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  • 特許-神経変性疾患の予防及び/又は治療剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】神経変性疾患の予防及び/又は治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20231208BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20231208BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20231208BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231208BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K31/506
A61K31/55
A61K45/00
A61P25/28
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022113647
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2019520270の分割
【原出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2022137234
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2017102176
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「再生医療実用化研究事業」委託事業、「難治性疾患創薬シーズの探索と薬剤安全性評価法開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】井上 治久
(72)【発明者】
【氏名】今村 恵子
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/166295(WO,A1)
【文献】特表2016-523980(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216705(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61P 25/28
A61K 31/496
A61K 31/506
A61K 31/55
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Src/c-Abl経路阻害薬を含有する、前頭側頭葉変性症の予防及び/又は治療剤であって、前記Src/c-Abl経路阻害薬がボスチニブ(bosutinib)又はケンパウロン(kenpaullone)であり、前記前頭側頭葉変性症がFTLD-Tauである、剤
【請求項2】
前記Src/c-Abl経路阻害薬がボスチニブ(bosutinib)である、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
前記FTLD-TauがMAPT遺伝子に変異を有するものである、請求項1又は2に記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性疾患の予防及び/又は治療剤に関する。より詳細には、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症及びαシヌクレイノパチーからなる群から選択される神経変性疾患の予防及び/又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease; 以下、ADと略記する場合もある)は、認知症の代表とされる脳の変性疾患であり、その患者数は増加の一途をたどっている。AD患者の脳神経機能低下に伴う生活の質(Quality of Life)の低下は、患者本人に加え家族など周囲に多大な影響を与え、現代社会の抱える深刻な問題となっている。2010年時点でAD患者3500万人にかかる医療費は年間6040億ドルであり、2050年にはAD患者が1億1400万人に増加し、さらに医療費が高騰することが予測される。このような状況の下、AD治療に対する、ドラッグ・リポジショニング(DR)、すなわち、既存薬の転用が重要視されている(非特許文献1)。既存薬は、すでに膨大な安全性や体内動態に関する臨床情報が蓄積されており(Chembl databaseなど)、安全性が確立されている。そのため、臨床症状はないがアミロイド検査で陽性と判定されたAD予備群に対する先制治療としての介入が期待できる。
【0003】
アルツハイマー病同様に、進行性の神経変性障害を示す疾患として、前頭側頭葉変性症(FTLD)が知られている。前頭側頭葉変性症は、アルツハイマー病に次いで2番目若しくは3番目に頻度の高い早期発症型神経変性認知症であり、顕著な挙動及び人格変化の症状を示し、しばしば言語機能障害が付随して起こり、これが徐々に認知障害及び認知症へと発展していくこととなる。また、アルツハイマー病同様に研究が進められているが、発症機構の全貌は未だ明らかになっていない。
【0004】
また、パーキンソン病はアルツハイマー病と並ぶ神経変性疾患の代表的な疾患であり、患者の脳には黒質にレビー小体(Lewy body)が出現することが知られている。レビー小体とは、αシヌクレインと呼ばれる140アミノ酸残基からなるタンパク質の凝集体であり、パーキンソン病の他にレビー小体型認知症、多系統萎縮症等のようなレビー小体病と称される疾患の患者の脳にも出現することが知られており、脳内におけるαシヌクレインの蓄積を伴う疾患は、αシヌクレイノパチーと呼ばれている。αシヌクレイノパチーの進行には、αシヌクレインの凝集、すなわちαシヌクレイン線維形成が重大な役割を果たしていると考えられており、αシヌクレイン線維形成を抑制等する物質について各方面で活発に研究が進められている。
【0005】
しかしながら、これらの神経変性症の研究は精力的に進められているが、その発症機構の全貌は明らかではなく、その根治薬はいまだ開発されていないのが現状である。
【0006】
ところで、患者由来のiPS細胞(疾患iPS細胞)から分化誘導された病因となる細胞は、in vitroで患者の病態を再現していると予測されることから、有力な薬効評価系として期待されている。ヒトiPS細胞由来神経細胞に関する最近の報告では、薬物応答性を評価するツールとしてのヒト神経細胞の重要性が強調されている(非特許文献2-4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Front. Biosci. (Schol. Ed). 7,184-8 (2015)
【文献】PLoS One 6, e25788 (2011)
【文献】JAMA Neurol. 71, 1481-9 (2014)
【文献】Stem Cell Reports 1,491-498 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症及びαシヌクレイノパチーからなる群から選択される神経変性疾患の予防及び/又は治療活性を有する新規薬剤を提供するとともに、現実的な医薬品としての該神経変性疾患の予防及び/又は治療剤の開発を加速させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、疾患iPS細胞由来の神経細胞を用いて、既に医薬品として上市されている薬剤を含む既知の化合物ライブラリーから、抗筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)活性を有する化合物をスクリーニングした。その結果、チロシンキナーゼであるSrc/c-Ablの阻害薬がALS運動ニューロンの生存を改善することを見出した。さらに該Src/c-Abl阻害薬及び既に抗ALS活性が既知のkenpaullone(Cell Stem Cell, 2013; 12(6):713-726)が他の神経変性疾患に対しても効果があるか研究を進めた結果、特定の神経変性疾患の患者由来の皮質ニューロンの生存を改善することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1] 1種以上のSrc/c-Abl経路阻害薬を含有する、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症及びαシヌクレイノパチーからなる群から選択される神経変性疾患の予防及び/又は治療剤。
[2] 前記Src/c-Abl経路阻害薬がbosutinib若しくはその類縁体、imatinib若しくはその類縁体、nilotinib若しくはその類縁体又はkenpaullone若しくはその類縁体である、[1]に記載の剤。
[3] 前記Src/c-Abl経路阻害薬がbosutinib又はその類縁体である、[2]に記載の剤。
[4] 前記アルツハイマー病がアミロイド前駆体タンパク質遺伝子に変異を有するものである、[1]~[3]のいずれかに記載の剤。
[5] 前記前頭側頭葉変性症がFTLD-Tauである、[1]~[3]のいずれかに記載の剤。
[6] 前記FTLD-TauがMAPT遺伝子に変異を有するものである、[5]に記載の剤。
[7] 前記αシヌクレイノパチーがレビー小体型認知症である、[1]~[3]のいずれかに記載の剤。
[8] 哺乳動物に対し、1種以上のSrc/c-Abl経路阻害薬の有効量を投与することを特徴とする、該哺乳動物におけるアルツハイマー病、前頭側頭葉変性症及びαシヌクレイノパチーからなる群から選択される神経変性疾患の予防及び/又は治療方法。
[9] アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症及びαシヌクレイノパチーからなる群から選択される神経変性疾患の予防及び/又は治療に使用するための、1種以上のSrc/c-Abl経路阻害薬。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、αシヌクレイノパチーなどの神経変性疾患に対する予防及び/又は治療が可能となる。特に、本発明では安全性が確認されている既存薬を有効成分とするものは、副作用の懸念が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、アルツハイマー病(APP E693Δ)、前頭側頭葉変性症(MAPT R406W又はMAPT Intron 10+14 C→T)又はレビー小体型認知症(SNCA A53T)の患者由来のiPS細胞から誘導した皮質ニューロンの生存に及ぼす、bosutinib、imatinib、nilotinib、kenpaulloneの保護効果を示す図である。各皮質ニューロンのカラムの棒グラフは、左から0.1 μM添加、1 μM添加又は1 μM添加、10 μM添加を示す(n = 6; one-way ANOVA, *: p<0.05; post hoc test.)。 バーは平均値 ± 標準偏差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、1種以上のSrc/c-Abl経路阻害薬(これらの化合物を「本発明の化合物」ともいう)を含有する、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症及びαシヌクレイノパチーからなる群から選択される神経変性疾患の予防及び/又は治療剤(以下「本発明の予防/治療剤」ともいう)を提供する。
【0014】
Src/c-Abl経路阻害薬は、受容体型チロシンキナーゼ(RTK)、Src、c-Abl及びプロテインキナーゼC(PKC)が関与する経路を阻害する薬剤を意味し、該阻害薬としては、これらのタンパク質の少なくとも1種の活性及び/又は発現を阻害する薬剤が挙げられる。例えば、tivozanib、pazopanib、sunitinib、BMS777607、CYC116、axitinib、KW2449、VX-680、crizotinib、MGCD-265、bosutinib、imatinib、nilotinib、dasatinib、sarakatinib、enzastaurin、bisindolylmaleimide I、kenpaullone及びこれらの類縁体などが挙げられる。中でも、bosutinib、imatinib、nilotinib、kenpaullone又はこれらの類縁体が好ましく、特にbosutinib又はその類縁体が好ましい。また、発現を阻害する薬剤としては、RTK、Src、c-Abl又はPKCに対するアンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNA、リボザイムなどが挙げられる。これらの発現を阻害する物質は、遺伝子の塩基配列に基づいて、公知の設計ソフトを用いて適宜設計し、DNA/RNA自動合成機を用いて容易に合成することができ、また、市販の薬剤を用いることもできる。例えば、Life Technologies社から、Src siRNA(siRNA ID:s13414、s13413等)、c-Abl siRNA(siRNA ID:s866、s864等)などを入手することができる。
【0015】
本発明において、治療対象となるアルツハイマー病(AD)は、孤発性及び家族性のいずれのADも対象とする。家族性ADの場合、原因遺伝子は特に制限されず、アミロイド前駆体タンパク質(Amyloid Precursor Protein; APP)、プレセニリン1(Presenilin 1; PSEN1)、プレセニリン2(Presenilin 2; PSEN2)等をはじめとする任意の既知原因遺伝子であり得る。一実施態様において、APP変異を有する家族性ADの場合、当該APP遺伝子変異としては、dup APP 変異、APP KM670/671NL 変異、APP D678N 変異、APP E682K 変異、APP A692G 変異、APP E693K 変異、APP E693Q 変異、APP E693G 変異、APP E693del(APP E693Δ) 変異、APP D694N 変異、APP L705V 変異、APP A713T 変異、APP T714A 変異、APP T714I 変異、APP V715M 変異、APP V715A 変異、APP I716V 変異、APP I716F 変異、APP I716T 変異およびAPP V717I 変異等が挙げられるが、これらに限定されない。ここで、例えばAPP E693Δとは、APP内にE693の欠損型変異を意味する。
【0016】
本発明において「前頭側頭葉変性症(FTLD)」とは、前頭葉、前部側頭葉に病変の首座を有する古典的ピック病をプロトタイプとした変性性認知症を意味し、FTLDの病理分類としては、FTLD-tau(frontotemporal lobar degeneration tauopathy)、FTLD-TDP、FTLD-FUS、FTLD-UPS、FTLD-without inclusionが挙げられる。本発明において、治療対象となるFTLDは、特に限定されないが、FTLD-tauが好ましく、特にMAPT遺伝子変異を伴うFTLDが好ましい。中でも、MAPTのイントロンの変異(例えば、10+14C →Tの変異)や、MAPTのエクソンの変異(例えば、R406W 変異、P301L 変異)などにより、異常に折りたたまれた(ミスフォールドされた)タウタンパク質の蓄積が認められるFTLD-Tau(FTDP-17)が特に好ましい。
【0017】
本発明において、治療対象となるαシヌクレイノパチーとして、例えば、パーキンソン病(PD)、孤発性または遺伝性のレビー小体型認知症(DLB)、αシヌクレイン沈着を伴う純粋自律神経不全症(PAF)、多系統萎縮症(MSA)、脳内鉄蓄積を伴う遺伝性神経変性及び高齢での偶発的レビー小体病などが挙げられる。遺伝学的な証拠から、αシヌクレインをコードする遺伝子における点変異は、早期発症性で重症の優性遺伝型のPDと関連していることが示されている(Krueger et al., (1997) Nat. Genet., 18, 106-108、Zarranz et al., (2004) Ann. Neurol., 55(2):164-73、Polymeropoulos et al., (1997) Science, 276:2045-7)。当該αシヌクレイン遺伝子変異としては、αシヌクレインの30番目のアラニンがプロリン(A30P)に、46番目のグルタミン酸がリジン(E46K)に、又は53番目のアラニンがトレオニン(A53T)になるアミノ酸変化を引き起こす変異などが挙げられる。
【0018】
上記「Bosutinib(SKI-606)」の類縁体としては、下記式(I):
【0019】
【化1】
【0020】
[式中:
nは、1-3の整数であり;
Xは、N、CHであり、但し、XがNのとき、nは2または3であり;
Rは、1~3個の炭素原子からなるアルキルであり;
は、2,4-ジクロロおよび5-メトキシ、2,4-ジクロロ、3,4,5-トリメトキシ、2-クロロおよび5-メトキシ、2-メチルおよび5-メトキシ、2,4-ジメチル、2,4-ジメチルおよび5-メトキシ、または2,4-ジクロロおよび5-エトキシであり;
は、1~2個の炭素原子からなるアルキルである]
で表される化合物が挙げられる。
【0021】
上記式(I)の各基の説明において上位概念として記載される各用語(Rにおける「1~3個の炭素原子からなるアルキル」、Rにおける「1~2個の炭素原子からなるアルキル」)は、WO 2005/046693(特表2007-533655)における定義や説明に従う。
【0022】
Bosutinibの類縁体の具体的な例としては、以下の化合物が挙げられる。
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-7-[3-(4-エチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-6-メトキシ-3-キノリンカルボニトリル;
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[2-(4-メチル-1-ピペラジニル)エトキシ]-3-キノリンカルボニトリル;
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-7-[2-(4-エチル-1-ピペラジニル)エトキシ]-6-メトキシ-3-キノリンカルボニトリル;
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]-3-キノリンカルボニトリル;
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[2-(1-メチルピペリジン-4-イル)エトキシ]-3-キノリンカルボニトリル;
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(1-メチルピペリジン-4-イル)プロポキシ]キノリン-3-カルボニトリル;
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-7-[(1-エチルピペリジン-4-イル)メトキシ]-6-メトキシキノリン-3-カルボニトリル;
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロポキシ]キノリン-3-カルボニトリル;
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[3-(4-エチルピペラジン-1-イル)プロポキシ]キノリン-3-カルボニトリル;
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[3-(1-メチルピペリジン-4-イル)プロポキシ]キノリン-3-カルボニトリル;
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[2-(4-メチル-1-ピペラジニル)エトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-エトキシ-7-[2-(1-メチルピペリジン-4-イル)エトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-プロピル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル;
4-[(2,4-ジクロロフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]-3-キノリンカルボニトリル;
6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]-4-[(3,4,5-トリメトキシフェニル)アミノ]キノリン-3-カルボニトリル;
4-[(2-クロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;
6-メトキシ-4-[(5-メトキシ-2-メチルフェニル)アミノ]-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;
4-[(2,4-ジメチルフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;
6-メトキシ-4-[(5-メトキシ-2,4-ジメチルフェニル)アミノ]-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル;
4-[(2,4-ジクロロ-5-エトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[(1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ]キノリン-3-カルボニトリル
【0023】
上記「imatinib」の類縁体としては、下記式(II):
【0024】
【化2】
【0025】
[式中:
1 は4-ピラジニル、1-メチル-1H-ピロリル、アミノ-もしくはアミノ-低級アルキル-置換化フェニル〔ここで各ケースにおけるアミノ基は遊離、アルキル化もしくはアシル化されている〕、5員環の炭素原子にて結合した1H-インドリルもしくは1H-イミダゾリルであるか、又は環の炭素原子にて結合し、且つ窒素原子にて酸素によって置換されているかもしくは置換されていない、未置換もしくは低級アルキル置換化ピリジルであり、R2 及びR3 はそれぞれ互いに独立して水素又は低級アルキルであり、基R4、R5、R6、R7 及びR8 のうちの1又は2個の基はそれぞれニトロ、フルオロ-置換化低級アルコキシであるか、又は次式(III)の基
【0026】
【化3】
【0027】
〔式中、R9 は水素又は低級アルキルであり、Xはオキソ、チオ、イミノ、N-低級アルキル-イミノ、ヒドロキシイミノ又はO-低級アルキル-ヒドロキシイミノであり、Yは酸素又は基NHであり、nは0又は1であり、そしてR10は少なくとも5個の炭素原子を有する脂肪族基であるか、又は芳香族、芳香族-脂肪族、脂環式、脂環式-脂肪族、複素環もしくは複素環-脂肪族基である〕であり、そして残りの基R4、R5、R6、R7 及びR8 はそれぞれ互いに独立して水素であるか、未置換であるか又は遊離もしくはアルキル化アミノ、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニルもしくはモルホリニルにより置換された低級アルキルであるか、又は低級アルカノイル、トリフルオロメチルであるか、遊離、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシであるか、遊離、アルキル化もしくはアシル化アミノであるか、又は遊離もしくはエステル化カルボキシである]
で表される化合物が挙げられる。
【0028】
上記式(II)の各基の説明において上位概念として記載される各用語(例えば、「低級アルキル」、「少なくとも5個の炭素原子を有する脂肪族基」、「アルキル化アミノ」、「低級アルカノイル」等)やその他の用語は、特開平6-087834における定義や説明に従う。
【0029】
imatinibの類縁体の具体的な例としては、以下の化合物が挙げられる。
N-(3-ニトロフェニル)-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-〔3-(4-クロロベンゾイルアミド)-フェニル〕-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-(3-ベンゾイルアミド-フェニル)-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-〔3-(2-ピリジル)カルボキサミド-フェニル〕-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-〔3-(3-ピリジル)カルボキサミド-フェニル〕-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-〔3-(4-ピリジル)カルボキサミド-フェニル〕-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-(3-ペンタフルオロ-ベンゾイルアミド-フェニル)-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-〔3-(2-カルボキシ-ベンゾイルアミド)フェニル〕-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-(3-n-ヘキサノイルアミド-フェニル)-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-(3-ニトロ-フェニル)-4-(2-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-(3-ニトロ-フェニル)-4-(4-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-〔3-(2-メトキシ-ベンゾイルアミド)-フェニル〕-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-〔3-(4-フルオロ-ベンゾイルアミド)-フェニル〕-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-〔3-(4-シアノ-ベンゾイルアミド)-フェニル〕-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-〔3-(2-チエニルカルボキサミド)-フェニル〕-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-(3-シクロヘキシルカルボキサミド-フェニル)-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-〔3-(4-メチル-ベンゾイルアミド)-フェニル〕-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-〔3-(4-クロロベンゾイルアミド)-フェニル〕-4-(4-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-{3-〔4-(4-メチル-ピペラジノメチル)-ベンゾイルアミド〕-フェニル}-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-(5-ベンゾイルアミド-2-メチル-フェニル)-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-{5-〔4-(4-メチル-ピペラジノ-メチル)-ベンゾイルアミド〕-2-メチル-フェニル}-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-〔5-(4-メチル-ベンゾイルアミド)-2-メチルフェニル〕-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-〔5-(2-ナフトイルアミド)-2-メチル-フェニル〕-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-〔5-(4-クロロ-ベンゾイルアミド)-2-メチル-フェニル〕-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-〔5-(2-メトキシ-ベンゾイルアミド)-2-メチル-フェニル〕-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-(3-トリフルオロ-メトキシ-フェニル)-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-(3-〔1,1,2,2-テトラフルオロ-エトキシ〕-フェニル)-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-(3-ニトロ-5-メチル-フェニル)-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-(3-ニトロ-5-トルフルオロメチル-フェニル)-4-(3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-(3-ニトロ-フェニル)-4-(N-オキシド-3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン;
N-(3-ベンゾイル-アミド-5-メチル-フェニル)-4-(N-オキシド-3-ピリジル)-2-ピリミジン-アミン
【0030】
上記「nilotinib」の類縁体としては、下記式(IV):
【0031】
【化4】
【0032】
[式中:
は水素、低級アルキル、低級アルコキシ-低級アルキル、アシルオキシ-低級アルキル、カルボキシ-低級アルキル、低級アルコキシカルボニル-低級アルキルまたはフェニル-低級アルキルを示し;
は水素、所望により1個もしくはそれ以上の同一もしくは相異なる残基Rで置換されていてもよい低級アルキル、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または環の窒素原子0個、1個、2個もしくは3個および酸素原子0個もしくは1個および硫黄原子0個もしくは1個を有する単環もしくは双環のヘテロアリール基を示す、ここに各基はいずれも非置換であるかまたはモノ-もしくはポリ置換されている;そして
はヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N-モノ-もしくはN,N-ジ置換カルバモイル、アミノ、モノ-もしくはジ置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または環の窒素原子0個、1個、2個もしくは3個および酸素原子0個もしくは1個および硫黄原子0個もしくは1個を有する単環もしくは双環のヘテロアリール基を示す、ここに各基はいずれも非置換であるかまたはモノ-もしくはポリ置換されている;または
およびRは一体となって、所望により低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、モノ-もしくはジ置換アミノ、オキソ、ピリジル、ピラジニルもしくはピリミジニルでモノ-もしくはジ置換されていてもよい、炭素原子4個、5個もしくは6個を有するアルキレン;炭素原子4個もしくは5個を有するベンズアルキレン;または酸素1個および炭素原子3個もしくは4個を有するオキサアルキレン;あるいは窒素が非置換であるかまたは低級アルキル、フェニル-低級アルキル、低級アルコキシカルボニル-低級アルキル、カルボキシ-低級アルキル、カルバモイル低級アルキル、N-モノ-もしくはN,N-ジ置換カルバモイル低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ、フェニル、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニルもしくはピラジニルで置換された、窒素1個および炭素原子3個もしくは4個を有するアザアルキレンを示し;そして
は水素、低級アルキルまたはハロゲンを示す]
で表される化合物が挙げられる。
【0033】
上記式(IV)の各基の説明において上位概念として記載される各用語(例えば、「低級アルキル」、「低級アルコキシ」、「シクロアルキル」、「ベンズシクロアルキル」、「ヘテロシクリル」、「アリール基」、「単環もしくは双環のヘテロアリール基」、「ハロゲン」等)やその他の用語は、WO2004/005281(特表2005-533827)における定義や説明に従う。
【0034】
nilotinibの類縁体の具体的な例としては、以下の化合物が挙げられる。
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]]アミノベンズアニリド;
4-メチル-N-(3-ピリジニル)-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
N-(4-クロロフェニル)-4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
2(R)-および2(S)-[4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンゾイルアミノ]プロパン酸;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-(8-キノリニル)ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-(3-[トリフルオロメトキシ]フェニル)ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-(2-ピロリジノエチル)ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-(3-ピロリジノフェニル)ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-(1-[2-ピリミジニル]-4-ピペリジニル])ベンズアミド;
N-(4-ジ[2-メトキシエチル]アミノ-3-トリフルオロメチルフェニル)-4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
N-(4-[1H-イミダゾリル]-3-トリフルオロメチルフェニル])-4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-(2-ピロリジノ-5-トリフ N-(3,4-ジフルオロフェニル)-4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-(3-トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-(3-トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド;
N-(3-クロロ-5-トリフルオロメチルフェニル)-4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
N-(4-ジエチルアミノブチル)-4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
4-メチル-N-[4-(4-メチル-1-ピペラジニル)-3-トリフルオロメチルフェニル]-3-[[4-(3-ピリジニル)-2- ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-3-トリフルオロメチルフェニル]ベンズアミド;
4-メチル-N-[4-(2-メチル-1H-イミダゾリル)-3-トリフルオロメチルフェニル]-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
4-メチル-N-(4-フェニル-3-トリフルオロメチルフェニル)-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
4-メチル-N-[4-(4-メチル-1H-イミダゾリル)-3-トリフルオロメチルフェニル]-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
2(R)-および2(S)-[4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンゾイルアミノ]-3-[4-ヒドロキシフェニル]プロパン酸メチル;
N-[2-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノメチル)フェニル]-4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
N-[3-[2-(1H-イミダゾリル)エトキシ]フェニル]-4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
4-メチル-N-[3-モルホリノ-5-トリフルオロメチルフェニル]-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
N-(4-ジエチルアミノ-3-トリフルオロメチルフェニル)-4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[3-(3-ピリジニル)-5-トリフルオロフェニル]ベンズアミド;
N-[3-[3-(1H-1-イミダゾリル)プロポキシ]フェニル]-4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[4-(3-ピリジニル)-3-トリフルオロフェニル]ベンズアミド;
4-メチル-N-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)-5-トリフルオロフェニル]-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
4-メチル-N-[3-メチルカルバモイル-5-トリフルオロフェニル]-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
4-メチル-N-[3-メチルカルバモイル-5-モルホリノ]-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[3-[3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロポキシ]フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[3-[2-(1H-イミダゾール-1-イル)エトキシ]フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[4-(エチルアミノ)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[4-(ジエチルアミノ)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
(±)-4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[4-[(2-ヒドロキシプロピル)アミノ]-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[4-[ビス(2-メトキシエチル)アミノ]-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[4-(4-メチル-1-ピペラジニル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[4-(1-ピペリジニル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[4-(1-ピロリジニル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[4-(4-モルホリニル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[4-フェニル-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[3-[4-(3-ピリジニル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[4-(1H-イミダゾール-1-イル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[4-(2,4-ジメチル-1H-イミダゾール-1-イル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[4-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[4-(2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[3-(4-モルホリニル)-5-[(メチルアミノ)カルボニル]フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[3-[(メチルアミノ)カルボニル]-5-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[5-(3-ピリジニル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[5-(4-モルホリニル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[5-(2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[5-(4-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[5-(5-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド;
4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-ピリミジニル]アミノ]-N-[2-(1-ピロリジニル)-5-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド
【0035】
上記「kenpaullone」の類縁体としては、下記式(V):
【0036】
【化5】
【0037】
[式中:
Aは単結合または二重結合によって右に結合されている酸素または硫黄であり;R2は水素、アリール、低級脂肪族置換基、特にアルキルおよび低級アルキルエステルからなる群より選択され;R4~R7はアルコキシ、アミノ、アシル、脂肪族置換基、特にアルキル、アルケニルおよびアルキニル置換基、脂肪族アルコール、特にアルキルアルコール、脂肪族ニトリル、特にアルキルニトリル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、ハロゲン、水素、ヒドロキシル、イミノならびにα、β不飽和ケトンからなる群より個別に選択され;R8~R11は脂肪族置換基、特にアルキル、アルケニルおよびアルキニル置換基、特に低級脂肪族置換基、脂肪族アルコール、特にアルキルアルコール、アルコキシ、アシル、シアノ、ニトロ、エポキシ、ハロアルキル基、ハロゲン、水素ならびにヒドロキシルからなる群より個別に選択され;R12は脂肪族の基、特に低級アルキル基、脂肪族アルコール、特にアルキルアルコール、カルボン酸、および水素からなる群より選択される]
で表される化合物が挙げられる。
【0038】
上記式(V)の各基の説明において上位概念として記載される各用語(例えば、「低級」等)やその他の用語は、WO1999/065910(特表2002-518395)における定義や説明に従う。
【0039】
kenpaulloneの類縁体の具体的な例としては、以下の化合物が挙げられる。
7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
2-ブロモ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-クロロ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
11-クロロ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
10-ブロモ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
8-ブロモ-6,11-ジヒドロ-チエノ[3',2':2,3アゼピノ[4,5-b]インドール-5(4H)-オン;
9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-4-メトキシ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
7,12-ジヒドロ-4-メトキシ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-2,3-ジメトキシ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-2,3-ジヒドロキシ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
7,12-ジヒドロ-2,3-ジメトキシ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
7,12-ジヒドロ-9-トリフルオロメチル-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;7,12-ジヒドロ-2,3-ジメトキシ-9-トリフルオロメチル-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
2-ブロモ-7,12-ジヒドロ-9-トリフルオロメチル-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-チオン;
9-ブロモ-5,12-ビス-(t-ブチルオキシカルボニル)-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-12-(t-ブチルオキシカルボニル)-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-5,7-ビス-(t-ブチルオキシカルボニル)-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-5,7,12-トリ-(t-ブチルオキシカルボニル)-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-5-メチルオキシカルボニルメチル-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-12-メチルオキシカルボニルメチル-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-12-(2-ヒドロキシエチル)-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
2,9-ジブロモ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
8,10-ジクロロ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-シアノ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-5-メチル-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
5-ベンジル-9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-5-メチル-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-12-メチル-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-12-エチル-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-12-(2-プロペニル)-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
7,12-ジヒドロ-9-メチル-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
7,12-ジヒドロ-9-メトキシ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-フルオロ-7,12-ジヒドロ-12-(2-プロペニル)-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
11-ブロモ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-2-(メチルイミノアミン)-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-2-(カルボン酸)-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-10-ヒドロキシ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-11-ヒドロキシメチル-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
7,12-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
7,12-ジヒドロ-2,3-ジヒドロキシ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
2,3-ジメトキシ-9-ニトロ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-シアノ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
2,3-ジメトキシ,9-シアノ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
9-ニトロ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
3-(6-オキソ-9-トリフルオロメチル-5,6,7,12-テトラヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-2-イル)-プロピオニトリル;
2-ブロモ-9-ニトロ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
3-(6-オキソ-9-トリフルオロメチル-5,6,7,12-テトラヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-2-イル)-アクリロニトリル;
2-(3-ヒドロキシ-1-プロピニル),9-トリフルオロメチル-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
2-ヨード-9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
2-(3-オキソ-1-ブテニル),9-トリフルオロメチル-7,12-テトラヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
8-クロロ-6,11-ジヒドロ-チエノ[3',2':2,3]アゼピノ[4,5-b]インドール-5(4H)-オン;
2-ヨード,9-トリフルオロメチル-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
7,12-ジヒドロ-ピリド[3',2':4,5]ピロロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
11-メチル-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
2-[2-(1-ヒドロキシシクロヘキシル)-エチニル],9-トリフルオロメチル-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
2-シアノ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
2-ヨード-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
11-エチル-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン;
8-メチル-6,11-ジヒドロ-チエノ[3',2':2,3]アゼピノ[4,5-b]インドール-5(4H)-オン;
3-(6-オキソ-9-トリフルオロメチル-5,6,7,12-テトラヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-2-イル)アクリル酸メチルエステル
【0040】
本発明の化合物は、市販品を用いるか、あるいは各化合物についてそれぞれ自体公知の方法により製造することができる。
Bosutinib若しくはその類縁体は、例えば、米国特許第6,002,008号および第6,780,996号、あるいは、“Boschelli,D.H. et al., J.med.chem.,44, 3965(2001)、Boschelli,D.H. et al., J med.chem.,44, 822(2001)、Boschelli,D.H. et al., Bioorg.med.chem.lett., 13, 3797(2003)、Boschelli,D.H. et al., J.med.chem.,47,1599(2004)、及びYe,F. et al., 221th National Meeting of the American Chemical Society,San diego,California(April,2001)”に記載される方法に従って製造することができる。imatinib若しくはその類縁体は、例えば、特開平6-087834に記載される方法に従って製造することができる。nilotinib若しくはその類縁体は、例えば、WO2004/005281(特表2005-533827)に記載される方法に従って製造することができる。kenpaullone若しくはその類縁体は、例えば、“Arch. Pharm. (Weinheim), 325:297-299 (1992)”又はWO1999/065910(特表2002-518395)に記載される方法に従って製造することができる。
【0041】
本発明の化合物は、フリー体だけでなく、その薬理学的に許容される塩も包含されるものとする。薬理学的に許容される塩は化合物の種類によって異なるが、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アルミニウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基塩、並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン等の有機塩基塩などの塩基付加塩、あるいは塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩などの酸付加塩が挙げられる。
【0042】
本発明の化合物が、光学異性体、立体異性体、位置異性体、回転異性体等の異性体を有する場合には、いずれか一方の異性体も混合物も本発明の化合物に包含される。例えば、本発明の化合物に光学異性体が存在する場合には、ラセミ体から分割された光学異性体も本発明の化合物に包含される。
これらの異性体は、自体公知の合成手法、分離手法(例、濃縮、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等)、光学分割手法(例、分別再結晶法、キラルカラム法、ジアステレオマー法等)等によりそれぞれを単品として得ることができる。
本発明の化合物は、結晶であってもよく、結晶形が単一であっても結晶形混合物であっても本発明の化合物に包含される。結晶は、自体公知の結晶化法を適用して、結晶化することによって製造することができる。
本発明の化合物は、溶媒和物(例、水和物等)であっても、無溶媒和物(例、非水和物等)であってもよく、いずれも本発明の化合物に包含される。
また、同位元素(例、3H, 14C, 35S, 125I等)等で標識された化合物も、本発明の化合物に包含される。
【0043】
本発明の予防/治療剤は、有効成分である本発明の化合物をそのまま単独で、または薬理学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤等と混合し、適当な剤型の医薬組成物として経口的又は非経口的に投与することができる。
【0044】
経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。一方、非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。これらの製剤は、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール、ソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α澱粉、デキストリンのような澱粉誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルランのような有機系賦形剤;及び、軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;燐酸水素カルシウムのような燐酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;硫酸カルシウムのような硫酸塩等の無機系賦形剤である)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーズワックス、ゲイ蝋のようなワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;DLロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物のような珪酸類;及び、上記澱粉誘導体である)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、及び、前記賦形剤と同様の化合物である)、崩壊剤(例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類である)、乳化剤(例えば、ベントナイト、ビーガムのようなコロイド性粘土;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムのような陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウムのような陽イオン界面活性剤;及び、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤である)、安定剤(メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及び、ソルビン酸である)、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等である)、希釈剤等の添加剤を用いて周知の方法で製造される。
【0045】
本発明の予防/治療剤の有効成分である本発明の化合物の投与量は、化合物の種類、投与対象の症状、齢、体重、薬物受容性等の種々の条件により変化し得るが、経口投与の場合には、1回当たり下限0.1mg(好適には0.5mg)、上限1000mg(好適には500mg)を、非経口的投与の場合には、1回当たり下限0.01mg(好適には0.05mg)、上限100mg(好適には50mg)を、成人に対して1日当たり1乃至6回投与することができる。症状に応じて増量もしくは減量してもよい。特に、本発明の化合物が上記疾患以外の疾患に対する医薬品として、既に上市されている場合には、各化合物について、安全性が確認されている範囲で、適宜投与量を選択することができる。
【0046】
さらに、本発明の予防/治療剤は、他の薬剤、例えば、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、ドネペジル、メマンチンなどと併用してもよい。本発明の予防/治療剤およびこれらの他の薬剤は、同時に、順次又は別個に投与することができる。
【0047】
本発明の化合物の有効量又は本発明の予防/治療剤を哺乳動物(治療または予防の対象とする動物)に投与する治療及び/又は予防方法も、本発明に含まれる。該動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒトが挙げられ、好ましくはヒトである。
【0048】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【実施例
【0049】
方法
<iPS細胞の作製と細胞培養>
“Imamura, K., et al. Sci Rep 6, 34904 (2016)”に記載の方法に従って、iPS細胞を作製した。OCT3/4、Sox2、Klf4、L-Myc、Lin28、p53-shRNA、およびEBNA1を有するエピソームベクターを用いて、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症又はレビー小体型認知症患者の線維芽細胞または単核球から、APP遺伝子、SNCA遺伝子又はMAPT遺伝子に変異を有するヒトiPSCを作製し、4 ng/mlの塩基性FGF(Wako Chemicals)及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したヒトiPS細胞培地(霊長類胚性幹細胞培地; ReproCELL)を用いて、SNLフィーダー層上で培養した。
【0050】
<Ngn2を発現させるためのpiggyBacベクターの調製及びiPS細胞への導入>
“Imamura, K., et al. Sci Rep 6, 34904 (2016)”に記載の方法に従って、テトラサイクリン誘導性Ngn2コンストラクトを有するiPS細胞を樹立した。iPS細胞から均質なニューロンを確実に作製するために、piggyBacベクターを用いてNgn2転写因子をマウスまたはヒトのiPS細胞に導入した。このベクターは、テトラサイクリンオペレーター rtTAの制御下のNgn2及びネオマイシン耐性遺伝子を含み、KW110_PB_TA_ERN(Ef1a_rtTA_neo)ベクターバックボーンから作製した。次いで、作製したベクターを、リポフェクタミンLTX(Invitrogen)を用いてトランスポザーゼをコードするpCyL43ベクターと共にiPS細胞に共トランスフェクトした。ネオマイシンを用いたクローン選択の後、テトラサイクリン誘導性Ngn2コンストラクトを有するiPS細胞を樹立した。
【0051】
<Ngn2の誘導によるiPS細胞由来の皮質ニューロンの作製>
“Imamura, K., et al. Sci Rep 6, 34904 (2016)”に記載の方法に従って、iPS細胞由来の皮質ニューロンを作製した。iPS細胞を、アクチナーゼを用いて単一細胞に解離し、1μg/ mlのドキシサイクリン(Clontech)と共に、1:1の比のDMEM/F12(Life Technologies)及びNeurobasal(Life Technologies)、1% N2サプリメント、2% B27サプリメント、10 ng/mlの脳由来神経栄養因子(BDNF、R&D Systems)、10 ng/mlのグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF、R&D Systems)及び10 ng/mlのニューロトロフィン-3(NT-3; R&D Systems)を含む神経細胞用培地を用いて、Matrigelでコーティングした96ウェルプラスチックプレート上に播種した。
【0052】
<細胞生存アッセイ>
“Imamura, K., et al. Sci Rep 6, 34904 (2016)”に記載の方法に従って、細胞生存アッセイを行った。Ngn2導入iPSCを単一細胞に解離し、1 μg/mlのドキシサイクリンを含有する神経細胞用培地を用いて、マトリゲルでコーティングした96ウェルプレート(BD Bioscience)上に5×104細胞/ウェルで播種した。8日目および21日目に細胞を固定し、染色した。NeuNで染色した生存ニューロンの数をIN Cell Analyzer 6000(GE Healthcare)で定量し、21日目のニューロン数/8日目のニューロン数として表した。8日目から21日目まで3日ごとにBosutinib、Imatinib、Nilotinib、またはKenpaulloneを添加し、生存ニューロンの数を21日目に評価した。細胞生存アッセイの結果を図1に示す。
【0053】
結果
図1より、Bosutinibは、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症及びレビー小体型認知症に著効であることが示された。nilotinibは、特定の前頭側頭葉変性症に著効であることが示された。kenpaulloneは、前頭側頭葉変性症及びレビー小体型認知症に著効であることが示された。
【0054】
本出願は、日本国で出願された特願2017-102176(出願日:2017年5月23日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の化合物は、神経変性症の予防及び/又は治療に有用である。特に、他の疾患に対する医薬品として既に上市されている薬剤は、安全性等の臨床及び非臨床データが蓄積されており、また、周辺化合物のライブラリーが既に存在するため、低コストにかつ迅速に、神経変性症を予防及び/又は治療可能な医薬品を開発できる可能性がある。
図1