(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】穿穴測定器
(51)【国際特許分類】
G01B 3/20 20060101AFI20231208BHJP
G01C 9/00 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
G01B3/20 A
G01C9/00 B
(21)【出願番号】P 2019200336
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2018206211
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508284850
【氏名又は名称】株式会社トラスト
(74)【代理人】
【識別番号】100129986
【氏名又は名称】森田 拓生
(72)【発明者】
【氏名】谷口 博司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-009454(JP,U)
【文献】実開昭58-195802(JP,U)
【文献】実公昭14-013232(JP,Y2)
【文献】実開平03-122304(JP,U)
【文献】特開2012-208039(JP,A)
【文献】特開2016-186439(JP,A)
【文献】特開2001-221627(JP,A)
【文献】実開昭52-025547(JP,U)
【文献】実開昭51-125952(JP,U)
【文献】特許第6033978(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/00-3/08
3/11-3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向へ直線的に伸びる測定辺を有した第1の定規と、
前記第1の定規を前記第一方向へ挿通可能に収容する保持器と、
前記保持器に保持されたまま、前記第一方向と直交する第二方向へ移動可能な第2の定規と、
前記第1の定規、保持器、第2の定規の少なくともいずれかの固定対象に付属されて、前記固定対象に対して一定の固定角度で保持される、傾斜センサを内蔵した角度計測手段と、から構成され、
前記第2の定規は、第一方向と平行な下方へ伸長する棒状部材を固着してなり、
前記角度計測手段は、穿穴縁周囲の面に接地する接地辺を下辺に有する下部接地片と一体的に構成されてなり、
前記第1の定規の前記第一方向に亘る表面領域、及び前記第2の定規の前記第二方向に亘る表面領域には、それぞれ第1及び第2の目盛が設けられると共に、前記角度計測手段の表示領域には角度表示部が設けられ、
これら第1~第2の目盛、角度表示部、並びに、前記第1の定規ないし前記保持器に設けられた各目盛の読取り部が、前記角度計測手段の片面の一部及び穿穴の穴縁部を含む所定の縦型矩形領域に収まって表示されることを特徴とする穿穴測定器。
【請求項2】
前記保持器の表面であって前記第1の定規の前記第1の目盛と近接する部分、並びに、前記保持器の表面であって前記第2の定規の前記第2の目盛と近接する部分には、それぞれ各目盛の読取り位置を示す各読取り部が設けられ、また各読取り部の近傍には角度計測手段による
角度表示部が設けられ、
これら各読取り部ないし角度表示部は、前記所定の縦型矩形領域内の上下方向、又は左右方向の特定位置に分かれて表示される、請求項1に記載の穿穴測定器。
【請求項3】
第一の定規が保持枠に対して第一方向を維持したまま保持器内をスライド移動可能であると共に、
第二の定規が前記第一方向と平行な下方に伸長固定される棒状部材と一体的に構成され、棒状部材が保持枠に対して第一方向の姿勢を維持したまま保持器内をスライド移動可能であり、
棒状部材の先部の外側辺には接触器であるジョウが縦方向に固着され、
第一の定規の外辺と棒状部材の先端のジョウとが、スライド位置に関わらず常に平行関係を維持することを特徴とする請求項1に記載の穿穴測定器。
【請求項4】
前記保持器又は角度計測手段のいずれかの下部に、下辺に接地辺を有する下部接地片が固着されてなり、
下部接地片の接地辺を穿穴周りの地面に接地させて第一の定規を穿穴内にセットした状態で、穿穴縁又は穿穴内の穴幅方向に張り出して係止する係止器をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の穿穴測定器。
【請求項5】
撮像範囲の基準枠が前記角度計測手段の片面に示されることを特徴とする請求項1に記載の穿穴測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿穴の深さ、幅、及び角度を測定する穿穴測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、直線状の定規と分度器を組み合わせて、長さと角度を一つの測定定規で計測できるようにした測定器が提案されている。
【0003】
このような測定器を光ケーブル布設用管路の地図上での測定に応用し、地図上での計測点に測定器をあてがうことで、直線状の管路が途中で湾曲(例えば、円弧状の緩やかなカーブ)し、その先でまた直線状に伸びるような敷設管路の長さ及び一方の直線部と他方の直線部の交角を同時に測定することを可能としたものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、種々の工事(例えば、既設コンクリートに架台を介して構造物を設置するような工事)において、工事中に開けられた穿穴(穿孔ともいう)の深さ方向の長さ、幅(径方向)の長さ、角度を計測する場合があり、これらを同時に計測したり撮影によって計測値の保存を速やかに行ったりして、計測作業と計測値の記録を効率的に行いたいというニーズがある。
【0006】
しかしながら、上記のような装置の構成では、このようなニーズに対応することは難しかった。
【0007】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、穿穴の計測作業と計測値の記録を効率的に行うことに好適な穿穴測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決すべく、本発明の穿穴測定器は、第一方向へ直線的に伸びる測定辺を有した第1の定規と、前記第1の定規を前記第一方向へ挿通可能に収容する保持器と、前記保持器に保持されたまま、前記第一方向と直交する第二方向へ移動可能な第2の定規と、前記第1の定規、保持器、第2の定規の少なくともいずれかの回転対象に重ねられて、前記回転対象に対して所定の円弧方向へ角度変更可能に保持される角度計測手段と、から構成される穿穴測定器であって、前記第2の定規は、下方へ伸長する棒状部材を固着してなり、前記角度計測手段は、穿穴を跨いで穿穴縁周囲の面に接地する接地辺を有してなり、前記第1の定規の前記第一方向に亘る表面領域、前記第2の定規の前記第二方向に亘る表面領域、並びに、前記角度計測手段の前記円弧方向に亘る表面領域には、それぞれ第1~第3の目盛が設けられ、これらの各目盛、並びに、前記第1の定規ないし前記保持器に設けられた各目盛の読取り部が、前記角度計測手段の片面の一部を含む所定の矩形領域に収まって表示されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、穿穴の計測作業と計測値の記録を効率的に行うことに好適な穿穴測定器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の
参考形態の穿穴測定器100の正面図である。
【
図2】
図1に示した仮想的なα-α領域を拡大して示す一部拡大図である。
【
図3】第1の
参考形態の穿穴測定器100の右側面図及び左側面図である。
【
図4】第1の
参考形態の穿穴測定器100の背面図である。
【
図5】第1の
参考形態の穿穴測定器100の上面図及び底面図である。
【
図6】第1の
参考形態の穿穴測定器100の使用方法を説明するための概念図である。
【
図7】
図6に示した仮想的なβ-β領域を拡大して示す一部拡大図である。
【
図8】第2の
参考形態の穿穴測定器100aの正面図である。
【
図9】第3の実施形態の穿穴測定器100の正面側上方斜視図である。
【
図10】第3の実施形態の穿穴測定器100の正面側下方斜視図である。
【
図11】第3の実施形態の穿穴測定器100の使用方法を説明するための正面側第一状態図である。
【
図12】第3の実施形態の穿穴測定器100の使用方法を説明するための背面側第二状態図である。
【
図13】第3の実施形態の穿穴測定器100の使用方法を説明するための正面側第三状態図である。
【
図14】第3の実施形態の穿穴測定器100の右側面図である。
【
図15】第3の実施形態の穿穴測定器100の平面図である。
【
図16】第4の実施形態の穿穴測定器100の正面側上方斜視図である。
【
図17】第4の実施形態の穿穴測定器100の背面側下方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の穿穴測定器を実施するための形態について説明する。但し、以下で説明する実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。また、各構成名称に続けて記載する数字列乃至アルファベット列は、各実施形態の構成の理解のために便宜的に付された符号であり、各構成名称に続けて記載する括弧書き内の文言は、本発明の構成に対応する実施形態の構成名である。これら数字列乃至アルファベット列、ないし括弧書き内の文言によって、本発明の構成の概念や形状を限定する趣旨ではない。以下に説明する各実施形態に基づき、本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0012】
本発明のいずれの実施形態においても、本発明の穿穴測定器は、第一方向(上下方向)へ直線的に伸びる測定辺を有した第1の定規(直線定規1)と、
前記第1の定規を前記第一方向へ挿通可能に収容する保持器(保持器2)と、
前記保持器に保持されたまま、前記第一方向と直交する第二方向(幅方向)へ移動可能な第2の定規(スライダ3)と、
前記第1の定規、保持器、第2の定規の少なくともいずれかの固定対象に固定され、前記固定対象に対して一定の角度で、角度変更可能又は角度変更不能に保持される角度計測手段(傾斜センサ5又は分度器4)と、から構成される。
前記第2の定規は、下方へ伸長する棒状部材(ノギスバー31)を固着してなり、
前記角度計測手段又は固定対象は、穿穴縁周囲の面に接地する接地辺(接地辺40又は26B)と一体的に(つまり角度変更不能に)構成されてなり、
前記第1の定規の前記第一方向に亘る表面領域、前記第2の定規の前記第二方向に亘る表面領域、並びに、前記角度計測手段の表示領域には、それぞれ第1~第2の目盛(第一方向目盛1G,第二方向目盛3G)及び角度表示部(傾斜センサ5の表示部又は円弧方向目盛4G)が設けられ、
これら第1~第2の目盛、角度表示部(傾斜センサ5の表示部又は円弧方向目盛4G)、並びに、前記第1の定規ないし前記保持器に設けられた各目盛の読取り部が、前記角度計測手段の片面の一部を含む所定の矩形領域に収まって表示されることを特徴とする。
【0013】
(第1及び
第2の参考形態(
図1~
図8)における目盛及び角度表示部)
本発明のうち後述の第1及び
第2の参考形態(
図1~
図8)において、第1~第3の目盛は、第1の目盛たる第一方向目盛1Gと,第2の目盛たる第二方向目盛3Gと,第3の目盛たる円弧方向目盛4Gとからなる3種類の目盛として示される。
つまり、第1及び
第2の参考形態の穿穴測定器は、第一方向(上下方向)へ直線的に伸びる測定辺を有した第1の定規(直線定規1)と、
前記第1の定規を前記第一方向へ挿通可能に収容する保持器(保持器2)と、
前記保持器に保持されたまま、前記第一方向と直交する第二方向(幅方向)へ移動可能な第2の定規(スライダ3)と、
前記第1の定規、保持器、第2の定規の少なくともいずれかの回転対象に重ねられて、前記回転対象に対して所定の円弧方向へ角度変更可能に保持される角度計測手段(分度器4)と、から構成される。
前記第2の定規は、下方へ伸長する棒状部材(ノギスバー31)を固着してなり、
前記角度計測手段は、穿穴を跨いで穿穴縁周囲の面に接地する接地辺(接地辺40)を有してなり、
前記第1の定規の前記第一方向に亘る表面領域、前記第2の定規の前記第二方向に亘る表面領域、並びに、前記角度計測手段の前記円弧方向に亘る表面領域には、それぞれ第1~第3の目盛(第一方向目盛1G,第二方向目盛3G,円弧方向目盛4G)が設けられ、
これら第1~第3の目盛、並びに、前記第1の定規ないし前記保持器に設けられた各目盛の読取り部が、前記角度計測手段の片面の一部を含む所定の矩形領域に収まって表示されることを特徴とする。
第1及び
第2の参考形態において、第1~第3の目盛は、第1の目盛たる第一方向目盛1Gと,第2の目盛たる第二方向目盛3Gと,第3の目盛たる円弧方向目盛4Gとからなる3種類の目盛として示される。
【0014】
また第1及び第2の
参考形態の穿穴測定器において、保持器の表面であって前記第1の定規の前記第1の目盛と近接する部分、前記保持器の表面であって前記第2の定規の前記第2の目盛と近接する部分、並びに、前記回転対象の表面であって前記角度計測手段の前記第3の目盛と近接する部分(例えば、直線定規1の測定辺11)には、それぞれ各目盛の読取り位置(
図7の円弧方向位置M4、第一方向位置M2、第二方向位置M3、)を示す第1~第3の読取り部(測定辺11、第一対向目盛21G、第二対向目盛23G)が設けられ、これら各読取り部は、前記所定の矩形領域内の上下方向、又は左右方向の特定位置に分かれて表示されることが好ましい。
なお第1及び
第2の参考形態において、第1~第3の読取り部は、第1の読取り部たる測定辺11と、第2の読取り部たる第一対向目盛21Gと、第3の読取り部たる第二対向目盛23Gからなる3種類の読取り部として示される。
【0015】
また第1ないし第2の参考形態の穿穴測定器に示されるように、前記第1の定規の外側辺(測定辺11)又は前記棒状部材の外側辺が厚さ方向の側面視にて片側に傾斜した傾斜面(定規の伸長方向に沿って切断した場合に特定方向へ傾斜した傾斜辺)からなることが好ましい。
【0016】
また第1ないし第2の参考形態の穿穴測定器に示されるように、前記角度計測手段の下辺に、測定対象の穴内及び穴縁近傍を亘る切欠き部が形成されることが好ましい。
【0017】
(第3及び第4の実施形態(
図9~
図17)における目盛及び角度表示部)
本発明のうち後述の第3及び第4の実施形態(
図9~
図17)においては、角度変更可能に保持された分度器4や、分度器4による第3の目盛を有さない。これら分度器4や第3の目盛の代わりに、それ自体の傾斜角度を表示する傾斜センサ5と、傾斜センサ5の角度表示部5Mが設けられる。つまり第1~第2の目盛は、第1の目盛たる第一方向目盛1Gと,第2の目盛たる第二方向目盛3Gとして示され、第3の目盛たる円弧方向目盛4Gの代わりに、傾斜センサ5の角度表示部5Mがデジタル文字または画像で角度を表示する。
【0018】
つまり、第3及び第4の実施形態の穿穴測定器は、第一方向(上下方向)へ直線的に伸びる測定辺を有した第1の定規(直線定規1)と、
前記第1の定規を前記第一方向へ挿通可能に収容する保持器(保持器2)と、
前記保持器に保持されたまま、前記第一方向と直交する第二方向(幅方向)へ移動可能な第2の定規(スライダ3)と、
前記第1の定規、保持器、第2の定規の少なくともいずれかの固定対象に付属されて、前記固定対象に対して一定の固定角度で保持される角度計測手段(角度表示部5Mを有する傾斜センサ5)と、から構成される。
【0019】
前記第2の定規は、下方へ伸長する棒状部材(ノギスバー31)を固着してなり、
前記角度計測手段は、穿穴縁周囲の面に接地する接地辺(26B)を有する保持器2の下部接地片26と一体的に(つまり角度変更不能に)構成されてなり、
前記第1の定規の前記第一方向に亘る表面領域、及び前記第2の定規の前記第二方向に亘る表面領域には、それぞれ第1~第2の目盛(第一方向目盛1G,第二方向目盛3G)が設けられると共に、前記角度計測手段の表示領域には角度表示部5Mが設けられ、
これら第1~第2の目盛、角度表示部5M、並びに、前記第1の定規ないし前記保持器に設けられた各目盛の読取り部が、前記角度計測手段の片面の一部を含む所定の縦型矩形領域(穿穴と共に写真撮影可能な領域)に収まって表示されることを特徴とする。
【0020】
第3及び第4の実施形態において、第1~第2の目盛は、第1の目盛たる第一方向目盛1Gと,第2の目盛たる第二方向目盛3Gとからなる2種類の目盛として示され、第3の目盛に代わる角度表示部5Mには、接地辺62Bを接地させた状態のまま傾斜センサ5で測定した傾斜角度のデジタル表示または画像として示される。
【0021】
また第3及び第4の実施形態の穿穴測定器において、保持器2の表面であって前記第1の定規の前記第1の目盛と近接する部分、及び、前記保持器の表面であって前記第2の定規の前記第2の目盛と近接する部分には、それぞれ各目盛の読取り位置(つまり、第一方向へ動く第一定規1の第一方向位置M2、及び、ノギスバー31とともに第二方向へ動く、第二の定規(スライダ3)の第二方向位置M3)を示す第1~第2の読取り部(測定辺11、第一対向目盛21G、第二対向目盛23G)が設けられると共に、これら第1~第2の読み取り部の上部近傍には、保持器2に固定された傾斜センサ5の角度表示部5Mが設けられる。つまり、目盛方式による第1、第2の各読取り部と、傾斜センサ5による角度表示領域は、地面に対して鉛直方向の矩形領域内の上下方向の特定位置に分かれて表示されることが好ましい。
【0022】
なお第3及び第4の実施形態において、第1~第2の読取り部は、第1の読取り部たる測定辺11と、第2の読取り部たる第一対向目盛21Gと、第3の読取り部たる第二対向目盛23Gからなる3種類の読取り部として示される。
【0023】
また第3ないし第4の実施形態の穿穴測定器に示されるように、前記いずれかの穿穴測定器において、撮像範囲の基準枠が前記角度計測手段の片面に示されることが好ましい。
【0024】
また第1ないし第2の参考形態、第3ないし第4の実施形態の穿穴測定器に示されるように、前記いずれかの穿穴測定器において、
第一の定規(直線定規1)が保持枠2に対して第一方向(上下方向)を維持したまま保持器2内をスライド移動可能であると共に、
第二の定規(スライダ3)が前記第一方向と平行な下方に伸長固定されるノギスバー31と一体的に構成され、ノギスバー31が保持枠2に対して第一方向(上下方向)を維持したまま保持器2内をスライド移動可能であり、
ノギスバー31の先部の外側辺には接触器であるジョウが縦方向に固着され、
第一の定規(直線定規1)の外辺とノギスバー31の先端のジョウ31Jとが、スライド位置に関わらず常に平行関係を維持することが好ましい。
【0025】
特に第3ないし第4の実施形態の穿穴測定器に示されるように、前記いずれかの穿穴測定器において、第一の定規(直線定規1)の外辺とノギスバー31の先端のジョウ31Jとが、スライド位置に関わらず常に平行関係を維持すると共に、互いに離反方向を向いてなることが好ましい。
【0026】
このような、第一の定規(直線定規1)の外辺とジョウ31Jとが互いに離反方向を向いた穿穴測定器であれば、穿穴内にセットする際に、例えば
図13に示すように、第一の定規(直線定規1)の外辺が穿穴の断面視一側辺HS1と接触し、ノギスバー31先端のジョウ31Jが、前記断面視一側辺HS1と反対側の他側辺HS2と接触させることとなる。このように、互いに離反方向を向いた直線定規1とノギスバー31の先端のジョウ31Jとが、穿穴内の穴幅方向に拡がって固定されることで、穴径及び穴深さを同時計測可能な第三状態(例えば
図6又は
図13の状態)となる。
【0027】
また第3ないし第4の実施形態の穿穴測定器(例えば
図12、
図13)に示されるように、前記いずれかの穿穴測定器において、接地辺(30又は62B)を接地させて第一の定規(直線定規1)を穿穴内にセットした状態で、穿穴縁又は穿穴内の穴幅方向に張り出して係止する係止器7を具備することが好ましい。
【0028】
係止器7は例えば、
図12や
図17に示すように、正面視略ハの字状に拡がる複数本のバネ線材であって、線材の各先端に穿穴内へ摩擦係止する係止部7Eを有したものが使用される。第3ないし第4の実施形態では、目盛読み取り部や表示部のある正面側とは逆の、背面側へ突出した支持箱60の背面の固定ビス7B周りに巻回したコイルバネの両先端が、略ハの字に下方傾斜してなる。具体的には、固定ビス5Bの軸周りに巻回形成された巻き線材70と、巻き線材70の両端それぞれに連なり、固定ビス5Bを境にして左右に下方傾斜した2本の基部線材71と、各基部線材71の各先に連なってそれぞれ水平方向前方へ屈曲伸長した屈曲部線材72と、各屈曲部線材72の各先に連なってそれぞれ左右に下方傾斜した先部線材73と、各先部線材73の各先端に連なって外方へ屈曲する短端材からなる係止部7Eとから構成される(
図17)。基部線材71は係止器7を一時的に縮めて穿穴内に収容する時に掴んで操作する操作片部であって、2本の基部線材71をつまんで各バネ線材の間隔及び2本の広がり角を一旦狭め、つまんだ状態のバネ線材を穿穴内で開放することで、バネ反力によって穴内係止する(
図12)。この状態で穿穴測定器は、接地辺26Bが接地した第二状態(
図12に示す状態)のまま、穿穴内及び穿穴上に一時的に係止することができる。穿穴が壁面又は天井等に形成された場合でも、穿穴測定器を落下させないように一時的に係止させて第二状態を保持することができる。
【0029】
また第1ないし第2の参考形態、第3ないし第4の実施形態の全ての穿穴測定器に示されるように、前記いずれかの穿穴測定器において、撮像範囲の基準枠が前記角度計測手段の片面に示されることが好ましい。
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の各構成について詳述する。
(第1の参考形態)
【0031】
まず
図1~
図5を参照して本願の
第1の参考形態の穿穴測定器100の構成について詳細に説明する。
図1は、
第1の参考形態の穿穴測定器100の正面図である。
図2は、穿穴測定器100の一部を
図1に示した4つの仮想的な基準点αを頂点とする仮想的な四角形のα-α領域を拡大して示す一部拡大図である。
【0032】
図3は、
第1の参考形態の穿穴測定器100の側面図であり、
図3(a)は右側面図、
図3(b)は、左側面図である。
図4は、
第1の参考形態の穿穴測定器100の背面図である。
図5は、
第1の参考形態の穿穴測定器100の上面図及び底面図である。
【0033】
なお「穿穴」は穿孔ともいい、種々の工事(例えば、既設コンクリートに架台を介して構造物を設置するような工事)で開けられる穴である。穿穴は床や天井や壁など様々な場所に設けられる。
【0034】
穿穴測定器100は、穿穴の深さ方向(第一方向)の長さ、径方向(深さ方向に略直交する方向(第二方向)。幅方向ともいう)の長さ、角度(例えば、床面を基準とした角度)の計測、及び、計測値の撮影による保存を速やかに行うことが可能な計測器である。
【0035】
図1に示すように、穿穴測定器100は、直線定規1(第1の定規)、保持器2、スライダ3(第2の定規)及び分度器4(角度計測手段)を備える。
【0036】
直線定規1は全体として直線状に伸びた板形状(ここでは、略長方形状かつ平板形状)を有している。直線定規1は、穿穴の深さ方向の長さを測るための部位であり、深さ方向に沿う2辺のうちの一辺(外側辺)は、測定辺11(第1の読取り部)として機能する。
【0037】
直線定規1の深さ方向に亘る表面の所定の領域(第一方向に亘る表面領域)には、測定辺11の方に寄るようにして第一方向目盛1G(第1の目盛)が設けられている。
【0038】
ここでは第一方向目盛1Gとして、1[mm]間隔で0~300[mm]の目盛がつけられている。また、作業者が目盛を視認しやすいように10[mm]毎に目盛数値が付されている。
【0039】
第一方向目盛1Gの目盛数値は、直線定規1が、先端辺12から穿穴に挿入される場合を考えて、先端辺12側から、測定辺11を挟んだ反対側の後端辺13側に向かって大きくなっている。
【0040】
測定辺11には、様々な用途がある。用途例の1つは、穿穴の壁面に当接されて幅方向の長さの起点となることであり、1つは、分度器4の目盛(後述する円弧方向目盛4G)を読み取る読取り点となることである。
【0041】
図2に示すように直線定規1は、保持器2と相対的に深さ方向又は深さ方向とは逆方向に移動可能なように保持器2に挿通されている。直線定規1は、例えば留めねじなどの固定具1Kによって保持器2との相対的な移動がロックされる。
【0042】
図4に示すように、直線定規1の下部の先端辺12の裏面には、直線定規1の先端辺12と等幅であって直線定規1よりも高剛性材からなる補強材12Rが、先端辺に沿って(つまり補強材12Rの端辺を先端辺12に合わせて)厚板部となるよう段状に貼設されている。この補強材12Rは、穿穴との接触によって直線定規1の先端辺12が削れてしまうことを抑制する機能を果たす。
【0043】
さらに、
図1に示すように、直線定規1の上部の後端辺13の表面には、直線定規1の先端辺13と等幅であって直線定規1よりも高剛性材からなる補強材13Rが、後端辺に沿って(つまり補強材13Rの端辺を後端辺13に合わせて)厚板部となるよう段状に貼設されている。この補強材13Rは、直線定規1が、後端辺13側から穿穴に挿入された場合に、穿穴との接触によって直線定規1の後端辺13が削れてしまうことを抑制する機能を果たす。
【0044】
図3に示すように直線定規1の先端辺12側及び後端辺13側には、抜け止め1Eがそれぞれ設けられており、このうち先端辺12側の抜け止め1Eは、直線定規1の裏面側に位置し、後端辺13側の抜け止め1Eは直線定規1の表面側に位置している。
【0045】
抜け止め1Eは、以下のような状況に対応させて設けられている。例えば床に設けられた穿穴の計測中にロックされていない状態の直線定規1が、何かの拍子に作業員の手を離してしまい、直線定規1が重力により下方に滑り落ちてしまうような状況が考えられる。
【0046】
抜け止め1Eを備えない場合、直線定規1が保持器2から脱落してしまう恐れがあるが、後端辺13に抜け止め1Eを設けた場合、抜け止め1Eが保持器2に引っかかることによって直線定規1が保持器2から脱落してしまうことが防止される。
【0047】
先端辺12側の抜け止め1Eも同様であり、例えば天井に設けられた穿穴の計測中に同様の事が起こった場合に、先端辺12側の抜け止め1Eが分度器4に引っかかることによって直線定規1が保持器2から脱落してしまうことが防止される。
【0048】
測定辺11は、片面側(実施形態では表面側)が滑らかなR形状(すなわち、アール状断面)を持つように面取りされている(
図3~
図5に示す符号「11T」参照。)。以下、このR形状に面取りされた部位をR形状面11Tと称す。
【0049】
R形状面11Tを備えることによって、直線定規1が穿穴に挿入された際に、穿穴の壁面との接触面積を大きくしやすくなり、直線定規1の穴面への接触の安定性を向上させることができる。また直線定規1の側辺の角よりも厚さ方向内側へずれた位置で接触するため、第二の定規によって穴の内径を測定するときに、直線定規1や保持器2、或いはスライダ3ないしノギスバー31の各厚さによる、測定誤差への影響を小さくすることができる。
【0050】
ここで、測定誤差への影響について説明する。幅方向可変可能な断面矩形の測定器具においてある程度の厚さを有するものは、穴内面との接触点によって、穴径を対角線上の2角部で得る場合や、隣り合う角部で得る場合があるため、接触点によって測定値と実際の穴径とに誤差が生じてしまう。また、対角線の幅を測定値として得る場合においても、小さい径の場合は測定器具の厚さの影響が大きい一方、大きい径の場合は測定器具の厚さの影響が小さくなる。これに対し、矩形断面の測定器において断面視にて、穴側面に接触する断面視一対角線方向の少なくとも片側をそれぞれ部分円弧からなるアール状面とし、アール状面で接触させることで、測定器具の厚さの影響や穴径による影響差を小さくすることができる。
【0051】
保持器2は、
図1~5に示すように所定の厚み(例えば
図3(a)の直線定規1の表面から裏面方向の長さ)、高さ(例えば、深さ方向に沿う長さ)、幅を有する筐体であり、直線定規1を深さ方向へ挿通可能に収容する。また、保持器2は、その表面の所定個所でスライダ3を幅方向に移動可能に保持する。
【0052】
図2に示すように、保持器2は、直線定規1の第一方向目盛1Gを作業者が読むための第1読取部21(第2の読取り部)及びこの後説明するスライダ3の第二方向目盛3Gを作業者が読むための第2読取部23(第3の読取り部)を有する。また、保持器2には、スライダ3の移動を滑らかにするためのローラ23Rが設けられている。
【0053】
第1読取部21には、直線定規1の第一方向目盛1Gの一部を露出させる略長方形状の窓部22H(
図2中の網点で塗りつぶされた領域参照)が設けられ、窓部22H内に位置する直線定規1の第一方向目盛1Gが作業員によって読み取られる。
【0054】
窓部22Hの1つの辺部には、直線定規1の第一方向目盛1Gと対向するように配置される第一対向目盛21Gが設けられている。
【0055】
ここでは第一対向目盛21Gとして1[mm]間隔で0~10[mm]の目盛がつけられている。また、作業者が目盛を視認しやすいように2[mm]毎に目盛数値が付されている。
【0056】
第一対向目盛21Gの目盛数値は、第一方向目盛1Gと同様に、先端辺12側から、測定辺11を挟んだ反対側の後端辺13側に向かって大きくなっている。
【0057】
第2読取部23は、スライダ3を下方から支え、かつこの後説明するスライダ3の第二方向目盛3G(第2の目盛)を作業者が読むための部位である。
【0058】
第2読取部23は、全体として幅方向に直線状に伸びた板形状(ここでは、略長方形状かつ平板形状)を有しており、直線定規1を横断して配置されている。第2読取部23の長辺は、直線定規1の長さ(深さ方向の長さ)よりも短く形成されている。
【0059】
第2読取部23の表面の片側(
図2では右側であり、直線定規1の測定辺11から遠い側)には、スライダ3の第二方向目盛3Gと対向するように配置される第二対向目盛23Gが設けられている。
【0060】
ここでは第二対向目盛23Gとして、1[mm]間隔で0~10[mm]の目盛がつけられている。また、作業者が目盛を視認しやすいように2[mm]毎に目盛数値が付されている。
【0061】
第二対向目盛23Gの目盛数値は、直線定規1から遠い側を起点として、直線定規1に近づくに連れて大きくなっている。
【0062】
図3に示すように穿穴測定器100を側面から見ると第2読取部23のスライダ3との接触部は、段状(溝状ともいう)に形成されており、この段状の部位にスライダ3の長辺が嵌められ摺動する。
【0063】
スライダ3は、穿穴の幅方向の長さを測るための部位である。スライダ3は、第2読取部23と同様に全体として幅方向に直線状に伸びた板形状(ここでは、略長方形状かつ平板形状)を有しており、直線定規1を横断して配置されている。スライダ3には、ノギスバー31(棒状部材)が固着されている。
【0064】
スライダ3の長辺の長さ(幅方向の長さ)は、直線定規1の長さ(深さ方向の長さ)よりも短く形成されており、かつ第2読取部23の長辺よりは長く形成されている。また、スライダ3の短辺の長さ(深さ方向の長さ)は、第2読取部23の短辺よりも長く形成されている。
【0065】
スライダ3の幅方向に亘る表面の所定の領域(第二方向に亘る表面領域)には、第2読取部23の第二対向目盛23Gと対向するように配置される第二方向目盛3Gが設けられている。
【0066】
ここでは第二方向目盛3Gとして、1[mm]間隔で0~35[mm]の目盛がつけられている。また、作業者が目盛を視認しやすいように10[mm]毎に目盛数値が付されている。
【0067】
第二方向目盛3Gの目盛数値は、第2読取部23の第二対向目盛23Gと対応する方向に向かって大きくなっている。
【0068】
スライダ3の第二方向目盛3Gが設けられた領域以外の領域には、スライダ3の表面から裏面を貫通しつつ幅方向に沿って伸びる貫通孔32Hが設けられている。貫通孔32H内には保持器2のローラ23Rが配置され、スライダ3が
図2に符号「3’」に示された位置まで移動する際に、スライダ3が滑らかに移動可能なように補助している。
【0069】
また、貫通孔32Hには、例えば留めねじなどの固定具3Kが配置されており、スライダ3は、固定具3Kによって保持器2及び第2読取部23との相対的な移動がロックされる。
【0070】
ノギスバー31は、スライダ3側を基端部として直線定規1の長手方向に沿って深さ方向に伸びている。ノギスバー31は、スライダ3と一体的に移動する(
図2の符号「31’」参照)。
【0071】
図1及び
図2に示すように穿穴測定器100を正面から見ると、ノギスバー31は、第2読取部23の後ろ側に位置しており、基端部は第2読取部23に隠れている。
【0072】
ノギスバー31の先端部には、外側(直線定規1とは逆側)に向かって突出するジョウ31Jが設けられている。ジョウ31Jは、穿穴の壁面に当接される部位である。ジョウ31Jの側面はまた、測定辺11のアール状断面の形成面(実施形態では表面側)と反対の形成面側が滑らかなR形状(すなわち、アール状断面)を持つように面取りされている。ノ穴面との接触器であるジョウJをアール状断面とすることで、穴面への接触の安定性を向上させることができる。また直線定規1の側辺の角よりも厚さ方向内側へずれた位置で接触するため、第二の定規によって穴の内径を測定するときに、直線定規1や保持器2、或いはスライダ3ないしノギスバー31の各厚さによる、測定誤差への影響を小さくすることができる。
【0073】
ここで、測定誤差への影響について説明する。幅方向可変可能な断面矩形の測定器具においてある程度の厚さを有するものは、穴内面との接触点によって、穴径を対角線上の2角部で得る場合や、隣り合う角部で得る場合があるため、接触点によって測定値と実際の穴径とに誤差が生じてしまう。また、対角線の幅を測定値として得る場合においても、小さい径の場合は測定器具の厚さの影響が大きい一方、大きい径の場合は測定器具の厚さの影響が小さくなる。これに対し、矩形断面の測定器において断面視にて一対角線方向の両端をそれぞれ部分円弧からなるアール状面とし、各アール状面で接触させることで、測定器具の厚さの影響や穴径による影響差を小さくすることができる。
【0074】
分度器4は、穿穴の角度を測るための部位である。分度器4は、全体として略半円形状を有しており、
図1のように直線定規1を正面から見た場合、円弧状の上辺部と、この円弧の両端部を接続する下辺部を備える。
【0075】
分度器4は、直線定規1、保持器2又はスライダ3のうちの少なくともいずれかに重ねられ、かつ、これら(直線定規1、保持器2又はスライダ3)を回転対象として、これらに対して所定の円弧方向へ角度変更可能に保持される。
【0076】
分度器4は、
図1のように直線定規1を正面から見た場合、最後部に位置しており一部が少なくとも直線定規1によって隠されている。分度器4の上辺部の円弧方向に亘る表面領域には、円弧方向目盛4G(第3の目盛)が設けられている。ここでは、円弧方向目盛4Gとして、分度器4の略中央部を0度として左右に1度ずつ、20度までの目盛がつけられている。また、円弧方向目盛4Gには、作業者が目盛を視認しやすいように5度毎に目盛数値が付されている。
【0077】
測定辺11の直下の円弧方向目盛4Gを読み取ることで穿穴の角度がわかる。円弧方向目盛4Gの目盛数値は、円弧方向目盛4Gを読み取る際に直線定規1によって隠れてしまわないように、円弧方向目盛4Gの目盛線から特定の一方向(
図2では左側)へわずかにずれて表示される(
図2)。
【0078】
具体例を挙げれば、この実施形態では
図1に示すように、目盛線を延長させた仮想線(41G)上に目盛数値を表示せず、仮想線(41G)よりも特定の一方向である左側にわずかにずれた位置に目盛数値を表示している(
図2)。例えば直線定規1が0度の位置にあるときでも目盛数値の「0」は直線定規1の測定辺11の左側に露出して表示される。この結果、作業員は、目盛数値を容易に読み取ることができる。
【0079】
円弧方向目盛4Gの下辺部は、穿穴を跨いで穿穴縁周囲の面に接地する接地辺として機能する。以下、円弧方向目盛4Gの下辺部を接地辺40ともいう。
【0080】
接地辺40には、下辺の長手方向に伸びる略長方形状の切欠き部43が設けられている。切欠き部43は、測定対象の穿穴内及び穿穴縁近傍を亘ることが可能なように設けられる。
【0081】
さらに切欠き部43は、穿穴が設けられた面(例えば床面)の荒れなどの状況に対応させやすいように接地辺40の中央部よりも一方の端部側に偏って設けられている。
【0082】
切欠き部43が接地辺40の中央部よりも一方の端部側に偏って設けられていることによって、接地辺40は、切欠き部43を挟んで対向する第1接地辺401と、この第1接地辺401よりも短い第2接地辺402に分けられる。
【0083】
図4に示すように分度器4の所定の箇所には、分度器4の表面から裏面を貫通しつつ幅方向に沿って伸びる貫通孔41H及びこの貫通孔41Hよりも幅方向の長さが短い貫通孔42が設けられている。
【0084】
貫通孔41H及び貫通孔42は、上下方向に並んで配置されており、それぞれは、全体的に上辺部の円弧と同心的な円弧状に形成されている。
【0085】
貫通孔41H及び貫通孔42には、例えば留めねじなどの固定具41K及び固定具42Kがそれぞれ配置されており、分度器4は、固定具41K及び固定具42Kによって直線定規1、保持器2又はスライダ3などとの相対的な回転がロックされる。
【0086】
次に
図6及び
図7を参照して穿穴測定器100の使用方法を説明する。
図6は、
第1の参考形態の穿穴測定器100の使用方法を説明するための概念図である。
図7は、
第1の参考形態の穿穴測定器100の一部を
図6に示した4つの仮想的な基準点βを頂点とする仮想的な四角形のβ-β領域を拡大して示す一部拡大図である。
【0087】
なおここでは、一例として、所定の角度を持って設けられ床に設けられた穿穴Hを計測する場合の使用方法を説明するが、穿穴Hを天井や壁に設ける場合でも同様の使用方法となる。
【0088】
穿穴Hは、
図6に示すように横方向から平面的に見ると、短辺HS1、長辺HS2を有する円筒状に形成される。穿穴Hは、先端は先細り形状を有しているっており、先端に向かって傾斜する端面HE1、この端面HE1の反対側の端面HE2及び穿穴端HE3が形成されている。
【0089】
穿穴Hを設けるときの衝撃や振動により、穿穴Hの所定の箇所には、穿穴Hの縁が欠けた欠損部BLや短辺HS1の一部が穿穴Hの内部において床面Fの面方向に広がった湾曲部BNが形成されることがある。
【0090】
また、穿穴Hを設けるときの衝撃や振動により、床面Fには、凸凹に荒れる荒部TFが発生することがある。
【0091】
計測の開始時に作業員は、穿穴測定器100の固定具1K、固定具3K、固定具41K及び固定具42Kなどを非ロック状態としておく。この結果直線定規1などは各部位と相対的に動くことができる。
【0092】
作業員は、穿穴Hに対して、直線定規1を先端辺12側から挿入し、穿穴Hの穿穴端HE3向かって直線定規1下ろしていく。
【0093】
ここでは、安定した計測を行うために測定辺11は短辺HS1に当接される。先端辺12が、端面HE1まで達した所が深さ方向の長さの計測の起点となる。
【0094】
分度器4は、床面Fに当接される。分度器4は、切欠き部43によって第1接地辺401及び第2接地辺402が荒部TFを跨ぐことができ、荒部TFの影響を受けずに第1接地辺401及び第2接地辺402が床面Fに安定的に当接される。
【0095】
すでに説明したように、切欠き部43は、接地辺40の中央部よりも一方の端部側に偏って設けられているので、荒部TFの長さ(
図6に示す面方向の長さ)が長くても跨ぎやすくなっている。
【0096】
仮に、第1接地辺401及び第2接地辺402が跨げないほどの荒部TFがあった場合には、穿穴測定器100全体を、穿穴Hを中心にして床面Fの水平方向に回転させ、荒部TFを避ければよい。
【0097】
作業員は、ノギスバー31を移動させて、ジョウ31Jを長辺HS2に当接させる。ここで、固定具1K、固定具3K、固定具41K及び固定具42Kによって各部位をロックすることにより各計測点(計測位置ともいう)が固定される。
【0098】
図7に示すように穿穴Hの深さ方向の長さは、第一対向目盛21Gの「0」を計測点(以下、第一方向位置M2と称す)として、この第一方向位置M2における直線定規1の第一方向目盛1Gの値を読み取ることで計測することができる。
【0099】
また、第一対向目盛21Gの1~10[mm]までの目盛の内、第一方向目盛1Gと略ずれることなく対向する位置にある目盛を小数点以下の値を読み取るための計測点にすることができる。
【0100】
なお、計測値に余裕(マージン)を持たせるために、第一対向目盛21Gの「0」以外を計測点(以下、第一方向位置M2’と称す)としてもよい。
【0101】
穿穴Hの幅方向の長さは、第二対向目盛23Gの「0」を計測点(以下、第二方向位置M3と称す)として、この第二方向位置M3におけるスライダ3の第二方向目盛3Gの値を読み取ることで計測することができる。
【0102】
また第二対向目盛23Gの1~10[mm]までの目盛の内、第二方向目盛3Gと略ずれることなく対向する位置にある目盛を小数点以下の値を読み取るための計測点にすることができる。
【0103】
なお、計測値に余裕(マージン)を持たせるために、第一対向目盛21Gの「0」以外を計測点(以下、第二方向位置M3’と称す)としてもよい。
【0104】
穿穴Hの角度は、測定辺11直下の円弧方向目盛4Gを計測点(以下、円弧方向位置M4と称す)として、この円弧方向位置M4における円弧方向目盛4Gの値を読み取ることで計測することができる。
【0105】
穿穴測定器100のこの仮想的な四角形のβ-β領域(又は、仮想的な四角形のα-α領域)内を見れば各目盛の値を読み取ることができる。また、この仮想的な四角形のβ-β領域(又は、仮想的な四角形のα-α領域)を撮影すれば、測定値をその都度メモしたり読み上げたりする必要がない。このことにより計測を効率的に行うことができる。
【0106】
穿穴測定器100では、少なくとも直線定規1、保持器2、スライダ3及び分度器4に設けた各目盛(第一方向目盛1G、第二方向目盛3G、円弧方向目盛4G)、並びに、直線定規1ないし保持器2に設けた各目盛の読取り部(第1読取部21、第2読取部23)が、分度器4の表面の一部を含む所定の矩形領域に収まって表示されている。
【0107】
ここで「分度器4の片面内の所定の矩形領域に収まって表示される」とは、分度器4の特定の一面であって当該面の一部と重なる矩形領域(例えば、
図1に示す仮想的な四角形のα-α領域や
図7に示す仮想的な四角形のβ-β領域)を規定したときに、この矩形領域内にすべての目盛が収まる程度に、各目盛の表示位置が集合して設けられることを意味する。
【0108】
穿穴測定器100では、各目盛の配置を以上のようにすることにより、各目盛の測定値を一領域内で連続して把握することができるし、撮影する場合には、各目盛の測定値を1画像にまとめて保存することができる。結果として、計測を効率的に行うことができる。
【0109】
さらに、穿穴測定器100では、例えば
図1に示すように少なくとも第1読取部21、第2読取部23及び測定辺11が所定領域(例えば、
図1に示す仮想的な四角形のα-α領域や
図7に示す仮想的な四角形のβ-β領域)内の上下方向、又は左右方向の特定位置に分かれて表示される。
【0110】
なお「上下方向、又は左右方向の特定位置に分かれて表示される」とは、少なくとも第1読取部21、第2読取部23及び測定辺11が所定領域内において左・中央・右の各位置、或いは上・中・下の各位置に分かれて(ずれて)レイアウトされることを意味する。
【0111】
この配置によって、各測定値同士の混同を防ぐことができる。結果として、計測をさらに効率的に行うことができる。
【0112】
(
第2の参考形態)
穿穴測定器100は、本願発明の趣旨の範囲内で適宜変形が可能である。そこで
図8を用いて本願発明の
第2の参考形態に係る穿穴測定器100aを説明する。
図8は、
第2の参考形態の穿穴測定器100の正面図である。
【0113】
以下の説明では、第1の参考形態と対応する構成には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0114】
図8に示すように、
第2の参考形態の保持器2には、作業員が直線定規1の第一方向目盛1Gを認識しやすくするため、第一対向目盛21Gの一部を、他の目盛よりも延長させると共に上端に円形マークを付してなる強調表示部21Aとしている。
【0115】
同様に、第2読取部23には、作業員が、スライダ3の第二方向目盛3Gを読みやすくするため、第二対向目盛23Gの一部を、他の目盛よりも延長させると共に上端に円形マークを付してなる強調表示部23Aとしている。なお、ここでは第二方向目盛3Gとして、1[mm]間隔で0~40[mm]の目盛がつけられている。
【0116】
第2の参考形態のスライダ3は、第1の参考形態のノギスバー31に対応するノギスバー311及びノギスバー312を備える。
【0117】
ノギスバー311は、第1の参考形態のスライダ3のノギスバー31と同様に穿穴内を幅方向に移動する。ノギスバー311の先端部には、外側(直線定規1とは逆側)に向かって突出するジョウ311Jが設けられている。ジョウ311Jは、穿穴の壁面に当接される部位である。
【0118】
ノギスバー312は、ノギスバー311に対して穿穴測定器100を挟んだ反対側に位置している。ノギスバー312は、固定されておりその先端部には、外側(ジョウ311Jとは逆側)に向かって突出するジョウ312Jが設けられている。ジョウ312Jは、穿穴の壁面に当接され、穿穴の幅方向の長さの計測の起点となる部位である。
【0119】
第2の参考形態の分度器4は、下辺部にゴム401G及びゴム402Gが設けられる。ゴム401G及びゴム402Gによって床面Fとの接地性が向上する。
【0120】
なお、ここでは円弧方向目盛4Gとして、1度ずつ60度~120度までの目盛がつけられており、作業者が目盛を視認しやすいように10度毎に目盛数値が付されている。
【0121】
分度器4の切欠き部43は、第1の参考形態の分度器4に比べて円弧方向目盛4Gの下辺部の略中央よりに設けられている。このように、切欠き部43の形成箇所は、適宜変更が可能である。
【0122】
分度器4の表面における円弧方向目盛4Gの下部には、作業員が円弧方向目盛4Gを読みやすくするために円弧方向に沿って円弧状に伸びる太線4Aが設けられている。
【0123】
分度器4の表面には、さらに撮像範囲の基準枠である撮影ガイドPGが設けられている。したがって、分度器4の表面は、基準枠内の領域451と、基準枠外の領域452に分けられる。
【0124】
この第2の参考形態の穿穴測定器100aは、上記した太線21Aや撮影ガイドPGによってさらに効率的に穿穴の計測を行う事ができる。例えば、撮影ガイドPGに合わせて撮像することで、各目盛の測定値を、簡単に1画像にまとめて保存することができる。この結果、撮影効率が向上し、計測を効率的に行うことができる。
【0125】
(第3の実施形態)
穿穴測定器100は、本願発明の趣旨の範囲内で適宜変形が可能である。そこで
図9~
図15を用いて本願発明の第3の実施形態に係る穿穴測定器100を説明する。
図9は、第3の実施形態の穿穴測定器100の正面側上方斜視図である。
図10は、第3の実施形態の穿穴測定器100の正面側下方斜視図である。
図11は、第3の実施形態の穿穴測定器100の使用方法を説明するための正面側第一状態図である。
図12は、第3の実施形態の穿穴測定器100の使用方法を説明するための背面側第二状態図である。
図13は、第3の実施形態の穿穴測定器100の使用方法を説明するための正面側第三状態図である。
図14は、第3の実施形態の穿穴測定器100の右側面図である。そして
図15は、第3の実施形態の穿穴測定器100の平面図である。
【0126】
第3の実施形態の穿穴測定器100は、分度器の代わりに傾斜センサ5又は傾斜センサ機構を内蔵した傾斜角度測定手段を有する。傾斜センサ5は回転角センサを有する振り子式センサでもよく、液体の静電容量変化を検知するフロート式センサでもよい。その他公知の電池式傾斜センサを採用できる。この傾斜センサ5は第一目盛、第二目盛いずれかの上部近傍に設置した固定プレート5B上に取り外し可能に固定される。
【0127】
また
第3の実施形態の穿穴測定器100は、棒状部材たるノギスバー31が1本だけからなり、ノギスバー31の先部側辺に固着されたジョウ31Jと、第一の定規たる直線定規1の目盛側の測定辺11とが互いに同一平面上で離反した位置関係にある。本実施形態では、直線定規1の測定辺11を穿穴の一方の片側辺(HS1)に当てると共に、第二の定規たるスライダ3を第二方向樽幅方向へスライドさせて、ノギスバー31を、穿穴の他方の片側辺(HS2)に当てることで、穿穴内の穴断面を対角方向に亘るようにセットする(
図12の第二状態、
図13の第三状態にする)ことで、穴径を測定する。
【0128】
また
第3の実施形態の穿穴測定器100は、接地辺(30又は62B)を接地させて第一の定規(直線定規1)を穿穴内にセットした状態で、穿穴縁又は穿穴内の穴幅方向に張り出して係止する、弾性を有する線材からなる係止器7を具備する。係止器7は例えば、
図12や
図17に示すように、正面視略ハの字状に拡がる複数本のバネ線材であって、線材の各先端に穿穴内へ摩擦係止する係止部7Eを有したものが使用される。
【0129】
第3ないし第4の実施形態では、目盛読み取り部や表示部のある正面側とは逆の、背面側へ突出した支持箱60の背面の固定ビス7B周りに巻回したコイルバネの両先端が、略ハの字に下方傾斜してなる。具体的には、固定ビス5Bの軸周りに巻回形成された巻き線材70と、巻き線材70の両端それぞれに連なり、固定ビス5Bを境にして左右に下方傾斜した2本の基部線材71と、各基部線材71の各先に連なってそれぞれ水平方向前方へ屈曲伸長した屈曲部線材72と、各屈曲部線材72の各先に連なってそれぞれ左右に下方傾斜した先部線材73と、各先部線材73の各先端に連なって外方へ屈曲する短端材からなる係止部7Eとから構成される(
図17)。
【0130】
基部線材71は係止器7を一時的に縮めて穿穴内に収容する時に掴んで操作する操作片部であって、2本の基部線材71をつまんで各バネ線材の間隔及び2本の広がり角を一旦狭め、つまんだ状態のバネ線材を穿穴内で開放することで、バネ反力によって穴内係止する(
図12)。この状態で穿穴測定器は、接地辺26Bが接地した第二状態(
図12に示す状態)のまま、穿穴内及び穿穴上に一時的に係止することができる。穿穴が壁面又は天井等に形成された場合でも、穿穴測定器を落下させないように一時的に係止させて第二状態を保持することができる。
【0131】
(第4の実施形態)
穿穴測定器100は、本願発明の趣旨の範囲内で適宜変形が可能である。そこで
図16~
図17を用いて本願発明の第3の実施形態に係る穿穴測定器100を説明する。
図16は、第4の実施形態の穿穴測定器100の正面側上方斜視図である。
図17は、第3の実施形態の穿穴測定器100の背面側下方斜視図である。
第4の実施形態の穿穴測定器は第3の実施形態の穿穴測定器と比べて、角度表示器を直線定規1よりも背面側に配置したことを特徴とし、正面側に大きな突出部を有さず、よりコンパクトな形態をなすと共に、直線定規1の目盛1Gの表面を覆い隠す部分をなくし、第一目盛の読み取りをより容易にしている。
【産業上の利用可能性】
【0132】
以上で説明したように、本発明は、穿穴の計測作業と計測値の記録を効率的に行うことに好適な穿穴測定器を提供することができる。
【符号の説明】
【0133】
100,100a :穿穴測定器
1E :抜け止め
1G :第一方向目盛
1K :固定具
1a :穿穴測定器
2 :保持器
3 :スライダ
3G :第二方向目盛
3K :固定具
4 :分度器
4A :太線
4G :円弧方向目盛
1 :直線定規
11 :測定辺
11T :R形状面
12 :先端辺
12R :補強材
13 :後端辺
13R :補強材
21 :第1読取部
21A :太線
21G :第一対向目盛
22H :窓部
23 :第2読取部
23A :太線
23G :第二対向目盛
23R :ローラ
26 :接地片
26B :接地辺
31 :ノギスバー
31J :ジョウ
32H :貫通孔
40 :接地辺
41H :貫通孔
41K :固定具
42 :貫通孔
42K :固定具
43 :切欠き部
311 :ノギスバー
311J :ジョウ
312 :ノギスバー
312J :ジョウ
401 :第1接地辺
401G :ゴム
402 :第2接地辺
402G :ゴム
451 :領域
452 :領域
5 :傾斜センサ
7 :係止器
BL :欠損部
BN :湾曲部
F :床面
H :穿穴
HE1 :端面
HE2 :端面
HE3 :穿穴端
HS1 :短辺
HS2 :長辺
M2 :第一方向位置
M2' :第一方向位置
M3 :第二方向位置
M3' :第二方向位置
M4 :円弧方向位置
PG :撮影ガイド
TF :荒部
α :基準点
β :基準点