(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】蛍光体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20231208BHJP
H01L 33/50 20100101ALN20231208BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 F
H01L33/50
(21)【出願番号】P 2022125068
(22)【出願日】2022-08-04
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0126287
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522312768
【氏名又は名称】ルーツ カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】ROOTS Co., Ltd
【住所又は居所原語表記】301, Harmony-ro, Yeonsu-gu, Incheon, 22014, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】李 星▲ユン▼
(72)【発明者】
【氏名】金 淳▲ミン▼
(72)【発明者】
【氏名】河 宗佑
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-224659(JP,A)
【文献】特開平03-274749(JP,A)
【文献】特表2016-524344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状のダイシングラインに沿って蛍光体ウエハの一面にダイシングトレンチを形成する段階;
前記ダイシングトレンチに流動性のある粘着材を充填する段階;
前記粘着材を固める段階;
前記ダイシングトレンチが形成された面の反対面の厚さを縮小して、前記ダイシングラインに沿って分割された多数の個別蛍光体とその間を連結する前記粘着材が一体化した形態となるようにする段階;
前記分割された個別蛍光体のみが残るように前記粘着材を除去する段階;を含
み、
前記ダイシングトレンチを形成する段階と前記粘着材を充填する段階の間に、
前記ダイシングトレンチ形成過程で前記ウエハの表面に形成されるチッピング部位を除去するために、前記ダイシングトレンチが形成された面を均一な厚さだけグラインディングする段階をさらに含む、蛍光体製造方法。
【請求項2】
前記粘着材はワックスであり、
前記粘着材を充填する段階は、加熱して流動性を有するワックスを前記ダイシングトレンチに充填することであり、
前記固める段階は、前記ワックスを室温に一定時間の間置くことであり、
前記粘着材を除去する段階は、前記粘着材に溶媒を加えて前記粘着材を溶かすことである、請求項1に記載の蛍光体製造方法。
【請求項3】
前記粘着材はUV硬化粘着材であり、
前記固める段階は、粘着材に紫外線を加えることである、請求項1に記載の蛍光体製造方法。
【請求項4】
前記一体化した形態となるようにする段階は、
前記ダイシングトレンチに前記粘着材が充填された前記ウエハをひっくり返して作業台の上面に接触するように置き、前記ウエハの上面に表面グラインダで前記ウエハの全体に亘って均一な厚さで、前記表面グラインダが前記粘着材に到達するまでグラインディングすることを含む、請求項1に記載の蛍光体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光体の製造方法に関する。より詳細には、LEDチップから放射される光の波長を変更する色変換部材としての蛍光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
韓国特許第2243674号には、色変換部材を薄くて広いウエハの形態で製造した後、後加工工程としてこれをいくつかの小さな蛍光体に分割する過程が開示されている。ウエハを非常に小さな蛍光体に分ける過程、すなわち、ダイシングやグラインディングなどの過程中にウエハが損傷したり小さな蛍光体チップの一部が作業台から離脱する可能性がある。
【0003】
特に、
図8に図示されたダイシングブレードですぐにウエハを分割する過程を適用する場合、この問題点がさらに大きく現れ得る。作業時、ウエハはリング状のウエハリングとウエハリングの内側に固定される円板状のUVテープの上に置かれる。UVテープの上面には粘着物質が塗布されており、ウエハが固定され得る。厚さが略1.5mmのウエハをまず0.1~0.2mmとなるようにグラインディング作業をした後、ダイシングブレードを利用して格子状にウエハを切り出す。ウエハの蛍光粒子がダイシングブレードによって砕けながら切断されるが、この過程で蛍光体の側面がごつごつに砕けるチッピング現象が起きる。また、蛍光体がダイシングブレードの回転力に勝てずUVテープ付着面から離脱され得る。蛍光体の大きさが小さければ小さいほどUVテープとの接触面が小さくなり、それにより粘着力が低下する。粘着力が小さいのでダイシングブレードと摩擦しながら回転力に勝てずに蛍光体が外側に飛散するのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施例は、蛍光体ウエハを滑らかな形を有する均一な大きさの個別の蛍光体に形成する課題を解決しようとする。特に、相対的に小さい大きさの蛍光体にウエハを加工することが難しいがこの問題を解決しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施例による蛍光体の製造方法は、格子状のダイシングラインに沿って蛍光体ウエハの一面にダイシングトレンチを形成する段階;前記ダイシングトレンチに流動性のある粘着材を充填する段階;前記粘着材を固める段階;前記ダイシングトレンチが形成された面の反対面の厚さを縮小して、前記ダイシングラインに沿って分割された多数の個別蛍光体とその間を連結する前記粘着材が一体化した形態となるようにする段階;前記分割された個別蛍光体のみが残るように前記粘着材を除去する段階;を含み、前記ダイシングトレンチを形成する段階と前記粘着材を充填する段階の間に、前記ダイシングトレンチ形成過程で前記ウエハの表面に形成されるチッピング部位を除去するために、前記ダイシングトレンチが形成された面を均一な厚さだけグラインディングする段階をさらに含むことができる。
【0006】
前記粘着材はワックスであり、前記粘着材を充填する段階は、加熱して流動性を有するワックスを前記ダイシングトレンチに充填することであり、前記固める段階は、前記ワックスを室温に一定時間の間置くことであり、前記粘着材を除去する段階は、前記粘着材に溶媒を加えて前記粘着材を溶かすことであり得る。
【0007】
前記粘着材はUV硬化粘着材であり、前記固める段階は、粘着材に紫外線を加えることであり得る。
【0009】
前記一体化した形態となるようにする段階は、前記ダイシングトレンチに前記粘着材が充填された前記ウエハをひっくり返して作業台の上面に接触するように置き、前記ウエハの上面に表面グラインダで前記ウエハの全体に亘って均一な厚さで、前記表面グラインダが前記粘着材に到達するまでグラインディングすることを含むことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ウエハにダイシングトレンチを形成した後、このダイシングトレンチに粘着材を充填することによって、個別蛍光体が一体に維持された状態でグラインディング加工によってウエハを個別蛍光体に分割することができる。したがって、蛍光体が作業台から離脱したり不均一に加工されたりすることを防止することができる。すなわち、小さな蛍光体を生産するためにダイシングラインを細かく形成しても最終的に得られる蛍光体の表面を滑らかに維持することができ、全体の蛍光体の大きさと形状を均一に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例に係る蛍光体の製造方法を全体的に図示する。
【
図2】本発明の一実施例に係る蛍光体の製造方法のうちダイシング過程である。
【
図3】本発明の一実施例に係る蛍光体の製造方法のうちグラインディング過程である。
【
図4】本発明の一実施例に係る蛍光体の製造方法のうち粘着液充填の結果である。
【
図5】本発明の一実施例に係る蛍光体の製造方法のうちグラインディング過程である。
【
図6】本発明の一実施例に係る蛍光体の製造方法のうちグラインディング過程である。
【
図7】本発明の一実施例に係る蛍光体の製造方法のうち粘着液除去の結果を図示する。
【
図8】従来技術による蛍光体製造方法を全体的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を添付された図面を参照して説明することにする。添付された図面は本発明の例示的な形態を図示したものであり、これは本発明をより詳細に説明するために提供されるものに過ぎず、これによって本発明の技術的な範囲が限定されるものではない。
【0013】
また、図面符号にかかわらず、同一または対応する構成要素は同一の参照番号を付与し、これに対する重複説明は省略することにし、説明の便宜のために図示された各構成部材の大きさおよび形状は誇張または縮小され得る。
【0014】
一方、第1または第2等のように序数を含む用語は多様な構成要素を説明するのに使われ得るが、前記構成要素が前記用語によって限定されず、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別させる目的でのみ使われる。
【0015】
図1に図示された通り、<0>過程として、まず個別蛍光体2として分割されるウエハ1を準備する。ウエハ1は円形または四角形で製造されてもよい。広いウエハ1を製造し、これを分割して小さなチップ形態の蛍光体2に製造した方が、最初から実製品の大きさの小さな蛍光体2を製造する方より効率的である。通常的に使われる蛍光体2の大きさが手や機械で加工するには比較的小さいため、前記方式が使われる。ウエハ1は、粉末状態の蛍光物質とガラス結晶またはシリコン樹脂などを混ぜた後、これを焼結、圧縮、乾燥などの加工を適用して得ることができる。
【0016】
図1および
図2に図示された通り、<1>過程として、ウエハ1にダイシングトレンチ3を形成する。ダイシングブレード19でダイシングライン24に沿って一定間隔の直線で多数形成し、この直線と垂直な複数のダイシングライン24を形成することによって格子状を形成する。ウエハ1を完全に分割せず、一部の深さまでのみ切り込みを入れるようにカッティングすることによってダイシングトレンチ3が形成され得る。ダイシングトレンチ3の間にはウエハ1が膨らむように形成されるが、これは今後個別蛍光体2をなす部位となる。
【0017】
図1および
図3に図示された通り、<2>過程として、ウエハ1のダイシングトレンチ3が形成された面を表面グラインダ15でグラインディングする。粗いグラインディングを実施してウエハ1の厚さが均一に減少するようにする。この過程は、表面グラインダ15を作業台13側に次第に下げながら表面グラインダ15を回転させることによってなされ得る。グラインダ15は平たい円盤状のディスクを有し、このディスクが回転しながら材料の表面を削り出す。グラインダ15を移動可能に支持する支持台、ウエハ1を置く支持ベッド、制御部を備えた機械装備でグラインディングシステムを構築してもよい。
【0018】
図2および
図8に図示された通り、ウエハ1をダイシングブレード19で削り出す過程で表面にチッピング現象が発生する。ウエハ1は多様な粒子を接着性物質と混合することによって製造される。したがって、ウエハ1の表面をダイシングブレード19で削り出す過程でウエハ1をなす物質が砕けながらダイシングトレンチ3が形成されるが、同時にチッピング現象が発生するのである。<1>のように、ダイシングトレンチ3を形成する過程ではウエハ1の表面側が主に砕けるので、チッピング現象がウエハ1の表面に主に発生することになる。<2>過程でグラインディングを実施することによってチッピング部位が除去され得る。
【0019】
図1および
図4に図示された通り、<3>過程として、ダイシングトレンチ3に粘着材9を充填する。今後作業でチップ形態の個別蛍光体2が完全に分離される前までダイシングトレンチ3の内部を充填することによってウエハ1を支持するのである。
【0020】
粘着材9として、ワックス、UV硬化型粘着材などを適用することができる。
【0021】
ワックスは相対的に高い温度では一定程度の粘性と流動性を有し、相対的に低い温度に一定時間以上露出されると、固まって固形化される物質である。本実施例では、ワックスに一定温度となるように熱を加えて流動化させた後、これをダイシングトレンチ3に塗布してダイシングトレンチ3を充填してから室温に維持することによって<3>過程を遂行できる。加熱して流動性が高くなったワックスを、ダイシングトレンチ3に塗布しながら表面をスクレーパで押してあげると、
図4に図示された通り、ワックスの表面をウエハ1の表面のように平坦化することができる。
【0022】
室温に置いて一定の時間が経過するとワックスは固まる。ダイシングトレンチ3の内部で固まったワックスは、今後個別蛍光体2チップとして分割される格子状の膨らんだ部位の間を連結する。したがって、この膨らんだ部位がワックスを通じて連結され得るのである。
【0023】
UV硬化型粘着材は普段は流動性を有していて、紫外線(UV)に露出されると硬化する材料である。常温でUV硬化型粘着材をダイシングトレンチ3に塗布して紫外線を照射すると、UV硬化型粘着材が硬化する。ワックスと同様に、スクレーパを活用して平坦化することができ、硬化したUV硬化型粘着材が今後個別蛍光体2チップとして分割される格子状の凸部位の間を連結する。ワックスのように室温に放置するのではなく、UVを照射して硬化過程を加速化するので、粘着材9を固めるのに所要する時間を削減し、工程ごとに均一化することができる。
【0024】
<3>過程では、ダイシングトレンチ3を粘着材9で充填し固めることによってウエハ1の全体的な剛性を強化させ、今後個別蛍光体2として分割される部位を連結させた。
【0025】
図1および
図5、6に図示された通り、<4>過程としてウエハ1をひっくり返し、<5>過程としてウエハ1のダイシングトレンチ3が形成されていない面にグラインディング作業を実施する。粘着材9が充填されたダイシングトレンチ3が形成された反対面にグラインディング作業を実施することによって、次第にウエハ1の厚さが減少する。
図5に図示された通り、粘着材9適用部位が下に行くようにウエハ1をひっくり返して作業台13に載置し、表面グラインダ15で表面をグラインディングする。粗いグラインディングを実施してウエハ1の厚さが減少するようにする。この過程は、表面グラインダ15を作業台13側に次第に下げながら、表面グラインダ15の表面が固まった粘着材9の内面と接触するまで継続する。
【0026】
このようにウエハ1の一面を削って厚さを減少させると、結局、
図6に図示された通り、多数の蛍光体2の間に粘着材9が充填されている状態となる。すなわち、ウエハ1は既に多数の蛍光体2に分割された状態であり、その分割された蛍光体2の間を粘着材9が連結している状態すなわち、粘着材9の間に多数の蛍光体2チップが列をなして打ち込まれている状態となるのである。グラインディングを粘着材9の内面まで実施するとこのような状態を作ることができるが、グラインダ15をさらに下げてグラインディングをさらに遂行することができる。ウエハ1の厚さが、必要な厚さすなわち、
図1に例示した0.1mm~0.2mmに到達するまでグラインディング作業を実施することができる。
【0027】
グラインダ15の回転力によって蛍光体2に側方向に力が加えられたにもかかわらず、粘着材9が蛍光体2を支持しているため蛍光体2は列を離脱せずに形態を維持することができる。ウエハ1をいくら小さな大きさにしても蛍光体2の離脱現象は起きなくなる。また、粘着材9がないと蛍光体2の位置が動き得、この位置が蛍光体2ごとに異なるため不均一にグラインディングがなされ得るが、本実施例では蛍光体2と粘着材9が一つの塊となって付着されているためこのような問題が発生しなくなる。
【0028】
最後に、
図1および
図7に図示された通り、<6>過程として蛍光体2の間に差し込まれている粘着材9を除去する。
【0029】
粘着材9がワックスである場合、アルコールのような溶媒をワックス形成部位に撒布すると除去することができる。ウエハ1の全体にまんべんなくアルコールを撒布すると、暫くしてから
図7に図示された通り、蛍光体2が個別チップとして分離される。
【0030】
粘着材9がUV硬化型粘着材である場合、これを除去するために紫外線を照射することができる。前記では粘着材9を硬化するために紫外線を照射したが、<6>過程でもう一度紫外線を照射すれば今度は粘着材9がさらに硬化しながら蛍光体2と分離されるのである。作業台がUVテープである場合、テープ除去時に共に除去され得る。
【0031】
このように物理的な方式ではなく溶媒適用またはUV適用方式を使うので、物理力に粘着材9を蛍光体2から引き離す場合より蛍光体2の毀損を防止することができる。そして、粘着材9の一部が蛍光体2の側面に残留して蛍光体2の側面の所々にシミが形成されたりでこぼこに形成されることも防止することができる。`
【0032】
以上で説明した過程を経れば小さな大きさの蛍光体2も滑らかな形態を有するように製造することができる。すなわち、<2>過程でダイシングトレンチ3を形成しながら形成されたウエハ1の表面のチッピング部位を除去したし、<3>過程でチッピング部位の除去後に滑らかなダイシングトレンチ3を粘着材で埋めたし、<4>、<5>過程でグラインディングを実施して、ウエハ1を個別蛍光体2として分離しながらも蛍光体2と粘着材9を一体に形成して蛍光体2の離脱および形の変形を防止したし、<6>過程で蛍光体2の毀損や変形なしに粘着材のみを除去することができた。
【0033】
以上、本発明の実施例について説明したが、該当技術分野で通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加などによって本発明を多様に修正および変更させることができるであろうし、これもまた本発明の権利範囲内に含まれるものと言える。
【符号の説明】
【0034】
1:ウエハ
2:蛍光体
3:ダイシングトレンチ
9:粘着材
13:作業台
15:表面グラインダ
19:ダイシングブレード
24:ダイシングライン