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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】服及び空調衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/00 20060101AFI20231208BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20231208BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
A41D13/00 107
A41D13/002 105
A41D13/05 156
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019121083
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021006669
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】592171005
【氏名又は名称】株式会社セフト研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 弘司
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-039098(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0042942(US,A1)
【文献】特開2017-014644(JP,A)
【文献】特開2019-127656(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第2697412(FR,A1)
【文献】特開平11-315406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00
A41D 13/002
A41D 13/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着用者の胴部を覆う形状に形成された服であって、
フルハーネス型安全帯の命綱を貫通させる命綱貫通手段と、
前記フルハーネス型安全帯と前記服とを固定するための固定手段と、
を備え
前記固定手段は、前記服の服地に一端部が接合されたベルトと、前記ベルトが折り畳まれた状態で前記ベルトの2点を着脱自在に接続可能とする着脱手段と、を備え、
前記ベルトは、前記服の後身頃上部の左右の服地に、後身頃の左右方向中央部へ向かうにつれて上方に位置するように斜めに配置された状態で、下端部に位置する前記一端部が前記服地に接合され、上端部に位置する他端部は前記服地に接合されず、
前記着脱手段は、前記ベルトの前記服地に接合された面と反対側の面の前記一端部近傍に備えられた第一着脱手段と、前記ベルトの前記服地に接合された面と反対側の面の前記他端部近傍に備えられ、前記第一着脱手段と着脱自在とされた第二着脱手段と、を含むことを特徴とする服。
【請求項2】
前記命綱貫通手段は、前記服の後身頃上部に備えられ、
前記固定手段は、前記命綱貫通手段の右上方及び左上方に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の服。
【請求項3】
空気導入手段を取り付けるための取付孔と、
前記取付孔に取り付けられた前記空気導入手段によって導入された空気を排出する空気排出部と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の服。
【請求項4】
請求項に記載の服と、
前記服の内面側に空気を導入する空気導入手段と、
前記空気導入手段に電力を供給する電源手段と、
を備えることを特徴とする空調衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、服及び空調衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高所での作業時には、安全性を確保するために、フルハーネス型安全帯を装着することが増加している。このようなフルハーネス型安全帯は、通常、図5に示すように、着用者の背中の上部に対応する位置に、フックの付いた命綱(ランヤード)が備えられ、当該フックを固定物に取り付けて使用されるところ、このような命綱が障害となって、上衣をフルハーネス型安全帯の上に着用することは困難であった。
そこで、上衣をフルハーネス型安全帯の上に着用し易くするため、後身頃の上部に、フルハーネス型安全帯に備えられた命綱を貫通させるための命綱貫通手段を備えた上衣が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-14644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フルハーネス型安全帯の上に、特許文献1に記載のような上衣を着用する場合、まずフルハーネス型安全帯を装着した後に、その上に上衣を着用するという順で着用することが考えられるが、この場合、着用者が自らフルハーネス型安全帯の命綱を上衣の命綱貫通手段に通すことは困難である。
そこで、予めフルハーネス型安全帯と上衣とを重ね、フルハーネス型安全帯の命綱を上衣の命綱貫通手段に貫通させた上で、重ねられたフルハーネス型安全帯と上衣とを同時に着用することも考えられるが、重ねられたフルハーネス型安全帯と上衣とがずれ易く、このような着用方法を取ることも困難であった。
【0005】
本発明の課題は、フルハーネス型安全帯の上に着用し易い服及び空調衣服を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
少なくとも着用者の胴部を覆う形状に形成された服であって、
フルハーネス型安全帯の命綱を貫通させる命綱貫通手段と、
前記フルハーネス型安全帯と前記服とを固定するための固定手段と、
を備え
前記固定手段は、前記服の服地に一端部が接合されたベルトと、前記ベルトが折り畳まれた状態で前記ベルトの2点を着脱自在に接続可能とする着脱手段と、を備え、
前記ベルトは、前記服の後身頃上部の左右の服地に、後身頃の左右方向中央部へ向かうにつれて上方に位置するように斜めに配置された状態で、下端部に位置する前記一端部が前記服地に接合され、上端部に位置する他端部は前記服地に接合されず、
前記着脱手段は、前記ベルトの前記服地に接合された面と反対側の面の前記一端部近傍に備えられた第一着脱手段と、前記ベルトの前記服地に接合された面と反対側の面の前記他端部近傍に備えられ、前記第一着脱手段と着脱自在とされた第二着脱手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の服であって、
前記命綱貫通手段は、前記服の後身頃上部に備えられ、
前記固定手段は、前記命綱貫通手段の右上方及び左上方に備えられていることを特徴とする。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の服であって、
空気導入手段を取り付けるための取付孔と、
前記取付孔に取り付けられた前記空気導入手段によって導入された空気を排出する空気排出部と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項に記載の発明は、空調衣服であって、
請求項に記載の服と、
前記服の内面側に空気を導入する空気導入手段と、
前記空気導入手段に電力を供給する電源手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フルハーネス型安全帯の上に着用し易い服及び空調衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る空調衣服の第一開閉手段を開いた状態における正面図である。なお、命綱貫通手段の命綱挿通部が服本体の外面側に引き出され、かつ、固定手段の固定ベルトが折り畳まれた状態を図示している。
図2】実施形態に係る空調衣服の第一開閉手段を閉じた状態における背面図である。なお、命綱貫通手段の命綱挿通部が服本体の外面側に引き出された状態を図示している。
図3】固定手段の固定ベルトが伸ばされ、かつ、フルハーネス型安全帯が固定されていない状態の実施形態に係る空調衣服の固定手段周辺を示す図である。
図4】固定手段の固定ベルトが折り畳まれ、かつ、フルハーネス型安全帯が固定されている状態の実施形態に係る空調衣服の固定手段周辺を示す図である。
図5】フルハーネス型安全帯の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図5に基づいて説明する。なお、以下においては、本発明を適用するのに好適な例として、服が空調衣服である場合につき図示の上説明するが、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。
なお、以下においては、着用者が空調衣服100を着用した状態を基準として、着用者の前側を前、着用者の後側を後、着用者の上側を上、着用者の下側を下、着用者の右手側を右、着用者の左手側を左と定めて説明する。
【0015】
[第1 実施形態の構成]
実施形態に係る空調衣服100は、図1に示すように、服本体1と、服本体1内部に空気を導入するファン2と、ファン2に電力を供給する電源部3と、電源部3とファン2とを接続する接続ケーブル4と、を備え、ファン2によって服本体1内に取り込まれた空気を、着用者の身体又は下着の表面に沿って流通させた後に服本体1の襟部及び袖部に形成された空気排出部14から排出することで、身体から出た汗を蒸発させ、蒸発する際の気化熱により身体を冷却するものである。
【0016】
[1 服本体]
服本体1は、図1及び図2に示すように、通気性のない又はファン2による空気の導入によって膨らませることができる程度の通気性を有する服地によって、着用者の胴部及び腕部を覆う形状に形成されている。図1及び図2においては、服本体1をブルゾン型の上衣の形状に形成しているが、服本体1の形状はこれに限られず、例えば着用者の胴部のみを覆うベスト型に形成してもよい。
なお、服本体1の着用時において着用者に向く側を内面側、その反対側の外部を向く側を外面側とする。
【0017】
服本体1は、図1及び図2に示すように、第一開閉手段11と、空気漏れ防止手段12と、ファン取付孔13と、空気排出部14と、電源部保持手段15と、ケーブル保持手段16と、命綱貫通手段17と、固定手段18と、を備え、ファン取付孔13からファン2によって取り込まれた外気が、襟部及び袖部に形成された空気排出部14から排出されるように構成されている。
【0018】
[(1)第一開閉手段]
第一開閉手段11は、服本体1を前開きとし、空調衣服100を着用する際に、服本体1の前部を開閉するためのものであり、図1に示すように、服本体1の前身頃を左右に分割すると共に、その両側に例えば線ファスナー等を備えて、当該分割部分を着脱自在とすることにより形成されている。
【0019】
[(2)空気漏れ防止手段]
空気漏れ防止手段12は、図1及び図2に示すように、服本体1下部に備えられた、服本体1と着用者の身体との間の空間内の空気が服本体1の裾部から外部に漏れることを防止するための手段であり、例えば、服本体1の下部の端部付近に、ゴム紐等の伸縮性のある部材を、着用者の身体を周回するように備えることによって形成されている。空調衣服100の着用時においては、空気漏れ防止手段12によって、服本体1の裾部が絞り込まれて着用者の身体に密着し、服本体1下部から空気が外部に漏れることを防止することができる。
なお、服本体1が、裾部が絞り込まれた形状に形成されている場合や、服本体1の裾部をズボンに入れて使用する場合等、裾部からの空気の流出量が僅かである場合には、必ずしも空気漏れ防止手段12を備えずともよい。
【0020】
[(3)ファン取付孔]
ファン取付孔13は、図1及び図2に示すように、服本体1を形成する服地の着用者の腰の左右に対応する位置に形成された、空調衣服100の着用時において、服本体1と着用者の身体との間の空間と、服本体1の外部の空間と、を繋ぐこととなる円形の孔部である。
ファン取付孔13の直径は、後述のファン2の直径と略同一に形成され、ファン取付孔13を挿通するようにしてファン2を取り付けることで、ファン取付孔13を介して、外部の空気を服本体1の内面側に取り込むことができる。
ファン取付孔13の孔部の周囲は、例えばプラスチック等によって形成された扁平な環状の部材を取り付ける、服本体1の服地のファン取付孔13周囲の部分を折り返して縫合する等の方法で、補強されていることが好ましい。
【0021】
なお、ファン取付孔13が形成される位置は、上記の位置に限られず、服本体1の側面、前面等に形成することも可能である。また、ファン取付孔13が形成される個数は、2個に限られず、これより少数又は多数のファン取付孔13を形成し、これに対応した数のファン2を取り付けてもよい。
【0022】
[(4)空気排出部]
空気排出部14は、ファン2によってファン取付孔13から服本体1内面側に導入された空気を、着用者の身体又は下着に沿って流通させた後に排出するための開口部であり、図1及び図2に示すように、着用者の首と服本体1の襟部の端部との間の開口部と、着用者の腕と服本体1の袖部の端部との間の開口部と、に形成される。
【0023】
[(5)電源部保持手段]
電源部保持手段15は、図1に示すように、服本体1の内面側に形成されたポケットであり、電源部3が収納される。図1においては、電源部保持手段15が、服本体1の前身頃の左側の下方の位置に備えられた場合について図示したが、これに限られず、服本体1の内面側の任意の位置に備えることが可能である。
なお、電源部保持手段15としては、必ずしもポケットを用いる必要はなく、電源部3を服本体1に装着することが可能であれば、任意の構成を採用することができる。さらに、服本体1に電源部保持手段15を備えず、例えば着用者のズボンのベルト等に電源部3をクリップ等を用いて取り付けることにより、電源部3が服本体1に装着されないようにすることも可能である。
【0024】
[(6)ケーブル保持手段]
ケーブル保持手段16は、図1に示すように、接続ケーブル4を、服本体1の内面側に保持するための手段であり、例えば、一般的なベルト通しのように、上下方向に長い布を上下2か所において縫い付けることにより、接続ケーブル4を挿通可能な開口部を有するリング状に形成され、当該開口部に接続ケーブル4を挿通させることによって、これを保持することができるように構成されている。
【0025】
[(7)命綱貫通手段]
命綱貫通手段17は、着用者が服本体1の内側に着用したフルハーネス型安全帯Sの命綱(ランヤードS2)を、服本体1の内部から外部へと引き出すための貫通部である。
なお、本発明において、「命綱」には、具体的な形状、材質等を問わず、フルハーネス型安全帯Sの安全帯本体S1と接続され、これをフック等を用いて固定物に接続するための部分が広く含まれるものとする。
【0026】
命綱貫通手段17は、図2に示すように、服本体1の後身頃の左右方向中央上部に備えられ、服本体1の服地に形成された開閉自在な孔部である第二開閉手段171と、筒状に形成され、一方の端部が第二開閉手段171を囲むように服本体1の服地の内面側に接合された命綱挿通部172と、命綱挿通部172の服本体1の服地に接合されているのとは反対側の端部に形成された開口部調整機構173と、を備える。
【0027】
(第二開閉手段)
第二開閉手段171は、図2に示すように、服本体1の後身頃の上部の服地に形成された上下方向の切れ目を開閉自在とすることにより形成されている。第二開閉手段171を開閉自在とする手段としては、例えば、第一開閉手段11と同様に線ファスナーを用いることができる。
【0028】
(命綱挿通部)
命綱挿通部172は、図2に示すように、一方の端部が第二開閉手段171を囲むように服本体1の服地の内面側に接合された筒状に形成されている。また、他方の端部に開口部調整機構173が備えられている。
命綱挿通部172の材料としては、通気性のない又は通気性の小さい折り曲げ自在なシート状部材が用いられ、例えば、服本体1の服地と同じ材料を用いてもよいし、別の材料を用いてもよい。
【0029】
第二開閉手段171及び命綱挿通部172がこのような構成を有することで、命綱貫通手段17を使用しない場合には、命綱挿通部172を、第二開閉手段171を介して服本体1の内面側に押し込み、第二開閉手段171を閉じることによって、服本体1の内部に収納することができる。また、命綱貫通手段17を使用する際には、第二開閉手段171を開けて、命綱挿通部172を引き出せばよい。
【0030】
(開口部調整機構)
開口部調整機構173は、図2に示すように、命綱挿通部172の服本体1の服地に接続されているのとは反対側の端部に、2か所の引出口1732を有し、内部に紐を通すことができる空隙を有する略環状の紐通し部1731を形成し、紐通し部1731に、これを一周する長さよりも長い紐状部材1733を通し、紐状部材1733の引出口1732から外部に出ている2つの端部に、紐状部材1733の紐通し部1731を通る部分の長さが短くなった状態でこれを固定するコードストッパー1734を備えることによって、形成されている。
【0031】
これによって、紐状部材1733の両端部を引っ張った上で、コードストッパー1734を固定することで、命綱挿通部172の服本体1に接続されているのとは反対側の端部に形成される開口部を、ランヤードS2を通す際には広げ、これを通した後に狭めるというように調整することが可能となる。
【0032】
なお、命綱貫通手段17としては、フルハーネス型安全帯Sの命綱(ランヤードS2)を、服本体1の内面側から外面側へと貫通させることができるものであればよく、具体的な構成は上記のものに限られない。
【0033】
[(8)固定手段]
固定手段18は、空調衣服100の服本体1とフルハーネス型安全帯Sとを固定するための手段であり、図1図3及び図4に示すように、服本体1の後身頃上部の服地内面側の、命綱貫通手段17の右上方に備えられた右固定手段181と、命綱貫通手段17の左上方に備えられた左固定手段182と、を備える。
【0034】
なお、本発明において「命綱貫通手段17の右上方に備えられ」るとは、必ずしも右固定手段181の全体が命綱貫通手段17の上端部よりも上方かつ右端部よりも右方に位置していることを要せず、図4に示すようなフルハーネス型安全帯Sを固定した状態において、右固定手段181の上下方向の中央が命綱貫通手段17の上下方向の中央よりも上方に位置し、右固定手段181の左右方向の中央が命綱貫通手段17の左右方向の中央よりも右方に位置すれば含まれるものとする。
また、同様に「命綱貫通手段17の左上方に備えられ」るとは、必ずしも左固定手段182の全体が命綱貫通手段17の上端部よりも上方かつ左端部よりも左方に位置していることを要せず、図4に示すようなフルハーネス型安全帯Sを固定した状態において、左固定手段182の上下方向の中央が命綱貫通手段17の上下方向の中央よりも上方に位置し、左固定手段182の左右方向の中央が命綱貫通手段17の左右方向の中央よりも左方に位置すれば含まれるものとする。
【0035】
(右固定手段)
右固定手段181は、図3に示すように、一端部が服本体1の服地の内面側に固定された右固定ベルト1811と、右固定ベルト1811の服本体1の服地内面側に固定された側の端部近傍に備えられた右第一着脱手段1812と、右固定ベルト1811の他端部近傍に備えられ、右第一着脱手段1812と着脱自在に形成された右第二着脱手段1813と、を備える。
【0036】
右固定ベルト1811は、図3及び図4に示すように、左に向かうにつれて上方に位置するように斜めに取り付けられた帯状の部材である。右固定ベルト1811の材料は、後述のようにフルハーネス型安全帯Sの上半身用ベルトS12を固定した状態でフルハーネス型安全帯Sと空調衣服100とを着用する際に破断しない程度の強度を有すれば任意であり、また、その具体的形状も、後述のようにフルハーネス型安全帯Sの上半身用ベルトS12を挟み込むようにして右第一着脱手段1812と右第二着脱手段1813とを接続できる長さを有するものであればよく、必ずしも帯状には限定されない。
また、右固定ベルト1811は、右下に位置する、右第一着脱手段1812が備えられている部分の右第一着脱手段1812が備えられているのと反対側の面においてのみ、服本体1の服地内面側に、縫合、接着等任意の方法で接合されている。
【0037】
右第一着脱手段1812及び右第二着脱手段1813は、図3及び図4に示すように、右固定ベルト1811の両端部近傍を着脱自在に接続可能とするための手段であり、例えば面ファスナーが用いられる。
右第一着脱手段1812及び右第二着脱手段1813としては、右固定ベルト1811の両端部近傍を着脱自在に接続可能とすることができるものであれば面ファスナーに限定されないが、面ファスナーのように、これらを接続した際の位置が一律に定まらず、微調整可能であることが好ましい。面ファスナーの他には、例えば、複数のスナップボタンを用い、これらを付け替えることで、接続位置を調整可能とする等の手段が考えられる。
【0038】
(左固定手段)
左固定手段182は、図3に示すように、一端部が服本体1の服地の内面側に固定された左固定ベルト1821と、左固定ベルト1821の服本体1の服地内面側に固定された側の端部近傍に備えられた左第一着脱手段1822と、左固定ベルト1821の他端部近傍に備えられ、左第一着脱手段1822と着脱自在に形成された左第二着脱手段1823と、を備える。
【0039】
左固定ベルト1821は、図3及び図4に示すように、右に向かうにつれて上方に位置するように斜めに取り付けられた帯状の部材である。左固定ベルト1821の材料は、後述のようにフルハーネス型安全帯Sの上半身用ベルトS12を固定した状態でフルハーネス型安全帯Sと空調衣服100とを着用する際に破断しない程度の強度を有すれば任意であり、また、その具体的形状も、後述のようにフルハーネス型安全帯Sの上半身用ベルトS12を挟み込むようにして左第一着脱手段1822と左第二着脱手段1823とを接続できる長さを有するものであればよく、必ずしも帯状には限定されない。
また、左固定ベルト1821は、左下に位置する、左第一着脱手段1822が備えられている部分の左第一着脱手段1822が備えられているのと反対側の面においてのみ、服本体1の服地内面側に、縫合、接着等任意の方法で接合されている。
【0040】
左第一着脱手段1822及び左第二着脱手段1823は、図3及び図4に示すように、左固定ベルト1821の両端部近傍を着脱自在に接続可能とするための手段であり、例えば面ファスナーが用いられる。
左第一着脱手段1822及び左第二着脱手段1823としては、左固定ベルト1821の両端部近傍を着脱自在に接続可能とすることができるものであれば面ファスナーに限定されないが、面ファスナーのように、これらを接続した際の位置が一律に定まらず、微調整可能であることが好ましい。面ファスナーの他には、例えば、複数のスナップボタンを用い、これらを付け替えることで、接続位置を調整可能とする等の手段が考えられる。
【0041】
[2 ファン]
ファン2は、図1及び図2に示すように、ファン取付孔13を挿通するようにして服本体1に取り付けられ、ファン取付孔13を通して、服本体1と着用者の身体との間の空間に空気を導入するためのものである。ファン2には、電源部3より、接続ケーブル4を通じて必要な電力が供給される。
ファン2は、ファン取付孔13を挿通するようにして服本体1に取り付けられ、服本体1の外面側から内面側へと空気を導入できるものであればよく、その具体的な構成は任意である。
【0042】
[3 電源部]
電源部3は、ファン2に電力を供給するための部材であり、例えば、安全保護回路が付加されたリチウムイオン組電池が内蔵され、接続ケーブル4を通じてファン2と接続される。また、電源部3は、ファン2に供給する電力のオン/オフを切り替えるスイッチ(図示せず。)を備える。
電源部3は、ファン2に電力を供給することができるものであれば、その具体的な構成は任意である。
【0043】
[4 接続ケーブル]
接続ケーブル4は、電源部3とファン2とを接続するケーブルであり、接続ケーブル4を通じて、電源部3からファン2に対して、ファン2の稼働に必要な電力が供給される。
なお、接続ケーブル4は、電源部3からファン2に対して、ファン2の稼働に必要な電力を供給できるものであればよく、その具体的な構成は任意である。
【0044】
[第2 着用方法]
実施形態に係る空調衣服100を、フルハーネス型安全帯Sの上に着用する際の手順につき、以下説明する。
【0045】
[1 フルハーネス型安全帯の構造]
まず、着用手順の説明の前提として、フルハーネス型安全帯Sの一般的な構造につき図5に基づいて簡単に説明する。
フルハーネス型安全帯Sは図5に示すように安全帯本体S1と、ランヤードS2と、からなり、着用者Aの背中の上部に対応する位置おいて、両者が接続されている。
【0046】
安全帯本体S1は、着用者Aの背中の上部に対応する位置に形成され、所謂D環等を備え、ランヤードS2が接続されるランヤード接続部S11と、ランヤード接続部S11において2本のベルトが交差するように形成され、着用者Aの肩に掛かる上半身用ベルトS12と、着用者Aの大腿を回り込むように形成された下半身用ベルトS13と、を備える。
また、ランヤードS2は、安全帯本体S1と固定物とを結んで命綱として機能する部分であり、固定物に引っ掛けるためのフックS21と、フックS21から延びるロープS22と、ロープS22と安全帯本体S1のランヤード接続部S11の間に配置され、着用者Aの落下時の衝撃を吸収するショックアブソーバS23と、を備える。
【0047】
[2 着用手順]
(1) 空調衣服100を、服本体1の第一開閉手段11を開放状態とし、内面側が上を向くように広げる。なお、命綱貫通手段17は、命綱挿通部172が第二開閉手段171から服本体1の外面側に引き出された状態とする。
また、図3に示すように右固定手段181の右第一着脱手段1812と右第二着脱手段1813とを外して右固定ベルト1811が伸びた状態とし、また、左固定手段182の左第一着脱手段1822と左第二着脱手段1823とを外して左固定ベルト1821が伸びた状態とする。
(2) 空調衣服100の服本体1の命綱貫通手段17に、フルハーネス型安全帯SのランヤードS2を貫通させる。この際には、ランヤードS2が、ショックアブソーバS23まで服本体1の外面側に露出するようにする。
(3) 広げられた服本体1の上に、フルハーネス型安全帯Sを重ねる。この際には、伸ばされた状態の右固定ベルト1811及び左固定ベルト1821の上に、安全帯本体S1の上半身用ベルトS12のランヤード接続部S11上方の部分が重なるようにして、フルハーネス型安全帯Sを配置する。
(4) 右固定手段181の右固定ベルト1811を折り畳み、フルハーネス型安全帯の上半身用ベルトS12のランヤード接続部S11上方の部分の右のベルトを挟むようにして、右第一着脱手段1812と右第二着脱手段1813とを接続する。
また、左固定手段182の左固定ベルト1821を折り畳み、フルハーネス型安全帯の上半身用ベルトS12のランヤード接続部S11上方の部分の左のベルトを挟むようにして、左第一着脱手段1822と左第二着脱手段1823とを接続する。
これによって、図4に示すように空調衣服100とフルハーネス型安全帯Sとが固定される。
(5) (4)までで固定された空調衣服100とフルハーネス型安全帯Sとを、着用者Aがまとめて着用する。
【0048】
[第3 実施形態の効果]
本実施形態に係る空調衣服100によれば、服本体1が固定手段18を備えることによって、空調衣服100とフルハーネス型安全帯Sとを、着用者Aが着用する前に固定した上で、これをまとめて着ることができる。これによって、着用時に重ねられた空調衣服100とフルハーネス型安全帯Sとがずれ難くなることから、着用者Aがフルハーネス型安全帯Sの上に空調衣服100を着用することが容易となる。
【0049】
また、フルハーネス型安全帯Sの上半身用ベルトS12は、通常、ランヤード接続部S11において2本のベルトが交差するように形成されていることから、固定手段18の右固定手段181が服本体1の命綱貫通手段17の右上方に備えられ、左固定手段182が服本体1の命綱貫通手段17の左上方に備えられていることで、フルハーネス型安全帯SのランヤードS2を服本体1の後身頃上部に備えられた命綱貫通手段17に貫通させた状態において、上半身用ベルトS12のランヤード接続部S11上部の部分と、服本体1とを固定することができる。
これによって、服本体1とフルハーネス型安全帯Sの安全帯本体S1とを、それぞれの上部の2か所で固定できることから、さらにこれらがずれ難くなり、まとめて着用し易くなる。
【0050】
また、右固定ベルト1811が、左方向、すなわち服本体1の後身頃の中央部方向に向かうにつれて上方に位置するように斜めに取り付けられ、左固定ベルト1821が、右方向、すなわち服本体1の後身頃の中央部方向に向かうにつれて上方に位置するように斜めに取り付けられていることで、さらに安全帯本体S1の上半身用ベルトS12のランヤード接続部S11上部の部分と、服本体1とを固定し易くなる。
【0051】
また、右固定手段181が、一端部が服本体1の服地の内面側に固定された右固定ベルト1811と、右固定ベルト1811の両端部近傍に備えられ、着脱自在な右第一着脱手段1812及び右第二着脱手段1813と、を備え、また、左固定手段182が、一端部が服本体1の服地の内面側に固定された左固定ベルト1821と、左固定ベルト1821の両端部近傍に備えられ、着脱自在な左第一着脱手段1822及び左第二着脱手段1823と、を備えることで、右固定ベルト1811及び左固定ベルト1821を折り畳み、フルハーネス型安全帯Sの上半身用ベルトS12を挟むようにして固定することができる。
このような固定手段を用いることによって、安全帯本体S1の上半身用ベルトS12との固定位置が一点に限定されず、上半身用ベルトS12の任意の位置と固定可能となることから、多くのフルハーネス型安全帯Sに対応可能となる。
【0052】
このような効果は、右固定手段181の右第一着脱手段1812及び右第二着脱手段1813、並びに左固定手段182の左第一着脱手段1822及び左第二着脱手段1823が面ファスナー等であり、接続した際の位置が一律に定まらず、微調整可能に構成されていることによって、より高めることができる。
【0053】
また、右固定手段181の右固定ベルト1811及び左固定手段182の左固定ベルト1821が一端部近傍でのみ服本体1の服地に接続されていることで、図4に示すように右固定ベルト1811及び左固定ベルト1821で安全帯本体S1の上半身用ベルトS12を挟んだ状態においても、右固定ベルト1811及び左固定ベルト1821の上半身用ベルトS12を挟んでいる部分は服本体1の服地に固定されていないことから、上半身用ベルトS12と服本体1の服地との間に、間隙を生じさせることができる。
これによって、服本体1の後身頃上部における空気流通路が阻害され難くなることから、本発明に係る服を空調衣服に用いる場合において、固定手段18を設けたことによる空調衣服としての機能低下を抑えることができる。
【0054】
[第4 変形例]
固定手段18の形成位置は、上記のように服本体1の後身頃上部の命綱貫通手段17の右上方及び左上方であることが好ましいが、これに限定されず、他の部分にも固定手段を形成し、さらに多くの固定手段を備えるようにしてもよい。
例えば、命綱貫通手段17の右下方及び左下方にも同様の固定手段を設け、服本体1と安全帯本体S1の上半身用ベルトS12とを、ランヤード接続部S11を囲むように4か所で固定するようにして、さらに強固に空調衣服100とフルハーネス型安全帯Sとを固定可能としてもよい。
また、服本体1とフルハーネス型安全帯Sの安全帯本体S1とが、これらの上部において固定されないと着用の容易性を向上する効果が低下することから好ましくないものの、固定手段18を、上記の服本体1の後身頃上部の命綱貫通手段17の右上方及び左上方に備えず、他の箇所にのみ備えるようにすることも一応可能である。
【0055】
また、右固定手段181及び左固定手段182の具体的構成は、上記の構成が好ましいものの、必ずしもこれに限定されるものではなく、服本体1とフルハーネス型安全帯Sとがばらばらとならず、かつ、これらを重ねた状態でまとめて着用する際にこれらの位置関係が規制されてずれ難くなり、着用の容易性を向上できるものであれば、その他の構成を採用することも可能である。
【0056】
また、本実施形態は、服が、ファン2によって服本体1内面側に空気を取り込むことによって着用者の身体を冷却する空調衣服100である場合につき説明したが、空調衣服100以外の上衣についても、命綱貫通手段17と固定手段18とを備えることで、フルハーネス型安全帯Sの上に着用することを容易とする効果を得ることができる。
【0057】
なお、服が空調衣服100の場合、服本体1内に形成されるべき空気流通路が閉ざされてしまうことを防止するため、空調衣服100の上にフルハーネス型安全帯Sの安全帯本体S1を着用することはできず、空調衣服100を安全帯本体S1の上に着用することが必須となることから、本発明は、服が空調衣服100である場合において、特に必要性が高いものであると言える。
しかしながら、空調衣服以外の、単に防寒目的等のための上衣であっても、例えば外観の向上等を目的として、上衣をフルハーネス型安全帯の上に着用することが求められる場合も存在することから、本発明が有効性を有する服は、空調衣服100のみに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0058】
100 空調衣服
1 服本体(服)
13 ファン取付孔(取付孔)
14 空気排出部
17 命綱貫通手段
18 固定手段
181 右固定手段
1811 右固定ベルト(ベルト)
1812 右第一着脱手段(着脱手段)
1813 右第二着脱手段(着脱手段)
182 左固定手段
1821 左固定ベルト(ベルト)
1822 左第一着脱手段(着脱手段)
1823 左第二着脱手段(着脱手段)
2 ファン(空気導入手段)
3 電源部(電源手段)
4 接続ケーブル(電源手段)
S フルハーネス型安全帯
S1 安全帯本体
S2 ランヤード(命綱)
A 着用者
図1
図2
図3
図4
図5