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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】Y型コネクタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/06 20060101AFI20231208BHJP
   A61M 25/01 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
A61M39/06 100
A61M25/01
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019223135
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2021090629
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591245624
【氏名又は名称】株式会社東海メディカルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】村山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】菅 一成
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏成
(72)【発明者】
【氏名】秋岡 貴生
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-533341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/06
A61M 25/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤ又はカテーテル等の線状に形成された導入部材が挿通される主管通路部を長手方向に有する主管部及び前記主管部から側方方向に延びた側管通路部を有する側管部を備えたY型コネクタにおいて、
Y型コネクタ本体部の素材よりも摺動性の高い素材で作製された摺動部材が前記側管通路部の内面に露出する位置及び、主管通路部と側管通路部とを跨ぐ位置にのみインサートされていることを特徴とするY型コネクタ。
【請求項2】
前記摺動部材は、前記側管通路部の基端側の内面に配置される側管通路形成部と、前記主管通路部の前記側管部の側に配置される主管通路形成部と、を備えており、
前記側管通路形成部と前記主管通路形成部との境界が湾曲面で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のY型コネクタ。
【請求項3】
前記摺動部材は、前記側管通路形成部及び前記主管通路形成部がそれぞれ前記側管通路部及び前記主管通路部と同様の曲率を有する断面弧状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のY型コネクタ。
【請求項4】
前記摺動部材は、前記主管部に固定される固定用リング部を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のY型コネクタ。
【請求項5】
前記摺動部材は、前記側管通路形成部の背面の一部又は全部に、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等の弾性材料が設けられていることを特徴とする請求項2又は3のいずれか1項に記載のY型コネクタ。
【請求項6】
前記側管部の一部又は全部は、可撓性を有することを特徴とする請求項2、3又は5のいずれか1項に記載のY型コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Y型コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガイドワイヤやカテーテルを挿入したり又は引いたりする操作を容易にするために、Y型コネクタが使用されている。Y型コネクタとしては、カテーテルを通す筒状のメインブランチから、液剤注入用である筒状のサブブランチが分岐したYコネクタにおいて、メインブランチの内部に、筒状で長手方向の圧縮により孔の径が縮小し、当該孔に通されたカテーテルを固定する固定弁を設けるとともに、カテーテルの通過を包み込み状態で許容し、血液の流出を防止可能な第1止血弁及び第2止血弁を設け、更に、メインブランチの基端側に、長手方向に移動可能な筒状のオープナーを設けるとともに、第1止血弁のみを、オープナーの移動範囲内に配置したものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、かかるY型コネクタは、サブブランチ側からガイドワイヤやカテーテルを挿入した場合に、ガイドワイヤやカテーテルがメインブランチに合流する部位で急激に湾曲するため、ガイドワイヤやカテーテルを抜き差しする際に大きな抵抗となり、抜き差ししづらくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-261759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ガイドワイヤ又はカテーテル等の線状に形成された導入部材が挿通される主管通路部を長手方向に有する主管部及び主管部から側方方向に延びた側管部を有するY型コネクタにおいて、側管部からカテーテルやガイドワイヤを挿入した場合であっても、抵抗が小さく、スムーズに抜き差しを行うことができるY型コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明にかかるY型コネクタは、
ガイドワイヤ又はカテーテル等の線状に形成された導入部材が挿通される主管通路部を長手方向に有する主管部及び前記主管部から側方方向に延びた側管通路部を有する側管部を備えたY型コネクタにおいて、
Y型コネクタ本体部の素材よりも摺動性の高い素材で作製された摺動部材が少なくとも前記側管通路部の内面に露出するようにインサートされていることを特徴とする。
【0008】
主管部と側管部とを有するY型コネクタにおいて、側管部から手術用のガイドワイヤ又はカテーテル等の長尺の導入部材を挿入した後に、これらを引き抜く際に導入部材が最も接触しやすく、抵抗となりやすい部位である側管通路部の内面に露出するようにY型コネクタ本体部よりも摺動性の高い素材で作製された摺動部材をインサートすることで、導入部材が接触した場合の摺動抵抗を低減し、スムーズに抜き出すことをできるようにしたものである。
【0009】
また、本発明にかかるY型コネクタにおいて、前記摺動部材は、前記側管通路部の基端側の内面に配置される側管通路形成部と、前記主管通路部の前記側管部の側に配置される主管通路形成部と、を備えており、前記側管通路形成部と前記主管通路形成部との境界が湾曲面で形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0010】
摺動部材に側管通路形成部と主管通路形成部とを設け、主管と側管の合流部にも摺動部材が設けられるようにするとともに、その境界を湾曲面で形成することによって、導入部材に対して摺動部材の鋭角部分が当接することが防止でき、導入部材と摺動部材の摺動抵抗を小さくしてよりスムーズに導入部材を抜き出すことができるようになる。
【0011】
さらに、本発明にかかるY型コネクタにおいて、前記摺動部材は、前記側管通路形成部及び前記主管通路形成部がそれぞれ前記側管通路部及び前記主管通路部と同様の曲率を有する断面弧状に形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0012】
かかる構成を採用することによって、側管通路部及び主管通路部において、摺動部材とY型コネクタ本体部との間に段差が発生することが防止され、導入部材を抜き差しする際に抵抗が発生することを防止することができる。
【0013】
さらに、本発明にかかるY型コネクタにおいて、前記摺動部材は、前記主管部に固定される固定用リング部を備えていることを特徴とするものであってもよい。
【0014】
かかるリング部を設けることによって、摺動部材が主管に対して長手方向及び外周への放射方向への移動が防止される。そのため、摺動部材とY型コネクタ本体部との素材が互いに相溶性を有しない素材であっても、摺動部材は、Y型コネクタ本体部にしっかりと固定することができる。
【0015】
さらに、本発明にかかるY型コネクタにおいて、前記摺動部材は、前記側管通路形成部の背面の一部又は全部に、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等の弾性材料が設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0016】
摺動部材の側管通路形成部の背面に弾性材料を設けることによって、側管部側から挿入された導入部材を引き抜く際に、導入部材から摺動部材に加わる押圧力を吸収することができる。そのためよりスムーズに導入部材を引き抜くことが可能になる。
【0017】
さらに、本発明にかかるY型コネクタにおいて、前記側管部の一部又は全部は、可撓性を有することを特徴とするものであってもよい。
【0018】
側管部が可撓性を有することによって、側管部側から挿入された導入部材を引き抜く際に、導入部材から摺動部材に加わる押圧力により側管部がたわむため、導入部材から摺動部材に加わる押圧力を吸収することができよりスムーズに導入部材を引き抜くことが可能になる。
【0019】
さらに、本発明にかかるY型コネクタにおいて、
ガイドワイヤ又はカテーテル等の線状に形成された導入部材が挿通される主管通路部を長手方向に有する主管部及び前記主管部から側方方向に延びた側管通路部を有する側管部を備えたY型コネクタにおいて、
少なくとも前記側管通路部の内面に、Y型コネクタ本体部の素材よりも摺動性の高いコーティングがされていることを特徴とする。
【0020】
本発明は、摺動部材をインサートするのに代えて、側管通路部にY型コネクタ本体部よりも摺動性高いコーティング剤をコーティングしたものである。かかる構成を採用することによっても、側管通路部の摺動性を高めることができ、スムーズに導入部材を引き抜くことが可能になる。
【0021】
また、本発明にかかるY型コネクタにおいて、さらに、前記主管通路部と前記側管通路部の合流部に、Y型コネクタ本体部の素材よりも摺動性の高いコーティングがされていることを特徴とするものであってもよい。
【0022】
側管通路部に加えて、主管と側管の合流部にも摺動部材が設けられるようにすることによって、合流部に導入部材が当接した場合でも摺動性を高めることができ、スムーズに導入部材を引き抜くことが可能になる。
【0023】
さらに、本発明にかかるY型コネクタにおいて、前記側管部の内面の一部又は全部は、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等の弾性材料が設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0024】
前記側管部の内面の一部又は全部に、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等の弾性材料が設けることによって、側管部側から挿入された導入部材を引き抜く際に、導入部材から加わる押圧力を弾性材料で吸収することができる。そのため、よりスムーズに導入部材を引き抜くことができる。
【0025】
さらに、本発明にかかるY型コネクタにおいて、前記側管部の一部又は全部は、可撓性を有することを特徴とするものであってもよい。
【0026】
側管部が可撓性を有することによって、側管部側から挿入された導入部材を引き抜く際に、導入部材から摺動部材に加わる押圧力で側管部がたわみ押圧力を吸収するため、よりスムーズに導入部材を引き抜くことが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかるY型コネクタによれば、ガイドワイヤ又はカテーテル等の導入部材を側管部側から挿入した場合に、導入部材を引き抜く際に当接する部位が高い摺動性を有するので、抵抗がなくスムーズな引き抜きを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、第1実施形態にかかるY型コネクタ100の斜視図である。
図2図2は、第1実施形態にかかるY型コネクタ100の正面図である。
図3図3は、第1実施形態にかかるY型コネクタ100の断面図である。
図4図4は、第1実施形態にかかる摺動部材20の斜視図である。
図5図5は、第2実施形態にかかるY型コネクタ100の断面図である。
図6図6は、第2実施形態にかかる摺動部材20の斜視図である。
図7図7は、第1実施形態にかかるY型コネクタ100の別実施形態を示す断面図である。
図8図8は、第1実施形態にかかるY型コネクタ100のさらなる別実施形態を示す断面図である。
図9図9は、第1実施形態にかかるY型コネクタ100のさらなる別実施形態を示す断面図である。
図10図10A及び図10Bは、実施形態にかかるY型コネクタ100の止血弁50を示す斜視図であり、図10Cは断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明にかかるY型コネクタ100の実施形態について、図を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。なお、説明の便宜のため、特許請求の範囲及び明細書において、「基端側」及び「先端側」とは、Y型コネクタ100に対して、図1に示す上方側(手元側)を「基端側」といい、下方側(遠位端側)を「先端側」という。
【0030】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかるY型コネクタ100は、図1図3に示すように、主として主管部11及び側管部12とを有するY型コネクタ本体部10と、Y型コネクタ本体部10の基端側に取付けられる固定部材30と、プッシャー40と、スクリューキャップ60と、を備えている。
【0031】
Y型コネクタ本体部10は、図1又は図3に示すように、基端側から先端側まで長手方向に延びた主管部11とこの主管部11の中位から側方方向へ延びた側管部12とを有する。主管部11は、図3に示すように、ガイドワイヤ又はカテーテル等の細長い線状の導入部材90が挿通される長手方向に貫通した主管通路部11aを有しており、基端側は、固定部材30が収納されている。側管部12は、図3に示すように、側管部12の端部から主管通路部11aに連通する側管通路部12bが設けられており、薬液や造影剤等を注入したり、主管通路部11aとは別に、ガイドワイヤやカテーテル等の導入部材90を挿入したりする際に使用される。側管部12の端部には、図2に示すように、薬剤注入器等の取付器具が接続可能となるようにねじ溝12aが設けられている。
【0032】
固定部材30は、図3に示すように、比較的長い時間、導入部材90を強く固定するために使用されるものであり、導入部材90を周囲から押し付けることによって固定することができる。固定部材30は、エラストマー、ゴム、シリコン等で作製され、基端側から先端側まで導入部材90が挿通される貫通孔31が形成された筒状に形成されている。固定部材30は、後述するプッシャー40によって上方から押し付けられることによって貫通孔31が狭くなり、導入部材90を締め付けて固定することができる。
【0033】
プッシャー40は、固定部材30を上方から押圧することによって固定部材30を介して導入部材90を締め付けるものである。プッシャー40は、スクリューキャップ60にねじによって固定されており、スクリューキャップ60のY型コネクタ本体部10に対する上下に伴って同様に上下に移動する。プッシャー40を押し下げることによって上述したように、固定部材30を押し付けて貫通孔31を狭くすることで導入部材90を固定することができる。
【0034】
スクリューキャップ60は、固定部材30及びプッシャー40をY型コネクタ本体部10に収納するための蓋部材としての機能を有するとともに、プッシャー40の位置を本体の長手方向(上下方向)に対して調整する機能を有する。スクリューキャップ60は、Y型コネクタ本体部10の基端側の外周に形成されたねじ山と係合可能なねじ山が内周に形成された筒状の部材であり、回転させることにより、プッシャー40を押し下げたり、引き上げたりすることができる。このスクリューキャップ60を締め付けることで、プッシャー40を押し下げて、上述したように導入部材90を締め付けて固定することができる。スクリューキャップ60には、導入部材90を挿通するための導入部材用孔63が設けられている。
【0035】
さらに、Y型コネクタ本体部10の先端には、任意にローテーター95を設けても良い。ローテーター95は、図3に示すように、導入部材90が挿通される基端側と先端側が貫通した貫通孔95aと、その周囲に形成された円形溝95bとを有している。この円形溝95bには、ガイディングカテーテルその他のカテーテルを接続することができる。
【0036】
本発明は、図3に示すように、Y型コネクタ本体部10の側管通路部12bの内部に摺動部材20が挿入されている。摺動部材20は、Y型コネクタ本体部10の素材よりも摺動性の高い素材、すなわち、低摩擦係数を有する樹脂素材が使用される。使用される素材としては、例えば、ポリアセタール、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。摺動部材20は、側管通路部12bから挿入されたガイドワイヤやマイクロカテーテル等の導入部材90を引き抜く際に、特に当接しやすい部分である部位、すなわち、少なくとも側管通路部12bの内面のうち、特に先端側の面に配置されるように設置される。好ましくは、第1実施形態の図3に示すように、主管通路部11aと側管通路部12bとの合流部αの近傍に、合流部αに導入部材90が当接することを防止できるように、側管通路部12bの内面から突出するように設けることが好ましい。さらに、側管通路部12bの先端側の底面側に側管通路部12bの長さに対して、3分の2以上の長さとなるように設けるとよい。なぜなら、導入部材90を引き抜く際には、側管通路部12bの3分の2以内の長さの位置においても導入部材90との接触部βが形成されることが多いからである。第1実施形態においては、摺動部材20は、図4に示すように、断面が略半円形の長尺部材で作製されている。
【0037】
こうして作製された摺動部材20は、側管部12の端部から挿入することによって、Y型コネクタ100の側管通路部12bの内部に取り付けられる。なお、摺動部材20は、インサート成形により一体に成形してもよい。
【0038】
こうして作製されたY型コネクタ100は、側管部側から挿入された導入部材90を引き抜く際に摺動部材20に当接しつつ引き抜かれる。このため、導入部材90を引き抜く際に、摺動抵抗が小さくスムーズに抜き出すことが可能になる。また、側管通路部12bの先端側の底面側に側管通路部12bの長さに対して、3分の2以上の長さとなるように設ければ、導入部材90と当接する部位がすべて摺動部材20に当接するようになるため、より摺動抵抗が小さくなり、スムーズに導入部材を引き抜くことができる。
【0039】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかるY型コネクタ100の断面図が図5に示されている。第2実施形態にかかるY型コネクタ100が、主として主管部11及び側管部12とを有するY型コネクタ本体部10と、Y型コネクタ本体部10の基端側に取付けられる固定部材30と、プッシャー40と、スクリューキャップ60と、を備えている点は、第1実施形態と同様である。これらの構成は、第1実施形態とほぼ同様であるので、説明を省略する。
【0040】
第2実施形態にかかるY型コネクタ本体部10の内部に、主管通路部11aと側管通路部12bとの合流部αを含むように、摺動部材20がインサートされている。摺動部材20は、第1実施形態と同様に、Y型コネクタ本体部10の素材よりも摺動性の高い素材、すなわち、低摩擦係数を有する樹脂素材が使用される。使用される素材としては、例えば、ポリアセタール、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。摺動部材20は、側管通路部12bから挿入されたガイドワイヤやマイクロカテーテル等の導入部材90を引き抜く際に、特に当接しやすい部分である部位、すなわち、少なくとも主管通路部11aと側管通路部12bとの合流部αにおいて、先端側の内面が側管通路部12bに露出するように配置される。このように、主管通路部11aと側管通路部12bとを跨ぐように摺動部材20を作製することによって、第1実施形態のように、側管通路部12bの内面から突出するように設けて側管通路部12bに段差が設けられることを防止できる。好ましくは、図5に示すように、主管通路部11aと側管通路部12bとの合流部αに加えて、側管通路部12bの先端側の底面側に側管通路部12bの長さに対して、3分の2以上の長さとなるように設けるとよい。なぜなら、導入部材90を引き抜く際には、主管通路部11aと側管通路部12bとの合流部αに加えて、側管通路部12bにおいても導入部材90との接触部βが形成されることが多いからである。第1実施形態においては、摺動部材20は、図6に示すように、側管通路部12bの先端側の内面を形成する側管通路形成部21と、主管通路部11aの側管部12側の内面を形成する主管通路形成部22とを有する。側管通路形成部21及び主管通路形成部22は、側管通路部12bの内面の内径と同様の曲率を有する断面弧状に形成されている。側管通路形成部21と主管通路形成部22との境界αは、図5に示すように、なめらかな曲面となるように湾曲して形成されている。また、側管通路形成部21には、側管通路部12bで位置を固定するために側管部12に固定される側管通路用リング部23が形成されている。さらに、側管通路形成部21から側管通路用リング部23を介して主管部11に固定される固定用リング部24aと、主管通路形成部22から主管通路部11aに固定するための固定用リング部24bが形成されている。また、摺動部材20には、インジェクションの金型に設けられる可動ピン(図示しない。)を固定することができるように、固定用孔25が複数形成されている。この固定用孔25の位置は特に限定するものではなく、適宜選択して形成することができる。
【0041】
こうして作製された摺動部材20は、金型内に設けられる可動ピンに固定用孔25を利用してインサートとしてセットされた状態でY型コネクタ本体部10の樹脂を流し込んで成形することにより作製される。その後、可動ピンにより作製される固定用孔25と連通するY型コネクタ本体部10の成形孔18に接着剤又は樹脂等の埋設用部材を封入してY型コネクタ100が完成する。
【0042】
こうして作製されたY型コネクタ100は、側管部側から挿入された導入部材90を引き抜く際に摺動部材20に当接しつつ引き抜かれる。特に、側管通路形成部21と主管通路形成部22との境界付近が最も強く押圧され、かつ摺動する可能性が高いが、この部位には必ず摺動部材20が存在するので、導入部材90は抵抗が小さくスムーズに抜き出すことが可能になる。また、側管通路部12bの先端側の底面側に側管通路部12bの長さに対して、3分の2以上の長さとなるように設ければ、導入部材90と当接する部位がすべて摺動部材20に当接するようになるため、より摺動抵抗が小さくなり、スムーズに導入部材を引き抜くことができる。また、摺動部材20は、側管通路用リング部23及び固定用リング部24a、固定用リング部24bでY型コネクタ本体部10に固定されている。これにより、摺動部材20は、主管通路部11aの長手方向及び放射方向への移動が防止される。そのため、Y型コネクタ本体部10と、相溶性の低い樹脂で摺動部材20を作製した場合であっても、摺動部材20をY型コネクタ100に対して確実に固定することができる。さらに、成形孔18に埋設部材を封入することによっても摺動部材20がY型コネクタ100に対して移動することが低減される。
【0043】
なお、上述した第1実施形態及び第2実施形態においては、摺動部材20のみをY型コネクタ本体部10にインサートしたが、図7に示すように、摺動部材20の背面側(Y型コネクタ本体部10と摺動部材20との間に挟まれるように)にシリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等の弾性材料28を設けても良い。このような弾性材料28を設けることによって、導入部材90を引く抜く際に摺動部材20を押圧する力を吸収することができ、よりスムーズに導入部材90を引き抜くことができる。
【0044】
さらに、上述した第1実施形態及び第2実施形態における側管部12を、図8に示すように、湾曲可能となるように形成してもよい。例えば、摺動部材20の側管部12の一部をポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオキシメチレン等の弾性力を有する弾性樹脂、ウレタン塩化ビニル等の軟質の素材をチューブ状に作製した湾曲用部材26を摺動部材20と接合して、インサートする方法が考えられる。この際には、図8に示すように、湾曲用部材26の一部が外部に露出して形成しても構わない。なお、この湾曲用部材26の内面側に摺動部材20を設けても良い。このように、側管部12に可撓性を設けることによって、導入部材90を引き抜く際に、側管通路部12bに導入部材90が当接して押圧した場合に、側管部12のしなりによって押圧力を吸収でき、よりスムーズに導入部材90を引き抜くことができる。
【0045】
なお、上述した第1実施形態及び第2実施形態において、図9に示すように、止血弁50と、押子70と、を備えているY型コネクタ100を使用してもよい。
【0046】
止血弁50は、導入部材90を挿入又は抜き取りするために固定部材30の固定を開放した際に、血液が逆流することを防止するためと、主管通路部11aに導入された導入部材90を短期間固定して、随時、導入部材90を出し入れする場合に導入部材90への締め付けを調整して導入部材90の出し入れをしやすくするための部材である。止血弁50は、図10Aに示すように、全体が薄い円盤状に形成されており、導入部材90が挿入される部位の基端側の面には、中心から徐々に厚くなるように凹状に形成された止血弁凹部51が形成されている。止血弁凹部51は、図10Cに示すように、少なくとも止血弁50の最も薄い部分δが止血弁50の最も厚い部分γの厚さの1/2以下の厚さとなるように円錐状又は球面状に形成される。より好ましくは1/3以下の厚さとなるように設けることが好ましい。これにより、中心から周囲方向にいくに従って止血弁50の弁が厚くなるように形成されるため、細いガイドワイヤのように剛性が低く挿入力が弱い場合には、中心の薄い部分から挿入させることができ、カテーテルのように剛性が比較的高く挿入力が強い場合には、ある程度厚みがある場所でも問題なく挿入させることができ、挿入させる部材の太さによって通過性を確保させつつ、止血性能を向上させることができる。止血弁50は、図10Bに示すように、さらに、中心から放射方向に複数のスリット52が形成されている。好ましくは、基端側から途中まで切り込みを入れた上側スリット52aと、下端側から途中まで切り込みを入れた下側スリット52bがねじれの位置となるように配置するとよい。この切り込みによって中心に導入部材90が挿通可能な挿通部55が設けられる。なお、スリット52の数は特に限定するものではない。こうして作製された止血弁50は、プッシャー40の上段に配置される。
【0047】
止血弁50は、後述する押子70によって押されることによって挿通部55が広がり、導入部材90の抜き差しの摩擦力が弱くなり、又は摩擦力をなくして導入部材90を挿通しやすくすることができるように作製されていれば、上述した構成に限定されるものではない。
【0048】
押子70は、図9に示すように、基端側に円盤部71を有し、この円盤部71からスクリューキャップ60内に延設された延設部72を有している。押子70の中心には、導入部材90を挿通可能な導入部材挿通孔76が設けられている。この押子70は、スクリューキャップ60に対して長手方向に移動可能に設けられており、押子70を押すと、延設部72の先端は、止血弁50を押圧して止血弁50の挿通部55を広くすることができる。すなわち、止血弁50の挿通部55を開くことにより、導入部材90を挿入しやすくしたり、固定されている主管通路部11aに挿入された導入部材90を開放して、挿入したり、引き出したりしやすくすることができる。
【0049】
(第3実施形態)
第3実施形態にかかるY型コネクタ100は、少なくとも主管通路部11aと側管通路部12bとの合流部に摺動部材20をインサートするのに代えて、摺動性を付与する材料である二硫化モリブデン、グラファイト、ポリテトラフルオロエチレン等の潤滑コーティング剤をコーティングしたものである。なお、第3実施形態は、図面上、摺動部材20がなくなるだけの違いとなるので、上述した実施形態と同様の符号を付して説明する。
【0050】
かかる構成を採用することによっても、導入部材90を引き抜く際に主管通路部11aと側管通路部12bとの合流部に摺動性が付与されるので、スムーズに導入部材90を引き抜くことができる。
【0051】
なお、潤滑コーティング剤をコーティングするにあたって、主管通路部11aと側管通路部12bとの合流部に加えて、側管通路部12bの先端側の底面側に側管通路部12bの長さに対して、3分の2以上の長さとなるようにコーティングしてもよい。
【0052】
また、側管部12の側管通路部12bの内側をシリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等の弾性材料で作製し、導入部材90を引く抜く際に摺動部材20を押圧する力を吸収するようにしてもよい。かかる構成を採用することよりスムーズに導入部材90を引き抜くことができる。また、側管部12の部分をポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオキシメチレン等の弾性力を有する弾性樹脂、ウレタン塩化ビニル等の軟質の素材をチューブ状に作製してもよい。このように、側管部12に可撓性を設けることによって、導入部材90を引き抜く際に、側管通路部12bに導入部材90が当接して押圧した場合に、側管部12のしなりによって押圧力を吸収でき、よりスムーズに導入部材90を引き抜くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
上述した実施の形態で示すように、ガイドワイヤやカテーテルによる手術における補助具として利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10…Y型コネクタ本体部、11…主管部、11a…主管通路部、12…側管部、12a…ねじ溝、12b…側管通路部、18…成形孔、20…摺動部材、21…側管通路形成部、22…主管通路形成部、23…側管通路用リング部、24a…固定用リング部、24b…固定用リング部、25…固定用孔、26…湾曲用部材、28…弾性材料、30…固定部材、31…貫通孔、40…プッシャー、50…止血弁、51…止血弁凹部、52…スリット、52a…上側スリット、52b…下側スリット、55…挿通部、60…スクリューキャップ、63…導入部材用孔、70…押子、71…円盤部、72…延設部、76…導入部材挿通孔、90…導入部材、95…ローテーター、95a…貫通孔、95b…円形溝、100…Y型コネクタ
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9
図10