解消してより平坦な状態に近付ける。
【0049】
<動作10;めくられた紙面Puの均し動作>
次に、
図25から
図27に示すように、ロボット4Rの手先をめくられた紙面Puの右端側に移動させ、吸着パッド10により紙面Puを吸着すると、手先を若干上方に移動させてから+X方向に移動させて、紙面Puを同方向に引っ張って均す(第5ステップ)。それから、クランパ13Rのクランプ部材14Rを下方に移動させて、紙面Puの上端側を押さえる。
【0050】
<動作11;紙面Pu,Pdのスキャン>
そして、
図28に示すように、ロボット4L,4Rの手先を作業台2の外方に移動させると共にバー7を初期位置に戻し(第6ステップ)、紙面Pu,Pdが右左に開いた状態で、スキャン装置12によるスキャンを行ない、それぞれの紙面に記載されている内容を読み込んで電子データ化する。
【0051】
以上で一連の動作が終了し、動作1に戻って動作11までを繰り返し実行する。これにより、冊子Bの各ページが1枚ずつ順次めくられながら、スキャン装置12によるスキャンによるスキャンが行われる。
【0052】
<動作12;終了確認>
紙面めくり装置1が全ての紙面をめくると、作業台2の冊子Bは、その右半面で閉じた状態になる。この状態において、動作11でスキャン装置12がスキャンを行うと、作業台2の左半面に紙面が存在しないことが認識される。これにより、コントローラは次にめくる対象の紙面がないと判断し、紙面めくり装置1の動作を終了させる。
【0053】
以上のように本実施形態の紙面めくり装置1によれば、作業台2上に載置される冊子Bの手前側におけるX方向の一端側と他端側とに、それぞれ手先に吸着パッド9,10を備えたロボット4L,4Rを配置する。補助治具5は、基端側が冊子Bの手前側でX方向に沿って直線的に移動し、先端側がY方向に延びるバー7を備える。IPC15は、ロボット4R側の吸着パッド10により冊子Bの背側を押さえさせると、ロボット4L側の吸着パッド9により冊子Bの紙面Pの開き側を吸着させて、紙面Pを所定の高さまで上方に持ち上げさせ、ロボット4Lの動作を所定時間停止させる待機処理を行わせる。
【0054】
次に、補助治具5のバー7を移動させて紙面Puの下方に入り込ませ、吸着パッド9による吸着を停止させてから次の紙面Pdの開き側を吸着させる。それから、バー7を背側を超えるまで移動させて紙面Puをめくると、吸着パッド10により紙面Puのめくられた開き側を吸着させて紙面Puを外方に引っ張り紙面Puの撓みを均す。そして、ロボット4L,4Rの手先を紙面Pu,Pdが開かれた状態の冊子Bの外方に移動させると共にバー7を初期位置に移動させる。
【0055】
IPC15が以上の処理を循環的に繰り返し実行することで、閉じた状態の冊子Bの紙面Pが自動的に1枚ずつめくられて順次両ページが開いた状態となる。したがって、各ページが開いたタイミングでスキャン装置12により画像をスキャンしてデータ化して行けば、作業者が介在せずとも、閉じられた状態の冊子Bに記載されている内容の全てを電子データ化することが可能になる。
【0056】
また、クランパ13L,13Rを、作業台2上における冊子Bの上辺側に配置し、IPC5は、第1ステップを開始する以前に、クランパ13Lにより対応する紙面Pの上辺側を押えさせる。したがって、吸着パッド9により冊子Bの開き側を押さえさせる際に紙面Pに撓みが生じることを防止し、第2ステップを開始する前にその押さえた状態を開放させて、ロボット4Lによる紙面Pの持ち上げ動作に備える。
【0057】
また、ロボット4Lの待機処理が終了し、紙面Pu共に持ち上げられた紙面Pdが自重によって落下してから紙面Pdの上辺側をクランパ13Lに押えさせる。更に、第5ステップを実行した後に、クランパ13Rに対応する紙面Pの上辺側を押えさせることで、第6ステップにてロボット4L、4Rの手先を冊B子の外方に移動させても、めくられた側及び閉じている側の紙面Pが、それぞれ外方に引っ張られて延ばされた状態を保持できる。
【0058】
また、IPC15は、第4ステップにてバー7を移動させた後に、めくられた紙面Pの背側をロボット4Lの手先のパッド9によりX方向に押圧させる。その際に、吸着パッド9を紙面Puとバー7との間に入り込ませと、手先を+Y方向に移動させてから、+Z方向に移動させる。吸着パッド9をこのように動作させて、紙面Puをめくり切れるようにアシスト処理を行う。これにより、バー7を移動させた結果、紙面Pをめくる動作が不完全であったとしても、ロボット4Lの手先によりめくる動作を補助して完全な状態に至らせることができる。
【0059】
また、IPC15は、第5ステップにて紙面Pを外方に引っ張る際に、ロボット4Rの手先を上方に移動させてからX方向に移動させて外方に引っ張り、更にその手先を下方に移動させて紙面Pを作業台2に押さえるように動作させる。これにより、めくられた紙面Pの撓みをより確実になくすことができる。
【0060】
また、吸着パッド9にベルヌーイチャックを用いたので、紙面Pの一部を過剰に吸引することがなく、紙面Pの吸着した部分やその周辺に皺が寄るといった傷みが生じることを回避でき、吸着した紙面Pの離脱もスムーズに行うことができる。
【0061】
また、ロボット4Lに作業台2上の冊子Bを撮像するためのカメラ11を配置し、IPC15は、第4ステップでカメラ1により撮像された画像に基づき紙面Pがめくられたか否かを判断する。そして、紙面Pがめくられていなければエラー処理を行う。これにより、IPC15は、紙面Pがめくられたか否かを確実に判断することができ、必要に応じて報知動作を行なったり、第4ステップを再試行するといったエラー処理を行うことが可能になる。尚、ここでのエラー処理として上述したアシスト処理を行っても良い。
【0062】
また、吸着パッド10の形状をY方向に沿って延びる棒状にしたので、ロボット4Rが冊子Bの背側を押えたり、めくられた紙面Pを外方に引っ張る動作等をより効率的に行うことができる。
【0063】
更に、バー7をY方向が長辺となる矩形状とし、そのバー7の面を作業台2の面に対して紙面Pをめくる方向に傾斜させることで、バー7を移動させる際に紙面Pの下方に入り込ませることがより容易になる。加えて、第1及び第2アームに垂直6軸型のロボット4を用いることで、第1,第2アームとして必要な動作を容易に実行させることができる。
【0064】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。第1実施形態では<動作2>において、吸着パッド9により最上層の紙面Pを吸着する際に、
図8に示したように、吸着パッド9を紙面Pの開き側の中央部に位置させていた。
【0065】
これに対して、第2実施形態の<動作2>では、
図29から
図32に示すように、吸着パッド9により、最初に紙面Pの開き側の中央部を抑えると、吸着パッド9を一旦Y方向の手前側端部に移動させた後、再び中央部に戻してから紙面Pを吸着して持ち上げさせる。このように制御すれば、紙面Pの状態を適切に整えて、歪ませることなく持ち上げることができる。
【0066】
また、第1実施形態では
図11から
図14に示すように、<動作4>において、ロボット4Rの吸着パッド10により紙面Pの閉じ側を押さえた状態で、補助治具5のバー7をロボット4Lが持ち上げている紙面Pの下方に位置させると、続く<動作5>では、吸着パッド9による紙面Puの吸着を解除した後、吸着パッド9で紙面Pdを上方より押さえていた。
【0067】
これに対して、第2実施形態の<動作5>では、
図33及び
図34に示すように、吸着パッド10は右側に退避させてからバー7の移動を開始させる。また、吸着パッド9は紙面Pdを押さえることなく、紙面Puの吸着を継続させている。例えば冊子Bの紙質や動作時の湿度等の条件により、<動作4>において紙面Puとその下方の紙面Pdとが問題なく分離できるようであれば、このように制御しても良い。
【0068】
また、第1実施形態では<動作4~6>において、補助治具5の可動部8がストッパ17に当接するまでバー7を一気に+X方向に移動させて、ロボット4Lが持ち上げている紙面Puをターンオーバーさせていた。これに対して、第2実施形態の<動作5>では、
図34から
図36に示すように、バー7を吸着パッド9と紙面Puの第1辺との間まで移動させると、一旦逆方向,つまり-X方向に戻させる。それから、可動部8を再度+X方向に移動させてストッパ17に当接させる。
【0069】
このように制御すれば、バー7によってめくられつつある紙面Puにたわみ等が生じている場合に、バー7が一旦逆方向に戻ることでそのたわみ等を解消することができ、紙面Puをより確実にめくることができるようになる。
【0070】
(第3実施形態)
第3実施形態は、紙面めくり装置1及びスキャン装置12に、冊子Bの供給装置21及び排出装置22を加えた紙面スキャンシステム23を示す。
図37に示すように、供給装置21は、紙面めくり装置1のロボット4L側に配置され、排出装置22は、同ロボット4R側に配置される。
【0071】
供給装置21は、本体24の長手方向がY方向に沿った矩形の小机型であり、その上面は紙面めくり装置1の作業台2の平面に略面一となっている。本体24のロボット4Lの左側に位置する部分には、複数の冊子Bを積層した状態で本体24の内部に収容するストッカ25が設けられている。供給側収容部に相当するストッカ25の内部には、最上部に位置する冊子Bを上面付近まで押し上げるための押上げ機構26が配置されている。
【0072】
本体24には、冊子Bをストッカ25から+Y方向に移送するY方向移送部27が配置されている。吸着移送部に相当するY方向移送部27は、直線状の移送用アーム28と、移送用アーム28に沿ってアクチュエータによりY方向に移動する可動部29と、可動部29の下方側に位置する吸着パッド30とを備えている。
【0073】
本体24の図中前方には、冊子Bを紙面めくり装置1の作業台2に移送するX方向移送部31が配置されている。尚、作業台2のロボット4L側には、X方向移送部31の動作に関連するもので、凸状の2つのストッパ18がY方向に並ぶように設けられている。供給側のX方向移送部31は、直線状の移送用アーム32と、移送用アーム32に沿ってアクチュエータによりX方向に移動する可動部33と、基部が可動部33に固定された略L字状の支持アーム34と、支持アーム34の先端部に取り付けられた搬送部35とを備えている。
【0074】
搬送部35は、冊子Bと略同じ面積を有する板状であり、作業台2に設けられた2つのストッパ18の位置に合わせたスリット36がX方向に形成されている。また、搬送部35の左側の端部は、垂直に立ち上がるように折れ曲がっており、その立ち上がっている部分に支持アーム34の先端部が取り付けられている。Y方向移送部27及びX方向移送部31は、供給移送機構に相当する。
【0075】
排出装置22は、本体41の長手方向がX方向に沿った矩形の小机型であり、その上面は作業台2の平面に略面一となっている。本体41において作業台2右隣に位置する部分には、スキャン処理が完了した冊子Bを積層した状態で本体41内に収容するストッカ42が設けられている。排出側収容部に相当するストッカ42の内部には、冊子Bの位置を降下させて収容させるための図示しない降下機構が配置されている。
【0076】
本体41には、スキャン処理が完了した冊子Bを作業台25からストッカ42に移送するX方向移送部44が配置されている。排出移送機構に相当するX方向移送部44は、直線状の移送用アーム45と、移送用アーム45に沿ってアクチュエータによりX方向に移動する可動部46と、基部が可動部46に固定された略L字状の支持アーム47と、支持アーム47の先端部に取り付けられた搬送部48とを備えている。搬送部48の右側の端部は、搬送部35と同様に垂直に立ち上がるように折れ曲がっており、その立ち上がっている部分に支持アーム47の先端部が取り付けられている。
【0077】
ストッカ42の右辺側には、ストッパ18と同様に、X方向移送部44の動作に関連する凸状の2つのストッパ49が設けられている。搬送部48は、冊子Bと略同じ面積を有する概ね板状であり、2つのストッパ49の位置に合わせたスリット50がX方向に形成されている。
図38に示すように、供給装置21及び排出装置22の動作は、制御装置としてのIPC15によって制御される。以上により紙面スキャンシステム23が構成されている。また、紙面めくり装置1のバー19の形状は、バー7の下面側におけるY方向の2か所に、凸片部20を設けた形状である。
【0078】
図38に示すように、供給装置21及び排出装置22は、IPC15によって制御される。また、ロボット4Rの手先にも、カメラ11Rが配置されており、カメラ11Rもスイッチングハブ16を介してIPC15に接続されている。これに伴い、ロボット4L側のカメラはカメラ11Lとしている。
【0079】
次に、第3実施形態の作用について
図39から
図44を参照して説明する。尚、以下において供給装置21に関する動作番号には添え字「S」を、排出装置22に関する動作番号には添え字「E」を付して示す。また、装置21及び22の動作を制御する主体はIPC15であるが、説明を簡素化するため装置21及び22が主体であるように記載する。また、以下では主に装置21及び22の動作について説明するため、その都合上、紙面めくり装置1の動作の流れとしては繋がらない図面がある。
【0080】
<動作S1;冊子Bの供給(1)>
図39から
図40に示すように、供給装置21は、押上げ機構26によりストッカ25の上面付近に押し上げられた冊子BをY方向移送部27の吸着パッド30により吸着し、X方向移送部31の搬送部35の上方に移送してから、吸着を解除して冊子Bを搬送部35に載置する。
【0081】
<動作S2;冊子Bの供給(2)>
図37に示す状態から、
図41に示すように、搬送部35をX方向に移動させて、作業台2の左半面側に冊子Bを供給する。尚、X方向移送部31の可動部33は僅かに上下動可能となっており、作業台2に冊子Bを供給する際には、搬送部35を、冊子Bが作業台2のストッパ18に当接しない高さに位置させてX方向に移動させる。
【0082】
<動作S3;冊子Bの供給(3)>
冊子Bの開き側がストッパ18の位置を超えると、搬送部35を下方に移動させて、スリット36がストッパ18に係合する状態にする。それから、
図42に示すように、搬送部35を-X方向に移動させて、作業台2より退避させる。この時、仮に冊子Bが搬送部35に引きずられて-X方向に移動したとしても、開き側の辺がストッパ18に当接するので、そこで移動は阻止される。
【0083】
<動作0;冊子Bの位置修正>
紙面めくり装置1は、第1実施形態の<初期スキャン>を開始する前に、作業台2に供給された冊子Bの位置を、カメラ10Rにより撮像された画像に基づいて、ロボット4R手先の吸着パッド10を用いて修正する。
図43に示すように、冊子Bの閉じ側の辺に吸着パッド10を当ててY方向に沿うように修正した後、
図44に示すように、冊子Bの手前側の辺に吸着パッド10を当ててX方向に沿うように修正する。
【0084】
<動作E1;冊子Bの排出準備>
図39に示すように、排出装置22は、X方向移送部44の搬送部48を、予め作業台2の右半面側に移動させておく。この段階から、紙面めくり装置1は、<初期スキャン,動作1~12>を実行する。
【0085】
<動作E2;冊子Bの排出(1)>
動作12が完了した時点で、
図37に冊子Bの全体が搬送部48に載置された状態となる。すると、排出装置22は、
図41に示すように、X方向移送部44の搬送部48をX方向に移動させる。可動部46も可動部33と同様に僅かに上下動可能となっており、作業台から冊子Bを排出する際には、搬送部46がストッパ49に当接しない高さに位置させてX方向に移動させる。
【0086】
搬送部46の右側端部がストッパ49の位置を超えると、搬送部46を下方に移動させて、スリット50がストッパ49に係合する状態にする。それから、搬送部35をX方向に移動させる。すると、冊子Bの右側端部がストッパ49に当接して、冊子Bの移動はそこで阻止され、
図43に示すように、冊子Bは搬送部46より離脱してストッカ42に収容される。そして、紙面めくり装置1が動作0を行うと、排出装置22は動作E1を実行する。
【0087】
以上のように第3実施形態によれば、供給装置21は、積載された状態の複数の冊子Bを収容するストッカ25と、ストッカ25内で最上部に位置する冊子Bを、紙面めくり装置1の作業台2に移送する供給移送機構とを備え、作業台2における冊子Bの第2辺側にストッパ18を備える。供給移送機構は、ストッカ25より冊子Bを吸着して移送するX方向移送部27と、35搬送部をX方向に移動させて冊子Bを作業台2に移送するX方向移送部31とを備え、IPC15は、X方向移送部27により、吸着した冊子Bを搬送部35の上方に移動させてから吸着を停止させて冊子Bを搬送部35に載置させ、X方向移送部31により搬送部35を作業台2の左半分側に移送すると、スリット36がストッパ18に掛かる状態にして-X方向に移動させる。このように制御すれば、搬送部35を-X方向に退避させる際に冊子Bの第2辺側がストッパ18に当接するので、冊子Bが搬送部35に残ることがなく、冊子Bを作業台の所定位置に確実に配置できる。
【0088】
またIPC15は、冊子Bのスキャン処理が開始される前に、排出装置22のX方向移送部44により搬送部46を予め作業台2の右半分側に移動させておく。そして、冊子Bのスキャン処理が終了すると、搬送部46を+X方向に移動させて、スリット50がストッパ49に掛かる位置に到達すると、搬送部46のスリット50がストッパ49に係合する状態にしてから、搬送部46を更に+X方向に移動させて冊子Bをストッカ47に移動させる。このように制御すれば、冊子Bの第1辺側がストッパ49に当接するので、冊子Bが搬送部46に残ることがなく、冊子Bをストッカ47に確実に収容させることができる。
【0089】
さらに、IPC15は、ロボット4Rのアームに配置されるカメラ12により撮像された画像に基づいて、供給装置21により作業台2に供給された冊子Bの位置を、ロボット4Rの吸着部10によって対応する各辺がそれぞれY方向及びX方向に沿うように修正する修正処理を行わせる。したがって、供給装置21により供給された冊子Bの位置にずれが生じたとしても、各辺がそれぞれY方向及びX方向に沿うように修正できる。
【0090】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
2つのアームは、垂直6軸型のロボットに限ることなく、同様の作業が可能であれば各アームの具体構成は問わない。
バー7の平面を作業台2と平行にしても良い。また、バーの形状は矩形である必要はなく、例えば丸棒状や角棒状であっても良い。
非接触吸着パッド9は、ベルヌーイチャック以外の非接触吸着パッドでも良いし、接触型の吸着パッドでも良い。
【0091】
吸着パッド10の形状は棒状である必要はなく、例えば吸着パッド9と同様な円形でも良い。
カメラ11は必要に応じて設ければ良い。
ストッパ17に替えて、バー7をロボット4Rに当接させて移動位置を規制しても良い。
冊子Bは、背側が全辺に亘って綴じられている必要はなく、少なくとも辺の一部が綴じられていれば良い。
【0092】
ロボット4Rの手先に配置したカメラ10Rにより、例えば動作10;第5ステップにおいて吸着パッド10により紙面Puを吸着してから手先を+X方向に移動させる際に、カメラ10Rにより撮像した画像に基づき紙面Puの傾きを検出する。そして、その傾きを補正し、紙面Puが作業台2に対して平行になる状態で+X方向に移動させるようにしても良い。これにより、その後の動作11におけるスキャン装置12による紙面Pu,Pdのスキャンによる読取りをより鮮明に行うことができる。
バー7の下面側に、紙が-X方向に逃げることを防止する逃げ防止部材を、下方側に伸ばすように設けても良い。
【符号の説明】
【0093】
図面中、1は紙面めくり装置、2は作業台、4L,4Rはロボット、5は補助治具、7はバー、9は非接触吸着パッド、10は吸着パッド、11はカメラ、12はスキャン装置、13L,13Rはクランパ、15はIPC、17及び18はストッパ、21は供給装置、22は排出装置、23は紙面スキャンシステムを示す。