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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】発泡性成形浴用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/36 20060101AFI20231208BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20231208BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20231208BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20231208BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20231208BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/19
A61K8/86
A61K8/55
A61K8/26
A61Q19/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019135991
(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公開番号】P2021017434
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】595017931
【氏名又は名称】株式会社クロイスターズ
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】大島 龍雄
(72)【発明者】
【氏名】高尾 大輔
(72)【発明者】
【氏名】花岡 秀典
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-065759(JP,A)
【文献】特開2018-193351(JP,A)
【文献】特開2012-158588(JP,A)
【文献】特開2003-192570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)並びに(B):
(A)有機酸(a1)に、水溶性バインダーとして非イオン界面活性剤(a2)を担持させ、特定の水溶性表面処理成分として無水中性ピロリン酸のアルカリ金属塩またはそのアルカリ土類金属塩(a3)、及びケイ酸アルミニウム(a4)を固着させた表面処理有機酸紛体であり、
(a2)水溶性バインダーの配合量は、表面処理有機酸紛体全量中1~10質量%であり、
(a4)ケイ酸アルミニウムの配合量は、表面処理有機酸紛体全量中0.3~3質量%である
表面処理有機酸紛体、
並びに
(B)炭酸塩
を含有する複合成形体であって、長径が1~10mm、厚みが0.5~5mmであることを特徴とする発泡性成形浴用剤。
【請求項2】
請求項に記載の浴用剤において、成分(a2)である水溶性バインダーとしての非イオン界面活性剤はポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸アルカノールアミドから選択される一種又は二種以上であることを特徴とする発泡性成形浴用剤。
【請求項3】
請求項1~のいずれかに記載の浴用剤において、成分(a3)の無水中性ピロリン酸のアルカリ金属塩またはそのアルカリ土類金属塩が、無水中性ピロリン酸ナトリウム、無水中性ピロリン酸カリウム、無水酸性ピロリン酸ナトリウム、無水酸性ピロリン酸カリウムから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする発泡性成形浴用剤。
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載の浴用剤において、無水中性ピロリン酸塩の配合量は表面処理有機酸紛体全量中30~70質量%であることを特徴とする発泡性成形浴用剤。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の浴用剤において、さらに無水酸性ピロリン酸ナトリウム、無水酸性ピロリン酸カリウムから選ばれる1種又は2種を含むことを特徴とする発泡性成形浴用剤。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の浴用剤において、成分(a4)のケイ酸アルミニウムは合成ケイ酸アルミニウムであることを特徴とする発泡性成形浴用剤。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の浴用剤において、成分(a1)の中の有機酸が、コハク酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする発泡性成形浴用剤。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載の浴用剤において、有機酸の配合量が表面処理有機酸組成物全量中20~69.7質量%であることを特徴とする発泡性成形浴用剤。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載の浴用剤において、成分(B)の炭酸塩が炭酸ナトリウムおよび/又は炭酸水素ナトリウムであることを特徴とする発泡性成形浴用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡性成形浴用剤、特にその保存安定性に優れ、且つ、泡質、泡持ちが良好な発泡性成形浴用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
浴用剤は一般に、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機塩混合物に、香料、色素、植物エキス、有機酸等を配合したもので、浴湯に香りや色調を与えたり、皮膚に適度な刺激を与えることにより、血液の循環を活発にし、疲労回復、新陳代謝を増進させるものである。
【0003】
これらの浴用剤の中で、発泡性浴用剤は、炭酸塩と有機酸を配合し、浴湯に溶解することにより発生する炭酸ガスにより温浴効果を高めるとして、各種の製品が上市されている。 そのうち、錠剤やブリケット等の圧縮成形型浴用剤は浴湯に投入すると炭酸ガスを発泡しながら溶解し、炭酸ガスが十分に溶解することから、広く使用されている。
【0004】
しかしながら、これらの錠剤やブリケット等の圧縮成形型浴用剤は炭酸塩と有機酸との接触性が高まるので、密封した包装中に内蔵した状態で保存しても、炭酸塩が保存時に雰囲気中の湿気を吸収し反応が起こり、炭酸ガスが発生し、密封した包装が膨張あるいは破裂するとともに、使用時、浴湯中での発泡性能が低下し商品価値が著しく損なわれてしまうという問題があった。
【0005】
この問題を解決するために、本発明者らは、有機酸を中性ピロリン酸塩により被覆処理した表面処理有機酸粉体を炭酸塩と共に圧縮成型して得た発泡性成形浴用剤を提案しており(特許文献1)、長期保存しても炭酸塩の分解、及び劣化を起こすことがなく、安定である。
しかしながら、特許文献1の発泡性成形浴用剤では、表面処理有機酸粉体と炭酸塩を粉体混合物(特許文献2)として風呂に添加した時の、微細でクリーミーな泡の形成、及び長時間の維持を十分には再現できず、泡径が大きくなりやすく、しかも泡の消失も比較的早くなってしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-65759
【文献】特開2016-222624
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来技術に鑑み行われたものであり、その解決すべき課題は、圧縮成形型浴用剤であるにもかかわらず、微細でクリーミーな泡の形成及び長時間にわたる維持が可能であり、しかも圧縮成形において成形性が良好な発泡性成形浴用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、表面処理有機酸紛体と炭酸塩を含有し圧縮成形する際に、特定の粒径範囲に小径化することにより、保存安定性を維持しつつ、微細でクリーミーな泡の形成及びその維持を図れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明にかかる発泡性成形浴用剤は、
次の成分(A)並びに(B):
(A)有機酸(a1)に、水溶性バインダーとして非イオン界面活性剤(a2)を担持させ、特定の水溶性表面処理成分として無水中性ピロリン酸のアルカリ金属塩またはそのアルカリ土類金属塩(a3)を固着させ表面処理有機酸紛体、
並びに
(B)炭酸塩
を含有する複合成形体であって、長径が1~10mm、厚みが0.5~5mmであることを特徴とする。
また、前記表面処理有機酸粉体表面には、さらに(a4)ケイ酸アルミニウムが固着されていることが好適である。
前記発泡性成形浴用剤において、(a4)ケイ酸アルミニウムの配合量は、表面処理有機酸紛体全量中0.3~3質量%であることが好適である。
【0010】
前記発泡性成形浴用剤において、成分(a2)である水溶性バインダーとしての非イオン界面活性剤はポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸アルカノールアミドから選択される一種又は二種以上であることを特徴とする。
【0011】
前記発泡性成形浴用剤において、水溶性バインダーの配合量が、表面処理有機酸紛体全量中1~10質量%であることが好適である。
前記発泡性成形浴用剤において、成分(a3)の無水中性ピロリン酸のアルカリ金属塩またはそのアルカリ土類金属塩が、無水中性ピロリン酸ナトリウム、無水中性ピロリン酸カリウム、無水酸性ピロリン酸ナトリウム、無水酸性ピロリン酸カリウムから選ばれる1種又は2種以上であることが好適である。
前記発泡性成形浴用剤において、無水中性ピロリン酸塩の配合量は表面処理有機酸紛体全量中30~70質量%であることが好適である。
前記発泡性成形浴用剤において、さらに無水酸性ピロリン酸ナトリウム、無水酸性ピロリン酸カリウムから選ばれる1種又は2種を含むことが好適である。
前記発泡性成形浴用剤において、成分(a4)のケイ酸アルミニウムは合成ケイ酸アルミニウムであることを特徴とする。
前記発泡性成形浴用剤において、成分(a1)の中の有機酸が、コハク酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸から選ばれる1種又は2種以上であることが好適である。
前記発泡性成形浴用剤において、有機酸の配合量が表面処理有機酸組成物全量中20~69.7質量%であることが好適である。
前記発泡性成形浴用剤において、成分(B)の炭酸塩が炭酸ナトリウムおよび/又は炭酸水素ナトリウムであることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる発泡性成形浴用剤は、有機酸が表面処理されていることにより、成形により有機酸紛体と炭酸塩とが物理的に極めて近接した状況にあるにもかかわらず、長期保存しても炭酸塩の分解および劣化を起こすことなく極めて安定である。且つ、発泡性成形浴用剤を特定形状に調整することにより、きめ細やかな泡質とその長時間にわたる維持を行うことができる。また、表面処理有機酸粉体の表面にケイ酸アルミニウムを固着させることで、圧縮成型時の成形性が良好で、圧縮成型時のスティッキングやバインディングを防止でき、十分な硬度を備え、使用時に高い発泡力を発揮し、温浴効果を助長することのできるものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の発泡性成形浴用剤に含まれる成分(A)は、有機酸に水溶性バインダーを担持させ、特定の水溶性表面処理成分を固着させ、更に特定のケイ酸アルミニウムを固着させた表面処理有機酸紛体である。
【0014】
(a1)有機酸
本発明に用いる有機酸は、コハク酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸など浴用剤で公知で用いられるものが挙げられるが、より好ましくはコハク酸、クエン酸である。また、これらの有機酸は1種又は2種以上の有機酸を含むことができる。
【0015】
これらの有機酸の配合量は、表面処理有機酸紛体中に、20質量%以上が好ましく、30~60質量%であると、炭酸ガスの発泡性および持続性の点でより好ましい。20質量%未満であると、浴用剤製剤に表面処理有機酸紛体を多く配合する必要があり経済性に劣る場合があるだけでなく、有機酸に対して水溶性表面処理成分が過剰となる点で好ましくない。また、60質量%を超えると、水溶性表面処理成分が少なく、表面処理されていない有機酸表面が露出するために、浴用剤における製剤保管中の発泡を抑制する経時安定性という本発明で得られる特徴を損ねることがある点で好ましくない。
【0016】
有機酸の粒径は、150~1000μmであると、炭酸ガスの発泡性と持続性および経時安定性の点で好ましい。150μm未満、または1000μmを超える粒径の粒子が多く含まれると、浴用剤として炭酸ガス発泡および製剤保管時の発泡反応抑制という機能を損ねる場合がある。
【0017】
有機酸としては、市販品では、日本触媒製、川崎化成工業製のコハク酸、フマル酸、扶桑化学工業製のクエン酸、リンゴ酸等が挙げられる。
【0018】
(a2)水溶性バインダー
本発明で用いる水溶性バインダーは、(a1)成分である有機酸に、(a3)成分を固着、更に(a4)成分を固着させるとともに起泡性分として作用させる目的の成分である。また、有機酸が水溶性バインダーによって被覆されることで、有機酸と炭酸塩が接触して、包装内での保存中に反応することが抑制され、炭酸ガスの発生により包装容器が膨張することが防止できる。また、お湯の肌触りを滑らかにすることができる。
【0019】
水溶性バインダーとしては、被覆処理温度で液状のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸アルカノールアミド等の非イオン界面活性剤が挙げられる。
発泡性および持続性、お湯の肌触りを滑らかにする観点からポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。
また、これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
上記非イオン界面活性剤において、オキシエチレンの付加モル数は4~100のものが、特に4~80のものが好ましい。また、アルキル基としては炭素数6~30の直鎖または分岐鎖のアルキル基が、特に炭素数6~24の直鎖または分岐鎖のアルキル基が好ましい。更に、脂肪酸残基としては炭素数6~30の直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和の脂肪酸残基が好ましい。特に炭素数6~24のものが好ましい。また、アルカノール基としては、モノーまたはジーC1--4アルカノール基が好ましい。
【0021】
水溶性バインダーの配合量は、表面処理有機酸組成物中に、1.0質量%以上が好ましく、1.5~10質量%であると、(a3)成分および(a4)成分の良好な固着および浴湯面のきめ細かな泡の発生、その持続性の点でさらに好ましい。1.0質量%未満であると、後述の水溶性表面処理成分およびケイ酸アルミニウムを有機酸コア粒子に均一に固着させるには過少である点で好ましくない。また、製剤保管時の経時安定性に劣り、保管時の経時的な発泡反応抑制ができないため、炭酸ガスの発泡性および湯面全体に広がる泡の起泡性、その持続性に劣る場合がある。
10質量%を超えると、余剰の水溶性バインダーによって表面処理有機酸組成物粒子同士の塊粒化が生じたり、水溶性表面処理成分およびケイ酸アルミニウム粒子のみの塊粒化のために有機酸コア粒子への表面処理の進行を阻害する可能性がある点で好ましくない。また、水溶性表面処理成分およびケイ酸アルミニウムがハードシェル化するため、経時安定性に優れるが、水への溶解速度が遅くなるため、発泡反応が遅くなり炭酸ガスの発泡力が低下するとともに、浴湯面全体に広がる泡の起泡性が劣る場合がある点で好ましくない。
【0022】
水溶性バインダーとしては、市販品では、エマルミン、イオネット、プロファン;三洋化成工業製等が挙げられる。
【0023】
(a3)水溶性表面処理成分
有機酸に水溶性バインダーを担持させ、水溶性表面処理成分を均一に固着し被覆することで、保存中に表面処理有機酸粉体とそれ以外に存在する炭酸塩とが接触して反応することを抑制することにより、炭酸ガスの発生により包装容器が膨張する等の問題が発生するのを防止するとともに浴湯面全体に広がる泡の起泡性、その持続性を向上させることができる。
【0024】
本発明者らは無水中性ピロリン酸塩が有機酸の(a3)成分として上述の目的を満足することを見出した。
【0025】
無水物が好ましい理由は、炭酸ガス発泡剤と混合した浴用剤組成物として保管中経時での安定性を確保するためである。炭酸ガス発泡剤と有機酸との反応は反応開始に水が必要で、いったん反応が開始すれば、中和反応に伴い生成した水がさらに反応を進行させてしまう。結晶水や構造水を含有していると、その水が反応のきっかけとなり、浴用剤としての保管中経時での安定性を損ねることがある。
【0026】
無水中性ピロリン酸のアルカリ塩やアルカリ土類塩は、吸湿性や潮解性が無く、雰囲気水分にほとんど影響されないため、水溶性表面処理成分として好ましく使用することができる。
【0027】
本発明に用いる無水中性ピロリン酸塩としては、無水中性ピロリン酸のナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩やカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。この中でも、アルカリ金属塩が好ましく、食品添加物等で多用されている点、また経済性という点で、無水中性ピロリン酸ナトリウムがより好ましい。
【0028】
これらの無水中性ピロリン酸塩は、各々単独で使用するだけでなく、混合使用することもできる。
【0029】
本発明に用いられる無水中性ピロリン酸塩のアルカリ金属塩とアルカリ土類金属塩としては、下記一般式(1)で示される。
【0030】
XP (1)
Xはアルカリ金属塩またはアルカリ金属土類塩であって、例えばNa、K、Mg、Ca等が挙げられる。
【0031】
これら無水中性ピロリン酸塩の配合量は、表面処理有機酸組成物中に、30~70質量%であると好ましく、40~70質量%であると、さらに好ましい。30質量%未満であると、有機酸コア粒子の表面処理に対して過小であり、有機酸コア粒子を被覆しきれず入浴剤製剤保管時の発泡反応抑制が得られない場合があり、また、70質量%を超えると、有機酸コア粒子に対して過剰となってしまい、有機酸含有量が少なくなるために入浴剤製剤により多くの表面処理有機酸組成物を配合するという経済性にとって不利である点で好ましくない。
【0032】
また、保管中経時での安定性の点で下記一般式(2)で示される無水酸性ピロリン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩も同様に用いることができる。
【0033】
YH (2)
【0034】
Yはアルカリ金属塩またはアルカリ金属土類塩であって、例えばNa、K、Mg、Ca等が挙げられる。
【0035】
無水酸性ピロリン酸塩は、炭酸ガス発泡剤に対して酸源として作用するので、入浴剤製剤への配合時は、本発明の表面処理有機酸組成物の配合量を必要に応じて減らすことができる。
ただし、無水酸性ピロリン酸塩自体は、炭酸ガス発泡の大きさや持続性の点で本発明の目的を達し得ない。
よって、無水酸性ピロリン酸塩を本発明の水溶性表面処理成分として単品で用いることはできない。しかし、無水酸性ピロリン酸塩は、無水中性ピロリン酸塩全量に対して90質量%以下であれば用いることができる。
【0036】
水溶性表面処理成分の粒子径は、使用する有機酸の粒子径よりも小さいことが好ましい。その粒度は、フルイ分級による重量測定にて100μm以下が60質量%以上、特に80質量%以上が好ましい。
水溶性表面処理成分の粒子が有機酸の粒子径より大きいと、有機酸をコア粒子とする表面処理とならず、逆に水溶性表面処理成分がコア粒子となる可能性があり、本発明の特徴とする機能を損ねる場合がある。
【0037】
これらの無水中性ピロリン酸塩としては、市販品では、ピロリン酸ナトリウム(無水);太洋化学工業製等が挙げられる。
【0038】
(a4)ケイ酸アルミニウム
本発明で好適に用いられるケイ酸アルミニウムは、合成ケイ酸アルミニウムである。
有機酸に水溶性バインダーを担持させ、前記水溶性表面処理成分(a 3)を均一に固着被覆後、更に合成ケイ酸アルミニウムを均一に固着させ被覆することによる相互作用により、発泡性成形浴用剤が十分な硬度を備え、且つ、成形性を良好にすることを見出した。
【0039】
合成ケイ酸アルミニウムの配合量は、表面処理有機酸組成物中に0.3質量%以上が好ましく、0.5~3質量%であると、さらに好ましい。0.3質量%未満であると十分な硬度が得られず、3質量%を超える場合には成形性が劣り好ましくない。
【0040】
本発明の発泡性成形浴用剤中の、成分(A)である表面処理有機酸粉体の含有量は、発泡の持続性、お湯の肌触りを滑らかにする作用を得る点から、20~70質量%好ましく、25~60質量%がより好ましい。
【0041】
本発明の発泡性成形浴用剤中の、成分(B)である炭酸塩の含有量は、発泡の持続性を得る点から、20~70質量%好ましく、30~60質量%がより好ましい。
【0042】
本発明にかかる浴用剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、以下に示すような各種成分を添加、配合することができる。
【0043】
無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウムなどの塩化物。硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩等が挙げられる。
【0044】
無機粉体としては、例えば、酸化チタン、タルク、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、メタケイ酸等が挙げられる。
【0045】
油性成分としては、例えば、コメヌカ油、オリーブ油、大豆油、流動パラフィン、スクワラン等が挙げられる。
【0046】
高分子物質としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、カゼイン、デンプン等が挙げられる。
【0047】
生薬類としては、例えば、カンゾウ、カミツレ、ウイキョウ、センキュウ、チンピ、トウキ、薬用ニンジン等が挙げられる。
【0048】
保湿剤としては、例えば、モモ、ヘチマ、アロエなどの植物エキス、プロピレングリコール、グリセリン、尿素、ソルビトール、ブドウ糖等が挙げられる。
【0049】
その他の成分としては、例えば、グリチルリチン酸塩およびその誘導体、ビタミン類、シルク末、プロテイン等が挙げられる。
【0050】
香料としては、例えば、ラベンダー油、ジャスミン油、レモン油などの天然香料、人工香料等が挙げられる。色素としては、例えば、青色1号、赤色106号、黄色4号、緑色3号などのタール色素、クロロフィル、リボフラビンなどの天然色素等が挙げられる。その他製剤上必要な成分等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
(a1)有機酸と、(a2)水溶性バインダーと、(a3)水溶性表面処理成分と、(a4)ケイ酸アルミニウムからなる表面処理有機酸粉体は、以下の製造装置を用いて、以下の工程により、表面処理有機酸粉体における水溶性表面処理成分およびケイ酸アルミニウムが被覆形成し、製造される。そして、得られた(A)表面処理有機酸粉体と(B)炭酸塩を均一に混合し、打錠機、ロールコンパクター、ブリケッティングマシンにより圧縮成形し発泡性成形浴用剤が製造される。
【0052】
〈製造装置〉
有機酸に表面処理成分を被覆形成させる工程に使用する装置は、攪拌羽根を有するミキサーや容器が振動、回転するなど、本発明の表面処理有機酸粉体の記述の構造や特性を得られる装置であれば、特に限定されない。
【0053】
代表的な装置としては、スーパーミキサー(川田製作所)、ヘンシェルミキサー(日本コークスエ業)、ナウターミキサー(三徳工案、ホソカワミクロン他)等が挙げられる。
このうち、スーパーミキサーまたはヘンシェルミキサーが好適である。これらは、高速回転する撹拌羽根によって容器内の粉体を強力に流動させ、本発明の有機酸に表面処理成分を被覆形成する目的に有用な製造装置である。
【0054】
表面処理成分を被覆形成した後の工程では分級装置を使用する。
【0055】
代表的な装置は、振動フルイ(ダルトン社製)である。振動源は、一般的な電動式や超音波方式でも良い。
【0056】
〈製造条件および方法〉
以下は、上記製造装置のうち、スーパーミキサーおよび振動フルイを使用した製造条件および方法について説明する。
なお、ここに説明する製造条件および方法は本発明による代表例であり、これらに限定されるものではない。
【0057】
〈有機酸粉体の均一化〉
有機酸粉体の塊粒を解きほぐし、均一化することが目的である。
スーパーミキサーへの投入量は本装置の一般的な投入量に準じればよい。具体的には、投入体積で、ミキサー内容積の10~80体積%が良く、品質と経済性の観点からは、35~65体積%が好ましい。
撹拌羽根の形状、枚数も特に指定は無く、スーパーミキサーの標準仕様として付属する撹拌羽根でよい。
【0058】
撹拌条件は、目的とする塊粒の解きほぐしが可能であれば良く、特に限定しないが、ミキサー内容積の25体積%相当の有機酸を投入する場合、撹拌羽根の回転速度は周速1m/秒、撹拌時間は1~10分である。
【0059】
また、蒸気や温水等の熱媒、または電気ヒーター等ミキサー容器外部からの間接加熱によって容器内の雰囲気温度を40から80℃とする。
加熱することによって、表面処理中の環境水分の吸着を抑制し、以下の水溶性バインダーおよび表面処理成分を固着させる一連の表面処理をより効果的に行うことができる。
【0060】
〈水溶性バインダーの攪拌混合および均一化〉
次工程での表面処理成分を固着させるための下地調整が目的であり、有機酸粒子に水溶性バインダーを均一に付着させる撹拌条件が必要である。
水溶性バインダー投入時は、有機酸粉塵の飛散を防止するために撹拌を適宜弱めるか、停止しても良い。
撹拌羽根の回転速度は周速5~30m/秒、撹拌時間は3~30分であるが、特に限定されない。
【0061】
この時の温度は、水溶性バインダーの性状によって任意に設定することができるが、前工程の有機酸粉体の均一化工程での温度40~80℃を維持することで良い。
温度に関する基本的な考え方は、水溶性バインダーが有機酸粒子に均一に付着させる点で水溶性バインダーの融点以上が好ましく、一方、水溶性バインダーの熱による変質などの可能性を考慮して加熱しすぎないことが必要である。
なお、水溶性バインダーを有機溶媒等に溶解して投入する場合は、その有機溶媒の蒸発量を制御するための温度や撹拌時間を設定する必要がある
【0062】
〈表面処理成分の固着〉
粉体の表面処理成分を順次投入、撹拌して、水溶性バインダーを介在して有機酸に表面処理成分を固着させる。
水溶性バインダーが付着した有機酸粒子に被覆層形成材料粒子が付着し、かつ粒子同士の衝突、摩擦によって均一に表面処理される撹拌条件が必要である。
表面処理成分の投入時は、粉塵の飛散を防止するために撹拌を適宜弱めるか、停止しても良い。
撹拌羽根の回転速度は周速5~30m/秒、撹拌時間は3~30分であるが、特に限定されない。
温度は、前工程の水溶性バインダー撹拌混合時と同じ40~80℃を維持することで良く、特に限定されない。
【0063】
〈冷却〉
表面処理後は、必要に応じて、撹拌を弱めて冷却する。
撹拌羽根の回転速度は周速2~5m/秒で良く、特に限定されないが、表面処理が崩壊・脱落しないような回転速度や冷却時間とする必要がある。
到達温度は40℃以下が好ましいが、取り出した粉体が熱によるブロッキングを生じなければ良く、特に限定されない。
冷却はミキサー容器のジャケットに冷却水を流すか、容器内に冷風を送気するなど特に方法は限定されないが、取り出す雰囲気に対して必要以上に冷却して吸湿あるいは結露しないよう注意を要する。
【0064】
〈分級〉
ミキサーより粉体を排出したら、振動フルイで粗大粒子を除去する。また、必要に応じて、微粒子を除去する。フルイの目開きは特に限定されず、目的物を選択的に高収率で回収することができればよい。
一例を示すと、粗大粒子は目開き2000μmフルイ上を除去、微粒子は目開き100μmフルイ通過粉を除去というように目開きの異なるフルイを2段階で通過させる。フルイ線材質は金属製、合成繊維製いずれも用いることができる。
【0065】
この分級工程の代わりに粉砕機を用いることは好ましくない。粉砕は、表面処理を崩壊・脱落させたり、有機酸の破砕の可能性があり、本発明の特徴である高い発泡力や経時安定性にとって好ましくないからである。
関連して、分級においても、振動フルイ上に粒子が滞留しないよう、過剰な投入は避けるべきである。フルイ上に滞留したまま振動を受けると、表面処理を崩壊・脱落させる可能性が考えられるからである。
【0066】
このようにして、本発明の(A)表面処理有機酸粉体が得られる。
【0067】
〈圧縮成形型浴用剤の製造〉
(A)と、(B)とその他の各種浴用剤成分とを常法により均一混合し、圧縮して固形に成形したものであり、プレス打錠機やブリケットマシンにて圧縮成形し圧縮成形型浴用剤を製造できる。
また、前期各種成分、すなわち、無機塩類、無機粉体、油性成分、高分子物質、生薬類、保湿剤等を(A)表面処理有機酸粉体、(B)炭酸塩とともに添加し、複合成形体とすることができる。
【実施例
【0068】
以下、具体例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。試料の配合量は特に記載のない限り質量%である。なお、本発明で用いた打錠型浴用剤の評価方法は次の通りである。
【0069】
〈保存安定性〉
表2の組成を常法により均一混合し、プレス打錠機にて圧縮成形することにより、5mm×3mm(0.5g/錠)の錠剤型浴用剤を製造した。この打錠品をアルミニウムラミネートフィルムで作った袋に約80錠(40g)入れ、ヒートシールして密封し、40℃75%RHの条件下に6ケ月保存後の包装パックの膨張性を目視により判定した。
判定基準○:包装パックの膨張なし
判定基準△:包装パックの膨張ややあり
判定基準×:包装パックの膨張あり
<直後泡立ち性評価>
〈微細発泡性〉
浴槽に40℃200Lのお湯を入れ、被検浴用剤をそれぞれ40g投入し、直後から3分までに発生する炭酸ガスの発泡状態の変化を目視により判定した。
判定基準○:浴槽全体が強い白濁状態で覆われ浴槽底部が見えない。
判定基準△:浴槽全体が弱い白濁状態で覆われ浴槽底部がわずかに見える。
判定基準×:浴槽全体が弱い白濁状態で覆われ浴槽底部が見える。
【0070】
(泡立ち持続性評価)
浴槽に、40℃200Lのお湯を入れ、被検浴用剤をそれぞれ40g投入し、直後から20分後の浴湯面の泡の状態の変化を目視により判定した。
判定基準◎:浴湯面全体が泡で覆われている。
判定基準〇:浴湯面の9割が泡で覆われている。
判定基準△:浴湯面の7割が泡で覆われている。
判定基準×:浴湯面の5割以下が泡で覆われている。
【0071】
〈成形性〉
被検浴用剤を連続成形した際のバインディング、キャッピング、スティッキングなどの打錠障害を認めるまでの錠数(連続成形が可能な錠数)を目視により判定した。
判定基準○:20錠以上の連続成形が可能
判定基準△:10~19錠の連続成形が可能
判定基準×:9錠以下の連続成形で打錠障害が発生
【0072】
〈成形品の硬度:ハンドリング性〉
成形直後の錠剤硬度をロードセルタイプ錠剤硬度計(富士薬品機械製)を用いて測定し、成形品のハンドリング性を以下の基準で判定した。
判定基準○:50(N)以上(ハンドリング性良好)
判定基準△:30(N)以上(ハンドリング性問題なし)
判定基準×:30(N)未満(ハンドリング性不良)
【0073】
まず、本発明者らは、表1に示す処方に基づき、前記製造方法に従い(A)表面処理有機酸粉体を調製し、さらに炭酸塩と共にブリケットマシンによる成形を行った。
結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
*1コハク酸SA:日本触媒製
*2クエン酸:扶桑化学工業製
*3イオネットT-80V:三洋化成工業製
*4プロファン128エキストラ:三洋化成工業製
*5ピロリン酸四ナトリウム(無水):太洋化学工業製
*6ピロリン酸二水素二ナトリウム:太洋化学工業製
*7合成ケイ酸アルミニウム:協和化学工業製
*8炭酸ナトリウム:トクヤマ社製
*9塩化ナトリウム:日本精塩社製
【0075】
前記表1より明らかなように、表面処理有機酸粉体と炭酸塩等を混合したのみの粉体浴用剤(試験例1-2)は、発泡の継続時間はやや短い傾向にあったが、泡質はきめ細かくクリーミーであり、しかもそのクリーミーな泡は長時間にわたって維持された。
一方、表面処理有機酸粉体と炭酸塩などと共に成形を行い、50mm×12mmの成形体に調製した試験例1-3は、保存安定性、硬度に関しては満足のいくものであったが、泡質に関しては泡径の増大が認められると共に、クリーミーさは失われ、消泡に至るまでの時間も短いものであった。
これに対し表面処理粉体と炭酸塩などにより5mm×3mmに圧縮成型を行った試験例1-1は、発泡時間も十分に確保され、且つ泡質、泡持ちは粉体組成物である試験例1-2と同等に好ましいものであった。
以上を前提に、本発明者らはさらに検討を進めた。結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
試験例2-1~2-4及びその他の試験により、長径1~10mm、厚み0.5~5mmの範囲では、いずれも保存安定性、発泡継続時間、泡質、泡持ち共に優れた特性を示すことが明らかとなった。
また、試験例2-6、及び前記表1の試験例1-3を参照すると、成形体が大径である場合には、特段の処置を行わなくても成形性に影響を与えないが、小径になると成形性が低下する。
このため、本発明においては、特に成形性の改善のため、合成ケイ酸アルミニウムを用いることが好適である。
この場合、炭酸塩と共に合成ケイ酸アルミニウムを添加する(試験例2-5)よりも、合成ケイ酸アルミニウムを表面処理有機酸粉体に被覆して用いる(試験例2-4)ことが好適である。
また、試験例1-1,2-1~2-3より明らかなように、合成ケイ酸アルミニウムの添加量は、表面処理有機酸粉体に対し0.1~5質量%、好ましくは0.3~3質量%である。