(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】育苗機
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20231208BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
A01G9/02 D
A01G7/00 601A
A01G7/00 601Z
(21)【出願番号】P 2020004966
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】391028100
【氏名又は名称】株式会社内山商会
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】内山 隆
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/047024(WO,A1)
【文献】特開2018-023336(JP,A)
【文献】特開2012-125196(JP,A)
【文献】特開2017-163874(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047186(WO,A1)
【文献】特開2019-041694(JP,A)
【文献】特開2004-024253(JP,A)
【文献】特開2015-149968(JP,A)
【文献】国際公開第2005/000005(WO,A1)
【文献】特開2013-250028(JP,A)
【文献】特許第6056929(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/08
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右側面と上面及び背面と開閉可能な扉で形成された前面とを有して平面視方形状に形成された本体と、該本体の内部に水平状態で配設された栽培トレーと、該栽培トレーの上方の所定位置に配設されたLED照明装置及び通風装置と、前記栽培トレー内に水を供給可能な灌水装置と、を備え、
前記通風装置は、通風方向が互いに異なる複数のファンを有し、各ファンから前記栽培トレーの栽培面の上方に所定方向の微風を通風して、前記栽培トレーで育苗された苗に付着した水分を除去すると同時に前記本体内の温度の均一化が可能に構成され
、且つ、前記ファンと前記栽培トレーとの間に、前記ファンから通風される微風の通風状態を制御して前記栽培トレーの栽培面の全域に均一な通風を可能にする通風制御手段が設けられ、当該通風制御手段は、多数の通風制御孔が所定形態で形成されたパンチング板で構成されていることを特徴とする育苗機。
【請求項2】
前記通風装置は、前記各ファンの通風方向を前記栽培トレーの栽培面と略平行な方向で互いに異ならせることにより、前記栽培トレー上に微風の流れが生成されることを特徴とする請求項1に記載の育苗機。
【請求項3】
前記通風装置は、前記各ファンの通風方向を前記栽培トレーの栽培面と略対向する方向でその位置を互いに異ならせることにより、前記栽培トレー上に微風の流れが生成されることを特徴とする請求項1に記載の育苗機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な野菜栽培農家等において野菜の苗を種から育て、育てた苗を自らの畑に移植して栽培したり、あるいは苗を道の駅等に納品して販売する際等に使用され、特に育苗時に最適な通風状態が得られる育苗機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜の苗を育てる栽培装置は、例えば特許文献1に開示されている。この栽培装置は、密閉空間を構成する建物構造物と、この建物構造物の天井部に設置された空調装置と、建物構造物内に設置された箱形の複数個の多段棚式植物育成装置(育成モジュール)等を備え、空調装置の吹出口や育成モジュールの位置関係により、建物構造物内の各育成モジュールの環境を均一にして、苗を栽培するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような栽培装置にあっては、内部の空調が管理された建物構造物が必要であったり大掛かり空調装置も必要となり、栽培装置自体が極めて大型かつ複雑となって、一般農家等で使用することは困難である。そこで、一般的な農家において野菜苗を育成する場合、栽培ポットや育苗用のトレー等を温室内等に設置して、種蒔き(播種)や水やり等の苗の発芽から育成までの各種作業を人手によって行っている。
【0005】
そのため、このような育苗方法では、安定かつ均一した品質の苗を短期間に育てて、自ら野菜を栽培したり育てた苗を販売すること等が困難であると共に、例えば昨今多発している台風の風雨や集中豪雨の大雨等の自然災害により、育苗して移植した苗や栽培途中の野菜が被害を被った場合には、その災害自体によって農家が大きな経済的被害を被る上、苗を再び育成することに時間が掛かること等から、農家の経済的被害が一層拡大することにもなり、その対策が望まれているのが実情である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、苗に付着する水分等を効果的に除去可能な通風装置を備えて一般農家でも容易に設置でき、育苗作業の自動化が図れ作業の能率向上を図りつつ地域の環境に適応できる丈夫な苗を短期間に育成し得ると共に、自然災害発生時等にも容易に対応可能な育苗機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、左右側面と上面及び背面と開閉可能な扉で形成された前面とを有して平面視方形状に形成された本体と、該本体の内部に水平状態で配設された栽培トレーと、該栽培トレーの上方の所定位置に配設されたLED照明装置及び通風装置と、前記栽培トレー内に水を供給可能な灌水装置と、を備え、前記通風装置は、通風方向が互いに異なる複数のファンを有し、各ファンから前記栽培トレーの栽培面の上方に所定方向の微風を通風して、前記栽培トレーで育苗された苗に付着した水分を除去すると同時に前記本体内の温度の均一化が可能に構成され、且つ、前記ファンと前記栽培トレーとの間に、前記ファンから通風される微風の通風状態を制御して前記栽培トレーの栽培面の全域に均一な通風を可能にする通風制御手段が設けられ、当該通風制御手段は、多数の通風制御孔が所定形態で形成されたパンチング板で構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記通風装置が、前記各ファンの通風方向を前記栽培トレーの栽培面と略平行な方向で互いに異ならせることにより、前記栽培トレー上に微風の流れが生成されることを特徴とする。また、請求項3に記載の発明は、前記通風装置が、前記各ファンの通風方向を前記栽培トレーの栽培面と略対向する方向でその位置を互いに異ならせることにより、前記栽培トレー上に微風の流れが生成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、栽培トレーの上方に配設された通風装置が、通風方向を互いに異ならせた複数のファンを有し、各ファンから栽培トレーの栽培面の上方に所定方向の微風を通風して、栽培トレーで育苗された苗に付着した水分を除去すると同時に本体内の温度の均一化が可能に構成されているため、育苗時に苗に付着する水分等を通風装置で効果的に除去可能な育苗機が得られて一般農家でも容易に設置でき、育苗作業の自動化が図れ作業の能率向上を図りつつ地域の環境に適応できる丈夫な苗を短期間に育成し得ると共に、自然災害発生時等にも容易に対応することができる。
また、ファンと栽培トレーとの間に、ファンから通風される微風の通風状態を制御して栽培トレーの全域に均一な通風を可能にする通風制御手段が設けられているため、ファンによる通風の栽培トレーの栽培面の特定位置への集中を抑制できて、微風を栽培面の全域に均一に通風できて、苗の生育状態の均一化を図ることができる。
特に、通風制御手段が、多数の通風制御孔が所定形態で形成されたパンチング板で構成されているため、パンチング板をファンと対向する所定位置に配設することで、栽培トレーの栽培面全域に均一な微風を通風することができ、苗の生育状態の一層の均一化を図ることができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、通風装置が、その各ファンの通風方向を栽培トレーの栽培面と略平行な方向で互いに異ならせることにより、栽培トレー上に微風の流れが生成されるため、例えば一対のファンを栽培トレーの対向する両側にその通風方向を異ならせて配設することにより、栽培トレーの栽培面上に微風の流れが生成され、育苗される苗の葉に付着した水分等を効果的に除去できて、苗の病気の発生等を防止することができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、通風装置が、その各ファンの通風方向を栽培トレーの栽培面に略対向する方向でその位置を互いに異ならせることにより、栽培トレー上に微風の流れが生成されるため、例えば一対のファンを栽培トレーの栽培面の両端側等の異なる位置に向けて上方から通風可能に配設することにより、栽培トレーの栽培面上に微風の流れが生成され、育苗される苗の葉に付着した水分等を効果的に除去できて、苗の病気の発生等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係わる育苗機の一実施形態を示す概略正面図
【
図6】同栽培トレーを示す(a)が平面図、(b)が(a)のA-A断面図
【
図8】同通風装置を示す(a)が概略正面図、(b)がその概略平面図
【
図9】同通風装置の他の例を示す(a)が概略正面図、(b)がその概略平面図
【
図10】本発明に係わる育苗機の他の実施形態を示す概略正面図
【
図12】同栽培トレーを示す(a)が平面図、(b)が(a)のB-B断面図、(c)が(a)のC-C断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1~
図9は、本発明に係わる育苗機の一実施形態を示している。
図1~
図3に示すように、育苗機1は、左右側面2a、背面2b、前面2c、上面2dを有する本体2と、この本体2内の上部に水平状態で配設された2段の栽培トレー3と、この各栽培トレー3の上方にそれぞれ配置されたLED照明装置4と、前記栽培トレー3に水を供給可能な灌水装置5と、前記本体2の例えば右側面2aに配設された制御ボックス6と、前記栽培トレー3上もしくはその近傍に配設された通風装置19(
図4参照)等を備えている。
【0017】
前記本体2は、アルミの角パイプを縦横方向に格子状にボルト固定もしくは溶接固定することで平面視長方形状の枠組み形状に形成され、その左右側面2aと背面2b及び上面2dには内面が白色の塩ビ板がそれぞれ取り付けられている。なお、上面2dの塩ビ板は、本体2の上面2dに固定されずに載置された状態となって本体2に着脱可能、すなわち本体2の上面2dが開放可能となっている。
【0018】
また、本体2の前面2cには、2枚の扉2c1が観音開き状に配設され、この一対の扉2c1も前述した左右側面2aや上面2d等と同様に内面が白色の塩ビ板で形成されると共に、反回転軸側の前面端部には把手2c2がそれぞれ取り付けられている。なお、この一対の扉2c1は、閉じた際に開放側端部が図示しない磁石等により本体2の前面2aに吸着状態とされて前面2cの略閉塞状態が維持されるようになっている。これにより、本体2の左右側面2a、背面2b、前面2c及び上面2dは、その各内面が白色となって光の反射機能を有している。
【0019】
そして、この本体2内に配設される各栽培トレー3の長手方向(
図1で左右方向)の一端部側には、当該各栽培トレー3と後述する灌水装置5のタンク5a等を接続するための配管5cが配置される空間が形成されると共に、最下段となる1段目の栽培トレー3の下方には開放された空間が形成されている。これらの空間により、本体2の内部空間が密閉されずに外気と連通した空間(密閉されない空間という)になっている。なお、本体2の下端部四隅には、キャスター7がそれぞれ着脱可能に配設され、このキャスター7の回転により育苗機1(本体2)が移動可能となっている。
【0020】
前記本体2の所定の角パイプには、
図3に示すように前記栽培トレー3が取り付けられている。この栽培トレー3は、
図6に示すように、内面がゲルコート仕上げで円滑面とされた丈夫なFRP製で平面視長方形状に形成され、その外周縁全域には鍔部3aが一体形成されると共に、その長手方向の一端側には、その前後方向(幅方向)の全域に亘って深さが略同一の凹部3bが一体形成されている。この凹部3bの前後端部側には、例えばφ35mmの給排水口用の孔3b1とφ28mmのオーバーフロー口用の孔3b2が穿設されている。これらの各孔3b1、3b2に後述する如く所定の配管が接続される。
【0021】
また、栽培トレー3の凹部3bに連設する底面3cは、
図6(b)に示すように、その長手方向の一端側(凹部3b側)が他端側より低くなる緩やかな傾斜面で形成されると共に、前記凹部3bの前記各孔3b1、3b2に略対応する位置には、当該トレー3の長手方向に沿って、上面が断面半円弧形状の円滑面からなる2条の凸状3c1が平行状態で一体形成されている。この栽培トレー3は、
図7に示すように、本体2の上部所定位置の横方向の角パイプに設けた固定板9上に、例えば前後(もしくは左右)端部の鍔部3aが載置されるかあるいはボルト等で固定されることで、本体2に着脱可能に配設されている。
【0022】
この栽培トレー3の底面3c上には、
図7に示すように、育苗トレー10とプラグトレー11が収容配置されるようになっている。育苗トレー10は、樹脂成形により高さが例えば35mm程度の平面視長方形状で、外周全域に鍔部が設けられると共に底面には多数の小孔が穿設されている。また、この育苗トレー10内に収容載置されるプラグトレー11は、その外形が前記育苗トレー10の底面上に収容可能な大きさの平面視長方形状に形成され、その高さが例えば40mm程度で、底面に孔が設けられ上面が開口した四角錐もしくは円錐状に形成された多数のポット部(連結ポット)を有している。
【0023】
また、育苗トレー10とプラグトレー11との間には図示しない親水シートが介装配置されている。すなわち育苗トレー10の底面部上にプラグトレー11より大きな親水シートを載置し、この親水シート上にプラグトレー11が載置されている。この親水シートは、毛細作用によって水を汲み上げ、かつ苗の根を通過させない素材であれば良く、例えば紙や布等が使用される。そして、育苗トレー10、親水シート及びプラグトレー11は、これらを一体化した状態で後述する如く、プラグトレー11の各ポット部に播種し、これを本体2の栽培トレー3内に前面側から挿入して底面3c上に収容配置することにより栽培トレー3上にセットされるようになっている。
【0024】
なお、育苗トレー10等は、
図1及び
図2に示すように、各栽培トレー3上にそれぞれ複数個(本実施形態では3個)並列状態で収容配置されており、各栽培トレー3に対する出し入れも、育苗トレー10の前後や左右両側の鍔部を手で持って行うことが可能となっている。また、例えば3個の並列状態でセットされた各育苗トレー10は、栽培トレー3の反凹部3b側に配置されることで、各育苗トレー10の底面が栽培トレー3の凹部3b以外となる底面3c上に位置し、各育苗トレー10の底面間欠灌水が可能となっている。
【0025】
前記LED照明装置4は、前記栽培トレー3の所定高さ上方に、栽培トレー3の長手方向に沿って互いに一定の間隔で配設された複数本(
図2では6本)のLED照明管4aを有している。このLED照明管4aは、少なくとも照射方向が透明なポリカーボネイトで形成され、このLED照明管4aの内部には、LED点灯回路やLED取付用のパターン等が形成された長尺状の基板(図示せず)が配設されている。そして、この基板の前記パターンに所定色のLEDがそれぞれ半田付けされている。
【0026】
このとき、使用するLEDは、野菜の育苗に有効で長寿命かつ省電力の「赤色」と「青混色」の2色(2種類)のLEDが使用され、この2色のLEDが基板の長手方向に沿って、例えば一個ずつ交互にもしくは複数個ずつ交互に一列状態で配設(半田付け)されることにより、野菜苗の育苗に適した混色LED照明光が得られるようになっている。
【0027】
そして、このLED照明装置4は、
図7に示すように、本体2の前記栽培トレー3を支持する角パイプ(下段の栽培トレー3の場合)もしくは本体2の上面2dの角パイプ(最上段の栽培トレー3の場合)の下面側に、ボルト13aとダブルナット13b等により水平状態で固定された照明取付板14に取り付けられている。この照明取付板14には、固定部18bとLED照明管4aの略両側面を挟持する挟持部18aを有する固定板18の固定部18bが固定されることにより、複数本のLED照明管4aが、各栽培トレー3の上方に同一の間隔を有して平行かつ水平状態で配設されている。
【0028】
また、照明取付板14が本体2の角パイプに長尺のボルト13aとダブルナット13bで固定されていることから、ダブルナット13bの位置をボルト13aの長手(上下)方向で調整することにより、照明取付板14の高さ位置が調整されて、LED照明管4aと栽培トレー3間の距離(高さ寸法)、すなわちLED照明光の照射距離が調整できるようになっている。
【0029】
前記灌水装置5は、
図1に示すように、本体2の下端部に配置されたタンク5a及びポンプ5bと、これらと各栽培トレー3とを接続する配管5c等を有している。タンク5aは、所定量(例えば75リットル)の水を貯留可能な樹脂製タンクで形成され、本体2の底面の所定の角パイプ上に取り付けられている。また、ポンプ5bは、タンク5aの側方の角パイプに取り付けられ、例えばマグネットドライブ方式で水陸両用の渦巻きポンプが使用されて、作動時に磁力によりインペラをポンプ室内で回転させて水を吸込み側から吐出側へ送り出すようになっている。
【0030】
そして、
図5に示すように、タンク5aとポンプ5bは、前記配管5cにより前記各栽培トレー3に接続されている。すなわち、タンク5aの一側面の底面側とポンプ5bの吸込口がホース5c1で接続され、ポンプ5bの吐出口はホース5c1により1段目の栽培トレー3に対応したチーズ5c2に接続されている。このチーズ5c2は、塩ビの直管5c3により2段目の栽培トレー3に対応したエルボ5c4に接続されている。なお、チーズ5c2とエルボ5c4は、コンパクトバルブ5c5、ユニオン継手エルボ5c6等を介して各栽培トレー3の給排水口15に接続されている。
【0031】
また、各栽培トレー3の前記オーバーフロー用の孔3b2には、栽培トレー3の凹部3b内に上方に所定寸法(オーバーフロー位置を規定する寸法)突出したオーバーフロー管16の下端がそれぞれ接続されている。このオーバーフロー管16は、その下端が図示しない複数のエルボ、直管及びチーズ等を介してタンク5aの上部に接続されている。
【0032】
なお、前記各栽培トレー3に接続される各配管5cのうち、各栽培トレー3の給排水口15にそれぞれ接続されるエルボ5c4や直管5c3、チーズ5c2等の配管5cを、各栽培トレー3に設けた凹部3aの底面に対して可能な限り低い位置に設定することで、給水用の配管5cを排水用にもできる、すなわち給排水が兼用できるように構成されている。また、タンク5aは、その上面開口部に配設された蓋に、オーバーフロー管16に接続された配管5cの下端と、水道水をタンク5a内に供給する際に使用されるホースや配管(図示せず)の先端とが挿入配置されると共に、タンク5aの底面にはドレインコックを有するドレイン管17が接続されている。
【0033】
この配管5cの構成により、タンク5a内に供給された所定量の水が、ポンプ5bの作動で汲み上げられて各栽培トレー3の給排水口15から各栽培トレー3内にそれぞれ供給(灌水)されると共に、各栽培トレー3からオーバーフローされる水は、各栽培トレー3のオーバーフロー管16と該オーバーフロー管16に接続された配管を介してタンク5a内に戻される。また、所定時間給水が行われて栽培トレー3への灌水が不要となった場合にポンプ5bの作動が停止すると、各栽培トレー3内の水が給排水口15から、給排水用の配管5cやポンプ5bを介してタンク5aに戻される。
【0034】
このときの排水は、栽培トレー3の凹部3b内の水が先ず排出され、次いで栽培トレー3の底面3c上の水がその傾斜面を利用して凹部3bに誘導されつつ、給排水口15から排水される。したがって、例えば3個の育苗トレー10が並列配置されている各栽培トレー3の底面3cの排水(水吐け)が良好に行えて、各育苗トレー10における苗の根腐れ等が防止されることになる。
【0035】
前記通風装置19は、前記本体2内の各栽培トレー3に対応する位置にそれぞれ配設されている。この通風装置19は、
図8(a)に示すように、栽培トレー3の長手方向の両端部の鍔部3a上かもしくは当該鍔部3a近傍の本体2の適宜の角パイプ上に、それぞれL金具19cによって垂直状態で固定されたファン19a、19bを有している。そして、この一対のファン19a、19bは、
図8(b)に示すように、一方のファン19aが栽培トレー3の左端側の鍔部3aの後方側に配置され、他方のファン19bが同栽培トレー3の右端側の鍔部3aの前方側に配置されている。
【0036】
これにより、左右一対のファン19a、19bが栽培トレー3の前後方向においてずれた状態で配置され、各ファン19a、19bからの通風方向(送風方向)が互いに異なり、各ファン19a、19bから通風される微風が、栽培トレー3の長手方向の中央部分で直接衝突しない、つまり、各ファン19a、19bから送風される微風が
図8(b)の略矢印イ、ロのように流れて、栽培トレー3の栽培面上の全域に微風が流れるように設定されている。
【0037】
このとき各ファン19a、19bは、その各軸心の延長線が水平方向でかつ上下方向において互いに平行となるように設定したが、例えば水平方向で互いに接近するように若干傾斜して配設、すなわち各ファン19a、19bを水平方向及び又は上下方向に所定の角度を持たせる等、栽培面上に一層均一な微風が得られる適宜の構成を採用することができる。なお、前記ファン19a、19bは、防湿タイプのACプラペラファンで構成され、栽培トレー3の栽培面上に微風を流すことが可能な回転数で回転可能であると共に、L金具19cに設けられた縦方向の長溝にボルトで固定されることにより、L金具19cの上下方向に位置調整可能となっている。
【0038】
図9は、前記通風装置19の他の例を示している。この例の通風装置19は、一対のファン19a、19bを、栽培トレー3の上方で当該栽培トレー3の前後方向中央に位置する本体2の角パイプ2eの下面に、当該角パイプ2aの長手方向(栽培トレー3の長手方向)の中央部に所定の間隔を有して固定されている。そして、各ファン19a、19bは、その通風方向が栽培トレー3の栽培面方向、つまり栽培面と略対向する方向(
図9(a)の下方)に設定されている。
【0039】
また、各ファン19a、19bの所定距離下方には、通風制御手段としてのパンチング板20が水平状態で配設されている。このパンチング板20は、例えばアルミ板に3mm程度の孔20aを一定の間隔を有して多数穿設することで形成されており、各ファン19a、19bから下方に向けて送風される微風が、
図9(a)の矢印ハ、ニの如く、パンチング板20に衝突・分散されつつ各孔20aを下方に通過して、栽培トレー3の栽培面上に通風されるようになっている。
【0040】
このとき、パンチング板20の孔20aの大きさは板の全域において同一としても良いが、例えば各ファン19a、19bの軸心と対向する中心位置から同心円状に外側に向けて孔20aの内径を大きくする等の形態とし、栽培面上に通風される微風を栽培面の全域に一層均一に通風させるようにしても良い。これらの通風装置19を複数段の栽培トレー3を有する育苗機1に適用することで、育苗トレー10上(プラグトレー11上)に、微風を効果的に通風させることができて、後述するように、育苗される苗の葉等に付着する水分等の除去効果が高められることになる。
【0041】
ところで、野菜等の育苗に使用される通風装置においては、通風が強すぎるとファンに近い所では苗の乾燥が進んで生育が遅くなり、逆に通風が弱すぎるとキャリアとしての能力不足やファンから離れた所での葉面からの蒸散が不足して生育不良の原因となるが、前記各例の通風装置19においては、このような不具合を解消することができる。すなわち、
図8に示す通風装置19の場合は、一対のファン19a、19bの風の一部が交差するように左右に設けていることから、ファン19a、19b直近の風速の影響が防止されると共に、左右からの通風による風の広がりで中央付近では交錯して適度で均一な微風が葉面を流れるようになる。
【0042】
また、
図9に示す通風装置19の場合は、育苗トレー10(プラグトレー11)の上面にパンチング板20を配置し、その上方に一対のファン19a、19bを配置していることから、各ファン19a、19bからの風が直接下方の苗の葉面に当たることがない上面通風方式になると共に、各ファン19a、19bとパンチング板20間の空間で、各ファン19a、19bからの風をパンチング板20で分散拡散させた均一な微風が葉面に通風されるようになる。これらにより、単にファンを所定方向に向けて配置した場合等に比較して、苗の生育にとって効果的な微風の流れが得られることになる。
【0043】
この
図9の通風装置19においては、説明の便宜上、前述したLED照明装置4の図示を省略しているが、このLED照明装置4は、パンチング板20の下方に配設されている。したがって、通風装置19の各ファン19a、19bからの微風は、LED照明装置4の6本のLED照明管4a間の隙間を通過しつつ栽培トレー3の栽培面方向に、すなわち、各ファン19a、19bによる微風が、LED照明管4aの外周面に接触しつつ下方に通風されることになる。
【0044】
なお、
図8に示す通風装置19においては、一対のファン19a、19bを栽培トレー3の長手方向の両端部に配設したが、例えば栽培トレー3の幅方向(前後方向)の両端部に配設しても良いし、この例の各ファン19a、19bの前方に
図8(b)の二点鎖線で示すように、適宜大きさのパンチング板20を垂直状態で配設しても良い。また、
図9に示す通風装置19においては、一対のファン19a、19bを1本の角パイプ2eに所定間隔を有して直線状に配設したが、前後方向にずれた2本の角パイプに長手方向にずれた状態で、すなわち
図8(b)の平面視形状のように配設する等、適宜の形態を採用することもできる。さらに、
図9におけるファン19a、19bとパンチング板20及びLED照明管4aの間隔等の位置関係は、育苗する野菜の種類に応じて予め実験で求めた値に設定することが好ましい。
【0045】
前記制御ボックス6は、
図4に示すように、それぞれデジタルタイマーで構成された照明タイマー21と給水タイマー22及び中継用の端子台23等を有している。照明タイマー21は、端子台23を介して電源としてのAC100Vプラグ24に接続されると共に、適宜形状のコネクタ25やプラグ26等を介してLED照明装置4の各LED照明管4aに接続されている。また、給水タイマー22は、端子台23を介してAC100Vプラグ24に接続されると共に、コネクタ25やプラグ26等を介してポンプ5bに接続されている。さらに、前記通風装置19の各ファン19も、コネクタ25やプラグ26、端子台23等を介してAC100Vプラグ24に接続されている。つまり、照明装置4やポンプ5b及び通風装置19等は、AC100Vの商用電源で動作可能となっている。
【0046】
次に、このような育苗機1を使用した野菜の栽培方法の一例について説明する。先ず、前記育苗機1は、農家に搬入された場合に、その下端四隅に設けたキャスター7を利用して、商用AC100V電源が使用可能な倉庫内や温室内に移動させ、必要に応じ設置場所でキャスター7を取り外して育苗機1の高さを低くするか、キャスター7のストッパーを作動させその回転を禁止した状態で設置する。
【0047】
そして、育苗トレー10上に親水シートを介して載置されたプラグトレー11の各ポット部に播種する。この播種は、育苗しようとする野菜の種と培土を準備する。このときの培土としては、市販されているピートモス等の培土をそのまま使用しても良いが、市販されている培土に例えば窒素、リン酸、カリウム等の肥料を所定量混合させた育苗専用培土を使用することが好ましい。この育苗専用培土をプラグトレー11の各ポット部に所定量収容しつつ、この培土内に1個もしくは複数個の種を所定深さ位置に手動もしくは自動で播種する。
【0048】
そして、播種が終了したプラグトレー11を育苗トレー10や親水シートと一体化した状態で、扉2c1が開放されている育苗機1の前面2c側から、所定の栽培トレー3の凹部3b以外の底面3c上に収容する。このとき、育苗トレー11の後端下面を栽培トレー3の外周縁前端の鍔部3a上に載置して後方側に押すと、育苗トレー11の下面が栽培トレー底面3cの2条の凸状3c1の断面略半円弧形状の円滑な上面に接触しつつスムーズにスライドし、一体化された育苗トレー10とプラグトレー11等を栽培トレー3内に簡単に収容配置することができる。
【0049】
本体2の各栽培トレー3内に一体化された育苗トレー10やプラグトレー11等がセット(収容)されたら、扉2c1を閉じて制御ボックス6に接続されたAC100Vプラグ24を商用AC100Vのコンセントに接続して、各タイマー21、22等を作動させる。照明タイマー21や給水タイマー22が作動すると、各タイマー21、22は育苗する野菜の種類に応じて予め設定してある照明時間や給水時間でオン・オフ作動する。
【0050】
このとき、照明タイマー21は、例えば8時間オン(点灯)で4時間オフ(消灯)を繰り返すように設定される。また、給水タイマー22は、1日1回~3回で1回10分程度の給水時間として、底面間欠灌水方式によりプラグトレー11の底面全域に均一な給水が可能となるように設定される。なお、給水時間は、育苗トレー10の乾燥状態を目視で確認しながら、デジタル式の給水タイマー22の設定時間を必要に応じ調整設定するようにしても良い。
【0051】
また、前記通風装置19の各ファン19a、19bは、育苗機1への電源供給と同時にオン(回転)し、育苗トレー10上に所定量の通風を行って、苗の葉に付着している水分等を除去するように設定される。このときファン19a、19bによる通風は、前述したように、強すぎると苗や培土が乾燥してしまうため、苗の上方の所定位置にそよ風(微風)が流れるように設定される。このそよ風により、例えば「ネギ」の苗の場合はその先端部分があるいは「レタス」の苗の場合はその葉が僅かに揺れて、各苗に付着している水分等が蒸発除去されることになる。
【0052】
なお、ファン19a、19bのL金具19cに対する高さ位置は、育苗する苗の種類に応じて予め設定されている。また、ファン19a、19bの作動は、常時作動に限らず、例えば苗の成長を目視確認して行ったり、別途タイマーを設けて所定のタイミングで作動させることも勿論可能である。さらに、前記LED照明装置4は、その高さ位置を予め育苗する野菜の種類に応じて前述した如く設定することが好ましい。
【0053】
このような育苗中に、栽培トレー3内に供給(灌水)される水が一定量でかつその一日当たりの回数が野菜の種類に応じて適正に設定されているため、給水し過ぎによる根腐れが防止されると共に、育苗トレー10とプラグトレー11間に親水シートが介装されているため、プラグトレー11の底面の孔から下方に延びる苗の根の育苗トレー10内への進入を防止できて、育苗後のプラグトレー11の育苗トレー10からの取り外し作業時に苗の根を傷めること等がなく簡単に行うことができる。
【0054】
そして、育苗された苗の大きさが所定になったら、一体化された育苗トレー10等を前述したセット時と逆の手順で育苗機1から取り出し、次いでプラグトレー11を育苗トレー10から取り出すことで育苗作業が終了し、プラグトレー11の各ポット部内の各苗を例えば温室内の地面に植え付け(移植)できることになる。
【0055】
なお、レタス等の葉物野菜の種を、LED照明装置4のLED照明をPPFD200μmol/m2sとして、照明の点灯・消灯や給水の条件を前述した条件として育苗したところ、播種から2日間程度で全ての種が確実に発芽すると共に育苗期間も約14日で終了し、従来の温室内の地面で育苗する場合に比較して育苗期間が大幅に短縮されると共に、均一で丈夫な苗が得られることが確認されている。その理由は、肥料分を含んだ前述した育苗専用培土を使用していること、底面間欠灌水方式でプラグトレー11の底面全域に均一な給水が可能で生育ムラが出ないこと、専用の2色の混色LED照明光の利用で安定的な育成ができること、通風装置19で適切な通風が行われること等が考えられる。
【0056】
このように、前記育苗機1によれば、栽培トレー3の上方の所定位置に配設された通風装置19が、通風方向が互いに異なる一対のファン19a、19bを有し、各ファン19a、19bから栽培トレー3の栽培面の上方に所定方向の微風を通風させるため、苗に付着する水分等を通風装置19で確実かつ効果的に除去できると共に本体2内(栽培トレー3上方の空間内)の温度を均一化できる育苗機1が得られ、一般農家でも容易に設置できて、育苗作業の自動化が図れ作業の能率向上を図りつつ地域の環境に適応できる丈夫な苗を短期間に育成し得ると共に、自然災害発生時等にも容易に対応することが可能になる。
【0057】
特に、通風方向が一致しない一対のファン19a、19bの配置により、1つのファンを配置した場合等に発生し易い、ファンからの距離による通風状態のバラツキを抑制できて、栽培トレー3上に載置される複数の育苗トレー10(プラグトレー11)の苗の成長状態のバラツキ等も大幅に低減させることができる。
【0058】
また、通風装置19の一対のファン19a、19bの通風方向を、栽培トレー3の栽培面と略平行な方向で互いに異ならせて、栽培トレー上に微風の流れが生成するようにすれば、各ファン19a、19bを栽培トレー3の対向する両側にその通風方向を異ならせて配設するだけで、栽培トレー3の栽培面上に微風の流れが生成され、育苗される苗の葉に付着した水分等を効果的に除去できて、苗の病気の発生等を防止することができる。
【0059】
また、通風装置19の一対のファン19a、19bを、栽培トレー3の上方にその通風方向が栽培トレー3方向となりその位置を互いに異ならせて栽培トレー上に微風の流れが生成するようにすれば、栽培トレー3の栽培面上に微風の流れが生成され、育苗される苗の葉に付着した水分等を効果的に除去できて、苗の病気の発生等を防止することができる。この場合は、前述したように、通風装置19の各ファン19a、19bからの微風が、LED照明装置4の6本のLED照明管4aの隙間を通過しつつ、すなわちLED照明管4aの外周面に接触しつつ下方に通風されることから、LED照明管4aの冷却効果も得られることになる。
【0060】
さらに、ファン19a、19bと栽培トレー3との間に、ファン19a、19bから通風される微風の通風方向等の通風状態を制御して栽培トレー3上の全域に均一な通風を可能にするパンチング板20を配設するようにすれば、各ファン19a、19bからの通風の栽培トレー3の栽培面の特定位置への集中を抑制できて、微風を栽培トレー3の栽培面の全域に均一に通風できて、苗の生育状態の一層の均一化を図ることができる。
【0061】
この場合、多数の孔20aが形成されたパンチング板20で通風状態を制御できるため、パンチング板20をファン19a、19bと対向する所定位置に配設することで、栽培トレー3の栽培面全域に均一な微風を容易に通風することができると共に、ファン19a、19bのL金具19cに対する高さ位置が調整可能であるため、育苗する苗の種類に応じて最適な通風を行うことができて、苗の生育の促進と各苗の生育状態の一層の均一化を図ること等ができる。
【0062】
またさらに、前記実施形態においては、次のようなに付随的な作用効果を得ることもできる。すなわち、本体2が、少なくともその下方を開放することで本体2内に外気と連通する密閉されない空間が形成されると共に、本体2の下部に配設された着脱可能なキャスター7で移動可能に構成されているため、建物構造物や空調装置を必要とせず育苗機1自体の構成を極めてシンプルとして、安価で使い勝手に優れた育苗機1を提供することができる。また同時に、キャスター7の回転により、本体2を倉庫内やハウス内等の所定場所に容易に移動設置できたり、設置場所で必要に応じキャスター7を取り外すことにより、本体2の高さを作業者の身長等に応じて低くできて、本体2前面2cの扉2c1の開閉作業を容易に行うことができる等、育苗機1の使い勝手を向上させることができる。
【0063】
また、灌水装置5が、栽培トレー3の最深部である凹部3bの底面に設けた給排水口15と、給排水口15に接続されたポンプ5aと、ポンプ5aに接続されたタンク5b等を有し、ポンプ5aの作動状態に応じて、タンク5b内の水が給排水口15を介して栽培トレー3内に供給されたり、栽培トレー3内の水が給排水口15を介して配管5cやポンプ5a等に排出されるため、給排水口15を給水と排水の両方に使用できて灌水装置5の構成を簡略化して、安価な育苗機1を提供することができる。
【0064】
また、栽培トレー3の凹部3bに、給排水口15より高い位置で開口するオーバーフロー管16が配設されているため、灌水時に栽培トレー3内に収容される育苗トレー10の底面全域に一定量の水を安定供給維持できて、苗の育苗効率を向上させることができる。さらに、給排水口3bが栽培トレー3の長手方向一端側に設けた凹部3bの底面に設けられているため、栽培トレー3内の水の全てを最深部としての凹部3bの給排水口15から確実に排水できると共に、給水が必要な時間帯にのみ栽培トレー3に水を確実に供給、すなわち底面間欠灌水ができて、苗の育苗効率を一層向上させることができる。
【0065】
また、栽培トレー3上に、一体化された育苗トレー10と親水シート及びプラグトレー11が出し入れ可能に配置されるため、親水シートとプラグシート11が一体化された育苗トレー10を、栽培トレー3の鍔部3aや凸状3c1を利用して容易にセットしたり取り出すことができると共に、親水シートの使用により苗の根の延び過ぎや絡みあるいは根腐れ等を防止して高品質の苗を育成することができる
【0066】
また、LED照明装置4が、複数個の赤色と青混色の2色のLEDがLED照明管4a内に所定形態で一列状態で配置され、このLED照明管4aが栽培トレー3の前後方向に複数列(6列)配置されて所定の照射量が得られるため、LED照明装置4の消費電力を少なくしつつ、栽培トレー3(育苗トレー10)の全域に育苗に適した均一なLED照明光が得られて、苗の安定した成長を一層促すことができる。
【0067】
また、LED照明装置4や灌水装置5が、照明タイマー21と給水タイマー22の設定時間により自動的にオン・オフするため、各タイマー21、22で両装置4、5を単独でもしくは関連付けてオン・オフさせることにより、野菜の種類に応じた光照射と灌水を自動的に行うことができて、育苗作業の完全自動化を図ることができる。
【0068】
またさらに、育苗機1自体の構成がシンプルで、例えば本体2の前面2cが一対の扉2c1で開放できたり栽培トレー3がFRP製で形成されかつ取り外し可能であること等から、本体2内の育苗関連部分の清掃がし易い等、育苗機1のメンテナンスを簡単に行うことができると共に、育苗する苗の病気の予防にも貢献することができる。また、制御ボックス6の構成もシンプルであるため、一般農家の高齢者等でも育苗機1を容易に操作することができる。
【0069】
これらことから、従来、野菜苗の育苗作業の機械化が困難であった一般の野菜栽培農家等であっても、前記育苗機1を設置することで、設備投資費用を極力抑えつつ育苗作業の機械化(自動化)を図り、作業者の作業負担の軽減等が可能となって、後継者や作業者不足が深刻化する農家にとって大きな効果を期待することができる。
【0070】
図10~
図12は本発明に係わる育苗機の他の実施形態(変形例)を示している。この実施形態の育苗機1の特徴は、前記育苗機1が「2段式」であったのに対し「3段式」としたものであり、前記実施形態と同一部位には、同一符号を付して説明する。すなわち、本体2に前記栽培トレー3とは形状の異なる3つの栽培トレー30が上下方向に3段で配置されると共に、各栽培トレー30の上方所定高さ位置にLED照明装置4がそれぞれ配置されている。
【0071】
このとき、栽培トレー30は、
図12に示すように、その底面30aに、前後方向の両端部に平行状態で一体形成された一対の凸状30bと、この凸状30b間で長手方向の一端側(
図12において右側)が幅狭で他端側に向けて順次幅広となる深さの浅い凹部30cが一体形成されている。また、底面30aの長手方向の他端側に幅方向に向けて形成される凹部30dの底面が、中央部分が低くて最深部30eとなり、その両側が傾斜面30fとなるように形成されている。
【0072】
そして、前記凹部30cの端部が凹部30dの最深部30e両側に位置することで、栽培トレー30の底面30a内の水が凹部30dの最深部30eに効率的に誘導されるようになっている。なお、この栽培トレー30においても前記給排水口15やオーバーフロー管16は、前記実施形態と同様に凹部30dの最深部に設けた孔30d1、30d2に設けられる。その他の構成については、前記実施形態と基本的に同じであるため、その詳細な説明については省略する。
【0073】
この実施形態の育苗機1においても、前記実施形態と同様の作用効果が得られる他に、栽培トレー3の収容段数が1段増えることにより、同時に育苗できる苗の数を増やすことができると共に、栽培トレー30内の2つの凹部30c、30dにより底面30aの水吐けが一層良好となり、栽培トレー30の大きさを大きくして、栽培トレー30内に収容される育苗トレー10等の個数、すなわち一度に育苗できる苗数を増加させた場合でも根腐れ等も予防できるという作用効果を得ることができる。このように、本体2内に設置される栽培トレー3、30の個数や形状は、設置場所の各種環境等に応じて、適宜に変更することができる。
【0074】
なお、前記実施形態においては、通風装置19を
図8と
図9に示す2つの例で説明したが、例えば
図8に示す例を最上段以外の栽培トレー3に適用し、
図9に示す例を最上段の栽培トレー3は適用しても良いし、各通風装置19のファン19a、19bの使用個数も2個に限らず、3個以上の複数個としても良い。また、パンチング板20全体の大きさや孔20aの大きさ等の形態も、上記実施形態に限定されず、均一な微風が得られる適宜形態を採用することができる。
【0075】
さらに、前記実施形態における、LED照明装置のLED照明管の個数、配管の使用部品やその接続形態、栽培トレーや育苗トレー及びプラグトレーの形態や大きさ等は一例であって、例えば配管のポンプとして前記実施形態のポンプ5b以外の他の適宜形態のポンプを使用したり、制御ボックス内に各タイマー等を作動させる電源スイッチを設ける等、本発明に係わる各発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、野菜苗の育苗に限らず、果実等の苗木の育苗にも利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1・・・・・・・・・・・・育苗機
2・・・・・・・・・・・・本体
3、30・・・・・・・・・栽培トレー
3b、30c、30d・・・凹部
3c、30a・・・・・・・底面
3c1、30b・・・・・・凸状
4・・・・・・・・・・・・LED照明装置
4a・・・・・・・・・・・LED照明管
5・・・・・・・・・・・・灌水装置
5a・・・・・・・・・・・タンク
5b・・・・・・・・・・・ポンプ
5c・・・・・・・・・・・配管
6・・・・・・・・・・・・制御ボックス
7・・・・・・・・・・・・キャスター
10・・・・・・・・・・・育苗トレー
11・・・・・・・・・・・プラグトレー
14・・・・・・・・・・・照明取付板
15・・・・・・・・・・・給排水口
16・・・・・・・・・・・オーバーフロー管
17・・・・・・・・・・・ドレイン管
19・・・・・・・・・・・通風装置
19a、19b・・・・・・ファン
19c・・・・・・・・・・L金具
20・・・・・・・・・・・パンチング板
20a・・・・・・・・・・孔
21・・・・・・・・・・・照明タイマー
22・・・・・・・・・・・給水タイマー
23・・・・・・・・・・・端子台
24・・・・・・・・・・・AC100Vプラグ