(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム
(51)【国際特許分類】
E02B 1/00 20060101AFI20231208BHJP
G01V 3/02 20060101ALI20231208BHJP
G01V 9/02 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
E02B1/00 Z
G01V3/02 C
G01V9/02
(21)【出願番号】P 2021515754
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2019018148
(87)【国際公開番号】W WO2020217531
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-04-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521465658
【氏名又は名称】株式会社WATER
(74)【代理人】
【識別番号】100080528
【氏名又は名称】下山 冨士男
(74)【代理人】
【識別番号】100073601
【氏名又は名称】前田 和男
(72)【発明者】
【氏名】竹村 公太郎
(72)【発明者】
【氏名】房前 友章
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-037677(JP,A)
【文献】特開2003-227877(JP,A)
【文献】特許第6235146(JP,B2)
【文献】特開平11-52062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 1/00
G01V 3/02
G01V 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星画像データ、現地実測データ及び既存公表されている地形・地質データ、或いは衛星画像データ又は現地実測データのいずれかのデータと既存公表されている地形・地質データを用いて生成した特定の地盤領域における地表、地下を含む3次元地形・地質モデルを記憶手段に記憶し、
要請される水問題解決のための解析課題の明確化の基に組まれたシミュレーションプログラムの実行によって、3次元地形・地質モデルの地下を飽和帯とする初期化処理を行って初期化モデルを生成し、
前記初期化モデルに対してシミュレーションプログラムの実行の基に、過去・近現代再現、及び未来予測のための各種パラメータの入力手段からの入力に応じて、演算手段による演算処理、画像生成処理手段による画像生成処理によるシミュレーションを実行し、
当該シミュレーション結果は数値解析手法や地形・地質解析手法及び歴史的事実比較
手法により検証
され地形・地質
モデルの修正を行ってシミュレーション精度を高め、
当該シミュレーション結果を記憶手段に記憶するとともに、2次元又は3次元の静止画及び動画処理して表示手段に表示し、
前記特定の地盤領域における地下水脈に関して過去から未来に至る4次元水循環状況の再現・解析・予測・可視化を平面的、2次元的に行うようにした4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムとともに、
前記特定の地盤領域に測線に沿って配置される多数の電極群と、
前記電極群のうちのダイポール・ダイポール配置となる4極の電極を組み合わせて、かつ、切り替えて、比抵抗法により前記特定の地盤領域の水平探査、地下垂直探査を実施する測点切替ユニットと、
前記ダイポール・ダイポール配置となる4極の電極のうちの2極に高低2周波数からなる電圧を印可し、他の2極により前記2極間に流れる高低2周波数別の電流を検出する測定を前記特定地盤領域全体の測点毎に行う測定手段と、
前記高低2周波数からなる電圧、検出した高低2周波数別の電流を基に対応する前記特定地盤領域の各測点における水平、垂直方向にわたる高低2周波数別の比抵抗値を測点毎に算出する測点毎比抵抗算出手段と、
算出した各測点における高低2周波数別の比抵抗値を基に、(高周波数に対応する比抵抗値)/(低周波数に対応する比抵抗値)からなる各測点毎におけるインピーダンス効果を求める測点毎インピーダンス効果算出手段と、
を有し、
前記インピーダンス効果>1の測点位置を地下水脈有り、と推定可能として、前記特定の地盤領域の地下水脈における地下水の位置を3次元的にピンポイントで表示可能としたシステムにより、
前記特定の地盤領域の地下水脈を平面的、2次元的に可視化しつつ当該地下水脈における地下水の位置を3次元的にピンポイントで表示可能としたことを特徴とする地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム。
【請求項2】
衛星画像データ、現地実測データ及び既存公表されている地形・地質データ、或いは衛星画像データ又は現地実測データのいずれかのデータと既存公表されている地形・地質データを用いて生成した特定の地盤領域における地表、地下を含む3次元地形・地質モデルを記憶手段に記憶し、
要請される水問題解決のための解析課題の明確化の基に組まれたシミュレーションプログラムの実行によって、3次元地形・地質モデルの地下を飽和帯とする初期化処理を行って初期化モデルを生成し、
前記初期化モデルに対してシミュレーションプログラムの実行の基に、過去・近現代再現、及び未来予測のための各種パラメータの入力手段からの入力に応じて、演算手段による演算処理、画像生成処理手段による画像生成処理によるシミュレーションを実行し、
当該シミュレーション結果は数値解析手法や地形・地質解析手法及び歴史的事実比較
手法により検証
され地形・地質
モデルの修正を行ってシミュレーション精度を高め、
当該シミュレーション結果を記憶手段に記憶するとともに、2次元又は3次元の静止画及び動画処理して表示手段に表示し、
前記特定の地盤領域における地下水脈に関して過去から未来に至る4次元水循環状況の再現・解析・予測・可視化を平面的、2次元的に行うようにした4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムとともに、
前記特定の地盤領域に測線に沿って配置される多数の電極群と、
前記多数の電極群のうちダイポール・ダイポール配置となる4極の電極のうちの2極を電位電極、他の2極を電流電極とし、これらを組み合わせ、かつ、切り替えて、比抵抗法、ウェンナー法により前記特定の地盤領域の水平探査、地下垂直探査を実施する測点切替ユニットと、
前記ダイポール・ダイポール配置となる2極の電位電極に高低2周波数からなる電圧を印可し、他の2極の電流電極により前記電位電極間に流れる高低2周波数別の電流を検出する測定を前記特定地盤領域全体の測点毎に行う測定手段と、
前記高低2周波数からなる電圧、検出した高低2周波数別の電流を基に対応する前記特定地盤領域の各測点における水平、垂直方向にわたる高低2周波数別の比抵抗値を測点毎に算出する測点毎比抵抗算出手段と、
当該算出した各測点における高低2周波数別の比抵抗値を基に、(高周波数に対応する比抵抗値)/(低周波数に対応する比抵抗値)からなる各測点毎におけるインピーダンス効果を求める測点毎インピーダンス効果算出手段と、
を有し、
前記インピーダンス効果>1の測点位置を地下水脈有り、と推定可能として、前記特定の地盤領域の地下水脈における地下水の位置を3次元的にピンポイントで表示可能としたシステムにより、前記特定の地盤領域の地下水脈を平面的、2次元的に可視化しつつ当該地下水脈における地下水の位置を3時限的にピンポイントで表示可能としたことを特徴とする地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム。
【請求項3】
前記高低2周波数のうち、高周波数は40Hz、低周波数は、4Hzであることを特徴とする請求項1又は2記載の地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システムに関し、詳しくは、特定の地盤領域の地下水脈を検知・確認し、しかも、地表からの探査で、当該検知・確認した特定の地盤領域の地下水脈における地下水をピンポイントで検知・確認できるようにした地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に、地質調査法に、地質の物理的性質を利用した物理探査の分野があり、その中に電気的性質を利用した電気探査がある。
【0003】
前記電気探査の中で、地盤の比抵抗を利用した比抵抗法に地層の垂直変化を捉える垂直探査と、鉱脈や断層などの水平異常を捉える水平探査がある。
【0004】
前記水平探査は、密な測定数により垂直探査を合わせた効果が発揮でき、画像により一層わかりやすく、更に地下水の有無や取水量の多少までの判定を可能とすることが知られている。
【0005】
特許文献1には、本発明に関連する技術として、衛星画像データと現地実測データと地形・地質データとを用いて生成した一定範囲の地圏における地表、地下を含む3次元地形・地質モデルをシミュレーション結果記憶部に記憶し、3次元地形・地質モデルの地下は初期化モデルを生成し、初期化モデルに対して、過去・近現代再現、及び未来予測のためのパラメータの入力に応じて、演算処理、画像生成処理を実行し、地形・地質モデル等の修正を行って精度を高め、結果をシミュレーション結果記憶部に記憶するとともに、静止画及び動画処理して表示部に表示し、過去から未来に至る4次元水循環状況の再現・解析・予測・可視化を行うように構成した4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムが開示されている。
【0006】
この特許文献1の技術によれば、本発明に関連する技術として、地下水脈を多元的に表示し可視化できるものの、水利用の観点からは当該可視化した地下水脈のいずれの位置をピンポイントで掘削(ボーリング)すればよいのかの判断は困難であった。
すなわち、特許文献1の技術によれば、平面的、2次元的に地下水脈を表示させることができるが、単に当該地下水脈を可視化して見ても、いざ、当該可視化中の地下水脈の如何なる位置をピンポイントでボーリングすれば地下水に突き当たるのかは従来全く人間の勘に頼っていたというのが実情である。
【0007】
特許文献2には、本発明に関連する技術として、地中の所定領域に含まれている水分を検出する水分検出装置であって、前記所定領域に入力した交流電流の電流値を測定する複数の電流電極対と、前記交流電流に対応する電圧値を測定する複数の電位電極対と、前記交流電流の周波数を、予め設定された第1周波数から前記第1周波数より高い第2周波数までの間において、所定の周波数間隔で複数の周波数を設定する周波数設定手段と、前記周波数設定手段によって周波数が設定される度に、前記電流値と前記電圧値とを用いて、前記所定領域の比抵抗値を求める比抵抗算出手段と、前記比抵抗値の最大値と最小値とを求め、前記最大値を前記最小値で除した商が小さい程、前記所定領域に含まれている水分が多いと推定する推定手段とを備える水分検出装置が開示されている。
【0008】
この特許文献2の技術によれば、比抵抗値の最大値と最小値とを求め、前記最大値を前記最小値で除した商が小さい程、前記所定領域に含まれている水分が多いと推定するようにしているが、このような推定は実験結果に基づくもので、単にこのような装置を用いて、予め検知・確認しないままでの地盤領域の地下水脈における地下水をピンポイントで検知・確認することは困難なことであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-37677号公報
【文献】特許第6235146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した従来の実情に鑑み開発されたものであり、特定の地盤領域の地下水脈を検知・確認し、しかも、地表からの探査で、当該検知・確認した特定の地盤領域の地下水脈における地下水をピンポイントで検知・確認できるようにした地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システムを提供するものである。
すなわち、本発明は、本発明に関連する技術としての特許文献1と特許文献2の各システム技術を巧み組み合わせてなる地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システムであり、特許文献1の技術で平面的、2次元的に地下水脈を可視化して、当該可視化した地下水脈における地下水の位置を3次元的に表示してピンポイントでボーリングするようにしたシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システムは、前記したように、平面的、2次元的に地下水脈を可視化して、当該可視化した地下水脈における地下水の位置を3次元的に表示してピンポイントでボーリングするようにしたシステムである。
まず、本発明における前記平面的、2次元的に地下水脈を可視化するための技術は、衛星観測画像データ・現地観測データ・既存公表データの地形・地質データを用いて生成した一定範囲の地圏における地表、地下を含む3次元地形・地質モデルを記憶手段に記憶し実行され、3次元地形・地質モデルの地下は飽和帯とする初期化処理を行って初期化モデルを生成し、初期化モデルに対してシミュレーションプログラムの実行の基に、過去・近現代再現、及び未来予測のための各種パラメータの入力手段からの入力に応じて、演算手段による演算処理、画像生成処理手段による画像生成処理によるシミュレーションを実行し、シミュレーション結果を記憶手段に記憶するとともに、2次元及び3次元の静止画及び動画に可視化処理されたものは表示手段に表示し、当該一定範囲の地圏における過去から未来に至る4次元水循環状況の再現・解析・予測・可視化を行うようにしたことを最も主要な特徴とする。
また、本発明における前記平面的、2次元的に地下水脈を可視化した地下水脈における地下水の位置を3次元的に表示してピンポイントでボーリングできるようにするための技術は、特定の地盤領域に測線に沿って配置される多数の電極群と、前記電極群のうちダイポール・ダイポール配置となる4極の電極を組み合わせ、かつ、切り替えて、比抵抗法により特定の地盤領域の水平探査、地下垂直探査を実施する測点切替ユニットと、前記ダイポール・ダイポール配置となる4極の電極のうちの2極に高低2周波数からなる電圧を印可し、他の2極により前記2極間に流れる高低2周波数別の電流を検出する測定を特定地盤領域全体の測点毎に行う測定手段と、前記高低2周波数からなる電圧、検出した高低2周波数別の電流を基に対応する前記特定地盤領域の各測点における水平、垂直方向にわたる高低2周波数別の比抵抗値を測点毎に算出する測点毎比抵抗算出手段と、算出した各測点における高低2周波数別の比抵抗値を基に、(高周波数に対応する比抵抗値)/(低周波数に対応する比抵抗値)からなる各測点毎におけるインピーダンス効果を求める測点毎インピーダンス効果算出手段と、を有し、インピーダンス効果>1の測点位置を地下水脈有り、と推定可能としたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、特定の地盤領域の地下水脈を平面的、2次元的に可視化しつつ当該地下水脈における地下水の位置を3次元的にピンポイントで表示可能とした地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システムを実現し提供することができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、特定の地盤領域の地下水脈を平面的、2次元的に可視化できるようにした4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムとともに、当該特定の地盤領域に測線に沿って配置される多数の電極群と、前記電極群のうちダイポール・ダイポール配置となる4極の電極のうち2極を電位電極、他の2極を電流電極とし、これらを組み合わせ、かつ、切り替えて、比抵抗法、ウェンナー法により特定の地盤領域の水平探査、地下垂直探査を実施する測点切替ユニットと、前記ダイポール・ダイポール配置となる2極の電位電極に高低2周波数からなる電圧を印可し、他の2極の電流電極により前記電位電極間に流れる高低2周波数別の電流を検出する測定を特定地盤領域全体の測点毎に行う測定手段と、前記高低2周波数からなる電圧、検出した高低2周波数別の電流を基に対応する前記特定地盤領域の各測点における水平、垂直方向にわたる高低2周波数別の比抵抗値を測点毎に算出する測点毎比抵抗算出手段と、算出した各測点における高低2周波数別の比抵抗値を基に、(高周波数に対応する比抵抗値)/(低周波数に対応する比抵抗値)からなる各測点毎におけるインピーダンス効果を求める測点毎インピーダンス効果算出手段と、を有し、インピーダンス効果>1の測点位置を地下水脈有り、と推定可能とした構成のシステムを基に、特定の地盤領域の地下水脈を平面的、2次元的に可視化しつつ当該地下水脈における地下水の位置を3次元的にピンポイントで表示可能とした地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システムを実現し提供することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、前記請求項1又は2記載における測定に用いる電圧の高低2周波数のうち、高周波数は40Hz、低周波数は4Hzとした構成の基に前記効果を奏する地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システムを実現し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムの構成概念を示す概略ブロック図である。
【
図2】
図2は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムの構成を示す概略ブロック図である。
【
図3】
図3は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測シミュレーションシステムにおける気象、水文、地形等の各種項目に関する大量のデータの項目を示す説明図である。
【
図4】
図4は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーション実行による3次元地形モデル流域水循環モデルの領域初期化処理の概念図である。
【
図5】
図5は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションにおける領域初期化処理実行による不飽和帯の発達過程、地表水の出現形成過程、及び地表及び地下の流線軌跡の概念図である。
【
図6】
図6は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションの洪水氾濫解析機能による記録豪雨等の実降雨データを用いた洪水氾濫流れ及び河川堤防決壊によるゼロメートル地帯氾濫域シミュレーション事例を示す概略図である。
【
図7】
図7は実施例にかかる4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションの多相流解析機能による飽和・不飽和地盤内における水より比重の大きな汚染原液の地下浸透の解析例を示す概略図である。
【
図8】
図8は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションにおける淡塩密度流解析機能による沿岸域の塩水侵入シミュレーション事例を示す概略図である。
【
図9】
図9は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションにおける反応性物質移行解析機能による湖沼へ流入する河川とその流域からのインパクトを解析した事例を概念的に示す図である。
【
図10】
図10は実施例にかかる4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションにおける多成分ガス輸送解析機能における原位置実験系における人工バリア中のガス移行挙動の三次元シミュレーション事例を示す概略図である。
【
図11】
図11は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションにおける水・流砂連成解析機能による水・流砂・地盤床変動連成系の概念及び人工降雨による斜面流、浸食、土砂移動、堆積がリーフ状の地形起伏形成状態を概念的に示す概略図である。
【
図12】
図12は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションプログラムが対象とする地域圏の水循環モデルの物理的概念を示す説明図である。
【
図13】
図13は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションの水・空気2相流解析機能を使用して解析した日本列島全体の人為が加わらない以前の自然状態の表流水と地下水を一体とした水循環の原風景を示す概略図である。
【
図14】
図14は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションの水・空気2相流解析機能を使用して解析した関東地方の人為が加わらない以前の自然状態の表流水と地下水を一体とした水循環の原風景を示す概略図である。
【
図15】
図15は4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーション解析実証の歴史的事実比較解析手法の一例を示す現在及び6000年前の縄文時代の関東地方の地形の陰影図である。
【
図16】
図16は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成する水・空気の2相流解析機能を使用して解析した相模湾、駿河湾領域の表流水と地下水及び湧水等の人為が加わらない以前の自然状態の水循環を示す概略図である。
【
図17】
図17は4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーション解析の実証の水質・水量数値分析手法の一例を示すものであり、駿河湾沿岸域において数多くの測定ポイントで、深さ方向に海水を採取し、海水塩分濃度・水温・濁度・電気伝導度及びDO(溶存酸素量)の水質分析データを示す説明図である。
【
図18】
図18は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションの水・空気2相流解析機能を使用して解析した、濃尾平野における人為が加わらない以前の自然状態の表流水と地下水一体の水循環の概略図である。
【
図19】
図19は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションの水・空気2相流解析機能を使用して解析した濃尾平野の21世紀の現在の表流水と地下水一体の水循環の概略図である。
【
図20】
図20は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションの多相流解析機能を使用して工場やオイルタンクから地下水に油分、重金属、熱溶解性物質が流れる状態をシミュレーションする場合を概念的に示す概略図である。
【
図21】
図21は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションプログラムの反応性物質移行解析機能を使用して難透水槽から地下水面へのトリクロロエチレン(難溶解性)、ベンゼン(溶解性)浸透状態をシミレーションした概略図である。
【
図22】
図22は実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションの反応性物質移行解析機能を使用して解析した、ある地域の2箇所の汚染源からの農薬汚染の状態をシミレーションした概略図である。
【
図23】
図23は実施例にかかる4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションの処理の流れを示す概略フローチャートである。
【
図24】
図24は実施例に係る地下水脈における地下水の検知・確認システムの全体構成及び地盤探査結果の概念を示す概略図である。
【
図25】
図25は実施例に係る地下水脈における地下水の検知・確認システムの全体構成を示す概略ブロック図である。
【
図26】
図26は実施例に係る地下水脈における地下水の検知・確認システムによる探査結果としての例えば日本国;A地盤領域におけるダイポール・ダイポール法による等比抵抗線図(上欄)、インピーダンス効果図(下欄)及び深度に対応した岩石等の分布図(柱状線図)を示す概略探査結果図である。
【
図27】
図27は実施例に係る地下水脈における地下水の検知・確認システムによる探査結果としての例えば日本国;B地盤領域におけるウェンナー法による比抵抗値(上欄)、ダイポール・ダイポール法による等比抵抗線図(中欄)、インピーダンス効果図(下欄)及び深度に対応した岩石等の分布図(柱状線図)を示す概略探査結果図である。
【
図28】
図28は実施例に係る地下水脈における地下水の検知・確認システムによる探査結果としての例えば日本国;C地盤領域におけるダイポール・ダイポール法による等比抵抗線図(上欄)、インピーダンス効果図(下欄)及び深度に対応した岩石等の分布図(柱状線図)を示す概略探査結果図である。
【
図29】
図29は実施例に係る地下水脈における地下水の検知・確認システムによる例えば日本国;D地盤領域におけるアースダムの漏水個所の探査結果としてのダイポール・ダイポール法による等比抵抗線図及びインピーダンス効果図を示す概略探査結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の特定地盤領域の地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システムに関する平面的、2次元的に地下水脈を可視化するための技術は、国土等の一定範囲の地圏における過去から未来までの水循環状況を再現・解析・予測・可視化するコンピュータを用いた4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムであって、衛星画像データと現地実測データ及び既存公表されている地形・地質データ、或いは衛星画像データ又は現地実測データのいずれかのデータと既存公表されている地形・地質データを用いて生成した一定範囲の地圏における地表、地下を含む3次元地形・地質モデルを記憶手段に記憶し、要請される水問題解決のための解析課題の明確化の基に組まれたシミュレーションプログラムの実行によって、3次元地形・地質モデルの地下は飽和帯とする初期化処理を行って初期化モデルを生成し、初期化モデルに対してシミュレーションプログラムの実行の基に、過去・近現代再現、及び未来予測のための気象、水文、地形、土地利用、地質、土砂、水利用、人工物、流体物性、化学物質特性に関する各種パラメータの入力手段からの入力に応じて、演算手段による演算処理、画像生成処理手段による画像生成処理によるシミュレーションを実行し、そのシミュレーション結果は水質・水量数値解析手法や地形・地質解析手法及び歴史的事実比較手法等により検証され必要に応じ地形・地質モデル等の修正を行ってシミュレーション精度を高め、シミュレーション結果を記憶手段に記憶するとともに、2次元又は3次元の静止画及び動画処理して表示手段に表示し、当該一定範囲の地圏における過去から未来に至る4次元水循環状況の再現・解析・予測・可視化を行う構成により実現した。
また、上述した特定地盤領域の地下水脈を平面的、2次元的に可視化した当該地下水脈における地下水(又は水源)の位置を3次元的に表示して、ピンポイントでボーリングできるようにするための技術は、特定の地盤領域に測線に沿って配置される多数の電極群と、前記電極群のうちダイポール・ダイポール配置となる4極の電極のうち2極を電位電極、他の2極を電流電極とし、これらを組み合わせて、かつ、切り替えて、比抵抗法、ウェンナー法により特定の地盤領域の水平探査、地下垂直探査を実施する測点切替ユニットと、前記ダイポール・ダイポール配置となる2極の電位電極に高低2周波数からなる電圧を印可し、他の2極の電流電極により前記電位電極間に流れる高低2周波数別の電流を検出する測定を特定地盤領域全体の測点毎に行う測定手段と、前記高低2周波数からなる電圧、検出した高低2周波数別の電流を基に対応する前記特定地盤領域の各測点における水平、垂直方向にわたる高低2周波数別の比抵抗値を測点毎に算出する測点毎比抵抗算出手段と、算出した各測点における高低2周波数別の比抵抗値を基に、(高周波数に対応する比抵抗値)/(低周波数に対応する比抵抗値)からなる各測点毎におけるインピーダンス効果を求める測点毎インピーダンス効果算出手段と、を有し、インピーダンス効果>1の測点位置を地下水脈有り、と推定可能とした構成により実現した。
【実施例】
【0017】
以下、図面を参照して、まず、実施例に係る特定の地盤領域の地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21を実現するための「平面的、2次元的に地下水脈を可視化するための技術」について詳細に説明する。
後記には、実施例に係る特定の地盤領域の地下水脈を及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21を実現するための「平面的、2次元的に可視化した地下水脈における地下水の位置を3次元的に表示して、ピンポイントでボーリングできるようにするための技術」について詳細に説明する。
【0018】
以下、本発明の実施例に係る地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21を実現するための平面的、2次元的に地下水脈を可視化するための技術である4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムについて詳細に説明する。
【0019】
すなわち、本実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムは、
図1に示すように、4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成する4次元水循環再現・解析・予測シミュレーション(以下「シミュレーション」という)は、そのシミュレーションが要請される水問題解決のための課題の明確化の基にシミュレーションプログラムが組まれ、シミュレーションに必要なデータは衛星画像データ、現地実測データ、既存公表データ(或いは衛星画像データ又は現地実測データのいずれかのデータと既存公表されている地形・地質データを用いても良い)等で構成される多数のデータが収集インプットされ、そのシミュレーション結果は水質・水量数値解析手法や地形・地質解析手法及び歴史的事実比較手法等により検証され、実際と解析結果の齟齬が発生した場合は再度、シミュレーションプログラムにおける地形・地質モデル等の修正を行い、対象地域の水循環を正確に再現することを実現する。
更に、このシミュレーション解析結果は2次元又は3次元の静止画及び動画に処理され、今まで人間が目にできなかった地下水を含む解析対象地域の水循環の可視化を実現していく。
【0020】
前記4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションは、
図2に示すように、4次元水循環再現・解析・予測シミュレーションプログラム(以下「シミュレーションプログラム」という)を格納したプログラムメモリ12と、全体の制御を行うとともにシミュレーションプログラムに基づく各種処理の制御を行う制御部11と、4次元水循環再現・解析・予測処理に必要な各種データを収集蓄積するデータベース13と、シミュレーションプログラムに基づき4次元水循環再現・解析・予測処理に必要な各種演算を実行する演算部14と、シミュレーションプログラムに基づくシミュレーション処理に応じた画像生成処理を行う画像生成処理部15と、シミュレーションプログラムに基づくシミュレーション結果を記憶するシミュレーション結果記憶部16と、データ入力用のキーボード17、マウス18と、データ出力用のカラープリンタ19、表示部20と、を有している。
【0021】
前記データベース13には、4次元水循環再現・解析・予測処理を実行するために、
図3に示すように、気象、水文、地形等の各種データ項目に関する大量のデータが収集蓄積される。前記データには遠い過去から近現代、更には未来予測に関する気象、水文等に関するデータが含まれる。
【0022】
この場合、各種項目に関する大量のデータの収集蓄積は、衛星画像データや実際の現地調査データや公開されている既存の水文水質データベース、気象データベース等の外部データベースや、理科年表等の公知文献等から行うことができる。
【0023】
次に、前記シミュレーションプログラムにおける4次元水循環再現・解析・予測処理に関する機能について詳述する。
【0024】
前記シミュレーションプログラムは、東京大学登坂博行教授、株式会社地圏環境テクノロジー提供のGETFLOWS(GEneral purpose Terrestrial fluid-FLOW Simulator):登録商標)を採用している。
このGETFLOWSは、本実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成する基幹技術であり、既に技術的に確立しているものである。
【0025】
前記シミュレーションプログラムは、地圏流体モデリングと数値シミュレーションを行うプログラムであり、陸域における水循環システムを多相多成分流体系として定式化し、従来困難であった地上及び地下の水の流れを一体化させた点に特徴がある。
【0026】
すなわち、一般的な地下水解析、河川流出解析、洪水・氾濫解析、地表水・地下水の相互作用解析、汚染物質を含む移流分散解析、油層解析、熱解析などを行う。
【0027】
前記シミュレーションプログラムは、地表水を含めた水・空気2相流動シミュレーションにより、陸水系における水の流れを表現する水・空気2相流解析機能、豪雨や破堤による洪水氾濫流を伴う地表水流動を解析する洪水氾濫解析機能、地上・地下地盤中における水相、空気相、汚染原液相の解析を行う多相流解析機能、流体相(水・ガス相)による熱移流、土壌・岩盤等の固相中の熱伝導を解析する水・熱連成解析機能、沿岸域における淡水と海水の相互作用(密度流)を考慮した流体挙動を解析する淡塩密度流解析機能、流域内で発生する汚濁物質と地上、地下における物質移動過程をシミュレートする反応性物質移行解析機能、反応性物質移行解析機能、放射性廃棄物・一般ごみ等廃棄物から発生するガスや埋設管漏えいガスの地下地盤中の移動挙動を解析する多成分ガス輸送解析機能、及び山間地の地下水又は水源における地下水涵養機能の空間的、長期的な変化を解析する水・流砂連成解析機能を主要な要素としている。
【0028】
前記4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムの基本的な処理の流れは、
図23に示すようにデータベース13に蓄積した衛星画像と既存の地形データとを用いて演算部14、画像生成処理部15の動作により一定範囲の地圏における地表、地下を含む3次元地形・地質モデルを生成してデータベース13に記憶し、次に前記シミュレーションプログラムにより、3次元地形・地質モデルの地下は飽和帯とする初期化処理を行って初期化モデルを生成してシミュレーション結果記憶部16に記憶し、前記初期化モデルに対する過去・近現代再現、及び未来予測のための気象、水文、地形、土地利用、地質、土砂、水利用、人工物、流体物性、化学物質特性に関する各種パラメータの前記キーボード17等からの入力に応じて、演算部14、画像生成処理部15の動作により当該一定範囲の地圏における過去から未来に至る4次元水循環状況の画像及び数値による再現・解析・予測を行い、シミュレーション結果記憶部16に記憶し、必要に応じて表示部20に表示し、カラープリンタ19によりプリント出力するものである。
【0029】
前記シミュレーションプログラムに含まれる諸機能について以下に詳述する。
<水・空気2相流解析機能>
この機能は、地表水を含めた水・空気2相流動シミュレーションにより、陸水系における水の流れを詳細に表現する。また、陸水系における流体分布の初期状態は領域初期化により再現し、そこで生じる様々な現象を解析する。
水・空気2相流解析機能における地形・地質、蛇行した河道・河床地形、人工物などの複雑な空間表現は、コーナーポイント型差分格子と呼ばれる任意ジオメトリの6面体格子により柔軟にモデル化が可能としている。
【0030】
また、地形・地質モデルデータの1つ1つの格子毎、或いは格子の面毎に物性データを与えることができるため、トンネル壁面、シートや壁状の人工構造物、異方性地盤等の表現が容易に行えるものである。
【0031】
前水・空気の2相流解析機能の適用分野としては、地表水・地下水の相互の作用解析(河川瀬切れ、湧水・涵養、河川の維持流量評価、水資源利用計画の適正化等々)、河川流出解析、飽和・不飽和浸透流解析、トンネル、ダム、遊水地、地下構造物等の建設工事による環境影響評価、水資源賦存量予測、揚水計画の適正化等の例を挙げることができる。
【0032】
図4上欄に3次元地形モデルの領域初期化処理の概念図を示す。
図4中欄に示すように一定量の降水量(地下水涵養量と同じ1~2mm/日)を入力して計算を開始する。これにより、地表面に空気と水が浸入し、水より重い塩水が少しずつ海や川へ押し出されていく様子が得られる。
【0033】
図4下欄に示すように、数万年程度にわたる計算により、ほぼ現在と同程度の塩水、地下水位、河川流量などの水の分布が計算できる。そして、降雨と地下水位、地下水流出がバランスする状態が得られる。以上で実際の降水量データを用いた計算を実行する準備が完了する。
【0034】
次に、領域初期化シミュレーションを実行し、地形・地質等の格子を作成し、透水係数等の水理パラメータを格子に設定し、計算を開始する。まず、流域水循環モデルの格子を塩水で満たす(初期条件)。
【0035】
図5に領域初期化シミュレーションにより得られた不飽和帯の発達過程、地表水の出現形成過程、地表及び地下の流線軌跡概念図を示す。
【0036】
<洪水氾濫解析機能>
この機能は、豪雨や破堤による洪水氾濫流を伴う地表水流動シミュレートする機能である。
【0037】
前記シミュレーションプログラムでは、運動方程式の慣性項や速度項を省略した拡散波近似によって地表流動を解析し、様々な豪雨パターンや破堤条件に対して大きな水の動きを安定、かつ、高速に追跡することができるようにしている。
河川等氾濫域や氾濫水量を予測することで、都市部の排水設計や災害時の避難計画の策定を支援するツールとなる。
【0038】
また、地盤内の地下水(空気も含めて)と同時に解くため、豪雨時の急激な地下水位上昇と内水氾濫を表現し、その発生地点や浸水域・浸水量を予測することができる。
シミュレーションによって得られる数値情報は、氾濫範囲・水量、圧力、ポテンシャル、水深・水位、流速等である。
【0039】
図6に記録豪雨等の実降雨データを用いた洪水氾濫流れ及び河川堤防決壊によるゼロメートル地帯氾濫域シミュレーション事例の概念図を示す。
【0040】
洪水氾濫解析の適用分野としては、豪雨時の浸水域予測、内水氾濫、河川堤防決壊後の氾濫域予測、低平農地における湛水被害域の予測と暗渠・ポンプ等排水対策の効果検討、沿岸域における高潮氾濫及び記録豪雨による内水氾濫の浸水範囲予測等の例を挙げることができる。
【0041】
<多相流解析機能>
この機能は、地上・地下地盤中における水相、空気相、汚染原液相(非水溶性流体Non-Aqueous Phase Liquid:NAPL)の多相同時流れを実用レベルの3次元ソルバーにより解析するものである。
【0042】
前記汚染原液相は、有機溶剤や炭化水素系の非水溶性流体を対象とし、物質毎の流体物質(比重、粘性係数など)を詳細に与えることができる。
【0043】
地盤中のNAPL相の移動し易さ(可動性:Mobility)は、油層シミュレーション等で一般的なStone(1970、1973)やParker(1987)他の3相流パラメータ(相対浸透率曲線)を与え、流体相の相互置換挙動を追跡することができる。
また、NAPL相が不飽和帯の空気や地下水と接触することで生じる揮発・溶解(相間移動)や、不飽和帯中あるいは水相中での物質移動を同時に考慮することができる。
シミュレーションによって得られる数値情報は、地下水相中の汚染物質濃度、ガス相中の汚染物質濃度、水相・ガス相・NAPL相の飽和度、圧力、ポテンシャル、水深・水位や流速等である。
【0044】
図7に飽和・不飽和地盤内における水より比重の大きな汚染原液(DNAPL)の地下浸透の解析例を示す。汚染原液相から地下水相への溶解と移流分散過程を考慮した多相多成分系を対象とした20日後、100日後のシミュレーション事例の概念図である。
【0045】
多相流解析の適用分野としては、重金属、NAPL等による地下水・土壌汚染サイトの汚染範囲変化の予測、各種対策工(揚水、バリア井戸、止水壁、エアスパージング、土壌ガス吸引、バイオレメディエーション等)の効果検討と選定、河川や水辺環境における漏えい有害物質の挙動予測・リスクアセスメント、石油・LPG等のエネルギー地下備蓄施設における各種設計解析・環境影響予測などである。
【0046】
<淡塩密度流解析機能>
この機能は、沿岸域における淡水と海水の相互作用(密度流)を考慮した流体挙動をシミュレートする。
前記シミュレーションプログラムでは、通常、陸域と海域の双方をモデル化して、海域には陸域地形と連続した海底地形を直接組み込む。そして、海水は塩分を含んだ地表水として表現し、海底の地下水と同時に解かれる。
【0047】
地表水、地下水を区別することなく、いずれも水相中に含まれる塩分量の相違によって、沿岸域に形成される淡塩漸移帯とその周囲に生じる密度流を解析することが可能である。
【0048】
また、潮汐や海水準変動による海水位の動的変化を考慮することで、陸域で生じる影響圏や水位応答の距離減衰を解析するなどして、地下地盤物性分布を同定することが可能となる。
【0049】
沿岸域での水資源開発では、井戸による海水の引き込みや揚水の塩分濃度変化を再現・予測し、各種水質基準を考慮した適正揚水量の評価等を行う。シミュレーションによって得られる数値情報は、塩分濃度、水相・ガス相の飽和度、圧力、ポテンシャル、水深・水位、流速等である。
【0050】
淡塩密度流解析の適用分野としては、淡塩漸移帯を伴う密度流問題、潮汐・海水準変動解析、沿岸域地下ダム建設にともなう水環境影響評価、離島淡水レンズ水資源量予測等である。
【0051】
図8に沿岸域における塩水侵入シミュレーション事例の概念図を示す。
地形、地層分布、降水、海水位変化等の自然条件とバランスする塩淡漸移帯を解析したものである。
【0052】
<反応性物質移行解析機能>
この機能は、流域内で発生する汚濁物質と地上、地下における物質移動過程を詳細にシミュレートする。
【0053】
汚濁負荷の発生は、都市域における生活排水や事業所排水、農地への施肥や畜産糞尿に関するものなど多岐にわたる。
【0054】
発生源や汚濁物質の違いによっても、分解・反応過程や地下への侵入経路、その後の移動形態は様々である。
【0055】
前記シミュレーションプログラムでは、点源、非特定排出源からの様々な汚濁物質について、分解・化学反応による物質の動態変化を考慮しながら、河川輸送、地盤内侵入、収着・脱離、移流分散等の物質移動過程を取り込んだより自然な物理モデルを実現し提供する。
【0056】
これによって、従来の巨視的な視点から汚濁負荷量を強制的に与える原単位法では困難であった遅延現象やその他の物質移動過程の詳細なメカニズムを知る手掛かりを得ることができる。
【0057】
シミュレーションによって得られる数値情報は、各物質の水中における濃度、固相中の濃度、水相・ガス相の飽和度、圧力、ポテンシャル、水深・水位、流速等である。
【0058】
反応性物質移行解析の適用分野としては、硝酸態窒素汚染、閉鎖性水域への汚濁負荷量予測、放射性廃棄物の地層処分システム性能評価(核種移行・被爆線量評価)等である。
【0059】
図9に湖沼へ流入する河川とその流域からのインパクトをシミュレーションによって解析した事例の概念図を示す。
【0060】
<多成分ガス輸送解析機能>
この機能は、放射性廃棄物・一般ごみ等廃棄物から発生するガスや埋設管漏えいガスの地下地盤中の移動挙動を詳細にシミュレートする。
【0061】
地盤中のガス移動は、水・空気2相流動シミュレーションと同様に一般化ダルシー則によって記述され、間隙圧の蓄積・上昇に伴って生じる溶解・遊離、媒体の空隙変形と浸透率の増加等の浸透パラメータの圧力依存の動的変化を考慮した解析が可能となる。
【0062】
また、ガス相に含まれる物質成分(付臭剤やトレーサ)が各種相変化や吸着・脱離を伴いながら移動する等、フィールド条件や試験系に応じた詳細解析が可能となる。
【0063】
シミュレーションによって得られる数値情報は、水相・ガス相の飽和度、水相・ガス相中の物質濃度、圧力、ポテンシャル、水深・水位、流速等である。
【0064】
多成分ガス輸送解析の適用分野としては、埋設管損傷部からの漏えいガス拡散移動、放射性廃棄物や金属容器腐食により生じるガスの移行挙動、二酸化炭素地中処分におけるCO2圧入・溶解とキャップロックによる封じ込め性能解析等である。
【0065】
図10に原位置実験系における人工バリア中のガス移行挙動の三次元シミュレーション事例の概念図を示す。
模擬廃棄体から発生したガスが間隙水中に溶解し・移動するプロセスを追跡・再現する状態を概念的に示している。
【0066】
<水・流砂連成解析機能>
この機能は、地表水、地下水を一体化した流動モデルと流砂輸送モデルをカップリングし、山間地の地下水又は水源における地下水涵養機能の空間的、長期的な変化を解析するものである。
【0067】
考慮できる水文素過程は、地表水、地下水流動、地表水・地下水相互作用(河川の伏没や湧水等)、掃流砂移動、浮遊砂移動(移流及び乱流拡散)、沈降・巻き上げ、土砂輸送による地形変化(侵食・堆積)、地形変化によって生じる流況変化である。
【0068】
図11に水・流砂・地盤床変動連成系の概念及び人工降雨による斜面流、浸食、土砂移動、堆積がリーフ状の地形起伏形成状態を概念的に示している。
前記シミュレーションプログラムによるシミュレーションによって得られる数値情報は流体相毎(水相・ガス相)の飽和度、圧力、ポテンシャル、流速、地形標高、浮遊砂濃度や土砂フラックス等である。
【0069】
水・流砂連成解析の適用分野としては水流による地形変化の解析、山間地水源域の治山管理、統合型水資源管理(IWRM:Integrated Water Resources Management)、総合土砂管理計画の策定等である。
【0070】
図12は、前記シミュレーションプログラムが対象とする地域の水循環モデルの物理的概念を示すものである。
【0071】
次に、4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムの具体的活用例について説明する。
【0072】
図13は、日本列島全体の水循環モデルを示し、陸域・沿岸水循環の大局構造を捉えたものである。これは、陸域及び沿岸海洋部を平面的に1kmオーダーのグリッドに分割し、地形及び大まかな地質状況を入力した3次元モデルによるシミュレーションの結果である。
【0073】
このスケールの格子システムの計算では、大地形による地表や地下の流動系の構造推定、広域の水資源量評価、温暖化による地下水淡水資源量の変化の予測、潜在水力発電ポテンシャル等の例えば日本国の全国概要評価を目的としたものである。
【0074】
また、このモデルには海底地形が反映され、海域の塩水条件が反映されており、陸域周辺の沿岸海底での地下水湧出の様子も表現できる。
【0075】
図14は、4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションの水・空気2相流解析機能を使用して関東地方を中心とする日本列島中央部において長期平衡計算を行い得られた圧力分布、飽和率分布から流速場を計算し、降雨による水滴が地表面から浸透し湧出する3次元的軌跡を天空からみた正射影として描いたものである。
【0076】
この
図14は人為が加わらない以前の利根川の水循環の原風景を示しており、利根川の表流水及び地下水の流れは、例えば千葉県の銚子に向かわず東京湾に向かっている。
【0077】
図15の左図は、現在の関東の地形を示す陰影図であり、右図は6,000年前の関東の地形を示す陰影図である。6,000年前の縄文前期は海面が約5m上昇していた縄文海進時代であり、
図15の右図は左図の海面をコンピュータで5m上昇させたものであり、縄文時代には海が関東の奥深くまで浸入していたことが明瞭に表されている。関東平野の海の浸入の先端の現在の関宿付近で陸地が繋がっていて、利根川はここで流れの方向を南に変えて東京湾に流れ込んでいたことが明瞭である。
このような歴史的事実比較検証手法によって上記シミュレーション解析の結果は人為が加わらない以前の関東の水循環の原風景を示していると実証でき、4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムが客観的で正確な水循環を社会に提供していくことが可能となる。
【0078】
図16は、本実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションの水・空気2相流解析機能を使用して解析した、相模湾、駿河湾領域の表流水と地下水一体の水循環の結果である。地表面に入力された降雨粒子が地下に浸透し、相模湾、駿河湾で多数の海底湧水となっていくことが解析の結果が示している。
【0079】
図17は、静岡大学の加藤憲二教授によって行われた、上記シミュレーション解析結果の正確性の実証のため、駿河湾沿岸域において数多くの測定ポイントで、深さ方向に海水を採取し、海水塩分濃度・水温・濁度・電気伝導度及びDO(溶存酸素量)の測定データを示すものである。この水質分析結果のSt.T1-8G測定ポイントにおいて、海底96m地点で海水の塩分濃度が淡水に近いことが確認され、更にそのDOはゼロという数値を得た。それは富士山からの地下水が深く駿河湾に入り込みゆっくり海に向かって流下する間に水に含まれていた酸素がバクテリアに捕食されゼロになったことを示している。
【0080】
このような数値の水質・水量分析手法によって、上記シミュレーションの地下水解析の結果は正しいことが実証でき、4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムが客観的で正確な水循環の姿を社会に提供していくことが可能となる。
【0081】
上述した数値の水質・水量分析手法は、本実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成する実証分析手法の一つである。
【0082】
図18は4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションの水・空気2相流解析機能を使用して解析した、濃尾平野における人為が加わらない以前の自然状態の表流水と地下水一体の水循環の解析結果である。
例えば日本国の濃尾平野の自然状態では、地表面を表流水が網の目のように流れていて、一帯が湿地帯であった解析結果となっていて、数百年前の濃尾平野の人々の生活形態は住居を堤防で囲う輪中堤であったことがこの結果からも明らかになってくる。
【0083】
図19は本実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションの水・空気の2相流解析機能を使用して解析した例えば濃尾平野の21世紀の現在の表流水と地下水一体の水循環の解析結果である。近世から近代にかけて人為的な堤防が造られ、表流水の河川は堤防の中に押し込められており、地下水はそれらの下を密度濃く流下している解析結果となっている。
図18、
図19の比較によって数百年の人為の営みが、自然の水循環を変質させていることが示されており、4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムが長期の歴史的現象を再現していることを明瞭に実証している。
【0084】
図20は、本実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションの多相流解析機能を使用して工場やオイルタンクから地下水に油分、重金属、熱溶解性物質が流れる状態を解析する場合を概念的に示すものである。
【0085】
図21は、4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションの反応性物質移行解析機能を使用して難透水槽から地下水面へのトリクロロエチレン(難溶解性)、ベンゼン(溶解性)浸透状態を解析シミュレーションした事例の概念図である。
【0086】
図22は、同じく4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成するシミュレーションの反応性物質移行解析機能を使用して、ある地域の2箇所の汚染源からの農薬汚染の状態を解析シミュレーションした事例の概念図である。
【0087】
以上説明した4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムによれば、過去の地域本来の自然状態での水循環(表流水・地下水、海水)を再現したり、現在の水循環(表流水・地下水、海水)の状態、都市排水、農業用水、化学物質等の循環の状況を解析、推定したり、未来における水循環(表流水・地下水、海水)状態を予測・推定し可視化することが可能となる。
【0088】
これにより、国土の一定地域の陸域で生じる様々な水問題(水資源、水環境、水災害)において要請される実用的、かつ、客観的で、地上及び地下の水の流れを一体化して把握し、再現・解析・予測・可視化することが可能になる4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを実現し提供できるという極めて斬新な効果を奏する。
【0089】
本実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムを構成する各技術要素は、既に具体的に確立しているとともに、本実施例に係る4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムは、コンピュータにより具体的に実現できることは勿論である。
【0090】
上述したように、本実施例の4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムによれば、本発明に係る地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21を実現するために、平面的、2次元的に地下水脈を可視化することができる。
すなわち、衛星画像データ、現地実測データ及び既存公表されている地形・地質データ、或いは衛星画像データ又は現地実測データのいずれかのデータと既存公表されている地形・地質データを用いて生成した一定範囲の地圏における地表、地下を含む3次元地形・地質モデルを記憶手段に記憶し、要請される水問題解決のための解析課題の明確化の基にコンピュータに組み込まれたシミュレーションプログラムの実行によって、過去における地域本来の自然状態での水循環(表流水・地下水、海水)を再現したり、現在における水循環(表流水・地下水、海水)状態、都市排水、農業用水、海水淡水化、化学物質等の水循環の状況を解析、推定したり、未来における水循環(表流水・地下水、海水)状態を予測し推定することが可能となり、これらの解析結果を可視化することにより、本発明に係る地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21を実現するために、平面的、2次元的に地下水脈を可視化することができる。
【0091】
以下、図面を参照して、実施例に係る前記平面的、2次元的に可視化した特定の地盤領域の地下水脈における地下水の位置を3次元的に表示して、ピンポイントでボーリングできるようにするための技術について詳細に説明する。
【0092】
最初に地下水脈の探査に採用されているダイポール・ダイポール配置の比抵抗法について概説する。
一般に、比抵抗法は、あらかじめ測線に沿って多数の電極を設置しておき、ダイポール・ダイポール配置となる4極を組み合わせて、測点を、切替え測点位置を測線に沿ってシフトさせ測点毎に比抵抗を求める作業を実行するものである。
この場合、地下構造が均質でない時には、電極間隔、電極位置、電極配置形などの変化とともに、ダイポール・ダイポール配置で測定する比抵抗の値も変化し、測定する比抵抗の値は真の比抵抗値としての意味を失う。
【0093】
しかし、測定する比抵抗の値は、地下構造と何らかの関係がある量であり、その電極系の影響下にある地下構造を均質であるとみなした時に得られる見掛け比抵抗値ρと考えられる。
【0094】
次に、本実施例に係る地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21に関する特定の地盤領域の地下水脈における地下水の位置を3次元的に表示して、ピンポイントでボーリングできるようにするための技術について説明する。
本実施例の地下水脈における水源の検知・確認システム21、すなわち、特定の地盤領域の地下水脈における地下水の位置を3次元的に表示して、ピンポイントでボーリングできるようにするための技術は、
図24、
図25に示すように、特定の地盤領域に測線に沿って配置される多数の電極群22(
図24には電極番号0~20までの各電極22aを示す)と、前記電極群22のうちダイポール・ダイポール配置となる4極の電極(
図24に示す例においては電極番号0~3までの各電極22a)のうち2極(
図24に示す例においては電極番号0、電極番号3の2極)を電位電極、他の2極(
図24に示す例においては電極番号1、電極番号2の2極)を電流電極とし、これらを組み合わせて、かつ、切り替えて、比抵抗法、ウェンナー法により特定の地盤領域の水平探査、地下垂直探査を実施する測点切替ユニット23と、前記電極群22の各電極22aと、前記測点切替ユニット23とを接続する所要数の電気ケーブル群24と、前記ダイポール・ダイポール配置となる2極の電位電極(初回は電極番号0、電極番号3の電極2a)に例えば静電容量切り替え式で高低2周波数からなる電圧を印可し、他の2極の電流電極(初回は電極番号1、電極番号2の電極22a)により、前記電位電極間に流れる高低2周波数別の電流を検出する測定を特定地盤領域全体の測点毎に行う測定手段25と、前記高低2周波数からなる電圧、検出した高低2周波数別の電流を基に対応する前記特定地盤領域の各測点における水平、垂直方向にわたる高低2周波数別の比抵抗値を測点毎に算出する測点毎比抵抗算出手段31と、算出した各測点における高低2周波数別の比抵抗値を基に、(高周波数に対応する比抵抗値ρH)/(低周波数に対応する比抵抗値ρL)からなる各測点毎におけるインピーダンス効果を求める測点毎インピーダンス効果算出手段41と、を有している。
【0095】
前記測定手段25、測点毎比抵抗算出手段31、測点毎インピーダンス効果算出手段41は、
図24、
図25に示す測定装置30に搭載されている。
また、前記測定装置30に対しては、蓄電池Bにより所要の電力供給を行うように構成している。
なお、
図24下欄は本実施例に係る地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21により描画できる特定地盤領域の探査結果である等比抵抗線、及びインピーダンス効果の表示概念を示すものである。
そして、インピーダンス効果>1の測点位置を地下水脈有り、と推定可能としたものである。
【0096】
次に、本実施例の地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21における特に前記測定装置30の詳細構成について
図25を参照して説明する。
前記測定装置30は、本実施例の地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21の動作プログラムを格納したプログラムメモリ26と、前記動作プログラムに基づき全体の制御を行う制御部27と、前記測定手段25を構成するとともに、前記測点切替ユニット23に対して高低2周波数からなる測点毎の電圧を出力し、かつ、当該測点毎の電圧の値を制御部27に伝送し、また前期電流電極からの側転ごとの検出電流の値を制御部27に伝送する可変周波数電圧出力・検出電流処理部28、及び可変周波数電圧出力・検出電流処理部28が出力する測点毎の電圧の周波数を高低2周波数(例えば高周波数40Hz、低周波数4Hz)に切り替える周波数切替スイッチ29と、を有している。
【0097】
また、前記測定装置30は、前記制御部27を介して伝送される前記測点毎の電圧の値、測点毎の電流の値を記憶する測点毎電圧・電流記憶部34と、前記測点毎比抵抗算出手段31を構成する前記電圧、電流に基づき測点毎の比抵抗値ρ40、ρ4を算出する測点毎比抵抗算出部32及び測点毎比抵抗算出部32の算出結果を記憶する測点毎比抵抗記憶部33と、前記測点毎インピーダンス効果算出手段41を構成するとともに前記測点毎の比抵抗値ρ40、ρ4を基に各測点のインピーダンス効果(ρ40/ρ4)の値を算出する測点毎インピーダンス効果算出部42及び測点毎インピーダンス効果算出部42の算出結果を測点毎に記憶する測点毎インピーダンス効果記憶部43と、を有している。
【0098】
更に、前記測定装置30は、各種文字、画像を表示する表示部44と、前記動作プログラムに基づき前記測点毎の比抵抗値ρ40、ρ4に対応する測点毎等比抵抗線図、前記各測点のインピーダンス効果(ρ40/ρ4)に対応するインピーダンス効果図を前記表示部44の画面に描画する測点毎等比抵抗線図・測点毎インピーダンス効果描画処理部45と、各種文字等の入力操作を行う入力操作部46と、前記蓄電池Bとを具備している。
【0099】
次に、本実施例の地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム1による地盤探査の一連の工程について説明する。
本実施例の地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21による地盤探査は、特定の地盤領域において予め設定した測線に沿って電極群22の各電極22aを等間隔で連続配置し、各電極22aと、前記測点切替ユニット23とを所要数の電気ケーブル群24により接続する。
【0100】
次に、等間隔で連続配置する多数の電極22aの起点側で、ダイポール・ダイポール配置となる4極を組み合わせ、例えば40Hzと4Hzの高低2周波数の電圧を4極の内の2極の電位電極に個別に印加し、残りの2極の電流電極に流れる電流を各々測定しながら、前記測点切替ユニット23により切り替えを行いつつ順に終点側へ進み、一列の測定を終えたら電極間隔を変えて同様な測定を次の測線に沿って行う。
そして、測点毎の高低2周波数の電圧と、対応する測点毎の電流を前記測点毎電圧・電流記憶部34に記憶し、これらを基に各測点毎の比抵抗値ρ40、ρ4を測点毎比抵抗算出部32により算出し、算出結果を測点毎比抵抗記憶部33に記憶する。
【0101】
ダイポール・ダイポール配置による測定が終わったら、前記電極をそのまま利用し、必要な部分には増接してウェンナー配置(或いはシュランベルジヤー配置)による垂直探査を実施し、上述した場合と同様に,各測点毎の比抵抗値ρ40、ρ4を測点毎比抵抗算出部32により算出し、これも測点毎比抵抗記憶部33に記憶する。このようにして当該特定の地盤領域の概略の地質構造を知る。
このとき、表層土の等比抵抗値と深度はそのまま採用し、深い部分は等価の水平層として扱う。
【0102】
次に、ダイポール・ダイポール配置で測定した2周波数別の比抵抗値ρ40、ρ4の内、一方で求めた比抵抗値(例えば比抵抗値ρ40)を、前記測点毎等比抵抗線図・測点毎インピーダンス効果描画処理部45により表示部44の画面において各々中心点直下の深度にプロットして測線に対応する垂直断面の等比抵抗線図を描き、ウェンナー法と合わせて地質の判読を行う。
【0103】
次に、測点毎インピーダンス効果算出部42により、垂直断面の各点の2周波数別の比抵抗値ρ40、ρ4に基づき各点のインピーダンス効果(ρ40/ρ4)の値を算出し、測点毎インピーダンス効果記憶部43に記憶するとともに、各インピーダンス効果(ρ40/ρ4)の値も前記測点毎等比抵抗線図・測点毎インピーダンス効果描画処理部45により表示部44の画面において各々中心点直下の深度に描画し、インピーダンス効果図を描き、このインピーダンス効果図を解析してインピーダンス効果(ρ40/ρ4)>1となる地下水脈の位置を知る。
【0104】
このインピーダンス効果(ρ40/ρ4)>1となる効果を有する測点の位置は、良好な地下水脈が存在するとの判断は、本発明者らの実際の地盤探査による経験から取得したものである。
【0105】
次に、
図26乃至
図28を参照して本実施例の地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21を使用した例えば日本国の特定の地盤領域における実際の探査結果について説明する。
【0106】
図26は、本実施例の地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21を使用して取得した例えば日本国;A地盤領域におけるウェンナー法による比抵抗値(上欄)、ダイポール・ダイポール法による等比抵抗線図(中欄)、インピーダンス効果図(下欄)、及び深度に対応した岩石等の分布図(柱状線図)を示すものである。
【0107】
<ウェンナー法による探査結果について>
図26上欄から明らかなように、例えば日本国;A地盤領域においては、
深度0.0~4.2m:沖積低地堆積粘性土(比抵抗28Ωm)
深度4.2~11.0m:沖積低地堆積砂質土(比抵抗90Ωm)
深度11.0~19.0m:粘性土(比抵抗31Ωm)
深度19.0~50m:凝灰角礫岩(比抵抗300Ωm)
深度50m~:砂岩頁岩
であった。
【0108】
<ダイポ一ル・ダイポ一ル法の等比抵抗線図による探査結果について>
図26中欄から明らかなように、日本国;A地盤領域においては、測点40から起点側は深度20m付近まで砂礫層があり、以下30m付近まで粘性土、測点150~155、深度20~30mの高比抵抗(136~150Ωm)は三面河川の影響、深度20~50mは幾分比抵抗が高く凝灰角礫岩で、終点側は地表部まで分布している。
【0109】
<インピーダンス効果図による探査結果について>
図26下欄から明らかなように、日本国;A地盤領域においては、地下水脈はインピーダンス効果(ρ40/ρ4)>1.1以上を示す。
測点85、深度60~70m以深
測点105~115、深度60~80m以深
測点140、深度40~50m以深
の各領域に期待でき、試掘井に適切である。
【0110】
なお、ダイポール・ダイポール法による等比抵抗線図、及びインピーダンス効果図において、横軸は測点0~200、縦軸は深度0~90mを示すものである。
【0111】
上述したA地盤領域の深度に対応した岩石等の分布を
図26最右欄に柱状線図として示す。
【0112】
解析後、測点110線でボーリングを実施し、400立方メートル/分の地下水脈を発見した。
【0113】
図27は、本実施例の地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21を使用して取得した日本国;B地盤領域におけるダイポール・ダイポール法による等比抵抗線図(上欄)、インピーダンス効果図(下欄)、及び深度に対応した岩石等の分布図を示すものである。
【0114】
探査結果は、以下の通りである。
図27において、浅所高比抵抗層のピーク80~100Ωm,深度10m付近までは砂礫層、比抵抗10~20Ωmは頁岩、比抵抗20~50Ωmは砂質頁岩と砂岩の互層、起点より120m付近の第三紀層とは不整合、左下がりの正断層を推定した。
インピーダンス効果(ρ40/ρ4)の高い測点110の深度40~50mと、深度70m付近を狙い、誤差を含めた測点110線の位置のボーリングを実施し、1.2立方メートル/分の地下水脈を発見した。
【0115】
上述したB地盤領域の深度に対応した岩石等の分布を
図27最右欄に柱状線図として示す。
【0116】
図28は、本実施例の地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21を使用して取得した例えば日本国;C地盤領域におけるウェンナー法による比抵抗値(上欄)、ダイポール・ダイポール法による等比抵抗線図(中欄)、インピーダンス効果図(下欄)、及び深度に対応した岩石等の分布図(柱状線図)を示すものである。
【0117】
<ウェンナー法による探査結果について>
図28上欄から明らかなように、例えば日本国;C地盤領域においては、
深度0.8~1.7m:砂質土
深度1.7~6.5m:砂礫
深度6.5~30.0m:粘性土
深度30.0~60m:洪積砂礫又は軟岩
深度60~74m:強風化帯又は断層
深度74m~:中硬岩
であった。
【0118】
<ダイポ一ル・ダイポ一ル法の等比抵抗線図による探査結果について>
図28中欄から明らかなように、ウェンナー法で深度6.6mまでに砂礫層があり、電極聞隔の都合で深度10m付近に現れている。
深度15~40mに挟まれる低比抵抗(120Ωm以下)は最も比抵抗値が下がる。
深度25~30mまでが粘性土で、上昇過程にある部分は砂貫土である(深度50m付近までが洪積砂礫層と推定される)。
深度50m以下の右隅は基盤岩であり、測点110深度50mと測点80深度70mとを結ぶ右下がりの面は断層面の可能性がある。
【0119】
図28下欄にインピーダンス効果図による探査結果を示す。
図28下欄から明らかなように、例えば日本国;C地盤領域においては、インピーダンス効果(ρ40/ρ4)>1は地下水の可能性があるが、比抵抗が高くρ40/ρ4=1.07~1.18が集中する測点85~120の30m以深を対象に深度110m以降に試掘井を勧める。
【0120】
上述したC地盤領域の深度に対応した岩石等の分布を
図28最右欄に柱状線図として示す。
解析後、測点100線でボーリングを実施し、140リットル/分の地下水脈を発見した。
【0121】
図29は、本実施例の地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21を使用して取得した例えば日本国;D地盤領域におけるアースダムの漏水個所の探査結果を示すものであり、同図上欄はD地盤領域におけるダイポール・ダイポール法による等比抵抗線図、同図下欄はインピーダンス効果図を示すものである。
同図下欄のインピーダンス効果図を基に8個の小さな漏水個所と、2個の大きな漏水個所を発見した。
【0122】
このように本実施例の地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21は、ダム等における地下水管の存在する地盤領域の漏水個所の探査用としても有効である。
【0123】
本実施例に係る地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21は、特定の地盤領域に関して実際にボーリングをしないで、地表からの電気探査で地下水脈をピンポイントで推定し確認することができるという斬新な効果を奏する。
【0124】
また、特定の地盤領域の傾斜の有無にかかわらず的確な地下水脈における地下水の検知・確認を実現できるとともに、従来のボーング手法に比べたら遥かに低価格で特定の地盤領域の地下水脈における地下水の検知・確認を実施できるという利点も存する。
【0125】
上述したように、本発明に係る特定の地盤領域の地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21を実現するための技術、すなわち、前記平面的、2次元的に地下水脈を可視化した地下水脈における地下水の位置を3次元的にピンポイントとで表示することができる。
すなわち、特定の地盤領域に測線に沿って配置される多数の電極群と、前記電極群のうちダイポール・ダイポール配置となる4極の電極のうち2極を電位電極、他の2極を電流電極とし、これらを組み合わせ、かつ、切り替えて、比抵抗法、ウェンナー法により特定の地盤領域の水平探査、地下垂直探査を実施する測点切替ユニットと、前記ダイポール・ダイポール配置となる2極の電位電極に高低2周波数からなる電圧を印可し、他の2極の電流電極により前記電位電極間に流れる高低2周波数別の電流を検出する測定を特定地盤領域全体の測点毎に行う測定手段と、前記高低2周波数からなる電圧、検出した高低2周波数別の電流を基に対応する前記特定地盤領域の各測点における水平、垂直方向にわたる高低2周波数別の比抵抗値を測点毎に算出する測点毎比抵抗算出手段と、算出した各測点における高低2周波数別の比抵抗値を基に、(高周波数に対応する比抵抗値)/(低周波数に対応する比抵抗値)からなる各測点毎におけるインピーダンス効果を求める測点毎インピーダンス効果算出手段と、を有し、インピーダンス効果>1の測点位置を地下水脈有り、と推定可能とした構成を基に、特定の地盤領域の地下水の位置を3次元的にピンポイントで表示するシステムを実現することができる。
【0126】
以上説明したように、本発明によれば、特定の地盤領域において、平面的、2次元的に地下水脈を可視化して、当該可視化した地下水脈における地下水の位置を3次元的に表示して、ピンポイントでボーリングを行うことができるシステムを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上説明した4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステムは、上述したような例えば日本国内の一定の地圏における水循環の再現・解析・予測・可視化に用いる他、例えば外国の特定地域における水循環の再現・解析・予測・可視化に用いて国際貢献に資する等の応用が可能であり、また、上述した地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム21は、特定の地盤領域の地下水脈における地下水或いは地下水の検知・確認用として、或いはダム等における地下水管が埋設されている地盤領域の地下漏水の検知・確認用として広範に利用可能である。
【符号の説明】
【0128】
1 4次元水循環再現・解析・予測・可視化シミュレーションシステム
11 制御部
12 プログラムメモリ
13 データベース
14 演算部
15 画像生成処理部
16 シミュレーション結果記憶部
17 キーボード
18 マウス
19 カラープリンタ
20 表示部
21 地下水脈及び当該地下水脈における地下水の検知・確認システム
22 電極群
22a 電極
23 測点切替ユニット
24 電気ケーブル群
25 測定手段
26 プログラムメモリ
27 制御部
28 可変周波数電圧出力・検出電流処理部
29 周波数切替スイッチ
30 測定装置
31 測点毎比抵抗算出手段
32 測点毎比抵抗算出部
33 測点毎比抵抗記憶部
34 測点毎電圧・電流記憶部
41 測点毎インピーダンス効果算出手段
42 測点毎インピーダンス効果算出部
43 測点毎インピーダンス効果記憶部
44 表示部
45 測点毎等比抵抗線図・測点毎インピーダンス効果描画処理部
46 入力操作部
B 蓄電池