(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】製造工程管理システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20231208BHJP
G06Q 10/06 20230101ALI20231208BHJP
【FI】
G06Q50/04
G06Q10/06
(21)【出願番号】P 2022508028
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(86)【国際出願番号】 JP2020012560
(87)【国際公開番号】W WO2021186745
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-07-23
(73)【特許権者】
【識別番号】507374930
【氏名又は名称】株式会社シナプスイノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003786
【氏名又は名称】HIPF弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中里 真仁
(72)【発明者】
【氏名】藤本 繁夫
【審査官】今井 悠太
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-238614(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108903677(CN,A)
【文献】特開平10-246674(JP,A)
【文献】特開2008-226037(JP,A)
【文献】特開2007-058309(JP,A)
【文献】特開2013-191041(JP,A)
【文献】特開2001-056707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品の製造工程を管理するシステムであって、
所定の製造工程における,製造条件又は食品の加工状態を測定し、測定値を所定の時間間隔で送信するように構成されたセンサと、
前記センサによる測定値を受信するように構成されたサーバを含み、
前記サーバが、
前記測定値が第1の範囲内でないことを検出した場合には第1のアラートを送信し、
前記測定値が前記第1の範囲内である場合、前記測定値が前記第1の範囲内である旨の情報を前記所定の製造工程における食品の識別番号と関連付け、さらに前記第1の範囲より狭い第2の範囲内でないことを検出したときには前記測定値が前記第2の範囲内でない旨の情報を前記測定値に対応する時刻、製造工程名、食品の識別番号のうちの少なくとも1つと関連付けるとともに第2のアラートを送信
し、
前記測定値が前記第1の範囲より狭い第2の範囲内である場合、前記測定値が前記第2の範囲内である旨の情報を前記測定値に対応する時刻、製造工程名、食品の識別番号のうちの少なくとも1つと関連付けるように構成された、
製造工程管理システム。
【請求項2】
前記製造条件又は食品の加工状態が温度又は湿度を含む、
請求項1の製造工程管理システム。
【請求項3】
前記所定の時間間隔が、食品のロットが前記所定の製造工程に投入される間隔である、
請求項1の製造工程管理システム。
【請求項4】
前記所定の時間間隔が1秒乃至30分間隔である、
請求項1の製造工程管理システム。
【請求項5】
前記第1の範囲が食品の衛生管理のために設けられた範囲である、
請求項1の製造工程管理システム。
【請求項6】
前記衛生管理のために設けられた範囲がHACCPのために設けられた範囲である、
請求項5の製造工程管理システム。
【請求項7】
前記第2の範囲が食品の品質管理のために設けられた範囲である、
請求項1の製造工程管理システム。
【請求項8】
前記第2の範囲が外部環境の変化又は原材料の変更若しくは管理値の変更に応じて変更可能である、
請求項1の製造工程管理システム。
【請求項9】
前記第1のアラートが緊急度の高い対応を必要とすることを示し、
前記第2のアラートが緊急度の低い対応を必要とすることを示す、
請求項1の製造工程管理システム。
【請求項10】
さらに、音源又は表示灯を含み、
前記第1のアラートに応答して前記音源又は前記表示灯が作動する、
請求項9の製造工程管理システム。
【請求項11】
前記第2のアラートに応答して,前記サーバが前記製造工程を制御する命令を送信する、
請求項9の製造工程管理システム。
【請求項12】
さらに、前記サーバが、前記測定値を前記所定の製造工程における食品の識別番号と関連付け、それによってフォワードトレース又はバックワードトレースを可能にする、
請求項1の製造工程管理システム。
【請求項13】
前記識別番号がロット番号又はシリアル番号を含む、
請求項12の製造工程管理システム。
【請求項14】
前記第1のアラートが、測定値に対応する食品のロット番号又はシリアル番号と関連付けられる、
請求項13の製造工程管理システム。
【請求項15】
さらに、前記第2のアラートが、測定値に対応する食品のロット番号又はシリアル番号と関連付けられる、
請求項13の製造工程管理システム。
【請求項16】
プロセッサとメモリを有するサーバが食品の製造工程を管理する方法であって、
前記サーバが、
所定の製造工程における,製造条件又は食品の加工状態の測定値を受信することと、
前記測定値が第1の範囲内でないことを検出した場合には第1のアラートを送信することと、
前記測定値が前記第1の範囲内である場合、前記測定値が前記第1の範囲内である旨の情報を前記所定の製造工程における食品の識別番号と関連付け、さらに前記第1の範囲より狭い第2の範囲内でないことを検出したときには前記測定値が前記第2の範囲内でない旨の情報を前記測定値に対応する時刻、製造工程名、食品の識別番号のうちの少なくとも1つと関連付けるとともに第2のアラートを送信すること
と、
前記測定値が前記第1の範囲より狭い第2の範囲内である場合、前記測定値が前記第2の範囲内である旨の情報を前記測定値に対応する時刻、製造工程名、食品の識別番号のうちの少なくとも1つと関連付けることを含む、
製造工程管理方法。
【請求項17】
食品の製造工程を管理するシステムであって、
所定の製造工程における,製造条件又は食品の加工状態を測定し、測定値を所定の時間間隔で送信するように構成されたセンサと、
前記センサによる測定値を受信するように構成されたサーバを含み、
前記サーバが、
前記測定値が第1の範囲内である場合、前記測定値が前記第1の範囲内である旨の情報を前記所定の製造工程における食品の識別番号と関連付けて記憶し、
前記測定値が前記第1の範囲より狭い第2の範囲内である場合、前記測定値が前記第2の範囲内である旨の情報を前記測定値に対応する時刻、製造工程名、食品の識別番号のうちの少なくとも1つと関連付けて記憶するように構成された、
製造工程管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、食品の製造工程の管理に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の製造工程においては、食品の安全性を確保する管理手法としてHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)が用いられている。
【0003】
製造工程における工程毎の温度や湿度等の製造条件を監視し、異常値を検出した場合に通報するようなシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-237343号公報
【文献】特開平11-341943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製造条件の測定値を異常値の検出のみに利用するのではなく、品質管理や異常予測等にも利用することが望まれる。
【0006】
さらに、製造条件の測定値から対応する食品をトレース(フォワードトレース)したり、特定の食品から対応する製造条件をトレース(バックワードトレース)することが望まれる。
【0007】
さらに、製造条件の管理を、安全管理のための基準範囲と、品質管理のための基準範囲の2段階で行い、きめ細かな品質管理を行うことが望まれる。
【0008】
さらに、品質管理の基準範囲の設定を、外部環境の変化又は原材料の変更もしくは管理値の変更に応じて変更できることが望まれる。
【0009】
さらに、異常値の検出又は品質管理基準値からの逸脱をリアルタイムで検出し、緊急度に応じて対応できるようにすることが望まれる。また,異常値の検出に応じて,基準を満たさなかった食品を直ちに製造ラインから外してその後の工程に投入しないようにし,原価を改善することが望まれる。
【0010】
さらに、異常がなかったこと及び品質管理基準を満たしていたことをすべての食品について記録することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本技術は、例えば、食品の製造工程を管理するシステムであって、所定の製造工程における,製造条件又は食品の加工状態を測定し、測定値を所定の時間間隔で送信するように構成されたセンサと、センサによる測定値を受信するように構成されたサーバを含み、サーバが、測定値が第1の範囲内でないことを検出した場合には第1のアラートを送信し、測定値が第1の範囲内である場合、第1の範囲より狭い第2の範囲内でないことを検出したときには第2のアラートを送信するように構成された、製造工程管理システムを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本技術の実施例による製造工程管理システムの一工程を示す図である。
【
図2】本技術の実施例による製造工程管理システムのネットワークを示す図である。
【
図3】本技術の実施例による製造工程管理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に本技術の実施例による製造工程管理システムの一工程100を示す。
【0014】
作業実績管理システムの一工程100は、コンベヤ110と,加工機120と,トレイ130及び140を含む。
【0015】
コンベヤ110は,加工前の食品を搭載したトレイ130を矢印112方向に移動させ,加工機120内を通過させ,加工後の食品を搭載したトレイ140とする。コンベヤ110は,ベルトコンベヤであってもよく,ローラーコンベヤであってもよい。
【0016】
加工機120は,コンベヤ110によって投入された食品に所定の加工,例えば加熱や乾燥などを行う。加工機120は,投入された食品をコンベヤ110の外に一旦移動させて加工してからコンベヤ110に戻してもよく,投入された食品をコンベヤで移動させながら加工してもよい。加工機120は,食品を加熱するオーブンであってもよく,食品を乾燥させる乾燥機であってもよい。
【0017】
加工機120は,加工機120内部の加工条件を測定する複数のセンサ122及び124をさらに有してもよい。複数のセンサ122及び124は同一のパラメータ(例えば,温度)を異なる位置で測定するように設置されてもよく,異なるパラメータ(例えば,温度及び湿度)を測定するように設置されてもよい。複数のセンサ122及び124は一方が故障したときでも他方により測定を継続できるよう,バックアップとして用いられてもよい。複数のセンサ122及び124は,一定時間ごとに,又はトレイ130及び140が加工機120で加工されている際に,後述するサーバに測定値を送信するように構成されてもよい。
【0018】
トレイ130及び140は,食品をその上に乗せてコンベヤ110上を矢印112方向に移動する。各トレイ上に複数の食品をのせ,トレイごとに1つのロットとしてロット番号を付して管理してもよく,トレイに乗っている食品1個ごとにシリアル番号を付して管理してもよい。また,複数のトレイに乗っている食品をまとめて1つのロットとして管理してもよい。
【0019】
トレイ130及び140は,さらに食品の加工状態を測定するセンサ132及び142を有してもよい。センサ132及び142は食品そのものの又は食品近傍の温度又は湿度を測定するように設置されてもよい。センサ132及び142は,一定時間,例えば1秒乃至30分間隔で,又は製造工程に投入されるごとに,後述するサーバに測定値を送信するように構成されてもよい。
【0020】
図2に本技術の実施例による製造工程管理システム200を示す。
【0021】
製造工程管理システム200は,ネットワーク210,センサ222,224,232及び242,サーバ250、クライアント260,表示灯270を含む。
【0022】
ネットワーク210は,センサ222,224,232及び242,サーバ250、クライアント260,表示灯270等の複数の機器を通信可能に接続する。ネットワーク210は、インターネット、Local Area Network(LAN)、Wide Area Network(WAN)であってもよい。また、ネットワーク210は、有線若しくは無線又はそれらの組み合わせにより構成されてもよい。さらに,ネットワーク210は,加工機120を通信可能に接続してもよい。
【0023】
センサ222,224,232及び242は,
図1におけるセンサ122,124,132及び142にそれぞれ対応する。センサ222,224,232及び242は,温度,湿度その他のパラメータを測定し,一定時間ごとに,又は食品が加工機120で加工されている際に,測定値をサーバ250に送信する。
【0024】
サーバ250は、プロセッサ(図示せず)、プログラムを記憶したメモリ(図示せず)及び通信機能(図示せず)を有するコンピュータである。サーバ250は、クライアント260からの要求に応じてメモリに記憶されたプログラムを実行しその結果をクライアント260に返す。なお、本出願において「メモリ」とは、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置の他、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)等の補助記憶装置も含む。
【0025】
クライアント260は、ネットワーク210を介してサーバ250その他の機器と通信する機能を有するコンピュータ、タブレット端末又はスマートフォン等である。クライアント260は1つのみでもよく、複数あってもよい。
【0026】
表示灯270は、白熱灯,蛍光灯又はLED(Light Emitting Diode)等の表示部と,サーバ250その他の機器と通信し,サーバ250等からの命令に応じて表示部を点灯,消灯,点滅させる表示制御部を有する。本明細書において,表示灯270は,積層信号灯又は回転灯であってもよい。
【0027】
図3に本技術の実施例による製造工程管理方法のフローチャートを示す。
【0028】
製造工程管理方法300は、ステップ310で開始し、ステップ320で,センサによって測定され送信された所定の製造工程における,製造条件又は食品の加工状態の測定値をサーバ250が受信する。センサは,
図1におけるセンサ122及び124のような加工条件を測定するセンサでもよく,センサ132及び142のような食品の加工状態を測定するセンサでもよく,又はその両方でもよい。センサによる測定値は,一定の時間間隔でサーバ250に送信されてもよく,食品のロットが所定の製造工程に投入される間隔で送信されてもよい。サーバ250が受信した測定値は,対応する時刻や製造工程名,食品のロット番号又はシリアル番号等の識別番号と関連付けられてメモリに記憶されてもよい。さらに,メモリに記憶された情報を利用して,特定の工程及び時刻から対応する食品の識別番号を特定するようなフォワードトレースを行ってもよく,特定の食品の識別番号から対応する工程及び時刻を特定するバックワードトレースを行ってもよい。
【0029】
次に、ステップ330で、サーバ250が受信した測定値が第1の範囲内か否かを判定する。第1の範囲は,食品の衛生管理のために設けられた範囲,例えばHACCPのために設けられた範囲であってもよく,出荷可否の判定のために設けられた範囲でもよい。測定値の判定は,加工条件の測定値について行ってもよく,食品の加工状態の測定値について行ってもよい。また,センサが複数ある場合には,それらの平均値を測定値としてもよく,最大値又は最小値を測定値としてもよい。
【0030】
ステップ330で測定値が第1の範囲内でない場合,ステップ340に進み,サーバ250が第1のアラートをクライアント260及び/又は表示灯270に送信する。クライアント260には測定値が第1の範囲内でないことが表示され,測定値に対応する時刻や製造工程名,食品のロット番号又はシリアル番号等の識別番号が関連付けられて表示されてもよい。また表示された情報が履歴としてサーバ250又はクライアント260のメモリに記憶されてもよい。表示灯270は,第1のアラートを受信すると表示部が点灯,消灯,又は点滅し,緊急度の高い対応,例えば食品が衛生管理基準を満たしていらず出荷できないことや,次の工程に投入されるべきでないことを知らせるようにしてもよい。さらに,ブザー等の音源(図示せず)が接続され,第1のアラートを受信すると警告音を発して,緊急度の高い対応が必要なことを知らせるようにしてもよい。
【0031】
ステップ330で測定値が第1の範囲内である場合,ステップ350に進み,サーバ250が受信した測定値が第2の範囲内か否かを判定する。第2の範囲は,食品の品質管理のために設けられた範囲,例えば品質の維持向上のために内部管理値として設けられた範囲であってもよく,第1の範囲を逸脱する可能性の上昇を示唆するために設けられた範囲でもよい。測定値の判定は,加工条件の測定値について行ってもよく,食品の加工状態の測定値について行ってもよい。また,センサが複数ある場合には,それらの平均値を測定値としてもよく,最大値又は最小値を測定値としてもよい。さらに,第2の範囲は,季節や気温,水温,湿度,気圧等の外部環境の変化,食品の原材料や添加物等の変更,管理値の変更に応じて,変更可能にしてもよい。なお,ステップ330で測定値が第1の範囲内である場合,その旨の情報が,対応する時刻や製造工程名,食品のロット番号又はシリアル番号等の識別番号と関連付けられてサーバ250又はクライアント260のメモリに記憶されてもよい。
【0032】
ステップ350で測定値が第2の範囲内でない場合,ステップ360に進み,サーバ250が第2のアラートをクライアント260に送信する。クライアント260には測定値が第2の範囲内でないことが表示され,測定値に対応する時刻や製造工程名,食品のロット番号又はシリアル番号等の識別番号が関連付けられて表示されてもよい。また表示された情報が履歴としてサーバ250又はクライアント260のメモリに記憶されてもよい。第2のアラートによって,クライアント260には表示されるものの表示灯270やブザー等の音源(図示せず)は作動せず,緊急度の低い対応が必要なことを知らせるようにしてもよい。第2のアラートに応答して,サーバ250が製造工程,例えば加工機120に対して,測定値が第2の範囲内になるよう制御する命令を送信してもよい。
【0033】
ステップ350で測定値が第2の範囲内である場合,ステップ340で第1のアラートを送信した後,又はステップ360で第2のアラートを送信した後,ステップ370に進み,製造工程管理方法300が終了する。なお,ステップ350で測定値が第2の範囲内である場合,その旨の情報が,対応する時刻や製造工程名,食品のロット番号又はシリアル番号等の識別番号と関連付けられてサーバ250又はクライアント260のメモリに記憶されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本技術は、例えば、製造条件の測定値を異常値の検出のみに利用するのではなく、品質管理や異常予測等にも利用することを可能にする。
【符号の説明】
【0035】
100 作業実績管理システムの一工程
110 コンベヤ
120 加工機
130,140 トレイ
122,124,132,142 センサ
200 製造工程管理システム
210 ネットワーク
222,224,232,242 センサ
250 サーバ
260 クライアント
270 表示灯